JP5450170B2 - 積層体及び光選択透過フィルター - Google Patents

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Description

本発明は、積層体及び光選択透過フィルターに関する。より詳しくは、例えば、光学部材、機械部品、電気・電子部品、自動車部品等の用途に用いられる光選択透過フィルター等として有用な積層体、及び、このような積層体から構成される光選択透過フィルターに関する。
積層体は、フィルム等から形成される複数の層が積層して構成されたものであり、様々な分野で使用されているが、中でも光選択透過フィルターは、例えば、光学部材・機器、機械部品、電気・電子部品、自動車部品等の用途に有用であり、特に光学部材として好適に用いられている。例えば、カメラモジュールにおいては、光学ノイズとなる赤外線(特に波長>800nm)を遮断(カット)するフィルターが用いられている。このような赤外カットフィルターとしては、現在は、ガラス基材に金属等の無機層を蒸着させ無機多層膜とし、各波長の屈折率を制御した赤外線遮断ガラスが用いられており、通常は、これから所望の形状をダイシングカット法で切り出すことにより製造されている。
近年、光学部材・機器等の分野では、例えばカメラモジュールが携帯電話に搭載される等小型化が急速に進み、光学部材・機器等の小型化・軽量化が一層求められている。それに伴い、カメラモジュール等に用いられる赤外線をカットするフィルターや、レンズ等を有するレンズユニットの小型化・軽量化も望まれるところである。そこで、充分に薄く、かつ耐熱性等の各種物性に優れる光選択透過フィルターが開発されている(特許文献1参照。)。この特許文献1には、光選択透過フィルターの切り出し方法として、レーザーカット、打ち抜き法、ダイシングカットが例示され、基材が有機材料であると、どのような切り出し法を用いても基材の欠けや割れが生じず、円形や多角形等の形状にも対応できること、及び、これらの手法の中でも打ち抜き法が好ましいこと等が記載されている。
特開2008−181121号公報(第2、3、12頁等)
上述したように、光選択透過フィルターに代表される、基材の少なくとも一方の面に無機層を有する積層体の製法には種々の切り出し方法があり、通常はダイシングカット法が採用されている。しかし、ダイシングカット法は、直線でカットする技術であり、四角形等の直線部分のみからなる形状には成形できるが、円形や楕円形等の曲線部分(非直線部分)を有する形状(異形状)に成形することはできない。また、異形状への成形、すなわち異形成形は、打ち抜き法やレーザーカット法により可能となるが、ガラスを基材とし無機層とガラス基材のみからなる積層体では、これらの手法を用いても基材や無機層が割れるため適応することができない一方で、特許文献1に示されているように、樹脂を基材とする積層体なら可能である。しかしながら、特許文献1に記載の打ち抜き法では、金型やトムソン刃を、切り出そうとする対象物に押し当ててカットするため、樹脂を基材とする積層体であっても、径が小さく、かつ曲線部分を含むような複雑な形状を得ようとする場合は、微小面積に高圧がかかり割れが生じることがある。したがって、光学部材等の小型化に伴い、より径が小さく、かつ曲線部分を含むような微小異形状からなる積層体並びにその微細加工技術が必要とされている。
ところで、例えば携帯電話等の光学機器に光選択透過フィルター等のフィルターとレンズとを備えたレンズユニットを装着する場合、従来はレンズとフィルターとの形状が異なっていた。つまり、既存のレンズユニットでは、光選択透過フィルター(無機層/ガラス基材)の形状は、ダイシングカット法で加工された四角形である一方で、レンズは円形や楕円形等の曲線部分を有する形状のものが通常であるため、この形状の相違に起因して、レンズとフィルターとの接着作業が困難であった。特に小型の光学機器・部材では非常に煩雑な作業となるため、取扱性や作業性、生産性の点で課題があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来にはない特異な形状からなる積層体であって、小型部材・機器等にも好適に対応でき、それの取扱性や作業性、生産性を向上できるうえ、特に光選択透過フィルターとして有用な積層体、該積層体から構成される積層体支持フィルム及び光選択透過フィルター、並びに、該光選択透過フィルターを備えたレンズユニットを提供することを目的とするものである。
本発明者等は、積層体について種々検討するうち、少なくとも樹脂層を含む基材と無機層とを少なくとも有する構造の積層体であって、かつ従来技術にはない新規な形状、すなわち曲線部分を含み、最大径が特定値以下の微小異形状の積層体を見いだし、このような積層体を用いれば、小型の光学部材等にも好適に対応でき、その取扱性や作業性、生産性を劇的に向上できることを見いだした。そして、このような積層体が特に光選択透過フィルターとして有用なものとなり、例えば該光選択透過フィルターをレンズユニットを構成する材料として用いると、近年の光学部材に求められる小型化・軽量化・薄膜化のニーズに充分に適合できることを見いだし、このような光選択透過フィルター及び該光選択透過フィルターを備えてなるレンズユニットは、特に携帯電話やデジタルカメラ用のカメラモジュールに好適に採用し得るものとなることを見いだした。また、支持体フィルム上に、本発明による新規な形状の積層体を複数個有する形態の積層体支持フィルムとすれば、積層体の移送や保存等に好適となることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
なお、本発明者等は、従来の積層体の形状では、他の部材・部品と接着させる作業等の観点から取扱性や生産性、作業性が充分ではないという課題をまず見いだした点に本発明の技術的意義の1つがあり、この課題を解決するために、従来にはない特異な微小異形状の積層体を見いだしたものである。また、このような積層体を実現する過程において、従来一般的に行われてきたダイシングカット法や、特許文献1で好ましく採用されている打ち抜き法を採用した場合の課題、すなわち、ダイシングカット法では非直線形状には対応できず、打ち抜き法では微小面積に高圧がかかり割れが生じるため微小な大きさの形状には対応できないという課題を新たに見いだし、レーザーカット法を採用することによって特異な形状の積層体を実現できたという点にも重要な技術的意義を有する。
すなわち本発明は、基材の少なくとも一方の面に無機層を有する積層体であって、該積層体は、曲線部分を含み、かつ最大径が6mm以下の形状からなり、該基材は、少なくとも樹脂層を含む積層体である。
本発明はまた、支持体フィルム上に、上記積層体を複数個有する積層体支持フィルムでもある。
本発明は更に、上記積層体から構成される光選択透過フィルターでもある。
本発明はそして、上記光選択透過フィルターを備えてなるレンズユニットでもある。
以下に本発明を詳述する。
<積層体の形状・構成>
本発明の積層体は、曲線部分を含み、かつ最大径が6mm以下の形状からなるが、このような形状は、従来にはない特異な形状である。最大径が6mm以下であれば、近年の携帯電話等の小型光学機器等にも好ましく対応でき、取扱性や作業性、生産性を格段に発揮できることになる。最大径として好ましくは5.5mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは4.5mm以下、特に好ましくは4mm以下、最も好ましくは3.5mm以下である。また、最小径は特に限定されず、例えば、製造時に好適に使用されるレーザー光によっても異なるが、例えば12μm以上であることが好ましい。
なお、本明細書中、積層体の最大径とは、積層体の平面部(すなわち側面部ではない部分、積層方向に対して垂直な面)のうち最も長い径を、最小径とは最も短い径を、それぞれ意味する。
上記積層体の形状において、曲線部分を含むとは、積層体の平面部の外周が、曲線部分(非直線部分ともいう)のみからなる形状、又は、曲線部分と直線部分とを有する形状であることを意味する。例えば、積層体の平面部の外周の全長を100%とすると、曲線部分の全長が30%以上であることが好適である。より好ましくは50%以上である。また具体的には、例えば、円形状や楕円形状が好適である。
上記積層体の厚みは、例えば、小型化・軽量化等をより実現する観点から、200μm以下であることが好適であり、より好ましくは200μm未満である。特に、180μm以下、150μm以下、120μm以下、100μm以下、90μm以下、75μm以下、50μm以下が好適である(値が小さくなるほどより好ましい。)。また、積層体の取扱性や作業性の観点等から、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上である。
上記積層体は、少なくとも基材と無機層とを有し、基材の片面又は両面に無機層を有するものである。このような積層体では、更に保護層を有するものが好適である。また、必要に応じて他の層を更に有するものであってもよく、基材と無機層との間に他の層が積層されたものであってもよい。これらの基材、無機層、保護層、他の層は、それぞれ、単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
<基材>
上記基材は、少なくとも樹脂層を含むが、これによって本発明の積層体の欠けや割れが充分に抑制され、各種用途に有用なものとなる。通常、ガラス等の無機材料単独物からなる基材を使用した場合は強度や柔軟性等が充分ではないことがあるが、少なくとも樹脂層を含むことにより、無機材料単独の場合に比べて強度や柔軟性が向上されるため、搬送中、成形時や機器への組み入れ時、多層化や機能性の付与等を行うための後工程等において破損や割れ、変形等の発生を防ぐことができ、作業性に優れた積層体とすることができる。また、後述するように、積層体をレーザーカット法を用いて得る場合はカット部分に熱がかかるため、ガラス等の無機材料単独物からなる基材を使用すると、その温度差で積層体にクラックが入るおそれもあるが、少なくとも樹脂層を含む基材を用いることによって、クラックの発生を充分に防ぐことができる。
上記基材はまた、積層体の用途等によっては透明基材であることも好適である。
上記基材として好ましくは、樹脂層からなる樹脂フィルム、又は、樹脂層を有するガラスフィルムである。これによって、加工性、成形性、柔軟性、経済性、強度(割れにくさ)等の点で、各種用途により一層有用な積層体が得られることになる。例えば、上記基材が樹脂層からなる樹脂フィルムであることによって、ガラス等の無機材料にはできない複雑な加工を安価に行うことができる。
なお、樹脂層とは、1種又は2種以上の有機材料から形成される層を意味し、このような樹脂層からなる樹脂フィルムは、当該有機材料を、例えば溶剤キャスト法、溶融成形法等によって成膜することにより得ることができる。また、樹脂層を有するガラスフィルムとは、ガラスフィルムの一方の面又は両面に樹脂層を有する形態を意味し、例えば、ガラスフィルムの両面又は片面に、1種又は2種以上の有機材料を塗布又は注型することによって得ることができる。
上記基材はまた、耐熱性を有するものであることが好適であり、これによって種々の分野に更に一層有用なものとなる。中でも特に、樹脂層を形成する有機材料が耐熱性を有することが好適である。耐熱性を有するとは、例えば基材の耐熱温度として、10%分解温度が200℃以上であることが好ましく、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは350℃以上である。また、基材のガラス転移温度(Tg)は、80℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上、特に好ましくは250℃以上である。
なお、後述するように、本発明の積層体をレーザーカット法を用いて得る場合は特に、耐熱性の高い基材を用いることが好ましく、これによって、レーザーカット時の基材の変形がより充分に抑制され、無機層等の割れや剥がれの発生をより充分に防止できる。
上記基材はまた、耐リフロー性を有するものも好適であり、これにより積層体の厚みが薄くても耐熱性により優れるものとすることができるため、光学用途等の各種用途に更に好適に用いることができる。例えば、積層体を光選択透過フィルターに用いる場合、当該フィルター実装時の耐熱性をより充分なものとすることができるため、自動実装化が可能となって実装コストがより充分に低減され、リフローブルカメラモジュール等により好適に用いることができる。また、基材に無機層を蒸着して形成する場合は、蒸着による耐熱性が必要となるが、この点からも耐リフロー性を有する基材であることが好ましい。このように、上記基材が耐リフロー性機能フィルムである形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
ここで、耐リフロー性を有するとは、ハンダ付け工程の加熱に耐え得る特性を有することを意味し、例えば耐リフロー性機能フィルムは、カメラモジュール次世代仕様として有望視されているReflowable仕様のフィルムである。
