JP5284636B2 - 積層フィルム、積層体、光選択透過フィルター及びその積層フィルムの製造方法 - Google Patents

積層フィルム、積層体、光選択透過フィルター及びその積層フィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、積層フィルム、積層体、光選択透過フィルター及びその積層フィルムの製造方法に関する。より詳しくは、レンズユニット等の光学用途やオプトデバイス用途に有用であり、その他、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等として用いることができる積層フィルム、積層体、光選択透過フィルター及びその積層フィルムの製造方法に関する。
積層フィルムは、例えば、機械部品、電気・電子部品、自動車部品等として有用であり、特に光学部材として好適に用いられるものである。例えば、カメラモジュールにおいては、光学ノイズとなる赤外線(特に波長>800nm)を遮断し、反対波より吸収波の方が小さくなるように、赤外線を遮断(カット)するフィルターが用いられている。現在は、ガラスフィルターに金属等を蒸着させ無機多層膜とし、各波長の屈折率を制御した赤外線遮断ガラスが用いられている。近年、光学部材等においては、例えば、デジタルカメラモジュールは携帯電話に搭載されるなど小型化が進み、光学部材の小型化が一層求められている。それにともなって、デジタルカメラモジュール等に用いられる赤外線をカットするフィルターや、レンズ等を有するレンズユニットの小型化が望まれるところである。
近赤外線カットフィルターに関し、特定のガラス転移温度と線膨張係数とを有する熱可塑性樹脂製の透明基板の一方の面に、屈折率の異なる誘電体層を交互に積層した誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜を有し、前記透明基板の他方の面に等価屈折率膜、反射防止膜、ハードコート膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の機能膜を有することを特徴とする近赤外線カットフィルターが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ノルボルネン系樹脂製基板と近赤外線反射膜とを有することを特徴とする近赤外線カットフィルターが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、赤外線を反射又は遮断する膜を蒸着形成する場合は、蒸着時には数百℃以上の温度がかかるため、基板材料の耐熱性が必要となる。そのために、基板材料の耐熱性を充分なものとし、種々の赤外線を遮断する材料を様々な方法により形成できるようにする工夫の余地があった。
特開2006−30944号公報(第1−2頁) 特開2005−338395号公報(第1−2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、基材と機能膜との密着性が優れた積層フィルム、積層体、光選択透過フィルター及びその積層フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、レンズユニット等の光学用途やオプトデバイス用途に好適に用いることができる積層フィルム、積層体、光選択透過フィルター、及び、積層フィルムの製造方法について種々検討したところ、積層フィルムを特定の構成とすることにより、基材と機能膜との密着性を高めた積層フィルムとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。更に、積層フィルムを細断した積層体を備えるガラスユニット等の光学用途やオプトデバイス用途や、その他、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途に好適に適用することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、基材の少なくとも片面に機能膜を有する積層フィルムであって、上記基材は、機能膜が配置された面に機能膜非形成部を有する積層フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
本発明の積層フィルムは、特に光学部材に好適に用いることができるものである。本発明の積層フィルムは、特定波長の光、好ましくは可視光を透過するものであることが好ましい。積層フィルムとしては、例えば、光の透過率を選択的に低減させる光選択透過フィルター、ー、屈折率調節フィルター、反射防止フィルター、ハードコートフィルター、位相差フィルター、光学補償フィルター等が挙げられる。好ましくは、光の透過率を選択的に低減させる光選択透過フィルターである。積層フィルムが光選択透過フィルターである場合には、選択的に透過率を低減させる光の波長は、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、赤外線の透過率を選択的に低減する形態、紫外線の透過率を選択的に低減する形態、赤外線及び紫外線の両方の透過率を選択的に低減する形態が好ましい。
〔積層フィルムの構成〕
上記積層フィルムは、基材の少なくとも片面に機能膜を有する。これによれば、積層フィルムの少なくとも片面に機能性材料が積層された機能膜を有するため、より充実した機能が付与されたものとなり、種々の用途により好適な積層フィルムとすることができる。
上記基材は、機能膜非形成部を有する。例えば、基材の端まで、機能性材料を積層して縁を設けない場合、基材の端に積層された機能性材料が、積層時又は積層後に剥がれが生じるおそれがある。また、基材に固定のための穴等を作製する場合にも、穴の周囲から剥がれが生じるおそれがある。これは、基材の端や穴の周囲等、基材の上面(平滑の表面)以外の側面等に機能性材料が積層されることにより、密着性が低下し、剥がれの起点になる可能性があるためである。基材の端又は穴の周囲に沿って、機能膜非形成部を形成することにより、機能膜の剥がれを抑制することができる。上記積層フィルムは、基材に機能膜を積層するときに、機能膜積層部位(機能膜形成部ともいう。)の周囲に機能膜が積層されていない縁(機能膜非形成部ともいう。)を有する。このように、基材と機能膜とを必須とする積層フィルムであって、該積層フィルムは、機能性材料を積層するときに、機能膜積層部位の周囲に機能膜が積層されていない縁を有する積層フィルムもまた、本発明の好ましい形態の一つである。上記積層フィルムが光選択透過フィルターである場合には、基材の少なくとも片面に光選択透過層が形成され、かつ光選択透過層を積層するときに、基材の表面に光選択透過層の非形成部(縁)を有してなるものであることが好ましい。すなわち、上記光選択透過フィルターは、光選択透過層の積層時に、光選択透過層積層部位の周囲に光選択透過層が積層されていない縁が形成されていることが好ましい。光選択透過層及び光選択透過フィルターについては、後に詳述する。
上記機能膜非形成部は、機能膜形成部の周囲に存在してなることが好ましい。機能膜形成部の周囲に機能膜非形成部が存在することにより、基材と機能膜との剥離を抑制することができる。「機能膜の周囲」とは、基材を平面視した場合の周囲であり、機能膜非形成部が機能膜を囲むように形成されることとなる。なお、後述するように、基材となるフィルムの上に機能膜を複数形成する(例えば、碁盤目状に形成する)場合は、個々の機能膜の周りに機能膜非形成部が設けられることとなる。
上記機能膜の周囲に該機能膜が配置されていない領域(縁)が基材表面に形成されている場合、
上記基材は、複数の機能膜形成部を有し、かつ該複数の機能膜形成部の間に機能膜非形成部が存在することが好ましい。また、該機能膜は、複数の領域に分かれて、碁盤目状に配置されていることが好ましい。これによれば、機能膜が形成された複数の領域の間に機能膜の非形成部を有することとなるため、樹脂フィルムから構成される基材と機能膜とが剥離することをより抑制することができる。また、機能膜の形成時に所望の面積に分けて形成しているため、例えば、一つの積層フィルムを分割して使用するような場合、分割を行う領域ごとに機能膜を形成することによって、分割の際に生じるおそれのある剥離をより抑制することができる。また、この場合、上記機能膜形成部は、碁盤目状に配置されていることが好ましい。なお、機能膜が、碁盤目状に形成されているとは、機能膜が形成された複数の領域を、縦横に並べて配置している状態をいう。また、機能膜形成部の形状は、正方形に限られることはなく、例えば、円状、多角形状でもよく特に限定されるものではない。
上記基材は、有機材料からなる樹脂フィルムであれば特に限定されず、従来公知の熱可塑性又は熱硬化性樹脂フィルムを用いることができる。中でも、基材は、耐リフロー性樹脂フィルムであることが好ましい。これによれば、基材の耐熱性をより向上させることができ、機能膜形成後の基材が熱変形(カール)することを抑制することができる。基材が熱変形することを抑制することにより、基材と機能膜との剥離をより抑制することができる。
上記耐リフロー性樹脂フィルムとは、250℃・3min、又は、200℃・5hrで形状を保持するものであることが好ましい。より好ましくは、250℃・3min、かつ200℃・5hrで形状を保持するものである。更に好ましくは、260℃・3min、又は、200℃・5hrで形状を保持するものであり、特に好ましくは、260℃・3min、かつ200℃・5hrで形状を保持するものである。耐リフロー性がない場合は、上記条件で保持した場合に、フィルムが溶解し形状を保てず、蒸着することができなかったり、形状が変化して実装することができなくなるおそれがある。本発明において耐リフロー性を有するとは、熱を加える前後での形状・寸法変化が、元の形状・寸法の20%以下であることをいう。形状・寸法変化として好ましくは、5%以下であり、更に好ましくは、1%以下である。好ましくは、上記加熱を加えた場合に、目視によりカールの生成が認められないことである。
なお、250℃・3minで形状を保持しているとは、実装時の耐リフロー性が充分であることを示し、200℃・5hrで形状を保持しているとは、積層フィルムを構成する基材に機能膜を積層させるときの耐リフロー性が充分であることを示す。
上記耐リフロー性樹脂フィルムの耐熱温度としては、10%分解温度が200℃以上であることが好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上が更に好ましく、350℃以上が最も好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、80℃以上であることが好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましく、250℃以上が最も好ましい。
上記加熱処理した耐リフロー性樹脂フィルムが更なる耐熱性を得る観点からは、上記耐リフロー性樹脂フィルムが、フッ素化芳香族ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂、含フッ素高分子化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。これによれば、より耐リフロー性を高め、熱変形を抑制することができる。また、熱変形を抑制することができることから、機能膜と基材とが剥離することも抑制することができる。
上記耐リフロー性樹脂フィルムは、複数の有機材料から、1種又は2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、混合したり、積層したりして用いることができる。中でも、2種以上を積層させて基材が多層構造を有する形態とすると、用いる材料の複数の特性が発揮されて、基材として好適に用いることができる。上記有機材料からなる樹脂フィルムは、取り扱いやすい点で好適である。樹脂フィルムを用いることで、ガラス等の無機材料にはできない複雑な加工を安価に行うことができる。また、加工性、成形性、柔軟性、経済性、強度(割れにくさ)等の観点からも樹脂フィルムを用いることが好適である。上記耐リフロー性樹脂フィルムは、(1)フッ素化芳香族ポリマー、(2)多環芳香族ポリマー、(3)ポリイミド樹脂、(4)含フッ素高分子化合物及び(5)エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。これによれば、より耐リフロー性を向上させることができ、例えば、積層フィルムをレンズユニットに実装する場合、耐熱性の高いレンズユニットを形成することができる。このように、上記積層フィルムは、フッ素化芳香族ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂、含フッ素高分子化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む積層フィルムもまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記(1)〜(5)として特に好ましくは、
