JP4768995B2 - 光学フィルタおよび撮像装置 - Google Patents
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しかしながら、複数の基板、複数の多層膜を備える上述の近赤外線カットフィルタでは、近年の電子撮像光学系の光軸方向への小型化・薄型化の要望に応えることは困難であった。
また、基板と多層膜等との温度・湿度による膨張率の差により、基板の形状に歪み(反り)が発生する問題があった。特に、基板に樹脂を用いた場合には、基板形状の歪みが顕著になるという問題があった。
上述の特許文献2においては、透明な基板の一方の面に所定の特性を有する多層膜または単層膜を蒸着し、他方の面に基板の歪みを補正する別種類の蒸着膜が形成された透過型光学部材が開示されている。この他方の面に形成された蒸着膜は反射防止膜でもある。
しかしながら、上述の透過型光学部材では、基板の歪みの補正を重視すると一方の面または他方の面に形成された多層膜等の特性(透過特性等)を確保することが困難となるという問題があった。逆に、上記多層膜等の特性を確保すると基板の歪みの補正が不十分になるという問題があった。
基板の歪みが残存すると、光を透過型光学部材に略垂直に入射させることが困難となり、透過型光学部材の透過特性等に影響が現れるという問題があった。
本発明は、赤外線を吸収する厚さ0.5mm以下の基板と、該基板の一方の面に形成された赤外線を反射する赤外線カット層と、前記基板の他方の面に形成された反射防止層と、を有し、前記赤外線カット層および前記反射防止層が、屈折率の異なる複数の薄膜層を積層した多層構造からなり、前記反射防止層の層数と、前記赤外線カット層の層数とが、以下の条件式を満足する光学フィルタを提供する。
1<(層数IR)/(層数AR)≦2.5 ・・・(3)
ただし、(層数IR)は赤外線カット層の層数、(層数AR)は反射防止層の層数である。
なお、赤外線カット層および反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層構造を有するものであることが好ましい。
この場合に、赤外線カット層の層数と反射防止層の層数とが条件式(3)を満たすため、赤外線カット層により基板に働く応力と、反射防止層により基板に働く応力とがより均衡し、基板の歪みを所定のより狭い範囲内に納めることができる。そのため、光の光学フィルタへの入射角をより狭い角度範囲内に納めることができ、光学フィルタの透過率特性等が損なわれることをより確実に防止できる。
本発明によれば、基材が赤外線を吸収する樹脂から形成されているため、光学フィルタの軽量化を図ることができると共に、安価に製造することができる。
0.05 ≦(層厚AR)/(層厚IR)≦ 1 ・・・(1)
ただし、(層厚AR)は反射防止層の層厚、(層厚IR)は赤外線カット層の層厚である。
本発明の光学フィルタを撮像装置に用いることにより、電子撮像素子に入射される光の赤外線を良好にカットすることができる。また、光学フィルタの小型化・薄型化を図ることができるため、撮像装置の小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、光学フィルタの透過率特性等が損なわれることを防止できるため、電子撮像素子により撮像された画像において、透過した赤外線による色ムラが発生することを防止できる。
〔第1の実施形態〕
以下、本発明に係る赤外線カットフィルタにおける第1の実施形態について図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態における赤外線カットフィルタの構成を説明する図である。
赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)1Aは、図1に示すように、赤外線を吸収する基板である赤外線吸収フィルタ(基板)3aと、赤外線を反射する赤外線カットコート(赤外線カット層)5aと、光の反射を抑える反射防止コート(反射防止層)7と、から概略構成されている。
赤外線吸収フィルタ3aはプラスチック等の樹脂から形成された板状の部材であり、例えば、呉羽化学工業株式会社製のルミクル(登録商標)を例示することができる。赤外線吸収フィルタ3aを樹脂から形成することにより、赤外線カットフィルタ1Aの軽量化を図ることができると共に、安価に製造することができる。
そのため、赤外線カットコート5aにより赤外線吸収フィルタ3aに働く応力と、反射防止コート7により赤外線吸収フィルタ3aに働く応力とが打ち消しあい、赤外線吸収フィルタ3aの歪みを所定の範囲内に収めることができる。そのため、光の赤外線カットフィルタ1Aへの入射角を所定の角度範囲内に収めることができ、赤外線カットフィルタ1Aの透過率特性等が損なわれることを防止できる。