上記耐リフロー性を有する基材として具体的には、250℃・3min、又は、200℃・5hrで形状を保持するものであることが好ましい。より好ましくは、250℃・3min、かつ200℃・5hrで形状を保持するものである。更に好ましくは、260℃・3min、又は、200℃・5hrで形状を保持するものであり、特に好ましくは、260℃・3min、かつ200℃・5hrで形状を保持するものである。耐リフロー性がない場合は、上記条件で保持した場合に、フィルムが溶解し形状を保てず、蒸着することができなかったり、形状が変化して実装することができなくなることもある。本発明において耐リフロー性を有するとは、熱を加える前後での形状・寸法変化が、元の形状・寸法の20%以下であることをいう。形状・寸法変化として好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。
なお、250℃・3minで形状を保持しているとは、実装時の耐リフロー性が充分であることを示し、200℃・5hrで形状を保持しているとは、基材上に無機層等を積層させる蒸着時の耐リフロー性が充分であることを示す。また、260℃・3minで形状を保持する場合には、実装時の耐リフロー性がより向上されていることを示す。
上記基材に含まれる樹脂層は、上述したように1種又は2種以上の有機材料から形成される層であるが、当該有機材料として好ましくは、(1)フッ素化芳香族ポリマー、(2)多環芳香族ポリマー、(3)ポリ(アミド)イミド樹脂、(4)シクロオレフィン樹脂、(5)含フッ素高分子化合物及び(6)硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機材料を含むものである。すなわち、上記樹脂層は、これらの群より選ばれる少なくとも1種の有機材料から形成されることが好適である。これらの有機材料を用いることで、積層体の強度や柔軟性を更に向上でき、また耐熱性や耐リフロー性等により優れる基材とすることができる。特に耐熱性や耐リフロー性が更に優れる観点からは、上記の中でも、(1)フッ素化芳香族ポリマー、(2)多環芳香族ポリマー、(3)ポリイミド樹脂、(5)含フッ素高分子化合物及び(6)硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機材料を含むものがより好ましい。
上記樹脂層は、有機材料の1種を材料として形成されたもの(単層構造)でも、2種以上の混合物(好ましくは、透明性を維持するような混合物)を材料として形成されたものでもよく、また、2種以上を積層させた形態(多層構造)であってもよい。なお、混合物とする場合は有機材料を液状にして混合してもよい。
(1)フッ素化芳香族ポリマー
上記フッ素化芳香族ポリマーとしては、少なくとも1以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位により構成された重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子を有するポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドエーテル、ポリアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエステル等が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つ以上のフッ素基を有する芳香族環と、エーテル結合とを含む繰り返し単位を必須部位として有する重合体であることが好ましく、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位を含む、フッ素原子を有するポリエーテルケトンがより好ましい。中でも特に、フッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)が好適である。
なお、一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
Figure 0005450170
上記一般式(1−1)中、Rは炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。Zは2価の鎖又は直接結合を表す。x及びyは0以上の整数であり、x+y=1〜8を満たし、同一又は異なって芳香族環に結合しているフッ素原子の数を表す。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記一般式(1−2)中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。Rは、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。nは、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
上記一般式(1−1)において、x+yは2〜8の範囲内が好ましく、4〜8の範囲内がより好ましい。また、エーテル構造部分(−O−R−O−)が芳香族環に結合する位置としては、Zに対してパラ位であることが好ましい。
上記一般式(1−1)及び(1−2)において、R及びRは2価の有機鎖であるが、例えば、下記の構造式群(2)で表されるいずれか一つ、又は、その組み合わせの有機鎖であることが好ましい。
Figure 0005450170
上記構造式群(2)中、Y〜Yは、同一若しくは異なって、水素基又は置換基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基若しくはアリールチオ基を表す。
上記R及びRのより好ましい具体例としては、下記の構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられる。
Figure 0005450170
上記一般式(1−1)において、Zは、2価の鎖又は直接結合していることを表す。当該2価の鎖としては、例えば、下記構造式群(4)(構造式(4−1)〜(4−13))で表される鎖であることが好ましい。
Figure 0005450170
上記構造式群(4)中、Xは、炭素数1〜50の2価の有機鎖であるが、例えば、上述した構造式群(3)で表される有機鎖が挙げられ、その中でもジフェニルエーテル鎖、ビスフェノールA鎖、ビスフェノールF鎖、フルオレン鎖が好ましい。
上記一般式(1−2)中のRにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基等が好適である。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−、m−又はp−トリル基、2,3−又は2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基等が好適である。
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、12−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
上記Rとしては、これらのうち、置換基を有していてもよいアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアミノ基が好ましい。ただし、Rには、二重結合又は三重結合が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
上記一般式(1−2)中のRにおける置換基としては、上述のような炭素数1〜12のアルキル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;シアノ基、ニトロ基、カルボキシエステル基等が好適である。また、これら置換基の水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよい。これらの中でも、好ましくは、ハロゲン原子、水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びカルボキシエステル基である。
(2)多環芳香族ポリマー
上記多環芳香族ポリマーとしては、2つ以上の芳香環が、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合から連結されているものである。例えば、主骨格として、ナフタレン環やフルオレン環等の2つ以上の連結した芳香環をモノマーユニットに有する化合物が好適である。具体的には、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル(ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
このようなポリエチレンナフタレートとしては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのホモポリマーが好適であるが、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の一部(30モル%未満)を、2,7−、1,5−、1,7−その他のナフタレンジカルボン酸の異性体又はテレフタル酸若しくはイソフタル酸;ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の他の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環属族ジカルボン酸;アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等のオキシ酸等の他の二官能性カルボン酸で置き換えてもよい。
上記ポリエチレンナフタレートとしてはまた、上記エチレングリコール成分の一部を、例えばトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の他の多官能化合物の1種以上で置換して30モル%未満の範囲で共重合させたコポリマーであってもよい。
上記多環芳香族ポリマーとしてより好ましい化合物は、例えば、下記式(5):
Figure 0005450170
(式中、nは、繰り返し数を表し2〜10000の整数である。)で表されるポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられ、具体的には、帝人デュポンフィルム社のテオネックスQ83(厚さ25μm又は75μm、融点269℃)が挙げられる。
(3)ポリ(アミド)イミド樹脂
上記ポリ(アミド)イミド樹脂とは、狭義のポリイミド樹脂(イミド結合を含み、アミド結合を含まない樹脂)、及び、ポリアミドイミド樹脂(アミド結合とイミド結合とを含む樹脂)のいずれをも包含する。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂は、多価カルボン酸化合物と、多価アミン化合物及び/又は多価イソシアネート化合物との反応により得られるポリ(アミド)イミド樹脂の原料を、イミド化反応して得ることができる。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂はまた、透明性を有することが好ましい。透明性向上のためには、芳香環が少ないほうが好ましい。中でも、芳香環を脂環又は脂肪鎖等で置き換えた構造を有することが更に好ましい。より好ましくは、全重量100%中の芳香環の重量が65%以下、更に好ましくは45%以下、特に好ましくは30%以下である。
上記ポリ(アミド)イミド樹脂としては、イミド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(6):
Figure 0005450170
(式中、nは0〜4の整数、pは0又は1であり、n+pは1〜5の整数である。)で表される繰り返し単位を含むポリイミド樹脂であることが好ましい。具体的には、三菱ガス化学社製のネオプリムL−3430(厚さ50μm又は100μm)が挙げられる。
(4)シクロオレフィン樹脂
上記シクロオレフィン樹脂は、(変性)ノルボルネン系モノマーを触媒の存在下、開環重合した後、開環重合体の二重結合を水素化して得られる、又は、環状オレフィンを主鎖または側鎖に持つモノマーを重合させる、これらモノマーを他の反応性モノマーと共重合させる等によって得ることができる。シクロオレフィン樹脂は、主鎖及び/又は側鎖にシクロオレフィン構造を有していればよく、製法により限定されない。
上記シクロオレフィン樹脂としてより好ましい化合物は、例えば、下記式(7−1)及び/又は(7−2):
Figure 0005450170
(式中、nは、繰り返し数を表し、2〜10000の整数である。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数0〜150の有機基、又は、水素原子(すなわち、置換基が存在しないことを意味する。)を表す。なお、R及びRは、結合され環状になっていてもよい。)で表されるノルボルネン系樹脂、変性ノルボルネン系樹脂が好ましい。具体的には、日本ゼオン社製ゼオノア、JSR社製アートン等が挙げられる。