(1)フッ素化芳香族ポリマーとしては、下記式(1−1)、(1−2):
Figure 0005284636
(上記一般式(1−1)中、Rは炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。また、Zは2価の鎖又は直接結合を表す。x及びyは0以上の整数であり、x+y=1〜8を満たし、同一又は異なって芳香族環に結合しているフッ素原子の数を表す。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がさらに好ましい。
上記一般式(1−2)中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。Rは、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がさらに好ましい。)で表されるポリエーテルケトン、特にフッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)、
(2)多環芳香族ポリマーとしては、下記式(2):
Figure 0005284636
(式中、nは、繰り返し数を表し2〜1000の整数である。)で表されるポリエチレンナフタレート(PEN)。具体的には、帝人デュポンフィルム社(テオネックスQ83)、厚さ25μm又は75μm、融点269℃、
(3)ポリイミド樹脂としては、下記式(3):
Figure 0005284636
(式中、nは0〜4の整数、pは0又は1であり、n+pは1〜5の整数である。)で表されるポリイミド樹脂、具体的には、三菱ガス化学社製、ネオプリムL−3430、厚さ50μm又は100μm、
(4)含フッ素高分子化合物としては、下記式(4):
Figure 0005284636
で表される4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物(6FPA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFBD)とを反応させて重合体溶液を得て、その後加熱して得られるフッ素化ポリイミド樹脂(F−PI)、(膜厚50μm);
テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ダイキン社製 ネオフロンTMフィルムPFA、50μm、ニチアス社製 ナフロンPFAシート,T/♯9000−PFA、(特に、ダイキン社製 ネオフロンTMフィルムPFA、50μmが好ましい)等のPFAフィルム、
(5)エポキシ樹脂としては、熱硬化性エポキシ樹脂組成物、光硬化性エポキシ樹脂組成物が好ましい。具体的には、大阪ガスケミカル社製フルオレンエポキシ(オンコートEX−1)、ジャパンエポキシレジン社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL)、ジャパンエポキシレジン社製水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコートYX8000)、ダイセル工業社製脂環式液状エポキシ樹脂(セロキサイド2021)が好ましい。
エポキシ樹脂は、可とう性を有する成分(可とう性成分)を含むことが好適である。具体的には、ジャパンエポキシレジン社製YED−216D、ジャパンエポキシレジン社製YL−7217、ジャパンエポキシレジン社製YL−7170、ダイセル工業社製EHPE−3150、ダイセル工業社製セロキサイド2081が好ましい。
積層フィルムを構成する材料の(1)〜(5)の詳細については、後に説明する。
〔基材の加熱処理〕
上記基材は、機能膜が形成される前に加熱処理された樹脂フィルムであることが好ましい。すなわち、基材は、加熱処理された樹脂フィルムであることが好ましく、上記積層フィルムは、加熱処理を行った樹脂フィルムを含むことが好ましい。加熱処理されて形成された基材は優れた耐熱性を有し、熱による変形がおこりにくいため、耐剥離性が向上した積層フィルムを得ることができる。加熱処理とは、熱プレス、熱ロール、延伸処理等を行うことである。積層フィルムは、種々の用途に用いる場合に、加熱されることがあり、例えば、レンズユニット等の光学用途においては、通常ハンダ付けにより装着(実装)される。加熱処理した樹脂フィルムを基材として用いると、装着される際の熱変形が充分に抑制され、カールすることがなく好ましい。言い換えると、このような積層フィルムは、加熱処理された樹脂フィルムに機能膜を形成した後の熱変形、並びに、変形に基づく剥離の問題を解消することができる。また、加熱処理により、基材の機械的強度向上、耐熱性向上、密着性向上等の効果がある。基材として用いる、加熱処理された樹脂フィルムは、フッ素化芳香族ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂、含フッ素高分子化合物及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
加熱処理条件としては、処理温度が樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)付近以上の温度であることが好ましい。より好ましくは、Tg以上の温度である。すなわち、上記加熱処理は、樹脂フィルムのガラス転移温度以上の温度で加熱する処理であることが好ましい。また、処理温度の温度範囲としては、Tg付近以上でありTg付近+150℃以下である温度範囲が好ましい。より好ましくは、Tg以上でありTg付近+150℃以下である温度範囲である。なお、「Tg付近」とは、ガラス転移温度に対して15℃以内の範囲にある温度のことである。
上記機能膜としては、例えば、所望の光を選択的に透過し、それ以外の光をカットする機能を有する光選択透過層(赤外カット層、紫外カット層、紫外線・赤外線カット層等)が好ましいが、その他の機能を有するものであってもよい。また、光選択透過層が、その他の機能を併せ持っていてもよい。上記機能膜は、機能性材料で構成された膜であり、積層フィルムに付与する機能によって適宜選択することができる。例えば、光選択透過層、強靱性を有する層、補強層、親水層、撥水層、反射防止層、位相差層、屈折率調節層、粘着層、導電層、絶縁層、光学補償層等から適宜選択することができる。また、光選択透過層、反射防止層、等価屈折率層、ハードコート層、光学補償層等であることがより好ましい。また、上記機能膜は、異なる機能を有する層が積層されたものであってもよい。例えば、上記積層フィルムが基材上に光選択透過層を有する場合に、基材と光選択透過層との間に、基材と光選択透過層との中間の熱膨張率を有する層、積層フィルムにかかる応力等を吸収するバッファー層(中間層、緩和層)等の機能膜を備えていてもよい。機能膜及び機能性材料については後に詳述する。
上記機能膜は、無機材料からなる無機膜である場合に、本発明の効果が優れる点で好ましい。一般的に、無機材料は熱膨張率が有機膜(有機材料で構成される膜)と比較して小さいため、成膜時及び/又は成膜後(例えば、蒸着時、実装時等)に基材からの剥離が起こりやすいが、本発明により抑制することができる。すなわち、上記基材は、樹脂フィルムからなり、上記機能膜は、無機材料からなる無機膜である場合に、特に好ましい。
上記機能膜は、各種用途に応じて適宜選択することができる。例えば、積層フィルムが機能膜により赤外線及び/又は紫外線を低減させる光選択透過フィルターである場合には、該機能膜は、無機材料が積層された光選択透過層であることが好ましい。
上記機能膜が無機材料から構成される無機層である場合、無機層は気相成膜法により形成されることが好ましい。気相成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等が挙げられる。上記気相成膜法として、好ましくは、真空蒸着法、スパッタリング法である。中でも、真空蒸着法がより好ましい。上記無機層が光選択透過層である場合、該無機層は、多層膜であることが好ましい。このように、上記光選択透過層が無機材料から構成される場合、多層蒸着膜であることが好ましい。また、結晶性膜が非晶性膜より好ましい。光選択透過層としてより好ましい形態としては、結晶性の無機層から構成される多層蒸着膜である。
機能膜非形成部を備えることによる剥離の抑制、密着性の向上の効果は、機能膜の膜厚が厚い方が高く、特に膜厚が1μmを超える場合に顕著となる。また、基材となるフィルムと機能膜の熱膨張係数の差が大きいほど、本発明の効果は高くなる。したがって、本発明の効果が顕著である点で、上記機能膜の膜厚が1μm以上であることが好ましく、また、基材が樹脂フィルムであり機能膜が無機膜である組み合わせが好ましく、更に、基材が樹脂フィルムであり機能膜が無機膜である組み合わせにおいて機能膜の膜厚が1μm以上であることが特に好ましい。機能膜の膜厚の上限としては特に限定されないが、本発明の上記効果に優れる点で、膜厚の上限が20μmが好ましく、更に10μmが好ましい。
上記機能膜は、120℃未満の温度で形成されたものであることが好ましい。より好ましくは、100℃以下であり、更に好ましくは90℃以下である。これによれば、基材へのダメージを少なくすることができる。これによれば、より高い耐熱性を有する積層フィルムとすることができる。また、上記基材の少なくとも片面に、機能膜を積層してなる積層フィルムの製造方法は、機能膜を120℃以下の温度で形成する工程を含むことが好ましい。より好ましくは、100℃以下の温度であり、更に好ましくは90℃以下の温度である。
上記積層フィルムは、基材の両面に機能膜を有するものであることが好ましい。これによれば、積層フィルムの両面に機能性材料が積層された機能膜を有するため、より充実した機能を付与されたものとなり、種々の用途により好適な積層フィルムとすることができる。例えば、蒸着により機能膜を形成する場合には、基材を昇温して両面に機能性材料を蒸着させることになる。この場合、機能膜を形成した基材の温度を室温に戻した際に、熱膨張率の相違により応力が発生するおそれがある。そこで、基材の両面に機能膜を形成していることによって、積層フィルムにかかる応力の均一化を図り、積層フィルムがカールすることを防ぐことができる。また、積層フィルムをレンズユニットに実装する際にはハンダ付け等を用いるが、このとき、積層フィルムが加熱した際の熱変形についても抑制することができる。そして、熱変形を抑制することができることから、機能膜と基材とが剥離することも抑制することができる。
上記機能膜は、積層フィルムにかかる応力を均一にする観点からは、基材の両面に同様の構成を有する機能膜を配置することが好ましい。すなわち、上記積層フィルムは、基材の両面に機能膜を有し、上記機能膜形成部は、基材の片面における配置が、他方の面における配置と実質的に同じである形態も、本発明の好ましい形態の一つである。これによれば、両面に配置された機能膜と基材との間に発生する応力をより均一にすることができるため、より剥離することを抑制することができる。例えば、加熱処理された耐リフロー性樹脂フィルムの両面に同様の構成を有する光選択透過層を配置することによって、積層フィルムにかかる応力による熱変形を、より抑制することができる。また、熱変形に伴う基材と機能膜との剥離も抑制することができる。なお、「実質的に同じ」とは、完全に同じである場合のみならず、本発明の効果を奏する程度に同じであることを意味する。例えば、基材の両面に、略同じ幅の縁を有する形態や、略同じ形状の機能膜が基材の両面で同様に碁盤目状に配置されている形態等が挙げられる。
上記積層フィルムは、基材の両面に機能膜を有することにより、例えば、該積層フィルムを実装する際の耐熱性を向上させることができ、リフローブルカメラモジュール等として好適に用いることができる。また、基材の両面に機能膜(例えば、無機酸化物からなる膜等)を蒸着して形成する場合、蒸着時における耐熱性が必要となり、この点からも、基材が耐リフロー性樹脂フィルムで構成されていることの利点を発揮できる。なお、耐リフロー性樹脂フィルムとは、ハンダ付け工程の加熱に耐える樹脂フィルムであることをいい、カメラモジュール次世代仕様として有望視されているReflowable 仕様のフィルムである。このように、積層フィルムが充分な耐熱性を有することにより、自動実装化が可能となり、実装コストが充分に低減され、各種用途に好適に用いることができる。
以下に機能膜の形成方法について説明する。
