JP6342645B2 - 積層用樹脂組成物及びその用途 - Google Patents

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本発明は、積層用樹脂組成物及びその用途に関する。より詳しくは、基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物、該樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる積層体、光選択透過フィルター及び撮像素子に関する。
近年、表示素子や撮像素子等の光学デバイス等、種々の分野においては、多機能化を図るため、ガラス等からなる基板上に様々な層を形成した積層構造の部材・材料(積層体又は積層物とも称す)が広く用いられるようになっている。基板上に形成する層としては、例えば、タッチパネル等に用いられるITO(インジウム・スズ複合酸化物)透明導電層、撮像素子における光学ノイズを低減させる赤外線(IR)カット層、基板表面での光の反射を低減させる反射防止(AR)層等が挙げられる。
撮像素子は、固体撮像素子又はイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号に変換し、電気信号として出力する電子部品であり、例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に使用されている。このような撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを備えた構成からなるが、多機能化及び高性能化を図るため、画像処理等の妨げとなる光学ノイズの低減への要求が高まっている。
撮像素子における光学ノイズの低減は、従来、銅イオンをドープさせたブルーガラス等の吸収ガラスや、光学ノイズを低減させる光吸収機能又は反射機能を樹脂成分にもたせた樹脂フィルター等を備えることで行われてきた。しかし、吸収ガラスは耐熱性に非常に優れるものの、クラック(割れ)やチッピング(欠け)が生じやすく、加工性が充分ではない。他方、樹脂フィルターはクラックやチッピングの発生を抑制できるうえ、加工性にも優れるが、その一方で、ガラスに比べると耐熱性は充分ではなく、線膨張による反りの発生も否めない。そこで近年では、ガラス等の基板上に光吸収機能や反射機能を有する層を形成した、積層構造の光学フィルターの開発が進められている。
従来の積層構造の光学フィルター等としては、例えば、ガラス基板上に、光吸収剤を含む第1の層と屈折率の異なる第2の層とを具備する光吸収フィルター(特許文献1参照);ポリエステルフィルム基材等の透明基板に、樹脂バインダ及び近赤外線吸収色素からなる有機膜層と、無機膜層とを形成した近赤外線吸収フィルタ(特許文献2参照);ガラス基板上に、フタロシアニン化合物を含有する着色硬化性組成物からなる着色膜を有するカラーフィルタ(特許文献3参照);ガラス基板上に、液状樹脂組成物等からなる有機高分子層と、誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜とを有する近赤外線カットフィルタ(特許文献4参照);ガラス基板上に、近赤外線吸収剤を含有する樹脂層を有する積層板を含み、所定の透過率を示す近赤外線カットフィルター(特許文献5参照);基板上に、バインダー樹脂及び赤外線遮蔽材を含む固体撮像素子用硬化性組成物より形成される層を有する固体撮像素子(特許文献6参照);等が開示されている。
特開2008−51985号公報 特開2006−106570号公報 特開2012−167145号公報 特開2013−50593号公報 特開2012−103340号公報 特開2012−189632号公報
上述したように、近年では、基材上にIRカット層等を形成した積層体の開発が進んでおり、それを得るための積層用材料の検討がなされている。
ところで、基板上にIRカット層等の層を形成する際は、緻密な層を形成する観点から、高温で蒸着する方法が望まれている。そのため、基材上に形成する層の材料(積層用材料)には、高い耐熱性が求められている。
また、例えば、デジタルカメラモジュール等の撮像素子は、携帯電話等に搭載されるために小型化が進み、低コスト化も求められているため、撮像レンズとして従来の無機ガラスに代わって樹脂レンズの採用が進んでいる。このような部材の実装工程においては、低コスト化を実現するため、半田リフロー方式を採用することが主流となっている。そのため、レンズ等の表面に形成する層の材料には、その硬化物(成形体)がリフロー工程に耐え得る耐熱性を有することが求められる。
上記のように、特許文献1〜6では、多層構造のIRカットフィルター等が提案されている。しかしながら、従来の技術には、上述したような高温蒸着を行う際の耐熱性及びリフロー工程における耐熱性等の特性に優れた成形体を与える樹脂組成物について、更に検討する余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、基材上に層を形成する材料として優れた耐熱性を有する積層用樹脂組成物、及び、該積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる、優れた耐熱性を有する積層体を提供することを目的とする。本発明はまた、このような積層体を用いた光選択透過フィルター及び撮像素子を提供することも目的とする。
本発明者等は、基材(基板とも称す)上に層を形成する材料としての積層用樹脂組成物について種々検討したところ、樹脂組成物が、分子内に1以上のオキシラン環を有し、更に水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物と、色素として600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素とを含むものであると、該樹脂組成物が耐熱性に優れ、基材上に高温蒸着により層を形成するための材料として好適に用いることができることを見いだした。また、このような樹脂組成物を基材上に積層して得られた積層構造の硬化物(積層体又は積層物とも称す)が、リフロー工程に耐え得る耐熱性を有するものとなることを見いだした。そして、このような積層体を含む光選択透過フィルター及び撮像素子が、光学分野やオプトデバイス分野に極めて有用であることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物であって、該樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、色素を含み、該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含み、該色素は、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素を含む積層用樹脂組成物である。
本発明はまた、上記積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる積層体でもある。
本発明は更に、上記積層体を含む光選択透過フィルターでもある。
本発明はそして、上記積層体を含む撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本明細書中、「吸収極大」とは、波長と吸光度との関係を、X軸とY軸との2次元グラフ(但し、X軸を波長とし、Y軸を吸光度とする)で表した場合に、吸光度が増加から減少に転じる頂点を意味し、この頂点の波長を「吸収極大波長」という。また、吸収極大波長(吸収ピーク波長とも称す)の中で、吸光度が最大のものを、「最大吸収波長」又は「最大吸収ピーク波長」と称す。
「吸収幅(吸収帯幅とも称す)」とは、任意の透過強度における波長幅である。吸収幅が広い(大きい)と、光選択透過性により優れ、また、反射膜の設計条件が広がるために光選択透過フィルター(赤外線カットフィルター等)の製造が容易になる。
〔積層用樹脂組成物〕
本発明の積層用樹脂組成物(単に「樹脂組成物」とも称す)は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、色素を必須成分とするが、本発明の効果を妨げない範囲でその他の成分を含有してもよく、これらの成分はそれぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
−色素−
本発明の積層用樹脂組成物において、色素は、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素(以下、特定色素とも称す)を含む。このような色素を含むことで、特に780nm〜10μmの赤外線を低減でき、これに起因する光学ノイズを除去することが可能となる。本発明では、このように吸収極大が600〜900nmと、従来の近赤外線吸収剤の中でも短波長側に吸収極大を有する色素を必須とするが、これによって、可視光透過率が高く、かつ近赤外領域の遮断性能に優れるという、光学ノイズ低減のために好適な性能が得られることになる。上記特定色素として好ましくは、600〜800nmの波長域に吸収極大を有する色素であり、より好ましくは650〜750nmの波長域に吸収極大を有する色素である。
上記特定色素は、600〜900nmの波長域に吸収極大を複数有していてもよい。600〜900nmの波長域における吸収極大のうち、最も短波長側の吸収極大が650〜750nmの波長域にあることが好ましい。
上記特定色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域に実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。
上記樹脂組成物において、色素は、樹脂組成物中に分散又は溶解されていることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち、色素が樹脂組成物に含まれる樹脂成分や溶媒に溶解するものであることが好ましい。色素は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記樹脂組成物に含まれる色素は、分子内にπ電子結合を有する色素が好ましい。分子内にπ電子結合を有する色素としては、芳香環を含む化合物であることが好適である。より好ましくは、1分子内に2個以上の芳香環を含む化合物である。
なお、上記分子内にπ電子結合を有する色素が、上述した波長域に吸収極大を有するものであること、すなわち特定色素であること、が特に好ましい。
上記分子内にπ電子結合を有する色素としては、例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。耐熱性、耐候性の観点から、双性イオン構造及びカチオン性構造のいずれも有さない色素が好ましく、特に、フタロシアニン系色素及び/又はポルフィリン系色素が好適である。より好ましくは、金属フタロシアニン錯体及び/又は金属ポルフィリン錯体である。
上記ポルフィリン系色素としては、テトラアザポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体が好適である。
上記フタロシアニン系色素としては、金属フタロシアニン錯体が好適であり、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等の金属元素を中心金属とする金属フタロシアニン錯体が挙げられる。これらの金属元素の中でも、溶解性又は分散性(例えば、樹脂成分への溶解又は分散性)、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。すなわち中心金属として好ましくは銅、亜鉛又はバナジウムであり、より好ましくは銅及び亜鉛である。銅を用いたフタロシアニンは、どのような樹脂成分(バインダー樹脂)に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。また、亜鉛を中心金属とするフタロシアニン錯体(フタロシアニン系色素)は、樹脂成分に対する溶解性に優れ、光選択透過性がより高い積層体が得られ易いため、好適である。
上記フタロシアニン系色素の中でも特に好ましくは、下記一般式(I)で表される化合物である。このような化合物を含む樹脂組成物を用いると、クラックやチッピング、反りの発生がより抑制され、かつ高温蒸着やリフロー工程にもより充分に耐えうる積層体を得ることが可能になる。また、このような積層体を撮像素子用途に適用した場合に、フレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性を充分に低減することもできる。更に、該積層体を、例えば反射膜や干渉膜と併用した場合に、人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することも可能になる。また、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を用いると、本発明の樹脂組成物を用いて得た積層体が650〜680nmの波長域に吸収極大を持ちやすくなる。
Figure 0006342645
式中、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。Ra1〜Ra4、Rb1〜Rb4、Rc1〜Rc4及びRd1〜Rd4は、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)、又は、置換基を有していてもよいOR基を表す。OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。但し、Ra1〜Ra4及びRd1〜Rd4の全てが水素原子(H)又はフッ素原子(F)を表すことはない。
上記一般式(I)において、OR基を構成するRは、アルキル基、フェニル基又はナフチル基であり、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Rの中でも好ましくは、フェニル基又は置換基を有するフェニル基である。
上記OR基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシカルボニル基(−COOR)、ハロゲン基(ハロゲン原子)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)等の電子求引性基;アルキル基(−R)、アルコキシ基(−OR)等の電子供与性基;等が挙げられ、これらの1又は2以上を含んでいてもよい。また、電子求引性基として好ましくは、アルコキシカルボニル基、クロル基(塩素原子)又はシアノ基であり、より好ましくは、メトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、クロル基又はシアノ基である。
なお、アルコキシカルボニル基(−COOR)を構成するRは、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適であり、アルキル基(−R)を構成するRは、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適である。アルコキシカルボニル基として好ましくは、メトキシカルボニル基又はメトキシエトキシカルボニル基であり、アルキル基として好ましくは、メチル基又はジメチル基である。
上記OR基が置換基を有する場合、その置換基の数は特に限定されないが、例えば、1〜4個であることが好ましい。より好ましくは1又は2個である。
なお、1個のOR基が2個以上の置換基を有する場合、当該置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、OR基における置換基の位置は特に限定されるものではない。
上記Ra1〜Ra4、Rb1〜Rb4、Rc1〜Rc4及びRd1〜Rd4として好ましくは、これらのうち少なくとも1以上がOR基を表すことである。これにより、耐光性により優れるものとなる。
ここで、OR基が結合する炭素は、フタロシアニン骨格の4個の芳香環におけるα位炭素(「Cα」と略し、フタロシアニン環の1,4,8,11,15,18,22,25位の炭素を表す)でもよいし、β位炭素(「Cβ」と略し、フタロシアニン環の2,3,9,10,16,17,23,24位の炭素を表す)でもよいが、少なくともα位炭素(Cα)であることが好適である。中でも、α位炭素(Cα)のうち平均2個以上の炭素にOR基が結合した形態が好ましく、より好ましくは、各芳香環に1個以上のα位炭素(Cα)にOR基が結合した形態である。また、β位炭素(Cβ)のうち平均4個以上の炭素に水素原子又はフッ素原子が結合した形態であることも好適である。より好ましくは、β位炭素(Cβ)のうち平均6個以上の炭素に水素原子又はフッ素原子が結合した形態であり、更に好ましくは、β位炭素(Cβ)の全ての炭素に水素原子又はフッ素原子が結合した形態である。このような形態とすることで、上述した一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を用いることによる効果をより一層発揮することが可能となる。
上記一般式(I)において、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。金属原子、及び、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を構成する金属原子としては特に限定されず、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、溶解性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。より好ましくは銅又は亜鉛である。銅を中心金属とするフタロシアニン系色素は、どのような樹脂成分(バインダー樹脂)に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。亜鉛を中心金属とするフタロシアニン錯体(フタロシアニン系色素)は、樹脂成分に対する溶解性に優れ、光選択透過性がより高い積層体が得られ易いため、好適である。
上記金属ハロゲン化物を構成するハロゲン原子は特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記一般式(I)で表される化合物は、例えば、特公平6−31239号公報等に記載の通常の方法を用いて合成することができる。具体的には、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種(これらを総称して「金属化合物」ともいう)と、下記一般式(i):
Figure 0006342645
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表す。OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。)で表されるフタロニトリル誘導体とを、無溶媒又は有機溶媒の存在下で、加熱して反応させることにより得ることが好適であり、中でも、有機溶媒中で反応させることが好ましい。フタロニトリル誘導体の環化反応は、特に制限されるものではなく、特公平6−31239号公報、特許第3721298号公報、特許第3226504号公報、特開2010−77408号公報等に記載された従来公知の方法を、単独で又は適宜修飾して、適用することができる。置換基及びOR基の具体的な形態は、上記一般式(I)に関して上述したとおりである。
上記一般式(i)において、R〜Rとして好ましくは、これらのうち少なくとも1以上がOR基を表すことである。中でも、R及び/又はR(α位)がOR基であることが好ましい。また、R及び/又はR(β位)が水素原子又はフッ素原子であることが好ましく、より好ましくは、R及びRのいずれもが水素原子又はフッ素原子である形態である。
上記反応ではまた、上記一般式(i)で表されるフタロニトリル誘導体として、R〜Rのうち1以上が異なる2種以上の化合物を併用してもよい。
上記金属化合物としては、上記フタロニトリル誘導体と反応して上記一般式(I)で表される化合物を与えるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物;当該金属の、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物;当該金属の、酢酸塩等の有機酸金属;当該金属の、アセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル;等が挙げられる。
