JP6243107B2 - 光選択透過フィルター、その基材及び用途 - Google Patents
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Description
本発明はまた、上記光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有する固体撮像素子でもある。
本発明は更に、上記光選択透過フィルターに用いられる基材である光選択透過フィルター用基材でもある。
本発明はそして、上記光選択透過フィルターを製造する方法であって、該製造方法は、基材の少なくとも一方の面に160℃以上の温度で反射膜を蒸着する工程を含む光選択透過フィルターの製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
なお、基材、反射膜及び必要に応じて含まれる他の層は、それぞれ1又は2以上であってもよい。
なお、上記表面硬度は、反射膜表面の硬度であることが好適である。
上記光選択透過フィルターにおいて、基材は、1種類以上の色素を含むものであればよいが、2種以上の色素を含むものであってもよい。このような色素を含む光吸収性の基材を反射膜と併用することで、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができる。また、例えば反射膜として多層膜(光学多層膜)を用いた場合には、該多層膜の層数を減らすことができ、該多層膜における応力を緩和できるため、多層膜のクラックや割れを防止することができる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用基材も、本発明の1つである。
なお、上記基材が後述するように支持体を含む場合、該支持体の厚みは120μm以下であることが好ましい。
なお、上記基材が後述する樹脂層を含む場合には、該樹脂層も同様の吸収特性を有することが好適である。
本明細書中、透過率は、分光光度計(例えば、Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。この場合、透過率の測定に供する基材(及び樹脂層)の厚みは、1〜200μmとすることが好ましい。
なお、上記基材が後述する樹脂層を含む場合には、該樹脂層も同様の特性を有することが好適である。
上記基材は、1種類以上の色素を含む。
上記色素とは、特定波長の光を吸収する物質を意味し、後述するように基材が更に樹脂成分を含む場合には、樹脂成分と混合又は混練可能な色素を用いることが好適である。また、600〜800nmの波長域に吸収極大を有するものが好ましく、中でも、吸収極大波長の少なくとも1つが600〜710nmに存在する化合物を用いることが好適である。このような吸収特性を有する化合物を用いて基材を構成することで、光選択透過性により優れるものとなり、また、該色素を含む基材と反射膜とを組み合わせた際に、反射膜による入射角依存性をより一層低減することが可能になる。このように上記色素の少なくとも1種が、吸収極大波長の少なくとも1つが600〜710nmに存在する化合物である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、1又は2以上の吸収極大波長のうち、最も透過率が低いピークの波長(すなわち、最大吸収波長)が、600〜710nmにあることである。
色素の透過率は、色素を溶媒(例えば、メタノール、ジメチルアセトアミド)に溶解させて得た溶液を、1cm厚の透明石英セルに充填し、分光光度計(例えば、Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。透過率測定時の色素の濃度は特に限定されないが、例えば、溶媒と色素との総量100質量%に対し、色素を0.000001〜0.01質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.00001〜0.001質量%とすることである。
ここで、上記色素が有する共役系骨格がノニオン性であるとは、該色素が有するすべての共役系骨格が、アニオン性、カチオン性及び双性イオン性のいずれでもないこと、すなわち該共役系骨格中にイオン化部分(アニオン、カチオン又は双性イオン)を有しないことを意味する。共役系骨格にイオン化部分が存在すると、光や熱によって該化合物に由来する近赤外線吸収性能をより充分に発現することができないが、共役系骨格にイオン化部分を有さないことによって耐光性及び耐熱性がより一層発現され、近赤外線吸収性能を長期にわたりより発揮することが可能になる。
なお、双性イオンを有するとは、1つの分子内に正電荷と負電荷の両方を持つことを意味する。双性イオンは、分子内塩とも称される。
近赤外線吸収は、用いられる色素の共役系軌道間における電子遷移によるところが大きいと考えられる。この吸収では、色素が有する置換基(原子団)の種類や数、また色素が金属錯体である場合は金属イオンの種類等によって、吸収端波長や吸光係数等の吸収特性をある程度制御することができるが、近赤外線領域の光吸収性能は、基本的には色素が有する共役系電子の電子構造に概ね依存する。したがって、基材の近赤外線吸収性能の安定性は、色素における共役系骨格の共役系の安定性によると考えられる。そこで、共役系骨格におけるイオン化構造部分の有無による、近赤外線吸収性能の安定性に及ぼす影響のメカニズムは、定かではないが、以下のように考えられる。
このような点から、上記色素として共役系骨格がノニオン性である化合物を用いることが有効であると考えられる。
ここで、4個のピロール環を含む化合物群をテトラピロール化合物といい、環状のものと直鎖状のものがあるが、環状テトラピロール化合物であることが更に好適である。
このように上記色素としては、中心金属イオンとなる金属が銅又は亜鉛である化合物が特に好ましい。これらの金属を中心金属イオンとする金属錯体としては、ポルフィリン類又はフタロシアニン類が特に好ましく、フタロシアニン類が最も好ましい。