上記機能膜が積層されていない縁(機能膜非形成部ともいう。)を設けるためには、スクリーン、蒸着用テープ等の機能膜の付着を防ぐものを用いることが好ましい。すなわち、機能膜積層部位の周囲をスクリーン及び/又は蒸着用テープでシールド(被覆)した後に機能性材料の積層を行うことが好ましい。このように、基材と機能膜(例えば、光選択透過層等)とを必須とする積層フィルムの製造方法であって、該製造方法は、スクリーン又は蒸着用テープを用いて機能膜非形成部を形成する積層フィルムの製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。機能膜の材料や形成方法等は上述したものを好適に用いることができる。形成方法としては、中でも、真空蒸着法、スパッタリング法が好ましい。すなわち、基材の少なくとも片面に機能膜を有する積層フィルムであって、上記製造方法は、基材上にスクリーン又は蒸着用テープを配置し、真空蒸着法又はスパッタリング法により機能膜を形成する工程を含む積層フィルムの製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。また、上記機能膜は、気相成膜法により形成されたものであることが好ましい。例えば、一辺が1〜200mmの正方形の基材を並べて配置することが好ましく、より好ましくは1〜50mmである。
上記基材が有機材料、具体的には、樹脂組成物である場合には、未硬化、半硬化状態の基材(樹脂組成物)に、上記誘電体層等を蒸着した後、基材を硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に、基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、樹脂組成物と誘電体層等との熱膨張係数差が問題にならず、積層フィルムの変形(カール)を抑制することができる。
上記加熱処理した基材を用いる場合には、上記積層フィルムは、上記条件で加熱処理した基材に、気相成膜法により機能膜を形成して得るものであることが好ましい。すなわち、加熱処理した樹脂フィルムに機能膜を形成する積層フィルムの製造方法であって、加熱処理した樹脂フィルムは、該樹脂フィルムのガラス転移温度付近以上の温度で加熱処理されたものであり、該機能膜は、気相成膜法により形成される積層フィルムの製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記樹脂フィルムからなる基材の少なくとも片面に機能膜を形成してなる積層フィルムの製造方法は、樹脂フィルムからなる基材に機能膜を形成する工程の前に、該樹脂フィルムを加熱処理する工程を含むことが好ましい。更に、上記積層フィルムの製造方法は、樹脂フィルムをTg付近以上で加熱処理した後、機能膜を気相成膜法により形成する工程を含むことが好ましい。加熱処理の温度、気相成膜法としては、上述のとおりである。また、積層フィルムを光選択透過フィルターとする場合には、上記機能膜が光を選択的に低減する光選択透過層であることが好ましい。
本発明はまた、上記積層フィルムを細断して得られる積層体でもある。積層体は、所望の形状に細断された基材の少なくとも片面に機能膜が配置されたものとなる。この場合、上記積層体の形態としては、機能膜非形成部を有する形態と、機能膜非形成部を有しない形態とが挙げられる。積層体が機能膜非形成部を有する場合、細断する前の基材における機能膜非形成部がそのまま残存したものとなる。また、積層体が機能膜形成部を有しない場合、機能膜形成部をカットすることにより細断することにより積層体を形成する。上記した2つの形態(機能膜非形成部を有する形態及び機能膜非形成部を有しない形態)のどちらの形態であっても、本発明のように、積層フィルムを構成する基材が、機能膜非形成部を有する場合、基材と機能膜との密着性が向上していることによって、細断することにより得られた積層体も密着性に優れたものとなる。上記積層体は、光選択透過フィルターとして好適に用いることができる。上記積層体は、機能膜が光選択透過層であることによって、所望の波長の光を効果的に低減し、かつ基材と機能膜との密着性に優れた好適な光選択透過フィルターとすることができる。すなわち、上記積層体は光選択透過フィルターであって、上記機能膜は、光選択透過層である形態も本発明の好ましい形態の一つである。
〔積層体の作製方法〕
上記積層体の形成方法としては、基材を蒸着装置等の中に設置し、その基材の上(片面又は両面)に機能膜を蒸着により形成して密着させる。これにより、機能膜非形成部を有する積層フィルムを得る。その後、基材及び機能膜からなる部分(基材上に光選択透過層が形成された部分)を含んだ適宜必要なサイズに切り出し、積層体とする。経済性の観点からは、基材上の積層体の面積が大きい(基材と機能膜との面積が近い)ほど、多数個の積層体を切り出せるため好ましい。積層体の面内における特性を均一化する観点からは、基材上の機能膜の面積が小さいほど、機能膜の膜厚や平滑性にむらが生じないため好ましい。基材のサイズと、その上に形成する機能膜の面積や形状は、上記の観点から適宜設定することが好ましい。積層体の切り出し方法は、レーザーカット、打ち抜き法、ダイシングカットなどを用いることができる。量産の観点からは、打ち抜き法がより好ましい。また、基材が有機材料からなる樹脂フィルムである場合、どのような切り出し方法を用いても、基材の欠け、われ等が生じないため好ましい。更に、基材が無機材料からなる場合では切り出しが困難な、円形、多角形等の形状にも対応できる。上述したことから、有機材料からなる基材に光選択透過層を蒸着し、打ち抜き法により、積層体を得ることが最も好ましい。すなわち、積層体を製造する方法であって、該製造方法は、有機材料からなる基材に機能膜を蒸着により形成する工程と、蒸着を行った基材を打ち抜き法により切り出す工程とを含む積層体の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記では、機能膜の形成方法を蒸着法による場合について説明したが、他の成膜法の場合についても同様に適用できる。また、上記では機能膜が形成された部分から、機能膜形成部を切り出して積層体を作製する方法を示したが、基材表面上に機能膜非形成物を介して機能膜が複数個形成されてなる場合に機能膜非形成部を切り出す場合についても同様に適用し得る。
〔基材の材料〕
以下、本発明の積層フィルムの基材として好適に用いることができる、(1)フッ素化芳香族ポリマー、(2)多環芳香族ポリマー、(3)ポリイミド樹脂、(4)含フッ素高分子化合物及び(5)エポキシ樹脂について説明する。これらは、単独で用いてもよいし、積層させてもよい。また、透明性を維持するように混合体として用いてもよい。この場合、液状にして混合してもよい。
(1)フッ素化芳香族ポリマー
上記フッ素化芳香族ポリマーとしては、少なくとも1つ以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位により構成された重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子を有するポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドエーテル、ポリアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエステル等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらのフッ素化芳香族ポリマーの1種を含有するものであってもよく、2種以上を含有するものであってもよい。
本発明のフッ素化芳香族ポリマーとしては、上記したものの中でも、少なくとも1つ以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合を含む繰り返し単位を必須部位として有する重合体であることが好ましく、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を含むフッ素原子を有するポリアリールエーテルであることがより好ましい。なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
Figure 0005284636
上記一般式(1−1)中、Rは炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。また、Zは2価の鎖又は直接結合を表す。x及びyは0以上の整数であり、x+y=1〜8を満たし、同一又は異なって芳香族環に結合しているフッ素原子の数を表す。nは、重合度を表わし、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がさらに好ましい。
上記一般式(1−2)中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。Rは、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。nは、重合度を表わし、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がさらに好ましい。
上記一般式(1−1)において、x+yは2〜8の範囲内が好ましく、4〜8の範囲内がさらに好ましい。また、エーテル構造部分(−O−R−O−)が芳香族環に結合している位置については、Zに対してパラ位に結合していることが好ましい。
上記一般式(1−1)及び(1−2)において、R及びRは2価の有機鎖であるが、下記の構造式群(5)で表されるいずれか一つ、又は、その組み合わせの有機鎖であることが好ましい。
Figure 0005284636
(式中、Y〜Yは、同一又は異なって水素基又は置換基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アリールチオ基を表す。)
上記R及びRのより好ましい、具体例としては、下記の構造式群(6)で表される有機鎖が挙げられる。
Figure 0005284636
上記一般式(1−1)において、Zは、2価の鎖又は直接結合していることを表す。該2価の鎖としては、例えば、下記構造式群(7)(構造式(7−1)〜(7−13))で表される鎖であることが好ましい。
Figure 0005284636
(式中、Xは、炭素数1〜50の2価の有機鎖である。)
上記Xは、例えば、構造式群(6)で表される有機鎖が挙げられ、その中でもジフェニルエーテル鎖、ビスフェノールA鎖、ビスフェノールF鎖、フルオレン鎖が好ましい。
上記一般式(1−2)中のRにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基等が好適である。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−、m−又はp−トリル基、2,3−又は2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記Rとしては、これらのうち、置換基を有していてもよいアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアミノ基が好ましい。ただし、Rには、2重結合若しくは3重結合が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
上記一般式(1−2)中のRにおける置換基としては、上述のような炭素数1〜12のアルキル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;シアノ基、ニトロ基、カルボキシエステル基等が好適である。また、これら置換基の水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよい。これらの中でも、好ましくは、ハロゲン原子、水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びカルボキシエステル基である。
(2)多環芳香族ポリマー
主骨格として、ナフタレン環、フルオレン環等の2つ以上の連結した芳香環をモノマーユニットに有する化合物であることが好ましい。
上記多環芳香族ポリマーとしては、2つ以上の芳香環が、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合により連結されているものである。具体的には、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル(ポリエチレンナフタレート)であることが好適である。このようなポリエチレンナフタレートとしては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのホモポリマーが好適であるが、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の一部(30モル%未満)を2,7−、1,5−、1,7−その他のナフタレンジカルボン酸の異性体或はテレフタル酸或はイソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の他の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環属族ジカルボン酸;アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等のオキシ酸等の他の二官能性カルボン酸で置き換えてもよい。