そのため、赤外線カットコート5aにより赤外線吸収フィルタ3aに働く応力と、反射防止コート7により赤外線吸収フィルタ3aに働く応力とが打ち消しあい、赤外線吸収フィルタ3aの歪みを所定の範囲内に収めることができる。そのため、光の赤外線カットフィルタ1Aへの入射角を所定の角度範囲内に収めることができ、赤外線カットフィルタ1Aの透過率特性等が損なわれることを防止できる。
図2は、一方の面に薄膜が形成された薄板基板に働く応力を計算する際に用いる計算モデルを説明する図である。図2(a)は、薄板基板を斜め上方から見た斜視図であり、図2(b)は、薄板基板を側面から見た側面図である。
ここでは、説明を簡単にするため、図2に示すように、赤外線吸収フィルタ3aを厚さがDの短冊状の薄板基板BPとし、この薄板基板BPの一方の面に膜厚がdの薄膜TFを形成した場合に、薄板基板BPの長軸方向に発生する応力σについて説明する。
応力σと、基板厚Dと、膜厚dなどとの関係は、以下に示す式(4)で表すことができる。また、式(4)中の1/Rは、式(5)により薄膜TF成膜前の基板BPの曲率半径R1と、薄膜TF形成後の基板BPの曲率半径R2とにより求めることができる。
薄膜TF形成前の基板BPが平らな場合には、R1は無限大となり、(1/R1)≒0となる。また、R2は基板の反り量から求められる。
蒸着法により薄膜を成膜する場合には、成膜種により膜応力が異なる。例えば、酸化シリコン(SiO2)層を成膜した場合には圧縮応力が発生するが、酸素を導入して酸化チタン(TiO2)層を成膜した場合には引っ張り応力が発生する。したがって、酸化シリコン層と、酸化チタン層とを積層して形成する本実施形態の赤外線カットコート5aや反射防止コート7は、圧縮応力と引っ張り応力とが相殺され、全体としての膜応力が小さくなる。
例えば、反射防止コート7側(図1中の右側)から赤外線カットフィルタ1Aに入射する光は、まず、反射防止コート7を透過して赤外線吸収フィルタ3aに入射する。反射防止コート7が光の入射面に形成されていることにより、赤外線吸収フィルタ3aにおいて入射する光の反射が防止されている。
入射した光の赤外線の一部は赤外線吸収フィルタ3aに吸収され、残りの光は赤外線吸収フィルタ3aを透過し、赤外線カットコート5aに入射する。赤外線吸収フィルタ3aを透過した赤外線の一部は、赤外線カットコート5aにおいて反射され、残りの赤外線を含む光は赤外線カットフィルタ1Aから出射される。
このようにして赤外線を吸収および反射する赤外線カットフィルタ1Aの各波長に対する透過率は、図3に示す通りであり、750nmから850nmの波長帯域における光の透過率は、500nmから550nmの波長帯域における光の透過量の平均値を基準として、約10%以下となっている。
次に、本発明に係る赤外線カットフィルタにおける第2の実施形態について図4および図5を参照して説明する。
図4は、本実施形態における赤外線カットフィルタの構成を説明する図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
赤外線カットコート5bは、屈折率の異なる酸化チタン(TiO2)の層(薄膜層)と酸化シリコン(SiO2)の層(薄膜層)とが交互に積層された多層膜として形成され、本実施形態においては酸化チタン層と酸化シリコン層が12層積層されたものであって、赤外線カットコート5b全体のコート膜厚が1.19μmのものに適用して説明する。赤外線カットコート5bの膜厚などの詳細なデータを以下の表に示す。
そのため、赤外線カットコート5bにより赤外線吸収フィルタ3aに働く応力と、反射防止コート7により赤外線吸収フィルタ3aに働く応力とが打ち消しあい、赤外線吸収フィルタ3aの歪みを所定の範囲内に収めることができる。そのため、光の赤外線カットフィルタ1Bへの入射角を所定の角度範囲内に収めることができ、赤外線カットフィルタ1Bの透過率特性等が損なわれることを防止できる。
そのため、赤外線カットコート5bにより赤外線吸収フィルタ3aに働く応力と、反射防止コート7により赤外線吸収フィルタ3aに働く応力とがより均衡し、赤外線吸収フィルタ3aの歪みを所定のより狭い範囲内に収めることができる。そのため、光の赤外線カットフィルタ1Bへの入射角を所定の角度範囲内に収めることができ、赤外線カットフィルタ1Bの透過率特性等が損なわれることをより確実に防止できる。
次に、本発明に係る赤外線カットフィルタにおける第3の実施形態について図6および図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態における赤外線カットフィルタの構成を説明する図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)1Cは、図6に示すように、赤外線を吸収する基板である赤外線吸収フィルタ3aと、赤外線を反射する赤外線カットコート(赤外線カット層)5cと、光の反射を抑える反射防止コート7と、から概略構成されている。