なお、ポルフィリン類とは、ポルフィリン骨格を有する化合物群を意味し、ピロール環を構成する炭素原子やピロール環同士を繋ぐ結合炭素原子に結合した水素原子が、他の原子(団)や基で置換されたものを包含する。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等が挙げられる。
なお、フェニル基又はナフチル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、炭素数1〜4の有機基(例えば、アルキル基、アルコキシカルボニル基等)、ハロゲン基(ハロゲン原子)、シアノ基等が好適である。中でも、メトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、クロル基(塩素原子)、メチル基又はシアノ基が特に好ましい。
なお、上述した好ましい形態の色素を少なくとも用いることで、色素濃度が高濃度であってもより優れた耐光性を有する樹脂層となり得る。
ここで、上記350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を含む形態としては、上述した色素が、更に350〜400nmの波長域に吸収機能を有する化合物である形態であってもよいし、また、別途、350〜400nmの波長域に吸収機能を有する化合物を併用する形態であってもよい。後者の350〜400nmの波長域に吸収機能を有する化合物としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の紫外線吸収化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
上記基材はまた、更に樹脂成分を含むことが好適である。すなわち基材が色素と樹脂成分とを含むものであることが好ましい。これにより、基材にガラスのみを用いる場合と比較して光選択透過フィルター全体を大幅に薄膜化することが可能となるうえ、高いレベルの表面硬度や耐熱性等の各種物性を付与することもできる。このように上記基材が更に樹脂成分を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。
なお、上記樹脂層や支持体は、各々、一層又は二層以上であってもよい。
なお、色素及び樹脂成分としては、各々、1種又は2種以上を使用することができる。
ガラス転移温度は、例えば、20℃/分の加熱速度で、SSC5200H(セイコー電子工業社製)を用いて測定することができる。
なお、上記樹脂層自体は、溶剤可溶性であっても不溶性であってもよい。
なお、「樹脂原料」には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上記樹脂成分として溶剤可溶性樹脂を用いる場合、該溶剤可溶性樹脂がそのまま、上記樹脂層を構成する樹脂成分となっていてもよいし、該溶剤可溶性樹脂が架橋反応等により変化したものが、上記樹脂層を構成する樹脂成分となっていてもよい。
なお、架橋可能な反応性基の量や成膜時の架橋反応をどの程度進めるかは特に限定されるものではないが、樹脂の溶剤可溶性が維持できる程度であることが好ましい。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
上記一般式(1−2)中、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。R3は、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。n1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
なお、ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である。)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応による形成される。
ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが好適である。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記一般式(5)におけるR4としては、2価の有機基が好ましく、中でも、炭素数2〜39の2価の有機基が好ましい。また、当該有機基は1種又は2種以上の炭化水素骨格を含むものが好ましい。炭化水素骨格としては、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素又は芳香族炭化水素であることが好ましい。当該有機基はまた、複素環骨格を有するものであってもよい。
なお、上記一般式(5)で表される繰り返し単位におけるそれぞれのR4としては、同一であっても異なるものであってもよい。
なお、一般式(5)におけるシクロヘキシル環における水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいが、無置換(全て水素原子である形態)であるものが好ましい。
上記一般式(5)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物又は(メタ)アクリル系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、スチレン樹脂とは、スチレンやジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー(スチレン系化合物とも称す。)を含む硬化性組成物の硬化物であり、アクリル−スチレン樹脂とは、(メタ)アクリロイル基含有化合物及びスチレン系モノマーを含む硬化性組成物の硬化物である。上記ビニル重合体樹脂の中でも、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂が好ましい。
上記アクリル−スチレン樹脂原料としては、上記アクリル樹脂原料の好適な形態において更にスチレン系モノマーを用いた組成物が好ましい。