更に、エチレングリコール成分の一部を例えばトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の他の多官能化合物の1種以上で置換して30モル%未満の範囲で共重合させたコポリマーであってもよい。
(3)ポリイミド樹脂
上記ポリイミド樹脂としては、透明性を有し、イミド結合を有する化合物であれば限定されないが、下記式(3):
Figure 0005284636
(式中、nは0〜4の整数、pは0又は1であり、n+pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位を含むポリイミド樹脂であることが好ましい。
(4)含フッ素高分子化合物
上記含フッ素高分子化合物としては、分子中に少なくとも2つのシクロヘキシル環と2つのフルオロアルキル基を含有する含フッ素脂環式ジアミン又は含フッ素芳香族ジアミンを少なくとも単量体の一部に使用した含フッ素高分子化合物であることが好ましい。
具体的には、下記式(8−1)〜(8−4):
Figure 0005284636
(式中、Rは直鎖、分岐、脂環、芳香環、ヘテロ環から選ばれた一種以上の2価の基であり、部分的にフッ素、酸素、窒素を含有しても良い)で表される繰り返し単位を含む含フッ素脂環式ポリアミド構造又は含フッ素芳香族ポリアミド構造を有する含フッ素高分子化合物、下記式(9−1)〜(9−4):
Figure 0005284636
(式中、Rは直鎖、分岐、脂環、芳香環、ヘテロ環から選ばれた一種以上の4価の基であり、部分的にフッ素、酸素、窒素を含有してもよく、Rは水素、炭素数1〜20の直鎖、分岐状のアルキル基であって、部分的にフッ素、酸素、窒素、不飽和結合、環状構造を含んでも良い。)で表される繰り返し単位を含む含フッ素脂環式ポリアミド酸、含フッ素芳香族ポリアミド酸、又は、これらのエステル体である含フッ素高分子化合物、下記式(10−1)〜(10−4):
Figure 0005284636
(式中、Rは直鎖、分岐、脂環、芳香環、ヘテロ環から選ばれた一種以上の4価の基であり、部分的にフッ素、酸素、窒素を含有しても良い)で表される繰り返し単位を含む含フッ素脂環式ポリイミド又は含フッ素芳香族ポリイミドである含フッ素高分子化合物が好ましい。
上記式(10−3)において更に好ましくは、Rが、下記式(11):
Figure 0005284636
で表される形態である。
また含フッ素高分子化合物の例として、テトラフルオロエチレンを含むものも好ましい。特に、透明性の観点からは、上述したテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ダイキン社製 ネオフロンTMフィルムPFA、50μm、ニチアス社製 ナフロンPFAシート,T/♯9000−PFA、(特に、ダイキン社製ネオフロンTMフィルムPFA、50μmが好ましい)等のPFAフィルムが好ましい。
(5)エポキシ樹脂
上記エポキシ樹脂としては、熱硬化性エポキシ樹脂組成物、光硬化性エポキシ樹脂組成物が好ましい。エポキシ樹脂は、可とう性を有する成分(可とう性成分)を含むことが好適である。可とう性成分を含むことにより、成形時や基板、型等からはずすときに割れない、形が崩れない、剥がれやすい、柔軟性がある等の一体感のある樹脂組成物とすることができる。上記可とう性成分としては、(1)有機樹脂成分とは異なる化合物からなる可とう性成分である形態、(2)有機樹脂成分の1種が可とう性成分である形態のいずれも好適に適用することができる。
具体的には、−〔−(CH−O−〕−で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数である。より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好ましい。例えば、ジャパンエポキシレジン社製のYED−216D、ジャパンエポキシレジン社製YL−7217(オキシアルキレン鎖がオキシブチレンである、エポキシ当量437、液状エポキシ樹脂(10℃以上);高分子量エポキシ樹脂(例えば、水添ビスフェノール(ジャパンエポキシレジン社製、YL−7170、エポキシ当量1000、固形水添エポキシ樹脂);脂環式固形エポキシ樹脂(ダイセル工業社製、EHPE−3150);脂環式液状エポキシ樹脂(ダイセル工業社製、セロキサイド2081);液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム等が好ましい。これらの中でもより好ましくは、末端の側鎖や主鎖骨格等に硬化性の官能基を含む化合物である。このように、上記可とう性成分は、硬化性の官能基を含んでなる樹脂組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。なお、上記「硬化性の官能基」とは「エポキシ基(グリシジル基)等の熱又は光で硬化する官能基(樹脂組成物を硬化反応させる基)」をいう。
以下に、本発明の積層フィルムが有していてもよい機能膜について説明する。
〔機能膜〕
以下に、本発明の積層フィルムが有していてもよい機能膜について説明する。
本発明に係る積層フィルムには、光選択透過層、等価屈折率膜、反射防止膜、ハードコート膜から選ばれる少なくとも一種の機能膜が基材の少なくとも片面に配置される場合もある。なお、光選択透過層については、後に詳述する。
〈等価屈折率膜〉
本発明に用いられる等価屈折率膜とは、上記透明基板(基材)とほぼ同一の等価屈折率を有する膜である。これら等価屈折率膜としては、例えば、シリカ層/アルミナ層/シリカ層の三層からなるアルミナ層を中心とした対称三層膜を挙げることができる。なお、上記対称三層膜を等価屈折率膜として用いる場合には、各層の膜厚を調整することで屈折率を透明基板とほぼ同一とすることができる。
〈反射防止膜〉
本発明に用いられる反射防止膜とは、本発明に係る光選択透過フィルターに入射した光の反射を防止することにより透過率を向上させ、効率よく入射光を利用する機能を有する膜をいう。反射防止膜として用いることができる材料としては、例えば酸化ジルコニウム、アルミナ、フッ化マグネシウムなどが挙げられる。反射防止膜は、例えば、これら材料のいずれか一つの材料からなる一層、又は、これら材料からなる複数の層を組合わせた多層膜などが挙げられる。
〈ハードコート膜〉
本発明に用いられるハードコート膜とは、高硬度の膜であって、本発明に係る光選択透過フィルターの耐傷付き性を向上させる機能を有する膜をいう。
上記ハードコート膜に用いることができる材料としては、例えば、有機系材料としてシリコーン系ハードコート材、アクリレート系ハードコート材、オキセタン系ハードコート材などを挙げることができる。また、無機系材料として水系シリケートハードコート材、水系アルミナハードコート材などを挙げることができる。また、上記材料などを組み合わせた等、有機無機ハイブリッド系ハードコート材なども挙げることができる。
〈膜形成方法〉
上述した機能膜を上記基材に有するようにするためには、例えば、上述のCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接上記基材上に機能膜を形成したり、上述の方法により得られた機能膜を基材上に接着剤で張り合わせることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を基材に塗布、乾燥して製膜することによっても得ることができる。
上記機能膜が原料物質を含有する液状組成物から得られる場合には、例えば、この液状組成物を透明基板上に直接塗布し、乾燥することによって得ることもできる。上記透明基板の一方の面に上記機能膜を有する場合は、その機能膜は1種であってもよいが、複数種の機能膜を積層してもよい。複数種の機能膜を積層する場合には、例えば、上述した膜形成方法によって、複数種の機能膜を積層することができる。
〔積層体が光選択透過フィルターである形態〕
上記積層体は、光選択透過フィルターとして好適に用いることができる。以下、積層体が光選択透過フィルターである場合について説明する。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては、10nm〜100μmの間のものであればよく、用いる用途により選択することができる。例えば、赤外光を低減させる光選択透過フィルターを得る場合は、780nm〜10μmの赤外光を低減させ、それ以外の光を透過するものであればよい。また、紫外光を低減させる光選択透過フィルターを得る場合は、380nm以下の紫外光を低減させ、それ以外の光を透過するものであればよい。
上記選択的に低減させる波長の透過率としては、10%以下が好ましい。より好ましくは、5% 以下であり、更に好ましくは、3%以下であり、最も好ましくは、実質的に0%である。積層フィルムを透過させる波長の透過率としては、70%以上が好ましい。より好ましくは、75%以上であり、更に好ましくは、80%以上であり、特に好ましくは、85%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。
上記光選択透過フィルターは、選択的に低減させる波長以外の波長(すなわち、積層フィルムを透過する波長)の透過率が一定であることが好ましい。特に、カメラモジュールや、撮像レンズのレンズユニットにおける光ノイズを遮断するためのフィルター等の光学用途に用いる場合、可視光380〜780nmの透過率が可視光の全波長域において一定であることが好ましい。上記用途においては、可視光のうち、波長400〜600nmで、一定であることが特に好ましい。透過する光の強さが波長に依存せず一定であると、特定の波長の光に強弱が生じず、透過光が着色しないこととなる。したがって光選択透過フィルターを透過した光が着色せず、上記用途に好適に用いることができることとなる。
上記透過率としては高い方が好ましい。具体的には、85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上である。透過率が低いと、光選択透過フィルターを通過する光の強度が充分確保されず、上記用途に好適に用いることができないおそれがある。
上記光選択透過フィルターとして、より好ましくは、可視光のうち、波長400〜600nmで、全波長の透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上である。なお、反射又は吸収により所望の波長を遮断することが好ましい。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものであり、このような機能を有し、樹脂フィルムの少なくとも片面に機能膜を積層してなるものである限り、その構成、形態等は特に限定されないが、光をカットする機能を有する光選択透過層を基材の上に形成する形態が好ましい。光選択透過層としては、基材の上(入射光の入射する側)に低屈折率材料及び高屈折率材料を40〜60層(6μm)程度積層させた構造の多層膜(多層蒸着層、多層蒸着膜とも言う。)であることが好ましい。このような積層フィルムにおいては、低屈折率材料と高屈折率材料とを交互に積層させて、光選択透過層を形成し、赤外領域及び紫外領域の少なくとも一方の波長を選択的に反射させるとともに、入斜光と反射光の位相を半波長ずれるようにして、光の透過率を選択的に低減させることとなる。また、上記光選択透過層は、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜からなる光選択透過層(例えば、赤外線反射膜、紫外線反射膜又は紫外線・赤外線反射膜等。)であってもよい。このような誘電体多層膜を少なくとも透明基板(基材)の一方の面に有することにより、所望の波長の光を反射する能力に優れた積層フィルムとすることができる。なお、光選択透過層は、単層構造であっても多層構造であってもよく、基材の片面又は両面にあってもよい。
上記機能膜は、基材の少なくとも片面に光選択透過層として配置されることが好ましい。基材の少なくとも片面に光選択透過層が配置されていることから、簡易に、かつ所望の光選択透過性を付与することができるため積層フィルムの性能を向上させることができる。積層フィルムの構成としては、例えば、基材の両面に光選択透過層が配置されていてもよいし、基材の片面には光選択透過層が配置され、もう一方の面に他の機能を有する機能膜が積層された形態であってもよい。このように、基材の両側にそれぞれ異なった機能膜を形成していてもよいし、同じ機能膜を形成していてもよい。上記の中でも好ましくは、(1)加熱処理された樹脂フィルムの片側に光選択透過層が配置され、もう一方に反射防止層を形成した形態等が挙げられる。なお、上記機能膜は、それぞれの機能が最も発揮できる形態に積層されることが好ましい。なお、積層体が光選択透過フィルターである場合、上記機能膜は、光選択透過性を有することが好ましいが、光選択透過性を有していなくてもよい。例えば、耐リフロー性樹脂フィルムが光選択透過性を有する場合には、両面に配置される機能膜の両方が光選択透過性を有しないものであってもよく、積層体を構成するいずれかの部材によって光選択透過性が付与されていればよい。