(5)含フッ素高分子化合物
上記含フッ素高分子化合物としては、1分子中に少なくとも2つのシクロヘキシル環と2つのフルオロアルキル基とを含有する含フッ素脂環式ジアミン又は含フッ素芳香族ジアミンを、少なくとも単量体の一部に使用した含フッ素高分子化合物であることが好ましい。具体的には、例えば、下記式(8−1)〜(8−4):
Figure 0005450170
(式中、Rは、直鎖、分岐、脂環、芳香環及びヘテロ環からなる群より選択される少なくとも1種の2価の基を表し、部分的にフッ素、酸素又は窒素を含有してもよい。)で表される繰り返し単位を含む含フッ素脂環式ポリアミド構造又は含フッ素芳香族ポリアミド構造を有する含フッ素高分子化合物;下記式(9−1)〜(9−4):
Figure 0005450170
(式中、Rは、直鎖、分岐、脂環、芳香環及びヘテロ環からなる群より選択される少なくとも1種の4価の基を表し、部分的にフッ素、酸素又は窒素を含有してもよい。Rは、水素、又は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐状のアルキル基であって、部分的にフッ素、酸素、窒素、不飽和結合又は環状構造を含んでもよい。)で表される繰り返し単位を含む含フッ素脂環式ポリアミド酸、含フッ素芳香族ポリアミド酸、又は、これらのエステル体である含フッ素高分子化合物;下記式(10−1)〜(10−4):
Figure 0005450170
(式中、Rは、直鎖、分岐、脂環、芳香環及びヘテロ環からなる群より選択される少なくとも1種の4価の基を表し、部分的にフッ素、酸素又は窒素を含有してもよい。)で表される繰り返し単位を含む含フッ素脂環式ポリイミド又は含フッ素芳香族ポリイミドである含フッ素高分子化合物等が好適である。
なお、上記式(10−3)においてより好ましくは、式中のRが、下記式(11)で表される形態である。
Figure 0005450170
上記含フッ素高分子化合物としてより好ましい化合物は、例えば、下記式(12):
Figure 0005450170
で表される4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物(6FPA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFBD)とを反応させて重合体溶液を得て、その後加熱して得られるフッ素化ポリイミド樹脂(F−PI)(膜厚50μm)が挙げられる。
上記含フッ素高分子化合物としてはまた、テトラフルオロエチレンを含むものも好適である。特に、透明性の観点からは、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が好ましく、具体的には、ダイキン社製のネオフロンTMフィルムPFA(50μm)や、ニチアス社製のナフロンPFAシート(T/♯9000−PFA)等のPFAフィルム等が挙げられ、特に、ダイキン社製のネオフロンTMフィルムPFA(50μm)が好適である。
(6)硬化性樹脂
上記硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が好適である。
上記エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を含む硬化性組成物の硬化物である。硬化物の形態としてはエポキシ化合物をカチオン硬化触媒の存在下で光及び/又は熱硬化してなる形態、エポキシ化合物を付加的硬化剤と反応させることにより得られる硬化物の形態等が挙げられる。後者において硬化反応促進のため従来公知の硬化促進剤を併用することもできる。上記付加的硬化剤としては、例えば、酸無水物、多価フェノール化合物、多価アミン等が例示されるが、中でも酸無水物が好ましい。
上記エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物等が好適であり、例えば、大阪ガスケミカル社製のフルオレンエポキシ(オンコートEX−1);ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828EL);ジャパンエポキシレジン社製の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコートYX8000);ダイセル工業社製の脂環式液状エポキシ樹脂(セロキサイド2021)等が好ましく使用できる。
なお、本明細書中、エポキシ基とは、3員環のエーテルであるオキシラン環を含むものであり、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基(グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基を含む)を含むものを意味する。
上記エポキシ樹脂はまた、その硬化前の硬化性組成物が、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。可撓性成分を含むことにより、成形時や基板、型等からはずすときに割れない、形が崩れない、剥がれやすい、柔軟性がある等の一体感のある樹脂組成物とすることができる。
上記可撓性成分としては、上記エポキシ化合物とは異なる化合物であってもよいし、上記エポキシ化合物の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記可撓性成分として具体的には、−〔−(CH−O−〕−で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数であり、より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好適であり、例えば、(I)オキシブチレン基を含むエポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製のYED−216D;ジャパンエポキシレジン社製のYL−7217、エポキシ当量437、液状エポキシ化合物(10℃以上))が好適である。また、その他の好適な可撓性成分としては、(II)高分子エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノール(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8040、エポキシ当量1000、固形水添エポキシ化合物));(III)脂環式固形エポキシ化合物(ダイセル工業社製 EHPE−3150);(IV)脂環式液状エポキシ化合物(ダイセル工業社製、セロキサイド2081)等のエポキシ基を含む化合物;(V)液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム等が好ましい。これらの中でもより好ましくは、末端の側鎖や主鎖骨格等に硬化性の官能基を含む化合物である。なお、「硬化性の官能基」とは、エポキシ基等の熱又は光で硬化する官能基(有機樹脂を硬化反応させる基)をいう。
上記アクリル樹脂とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリロイル基含有化合物)を含む硬化性組成物の硬化物である。
上記基材に関し、樹脂層を有するガラスフィルムとは、1種又は2種以上の有機材料から形成される層(樹脂層)を、ガラスフィルムの一方の面又は両面に有する形態のものであればよい。このような形態で使用される有機材料としては、上述したように、(1)フッ素化芳香族ポリマー、(2)多環芳香族ポリマー、(3)ポリ(アミド)イミド樹脂、(4)シクロオレフィン樹脂、(5)含フッ素高分子化合物及び(6)硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種のものが好適である。これらの中でも、フッ素化芳香族ポリマー、エポキシ樹脂、及び、フッ素化芳香族ポリマーとエポキシ樹脂との複合樹脂が好ましい。これにより、更に一層、強度や柔軟性を向上することが可能になる。
上記ガラスフィルムとしては、耐曲げ強度に優れる点や、より薄膜化を実現する点等から、厚みが150μm以下のものが好適である。より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。また、ガラスフィルムは、シリカを主成分とする形態であればよく、透明性が80%(照射光波長500nm)で確保できれば、その他の成分の割合及び種類等は限定されない。ガラスフィルムとして好ましくは、SCHOTT社製のガラスコード(D263、30μm)等が挙げられる。
上記樹脂層を有するガラスフィルムの好ましい形態としては、ガラスフィルムの両面に樹脂層を有する形態であり、中でも、樹脂層を形成する有機材料として、フッ素化芳香族ポリマー、エポキシ樹脂、又は、フッ素化芳香族ポリマーとエポキシ樹脂との複合樹脂を用いることが好ましい。
なお、割れをより防止する等という観点からは、ガラスフィルムに、他の層をのせた後に樹脂層を積層させたものであってもよい。
上記基材はまた、隣接する層(無機層等)との密着性により優れるという観点からは、上述した形態(樹脂層からなる樹脂フィルム又は樹脂層を有するガラスフィルム)の中でも、(1)フッ素化芳香族ポリマー、(2)多環芳香族ポリマー、(3)ポリ(アミド)イミド樹脂、(4)シクロオレフィン樹脂、及び、(6)硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の有機材料から形成される樹脂層からなる樹脂フィルムであることが好適である。上記基材としてこのような樹脂フィルムを用いると、例えば、無機層を蒸着して形成する場合に、蒸着した無機層と基材との密着性により一層優れる蒸着フィルムとすることができる。
上記基材はまた、加熱処理した基材であることが好ましく、中でも、加熱処理を行った樹脂フィルム(樹脂層からなる樹脂フィルム)であることが好適である。すなわち、上記積層体は、加熱処理を行った樹脂フィルムを含むことが好適である。加熱処理した樹脂フィルムは、より優れた耐熱性を有するため、熱による変形がより起こりにくい積層体を得ることができる。加熱処理とは、熱プレス、熱ロール、延伸処理等を行うことである。例えば光選択透過フィルターの場合、種々の用途に用いる際に加熱されることがあり、例えばレンズユニット等の光学用途では、通常ハンダ付けにより装着(実装)される。加熱処理した樹脂フィルムを基材として用いると、装着される際の熱変形がより充分に抑制され、カールすることがなく好ましい。言い換えると、このような光選択透過フィルターは、加熱処理した樹脂フィルムに無機層等を形成することにより熱変形の課題をより解消することができる。また、加熱処理により、樹脂フィルムの機械的強度や耐熱性、密着性等をより一層向上することができる。
上記加熱処理の条件としては、処理温度が樹脂フィルムを形成する有機材料のTg付近以上の温度であることが好ましい。より好ましくはTg以上の温度である。また、処理温度の温度範囲としては、Tg付近以上でありTg付近+150℃以下である温度範囲が好ましい。より好ましくは、Tg以上でありTg付近+150℃以下である温度範囲である。なお、「Tg付近」とは、ガラス転移温度に対して15℃以内の範囲にある温度のことである。
上記基材の厚みとしては、積層体を使用する用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、200μm以下であることが好適である。これによって、小型化・薄膜化が要求される分野(例えば、光学用途等)に更に好ましく適用できる。より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
<無機層>
上記積層体において、無機層としては、無機材料から形成される層を意味し、基材の片面又は両面に設けることが好適である。無機層を有することで、耐熱性等に優れる積層体となる。なお、無機層は、例えば光選択透過フィルター用途では、赤外線及び/又は紫外線を選択的に低減させる光選択透過層として好適に機能する。また、基材の両面に無機層を設けることが好ましく、これによって、積層体の反りや割れ等の発生をより充分に抑制できる。すなわち上記積層体は、基材の両面に無機層を有する形態であることが好適である。また必要に応じて、基材と無機層との間に他の層を有していていもよい。
上記無機材料は、無機成分を含むものであり、無機成分としては、無機層に期待する作用・機能や積層体の用途等に応じて適宜選択すればよい。無機成分としては、例えば、金属(合金、金属間化合物を含む)、金属酸化物、金属フッ化物、金属炭化物、金属窒化物、金属カルコゲン化物(金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物)等が好ましく例示される。中でも、金属、金属酸化物、金属フッ化物が、後述する気相製膜法によって本発明で好適な基材上に製膜し易い点で好ましい。