具体的には、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、マグネシウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物(例えば、塩化バナジウム、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化ガリウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化インジウム、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、フッ化銅、フッ化亜鉛、フッ化インジウム等);一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化ラジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等の金属酸化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸亜鉛等の有機酸金属;アセチルアセトナート等の錯体化合物及びコバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニル;等が挙げられる。
上記金属化合物の中でも、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、更に好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム、塩化銅、ヨウ化銅及びヨウ化亜鉛であり、特に好ましくは塩化銅、塩化バナジウム及びヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、上記一般式(I)における中心金属は、亜鉛ということになる。
上記金属化合物と、上記一般式(i)で表されるフタロニトリル誘導体との反応を有機溶媒中で行う場合、有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル等の不活性溶媒;ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、1−クロロナフタレン、N−メチル−2−ピロリドン、1−メチルナフタレン、トリメチルベンゼン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、エチレングリコールを使用することが好ましい。より好ましくはトリメチルベンゼン、ベンゾニトリルである。
上記反応で溶媒を使用する場合、有機溶媒の使用量は、上記一般式(i)で示されるフタロニトリル化合物の濃度が1〜50質量%となるような量とすることが好適である。より好ましくは、10〜40質量%となるような量である。
上記反応に関し、反応温度は、原料の種類、溶媒の種類、その他の条件により必ずしも一定しないが、通常、100〜300℃とすることが好適である。より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。また、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下、特に好ましくは200℃以下である。また、発熱反応を制御するために段階的に温度を上げてもよい。反応時間も特に制限はないが、通常、2〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは5〜20時間である。
上記反応はまた、大気雰囲気中で行ってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガス又は酸素含有ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、又は、酸素/窒素混合ガス等の流通下)で行われることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、及び/又は、乾燥を行ってもよい。
上記樹脂組成物はまた、2種以上の色素を含むものであってもよい。中でも、当該2種以上の色素が、吸収特性の異なる色素α及び色素βを少なくとも含み、該色素αは、フタロシアニン系色素であり、かつ該色素αと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、600〜650nm及び680〜750nmの波長域にそれぞれ吸収極大を示すものであり、該色素βは、該色素βと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を示すものであることが好適である。これにより、本発明の樹脂組成物又は積層体を撮像素子用途に適用した場合に、充分な光吸収幅を確保でき、かつフレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性を充分に低減することができる。また、例えば反射膜や干渉膜と併用した場合に、人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することも可能になる。
上記色素αはフタロシアニン系色素であるが、色素βもまた、フタロシアニン系色素であることが好ましい。フタロシアニン系色素については上述したとおりである。中でも、色素α及び色素βは、上述した一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素であることが好適である。
上記色素αは、該色素αと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、600〜650nm及び680〜750nmの波長域にそれぞれ吸収極大を示すものである。この2つの吸収極大波長のうち、680〜750nmの波長域における最大吸収波長をλα1、600〜650nmの波長域における最大吸収波長をλα2とすると、これらのうち吸収率が最も大きいピークの波長(すなわち透過率が最も低いピークの波長)は、λα1であることが好ましい。すなわち、680〜750nmの波長域における最大吸収波長での吸光度をAα1、600〜650nmの波長域における最大吸収波長での吸光度をAα2とすると、Aα2<Aα1となることが好適である。これにより、色素βと併用した際に、より優れた光選択透過性を示すことができる。
上記色素αが有する600〜650nmの波長域における最大吸収波長λα2は、600〜630nmであることが好ましい。また、680〜750nmの波長域における最大吸収波長λα1は、680〜730nmであることが好適である。
上記色素αは、600〜650nmの波長域に存在する最大吸収波長λα2での吸光度Aα2が、0.3以下であることが好適である。より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.2以下である。また、680〜750nmの波長域に存在する最大吸収波長λα1での吸光度Aα1が、0.1以上であることが好適である。より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上である。
上記色素βは、該色素βと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を示すものである。650〜680nmの波長域に存在する最大吸収波長での吸光度をAβとすると、下記関係式;
Aα2<Aβ<Aα1
を満たすことが好適である。すなわち、上記色素αの吸収極大のうち、680〜750nmの波長域における最大吸収波長での吸光度(Aα1)、600〜650nmの波長域における最大吸収波長での吸光度(Aα2)、及び、色素βの650〜680nmの波長域における最大吸収波長での吸光度(Aβ)は、上記関係式を満たすことが好適である。これにより、上記樹脂組成物から得られる硬化物(例えば、樹脂層、積層体)の吸収スペクトルを測定した場合に、各色素が有する吸収極大ピークが重なって、全体としてブロードな吸収ピークを示す吸収特性を有する、すなわちより充分な吸収帯幅を確保できる。
このように上記樹脂組成物が2種以上の色素を含み、該2種以上の色素が、吸収特性の異なる色素α及び色素βを少なくとも含み、該色素αは、フタロシアニン系色素であり、かつ該色素αと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、600〜650nm及び680〜750nmの波長域にそれぞれ吸収極大を示すものであり、該色素βは、該色素βと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を示すものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。
以下では、色素α及び色素βとしてより好ましい形態をそれぞれ更に説明する。
(i)色素α
上記色素αは、色素αと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、600〜650nm及び680〜750nmの波長域にそれぞれ吸収極大を示すフタロシアニン系色素である。色素αとして好ましくは、上述したフタロシアニン系色素であるが、中でも、下記一般式(II)で表される化合物であることがより好適である。
Figure 0006342645
式中、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。このうち、α位の原子(Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13、Z16)、及び、β位の原子(Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14、Z15)は、下記式(ii−a)、(ii−b)若しくは(ii−c)で表される置換基、又は、ハロゲン原子等で置換されていてもよいし、水素原子でもよい。
Figure 0006342645
式(ii−a)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、同一又は異なって、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、又は、−COORを表す。Rは、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。mは、0〜5の整数である。
式(ii−b)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、同一又は異なって、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、又は、−COORを表す。Rは、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。mは、0〜7の整数である。
式(ii−c)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基を表す。
ここで、600〜650nm及び680〜750nmの波長域に分かれて2つの吸収極大を示すためには、α位の原子は置換されていることが好ましい。置換基が(ii−a)又は(ii−b)である場合、R、Rは、少なくともその1つがオルト位又はメタ位に結合していることが好ましく、オルト位に結合していることがより好ましい。置換基が(ii−c)である場合、Z〜Z16の16個の原子のうち、(ii−c)で置換されている原子数が4〜16個であることが好ましく、8〜16個であることがより好ましく、12〜16個であることが更に好ましい。β位の原子は置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい(すなわち水素原子のままであってもよい)が、溶解性の観点から(ii−a)、(ii−b)若しくは(ii−c)で表される置換基、又は、ハロゲン原子等で置換されていることが好ましく、分子の平面性を崩して会合度を抑える観点から(ii−c)で表される置換基、又は、ハロゲン原子で置換されていることがより好ましい。上記により、色素αは会合体を形成しにくくなるため、色素αと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、600〜650nm及び680〜750nmの波長域に分かれて2つの吸収極大を示しやすくなる。
(ii)色素β
上記色素βは、上述した吸収特性を有するものであればよいが、例えば、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、クロリン系色素、コリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等であることが好ましい。これらの中でも、耐光性、耐熱性の観点からフタロシアニン系色素が好適である。
上記色素βとして特に好ましくは、下記一般式(III)で表される化合物である。このような構造の色素βを用いることで、色素βと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を持ちやすくなる。
Figure 0006342645
式中、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。このうち、α位の原子(Z17、Z20、Z21、Z24、Z25、28、Z29、Z32)、及び、β位の原子(Z18、Z19、Z22、Z23、Z26、Z27、Z30、Z31)は、下記式(iii−a)、(iii−b)若しくは(iii−c)で表される置換基、又は、ハロゲン原子等で置換されていてもよいし、水素原子でもよい。
Figure 0006342645
式(iii−a)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、同一又は異なって、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、又は、−COORを表す。Rは、置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基を表す。mは、0〜5の整数である。
式(iii−b)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Rは、同一又は異なって、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、又は、−COORを表す。Rは、置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基を表す。mは、0〜7の整数である。
式(iii−c)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。R10は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基を表す。
ここで、650〜680nmの波長域に吸収極大を示すためには、β位の原子は置換されていることが好ましい。導入される置換基は、フタロシアニン構造の平面性を保つ構造であることが好ましく、(iii−a)や(iii−b)のような構造で置換されていることが好ましい。中でも、R、Rは、少なくともその1つがメタ位又はパラ位に結合していることがより好ましく、パラ位に結合していることが更に好ましい。また、残基は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であるが、溶解性の高さから水素原子、フッ素原子、塩素原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子であることが更に好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。α位の原子は置換されていてもよく、(iii−a)、(iii−b)、水素原子(すなわち無置換であることを意味する)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子で置換されていることが好ましい。
高平面性の観点からは、(iii−a)、水素原子(無置換)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子で置換されていることがより好ましく、水素原子(無置換)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子で置換されていることが更に好ましく、水素原子(無置換)、又は、フッ素原子で置換されていることが特に好ましい。
高溶解性の観点からは、(iii−a)、(iii−b)、水素原子(無置換)、フッ素原子、又は、塩素原子で置換されていることがより好ましく、水素原子(無置換)、又は、フッ素原子で置換されていることが更に好ましく、フッ素原子で置換されていることが特に好ましい。
上記式(III)で表される色素を用いると、色素βの会合性がより高まり、色素βと測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を持ちやすくなる。したがって、上記式(III)で表される色素を用いることが特に好適である。
上記色素βとして更に好ましくは、下記一般式(IV):
Figure 0006342645
(式中、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。X〜X及びY〜Yは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表す。OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。但し、X及びYのうち少なくとも1個、X及びYのうち少なくとも1個、X及びYのうち少なくとも1個、並びに、X及びYのうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいOR基を表す。)で表される化合物である。これにより、優れた光選択透過性とともに高い耐熱性を発揮できるという作用効果をより充分に発揮することが可能となる。また、積層体の耐光性がより向上される。
上記一般式(IV)において、M、OR基及び置換基については、上記一般式(I)におけるものと同様である。本発明では、上記一般式(IV)におけるX〜X及びY〜Yのうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表すことが好適である。これにより、上記フタロシアニン系色素の会合性がより高くなることに起因して、遮断したい波長域をシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すという光選択透過性(遮断透過特性)をより一層発揮できるとともに、反射膜による入射角依存性をより大幅に低減することが可能になる。
上記X及びYのうち少なくとも1個、X及びYのうち少なくとも1個、X及びYのうち少なくとも1個、並びに、X及びYのうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいOR基を表す。好ましくは、置換基を有していてもよいフェノキシ基(すなわち、フェノキシ基又は置換基を有するフェノキシ基)である。より好ましくは、X〜X及びY〜Yの全てが、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表すことである。中でも、置換基を有するフェノキシ基が好ましい。置換基としては、電子吸引性基が好ましい。
上記一般式(IV)で表される化合物は、上述した一般式(i)で表される化合物と同様にして得ることができる。具体的には、上記金属化合物と、下記一般式(iv):
Figure 0006342645
(式中、X及びYは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいOR基を表し、OR基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。)で表されるフタロニトリル誘導体とを、無溶媒又は有機溶媒の存在下で、加熱して反応させることにより得ることが好適であり、中でも、有機溶媒中で反応させることが好ましい。フタロニトリル誘導体の環化反応は、上述したとおりであり、上記金属化合物、有機溶媒の種類及び量、並びに、反応条件も上述したとおりである。
上記一般式(iv)において、X及びYとして好ましくは、これらのうち少なくとも1個が、置換基を有していてもよいOR基を表すことである。より好ましくは、X及びYのいずれもが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいOR基を表すことである。
上記反応では、上記一般式(iv)で表されるフタロニトリル誘導体として、X及びYのうち少なくとも1個が置換基を有していてもよいOR基を表す形態の化合物を少なくとも使用することが好適である。なお、上記X及びYのいずれもが、置換基を有していてもよいOR基以外の基(原子)を表す形態の化合物と、X及びYのうち少なくとも1個が置換基を有していてもよいOR基を表す形態の化合物とを併用してもよい。