〔光選択透過フィルターの好適な形態〕
上記光選択透過フィルターは、上述の構成であることが好ましく、選択的に透過率を低減させる波長としては、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、赤外線の透過率を選択的に低減する形態、紫外線の透過率を選択的に低減する形態、赤外線及び紫外線の両方の透過率を選択的に低減する形態が好ましい。具体的には、赤外カットフィルター、紫外カットフィルター、紫外線・赤外線カットフィルターである。
上記赤外カットフィルター(赤外線カットフィルター、IRカットフィルターともいう。)は、吸収又は反射により赤外線を選択的に低減する(遮断する)機能を有するフィルターである。赤外カットフィルターは、赤外線領域である780nm〜10μmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、780nm〜2.5μm、780〜1000nm、800nm〜1μm、又は、1〜1.5μmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である780nm〜2.5μmであることがより好ましい。
上記選択的に低減する波長の透過率、それ以外の波長の透過率としては、上述と同様であることが好ましい。すなわち、赤外カットフィルターは、780〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。その他(780〜1000nm以外の波長域以外)の波長域の透過率は、75%以上であることが好ましいが、フィルターの用途に応じて特定の波長域の透過率のみが高いものであってもよい。例えば、上記赤外カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下であり、可視光(380〜780nm)の透過率が85%以上であることが好適である。より好ましくは90%以上である。また、可視光の中でも400〜600nmの波長域の光の透過率が90%以上であることがより好適である。なお、上記赤外カットフィルターにおいては、その他(赤外線領域以外)の波長の透過率としては、より好ましくは、85%以上であり、更に好ましくは、90%以上である。
上記紫外カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、350nm以下であることが好ましい。より好ましくは、380nm以下である。
上記選択的に低減する波長の透過率、それ以外の波長の透過率としては、350nm以下である紫外線の透過率が5%以下であることが好ましい。より好ましくは、波長が380nm以下の紫外線透過率が5%以下である。
上記紫外線・赤外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲、該波長の透過率、それ以外の波長の透過率としては、上述と同様であることが好ましい。
上記紫外線・赤外線カットフィルターは、赤外線、紫外線以外の光の透過率は、高いほど好ましい。具体的には、可視光(380nm〜780nm)透過率が70%以上であることが好ましい。更に、紫外線・赤外線カットフィルターを透過した光に着色させない(特定の可視光を選択的に吸収しない)観点から、可視光の各波長域における透過率がほぼ一定であることが好ましい。特に、波長400〜600nmにおける各波長での光透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは、90%以上である。紫外線・赤外線カットフィルターの赤外線を遮断する機能としては、反射又は吸収により赤外線を遮断することが好ましく、より好ましくは赤外線を主に反射することである。また、赤外線のうち、少なくとも800〜1000nmの波長の光を遮断することが更に好ましい。
上記紫外線・赤外線カットフィルターは、撮像レンズ用における光ノイズを遮断するためのフィルターとして、特に好適に用いることができる。撮像レンズ用等における光ノイズ遮断を目的とする光選択透過フィルターとしては、可視光領域の400〜600nmにおける各波長での光透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは、90%以上である。また、紫外線領域の350nm以下の紫外線の透過率が5%未満であることが好ましい。特に380nm以下の紫外線の透過率が5%未満であることが好ましい。赤外線領域では、800nm〜1μmの波長の光を遮断することが好ましい。具体的には、800nm〜1μmにおける透過率が5%以下であることが好ましい。より好ましくは800nm〜1.5μmにおける透過率が5%以下であり、更に好ましくは800nm〜2.5μmにおける透過率が5%以下である。
上記光選択透過フィルターの物性を向上させる形態としては、基材に機能性材料を混合する方法等も挙げられる。これによれば、光選択透過フィルターに所望の機能を付与することができる。
上記光選択透過フィルターは、厚みが200μm未満であることが好ましい。光選択透過フィルターの厚みとしては、該光選択透過フィルターの最大厚みが200μm未満であることをいう。上記光選択透過フィルターの厚みとしてより好ましくは、薄膜化要求に対応し得る点で、100μm以下であり、更に好ましくは、90μm以下であり、特に好ましくは、75μm以下であり、最も好ましくは、50μm以下である。また、耐リフロー性、特に260℃の温度における耐熱性に優れる点で、上記光選択透過フィルターの厚みとして好ましくは、1μm以上であり、より好ましくは、10μm以上であり、更に好ましくは、30μm以上である。光選択透過フィルターの厚みの範囲としては、1〜90μmであることが好ましく、より好ましくは、10〜90μmであり、更に好ましくは、30〜90μmであり、特に好ましくは、30〜75μmであり、最も好ましくは、30〜60μmである。
上記光選択透過フィルターの厚みを200μm未満とすることにより、光選択透過フィルターを、小型化、軽量化することができ、種々の用途に好適に用いることができる。特に、光学部材等の光学用途において好適に用いることができる。光学用途においては、他の光学部材と同様に光選択透過フィルターも小型化、軽量化が強く求められており、従来用いられてきた厚みが200μm以上のフィルターでは、これらの要求を満たすことはできなかった。上記光選択透過フィルターは、厚みを200μm未満とすることで、薄膜化を達成でき、特にレンズユニットに用いた場合に、レンズユニットの低背化を実現することができる。言い換えると200μm未満の薄い光選択透過フィルターを光学部材として用いた場合に、光路を短縮することができ、該光学部材を小さくすることができる。具体的には、カメラモジュールにおいては、レンズと光選択透過フィルターとシーモスセンサーとを有することとなる。図1及び図2に、カメラモジュールの一例を、模式的に示した。なお、これらの図は、エレクトロニックジャーナル第81回テクニカルセミナー(Electronic Journal 第81回 Technical Seminar)資料を参照した。図1に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば、700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図2に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは、110%以下であり、更に好ましくは、105%以下である。
上記光選択透過層としては、低減する光の波長に応じて、構成等を適宜選択することができる。例えば、基材の上(入射光の入射する側)に低屈折率材料及び高屈折率材料を40〜60層(6μm)程度積層させた構造の多層膜であることが好ましい。特に、所望の光を充分に低減させたい場合、多層構造とすることが好ましい。多層構造とすることで、選択的に低減する波長の透過率を、当該全波長領域において容易に10%以下にすることができることとなる。言い換えると、透過させたい波長領域の透過率は高く、低減させたい波長領域の透過率は低いシャープな積層フィルムとすることができる。具体的には、積層フィルムが780nm〜10μmの赤外光を低減する赤外カットフィルターである場合、780nmを境に透過率が急変することとなる。例えば、780nm未満の光は透過率70%以上で透過し、780nm以上では透過率10%以下しか透過しない。このように、透過率がシャープに変わることで、例えば、カメラモジュールに用いる場合、シーモスセンサーに届く光から赤外光を優先的に除去できる等の利点がある。
上記多層膜を光選択透過層として有する積層フィルムにおいては、低屈折率材料と高屈折率材料とを交互に積層させて、光選択透過層を形成し、低減させたい波長(例えば、赤外領域や紫外領域等)の光を選択的に反射させるとともに、入斜光と反射光の位相を半波長ずれるようにして、光の透過率を選択的に低減させることとなる。また、上記光選択透過層は、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜からなる光選択透過層(例えば、赤外線反射膜、紫外線反射膜又は紫外線・赤外線反射膜等。)であってもよい。このような誘電体多層膜を少なくとも透明基板(基材)の一方の面に有することにより、所望の波長の光を選択的に反射する能力に優れた光選択透過フィルターとすることができる。なお、光選択透過層は、単層構造であっても多層構造であってもよく、基材の片面又は両面にあってもよい。光選択透過層については、後に詳述する。
まず、積層フィルムを光選択透過フィルターとして用いる場合に、機能膜として用いることが好ましい光選択透過層について説明する。
上記光選択透過層としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜、所望の波長の光を反射する機能を有する透明導電膜、所望の波長の光を吸収する機能を有する分散膜等を好適に用いることができる。無機多層膜としては、基材やその他の機能膜の上に、真空蒸着法、スパッタリング法等により形成してなる誘電体多層膜が好ましい。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。赤外線吸収性の分散膜としては、ITO等のナノ粒子や、有機色素を無機、有機バインダー(基材)に分散させた膜等が好ましい。
上記無機多層膜としては、誘電体多層膜が好ましく、より好ましくは、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した構成からなる。
〈誘電体層A〉
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウムなどが好適である。
〈誘電体層B〉
誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウムなどを少量含有させたものなどが好適である。
〈積層方法〉
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長λ(nm)の0.1λ〜0.5λの厚みである。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体多層膜の積層数は、透明基板の一方の面にのみ上記誘電体多層膜を有する場合は、通常10〜80層の範囲で、好ましくは25〜50層の範囲である。一方、透明基板の両面に上記誘電体層膜を有する場合は、上記誘電体層の積層数は、透明基板両面の積層数全体として、通常10〜80層の範囲であり、好ましくは25〜50層の範囲である。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。このような光選択透過フィルターにおいて、所望の波長の光をカットする機能は、上述したように、多層膜を形成する形態であることが好適であるが、その他の形態を有していてもよい。例えば、赤外線の透過率を低減させる赤外カットフィルターにおいては、(1)可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する形態や、(2)赤外吸収材料を含有する塗布膜を形成する形態、(3)基材に赤外線をカットする機能を持つ材料(原料)を用いる形態等が好適である。その他の波長を選択的に低減する場合でも同様であり、このような形態を用いることで、多層膜(多層蒸着層)の積層数を低減できたり省略したりすることができ、光選択透過フィルターの膜厚を薄くできる。例えば、上記(1)の形態においては、単層構造の薄膜とすることができる。したがって、光路を短縮することができ、カメラモジュール等の光学部材において有用なものとすることができる。基材として有機材料、具体的には、樹脂組成物を用いる場合は、多層膜を形成する際の基材のカールを抑制でき、低コスト化にも効果がある。