上記金属として好ましくは、例えば、クロム、金、銀、銅、インジウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等が挙げられる。
上記金属酸化物として好ましくは、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化錫、酸化セリウム、MgIn、MgIn等の単一酸化物や複合酸化物;スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化インジウム、リンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛等の単一酸化物や複合酸化物に異種元素を固溶してなる固溶体金属酸化物等が挙げられる。
上記金属フッ化物として好ましくは、例えば、フッ化リチウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等があげられる。
上記無機層は、単層構造であっても多層構造であってもよいが、各層を構成する無機成分としては、単一組成であっても、2種以上の無機成分が混合した組成であってもよい。
上記無機層を構成する層の形態としては、実質的に上述した無機成分のみからなる薄膜の形態(形態1)、無機成分からなる微粒子を無機系バインダーに分散した形態(形態2)、無機成分からなる微粒子を有機バインダーに分散した形態(形態3)等が例示される。
上記無機層ではまた、本発明における効果が顕著となる点から、無機成分の割合が高いほど好ましい。例えば、無機層を構成する各層における無機成分の含有量が、当該層を形成する無機材料100質量%に対し、50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは実質的に無機成分のみからなることである。また、後術するように光選択透過フィルター等の光学用途における光学性能、透明導電膜用途における導電性能に優れる点から、実質的に有効成分のみからなる薄膜の形態が好ましい。
上記形態1の無機層は、後述するように、気相成膜法により好ましく形成される。また、上記形態2、形態3の無機層は、通常、塗布法により形成される。
上記無機層は、単層構造であっても多層構造(多層膜)であってもよく、積層体の用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば光選択透過フィルター用途では、所望の光をより充分に低減させる観点から、多層構造とすることが好適であり、より好ましくは多層蒸着膜である。多層構造とすることで、選択的に低減する波長の透過率を当該全波長領域において容易に10%以下にすることができる。言い換えると、透過させたい波長領域の透過率が高く、低減させたい波長領域の透過率が低いシャープな光選択透過フィルターとすることができる。具体的にいうと、光選択透過フィルターが780nm〜10μmの赤外光を低減する赤外カットフィルターである場合、780nmを境に透過率が急変することとなる。例えば、780nm未満の光は透過率70%以上で透過し、780nm以上では透過率10%以下しか透過しないものとなるように、透過率がシャープに変わることで、例えばカメラモジュールに用いる場合、シーモスセンサーに届く光から赤外光を選択的に除去できる等の利点がある。
上記無機層はまた、結晶性膜が非晶性膜より好ましい。上記無機層として特に好ましい形態は、結晶性の無機層から構成される多層蒸着膜である。
上記無機層としては、曲げ強度をより向上させ、反りを更に少なくする観点や、また薄膜化をより実現する点等から、厚みが50μm以下であることが好適である。より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下である。また、1nm以上が好ましく、より好ましくは3nm以上である。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体は、基材の片面又は両面に少なくとも無機層を積層(形成)した積層フィルムから、特定形状(曲線部分を含み、かつ最大径が特定値以下の微小異形状)を切り出すことにより得ることが好適である。すなわち、基材の片面又は両面に少なくとも無機層を積層(形成)して積層フィルムを得る工程(「積層工程」とも称す)と、該積層フィルムからレーザーにより特定形状を切り出す工程(「切り出し工程」とも称す)を含む製造方法により得ることが好適であり、これによって、従来にはない特異な形状の本発明の積層体を容易に得ることが可能になり、また、反りや割れ、クラック等がより低減された積層体を得ることができる。上記製造方法によって得られる積層体もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、上記積層体が無機層に加えて更に保護層やその他の層を有する場合、これらの層は、用途・機能等に応じて基材と無機層との間に積層(形成)してもよいし、無機層や基材に対して積層(形成)してもよく、基材と無機層の最外層に積層してもよい。また、積層は、無機層の積層と同様に行うことができる。
上記積層工程において、基材(又は他の層)への無機層の積層方法(形成方法)としては、例えば、気相法により基材(又は他の層)の片面又は両面に直接無機層を形成する方法;気相法により得られた無機層を基材(又は他の層)上に接着剤で張り合わせる方法;無機材料を含有する液状組成物を基材(又は他の層)に塗布し、乾燥して製膜する方法等が好ましく採用される。気相法としては、CVD法(化学気相成長法)、真空蒸着法、スパッタリング法等が好適であり、真空蒸着法がより好ましい。これらの積層方法(形成方法)の中でも、気相法により基材(又は他の層)の片面又は両面に直接無機層を形成する方法が好ましい。具体的には、例えば、基材(又は他の層)を蒸着装置等の中に設置し、その基材(又は他の層)の上(片面又は両面)に無機層を蒸着により形成して密着させる。経済性の観点からは、基材上の無機層の面積が大きい(基材と無機層との面積が近い)ほど、多数個の積層体を切り出せるため好ましい。また、無機層に発揮させる作用・機能(例えば、無機層を光選択透過層として機能させる場合は光選択透過性)の均一化を図る観点からは、基材上の無機層の面積が小さいほど、無機層の膜厚や平滑性にむらが生じないため好ましい。基材のサイズと、その上に形成する無機層の面積や形状は、上記の観点から適宜設定することが好ましい。
上記積層工程ではまた、基材(又は他の層)に無機層を積層するときに、無機層積層部位(無機層形成部ともいう)の周囲に、無機層が積層されていない縁(無機層非形成部ともいう)を有するようにすることが好ましい。例えば、基材の端まで無機層を積層して縁を設けない場合、基材の端に積層された無機層が積層時又は積層後に剥がれる可能性がある。また、基材に固定するための穴等を作製する場合にも穴の周囲から無機層が剥がれる可能性もある。これは、基材の端や穴の周囲等、基材の上面(平滑な表面)以外の側面等に無機層が積層することにより、密着性がより充分とはならず、剥がれの起点になる可能性がある。基材の端又は穴の周囲に沿って無機層非形成部を形成することにより、無機層の剥がれをより充分に抑制することができる。このように、上記積層工程が、基材(又は他の層)の表面に無機層の非形成部(縁)を有するように、基材(又は他の層)の片面又は両面に無機層を積層する形態もまた、好適な形態の1つである。この場合、上記積層工程で得られる積層フィルムにおいては、無機層積層部位の周囲に無機層が積層されていない縁が形成されることになる。
なお、無機層非形成部を設けるためには、スクリーンや蒸着用テープ等の無機層の付着を防ぐものを用いることが好ましい。すなわち、無機層積層部位の周囲をスクリーン及び/又は蒸着用テープでシールドした後に無機層の積層を行うことが好ましい。
上記積層工程において、無機層を形成(積層)する際の温度は、例えば、250℃以下に設定することが好適である。これによって、例えば耐リフロー性を有する基材を用いた場合に、当該基材への影響をより低減することができる。より好ましくは200℃以下、更に好ましくは170℃以下である。また、50℃以上であることが好適である。
上記切り出し工程は、レーザーを用いたレーザーカット法を採用することが好適である。通常は、打ち抜き法やダイシングカット法を採用するが、打ち抜き法では、金型やトムソン刃を、切り出そうとする対象物に押し当ててカットするため、本発明の特異な形状の積層体を好適に得ることができないし、ダイシングカット法では曲線部分を含む本発明の積層体を好適に得ることができない。これに対し、レーザーカット法を採用すれば、切り出しが困難な特異な形状の本発明の積層体を好適に得ることができるため、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。また、レーザーカット法では、打ち抜き法やダイシングカット法とは異なって、対象物に非接触で成形(切り出し)できるため、圧力により積層体が割れることがなく、また、レーザーカット装置の設定変更だけで容易に所望の形状の変更(サイズ変更等)ができるため、打ち抜き法で必要な高価な金型を作製/使用する必要等がなく、経済性に優れる。更に、レーザーカット法では、打ち抜き法等に比較して割れやクラック等が生じにくく、一枚の積層フィルムから切り出せる(成形できる)積層体の数が多いため、生産性に非常に優れている。このように基材の少なくとも一方の面に無機層を有する積層フィルムから、レーザーにより所望の形状の積層体を切り出す工程を含む積層体の製造方法もまた、本発明者等が新たに見いだした手法である。
上記レーザーカット法では、レーザーカット時に切断面から樹脂の飛散の可能性があるため、製品を汚れ等からより守るために、基材や無機層等を保護するための保護フィルム(保護層)を更に有する状態で成形する(切り出す)ことが好適である。つまり、上記切り出し工程に供する積層フィルムは、基材及び無機層に加え、更に保護層を有するものであることが好適である。これによって、基材や無機層等を汚れ等から保護することが可能になるため、例えば、切り出すときだけでなく、場合によっては積層体を移送したり保存したりするときにも好適である。このように上記積層体が更に保護層を有する形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記保護層は、積層体の片面又は両面の最上層(最表層)に位置することが好適である。例えば、基材と無機層とからなる積層体を例にすると、(i)基材の両面に無機層を有する場合は、その無機層の少なくとも1つ又は両方の上層に保護層を有する形態、(ii)基材の一方の面に無機層を有する場合は、その無機層の上層、及び/又は、無機層を有しない側の基材の上層に、保護層を有する形態等が挙げられる。このような形態の積層体は、上記製造方法において、まず基材の片面又は両面に無機層を形成した後、更にその片面又は両面に保護層を積層し、次いで切り出し工程を行うことにより得ることが好ましい。
なお、このように保護層を設けた場合には、必要に応じて上記切り出し工程後に保護層を剥がす工程を行うことが好適である。
上記保護層(保護フィルム)はまた、切り出し後の積層体からの離型性を考慮すると、保護層が積層(形成)された層と微粘着状態になるようなものとすることが好適である。保護層が積層された層との粘着性が高すぎると、切り出し後の積層体から保護層(保護フィルム)を剥がすのが困難になり、保護層を必要としない用途では作業性をより向上することができないおそれがある。
また上記保護層を積層体の両面に設ける場合、作業性を更に一層高めるために、これらの保護層の粘着性は異なっている方が好適である。特に好ましい形態は、上記積層体がその両面に保護層をそれぞれ有し、かつ該2つの保護層の粘着性が異なる形態である。これによって、積層体を扱う際の作業性が更に一層向上されることになる。
上記保護層(保護フィルム)としては、1種又は2種以上の有機材料から形成される樹脂フィルムであることが好適であり、該有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましく、更に、PET系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルムが好適である。なお、ポリエチレン系樹脂フィルムは、PET系樹脂フィルムに比べるとレーザー加工性が充分ではなく、また、レーザー照射の強度等によっては炭化する可能性もあるため、積層体製造時の加工性等を考慮すると、PET系樹脂フィルムがより好ましい。また、このような理由から、ポリエチレン系樹脂フィルムはレーザー光側には設けない方が好適である。ただし、強度等を適宜調整することによって、ポリエチレン系樹脂フィルムをレーザー光側に設けてもよい場合もある。
上記保護層(保護フィルム)として使用する樹脂フィルムはまた、保護フィルムからの糊の離脱、汚染物質の発生、貼り付け又は剥し工程で積層体を損傷させることがないものが好ましい。好ましくは微粘着性の保護フィルムである。なお、少なくとも基材や無機層等の保護しようとする層と接触させる面が微粘着処理されていることが好ましい。粘着力としては、1.2N/cm以下が好ましく、0.5N/cm以下がより好ましく、0.3N/cm以下が更に好ましく、0.1N/cm以下が最も好ましい。また、粘着力が低すぎると、加工時や運搬時に剥がれ落ちてしまうおそれがあるため、粘着力は0.0001N/cm以上が好ましく、0.001N/cm以上が更に好ましい。