ここで、一般に色素の骨格によって吸光係数が異なり、様々な骨格の色素に対して質量比を規定することは不可能なため、色素αと色素βとの質量比を規定することは困難であるが、例えば、色素α/色素β(質量比)=80/20〜40/60であることが好適である。これにより、より充分な吸収帯幅を有し、かつシャープな透過吸収特性を示し、しかも反射膜と組み合わせた場合に入射角依存性を充分に低減できるという作用効果をより充分に発揮することが可能となる。質量比としてより好ましくは、70/30〜50/50である。
上記樹脂組成物において、全ての色素の総量は、例えば、樹脂組成物の総量100質量%に対して、0.0001質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。これにより、可視光透過率がより高く、かつ近赤外領域の遮断性能により優れる硬化物を得ることが可能になる。色素の含有量の下限値としてより好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、最も好ましくは1質量%以上である。また、上限値としてより好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
上記樹脂組成物は、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素(特定色素)を含む限り、他の色素を含んでいてもよい。例えば、600〜900nmの波長域以外の近赤外線、赤外線、紫外線、可視光の各帯域において特定の波長に特性吸収を有する色素を使用目的に応じて適宜選択すればよく、光学材料の各種用途に適用することができる。
上記他の色素の含有量は、色素の総量100質量%に対し、50質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。言い換えれば、色素の総量100質量%に対し、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素が50質量%以上であることが好適であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
−オキシラン化合物−
本発明の積層用樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物(単にオキシラン化合物とも称す)を含み、該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含む。すなわち、本発明の積層用樹脂組成物は、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物を含むものであり、該水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の他に、水酸基やエステル基を含まない他のオキシラン化合物を含んでいてもよい。
上記オキシラン化合物は、オキシラン環というカチオン硬化性基を有し、熱又は光によって硬化(重合)する化合物(カチオン硬化性化合物)である。上記樹脂組成物がオキシラン化合物を含むことにより、硬化物の収縮量を充分に低減することができるうえ、硬化までの時間が短時間となって生産性が高まり、得られる硬化膜(樹脂層)も、耐熱性(耐熱分解性及び耐熱着色性)や耐薬品性に優れたものとなる。また、上記オキシラン化合物が、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物であることで、上記樹脂組成物が接着性に優れたものとなる。
本明細書中、熱又は光によって硬化(重合)する化合物を総称して「硬化性化合物」又は「樹脂成分」といい、そのうちカチオン硬化性基を有する硬化性化合物を総称して「カチオン硬化性化合物」という。
また、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」と称す。「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル結合又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
上記水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物としては、水酸基及び/又はエステル基を有するエポキシ化合物が好適である。また、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、又は、脂肪族エポキシ化合物が好ましい。中でも、より短時間で硬化物が得られる観点から、多官能エポキシ化合物が好ましい。
上記エポキシ化合物に関し、脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格とも称す)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基(特に好ましくはオキシラン環)等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、特に、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。また、硬化速度をより高めることができる点で、分子中に脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物が好適である。また、分子中に脂環式エポキシ基を1個有し、かつビニル基等の不飽和二重結合基を有する化合物も、脂環式エポキシ化合物として好ましく用いられる。
上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が好適である。また、上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド等が挙げられる。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より低吸水率、高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また離型性を更に高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物とも称す)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物;等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。中でも、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキシラン化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物又は芳香族エポキシ化合物が特に好適である。これらは、硬化時にエポキシ化合物(オキシラン化合物)自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらを含む樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる樹脂層及び積層体を高生産性で得ることができる。このように上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態である。
上記オキシラン化合物が脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態において、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物の含有量としては、これらの合計量が、オキシラン化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これにより、脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物による作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
なお、本発明においては、樹脂組成物中に、従来の触媒では硬化し難かった芳香族エポキシ化合物を含む場合でも、充分に硬化した硬化物(樹脂層)を得ることができる。そのため、芳香族エポキシ化合物の種類や組成物中の含有量を適宜選択することにより屈折率等がより制御された積層体を得ることができる。オキシラン化合物として芳香族エポキシ化合物を100質量%とする形態、及び、芳香族エポキシ化合物と他のオキシラン化合物とを併用する形態、のいずれも、本発明の好ましい形態である。後者においては、芳香族エポキシ化合物と、他のオキシラン化合物として脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことがより好適である。
上記樹脂組成物においては、オキシラン化合物として、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物を含むことを必須とするが、その他のオキシラン化合物を含んでいてもよい。その他のオキシラン化合物として、ノボラック・アラルキルタイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等を用いることができる。
上記樹脂組成物において、オキシラン化合物の含有量は、接着性をより向上する観点から、樹脂組成物中の硬化性化合物の総量100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
また水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の含有量は、樹脂組成物に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%に対し、50質量%以上であることが好適である。これにより、接着性(例えば、基材又は他の層との接着性、他の部材・材料との接着性等)をより高めることが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
上記オキシラン化合物はまた、重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物を含むことが好ましい。重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物の含有量は、樹脂組成物に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%に対し、10〜100質量%であることが好ましい。これにより、上記樹脂組成物は、基材(基板とも称す)上に樹脂層を形成する際の成膜性により優れたものとなる。このように上記オキシラン化合物が、オキシラン化合物全体100質量%に対して、重量平均分子量が2000以上の化合物を10〜100質量%含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%である。
上記重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物において、重量平均分子量は、2200以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上である。また、成膜性の観点や、硬化物(樹脂層)のガラス転移温度を高く保つという観点から、100万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以下、更に好ましくは1万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
−他の硬化性化合物−
本発明の積層用樹脂組成物は、上述したオキシラン化合物以外にも、硬化性の官能基を有する有機化合物(他の硬化性化合物と称す)を1種又は2種以上含んでいてもよい。
上記硬化性の官能基とは、熱又は光によって硬化反応する官能基(すなわち樹脂組成物を硬化反応させる基を意味する)をいい、例えば、オキシラン基(オキシラン環)やエポキシ基の他、オキセタン基(オキセタン環)、エチレンスルフィド基、ジオキソラン基、トリオキソラン基、ビニルエーテル基、スチリル基等のカチオン硬化性基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基;等が好適である。したがって、上記他の硬化性化合物としては、カチオン硬化性基を有する化合物(「カチオン硬化性化合物」又は「カチオン硬化性樹脂」とも称す)、及び/又は、ラジカル硬化性基を有する化合物(「ラジカル硬化性樹脂」又は「ラジカル硬化性化合物」とも称す)であることが好ましい。これにより、硬化までの時間が短時間となって生産性がより高まり、得られる硬化物も耐熱性(耐熱分解性、耐熱着色性)により優れたものとなる。中でも、硬化収縮率が低いために金型等での形状付与がし易くなるという点で、カチオン硬化性化合物を含むことがより好適である。なお、上述したオキシラン化合物は、カチオン硬化性化合物に含まれる。
上記カチオン硬化性化合物(オキシラン化合物及び他のカチオン硬化性化合物)はまた、1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物、すなわち多官能カチオン硬化性化合物を含むことが好適である。これにより、硬化性がより高められ、各種特性により優れる硬化物を得ることができる。1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物としては、同一のカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいし、異なるカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよい。本発明では、多官能カチオン硬化性化合物としては特に、多官能脂環式エポキシ化合物、多官能水添エポキシ化合物が好ましい。これらを用いることで、更に短時間で硬化物を得ることが可能になる。
上記他の硬化性化合物として具体的には、例えば、分子内に1個以上のオキセタン基(オキセタン環)を有する化合物(オキセタン化合物と称す)が挙げられる。上記樹脂組成物がオキセタン化合物を含む場合、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。
上記オキセタン化合物としては、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好適である。また、硬化物の強度向上の観点では、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、単官能のオキセタン化合物としては、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、多官能のオキセタン化合物としては、例えば、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記オキセタン化合物として具体的には、例えば、ETERNACOLL(R)EHO、ETERNACOLL(R)OXBP、ETERNACOLL(R)OXMA、ETERNACOLL(R)HBOX、ETERNACOLL(R)OXIPA(以上、宇部興産社製);OXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610(以上、東亜合成社製)等が好適である。
−硬化剤−
上記樹脂組成物は、更に硬化剤を含むことが好適である。硬化剤は1種又は2種類以上併せて用いることができる。
上記硬化剤は、硬化反応や、硬化性化合物(硬化性樹脂とも称す)の種類等に応じて適宜選択すればよい。例えば、熱硬化を行う場合は、熱潜在性カチオン硬化触媒の他、熱潜在性ラジカル硬化触媒、酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いることができる。中でも、熱潜在性カチオン硬化触媒、熱潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好適であり、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることが好ましい。また、活性エネルギー線照射による硬化を行う場合は、硬化剤として光重合開始剤を用いることができる。中でも光潜在性カチオン硬化触媒、光潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好適であり、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に光潜在性カチオン硬化触媒を用いることが好ましい。このように上記硬化剤として特に好ましくは、カチオン硬化触媒である。
なお、本明細書では、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等の、カチオン硬化反応を促進する触媒を「カチオン硬化触媒」とも称す。カチオン硬化触媒は、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
上記硬化剤のうち熱潜在性カチオン硬化触媒は、硬化剤として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂類等とは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことなく、また熱潜在性カチオン硬化触媒の作用として、硬化反応を充分に促進して優れた効果を発揮することができ、ハンドリング性により優れた一液性樹脂組成物(「一液化材料」ともいう)を提供することができる。
また熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることによって、得られる樹脂組成物から形成される硬化物の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、種々の用途により好適に用いることができるものとなる。通常、屈折率が低い水分が樹脂組成物やその硬化物に含まれると濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン硬化触媒を用いると、優れた耐湿性が発揮できることから、このような濁りが抑制されることになる。耐湿性が向上することで、樹脂組成物中への吸湿が抑制され、紫外線照射又は熱線暴露の相乗効果による酸素ラジカル発生も抑えられるため、樹脂組成物の黄変や強度低下を引き起こすことなく長時間にわたり優れた耐熱性を発揮できる。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、下記一般式(1):
(R Z)+m(AX−m (1)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R、R、R及びRは、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計は、Zの価数に等しい。カチオン(R Z)+mは、オニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
上記一般式(1)の陰イオン(AX−mの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF )、ヘキサフルオロアルセネート(AsF )、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl )等が挙げられる。一般式AX(OH)−で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO )、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO )、フルオロスルホン酸イオン(FSO )、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒の具体的な商品としては、例えば、AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)等のジアゾニウム塩タイプ;UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、Photoinitiator 2074(ローヌプーラン(現ロ−ディア)社製)、WPIシリーズ(和光純薬工業社製)等のヨードニウム塩タイプ;CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ・オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩タイプ;等が挙げられる。