上記(1)可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する形態としては、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系、酸化タングステン系などからなる赤外反射機能を有する薄膜が好ましい。特に、SnやTi等の4価の金属元素又はフッ素を0.1〜20原子%(/インジウム)の割合で固溶してなるIn系酸化物;Sb、P等の5価の金属元素又はフッ素を0.1〜20原子%(/スズ)の割合で固溶してなるSnO系酸化物;B、Al、In等の3価金属元素又は4価金属元素又はフッ素を0.1〜20原子%(/亜鉛)の割合で固溶してなるZnO系酸化物;WOで示される酸化タングステン系;In、Znを金属成分とする複合酸化物(In−Zn系、In−Mg系、In−Sn系、Sn−Zn系等)等の可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する方法が好ましい。このような薄膜は、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することが好適である。
上記(2)赤外吸収材料を含有する塗布膜を形成する形態としては、上記酸化物からなる超微粒子を含む塗布膜、金属フタロシアニン等の赤外吸収色素を含有する塗布膜を形成する方法が好ましい。このような塗布膜は、超微粒子や赤外吸収色素を有し、有機バインダーや無機バインダーをバインダーとして用いた塗料を成膜する方法が好適である。
上記(3)基材に赤外線をカットする機能を持つ材料(原料)を用いる形態としては、基材を構成する有機材料(例えば、樹脂組成物)に上記酸化物や色素を練り込んでフィルム状に成型する方法が好適である。
上記光選択透過フィルターとしては、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の機能を有することが好ましい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の一つである赤外カットフィルターの場合、赤外カットフィルターは、紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態が好適である。
上記赤外カットフィルターが紫外線を遮蔽する機能を有する形態としては、(a)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の可視光を透過し、紫外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する方法、(b)上記酸化物からなる超微粒子を含む塗布膜、有機系紫外線吸収剤を含有する塗布膜を形成する方法、(c)紫外線を遮蔽する機能を持つ材料(原料)を用いる方法により紫外線を遮蔽する機能を付与することが好適である。
上記(a)における薄膜形成方法、(b)における成膜方法としては、それぞれ、上記(1)における薄膜形成方法、(2)における薄膜形成方法と同様であることが好ましい。(c)としては、基材を構成する有機材料に上記酸化物や色素を練り込んだ樹脂組成物をフィルム状に成型する方法が好適である。
上記光選択透過フィルターとしては、紫外カットフィルターが挙げられる。上記紫外カットフィルターが紫外線を遮蔽する機能を有する形態としては、酸化チタン系、酸化亜鉛系、酸化セリウム系、酸化鉄系などの紫外線吸収機能を有する材料からなる薄膜が好ましい。中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムにCu、Ag、Mn、Bi、Co、Fe、Niからなる群から選ばれる1種以上の金属元素を0.1〜20原子%の割合で固溶してなる酸化物が好ましい。
上記光選択透過フィルターとしては、紫外線・赤外線カットフィルターが挙げられる。上記紫外カットフィルターが紫外線を遮蔽する機能を有する形態としては、上述した誘電体層(A)と(B)の積層構造が好ましい。また、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系、酸化タングステン系などの赤外線カット機能を有する酸化物層と、酸化チタン系、酸化亜鉛系、酸化セリウム系、酸化鉄系などの紫外線カット機能に優れる層を積層する形態も好ましく用いることができる。
上記光選択透過フィルターの物性を向上させる方法としては、基材に機能性材料を混合する方法、基材に機能膜を積層させる方法等がある。基材及び機能膜は単独又は複数で用いることができ、また、1種又は2種以上を用いることができる。基材及び機能膜は、所望の機能が最も発揮できる配置、枚数及び種類を適宜選択して用いることができる。
上記光選択透過フィルターの物性を向上させる機能を有するものとしては、(I)強靱性を有する形態、(II)高い形状保持機能を有する形態、(III)高い応力緩和能力を有する形態、(IV)高い強度を有する形態、(V)低い表面抵抗を有する形態、(VI)易洗浄性を有する形態、(VII)結露防止能力を有する形態等が好適である。
上記(I)強靱性を有する形態としては、基材中に繊維状物質を含有させる方法、樹脂フィルムに繊維状物質を含む塗料を用いて成膜し、強靱性を有する層を形成する方法が好適である。基材中に繊維状物質を含有させる場合は、屈折率が基材と実質的に同じ繊維状物質を用いることが好ましく、強靱性を有する層を形成する場合は、屈折率が塗料と同じものが好ましい。なお、塗料としては、上述した有機バインダー、無機バインダーの1種又は2種以上が好適である。
上記繊維状物質は基材の面内方向に配向していることが好ましい。繊維状物質は、樹脂質、無機質、有機無機複合いずれでもよい。
上記(II)高い形状保持機能を有する形態としては、熱膨張率が蒸着層と基材の中間の材料を用いて機能膜を形成する形態が好ましい。具体的には、シリカ、ガラス等の無機超微粒子をエポキシ樹脂等の有機樹脂に分散含有させてなる有機無機複合体からなる機能層を形成する方法が好適である。このような機能膜は、基材等に塗布する方法等により形成することができる。上記機能膜の配置としては、例えば、光選択透過層(多層蒸着層)と基材との間に、熱膨張率が蒸着層と基材の中間の中間層を形成する形態が好適である。このような層を形成すると、高い形状保持機能を発揮し、蒸着によるカールが抑制されることとなる。
上記(III)高い応力緩和能力を有する形態としては、架橋度の低い無機材料からなる膜や有機無機複合材料からなる膜を形成し、機能膜とする形態が好ましい。このような形態とすることにより、多層膜を蒸着により形成する場合に、多層蒸着後の冷却時に基材にかかる応力や、光選択透過フィルターにかかる種々の応力を吸収することができる。
上記架橋度の低い無機層としては、テトラアルコキシシラン等の金属アルコキシドの加水分解縮合物が好適である。これらは、ガラス等の無機材料からなるものに比べて、縮合していない金属水酸基や金属アルコキシル基が多く、また、微粒子状の1次粒子からなる3次元ネットワーク構造からなる多孔膜であるため、種々の応力を緩和する能力が高く、応力緩和層として好適に用いることができる。
上記有機無機複合膜としては、アルキルトリメトキシシラン等の有機ケイ素化合物の加水分解縮合物や該縮合物と有機ポリマー骨格を有する材料が好適である。このような材料からなる膜は、圧縮強度が高くかつゴム状弾性に優れるため、種々の応力を緩和する能力が高く好ましい。また、金属酸化物等の無機物のナノ粒子が有機ポリマー中に分散含有されてなる複合体膜も同様の理由で好ましい。
上記(IV)高い強度を有する形態としては、金属の薄膜を形成する形態が好ましい。金属は靱性が高いために、金属薄膜を形成することで基材の補強ができ、補強層としての機能を発揮することができる。また、基材として無機材料、例えば、ガラスを用いた場合には、取り扱い時のガラスの割れの抑制することができ、機能膜として多層蒸着膜を形成する場合には、該多層蒸着膜の形成工程における応力緩和層としても効果がある。
具体的には、銀等の金属を蒸着等により形成することができる。このような金属薄膜は、多層蒸着層形成面、多層蒸着層形成面とは反対の面に形成することが好ましい。多層蒸着層形成工程における応力緩和層としては、前者がより好ましい。
上記(V)低い表面抵抗を有する形態としては、(A)透明導電性材料からなる超微粒子、有機系帯電防止剤を含む帯電防止膜を形成する方法、(B)上記透明導電性材料、有機系帯電防止剤を練り込んだ樹脂組成物をフィルム状に成型する方法、(C)上記透明導電性材料からなる薄膜を基材表面に形成する方法、(D)基材表面を親水化する方法が好ましい。基材として、有機材料、特に樹脂組成物を用いた場合には、樹脂表面の絶縁性が高いためにコンタミが付着しやすい光選択透過フィルターとなるが、帯電防止膜を形成する等上記(A)〜(D)の方法により、樹脂の表面抵抗を低下させ、コンタミが生じにくいものとすることができる。
上記(A)の方法としては、有機バインダー、無機バインダーをバインダーとした塗装を成膜する形態が好適であり、SnやTi等の4価の金属元素又はフッ素を固溶してなるIn系酸化物;Sb、P等の5価の金属元素又はフッ素を固溶してなるSnO系酸化物;B、Al、In等の3価金属元素又は4価金属元素又はフッ素を固溶してなるZnO系酸化物;In、Znを金属成分とする複合酸化物等の透明導電性材料からなる超微粒子、有機系帯電防止剤を形成することが好ましい。
上記(C)の薄膜を基材表面に形成する方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法が好適である。
上記(VI)易洗浄性を有する形態としては、基材表面を親水化することにより易洗浄性を付与することができる。光選択透過フィルターの製造後において、例えば、レンズユニットに組み込む際に、ほこりやゴミの付着を除去することが必要であり、容易にゴミが除去できることが好ましい。基材表面を親水化する方法としては、基材として有機材料、例えば、樹脂組成物を用いた場合、樹脂フィルムの表面をコロナ放電処理、プラズマ放電処理等の気相親水化処理をする方法;シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等のカップリング剤等で表面処理し、必要に応じて加水分解処理するという化学的な親水化処理をする方法;シリカ等の無機酸化物超微粒子を樹脂表層に含有させる方法等が好適である。
上記(VII)結露防止能力を有する形態としては、熱伝導性の低い材料により層を形成する方法、撥水処理する方法等が好適である。このように結露防止能力を有することで、基材がガラス等の無機薄膜(無機材料)の場合に、結露しやすく曇りやすいという無機薄膜の特性が低減され、カメラ用の部材において用いる場合、特に問題となる結露を防止することができる。
上記熱伝導性の低い材料により層(機能膜)を形成する方法としては、基材より熱伝導性が低い材料を用いて該機能膜を形成すればよく、例えば、樹脂膜を形成する方法が好適である。このような薄膜としては、無機薄膜露出面へ成膜することが好ましい。上記撥水処理する方法としては、基材上にフッ素系樹脂等の樹脂膜を形成する方法等が好適である。
上記(V)〜(VII)の機能を有する光選択透過フィルターは、特にレンズ用途をはじめ光学材料として用いる場合に効果がある。
上記(I)〜(VII)の機能を有する光選択透過フィルターは、基材として上述した種々の材料を好適に用いることができるが、上記(I)、(II)、(V)及び(VI)の形態は、基材が有機材料の場合に好適である。
上記光選択透過層は、上記した機能膜の形成方法により作製することができる。例えば、上述のCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接上記基材上に光選択透過層を形成したり、上述の方法により得られた光選択透過層を基材上に接着剤で張り合わせることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を基材に塗布、乾燥して製膜することによっても得ることができる。
上記方法により本発明に係る光選択透過フィルターを作製することにより、反りや誘電多層膜の割れの少ない光選択透過フィルターを得ることができる。このようにして得られた光選択透過フィルターは、波長633nmのレーザー光を照射した際に、レーザー光の照射中心から直径60mmの領域内に発生するニュートンリングの最大本数が通常は8本以下、好ましくは5本以下とすることができ、表面平滑性及び均一性に優れる。そのため、特に固体撮像素子の視感度補正に好適に用いることができる。
〔光選択透過フィルターの好ましい構成〕
本発明に係る光選択透過フィルターは、上記基材の少なくとも一方の面に、上記誘電体多層膜からなる光選択透過層を有し、上記基材の他方の面には他の機能膜を有することが好ましい。また、本発明に係る光選択透過フィルターは、上記基材の両面に上記誘電体多層膜からなる光選択透過層を有するものであってもよい。このような特徴を有することにより、本発明に係る光選択透過フィルターは、反りや誘電体多層膜の割れが少なくなる。