上記保護フィルムを両面に設ける場合は、上部保護フィルム(レーザー光側)が下部保護フィルムよりも、低粘着であることが好ましい。上部保護フィルムの粘着力としては、0.2N/cm以下が好ましく、0.1N/cm以下がさらに好ましく、0.05N/cm以下が最も好ましい。
また、本発明において好適な微粘着性を有する保護フィルムとしては、パナック社製パナプロテクト、日栄加工社製PET75−H2120等が好ましく例示される。
上記切り出し工程はまた、切り出し工程に供する積層フィルム1枚から積層体を切り出す、切り出し回数を複数回とすることが好適である。上述したように本発明の積層体の製造にレーザーカット法を採用すると1枚の積層フィルムから切り出せる積層体の数が多いため、切り出し回数を複数回とすれば、より生産性よく本発明の積層体を得ることが可能になる。
上記レーザーカット法で使用されるレーザーとしては、例えば、炭酸ガス(CO)レーザーや、UVヤグレーザー等が好ましい。中でも、炭酸ガスレーザーが好適である。また、レーザーのビーム径は、レーザーの性能や積層体の生産性等の観点から適宜設定すればよいが、例えば、炭酸ガスレーザーでは20〜100μm、UVヤグレーザーでは10〜80μmとすることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法として特に好ましい形態を、図面を用いて説明する。
図1〜3は、基材と無機層とからなるフィルムbのレーザー光側に保護フィルムaを、フィルムbのレーザー光側とは反対側に保護フィルムc(及びd)を、それぞれ積層した形状からなる積層フィルムに、レーザー光を照射し、特定形状を切り出す方法の好ましい例を示す概念図である。これらの図に示すような手法によって、微小で複雑な形状の本発明の積層体をより簡単に得ることができる。なお、フィルムbは、基材の一方の面に無機層を有する形態であってもよいし、基材の両面に無機層を有する形態であってもよく、また、更に他の層(機能性材料層等)を有するものであってもよい。
図1では、保護フィルムaとしてポリエチレンテレフタラート(PET)系樹脂フィルムを使用し、保護フィルムcとしてポリエチレン系樹脂フィルムを使用した例を示しているが、ポリエチレン系樹脂フィルムは、PET系樹脂フィルムに比べてレーザー光で切断されにくいため、この状態でレーザー光gを照射すると、保護フィルムa及びフィルムbからなる部分eが切り出せる。なお、製品として使用する場合は、必要に応じて保護フィルムaをフィルムbから剥がして使用することになる。
図2では、保護フィルムaとしてPET系樹脂フィルムを使用し、保護フィルムcとして、保護フィルムaとして使用したものよりも厚膜のPET系樹脂フィルムを使用した例を示しているが、レーザー光gの強度を調整することによって、保護フィルムa、フィルムb及び保護フィルムcの一部からなる部分eを切り出すことができる。この場合、フィルムbの保護フィルムc側の接触断面が、図1の方法に比べてより滑らかになる。保護フィルムcとして使用する厚膜PET系樹脂フィルムとしては、例えば、50μm以上のものを用いることが好ましく、より好ましくは75μm以上である。なお、製品として使用する場合は、必要に応じて保護フィルムa及びcをフィルムbから剥がして使用することになる。
図3では、保護フィルムaとしてPET系樹脂フィルムを、保護フィルムcとしてPET系樹脂フィルムを、保護フィルムdとしてポリエチレン系樹脂フィルムをそれぞれ使用した例を示しているが、この例では、図1に示す方法と同様に、ポリエチレン系樹脂フィルムがPET系樹脂フィルムに比べてレーザー光で切断されにくいため、この状態でレーザー光gを照射すると、保護フィルムa、フィルムb及び保護フィルムcからなる部分eが切り出せる。この例では、図2の方法に比べてレーザー光gの強度の調整が不要であり、また図1の方法に比べてフィルムbの保護フィルムc側の接触断面が滑らかになる。なお、製品として使用する場合は、必要に応じて保護フィルムa及びcをフィルムbから剥がして使用することになるが、保護フィルムcと保護フィルムdとの粘着性や接着性を強めておくことによって、保護フィルムcをフィルムbからより容易に剥がすことが可能になる。
このように、上記図1〜3で示されるような手法、すなわち、(1)少なくとも基材と無機層とからなるフィルムbの両面に、レーザー加工性の異なる保護フィルムa,cをそれぞれ積層した後、レーザー加工性が高い保護フィルムaを有する側からレーザー光を照射して、該フィルムbと、該レーザー加工性が高い保護フィルムaとからなる積層体eを切り出す方法、(2)少なくとも基材と無機層とからなるフィルムbの両面に、厚みの異なる保護フィルムa,cをそれぞれ積層した後、厚みが小さい保護フィルムaを有する側からレーザー光を照射して、該フィルムbと、該厚みの小さい保護フィルムaと、厚みが大きい保護フィルムcの一部とからなる積層体eを切り出す方法、(3)少なくとも基材と無機層とからなるフィルムbの両面に保護フィルムa,cを積層し、更に、レーザー照射側とは反対側の面に積層された保護フィルムcよりもレーザー加工性の劣る保護フィルムdを、該保護フィルムc上に積層した後、レーザー光を照射して、該フィルムbと、保護フィルムaと、保護フィルムcとからなる積層体eを切り出す方法は、いずれも本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、「レーザー加工性」とは、レーザー光照射によって切断されにくい性質を意味し、例えば、レーザー加工性が相違するフィルムのうちレーザー加工性が高いフィルムとは、同じレーザー光を照射した場合に切断されにくい方のフィルムを指す。
また図4に示すように、図1〜3等の手法で得たeを覆うように、より具体的にはeの上層に位置する保護フィルムaを覆うように、粘着シート/フィルムfを貼付することも好適である。これにより、粘着シート/フィルムfと接する保護フィルムaを、フィルムbからより容易に剥がすことができるため、例えば、積層体の移送・保存時にはフィルムbを粘着シート/フィルムf及び保護フィルムaによって保護することができ、実際の使用時には粘着シート/フィルムfを剥がすだけで、保護フィルムaも共に剥がれるため、より高品質の製品を、更に作業性や生産性高く得ることが可能になる。
<積層体支持フィルム>
本発明はまた、支持体フィルム上に本発明の積層体を複数個有する積層体支持フィルムでもある。支持体フィルムとは、積層体を支持するためのフィルムであり、例えば、レーザーカットによる切り出し工程時に用いた保護フィルムや、上述した図4に示されるような、積層体を作製した後に被着させる粘着シート/フィルム等が例示される。
このような積層体支持フィルムは、積層体の移送や保存に特に有利である。
上記支持体フィルムとして保護フィルムを用いた形態の積層体支持フィルムは、例えば、上記(2)や(3)の手法において、切り出し回数を複数回行うことにより得ることができる。すなわち、このような積層体支持フィルムとしては、レーザー照射によって切断されなかった保護フィルム(例えば、上記(2)の手法では保護フィルムcの残部、上記(3)の手法では保護フィルムd)上に、積層体eが複数個存在する形態や、また該積層体eからレーザー照射側に位置していた保護フィルムaを剥離した形態等が挙げられる。
上記支持体フィルムとして粘着シート/フィルムを用いた形態の積層体支持フィルムとしては、例えば、台又はシートhに、上記(1)〜(3)の手法で得られた積層体eを複数個並べた後、その上面に粘着シート/フィルムfを被着させる(貼付する)ことにより得ることができる。また、上記(2)や(3)の手法において切り出し回数を複数回行うことによって、保護フィルムc/d上に複数個の積層体eが存在する形態のフィルムを得た後、各積層体eの保護フィルムc/dとの接着面とは反対側の面に粘着シート/フィルムfを被着させる(貼付する)ことによっても得ることができる。この場合、フィルムによって両面を保護、支持された形態の積層体支持フィルム、すなわち具体的には、支持体フィルムとして、レーザーカットによる切り出し工程時に用いた保護フィルムと、粘着シート/フィルムとを用いた形態の積層体支持フィルムが得られることになる。
<光選択透過フィルター>
本発明の積層体はまた、従来にはない特異な微小異形状からなるため、例えば光学部材、機械部品、電気・電子部品、自動車部品等の種々の分野で有用なものとなる。特に光選択透過フィルターとして好適であり、上記積層体から構成される光選択透過フィルターもまた、本発明の一つである。なお、この場合、上記無機層は、光選択透過性を有する機能性材料層、すなわち光選択透過層として好適に機能することになる。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減(遮断)するものであり、基材の少なくとも一方の面に光選択透過層を積層してなる構成からなるが、該光選択透過層が上記無機層であることが好適である。また、光選択透過層以外の機能性材料層を更に有するものであってもよい。機能性材料層とは、機能性材料から形成される層であり、光選択透過フィルターに付与する機能によって適宜選択することができる。例えば、上述した光選択透過層の他、保護層、強靱性を有する層、光選択透過フィルターにかかる応力等を吸収するバッファー層(中間層、緩和層)、補強層、親水層、撥水層、反射防止層、位相差層、屈折率調節層、粘着層、導電層、絶縁層、光学補償層等から適宜選択することができる。また、光選択透過層に加えて、更に他の機能性材料層を形成する場合には、基材と光選択透過層の中間の熱膨張率を有する層を更に積層してもよい。
上記光選択透過フィルターは、その両面に機能性材料層を有する構造を持つことが好ましい。例えば、基材の両面に機能性材料層を積層した構造を持つことが好ましい。光選択透過フィルターの両面を機能性材料で積層させた機能性材料層を形成することにより、より充実した機能を有する光選択透過フィルターとすることができる。また、蒸着により機能性材料を積層させる場合には、両面に材料を蒸着させることが好適だが、この場合は蒸着時及び/又は実装時のカールをより抑制でき、種々の用途により一層好適な光選択透過フィルターとすることができる。
上記基材の両面には、それぞれ異なった機能性材料層を積層させてもよく、同じ機能を有する機能性材料層を積層させてもよい。この中でも好ましくは、(1)両面が光選択透過層である形態、(2)片側が光選択透過層でもう一方が反射防止層である形態、(3)片側が光選択透過層でもう一方が反射防止層/光選択透過層である形態である。これらの中でも、(1)の形態が好ましい。なお、上記機能性材料層は、それぞれの機能が最も発揮できる形態に積層されることが好ましい。本発明においては、光選択透過層を適宜選択することにより所望の波長の透過率を低減させることができる。例えば、赤外光を低減する場合、上記(1)〜(3)の形態の中でも光選択透過層が、赤外カット層となる。
上記光選択透過フィルターにおいて、所望の波長の光をカット(低減、遮断)する機能は、光選択透過層、すなわち上記積層体における無機層によって好適に発揮される。このように無機層を光選択透過層として機能させる場合について、以下に更に説明する。
上記光選択透過層としては、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜;所望の波長の光を反射する機能を有する透明導電膜;所望の波長の光を吸収する機能を有する分散膜等を好適に用いることができる。このうち、透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。また、赤外線吸収性の分散膜としては、ITO等の無機粒子(好ましくは無機ナノ粒子)を、無機又は有機バインダーに分散させた膜等が好ましい。これらの光選択透過層の好適な形態の中でも、耐熱性により優れる点で、無機多層膜、透明導電膜、無機ナノ粒子を無機バインダーに分散させた膜等が好適であり、中でも、無機多層膜が好適である。