上記熱潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;等が示される。
上記光重合開始剤としては、上述したように光潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好適である。光潜在性カチオン硬化触媒は、光カチオン重合開始剤とも呼ばれ、光照射により、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。光潜在性カチオン硬化触媒を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起されて光分解反応が起こり、光硬化が進むこととなる。
上記光潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が好適である。これらは市場より容易に入手することができ、例えば、SP−150、SP−170(旭電化社製);イルガキュア261(チバ・ガイギー社製);UVR−6974、UVR−6990(ユニオンカーバイド社製);CD−1012(サートマー社製);等が好適である。これらの中でも、オニウム塩を使用することが好ましい。また、オニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩のうち少なくとも1種を使用することが好ましい。
上記光潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;キサントン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類;等が示される。これらの中でも、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類が好適に用いられ、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オンが好適に用いられる。
上記硬化剤としてカチオン硬化触媒又はラジカル硬化触媒を使用する場合、その配合量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算量を意味する。後述する一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を使用する場合は、該ルイス酸とルイス塩基との合計量である。)として、それぞれカチオン硬化性化合物の総量又はラジカル硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。これにより、硬化速度がより高められ、生産性をより向上できるとともに、硬化時や加熱時、使用時等に着色するおそれをより抑制することができる。また、例えば、上記樹脂組成物を用いて得られる硬化物や積層体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からも、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
上記硬化剤として、酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いる場合、これらの硬化剤としては、通常使用されるものを用いればよい。
例えば、酸無水物系硬化剤としては、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、クロレンド酸無水物、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式カルボン酸無水物;ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物等の脂肪族カルボン酸の無水物;フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。
上記フェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF,ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリレン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類;1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類;フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂:キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂が挙げられる。
上記酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤のうち、好ましくは酸無水物系硬化剤であり、より好ましくはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸である。更に好ましくはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸である。
上記酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いる場合、硬化剤の含有量としては、樹脂組成物100質量%に対し、25〜70質量%であることが好適である。より好ましくは35〜60質量%である。また、上記硬化性化合物(硬化性樹脂とも称す)とこれらの硬化剤との混合割合は、硬化性樹脂の1化学当量に対し、硬化剤を0.5〜1.6当量の割合で混合することが好ましい。より好ましくは0.7〜1.4当量、更に好ましくは0.9〜1.2当量の割合で混合することである。
上記硬化剤として好ましくは、上述したように、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等のカチオン硬化触媒を用いることである。これにより、短時間で硬化反応を好適に進めることができ、硬化物を速やかに形成することができるため、製造効率がより向上されることになる。また、耐熱性及び離型性がより高い硬化物を得られるうえ、上記樹脂組成物がハンドリング性に優れた1液型組成物(1液性状)として安定的に存在することができる。このように上記樹脂組成物が更にカチオン硬化触媒を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。中でも、熱潜在性カチオン硬化触媒を少なくとも用いることが好適である。
なお、カチオン硬化触媒とは、カチオン硬化反応を促進する触媒であり、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
上記カチオン硬化触媒は、ホウ素化合物を含むことが好ましく、芳香族フッ素化合物を含むことがより好ましい。
上記カチオン硬化触媒として特に好ましくは、下記一般式(2):
Figure 0006342645
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなる形態である。
これにより、硬化方法としてカチオン硬化を採用することができるため、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の光学用途で求められる特性により優れたものとなる。また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時、成膜時、使用環境)による着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。
なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
上記一般式(2)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であってもよい。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(2)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(「TPB」と称す)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。これらの中でも、硬化物の耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。なお、カチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものを、「TPB系触媒」とも称す。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができるが、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子又は硫黄原子が有する非共有電子対を、上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、上記ルイス塩基は、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましい。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化物の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、硬化物の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
ここで、後述するように、本発明では120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物を含むことが好ましいため、上記ルイス塩基として120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物を用いることも好適である。すなわち120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物は、上記カチオン硬化触媒を形成する一部として、樹脂組成物中に含有されることも好適である。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;TINUVIN770、TINUVIN765、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN744、CHIMASSORB2020FDL(以上、BASF社製);アデカスタブLA52、アデカスタブLA57(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN770、TINUVIN765、アデカスタブLA52、アデカスタブLA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン;等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒において、ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。具体的には、当該カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。ここで、カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
上記カチオン硬化触媒において、これを含む樹脂組成物の保存安定性の観点からは、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が充分ではなくなる場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは0.99以上である。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
上記比n(b)/n(a)としてはまた、ルイス塩基が、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)である場合には、カチオン硬化特性の観点から、酸解離定数が高く、立体障害が大きいことから、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。例えばヒンダードアミンのような構造では、当該範囲が好ましい。
またルイス塩基が、120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物(特にアンモニアや立体障害の小さい低沸点アミン)である場合、中でも特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
上記カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は特に限定されないが、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましい。より好ましくは、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることであり、更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒として具体的には、例えば、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPBアルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
上記樹脂組成物において、カチオン硬化触媒の含有量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算量を意味する。上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を使用する場合は、該ルイス酸とルイス塩基との合計量である)として、樹脂組成物中に含まれるカチオン硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。これにより、硬化速度がより高められ、生産性をより向上できるとともに、硬化時や加熱時、使用時等に着色するおそれをより抑制することができる。また、例えば、上記樹脂組成物を用いて得られる積層体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からも、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
−窒素含有化合物−
上記樹脂組成物はまた、120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物(単に「窒素含有化合物」とも称す)を含むことが好適である。これにより、保存(貯蔵)時や移送時には該窒素含有化合物の存在により、樹脂組成物が保存安定性に優れる一方で、硬化時には該窒素含有化合物の一部又は全部が揮散することに起因して、成膜性に優れ、高外観を呈する硬化物を容易に得ることが可能になる。このように上記樹脂組成物が更に120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記窒素含有化合物の沸点は、上記効果をより一層発現させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは50℃以下、特に好ましくは30℃以下、最も好ましくは5℃以下である。
上記窒素含有化合物の沸点はまた、基材上に上記樹脂組成物から樹脂層を形成する際の温度(例えば、スピンコート法等の後述する溶液塗布法等により樹脂層を形成する際の温度)をA(℃)とすると、(A+80)℃以下であることが好ましい。すなわち例えば、A=室温25℃とすると、窒素含有化合物の沸点は、105℃以下であること好ましい。これにより、上述した窒素含有化合物を用いることによる効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは(A+60)℃以下、更に好ましくは(A+30)℃以下、特に好ましくは(A+10)℃以下である。
上記窒素含有化合物として具体的には、例えば、アンモニア(沸点:−33.34℃);モノメチルアミン(沸点:−6℃)、モノエチルアミン(沸点:16.6℃)、モノプロピルアミン(沸点:48℃)、モノブチルアミン(沸点:78℃)、モノペンチルアミン、エチレンジアミン(沸点:117℃)等の第1級アミン;ジメチルアミン(沸点:6.9℃)、ジエチルアミン(沸点:55.5℃)、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン(沸点:36−37℃)、メチルプロピルアミン(沸点:78℃)、メチルブチルアミン(沸点:90−92℃)、エチルプロピルアミン(沸点:80−85℃)、ピペリジン(沸点:106℃)等の第2級アミン;トリメチルアミン(沸点:2.9℃)、トリエチルアミン(沸点:89.7℃)等の第3級アミン;等が好適である。中でも、アンモニアが、上述した効果をより発現できるため特に好適である。このように上記窒素含有化合物がアンモニアである形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記樹脂組成物において、窒素含有化合物の含有量は、硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.001〜10質量部であることが好適である。より好ましくは0.01〜5質量部である。
なお、本発明では、上記一般式(2)で表されるルイス酸と、ルイス塩基としての窒素含有化合物からなるカチオン硬化触媒を使用することも好適である。この場合の窒素含有化合物の含有割合は、上述した比n(b)/n(a)の好ましい範囲になるように適宜設定することが好ましい。
−カップリング剤−
上記樹脂組成物はまた、カップリング剤を含むことが好適である。カップリング剤を含有することで、上記樹脂組成物及び硬化物(積層体)の耐湿熱性を大幅に改善でき、接着性を向上させることができる。したがって、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能である。
上記カップリング剤としては、例えば、中心金属として、ケイ素、ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウム等を含むものが好適であり、中でも、ケイ素を中心金属として有するものが好ましい。より好ましくはシランカップリング剤である。シランカップリング剤を用いることにより、耐湿熱性をより一層向上することが可能になる。このように上記樹脂組成物が更にシランカップリング剤を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記カップリング剤はまた、反応性基として、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基、オキシラン基(オキシラン環)、アミノ基、メルカプト基、イソシアナート等を有するカップリング剤が好適である。中でも、反応性基としてオキシラン基を有するものが好ましい。
上記カップリング剤として具体的には、例えば、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等のシランカップリング剤が好適に用いられる。
上記樹脂組成物において、カップリング剤の含有量は、硬化性樹脂(硬化性化合物)の総量100質量部に対し、1〜80質量部であることが好適である。これにより、カップリング剤による上記効果をより一層発揮することができる。より好ましくは5〜50質量部、更に好ましくは10〜30質量部である。
なお、カップリング剤の総量100質量%に占めるシランカップリング剤の含有量は、50〜100質量%であることが好適である。より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。
−溶媒−
上記樹脂組成物はまた、溶媒を含むことが好適である。これによって、流動性の高い樹脂組成物とすることができ、コーティング用の樹脂組成物として特に好適なものとなる。
上記溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記溶媒を含む場合、その含有量としては、硬化性化合物(樹脂成分)の総量100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましい。これにより、上記樹脂組成物は、基材(好ましくは透明無機材料層)上に層を形成する材料としてより優れた流動性を発揮することができる。より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、特に好ましくは200質量部以上である。一方、溶媒の含有量は、好ましくは10000質量部以下、より好ましくは5000質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。