上記基材が上述したように支持体を更に有する場合、支持体としては、樹脂製のものが好適である。これにより、ガラス製基材を用いた場合に比較して、光選択透過フィルターの表面硬度をより高くすることが可能になるとともに、薄膜化をより実現することができる。上記支持体はまた、フィルム形状のもの(支持体フィルム)が好ましい。より好ましくは樹脂製フィルム(樹脂フィルムとも称す)である。
上記光選択透過フィルターは、上記基材に加えて、上記基材の少なくとも一方の面に形成されてなる反射膜も有する。反射膜は、光反射機能を有する膜であればよく、1層であってもよいし2層以上の多層であってもよいが、多層からなる膜であることが好適である。すなわち上記反射膜は、光学多層膜であることが好ましい。また、反射膜は、耐熱性に優れる点で無機膜であることが好ましく、特に、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜であることが好適である。無機多層膜としては、樹脂層や支持体、その他の機能性材料層の上に、蒸着法(好ましくは真空蒸着法)やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜であることも好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。これらの中でも、無機多層膜が特に好適である。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
この場合、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性をより一層小さくするために、次の方法を用いることが好ましい。すなわち具体的には、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、光選択透過フィルターの基材に該蒸着層を転写して反射膜を形成する、反射膜の転写方法が好適である。この場合、基材には、接着層を形成しておくことが好ましい。
また上記基材が有機材料、具体的には樹脂組成物により形成される場合には、未硬化又は半硬化状態の樹脂組成物に誘電体層等を蒸着した後、該樹脂組成物を硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が課題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)をより充分に抑制することができる。
上記線膨張係数が低い樹脂成分又は支持体フィルムとして具体的には、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が好適であり、上記樹脂成分又は支持体フィルムが、これらからなる群より選択される少なくとも1種により形成されるものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、樹脂を延伸する;無機微粒子等を分散させる;ガラスクロスを用いる;架橋密度を上げる;コンポジット化する;結晶化させる;等によっても線膨張係数を低下させることができる。
また、上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、2〜8μmである。反射膜が上記基材の両面に形成される形態においては、両面の反射膜の合計の厚みが上記範囲内にあることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。
このように本発明の光選択透過フィルターが他の機能を有する形態においては、上記基材の一方の表面に反射膜を形成し、他方の表面に他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。機能性材料層は、例えば、CVD法、スパッタリング法、蒸着法(好ましくは真空蒸着法)等により、直接、上記基材上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を上記基材に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を、上記基材に塗布、乾燥して、製膜することによっても得ることができる。
図1に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図2に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは110%以下、更に好ましくは105%以下である。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
ここで、光遮断特性の入射角依存性は、例えば、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
なお、レンズユニット部については、国際公開第2008/081892号パンフレットに記載の形態が好ましく採用できる。
20℃/分の加熱速度でSSC5200H(セイコー電子工業社製)を用いて測定した。
<数平均分子量>
スチレン換算によるGPC(ゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー)により測定した。
機種:東ソー社製HLC−8120GPC
カラム:G−5000HXL+GMHXL−L
展開溶媒:THF
流速:1mL/min
標準:標準ポリスチレン使用
<表面硬度測定>
鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所製)を用いて、JIS−K5600−5−4(1999年制定)に準拠して、多層膜の表面硬度を測定した。なお、荷重は1000gであった。2B<B<HB<F<H<2H<3H<4Hの順に、右にいくほど表面硬度が高いことを意味する。
合成例1
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマーに該当する、フッ素化ポリエーテルケトン系ポリマー(FPEK−HF)を得た。
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770であった。