そのため、赤外線カットコート5cにより赤外線吸収フィルタ3aに働く応力と、反射防止コート7により赤外線吸収フィルタ3aに働く応力とが打ち消しあい、赤外線吸収フィルタ3aの歪みを所定の範囲内に収めることができる。そのため、光の赤外線カットフィルタ1Cへの入射角を所定の角度範囲内に収めることができ、赤外線カットフィルタ1Cの透過率特性等が損なわれることを防止できる。
また、赤外線カットコート5cの層数と、反射防止コート7の層数との比は、(14層)/(5層)=4.4である。
〔単焦点光学系〕
次に、本発明の赤外線カットフィルタを用いた単焦点光学系の一実施形態について図8から図10を参照しながら説明する。
図8は、本発明の赤外線カットフィルタを用いた単焦点光学系の無限遠物点合焦時のレンズ断面図である。
単焦点光学系(撮像装置)50は、図8に示すように、結像レンズ系(光学系)Lと、像を撮像する電子撮像素子51と、電子撮像素子51のカバーガラスを兼用する赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)53と、から概略構成されている。
赤外線カットフィルタ53は、上述の第1の実施形態から第6の実施形態に係る赤外線カットフィルタのいずれかを用いたものである。また、電子撮像素子51としては、CCDやCMOSなどを用いることができる。
本実施形態では、第1レンズL1から第3レンズL3は全てプラスチックから構成されたものに適用して説明する。
なお、本実施形態における結像レンズ系Lの仕様は、焦点距離f=3.83mm、像高2.30mmであり、Fナンバー=2.98、全画角2ω=63.0°である。
fは全系焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角、r 1 、r2 …は各レンズ面の曲率半径、d1 、d2 …は各レンズ面間の間隔、nd1、nd2…は各レンズのd線の屈折率、νd1、νd2…は各レンズのアッベ数である。
また、非球面形状は、xを光の進行方向を正とした光軸とし、yを光軸と直交する方向にとると、下記の式にて表される。
+A4y4 +A6 y6 +A8 y8
ただし、rは光軸上の曲率半径、Kは円錐係数、A4 、A6 、A8 はそれぞれ4次、6次、8次の非球面係数である。
さらに、赤外線カットフィルタ53の透過率特性等が損なわれることを防止できるため、電子撮像素子51により撮像された画像において、透過した赤外線による色ムラが発生することを防止できる。
また、図10に示すように、赤外線カットフィルタ53とカバーガラス55とローパスフィルタ57とを別々に設けてもよい。
次に、本発明の赤外線カットフィルタを用いた自由曲面光学系について図11から図13を参照しながら説明する。
図11は、本発明の赤外線カットフィルタを用いた自由曲面光学系の一実施形態を説明する断面図である。
まず、本実施例の説明に用いる構成パラメータについて、図11を用いながら説明する。
本実施形態の構成パラメータは、図11に示すように、順光線追跡で、軸上主光線ML1を、物体中心から光学系の絞り61の中心を垂直に通り、電子撮像素子51中心に至る光線で定義されている。そして、光学系の最も物体側の第1面(図11の場合は、第11面11)の軸上主光線ML1と交差する位置を偏心光学系の偏心光学面の原点として、軸上主光線ML1に沿う方向をZ軸方向とし、物体から第1面に向かう方向をZ軸正方向とし、光軸が折り曲げられる平面をY−Z平面とし、原点を通りY−Z平面に直交する方向をX軸方向とし、図11の紙面の表から裏へ向かう方向をX軸正方向とし、X軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をY軸とする。
本実施形態においては、このY−Z平面内で各面の偏心を行っており、また、各回転非対称自由曲面の唯一の対称面をY−Z面としている。
なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、面の中心軸とそのXYZ直交座標系を、まずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した面の中心軸を新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させると共に1度回転した座標系もY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その2度回転した面の中心軸を新たな座標系の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