ところで、溶媒には、例えば、他の成分(例えば、硬化性化合物や色素)を充分に溶解できること;基板上に該溶液をコーティングした場合に膜厚ムラが少ないこと;コート膜の硬化を進めるために加熱した場合も突沸等による表面荒れを起こさないこと;硬化阻害要因となって膜の強度を下げることがないこと;該溶液を長期間保存した場合にも増粘等の物性変化を誘発しないこと;等が求められ、このような条件をもとに、使用する樹脂組成物中の含有成分(例えば、硬化性化合物や色素、硬化触媒等)の種類に応じて適切な溶媒を選択することが好適である。
そこで、本発明者らが検討を進めたところ、溶媒として、アセトン、γ−ブチラクトン、ジエチルジグリコール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、テトラヒドロフラン(THF)等を用いると、良好な膜を形成することを見いだした。中でも特に、PGMEAは、沸点が145℃と比較的高いのにも関わらず、揮発性が高いことから、溶媒の主成分としてPGMEAを用いた場合には、膜厚ムラが少なく、突沸による表面荒れもなく、また、硬化阻害も少なく、保存安定性も良好であることを見いだし、PGMEAを含む樹脂組成物(樹脂溶液)は、それを用いたコーティング膜の品質が高く、かつ安定生産できる溶液となることを見いだした。PGMEA以外の、誘電率が10未満、かつ分子量が100を超える比較的大きな分子構造の溶媒についても、ほぼ同様の効果を奏することを見いだした。このように上記樹脂組成物が更に溶媒を含み、該溶媒は、誘電率が10未満、かつ分子量が100を超える溶媒(「誘電率が10未満、かつ分子量が100を超える溶媒」を、「溶媒A」と称す)を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
本発明者はまた、PGMEA等の溶媒Aを、例えば、上述した色素βのように高い会合性を有する色素とともに使用した場合に、別の課題が生じることを見いだした。すなわち、溶媒Aを用いた場合、会合性の高い色素分子同士が会合する確率が高くなり、会合度が一定以上となった場合に結晶化し、該色素が溶液中に析出することが分かった。溶液中への析出が起こると、コーティング時に異物となって品質をより高いものとすることができない可能性があり、また、色素濃度も変化してしまうため安定生産が困難となることもある。
そこで、更に検討を進めたところ、溶媒Aを主溶剤として用い、かつ例えば色素βのような高い会合性を有する色素を併用する場合には、誘電率が10以上の溶媒、及び/又は、誘電率が5以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒(以下では、「誘電率が10以上の溶媒」を「溶媒B1」と称し、「誘電率が5以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒」を「溶媒B2」と称し、これら溶媒B1及びB2を「溶媒B」と総称する)を併用すると、色素βの析出を抑制することができることを見いだした。溶媒Bを用いると、溶媒Aの使用の有無に関わらず、会合性の高い色素の結晶化が抑制される。特に、溶媒Bの含有割合が、全溶媒成分100質量%に対し5質量%以上となるように溶媒Bを加えることで、会合性の高い色素の結晶化がより一層抑制され、より安定してコーティング可能な溶液となる。
誘電率が10以上の比較的極性の高い溶媒B1を用いた場合、色素分子同士の会合だけでなく、溶媒分子との会合も形成され、その場合、結晶性が高まらないので析出を抑制することができる。また、誘電率が5以上10未満の溶媒の中でも、分子量が100以下のような比較的小さい構造の溶媒B2を用いた場合は、該溶媒が色素分子間に入り込み、色素と溶媒との会合が形成されるため、前記同様、結晶性の高まりを抑制し、析出を抑制することができる。その一方で、誘電率が5以上10未満で、かつ分子量が100を超える溶媒の場合は、色素分子間に入り込むことが難しく、色素分子同士の会合が進み、結晶となって析出してしまうことがある。また、誘電率が5未満の溶媒の場合は、分子量が100以下であって分子間に入り込めたとしても、色素分子と会合を形成する力が弱いため、色素分子同士の会合が進み、結晶となって析出してしまうことがある。
一方、溶媒B(すなわち、溶媒B1及び/又は溶媒B2)の含有割合が、全溶媒成分100質量%に対し5質量%以上であると、色素分子と会合を形成する溶媒分子の割合が多くなるため、結晶化がより抑制され、色素の析出をより防ぐことが可能になる。このように色素の析出を抑制する効果は、溶媒Bの含有割合が多いほど高いため、溶媒Bの含有割合を多くしてよい。より好ましくは、溶媒Bを、全溶媒成分100質量%に対して50質量%以上含むことであり、更に好ましくは100質量%含むことである。
なお、溶媒Aと溶媒Bとを併用する場合は、溶媒Aに由来するコーティング性能を損なわない範囲で、溶媒Bの含有割合を多くしてよい。
このように上記樹脂組成物が更に溶媒を含み、該溶媒は、誘電率が10以上の溶媒B1、及び/又は、誘電率が5以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒B2を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。また、上記樹脂組成物が更に溶媒を含み、該溶媒は、誘電率が10以上の溶媒B1、及び/又は、誘電率が5以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒B2を含み、該溶媒B1及び溶媒B2の含有割合は、全溶媒成分100質量%に対して5質量%以上である形態も、本発明の好適な形態の1つである。更に、上記樹脂組成物が更に溶媒を含み、該溶媒は、誘電率が10未満、かつ分子量が100を超える溶媒Aと、誘電率が10以上の溶媒B1、及び/又は、誘電率が5以上10未満で、かつ分子量が100以下の溶媒B2とを含み、該溶媒B1及び溶媒B2の含有割合は、全溶媒成分100質量%に対して5質量%以上である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。以上のような形態の樹脂組成物は、例えば、光選択透過フィルター(例えば、赤外吸収フィルター)用のインク溶液等として好適なものとなる。
−光増感剤−
上記樹脂組成物はまた、必要に応じて光増感剤を1種又は2種以上更に含んでいてもよい。特に、上述した活性エネルギー線照射による硬化を行う場合には、上記光重合開始剤に加え、更に、光増感剤を併用することが好ましい。
上記光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミン類等が好適である。
上記光増感剤を含む場合、その含有量としては、硬化性樹脂(硬化性化合物)の総量100質量部に対し、0.1〜20質量部とすることが好ましい。より好ましくは0.5〜10質量部である。
−硬化促進剤−
上記樹脂組成物はまた、必要に応じて硬化促進剤を1種又は2種以上更に含んでいてもよい。特に、上述した酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いる場合には、硬化促進剤を併用することが好適である。
上記硬化促進剤としては、有機塩基の酸塩又は3級窒素を有する芳香族化合物等が挙げられ、有機塩基の酸塩としては、有機ホスフォニウム塩や有機アンモニウム塩等の有機オニウム塩や3級窒素を有する有機塩基の酸塩が挙げられる。有機ホスフォニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスフォニウムブロミド、トリフェニルホスフィン・トルエンブロミド等のフェニル環を四つ有するホスフォニウムブロミドが挙げられ、有機アンモニウム塩としては、例えばテトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド等のテトラ(C1〜C8)アルキルアンモニウムブロミドが挙げられ、3級窒素を有する有機塩基の酸塩としては、例えば環内に3級窒素を有する脂環式塩基の有機酸塩や各種イミダゾール類の有機酸塩が挙げられる。
上記環内に3級窒素を有する脂環式塩基の有機酸塩としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のオクチル酸塩等のジアザ化合物と、フェノール類、下記多価カルボン酸類又はフォスフィン酸類との塩類が挙げられる。
上記各種イミダゾール類の有機酸塩としては、例えばイミダゾール類と多価カルボン酸等の有機酸との塩類が挙げられる。イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等が挙げられる。好ましいイミダゾール類としては、例えば後述する3級窒素を有する芳香族化合物におけるフェニル基置換イミダゾール類と同じイミダゾール類が挙げられる。
上記多価カルボン酸類としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられ、好ましい多価カルボン酸としては、例えばテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。好ましいイミダゾール類と多価カルボン酸等の有機酸との塩類としては、例えば1位に置換基を有しているイミダゾール類の多価カルボン酸塩が挙げられる。より好ましくは、例えば1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールのトリメリット酸塩である。
上記3級窒素を有する芳香族化合物としては、例えばフェニル基置換イミダゾール類や3級アミノ基置換フェノール類が挙げられる。フェニル基置換イミダゾール類としては、例えば2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。好ましくは、例えば1位に芳香族置換基を有しているイミダゾール類であり、より好ましくは、例えば1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールである。3級アミノ基置換フェノール類としては、例えば2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)−フェノール等のジ(C1〜C4)アルキルアミノ(C1〜C4)アルキル基を1〜3個有するフェノール類が挙げられる。
上記硬化促進剤の中でも特に好ましい硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)−フェノール、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールのトリメリット酸塩、テトラフェニルホスフォニウムブロミド、トリフェニルホスフィン・トルエンブロミドである。
上記硬化促進剤を含む場合、その含有量は、硬化性樹脂(硬化性化合物)の総量100質量部に対し、0.01〜5質量部とすることが好ましい。より好ましくは0.03〜3質量部である。
−可撓性成分−
上記樹脂組成物はまた、可撓性を有する成分(「可撓性成分」と称す)を含むことが好適である。これによって、一体感のある、すなわち靱性の高い樹脂組成物とすることが可能となる。また、可撓性成分を含むことによって樹脂層の硬度がより向上される。
なお、可撓性成分は、上記硬化性樹脂とは異なる化合物であってもよいし、上記硬化性樹脂の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記可撓性成分としては、例えば、−〔−(CH−O−〕 −で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数であり、より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好適であり、例えば、オキシブチレン基を含むエポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製、YL−7217、エポキシ当量437、液状エポキシ化合物(10℃以上))が好適である。また、その他の好適な可撓性成分としては、液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム等が好ましい。
これらの中でも、上記可撓性成分はエポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH−O−〕−(mは、同上))を有する化合物である。
上記可撓性成分を含む場合、その含有量としては、上記硬化性化合物と可撓性成分との合計量100質量%に対し、40質量%以下であることが好適である。より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。
−他の成分−
上記積層用樹脂組成物は更に、上述した必須成分や好適な含有成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IRカット剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤以外の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。
上記樹脂組成物が無機充填剤を含有することで、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムを含むものが好ましい。例えば、日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。
上記樹脂組成物においては、樹脂組成物1cmあたりに含まれる粒子径10μm以上の異物が1000個以下であることが好ましく、より好ましくは100個以下であり、更に好ましくは10個以下である。
なお、上記樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
−調製方法−
本発明の積層用樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂(硬化性化合物)の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、硬化剤(触媒)添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
−粘度−
上記樹脂組成物は、粘度が10000Pa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性に優れ、例えば、コーティング時に表面が平滑な膜を得ることが可能となる。より好ましくは1000Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下、一層好ましくは10000mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下、最も好ましくは50mPa・s以下である。また、0.01mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
粘度の測定は、樹脂組成物について、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、評価可能である。上記粘度の数値は、25℃の条件下で評価した値であることが好ましい。
−硬化方法−
上記樹脂組成物の硬化方法としては特に限定されず、例えば、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cmで硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cmで光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記第1工程において、熱硬化の場合には、硬化温度を80〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは100℃以上、160℃以下である。また、硬化温度は、80〜200℃の範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記熱硬化工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。また、光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)を組み合わせてもよい。
上記硬化方法において、第2工程では、上記第1工程で得た硬化物を、150℃を超え、500℃以下で熱硬化させることが好ましい。硬化温度の下限は、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは230℃以上、より更に好ましくは250℃以上、一層好ましくは300℃以上、特に好ましくは330℃以上、最も好ましくは350℃以上である。上限は、より好ましくは400℃以下である。また、硬化温度は、150℃を超え、500℃以下の温度範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記第2工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、10分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは30分間〜10時間である。
上記第2工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で上記第2工程を行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
上記第1工程を実施することによって、塗工基材に対して塗液の凝集・ハジキ等を抑制可能となる。また、上記第2工程を実施することで、リフロー工程、蒸着工程に対する耐熱性を向上させることが可能となる。
上記硬化方法は、上記第1工程及び上記第2工程を含むことが好適であるが、その前後、中間に硬化処理を含んでいてもよい。例えば、上記第1工程を光硬化で実施した後、熱硬化を窒素下で150℃×60分間行い、上記第2工程を熱硬化で実施する。このような処理を行うことで、より成膜性、耐熱性を向上させることが可能となる。
他の硬化方法として、1段階硬化によることも好適である。特に本発明の積層用樹脂組成物が沸点120℃以下の窒素含有化合物を含むものである場合には、硬化性に特に優れるものとなるため、予備硬化としての光硬化工程を経なくても、すなわち本硬化としての熱硬化工程のみでも、充分に優れた外観を呈する硬化物を効率よく与えることができる。したがって、この場合には、例えば、光硬化と熱硬化との2段階硬化を行う場合に比べ、光硬化工程を省くことで工程短縮が可能なため、硬化物の生産性や作業性に優れることになる。
上記1段階硬化による硬化方法として特に好ましくは、熱硬化方法である。熱硬化は、20〜400℃程度で硬化することが好ましく、この温度範囲内で段階的に変化させてもよい。
上記1段階硬化工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、10分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは30分間〜10時間である。
上記1段階硬化工程は、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
本発明の積層用樹脂組成物は、上述のように耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性、耐光性等に優れた硬化物を与えることができる。そのため、基材上に、本発明の樹脂組成物からなる樹脂層を形成した場合、該樹脂層は、耐熱性等が高く、表面外観に優れ、可視光透過率の低減や着色が充分に抑制されたものとなることから、本発明の樹脂組成物及びそれを用いて得た積層体は、成膜を行う各種素子の部材(例えば、IRカットフィルターに代表される光選択透過フィルター等の光学材料)として有用である。また、携帯電話、テレビ、パソコン、車載用途等の各種素子は、製造工程の簡略化、低コスト化等の理由から、半田リフロープロセスを採用する流れにあるところ、本発明の樹脂組成物及びそれを用いて得た積層体は、半田リフロープロセスに供されても光学特性低下が充分に抑制されることから、半田リフロープロセスを採用する各種素子の部材(例えば、IRカットフィルターに代表される光選択透過フィルター等の光学材料)として特に有用である。中でも、基材として透明無機材料層を用いた場合には、クラックやチッピング、反りの発生を抑制でき、耐熱性にも優れる積層体が得られるため好適である。このように、上記積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる硬化物(積層体)もまた、本発明の1つである。