HFの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(6FBA)10.1部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、フッ素化芳香族ポリマーに該当する、フッ素化ポリエーテルケトン系ポリマー(FPEK−6FBA)を得た。
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は193℃、数平均分子量(Mn)が52420であった。
HFの代わりに4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ジフェノール(BA)6.8部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、フッ素化芳香族ポリマーに該当する、フッ素化ポリエーテルケトン系ポリマー(FPEK−BA)を得た。
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は180℃、数平均分子量(Mn)が67400であった。
調製例1(3PhOPcZn)
特公平6−31239号公報に記載の処方に従い、[Cα,Cα,Cα,1−テトラキス(フェノキシ)−29H,31H−フタロシアニナト(2−)−N29,N30,N31,N32]亜鉛(フタロシアニン系色素、中心金属:Zn、吸収極大波長700nm、以下「3PhOPcZn」と略す)を用意した。この3PhOPcZnは、下記式(6a)で表されるフタロニトリル誘導体を用いて得られる、式(6b)で表される構造を有する色素である(式中Xは、フェノキシ基を表す。)。
シアニン系色素として、1H−Benzindolium,3−butyl−2−[5−(3−butyl−1,3−dihydro−1,1−dimethyl−2H−benzindol−2−ylidene)−1,3−pentadien−1−yl]−1,1−dimethyl−tetrafluoroborate(1−)(吸収極大波長680nm、以下「HBFB」と略す)を準備した。
なお、HBFBの構造を下記に示すが、下記に示されるとおり、HBFBは共役系骨格中にカチオンを有する。
スクアリリウム系色素として、2−(8−Hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−1,2,3,5,6,7−hexahydropyrido[3,2,1−ij]quinolin−9−yl)−4−(8−hydroxy−1,1,7,7−tetramethyl−2,3,6,7−tetrahydro−1H−pyrido[3,2,1−ij]quinolinium−9(5H)−ylidene)−3−oxocyclobut−1−enolate(吸収極大波長668nm、以下「S2084」と略す)を準備した。
なお、S2084の構造を下記に示すが、下記に示されるとおり、s2084は共役系骨格中に双性イオンを有する。
合成例1で得たFPEK−HF:5gに、20gのトルエン、0.00325gの3PhOPcZnを加え溶解させた。ガラス板上に、この溶液を注ぎ、500μmのアプリケーターで塗布後、100℃で2時間、120℃で2時間、150℃で2時間乾燥させることにより、100μmのフィルムを得た。このフィルムを60mm角の正方形にカットし、フィルムの両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、65℃、90℃、160℃、180℃の各温度で実施した。結果を表1にまとめた。
FPEK−HFに代えて合成例2で得たFPEK−6FBAを用いたこと以外は、試験例1と同様にしてフィルムを作製し、多層膜の蒸着を実施した。結果を表1にまとめた。
FPEK−HFに代えて合成例3で得たFPEK−BAを用いたこと以外は、試験例1と同様にしてフィルムを作製し、多層膜の蒸着を実施した。結果を表1にまとめた。
合成例1で得たFPEK−HF:5gに、20gのトルエン、0.00108gのHBFBを加え溶解させた。ガラス板上に、この溶液を注ぎ、500μmのアプリケーターで塗布後、100℃で2時間、120℃で2時間、150℃で2時間乾燥させることにより、100μmのフィルムを得た。このフィルムを60mm角の正方形にカットし、フィルムの両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、65℃、90℃、160℃、180℃の各温度で実施した。結果を表1にまとめた。
合成例1で得たFPEK−HF:5gに、20gのトルエン、0.00108gのs2084を加え溶解させた。ガラス板上に、この溶液を注ぎ、500μmのアプリケーターで塗布後、100℃で2時間、120℃で2時間、150℃で2時間乾燥させることにより、100μmのフィルムを得た。このフィルムを60mm角の正方形にカットし、フィルムの両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、65℃、90℃、160℃、180℃の各温度で実施した。結果を表1にまとめた。
5gの三菱ガス化学社製ネオプリムL−3430フィルム(100μm厚、Tg:303℃)に、45gのDMAc、0.08gの3PhOPcZnを加え、120℃で1時間撹拌し、溶解させた。三菱ガス化学社製ネオプリムL−3430フィルム(100μm厚、Tg:303℃)の上に、この溶液を注ぎ、10μmのアプリケーターで塗布後、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間乾燥させた。更に裏面にも同様にしてこの溶液を塗布することにより、104μmのフィルムを得た。このフィルムを60mm角の正方形にカットし、フィルムの両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、65℃、90℃、160℃、180℃の各温度で実施した。結果を表1にまとめた。