また、本発明で用いられる自由曲面の面の形状は、例えば米国特許第6,124,989号(特開2000−66105号)の(a)式により定義される自由曲面であり、その定義式のZ軸が自由曲面の軸となる。
なお、データの記載されていない自由曲面に関する項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。
自由曲面光学系(撮像装置)60は、図11に示すように、プリズムを有するプリズム光学系(光学系)Pと、像を撮像する電子撮像素子51と、電子撮像素子51のカバーガラスを兼用する赤外線カットフィルタ53と、から概略構成されている。から概略構成されている。
プリズム光学系Pは、物体側から光の通る順に、前群を構成する第1プリズム10と、絞り61と、後群を構成する第2プリズム20と、から構成されている。
これらの面は、物体からの光線が第1透過面である第11面11を透過し、第1反射面である第12面12で内面反射され、第2透過面である第13面13を透過し、第2プリズム20に向けて出射するように配置されている。
これらの面は、第1プリズム10からの光線が第1透過面である第21面21を透過し、第1反射面である第22面22で内面反射され、第2反射面である第23面23で内面反射され、第2透過面である第24面24を透過し、撮像ユニット30に向けて出射するように配置されている。
なお、上述の第1プリズム10および第2プリズム20からなる結像光学系においては、中間像を形成していない。
なお、上述の実施形態はその他のサイズ等の実施形態へ適用しても構わず、特に限定するものではない。
さらに、赤外線カットフィルタ53の透過率特性等が損なわれることを防止できるため、電子撮像素子51により撮像された画像において、透過した赤外線による色ムラが発生することを防止できる。
また、図13に示すように、赤外線カットフィルタ53とカバーガラス55とローパスフィルタ57とを別々に設けてもよい。
例えば、上記の実施の形態においては、本発明の赤外線カットフィルタを単焦点光学系に適応して説明したが、本発明は単焦点光学系に限られることなく、ズーム光学系など、その他各種の光学系に適応できるものである。
また、上記実施の形態では、高屈折率層(TiO2)と低屈折率層(SiO2)とを交互に積層した赤外線カットコートおよび反射防止コートについて例示したが、本発明はこれに限らず、高屈折率層、中間屈折率層、低屈折率層を交互に積層させてもよい。
3a 赤外線吸収フィルタ(基板)
5a,5b,5c 赤外線カットコート(赤外線カット層)
7 反射防止コート(反射防止層)
50 単焦点光学系(撮像装置)
51 電子撮像素子
53 赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)
60 自由曲面光学系(撮像装置)
L 結像レンズ系(光学系)
P プリズム光学系(光学系)
Claims (5)
- 赤外線を吸収する厚さ0.5mm以下の基板と、
該基板の一方の面に形成された赤外線を反射する赤外線カット層と、
前記基板の他方の面に形成された反射防止層と、を有し、
前記赤外線カット層および前記反射防止層が、屈折率の異なる複数の薄膜層を積層した多層構造からなり、
前記反射防止層の層数と、前記赤外線カット層の層数とが、以下の条件式を満足する光学フィルタ。
1<(層数IR)/(層数AR)≦2.5 ・・・(3)
ただし、(層数IR)は赤外線カット層の層数、(層数AR)は反射防止層の層数である。 - 前記基板が樹脂から形成されている請求項1記載の光学フィルタ。
- 前記反射防止層の層厚と、前記赤外線カット層の層厚とが、以下の条件式を満足する請求項1または請求項2に記載の光学フィルタ。
0.05≦(層厚AR)/(層厚IR)≦1 ・・・(1)
ただし、(層厚AR)は反射防止層の層厚、(層厚IR)は赤外線カット層の層厚である。 - 750nmから850nmの波長帯域における光の透過率が、500nmから550nmの波長帯域における光の透過量の平均値を基準として、10%以下である請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学フィルタ。
- 屈折率を有する光学素子を備える光学系と、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学フィルタと、
前記光学系の像側に配置され、前記光学フィルタを透過した光が入射される電子撮像素子と、を備える撮像装置。
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