〔積層体〕
本発明の積層体(「積層物」とも称す)は、基材上に、上記積層用樹脂組成物からなる層(「樹脂層」とも称す)を有する。すなわち本発明の積層用樹脂組成物は、基材上に層を形成する材料として使用することができる。樹脂層は、基材の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、基材及び樹脂層は、それぞれ単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
上記積層体は、基材上に樹脂層を形成することにより得られるが、その形成方法としては、樹脂組成物を基材上に塗布して硬化することにより形成する方法が好適である。すなわち、基材上に塗膜を形成する方法が好ましい。また、本発明の積層体に用いられる積層用樹脂組成物は、コーティング用であることが好適である。
ここで、「基材上に樹脂層を有する」とは、基材に、直接、樹脂層が接している形態だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を有する形態も含むこととする。「基材上に樹脂層を形成する」についても同様であり、基材上に樹脂層を直接形成する場合だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を形成する場合も含むこととする。「樹脂組成物を基材上に塗布する」についても同様であり、樹脂組成物を基材上に直接塗布する場合だけでなく、基材上に存在する他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する場合も含むこととする。
上記他の構成部材を介して樹脂組成物を塗布する形態では、接着性を向上させる観点から、例えば、シランカップリング剤等の金属酸化物前駆体を含む液状物によって当該構成部材の表面処理を施した上に、樹脂組成物を塗布することが好適である。これにより、例えば、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等をより抑制することが可能になる。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
上記基材(又は他の構成部材)上に樹脂組成物からなる塗膜を形成する方法としては、溶液塗布法が好適である。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等の通常使用される方法が挙げられる。これらの中では、スピンコート法が、基板上のコート層の偏差を小さくする観点で好ましい。スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、透明無機材料層(又は他の構成部材)を500〜4000rpmで10〜60秒間程度回転させながら、溶媒を乾燥させることが好ましい。また、インクジェット法で行うことも、スピンコートでは得にくい丸型以外のサンプルを得つつ、偏差を小さくするという観点では好ましい。また、スピンコート後やインクジェット後、必要に応じて光硬化及び/又は熱硬化を行うことが好ましい。
上記積層体の好ましい形態の一つとして、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有する形態が挙げられる。このような積層体として具体的には、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有するという吸収特性を示すフタロシアニン系色素を必須とする形態が挙げられる。この形態により、耐熱性の高い積層体を作成することが可能となり、無機反射膜や無機干渉膜との組み合わせによって、400〜680nmに吸収極大を有さないスペクトルを得ることが可能となる。これにより、上記積層体は人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することができるため、撮像素子用途に極めて有用な積層体となる。また、上記積層体を撮像素子用途に適用した場合に、フレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性も充分に低減することができる。上記積層体としてより好ましくは、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜750nmの波長域に吸収極大を1つのみ有するものである。これにより、上記効果をより一層発揮することができる。
ここで、「400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有する」とは、400〜680nmの波長域に、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つしか認められないことを意味する。この吸収極大を頂点とするピークは、シャープなものであってもよいし、ブロードなものであってもよい。後者の場合、シャープな吸収ピークが2以上重なることによって全体としてブロードな吸収ピークが形成され、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つのみとなった形態であってもよい。
上記積層体はまた、波長550nmの透過率が80%以上であることが好ましい。波長550nmで80%以上の透過率であれば、より優れた光選択透過性を発揮することができる。上記透過率としてより好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上、最も好ましくは89%以上である。
上記積層体はまた、650〜680nmの波長域に存在する吸収極大波長又は最大吸収波長での透過率が、60%以下であることが好適である。より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
上記積層体は更に、吸光度が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど高いことが好適である。言い換えると、透過率が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど低いことが好適であり、例えば、600〜680nmの波長域において、1nmごとに透過率を測定した場合に、ある波長での透過率が、それよりも長波長での透過率を上回ことが好ましい。これにより、透過率スペクトルがより滑らかな曲線となるため、より優れた光選択透過性を発現することができる。
本明細書中、積層体、樹脂層及び透明無機材料層の吸収特性及び透過率は、例えば、吸光度計(分光光度計とも称される。島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて吸収スペクトル又は透過率スペクトルを測定することで求めることができる。
なお、樹脂層も、上述した積層体の吸収特性及び透過特性と同様の特性を有することが好適である。中でも特に、上記樹脂層は、吸光度が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど高い形態であることが好ましい。
上記積層体の厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、撮像素子の小型化への要請に充分に応えることができる。より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下、特に好ましくは150μm以下であり、最も好ましくは100μm以下である。また、30μm以上であることが好ましい。より好ましくは50μm以上である。
上述したように、上記積層体が、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有する形態は、本発明の好適な形態の1つである。
<基材>
上記積層体において、基材としては特に限定されないが、例えば、有機材料、無機材料、有機無機複合材料、金属材料等の1種又は2種以上を材料とすることが好ましい。有機材料又は有機無機複合材料としては、例えば、これらの材料からなる樹脂フィルム等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、水晶、金属酸化物等が挙げられる。
また基材の材料は、耐リフロー性を有する材料であることが好適である。
上記基材の中でも、透明無機材料を材料とするものが好適である。すなわち上記基材は、透明無機材料からなる層(透明無機材料層と称す)であることが好ましい。これにより、クラックやチッピング、反りの発生をより抑制でき、耐熱性にもより優れる積層体が得られるため好適である。このように透明無機材料層上に上記樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られる積層体は、本発明の好適な形態の1つである。
上記透明無機材料は、例えば、ガラス、水晶等が挙げられる。
上記透明無機材料はまた、ガラスや水晶等を形成する材料中に遷移金属イオンを含有させて得られるものであってもよい。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを1種又は2種以上用いればよく、例えば、Ag、Fe、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。なお、上記基材がガラス又は水晶基板である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記透明無機材料層において、「透明」であるとは、波長550nmでの透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
上記基材(好ましくは透明無機材料層)の厚みは特に限定されないが、例えば、30〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50μm以上である。
上記基材はまた、カップリング剤により処理されたものであることが好適である。これにより、接着性がより向上され、例えば、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等をより抑制することが可能になる。
なお、カップリング剤により処理された基材とは、カップリング剤により表面処理された基材であることが好ましい。
上記カップリング剤の好適な形態等は上述したとおりであり、中心金属として、ケイ素、ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウムを含むものが好適である。中でも、ケイ素を中心金属として有するものが好ましい。より好ましくはシランカップリング剤である。
このように上記基材がカップリング剤により処理されたものであり、該カップリング剤が、中心金属としてケイ素、ジルコニウム、チタン及び/又はアルミニウムを含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
<樹脂層>
上記積層用樹脂組成物からなる層(樹脂層)の厚みは特に限定されないが、成膜時やリフロー時の耐熱性及び透明性の観点、熱膨張による界面での剥離や割れを防止する観点から、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは5μm以下であり、最も好ましくは2μm以下である。また、一般的な異物サイズよりも膜厚を充分に厚くすることにより欠点を防ぐ観点、樹脂組成物へ溶解させる色素濃度を低減し、色素の会合や析出を抑制する観点から、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
<UVカット層>
上記積層体はまた、更にUV(紫外線)カット層を有することも好適である。これにより、紫外線による劣化を充分に抑制することができるため、積層体の耐候性を大幅に改善することができる。このように上記積層体が更にUVカット層を有する形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記UVカット層は、上記積層体中の光入射側に配置されることが好適である。また、上記積層体において、UVカット層は、1層でもよいし、2層以上であってもよい。
上記UVカット層は、例えば、樹脂成分と紫外線吸収剤とを少なくとも含む樹脂組成物により形成することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物が好ましい。具体的には、350〜400nmの波長域に吸収能を有するフタロシアニン系色素を用いることが好適である。また、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の1種又は2種以上を使用することもできる。
〔積層体の用途〕
本発明の積層体は、撮像素子用途に特に好適である。本発明の積層用樹脂組成物もまた、撮像素子用途に特に好適である。中でも、上記積層体を、光選択透過フィルターの構成材料として使用することが好ましい。この場合、上記樹脂組成物により形成される樹脂層は、光選択透過フィルターのうち(近)赤外線吸収層(単に吸収層ともいう)として使用されることがより好適である。このような上記積層体を含む光選択透過フィルターもまた、本発明の1つであり、上記積層体を含む撮像素子もまた、本発明に含まれる。なお、撮像素子は、上記積層体を含む光選択透過フィルターを備えることが特に好適である。
ただし、上記積層用樹脂組成物及び積層体は、上記の用途に限定されるものではなく、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途にも有用なものである。
以下に、光選択透過フィルター及び撮像素子について説明する。
<光選択透過フィルター>
本発明の光選択透過フィルターは、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の層を1又は2以上有するものであってもよい。光選択透過フィルターにおいては、上記積層体のうち透明無機材料層を基材として、上記樹脂組成物から形成される樹脂層を吸収層として、それぞれ使用することが好適である。
上記光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外線カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外線カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外線カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。
このように上記光選択透過フィルターが他の機能を有する形態においては、本発明の積層体の一方の表面に反射膜を形成し、他方の表面に他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。機能性材料層は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記積層体上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を上記積層体に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を上記積層体に塗布、乾燥して、製膜することによっても得ることができる。例えば、紫外線を遮断する層は、吸収層の光への劣化対策として、基材(例えば、ガラス基板)上に形成された吸収層の上に、紫外線吸収剤を含む液状樹脂組成物を塗布し、乾燥又は硬化して、紫外線吸収剤を含む樹脂層を製膜することも、好ましい。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては、10nm〜1000nmの間のものであればよく、用いる用途により選択することができる。低減させる光の波長に応じて赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター、赤外・紫外線カットフィルター等とすることができるが、中でも、750nm〜1000nmの赤外光(より好ましくは650nm〜1000nmの赤外光)と200〜350nmの紫外光とを低減し、それ以外の光を透過するものであることが好ましい。すなわち、本発明の光選択透過フィルターは、赤外・紫外線カットフィルターであることが好ましい。
赤外線カットフィルターは、赤外線領域である650nm〜10000nmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、650nm〜2500nm、650nm〜1000nm又は800nm〜1000nmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である650nm〜1000nmであることがより好ましい。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外線カットフィルターである形態においては、750〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。例えば、上記赤外線カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下であり、可視光における450〜600nmの透過率が70%以上であることが好適である。より好ましくは80%以上である。また、可視光の中でも480〜550nmの波長域の光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好適である。なお、上記赤外線カットフィルターにおいては、その他(赤外線領域以外)の波長の透過率としては、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、波長が480〜550nmにおける光の透過率が85%以上であり、かつ750〜1000nmにおける透過率が5%以下の赤外線カットフィルターであることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
本発明の光選択透過フィルターが紫外線カットフィルターである形態においては、200〜350nmの紫外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては、650nm〜1μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましい。
上記光選択透過フィルターとして好ましくは、上記積層体の少なくとも一方の表面に、反射膜(好ましくは、(近)赤外線反射膜)が形成されてなる形態である。すなわち上記積層体及び反射膜を含む光選択透過フィルターであることが好適である。このような構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。この場合、光選択透過フィルターにおける反射膜の配置形態(構成)は特に限定されない。
上記反射膜としては、耐熱性に優れる観点から、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜が好適である。無機多層膜としては、基材や吸収層、他の構成部材の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好適である。
上記無機多層膜として好ましくは、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜である。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料である。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5である。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
上記反射膜はまた、上述したように多層膜であることが好ましいが、その積層数は、撮像素子が有する反射膜の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましい。より好ましくは25〜50層の範囲である。
上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは2〜8μmである。なお、光選択透過フィルターや撮像素子が有する反射膜の合計の厚みとして、上記範囲にあることが好適である。