上記無機多層膜を光選択透過層として有する光選択透過フィルターにおいては、基材やその他の機能性材料層の上に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料と高屈折率材料とを交互に積層させて、光選択透過層を形成し、低減させたい波長(例えば、赤外領域や紫外領域等)の光を選択的に反射させるとともに、入射光と反射光の位相を半波長ずれるようにして、光の透過率を選択的に低減させることとなる。すなわち、上記光選択透過層は、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが特に好適である。具体的には、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜(例えば、赤外線反射膜、紫外線反射膜又は紫外線・赤外線反射膜等)が好ましい。このような誘電体多層膜を少なくとも基材(好ましくは透明基材)の一方の面に有することにより、所望の波長の光を選択的に反射する能力により優れた光選択透過フィルターとすることができる。中でも、基材の入射光の入射する側の面に低屈折率材料及び高屈折率材料を15〜60層(1〜7μm)程度積層させた構造の多層膜(多層蒸着層、多層蒸着膜、誘電体多層膜とも言う。)であることが特に好ましい。このように、上記光選択透過フィルターが誘電体多層膜からなる光選択透過層を有する形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が12〜1.6の材料が選択される。例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。このような方法により、誘電体多層膜を好適に形成することができるが、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくするために、次の方法を用いることができる。具体的には、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、光選択透過フィルターの基材となる真の基材に、該蒸着層を転写して多層膜を形成する多層膜の転写方法が好適である。この場合、光選択透過フィルターの基材とする真の基材には、接着層を形成しておくことが好ましい。また基材が樹脂層からなる樹脂フィルム又は樹脂層を有するガラスフィルムである場合には、樹脂層を形成する有機材料が未硬化又は半硬化の状態(基材)で、上記誘電体層等を蒸着した後、基材を硬化する方法が好適である。このような方法を用いると、多層蒸着後の冷却時に基材が流動的となり、液状に近い状態となるために、有機材料と誘電体層等との熱膨張係数差がより問題にならず、光選択透過フィルターの変形(カール)をより充分に抑制することができる。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長λ(nm)の0.1λ〜0.5λの厚みである。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができないことがある。
上記誘電体多層膜の積層数は、基材(好ましくは透明基材)の一方の面にのみ上記誘電体多層膜を有する場合は、通常10〜80層の範囲で、好ましくは15〜60層の範囲である。一方、基材(好ましくは透明基材)の両面に上記誘電体層膜を有する場合は、上記誘電体層の積層数は、基板両面の積層数全体として、通常10〜80層の範囲であり、好ましくは15〜60層の範囲である。
上記光選択透過フィルターにおいて、所望の波長の光をカットする機能は、上述したように光選択透過層(好ましくは多層膜の光選択透過層)を有する形態によって発揮されることが好適であるが、その他の形態によって発揮されるものであってもよい。例えば、赤外線の透過率を低減させる赤外カットフィルターにおいては、(i)可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する形態、(ii)赤外吸収機能を有する(例えば、赤外吸収色素を含有する)塗布膜を形成する形態、(iii)基材に赤外線をカットする機能を持つ材料(原料)を用いる形態等が好適である。その他の波長を選択的に低減する場合でも同様であり、このような形態を用いることで、多層膜(多層蒸着層)の積層数を低減できたり省略したりすることができ、光選択透過フィルターの膜厚を薄くできる。例えば上記(i)の形態では、単層構造の薄膜とすることができる。したがって、光路を短縮することができ、カメラモジュール等の光学部材において有用なものとすることができる。基材の構成材料として有機材料を用いる場合は、多層膜を形成する際の基材のカールを抑制でき、低コスト化にも効果がある。
なお、上記(i)の形態における金属酸化物からなる薄膜や、上記(ii)の形態のうち無機材料を含む塗布膜もまた、本発明の積層体における無機層に相当し得る。
上記(i)可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する形態としては、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系、酸化タングステン系等からなる赤外反射及び吸収機能の少なくとも一方を有する薄膜が好ましい。特に、SnやTi等の4価の金属元素又はフッ素を0.1〜20原子%(/インジウム)の割合で固溶してなるIn系酸化物;Sb、P等の5価の金属元素又はフッ素を0.1〜20原子%(/スズ)の割合で固溶してなるSnO系酸化物;B、Al、In等の3価金属元素又は4価金属元素又はフッ素を0.1〜20原子%(/亜鉛)の割合で固溶してなるZnO系酸化物;WOで示される酸化タングステン系;In、Znを金属成分とする複合酸化物(In−Zn系、In−Mg系、In−Sn系、Sn−Zn系等)等の可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する方法が好ましい。このような薄膜は、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することが好適である
上記(ii)赤外吸収機能を有する塗布膜を形成する形態としては、上記酸化物からなる超微粒子を含む塗布膜、金属フタロシアニン等の赤外吸収色素を含有する塗布膜を形成する方法が好ましい。このような塗布膜は、超微粒子や赤外吸収色素を有し、有機バインダーや無機バインダーをバインダーとして用いた塗料を成膜する方法が好適である。
上記(iii)基材に赤外線をカットする機能を持つ材料(原料)を用いる形態としては、基材に含まれる樹脂層を形成する有機材料中に、上記酸化物や色素を練り込んでフィルム状に成型(成形)する方法が好適である。
上記光選択透過フィルターは、上述したように光の透過率を選択的に低減(遮断)するものであり、具体的には、反射又は吸収により所望の波長を遮断することが好ましい。低減させる光としては、10nm〜100μmの間のものであればよく、用途に応じて適宜選択することができる。選択的に低減させる波長の透過率としては、全波長の10%以下が好ましい。より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、最も好ましくは、実質的に0%である。また、光選択透過フィルターを透過させる波長の透過率としては、全波長の70%以上が好ましい。より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。透過率がこのように高いことによって、光選択透過フィルターを通過する光の強度がより充分確保され、例えば、カメラモジュールや、撮像レンズのレンズユニットにおける光ノイズを遮断するためのフィルター等の光学用途に更に好適に用いることが可能になる。
上記光選択透過フィルターではまた、選択的に低減させる波長以外の波長(すなわち、光選択透過フィルターを透過する波長)の透過率が一定であることが好ましい。特に、カメラモジュールや、撮像レンズのレンズユニットにおける光ノイズを遮断するためのフィルター等の光学用途に用いる場合、可視光380〜780nmの透過率が可視光の全波長域において一定であることが好ましい。上記用途においては、可視光のうち、波長400〜600nmで一定であることが特に好ましい。透過する光の強さが波長に依存せず一定であると、特定の波長の光に強弱が生じず、透過光が着色しないこととなる。したがって光選択透過フィルターを透過した光が着色せず、上記用途により好適に用いることができることとなる。
上記光選択透過フィルターとして具体的には、赤外線の透過率を選択的に低減する形態(赤外カットフィルター);紫外線の透過率を選択的に低減する形態(紫外カットフィルター);赤外線及び紫外線の両方の透過率を選択的に低減する形態(紫外線・赤外線カットフィルター)等であることが好適である。なお、これらの形態において、所望の波長の光をカットする機能(所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能)は、上述した形態によって発揮されることになるが、この機能以外の種々の機能を有することもまた、好適である。
〔赤外カットフィルター〕
上記赤外カットフィルター(赤外線カットフィルター、IRカットフィルターともいう)は、吸収又は反射により赤外線を選択的に低減する(遮断する)機能を有するフィルターである。具体的には、赤外線領域である780nm〜10μmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減し、それ以外の光を透過する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、780nm〜2.5μm、780〜1000nm、800nm〜1μm、又は、1〜1.5μmであることが好適である。これらの範囲の波長のうち少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、本発明の好ましい形態の赤外カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である780nm〜2.5μmであることがより好ましい。
上記選択的に低減する波長の透過率、それ以外の波長の透過率としては、上述した範囲であることが好適である。具体的には、上記赤外カットフィルターは、780〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に10%以下に低減するものが好ましく、その他の波長域の透過率は70%以上が好ましく、これらの透過率の好適な範囲は、上述したとおりである。なお、フィルターの用途に応じて特定の波長域の透過率のみが高いものであってもよい。例えば、上記赤外カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下、可視光(380〜780nm)の透過率が75%以上であることが好適であり、より好ましくは80%以上である。また、可視光の中でも400〜600nmの波長域の光の透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。更に、可視光の中でも400〜700nmの波長域の透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。
上記赤外カットフィルターとして特に好ましい形態としては、波長が400〜600nmにおける光の透過率が80%以上であり、かつ800〜1000nmにおける透過率が5%以下の赤外カットフィルターである形態である。これらの透過率の好適な範囲は、上述したとおりである。
上記赤外カットフィルターが赤外線を低減(遮断)する機能以外の各種機能を有する形態としては、例えば、紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態等が好適である。このうち、上記赤外カットフィルターが紫外線を遮蔽する機能を有する形態としては、(a)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の可視光を透過し、紫外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する方法、(b)上記酸化物からなる超微粒子を含む塗布膜、有機系紫外線吸収剤を含有する塗布膜を形成する方法、(c)紫外線を遮蔽する機能を持つ材料(原料)を用いる方法により紫外線を遮蔽する機能を付与することが好適である。
上記(a)における薄膜形成方法、(b)における成膜方法としては、それぞれ、上記(i)可視光を透過し近赤外線を遮蔽する金属酸化物からなる薄膜を基材表面に形成する形態における薄膜形成方法、(ii)赤外吸収機能を有する塗布膜を形成する形態における薄膜形成方法と同様であることが好ましい。(c)としては、基材の構成材料として有機材料を用いる場合に、上記酸化物や色素を練り込んだ有機材料をフィルム状に成型する方法が好適である。また、基材の構成材料として無機材料(例えば、ガラス)を用いる場合には、Ag、Bi、Co、Fe、Ni、Ti、Ce等の金属元素を固溶することにより得られる赤外線吸収ガラスを用いることが好適である。
〔紫外カットフィルター〕
上記紫外カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、350nm以下であることが好ましい。より好ましくは、380nm以下である。
上記選択的に低減する波長の透過率、それ以外の波長の透過率としては、上述した範囲であることが好適である。具体的には、上記紫外カットフィルターは、350nm以下である紫外線の透過率が10%以下であることが好ましく、中でも、波長が380nm以下の紫外線透過率が10%以下であることが好ましい。また、その他の波長域の透過率は70%以上が好ましい。なお、これらの透過率の好適な範囲は、上述したとおりである。