〔光選択透過フィルターの用途〕
上記光選択透過フィルターとしては、赤外カットフィルター、紫外カットフィルター、紫外線・赤外線カットフィルター等が挙げられる。本発明に係る赤外カットフィルターは、優れた赤外線カット能を有し、割れにくい。したがって自動車や建物などのガラスなどに装着される熱線カットフィルターなどとして有用であるのみならず、特に、デジタルスチルカメラや携帯電話用カメラなどのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正に有用である。本発明に係る紫外カットフィルターは、優れた紫外線カット能を有し、割れにくい。したがって、紫外線保護フィルター、視感度補正用等として有用である。本発明に係る紫外線・赤外線カットフィルターは、優れた赤外線及び紫外線カット能を有し、割れにくく、撮像レンズ用における光ノイズを遮断するためのフィルターとして有用である。
〔レンズユニット〕
上記光選択透過フィルターは、レンズユニットに備えられることが好ましい。すなわち、上記積層フィルムは、光を選択的に適言する光選択透過フィルターであり、該光選択透過フィルターとレンズとを備えるレンズユニットである形態も本発明の好ましい形態の一つである。レンズユニットは、上述した光選択透過フィルターを用いることにより、耐熱性を向上させることができる。また、光選択透過フィルターの厚みが200μm未満と薄い場合には、光路長が短くなり、レンズユニットを小さく、ユニットの厚みを薄くすることができ、カメラモジュール等の種々の用途において好適に用いることができる。レンズユニットの長さとしては、光選択透過フィルターがない場合を100とすると、120以下であることが好ましい。より好ましくは、110以下であり、更に好ましくは、105以下である。
上記レンズユニットにおいて、レンズは、耐リフロー性を有するもの(リフローレンズ)であることが好ましい。また、光選択透過フィルターは上述したいずれであってもよいが、耐リフロー性を有するものであることが好ましい。このように、レンズユニットを構成する光選択透過フィルター及びレンズが、耐リフロー性を有するものである形態は、本発明の好ましい形態の一つである。光選択透過フィルター及びレンズの両方が、充分な耐熱性を有することにより、自動実装化が可能となり、実装コストが充分に低減され、カメラモジュール等の光学用途に好適に用いることができる。
上記レンズは、アッベ数が45以上であることが好ましい。アッベ数を45以上とすることにより、光の分散が小さくなり、解像度があがり、光学特性に優れたものとすることができる。45未満であると、例えば、にじみがみられるおそれがあり、充分な光学特性を発揮せず、レンズユニットに好適な材料とはならないおそれがある。上記アッベ数として、より好ましくは、50以上であり、上記レンズユニットは、アッベ数が50以上のレンズを一つ以上有することが好ましい。上記アッベ数として、更に好ましくは、55以上であり、特に好ましくは、58以上であり、最も好ましくは、60以上である。
上記レンズユニットにおいて、レンズは1枚であってもよく、2枚以上であってもよい。1枚である場合、レンズのアッベ数としては、45以上であることが好ましい。2枚以上である場合、少なくとも1枚のレンズのアッベ数が45以上であればよく、その他のレンズはアッベ数45未満であってもよい。アッベ数が45以上のレンズとアッベ数が45未満のレンズとを組み合わせる場合において、アッベ数が50以上のレンズとアッベ数が40以下のレンズとを組み合わせる形態がより好ましい。アッベ数が50以上のレンズとアッベ数が40以下のレンズとを組み合わせることにより、解像度が向上し、レンズユニットに求められる特性を満足するという利点がある。
上記レンズは、厚みが1mm未満であることが好ましい。レンズの厚み(像を写す領域の最大厚み)を1mm未満とすることにより、厚みが200μm未満の光選択透過フィルターを用いることとあいまって、光路長を短くすることができ、レンズユニットをより小さくすることができる。レンズの厚みとしてより好ましくは、800μm未満であり、更に好ましくは、500μm未満である。また、光選択透過フィルターの厚みが100μm以下の光選択透過フィルターを用いることがより好ましい。
上記レンズを構成する材料としては、耐熱材質であり、耐リフロー性を有するものであることが好ましい。具体的には、有機材料、無機材料、有機・無機複合材料のいずれであってもよく、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。有機材料としては、有機樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂組成物がより好ましい。無機材料としては、ガラス等が好ましい。有機・無機複合材料としては、有機無機複合樹脂組成物が好ましい。これらの中でもより好ましくは、有機無機複合樹脂組成物である。
上記有機無機複合樹脂組成物としては、有機樹脂と無機微粒子又はメタロキサンポリマーとを含むものであることが好適である。有機樹脂としては、アッベ数が45以上のものである形態、熱硬化性樹脂である形態、脂環式エポキシ化合物を必須として含む形態、分子量が700以上のものである形態が好ましい。無機微粒子としては、湿式法により得られたものである形態、平均粒径が400nm以下のものである形態、溶液中に分散させたときの25℃におけるpHが3.4〜11のものである形態が好ましい。有機無機複合樹脂組成物としては、不飽和結合が10質量%以下である形態、可とう性成分を含む形態が好ましい。メタロキサンポリマーとしては、好適には、オルガノシロキサンポリマーが好ましい。オルガノシロキサンポリマーとしては、例えば、かご状構造又はラダー状構造等のポリシルセスキオキサン;ジフェニルシロキサン単位、ジアルキルシロキサン単位、アルキルフェニルシロキサン単位等の繰り返しの基本単位とする鎖状ポリシロキサン等が挙げられる。
上記レンズユニットとしては、上記光選択透過フィルターと2枚以上のレンズとを備え、該レンズは、厚みが1mm未満の耐リフロー性レンズであり、アッベ数50以上のレンズを一つ以上有することが好ましい。また、上記レンズユニットの厚みとしては、50mm以下であることが好ましい。このような厚みとすることにより、カメラモジュール等の種々の光学部材に好適に用いることができる。レンズユニットの厚みとしてより好ましくは、30mm以下であり、更に好ましくは、10mm以下である。
上記レンズユニットの小型化の観点からは、シーモスセンサーとレンズとの距離も重要である。シーモスセンサーとレンズとの距離とは、レンズの最も外側の表面とシーモスセンサーとの距離であり、光選択透過フィルターがシーモスセンサー側に装着されている場合は、該光選択透過フィルターとシーモスセンサーとの距離となる。
上記レンズユニットにおいては、例えば、図1のように光選択透過フィルターがシーモスセンサー側に配置される形態であることが好適であるが、光選択透過フィルターはレンズの間に配置されていてもよい。また、所望の波長の光を充分に遮断する点からは、レンズの上部と下部との両方に配置される形態、すなわち、光の進行方向に沿って、光選択透過フィルター、1枚又は2枚以上のレンズ、光選択透過フィルター、シーモスセンサーの順に配置される形態も好適である。
上記レンズユニットにおいては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されず、上記以外の構成を備えていてもよい。
本発明の積層フィルムは、上述の構成よりなり、基材と機能膜との密着性に優れた積層フィルムであり、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途に好適に用いられるものである。
1.基材
(1)FPEKフィルムの作成
<FPEKの合成>
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル) 16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン) 10.5部、炭酸カリウム 4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド) 90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマーを得た。反応式を下記に示す。フッ素化芳香族ポリマーは、下記反応式で得られた繰り返し単位を含むフッ素化芳香族ポリマーである。
Figure 0005284636
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm以上であった。
<基材の形成>
溶剤キャスト法により50μmのフィルム(以下、FPEKフィルムと言う。)を得た。なお、製膜について、溶剤キャスト法を用いた際の溶媒は、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒を用いた。
(2)ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)
(2−1)帝人デュポンフィルム社(テオネックスQ83)、厚さ25μm、融点269℃ (PENフィルム)を用いた。
(2−2)帝人デュポンフィルム社(テオネックスQ83)、厚さ75μm、融点269℃ (PENフィルム)を用いた。
(3)ポリイミドフィルム
(3−1)三菱ガス化学社製、ネオプリムL−3430 厚さ50μmを用いた。
(3−2)三菱ガス化学社製、ネオプリムL−3430 厚さ100μmを用いた。
(4)含フッ素高分子化合物フィルム
(4−1)フッ素化ポリイミドフィルムの作成
<ポリアミド酸溶液の合成>
50ml容器の三ツ口フラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル4.18g(13.1ミリモル)(略称:TFBD)、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物5.81g(13.1ミリモル)(略称:6FPA)、及び、N,N−ジメチルアセトアミド40gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で2日間、撹拌することによって、ポリアミド酸溶液を得た。
<基材の形成>
上記ポリアミド酸溶液を、シリコン基板(直径4ich、厚さ525μm)上にスピンコート法で塗布した(300rpmで60sec)。その後、窒素雰囲気中で、70℃で2時間、300℃で1時間加熱した。冷却後、基板から剥離し、約50μm厚のフッ素化ポリイミドフィルム(F−PIフィルムという。)を得た。
(4−2)PFAフィルム
ダイキン社製 ネオフロンTMフィルムPFA、厚み50μmを用いた。
(5)エポキシ樹脂
ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテル(商品名:エピコートYL7217、ジャパンエポキシレジン社製)19部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート828EL、ジャパンエポキシレジン社製)55部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコートYX8000、ジャパンエポキシレジン社製)22部、六フッ化リン系アリールスルホニウム塩(商品名:UVI−6992、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)4部を自公転式遠心混合装置(製品名:あわとり練太郎(登録商標)、シンキー社製)を用いて混合した。
〈基材の形成〉
上記エポキシ樹脂組成物を、キャスト法により50μm厚で成膜した後、高圧水銀ランプを光源とする露光機(製品名:MA−60F、ミカサ社製)を用いて、照度10mW/cmで15分間、すなわち露光エネルギー9J/cmの紫外線照射を行って、光硬化することでエポキシ樹脂フィルムを得た。
(6)ガラスフィルム
SCHOTT社製ガラスコード:D263、厚み30μmを用いた。
(7)PET T60フィルム
東レ社製 ルミラー、タイプ:T60(PET T60フィルムと言う。)を用いた。
(8)アートンフィルム
JSR社製 アートンF 厚み190μmを用いた。
2.基材の物性評価
上記基材(1)〜(8)について、屈折率測定、アッベ数測定、照射光波長500nmの透過率(%)測定、260℃耐熱評価及び曲げ試験を行った結果を表1に示す。各測定は、下記の方法により行った。
(屈折率測定、アッベ数測定)
DR−M2(アタゴ社製)を用いて20℃で測定を行った。
(透過率測定)
Shimadzu UV−3100(島津製作所製)を用いて500nmにおける透過率を測定した。厚みは上述のとおりである。
(260℃耐熱評価)
基材を2cm×1cmの形状とし、フィルムの上端(1cmの辺を上端とする。)を固定し、260℃、3minオーブンにて加熱を行った。基材の状態は、260℃耐熱性評価試験の前、後の基材の状態変化を目視観察することにより観察した。