上記反射膜と吸収層の好ましい形態として、赤外領域(650〜750nm)における吸収層の吸収極大波長に対して、光学フィルターとしてスムーズな透過率スペクトルを得るという観点では、吸収層より透過率が小さくなる反射膜の波長が+30nm以下に存在することが好ましく、より好ましくは+20nm以下、更に好ましくは+10nm以下、特に好ましくは0nm以下に存在することである。一方、光学フィルターとしての角度依存性を小さくするという観点では、−10nm以上であることが好ましく、0nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、20nm以上であることが特に好ましい。
ここで、本発明の積層体の一部である樹脂層を反射型光選択透過フィルターの吸収層として使用し、上記積層体の少なくとも一方の面に反射膜を形成する場合には、反射膜として10層以上の多層膜を形成することが好ましい。また、反射膜を形成した後に、上記樹脂組成物から形成される樹脂層を形成することも好適である。
上記反射膜は、積層体を構成する基材又は樹脂層に、直接又は他の構成部材を介して存在することが好ましい。例えば、これらの表面に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等を用いて反射膜を形成することが好適である。中でも、真空蒸着法を用いることが好ましい。より好ましくは、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、透明無機材料層又は樹脂層等に該蒸着層を転写することで、反射膜を形成する方法である。これにより、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくすることができる。なお、この場合、蒸着層を転写しようとする透明無機材料層又は樹脂層等には、接着層を形成しておくことが好ましい。
このように反射膜(好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。そのため、このような蒸着温度に耐える透明無機材料層、樹脂成分及び色素を用いることは、非常に意味がある。本発明の積層体を用いれば、高温で蒸着できるだけでなく、低温で蒸着したとしても、無機膜との線膨張係数の差が小さいため、例えば、リフロー工程等の製造工程での加熱環境や過酷な使用環境においても、線膨張係数の差による無機層クラックが生じない。
ところで、一般に、基材の片面又は両面に反射膜を有する反射型フィルターは、光の遮断性能には優れるものの、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性(「視野角依存性」ともいう)を有する、すなわち入射角により分光透過率曲線が異なるため、その改善が課題とされている。
光遮断特性の入射角依存性は、例えば、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
本発明の光選択透過フィルターは、耐光性、耐熱性及び光選択透過性に特に優れ、しかも光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができるため、例えば、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず、カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとしても有用である。中でも、本発明の光選択透過フィルターは、デジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールに用いられるフィルターとして有用である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、撮像素子用光選択透過フィルターであることが好適である。このように上記光選択透過フィルターを備える撮像素子もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
<撮像素子>
本発明の撮像素子は、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の部材を1又は2以上有するものであってもよい。通常、撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを有するが、更に、光学フィルターや、部材を固定させるための接着剤等が挙げられる。
上記撮像素子として好ましくは、上記積層体の少なくとも一方の表面に、反射膜が形成されてなる形態である。すなわち上記積層体及び反射膜を含む撮像素子であることが好適である。このような構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。この場合、撮像素子における反射膜の配置形態(構成)は特に限定されない。例えば、レンズに反射膜が直接形成されることで、当該レンズと反射膜とが一体化した形態(形態(a)とも称す);撮像素子が、反射膜を含む光学フィルターを備えることで、レンズとは独立した構成部材として反射膜を有する形態(形態(b)とも称す);等が挙げられる。
なお、反射膜については、上述したとおりである。
上記形態(a)において、撮像素子が2枚以上のレンズを有する場合、反射膜が形成されるレンズの枚数は特に限定されない。
上記形態(b)において、反射膜を含む光学フィルターは、(近)赤外線を反射する機能のみを備えたものであってもよいし、更に(近)赤外線を吸収する機能を備えたものであってもよい。
上記反射膜を含む光学フィルターは、本発明の積層体と反射膜とを備える光選択透過フィルターであってもよいし、該光選択透過フィルター以外の光学フィルターであってもよい。また、反射膜を含む光学フィルターを1又は2以上有していてもよいし、配置形態も特に限定されない。例えば、撮像素子が2枚以上のレンズを有する場合には、当該反射膜を有するフィルターは、レンズ間に配置されていてもよい。
なお、上記反射膜は、レンズの一方の面若しくは両面、及び/又は、基材の一方の面若しくは両面に、形成されることが好適である。
本発明の積層用樹脂組成物は、上述のような構成であるので、成膜性、接着性、耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れた硬化物(積層体)を与えることができるものである。このような積層体は、光学材料等の各種用途に好適に適用でき、特にIRカットフィルターを構成する材料として有用である。
実施例7における各段階での透過率スペクトルである。 実施例8における各段階での透過率スペクトルである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<カチオン硬化触媒の調製>
調製例1(TPB含有粉末Bの合成)
国際公開第1997/031924号公報に記載された合成法にしたがって、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%のアイソパーE溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末B)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析及びGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMRの測定結果を以下に示す。
19F−NMR(CDCl)ppm(標準物質:CFCl 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
調製例2(カチオン硬化触媒Aの調製)
調製例1で得たTPB含有粉末B:2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対し、γ−ブチロラクトンを2.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、アデカスタブLA−57(ヒンダードアミン、ADEKA社製)を0.778g(0.984mmol、N基のモル数は3.934mol)添加し、室温で10分間混合し、更に60℃で20分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Aとした。
調製例3(カチオン硬化触媒Bの調製)
調製例1で得たTPB含有粉末B:2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対し、γ−ブチロラクトンを1.6g添加し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.1g添加し、室温で60分間混合し、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Bとした。
<樹脂組成物及び硬化物(積層物)の調製>
実施例1
オキシラン化合物としてセロキサイドCEL−2021P(液状脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量131、ダイセル化学工業社製)15部、EHPE−3150(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業社製)85部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部、色素としてTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)6部を80℃にて均一混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてカチオン硬化触媒Aを1部均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、樹脂組成物(1)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
実施例2〜6
樹脂組成物を構成する色素の量、並びに、硬化剤の種類を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(2)〜(6)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例1
アクリル硬化性樹脂としてDPE−6A(共栄社化学製)100部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部、色素としてTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)6部を均一に混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてパーヘキシルI(日油社製)1部を均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、比較用樹脂組成物(比較1)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
比較例2
ウレタンアクリル硬化性樹脂としてUN−904(根上工業社製)100部、溶媒としてシクロヘキサノン(和光純薬工業社製)330部、色素としてTX−EX−609K(フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製)6部を均一に混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてパーヘキシルI(日油社製)1部を均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、比較用樹脂組成物(比較2)を得た。当該樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いて、以下の方法により成膜及び硬化を行い、硬化物(積層物)を得た。
<実施例1〜6及び比較例1〜2の成膜及び硬化方法>
1、成膜方法
イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(松波硝子工業社製、水縁磨スライドガラス、S9213、76mm×52mm×1.2〜1.5mm)上に各樹脂組成物を垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した。具体的な成膜条件を表2に示す。
2、硬化方法
(1)光硬化(UV硬化)
放射線照射光源として、250W超高圧水銀ランプ(USH−250BY、ウシオ電機社製)を備えた露光装置(基本構成ユニット「ML−251B/D」、照射光学ユニット「PM25C−135」、ウシオ電機社製)を用いた。照射側の基板表面における照度を、波長365nmにおいて33mW/cmとし、積算光量が2J/cmとなるように照射した。
(2)熱硬化
イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、INL−45N1−S)を用いて、N2雰囲気下(酸素濃度30ppm以下)にて、30℃より1時間で250℃に到達するプログラムにて昇温し、250℃で1時間保持した後、30℃まで降温した。
具体的な硬化条件を表2に示す。表2に示すように、実施例1、4及び6並びに比較例1及び2で得られた樹脂組成物については熱硬化を行い、実施例2、3及び5で得られた樹脂組成物については光硬化の後に熱硬化を行った。
(3)最終硬化後、ダイヤモンドカッターを使用して、ガラスの外周部は均等になるように削除し、15mm×15mmの大きさの評価用サンプルを1枚のガラス基板から6枚取り出した。
上記実施例及び比較例で得られた樹脂組成物又は硬化物(積層物)について、コート膜厚、成膜性、接着性、硬化物の透過率、耐熱性(成膜耐熱性及びリフロー耐熱性)、耐湿熱性、耐温度衝撃性を以下の方法にて評価した。結果を表2に示す。
<実施例1〜6及び比較例1〜2の各物性等の評価方法>
1、コート膜厚
成膜前のガラス基板の厚み、及び、成膜及び硬化終了後の評価用サンプルの厚みをマイクロメーターを用いて測定し、両者の差からコート膜厚を求めた。
2、成膜性
最終硬化後の硬化物(すなわち、上記2の硬化方法で得た硬化物)の評価用サンプル5枚を、目視及び20倍の実体顕微鏡で確認し、以下の基準にて評価した。
◎:0.1mm未満の欠点しか発生しなかった。
○:長さ(直径)0.1mm以上1mm未満の欠点が発生した。
△:長さ(直径)1mm以上2mm未満の欠点が発生した。
×:長さ(直径)2mm以上の欠点が発生した。
3、接着性
最終硬化後の硬化物を、カッター(OLFA社製、NTカッター、A300)を用いて、硬化物上に切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ1mm間隔で11本のクロスカット線を作製し、1mmの四角を100マス作製した。その硬化物上に、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M社製、メンディングテープ810)を貼り付け、30秒間放置した。その後、硬化物に剥離力が一定となるように、1秒以内に剥離操作を行うことにより、評価用サンプルを作製した。
評価用サンプルについて、以下の基準にて評価した。
○:作製した100マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかった。
△:作製した100マスの四角のうち、1〜10マスに剥がれが発生した。
×:作製した100マスの四角のうち、11〜100マスに剥がれが発生した。
4、硬化物の透過率(着色の有無)
吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて、最終硬化後の時点で、可視光の短波長領域である波長400nm、及び、可視光の中心領域である550nmにおける硬化物の透過率を測定し、着色の有無を評価した。
5、耐熱性試験(成膜耐熱性試験)
最終硬化後の硬化物を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、300℃で20分間乾燥させた後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
6、耐熱性試験(リフロー耐熱性試験)
最終硬化後の硬化物を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、260℃で20分間乾燥させた後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
7、耐湿熱性試験
最終硬化後の硬化物を、恒温恒湿機(ESPEC製、SH−211)を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に100時間静置した後、波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
8、耐温度衝撃性試験
最終硬化後の硬化物を、115℃×30分間と−40℃×30分間との間で温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、100サイクル時の波長400nm及び550nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。
9、クラック及び剥がれの評価
5枚の評価用サンプルについて、以下の基準にて評価した。
○:クラック及び剥がれが全く発生しなかった。
×:1枚でもクラック又は剥がれが発生した。
Figure 0006342645
Figure 0006342645
表1中の略号等は、下記のとおりである。
CEL−2021P:液状脂環式エポキシ樹脂「セロキサイドCEL−2021P」、エポキシ当量131、重量平均分子量120、ダイセル化学工業社製
EHPE−3150:脂環式エポキシ樹脂、重量平均分子量2900、ダイセル化学工業社製
TX−EX−609K:フタロシアニン系色素、吸収最大波長:715nm、日本触媒社製
CPI−101A:光潜在性カチオン硬化触媒(アンチモン系スルホニウム塩(SbF 塩))、サンアプロ社製
SI−100L:熱潜在性カチオン硬化触媒「サンエイドSI−100L」(アンチモン系スルホニウム塩(SbF塩))、三新化学工業社製、固形分50%
DPE−6A:アクリル硬化性樹脂「ライトアクリレートDPE−6A」、共栄社化学製
UN−904:ウレタンアクリル硬化性樹脂「アートレジンUN−904」、根上工業社製
パーへキシルI:ラジカル重合開始剤、日油社製
表2の結果から、以下のことがわかった。
1、成膜性及び接着性について
オキシラン化合物を含む実施例1〜6は、オキシラン化合物を含まない比較例1〜2に比べ、成膜性及び接着性に優れることがわかった。
また、実施例1〜6の中でも、硬化剤として光潜在性カチオン硬化触媒を用いた場合(実施例2、3及び5)の方が、他のカチオン硬化触媒を用いた場合(実施例1、4及び6)よりも成膜性に優れることがわかった。
2、最終硬化後の透過率について
実施例1〜6では、最終硬化後の透過率(特に550nmの透過率)が高い値を有することがわかった。これは、実施例1〜6では、最終硬化時の着色を低減できることを示している。なお、色素の含有量が多い実施例4〜6は、色素の含有量が少ない実施例1〜3に比べ、400nmの透過率が低くなるものの、550nmの透過率は同程度であることがわかった。
また、実施例1〜6の中でも、硬化剤としてTPB系触媒を用いた場合(実施例1、3及び4)の方が、他のカチオン硬化触媒を用いた場合(実施例2、5及び6)よりも高い透過率を有しており、着色低減効果が高いことがわかった。
3、成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性について
実施例1〜6では、各試験後においてもクラック及び剥がれが全く発生しておらず、また、試験前後で透過率も変化していないため、成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れることがわかった。
また、実施例1〜6の中でも、硬化剤としてTPB系触媒を用いた場合(実施例1、3及び4)の方が、他のカチオン硬化触媒を用いた場合(実施例2、5及び6)よりも成膜耐熱性、リフロー耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れることがわかった。
上記実施例においては、樹脂組成物として、特定のオキシラン化合物と色素を含むものを用いることによって、成膜性、接着性、耐熱性(成膜耐熱性、リフロー耐熱性)、耐湿熱性、耐温度衝撃性に優れた硬化物を与えることができるものであり、このような樹脂組成物は、基材上に層を形成するための積層用材料(特に、IRカットフィルター等の光学材料)として好適に使用することができることがわかった。なお、上記実施例のような作用機序は、本発明の樹脂組成物においてすべて同様に発現されるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