上記紫外カットフィルターが紫外線を低減(遮蔽)する機能を有する形態としては、光選択透過層として、酸化チタン系、酸化亜鉛系、酸化セリウム系、酸化鉄系等の紫外線吸収機能を有する材料からなる薄膜を用いることが好適である。中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムにCu、Ag、Mn、Bi、Co、Fe、Niからなる群から選ばれる1種以上の金属元素を0.1〜20原子%の割合で固溶してなる酸化物を用いることが好ましい。
〔紫外線・赤外線カットフィルター〕
上記紫外線・赤外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲、該波長の透過率、それ以外の波長の透過率としては、上述した範囲であることが好適である。
上記紫外線・赤外線カットフィルターにおいては、赤外線、紫外線以外の光の透過率は、高いほど好ましい。具体的には、可視光(380nm〜780nm)透過率が70%以上であることが好ましく、より好適な範囲は、上述したとおりである。更に、紫外線・赤外線カットフィルターを透過した光に着色させない(特定の可視光を選択的に吸収しない)観点から、可視光の各波長域における透過率がほぼ一定であることが好ましい。特に、波長400〜600nmにおける各波長での光透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。紫外線・赤外線カットフィルターの赤外線を遮断する機能としては、反射又は吸収により赤外線を遮断することが好ましく、より好ましくは赤外線を主に反射することである。また、赤外線のうち、少なくとも800〜1000nmの波長の光を遮断することが更に好ましい。
上記紫外線・赤外線カットフィルターは、撮像レンズ用における光ノイズを遮断するためのフィルターとして、特に好適に用いることができる。撮像レンズ用等における光ノイズ遮断を目的とする光選択透過フィルターとしては、可視光領域の400〜600nmにおける各波長での光透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上である。また、紫外線領域の350nm以下の紫外線の透過率が5%未満であることが好ましい。特に380nm以下の紫外線の透過率が5%未満であることが好ましい。また、上記光選択透過フィルターが、波長が400〜600nmにおける光の透過率が85%以上で、かつ800〜1000nmにおける透過率が5%以下であり、更に波長が300〜380nmにおける光の透過率が5%以下の紫外線・赤外線カットフィルターであることが特に好ましい。赤外線領域では、800nm〜1μmの波長の光を遮断することが好ましい。具体的には、800nm〜1μmにおける透過率が5%以下であることが好ましい。より好ましくは800nm〜1.5μmにおける透過率が5%以下、更に好ましくは800nm〜2.5μmにおける透過率が5%以下である。
上記紫外線・赤外線カットフィルターが紫外線及び赤外線を低減(遮蔽)する機能を有する形態としては、光選択透過層が上述した誘電体層(A)と(B)の積層構造であることが好ましい。また、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系、酸化タングステン系等の赤外線カット機能を有する酸化物層と、酸化チタン系、酸化亜鉛系、酸化セリウム系、酸化鉄系等の紫外線カット機能に優れる層とを積層する形態も好ましく用いることができる。
上記光選択透過フィルターとしてはまた、小型化・軽量化等をより実現する観点から、その厚みが200μm以下であることが好適であり、より好ましくは200μm未満である。特に、180μm以下、150μm以下、120μm以下、100μm以下、90μm以下、75μm以下、50μm以下が好適である(値が小さくなるほどより好ましい。)。また、耐リフロー性、特に260℃以上の温度における耐熱性により優れる観点から、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上である。
このように光選択透過フィルターの厚みが充分に薄いことによって、光選択透過フィルターをより小型化・軽量化することができ、種々の用途に更に好適に用いることができる。特に、光学部材等の光学用途で更に好適に用いることができる。なお、光学用途においては、他の光学部材と同様に光選択透過フィルターも小型化・軽量化が強く求められているが、例えば厚みを200μm以下とすることによって、より薄膜化を達成でき、特にレンズユニットに用いた場合に、レンズユニットの低背化をより実現することができる。言い換えると薄膜の光選択透過フィルターを光学部材として用いた場合に、光路を短縮することができ、該光学部材を小さくすることができる。
この点について、レンズと光選択透過フィルターとシーモスセンサーとを有するカメラモジュールを例にして説明する。図5及び図6に、カメラモジュールの一例を、模式的に示した。これらの図は、エレクトロニックジャーナル第81回テクニカルセミナー(Electronic Journal 第81回 Technical Seminar)資料を参照した。
図5に示すように、光選択透過フィルターは、所望の波長の光(カメラモジュールにおいては、例えば700nm以上の波長の光)をカットし、シーモスセンサーの誤作動を防ぐ役割がある。カメラモジュールに光選択透過フィルターを入れると、焦点距離が伸びるため、バックフォーカスが伸張し、モジュールが大きくなる。光選択透過フィルターの厚みがtで屈折率nが1.5程度の場合、図6に示すように、バックフォーカスが約t/3伸張し、モジュールが大きくなるが、光選択透過フィルターを薄くして、焦点距離を短くし、モジュールを小さくすることができる。それにより、例えば、1/10インチの光学サイズの光路長としては、光選択透過フィルターなしの場合の120%以下とすることが好ましい。より好ましくは110%以下であり、更に好ましくは105%以下である。
本発明の光選択透過フィルターとして好適な形態は、赤外カットフィルター、紫外カットフィルター、紫外線・赤外線カットフィルター等が挙げられる。光選択透過フィルターが上述した本発明の積層体から構成されることで、従来にはない特異な形状(曲線部分を含み、かつ最大径が特定値以下の微小異形状)の光選択透過フィルターを実現でき、これに起因して、特に小型化・軽量化・薄膜化等が要望されている光学部材・機器に特に好適に対応でき、これを扱う際の取扱性や作業性、生産性を充分に向上できる。また、このような効果に加え、これらのフィルターに要求される性能等を充分に発揮できる。例えば、赤外カットフィルターとして用いると、上記効果に加え、優れた赤外線カット能を有し、割れにくいため、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず、特に、デジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のCCDやCMOS等の固体撮像素子の視感度補正に有用である。紫外カットフィルターとして用いると、上記効果に加え、優れた紫外線カット能を有し、割れにくいため、紫外線保護フィルター、視感度補正用等として有用である。紫外線・赤外線カットフィルターとして用いると、上記効果に加え、優れた赤外線及び紫外線カット能を有し、割れにくく、撮像レンズ用における光ノイズを遮断するためのフィルターとして有用である。
<レンズユニット>
上記光選択透過フィルターとしてはまた、レンズユニットを構成する材料として有用である。このように、上記光選択透過フィルターを備えてなるレンズユニットもまた、本発明の1つである。なお、レンズユニットとは、1個又は2個以上のレンズと、これらを支持、固定する鏡筒とを含み、光の入射及び/又は出射のために必要な開口部を備える素子を意味する。本発明の光選択透過フィルターは、レンズユニットにおける開口部の最大径又は該ユニット内の光路径が6mm以下であるレンズユニット(以下、マイクロレンズユニットともいう)を構成する材料として特に有用である。すなわち、上記光選択透過フィルターとレンズとを備えるマイクロレンズユニットもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
ここで、上記光選択透過フィルターは、レンズユニット(好適にはマイクロレンズユニット)に組み込まずに、該レンズユニットの光入射側、又は、出射側に配置して使用することも好適な使用形態である。例えば、携帯電話やデジタルカメラに使用される撮像素子は、レンズユニットを搭載するが、光選択透過フィルターが該レンズユニットを構成する形態もあれば、レンズユニットとは独立にカメラモジュール内に配置される形態もある。本発明の光選択透過フィルターは、いずれの形態においても好適に採用し得る。
上記レンズユニットは、上述したように光選択透過フィルターが従来にはない特異な形状(曲線部分を含み、かつ最大径が特定値以下の微小異形状)であることに起因して、特に小型化・軽量化・薄膜化等が要望されている光学部材・機器に特に好適に対応でき、これを扱う際の取扱性や作業性、生産性を充分に向上できるという効果を発揮でき、この効果の発揮に加え、光路長が短くなり、レンズユニットを小さく、ユニットの厚みを薄くすることができるため、カメラモジュール等の種々の用途において好適に用いることができる。レンズユニットの長さとしては、光選択透過フィルターがない場合を100とすると、120以下であることが好ましい。より好ましくは110以下、更に好ましくは105以下である。
なお、上記光選択透過フィルターをレンズユニットに用いる場合、光選択透過フィルターの基材としては、耐リフロー性を有する基材を用いることが好適であり、これによって耐熱性を更に向上することができる。中でも、基材として耐リフロー性を有する樹脂フィルムを用いることである。
上記レンズユニットにおいて、レンズは、耐リフロー性を有するもの(リフローレンズ)であることが好ましい。また、光選択透過フィルターは上述したいずれであってもよいが、特に耐リフロー性を有するものであることが好ましい。このように、レンズユニットを構成する光選択透過フィルター及びレンズが耐リフロー性を有するものである形態は、特に好ましい形態である。光選択透過フィルター及びレンズの両方が充分な耐熱性を有することにより、自動実装化が可能となり、実装コストが充分に低減され、カメラモジュール等の光学用途により一層好適に用いることができる。
上記レンズは、アッベ数が45以上であることが好ましい。アッベ数を45以上とすることにより、光の分散が小さくなり、解像度があがり、光学特性により優れたものとすることができる。45未満であると、例えば、にじみがみられるおそれがあり、より充分な光学特性を発揮できず、レンズユニットにより一層好適な材料とはならないおそれがある。上記アッベ数として、より好ましくは50以上であり、上記レンズユニットは、アッベ数が50以上のレンズを一つ以上有することが好ましい。上記アッベ数として、更に好ましくは55以上、特に好ましくは58以上、最も好ましくは60以上である。
上記レンズユニットにおいて、レンズは1枚であってもよく、2枚以上であってもよい。1枚である場合、レンズのアッベ数としては、45以上であることが好ましい。2枚以上である場合、少なくとも1枚のレンズのアッベ数が45以上であればよく、その他のレンズはアッベ数45未満であってもよい。アッベ数が45以上のレンズとアッベ数が45未満のレンズとを組み合わせる場合において、アッベ数が50以上のレンズとアッベ数が40以下のレンズとを組み合わせる形態がより好ましい。アッベ数が50以上のレンズとアッベ数が40以下のレンズとを組み合わせることにより、解像度が向上し、レンズユニットに求められる特性を満足するという利点がある。
上記レンズは、厚みが1mm未満であることが好ましい。レンズの厚み(像を写す領域の最大厚み)を1mm未満とすることにより、厚みが200μm以下(好ましくは200μm未満)の光選択透過フィルターを用いることと相まって、光路長を短くすることができ、レンズユニットをより小さくすることができる。レンズの厚みとしてより好ましくは800μm未満であり、更に好ましくは500μm未満である。また、光選択透過フィルターとして厚みが100μm以下のものを用いることがより好ましい。
上記レンズを構成する材料としては、耐熱材質であり、耐リフロー性を有するものであることが好ましい。具体的には、有機材料、無機材料、有機無機複合材料のいずれであってもよく、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
上記有機材料、有機無機複合材料における有機成分としては、有機樹脂が好ましく、シクロポリオレフィン、ポリカーボネート等の耐熱性に優れる熱可塑性樹脂、又は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の硬化性樹脂硬化物がより好ましい。更に耐リフロー性に優れる点で硬化性樹脂硬化物が好ましい。すなわち、上記レンズユニットのより好ましい形態は、レンズが、硬化された熱硬化性樹脂を含む形態である。