加熱後の基材の状態を下記表1に示す。
(曲げ試験)
プラスチック製円錐型を用いて、図3に示すように、該円錐型に基材フィルムを沿わせて、基材に割れが生じる径(直径R)を求めた。基材フィルムの幅は10mmとした。厚みは上述のとおりである。また、基材と円錐型の接触部は、半円領域のみとした。R=30mmからスタートして、0.2mm/sで直径を縮めた。試験は25℃で行った。
表1に示す結果から、260℃耐熱評価において、(7)のPET及び(8)のアートンフィルムがとけ落ちたのに対し、(1)〜(6)の基材では殆ど変化なく、耐リフロー製を有し、リフロー工程に耐えることが明らかとなった。曲げ試験では、(6)のガラスフィルムは、R=10mmであり、非常に脆く割れやすいため、測定、搬送、線状、加工工程での取り扱い性が悪いといえる。(1)〜(5)、(7)及び(8)のフィルムはR<1mmであり、柔軟性に優れ、取り扱い性の面で有利である。
Figure 0005284636
<光選択透過層の形成>
基材フィルム上に光選択透過層を形成した。基材フィルムとしては上述した(1)〜(5)を用いた。図4は、光選択透過層の蒸着部分(形成部)と非蒸着部分(非形成部)を示す平面模式図である。図4に示すように、基材フィルムの周囲(縁)に蒸着用テープを貼り付けることによって、基材フィルムの中央部にのみ光選択透過層の蒸着を行った。基材フィルムは、一辺が60mmの正方形状である。このとき、シールを行った縁の幅は5mmである。光選択透過層の蒸着条件と得られた光選択透過フィルターについて表2及び表3に示す。
上記光選択透過層は、多層膜〔シリカ(SiO)層とチタニア(TiO)層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面50層、又は、片面25層ずつ両面に蒸着:計50層〕を蒸着することにより形成し、光選択透過層の厚みは、3〜7μmである。
まず、基材フィルムの片面のみに光選択等層を形成した場合と、両面に光選択透過層を形成した場合とを比較した結果について説明する。光選択透過層の蒸着温度は、180℃又は80℃である。表2に示すように、基材フィルムの片面のみに光選択透過層を形成した場合、いずれの基材においてもカールが生じたが、基材フィルムの両面に蒸着を行うことにより、(1)〜(5)に示すいずれの基材において、180℃、80℃の蒸着温度ともにカールすることを抑制することができた。これは、両面に蒸着することによって基材フィルムと光選択透過層との熱膨張率の差によって生じる応力を両面で均一にすることができたためと考えられる。なお、このときの蒸着用テープの配置形態は、後述する第一配置形態である。
Figure 0005284636
次に、光選択透過層の蒸着温度を変化させて各基材フィルムの両面に光選択透過層を蒸着した結果について説明する。蒸着温度は、それぞれ180℃、120℃、100℃、90℃、80℃及び65℃である。180℃及び120℃で蒸着を行った光選択透過フィルターでは、カールを生じさせることなく作製することができた。また、180℃、120℃で蒸着を行った光選択透過フィルターでは基材フィルムの表面にうねりが生じていたが、100℃、90℃、80℃及び65℃で蒸着した光選択透過フィルターでは、カール及びうねりの両方が生じず、光選択透過フィルター表面全体を平滑なものとすることができた。すなわち、各基材フィルムの両面に光選択透過層を形成した場合、120℃未満の温度で蒸着を行うことが好ましい。より好ましくは、100℃未満である。なお、このときの蒸着用テープの配置形態は、後述する第一配置形態である。
次に、基材フィルムとして(1)〜(5)を用い、光選択透過層の蒸着部の形状を変化させて蒸着を行った。蒸着部の形状は、光選択透過層を形成する前に基材フィルムへ貼り付ける蒸着用テープの配置を変化させることで制御した。光選択透過層の形成部及び非形成部の形状について、図4、5及び6に示す。図4では、上述したように、一辺が60mmの正方形状の基材フィルムの縁(機能膜非形成部)5aに蒸着用テープを貼り付け、基材フィルムの中央部(機能膜形成部)4aにのみ光選択透過層の蒸着を行った。このとき、縁の幅は5mmである。図5では、基材フィルムの上下のみに蒸着用テープを貼り付け、機能膜非形成部(縁)5bを作製し、左右は端まで光選択透過層の蒸着を行い機能膜形成部4bとした。図6では、図4で示す形状(1)と同様にフィルムの周囲に蒸着用テープを貼り付け機能膜非形成部(縁)5cを作製する。また、蒸着を行う機能膜形成部4cに予めサンプルを固定するための穴6cを開けてから蒸着を行った。以下では、図4、5及び6に示す形態を、それぞれ第一配置形態、第二配置形態及び第三配置形態という。蒸着はいずれの基材フィルムについても両面に行った。蒸着用テープの配置形態、蒸着条件及び得られた光選択透過フィルターについて表3に示す。
Figure 0005284636
第一配置形態では、基材(1)〜(5)において、65〜120℃すべての蒸着条件においてはがれが生じなかった。第二配置形態では、基材(1)、(3)、(4)、(5)の左右端面(縁を有しない部分)にはがれが生じた。また、第三配置形態では、基材(1)、(3)、(4)及び(5)の穴の周囲にのみはがれが生じた。
第一配置形態のように、光選択透過層の蒸着部分の周囲に非蒸着部分(縁)を作製することにより、光選択透過層のはがれ(剥離)を抑制できることが明らかとなった。PENフィルムを用いた基材(2)に関しては、蒸着用フィルムの配置形態及び穴の有無に関わらずはがれが生じず、光選択透過層との優れた密着性を示した。これは、基材(2)の持つエステル結合等の極性基、柔軟性を付与するメチレン鎖及びナフタレン等の芳香環により、PENフィルムの結晶性(二軸延伸による分子鎖の配向結晶化)に起因して、光選択透過層と基材フィルムとの密着性が向上したためと考えられる。
<光選択透過フィルターの物性評価>
基材(1)〜(5)を含んで構成される光選択透過フィルターの透過率、密着性、260℃耐熱性の評価結果について表4に示す。蒸着は、基材(1)〜(5)の両面に行い、蒸着用テープの形状は第一配置形態、蒸着温度は90℃で実施した。以下に、透過率、密着性及び260℃耐熱性の評価方法について示す。
(透過率測定)
Shimadzu UV−3100(島津製作所製)を用いて400〜600nm、及び、750〜1000nmにおける透過率を測定した。厚みは表4記載のとおりである。
(密着性評価)
カッターを用い、光選択透過フィルターの蒸着部位1cm角の中に1mm間隔で切り込みをいれ、それと垂直方向にも1mm間隔で切り込みをいれ、100個のクロスカットマスを形成する。その後、セロハンテープを光選択透過フィルターのクロスカットマスを形成した面にゴムヘラを用い、空気が入らないように充分に貼り付け、はがすことで、100個のクロスカットマスの中でセロハンテープにつかずに残った個数を数える。セロハンテープには、セロテープ(登録商標)(商品名:CT405AP−24、ニチバン社製)を用いた。
(260℃耐熱評価)
基材を2cm×1cmの形状とし、フィルムの上端(1cmの辺を上端とする。)を固定し、260℃、3分間オーブンにて加熱を行った。260℃耐熱性評価試験の前、後の基材の状態変化を目視により観察した。
Figure 0005284636
透過率測定を行った結果、400〜600nmでは、基材(1)、(3)、(4)、(5)は透過率85%以上、(2)は75%以上であった。また、750〜1000nmでは、基材(1)〜(5)は透過率5%以下であり、光選択透過フィルターとして優れた性能を示した。基材(1)を用いた光選択透過フィルターの透過率曲線を図7に示した。
密着性の評価を行った結果、いずれの光選択透過フィルターにおいても100マス中100マスがフィルム状に残り、光選択透過フィルターの密着性として、問題のないことが明らかとなった。
260℃耐熱評価において、(1)、(2−2)、(3−1)、(3−2)、(4−1)及び(5)の基材では変化なく、また、(4−2)ではしわが入ったものの溶け落ちることはなく、耐リフロー性を有し、リフロー工程に耐えることが明らかとなった。
上述した実施例及び比較例では、FPEKフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素化ポリイミドフィルム、PFAフィルム及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む基材を用いて光選択透過フィルターを調製しているが、耐リフロー機能フィルムの両面に機能膜を有する光選択透過フィルターである限り、他の構成要素を有していてもよい。少なくとも、フッ素化芳香族ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂、含フッ素高分子化合物、エポキシ樹脂及びガラスフィルムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む基材を用いて光選択透過フィルターを調製する場合においては、上述した実施例及び比較例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。
図1は、カメラモジュールの構成を示す断面模式図である。 図2は、光選択透過フィルターの有無によるバックフォーカスの伸張を示す模式図である。 図3は、本発明の基材の曲げ試験を模式的に示した図である。 図4は、基材フィルムの縁に蒸着用テープを貼り付けたときの配置関係を示す平面模式図である。 図5は、基材フィルムの縁の上下方向のみに蒸着用テープを貼り付けたときの配置関係を示す平面模式図である。 図6は、基材フィルム、蒸着用テープ及び穴の配置関係を示す平面模式図である。 図7は、光選択透過フィルターの分光透過率曲線を示す図である。
符号の説明
1:レンズ
2:光選択透過フィルター
3:センサー
4a、4b、4c:機能膜形成部
5a、5b、5c:機能膜非形成部
6c:穴

Claims (10)

  1. 基材の両面に機能膜を有する積層フィルムを細断して得られる光選択透過フィルターであって、
    該光選択透過フィルターは、赤外線カットフィルターであり、
    該基材は、機能膜形成部の周囲に機能膜非形成部を有する耐リフロー性樹脂フィルムであって、
    該耐リフロー性樹脂フィルムは、フッ素化芳香族ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリイミド樹脂、含フッ素高分子化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、
    該機能膜は、光選択透過層であり、無機材料からなる無機膜であることを特徴とする光選択透過フィルター
  2. 前記耐リフロー性樹脂フィルムは、250℃・3min、又は、200℃・5hrの熱を加えた場合の形状・寸法変化が、元の形状・寸法の20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター
  3. 前記基材は、複数の機能膜形成部を有し、かつ該複数の機能膜形成部の間に機能膜非形成部が存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター
  4. 前記機能膜形成部は、碁盤目状に配置されていることを特徴とする請求項に記載の光選択透過フィルター
  5. 前記機能膜形成部は、基材の片面における配置が、他方の面における配置と実質的に同じであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光選択透過フィルター
  6. 前記機能膜は、膜厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光選択透過フィルター
  7. 前記機能膜は、気相成膜法により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光選択透過フィルター
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の光選択透過フィルターが有する積層フィルムを製造する方法であって、
    該製造方法は、基材上にスクリーン又は蒸着用テープを配置し、真空蒸着法又はスパッタリング法により機能膜を形成する工程を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  9. 前記光選択透過フィルターは、機能膜非形成部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光選択透過フィルター
  10. 前記光選択透過フィルターは、機能膜非形成部を有しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光選択透過フィルター
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