JSR社製アートンF5023樹脂(Tg:165℃)5gに、20gの塩化メチレン、0.00325gの3PhOPcZnを加え溶解させた。ガラス板上に、この溶液を注ぎ、500μmのアプリケーターで塗布後、50℃で2時間、100℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、100μmのフィルムを得た。このフィルムを60mm角の正方形にカットし、フィルムの両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、65℃、90℃、160℃、180℃の各温度で実施した。結果を表1にまとめた。
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンE−2000樹脂(Tg:145℃)5gに、20gの塩化メチレン、0.00325gの3PhOPcZnを加え溶解させた。ガラス板上に、この溶液を注ぎ、500μmのアプリケーターで塗布後、50℃で2時間、100℃で2時間、120℃で2時間乾燥させることにより、100μmのフィルムを得た。このフィルムを60mm角の正方形にカットし、フィルムの両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、65℃、90℃、160℃、180℃の各温度で実施した。結果を表1にまとめた。
50mm角のHOYA製ブルーガラスS−C500S(吸収:600〜700nm、厚み1mm)の両面に、多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、250℃で実施した。表面硬度測定を実施したところ、鉛筆硬度Bの測定では傷がつかなかったが、鉛筆硬度HBの測定では基材のガラスとともにくだけてしまった。
50mm角のSCHOTT社製石英ガラスD263(吸収なし、厚み0.55mm)の両面に多層膜[シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなるもの、片面25層ずつ両面に蒸着して計50層]を蒸着した。蒸着温度は、250℃で実施した。表面硬度測定を実施したところ、鉛筆硬度4Hであった。
試験例1〜6のうち160℃で蒸着して得た光選択透過フィルターについて、入射角依存性を評価した。
Shimadzu UV−3100(島津製作所社製)を用いて200〜1100nmにおける透過率を測定した。透過率は、図3に示すように、入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と、入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4:光源
5:光選択透過フィルター
6:受光部
Claims (10)
- 基材と、その少なくとも一方の面に形成されてなる反射膜とを有する光選択透過フィルターであって、
該基材は、支持体と、1種類以上の色素及び樹脂成分を含む樹脂層とを有し、
該樹脂成分は、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂及びポリシクロオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤可溶性樹脂を含み、
該支持体は、樹脂製フィルムであり、
該光選択透過フィルターの反射膜表面の硬度は、HB〜4Hであることを特徴とする光選択透過フィルター。 - 前記色素は、ポルフィリン系色素及び/又はフタロシアニン系色素を含むことを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター。
- 前記樹脂層中の色素の含有量は、色素及び樹脂成分の総量100質量%に対し、0.01〜15質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター。
- 前記樹脂成分は、フッ素化芳香族ポリマー及び/又はポリ(アミド)イミド樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
- 前記基材の可視光領域におけるヘイズは、10%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
- 前記支持体の厚みは、120μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
- 前記支持体は、ポリ(アミド)イミド樹脂からなる樹脂製フィルムであり、前記樹脂成分は、ポリ(アミド)イミド樹脂及びフッ素化芳香族ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の溶剤可溶性樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の光選択透過フィルター、レンズユニット部、及び、センサー部を少なくとも有することを特徴とする固体撮像素子。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の光選択透過フィルターに用いられる基材であって、
該基材は、支持体と、1種類以上の色素及び樹脂成分を含む樹脂層とを有し、
該樹脂成分は、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂及びポリシクロオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤可溶性樹脂を含み、
該色素は、ポルフィリン系色素及び/又はフタロシアニン系色素を含み、
該支持体は、樹脂製フィルムである
ことを特徴とする光選択透過フィルター用基材。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の光選択透過フィルターを製造する方法であって、
該製造方法は、基材の少なくとも一方の面に160℃以上の温度で反射膜を蒸着する工程を含み、
該基材は、支持体と、1種類以上の色素及び樹脂成分を含む樹脂層とを有することを特徴とする光選択透過フィルターの製造方法。
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