合成例1(フタロシアニン(1)の合成)
(1)工程1
1000mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル54g(0.27mol)、フッ化カリウム34.5g(0.59mol)、及び、アセトン126gを仕込み、更に滴下ロートに3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチルエステル127g(0.55mol)及びアセトン216gを仕込んだ。反応容器を氷冷下、攪拌しながら、滴下ロートより3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸メトキシエチルエステル溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、反応温度を室温までゆっくりと上昇させながら一晩攪拌した。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(1)を108.7g(収率64.8%)を得た。
この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
(2)工程2
200mlの四つ口フラスコに、工程1で得られた中間体(1)を20.0g(0.032mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.57g(0.0081mol)、及び、ベンゾニトリル30.0gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ52.7gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(1)を17.78g(収率87.1%)得た。
この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
合成例1で得たフタロシアニン(1)は、上記構造中、主骨格中に「*」で示す部分(合計8個)のそれぞれに、右側に示す置換基が置換した構造からなる。
合成例2(フタロシアニン(2)の合成)
(1)工程1
1000mlの四つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロフタロニトリル75g(0.37mol)、フッ化カリウム52.3g(0.90mol)、及び、アセトニトリル167gを仕込み、更に滴下ロートに2,6−ジクロロフェノール123.4g(0.76mol)及びアセトニトリル133gを仕込んだ。攪拌しながら、滴下ロートより2,6−ジクロロフェノール溶液を約2時間かけて滴下した後、更に2時間攪拌を続けた。その後、一晩攪拌し反応させた。反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトニトリルを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(2)を148.1g(収率80.2%)を得た。
この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
(2)工程2
500mlの四つ口セパラブルフラスコに、中間体(2)を140g(0.29mol)、炭酸カリウム107.8g(0.78mol)、p−ヒドロキシ安息香酸メチル92.1g(0.61mol)及びアセトン280gを仕込んだ。反応液を60℃で一晩攪拌し反応させた後、反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトンを留去し、メタノールとの混合液を加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(3)を202.3g(収率93.1%)を得た。
この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
(3)工程3
200mlの四つ口フラスコに工程2で得られた中間体(3)を22.5g(0.030mol)、ヨウ化亜鉛(II)2.37g(0.0074mol)、ベンゾニトリル52.5gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ30.3gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(2)を17.83g(収率86.1%)得た。
この工程3の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
合成例2で得たフタロシアニン(2)は、上記構造中、主骨格中に「*」で示す部分(合計16個)のうち8個に右側の上に示す置換基が、残り8個に右側の下に示す置換基が、それぞれ置換(又は結合)した構造からなる。
合成例3(フタロシアニン(3)の合成)
(1)工程1
1000mlの三つ口反応容器に3−ニトロフタロニトリル100g(0.58mol)、炭酸カリウム159.7g(1.16mol)、2,6−ジクロロフェノール104.6g(0.64mol)及びアセトニトリル400gを仕込んだ。60℃で一晩攪拌し反応させた後に、反応液をろ過し、ロータリーエバポレーターでろ液からアセトニトリルを留去し、メタノールを加えて再結晶を行った。得られた結晶をろ過し、真空乾燥により、中間体(4)を100.9g(収率60.2%)を得た。
この工程1の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
(2)工程2
300mlの四つ口フラスコに、工程1で得られた中間体(4)を60.0g(0.21mol)、塩化銅(I)5.65g(0.057mol)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル140.0gを仕込み、160℃で撹拌しながら24時間反応させた。反応終了後、メチルセロソルブ100.0gを反応液に加えた後、メタノールと水の混合溶液に滴下して結晶を析出させ、吸引ろ過後ウェットケーキを得た。得られたケーキを再度、メタノールと水の混合溶液で撹拌洗浄し、吸引ろ過した。得られたケーキを、真空乾燥機を用いて90℃で24時間乾燥後、目的物であるフタロシアニン(3)を51.48g(収率80.4%)得た。
この工程2の反応を、以下に簡略して示す。
Figure 0006342645
合成例3で得たフタロシアニン(3)は、上記構造中、主骨格中に「*」で示す部分(合計8個)のうち4個に右側の上に示す置換基が、残り4個に右側の下に示す置換基(すなわち水素原子)が、それぞれ置換(又は結合)した構造からなる。
<樹脂組成物及び硬化物(積層体)の調製>
実施例7
セロキサイドCEL−2021Pを15部、EHPE−3150を85部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)240部、テトラヒドロフラン(THF)40部、及び、合成例1で得たフタロシアニン(1)を8部、80℃にて均一混合した。その後、40℃に降温し、硬化剤としてカチオン硬化触媒Bを5.6部均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、樹脂組成物(7)を得た。
得られた樹脂組成物について、後述の方法により保存安定性を評価した。
また得られた樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、成膜性、各透過率や耐熱性(リフロー耐熱性)を評価した。結果を図1及び表4に示す。
実施例8及び参考例1〜4
色素の種類及び量を表3のとおりに変更したこと以外は、実施例7と同様にして樹脂組成物(8)及び参考用樹脂組成物(1)〜(4)を得た。
得られた樹脂組成物について、後述の方法により保存安定性を評価した。
また得られた樹脂組成物を用いて、実施例7と同様に成膜及び硬化を行い、成膜性、各透過率や耐熱性(リフロー耐熱性)を評価した。結果を図2(実施例8のみ)及び表4に示す。
<樹脂組成物の保存安定性>
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃の条件下で粘度測定を行った。40℃にて1週間放置前後の粘度を測定し、以下の基準で評価した。
○:初期粘度からの変化量が30%未満であった。
×:初期粘度からの変化量が30%以上であったか、又は、ゲル化した。
<実施例7〜8及び参考例1〜4の成膜、硬化(熱硬化)及び蒸着膜形成方法>
1、成膜方法
イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(SCHOTT社製、ガラス、D263、8inch丸型)上に各樹脂組成物を垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した(すなわちコーティングした)。具体的な成膜条件を表4に示す(2500rpm)。なお、この成膜(コーティング)後の透過率スペクトルを得た。
2、硬化方法(熱硬化)
上記1の成膜方法で得た膜を、硬化させた。具体的には、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、INL−45N1−S)を用いて、N雰囲気下(酸素濃度30ppm以下)にて、30℃より1時間で250℃に到達するプログラムにて昇温し、250℃で1時間保持した後、30℃まで降温した。なお、この硬化後の透過率スペクトルを得た。
3、蒸着膜形成方法
上記2の硬化方法で得たコーティング層の反対面に、酸化チタン20層/シリカ20層の交互蒸着層(赤外反射層)を形成し、コーティング層上に酸化チタン3層/シリカ3層の交互蒸着層(反射防止層)を形成した。
<実施例7〜9及び参考例1〜4の各物性等の評価方法>
1、成膜性
最終硬化後の硬化物(すなわち、上記2の硬化方法で得た硬化物)の中心3cm×3cmの正方形の範囲を、20倍の実体顕微鏡で確認し、以下の基準にて評価した。
◎:0.03mm未満の欠点しか発生しなかった。
○:長さ又は直径0.03mm以上1mm未満の欠点が発生した。
△:長さ又は直径1mm以上2mm未満の欠点が発生した。
×:長さ又は直径2mm以上の欠点が発生した。
2、透過率
分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて、各段階での透過率スペクトルを測定した。スペクトルを図1及び2(実施例7、8のみ)に示す。また、各段階での、可視光の短波長領域である波長430nm、可視光の中心領域である550nm、及び、色素の吸収波長である650nmにおける透過率を表4に示す。
なお、蒸着膜形成後の透過率は、入射光源側から、赤外反射層/ガラス/コーティング層/反射防止層の順になるように積層体を配置して測定した。また、入射光に対して垂直になるように積層体を設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0度スペクトルともいう。積層体の厚み方向(垂直方向)から光が入射するようにして測定される。)と、積層体の厚み方向(垂直方向)に対して30度傾いた方向から光が入射するように積層体を設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを30度スペクトルという。)との夫々について測定した。
3、耐熱性(リフロー耐熱性)
最終硬化後の硬化物(すなわち、上記2の硬化方法で得た硬化物)を、乾燥機(ヤマト科学社製、DH611)を用いて、大気中、260℃で20分間乾燥させた後、波長430nm、550nm及び650nmにおける硬化物の透過率を、吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて測定した。また、目視にて、クラック及び剥がれを確認した。クラック及び剥がれの評価は、5枚の評価用サンプルについて、以下の基準にて評価した。
○:クラック及び剥がれが、全く発生しなかった。
×:1枚でもクラック又は剥がれが発生した。
Figure 0006342645
表3中の略号等のうち、表1に記載していないものについては、下記のとおりである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1,2−プロパンジオールモノメチルエーテルアセタート)
THF:テトラヒドロフラン
フタロシアニン(1):合成例1で得たフタロシアニン系色素
フタロシアニン(2):合成例2で得たフタロシアニン系色素
フタロシアニン(3):合成例3で得たフタロシアニン系色素
アンチモン系触媒SI−60L:商品名「サンエイドSI−60L」、三新化学工業社製
硬化触媒A:調製例2で得たカチオン硬化触媒A
硬化触媒B:調製例3で得たカチオン硬化触媒B
Figure 0006342645
表4より、以下のことがわかった。
実施例7及び8で得た樹脂組成物は、カチオン硬化触媒として硬化触媒Bを使用することにより、120℃以下の沸点を有する窒素含有化合物としてアンモニアを含むものである。この場合、保存安定性に優れるとともに、成膜性にも極めて優れ、しかもその硬化物が高い透明性及び耐熱性を有することが分かった。
実施例9
セロキサイドCEL−2021Pを15部、EHPE−3150を85部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)240部、テトラヒドロフラン(THF)40部、及び、合成例1で得たフタロシアニン(1)を8部、80℃にて均一混合した。その後、40℃に降温し、シランカップリング剤としてZ−6043(東レダウコーニング社製)を20部、硬化剤としてカチオン硬化触媒Bを5.6部均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、樹脂組成物(9)を得た。
得られた樹脂組成物を用いて、後述の方法により成膜及び硬化を行い、成膜性、各透過率や耐熱性、接着性を評価した。結果を表6に示す。
実施例10、実施例7’及び8’、参考例5〜6
実施例10及び参考例5〜6では、含有成分の種類及び量を表5のとおりに変更したこと以外は、実施例9と同様にして樹脂組成物(10)、参考用樹脂組成物(5)〜(6)を得た。また、実施例7’及び8’では、それぞれ実施例7で得た樹脂組成物(7)及び実施例8で得た樹脂組成物(8)を使用した。
各樹脂組成物を用いて、実施例9と同様に成膜及び硬化を行い、成膜性、各透過率や耐熱性、接着性を評価した。結果を表6に示す。
<実施例7’、8’ 、9、10及び参考例5〜6の成膜及び硬化(熱硬化)方法>
1、成膜方法
(1)前処理コーティング
a)前処理コーティング液として、下記配合の組成物を用いた。
シランカップリング剤としてZ−6043(東レダウコーニング社製)を40部、エタノールを40部、水を10.3部、及び、蟻酸を4部、25℃にて均一に1時間混合した。次にこの混合溶液を1部、及び、エタノールを99部、25℃にて均一に混合し、異物を0.45μmフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)にてろ過した。以上により、前処理コーティング溶液を得た。
b)後述する樹脂組成物のコーティングと同様に、イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(SCHOTT社製、ガラス、D263、8inch丸型)上に、上記前処理コーティング液を垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数(2500rpm)にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した(すなわちコーティングした)。
なお、前処理コーティングは、実施例7’及び8’のみ行った。
(2)樹脂組成物のコーティング
イソプロパノール溶媒で洗浄したガラス基板(SCHOTT社製、ガラス、D263、8inch丸型)上に、各樹脂組成物を垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、3秒かけて所定の回転数(2500rpm)にし、所定時間を維持し、3秒かけて回転数を0rpmに戻して成膜した(すなわちコーティングした)。
2、硬化方法(熱硬化)
上記1の成膜方法で得た膜を、硬化させた。具体的には、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム社製、INL−45N1−S)を用いて、N雰囲気下(酸素濃度30ppm以下)にて、30℃より1時間で250℃に到達するプログラムにて昇温し、250℃で1時間保持した後、30℃まで降温した。
3、蒸着膜形成方法
上記2の硬化方法で得たコーティング層の反対面に、酸化チタン20層/シリカ20層の交互蒸着層(赤外反射層)を形成し、コーティング層上に酸化チタン3層/シリカ3層の交互蒸着層(反射防止層)を形成した。
<実施例7’、8’、9、10及び参考例5〜6の各物性等の評価方法>
成膜性、透過率、耐熱性(リフロー耐熱性)は、実施例7と同様に評価した。
1、接着性(煮沸試験)
最終硬化後の硬化物を、沸騰浴を用いて、煮沸環境に5時間静置した。その後、この硬化物上に、カッター(OLFA社製、NTカッター、A300)を用いて切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ1mm間隔で11本のクロスカット線を作製し、1mmの四角を100マス作製した。その硬化物上に、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M社製、メンディングテープ810)を貼り付け、30秒間放置した。その後、硬化物に剥離力が一定となるように、1秒以内に剥離操作を行うことにより、評価用サンプルを作製した。評価用サンプルについて、以下の基準にて評価した。
○:作製した100マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかった。
△:作製した100マスの四角のうち、1〜10マスに剥がれが発生した。
×:作製した100マスの四角のうち、11〜100マスに剥がれが発生した。
2、接着性(プレッシャークッカー(PCT)試験)
最終硬化後の硬化物を、PCT試験機を用いて、120℃/2気圧/湿度100%に、50時間静置した後、上記1と同様にして接着性を評価した。
Figure 0006342645
表5中の略号等のうち、表1及び3に記載していないものについては、下記のとおりである。
Z−6043:シランカップリング剤、商品名「Z−6043」、東レダウコーニング社製
Z−6040:シランカップリング剤、商品名「Z−6040」、東レダウコーニング社製
Figure 0006342645
表6より、以下のことがわかった。
基材にシランカップリング剤を用いて前処理コーティングを行うか、又は、樹脂層を形成する樹脂組成物の含有成分の一つとしてシランカップリング剤を用いることにより、湿熱環境に晒した後も、剥がれ等が充分に抑制されることが分かった。

Claims (5)

  1. 基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物であって、
    該樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、色素、及びカチオン硬化触媒を含み、
    該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含み、
    該オキシラン化合物は、オキシラン化合物全体100質量%に対して、重量平均分子量が2000以上の化合物を10〜100質量%含み、
    該色素は、600〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素を含み、
    該カチオン硬化触媒は、下記一般式(2)で表されるルイス酸と、ルイス塩基とからなる形態である
    Figure 0006342645
    (式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)
    ことを特徴とする積層用樹脂組成物。
  2. 前記積層用樹脂組成物は、コーティング用であることを特徴とする請求項1に記載の積層用樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られることを特徴とする積層体。
  4. 請求項に記載の積層体を含むことを特徴とする光選択透過フィルター。
  5. 請求項に記載の積層体を含むことを特徴とする撮像素子。
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