上記有機材料、有機無機複合材料における有機成分としてはまた、アッベ数が45以上のものである形態、熱硬化性樹脂である形態、脂環式エポキシ化合物を必須として含む形態、分子量が700以上のものである形態が好ましい。
上記無機材料としては、ガラス等が好ましい。
上記有機無機複合材料における無機成分としては、無機微粒子又はメタロキサンポリマーであることが好適である。
上記無機微粒子としては、金属酸化微粒子である形態、湿式法により得られたものである形態、平均粒径が400nm以下のものである形態、溶液中に分散させたときの25℃におけるpHが3.4〜11のものである形態が好ましい。
上記メタロキサンポリマーとしては、好適には、オルガノシロキサンポリマーが好ましい。オルガノシロキサンポリマーとしては、例えば、かご状構造又はラダー状構造等のポリシルセスキオキサン;ジフェニルシロキサン単位、ジアルキルシロキサン単位、アルキルフェニルシロキサン単位等の繰り返しの基本単位とする鎖状ポリシロキサン等が挙げられる。
上記レンズユニットとしては、上記光選択透過フィルターと2枚以上のレンズとを備え、該レンズは、厚みが1mm未満の耐リフロー性レンズであり、アッベ数50以上のレンズを一つ以上有することが好ましい。また、上記レンズユニットの厚みとしては、50mm以下であることが好ましい。このような厚みとすることにより、カメラモジュール等の種々の光学部材に好適に用いることができる。レンズユニットの厚みとしてより好ましくは30mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
上記レンズユニットの小型化の観点からは、シーモスセンサーとレンズとの距離も重要である。シーモスセンサーとレンズとの距離とは、レンズの最も外側の表面とシーモスセンサーとの距離であり、光選択透過フィルターがシーモスセンサー側に装着されている場合は、該光選択透過フィルターとシーモスセンサーとの距離となる。
上記レンズユニットにおいては、例えば、図5のように光選択透過フィルターがシーモスセンサー側に配置される形態であることが好適であるが、光選択透過フィルターはレンズの間に配置されていてもよい。また、所望の波長の光を充分に遮断する点からは、レンズの上部と下部との両方に配置される形態、すなわち、光の進行方向に沿って、光選択透過フィルター、1枚又は2枚以上のレンズ、光選択透過フィルター、シーモスセンサーの順に配置される形態も好適である。
上記レンズユニットにおいてはまた、上記以外の構成を更に備えていてもよい。
本発明の積層体は、上述のような構成よりなり、従来にはない特異な形状からなるので、小型部材・機器等にも好適に対応でき、その取扱性や作業性、生産性を向上できるうえ、特に光選択透過フィルターとして有用なものである。また、このような積層体から構成される光選択透過フィルターは、例えばオプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途に好適に用いられるものである。
フィルムbの両面に保護フィルムを設けた積層フィルムにレーザー光を照射し、特定形状を切り出す方法の好ましい例を示す概念図である。 フィルムbの両面に保護フィルムを設けた積層フィルムにレーザー光を照射し、特定形状を切り出す方法の好ましい例を示す概念図である。 フィルムbの両面に保護フィルムを設けた積層フィルムにレーザー光を照射し、特定形状を切り出す方法の好ましい例を示す概念図である。 図1〜3に示す手法にて得た積層体eの上面に粘着シート/フィルムfを貼付した例を示す概念図である。 カメラモジュールの構成を示す断面模式図である。 光選択透過フィルターの有無によるバックフォーカスの伸張を示す模式図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
1、基材
(1)FPEKフィルムの作成
<FPEKの合成>
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル) 16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン) 10.5部、炭酸カリウム 4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド) 90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマーを得た。反応式を下記に示す。フッ素化芳香族ポリマーは、下記反応式で得られた繰り返し単位を含むフッ素化芳香族ポリマーである。
Figure 0005450170
上記ポリマーのガラス転移点温度(Tg)は242℃、数平均分子量(Mn)が70770、表面抵抗値は1.0×1018Ω/cm以上であった。
<基材の形成>
溶剤キャスト法により50μmのフィルム(以下、FPEKフィルムと言う。)を得た。なお、製膜について、溶剤キャスト法を用いた際の溶媒は、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒を用いた。
(2)ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)
帝人デュポンフィルム社(テオネックスQ83)、厚さ25μm、融点269℃ (PENフィルム)を用いた。
(3)ポリイミドフィルム
(3−1)三菱ガス化学社製、ネオプリムL−3430 厚さ50μmを用いた。
(3−2)三菱ガス化学社製、ネオプリムL−3430 厚さ100μmを用いた。
(4)エポキシ樹脂
<エポキシ樹脂の合成>
ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテル(商品名:エピコートYL7217、ジャパンエポキシレジン社製)19部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート828EL、ジャパンエポキシレジン社製)55部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコートYX8000、ジャパンエポキシレジン社製)22部、六フッ化リン系アリールスルホニウム塩(商品名:UVI−6992、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)4部を自公転式遠心混合装置(製品名:あわとり練太郎(登録商標)、シンキー社製)を用いて混合した。
<基材の形成>
上記エポキシ樹脂組成物を、キャスト法により50μm厚で成膜した後、高圧水銀ランプを光源とする露光機(製品名:MA−60F、ミカサ社製)を用いて、照度10mW/cmで15分間、すなわち露光エネルギー9J/cmの紫外線照射を行って、光硬化することでエポキシ樹脂フィルムを得た。
(5)アートンフィルム
JSR社製 アートンF 厚み190μmを用いた。
(6)ガラスフィルム
SCHOTT社製ガラスコード:D263、厚み30μmを用いた。
(7)FPEK/ガラス/FPEKフィルムの作成
フッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)1.57gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.45gに添加して均一に撹拌した。スピンコート法を用いて、ガラスフィルム(30μm)の片面に5μm膜を成膜した後、もう一方の面のガラス面に同様の操作を行い、150℃で乾燥した。
(8)フルオレンエポキシ・FPEK/ガラス/フルオレンエポキシ・FPEKフィルムの作成
FPEK1.0g、フルオレンエポキシ(大阪ガスケミカル社製、オンコート EX−1020)0.5gをプロピレグリコールモノメチルエーテルアセテート10gに添加して、均一に撹拌した。その後、40℃以下にして、カチオン系開始剤(三新化学工業社、サンエイドSI−60L)0.016g(固形分:32%)を均一に撹拌した。製膜は、スピンコート操作にて、上記(7)と同様に行った。
2、積層体の製造
1辺が60mmのこれら基材の両面に、蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO:膜厚120〜190nm)層とチタニア(TiO:膜厚70〜120nm)層とが交互に積層されてなるもの、積層数は片面25層ずつ両面に蒸着:計50層〕を蒸着により形成し、無機積層体を製造した。
3、異形成形
<打ち抜き成形>
ダイの上にこれら積層体を平置きし、上方よりトムソン刃を用いて打ち抜き、円型の積層体を得た。トムソン刃は直径が12mm、6.8mm、2.2mm、2.0mmのものを用いた。結果を表1に示す。なお、表1では、積層体において割れやヒビが生じなかったものを「○」と評価し、割れやヒビが生じたものを「×」と評価した。
Figure 0005450170
基材(1)〜(3)を用い、かつ、12mm径、6.8mm径に打ち抜いた積層体は、割れが生じなかったが、2.2mm径、2.0mm径に打ち抜いた積層体は、無機層にヒビが入ってしまった。
基材(4)を用いた場合には、いずれの径のトムソン刃を用いても無機層、又は、無機層と基材ともにヒビが入ってしまった。
基材(6)〜(8)のガラスを含む基材においては、いずれの径のトムソン刃を用いても無機層と基材ともにヒビが入ってしまった。
<レーザーカット成形>
HITACHI社製COレーザーを用いてこれら積層体のレーザーカットを行い、6mm径と2mm径の円形の積層体を得た。結果を表2に示す。なお、表2中の「○」、「×」は、表1と同様である。
基材(6)のガラスフィルム(ガラス単独基材)はレーザーカット時に無機層と基材ともにヒビが入ってしまったが、他の樹脂層を含む積層体は、割れることなく成形することができた。
Figure 0005450170
<保護層>
レーザーカット時に発生する異物から積層体を保護するため、保護層を設けた状態でレーザーカットを行った。保護層は図1、図2又は図3の構成で設けた。
保護層を設けることにより、積層体表面の異物付着が改善された。図1、図2、図3のような保護層の構成にすることにより、レーザーカットの加工性を損なうことがなく、かつ、カット後の積層体(2mm径、6mm径円形)が最下層の保護層により保持されて一体化しているので取り扱いが容易であった。図1の保護層を設けた状態でレーザーカットを行うと、積層体の切断面(保護層cと接している部分)がやや乱雑となり平滑性がより充分なものとはいえなかったが、図2、図3の保護層を設け、下部保護層も同時にレーザーカットすることにより、より平滑な切断面の積層体(2mm径、6mm径円形)を得ることができた。
レーザーカット後、不要な積層体(2mm径、6mm径の円以外の部分)を剥し、保護フィルムを再度貼ることにより、図4のような積層体支持フィルムを得ることができた。
a:保護フィルム
b:積層フィルム(少なくとも基材と無機層とからなるフィルム)
c:保護フィルム
d:保護フィルム
e:積層体
f:粘着シート/フィルム
g:レーザー光
h:台/シート
1:レンズ
2:光選択透過フィルター
3:センサー

Claims (8)

  1. 基材の少なくとも一方の面に無機層を有する積層体から構成される光選択透過フィルターであって、
    該積層体は、基材の片面又は両面に少なくとも無機層を積層して得た積層フィルムを、レーザーカットして得られるものであり、
    該積層体は、厚み200μm以下であり、曲線部分を含み、かつ最大径が6mm以下の形状からなり、
    該基材は、少なくとも樹脂層を含み、
    該基材は、樹脂層からなる樹脂フィルム又は樹脂層を有するガラスフィルムであり、
    該無機層は、多層蒸着膜であることを特徴とする光選択透過フィルター
  2. 前記積層体の最大径は、3.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光選択透過フィルター。
  3. 前記積層体は、更に、保護層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光選択透過フィルター
  4. 前記保護層は、ポリエチレンテレフタラート系樹脂フィルム及び/又はポリエチレン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の光選択透過フィルター。
  5. 前記積層体は、基材の両面に無機層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光選択透過フィルター
  6. 前記積層体は、割れ及びヒビを有していないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
  7. 支持体フィルム上に、請求項1〜6のいずれかに記載の光選択透過フィルターを複数個有することを特徴とする積層体支持フィルム。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の光選択透過フィルターを備えてなることを特徴とするレンズユニット。
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