JP5360350B2 - フェライト成形シート、焼結フェライト基板およびアンテナモジュール - Google Patents
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Description
焼結フェライト基板に薄い導電層を塗装や印刷積層によって形成するため、アンテナモジュールの厚みが100〜580μm程度と薄く出来る。また、本発明によれば、導電ループコイルと磁性部材(軟磁性層)及び導電層を一体積層した状態で共振を調整しているため、機器実装後のアンテナの特性変化が極めて少ないので機器実装後に煩雑な調整が不要である。
フェライト成形シートおよび焼結フェライト基板の表面粗さ(中心線平均粗さRa、最大高さRmax)は、原子間力顕微鏡AFM(Digital Instrument社製 Nano Scope III)を用い、100μm四方の領域を測定して求めた。また表面の凹凸形状を表すために、同装置のBearing解析ソフトで数値化した。表面粗さを求めたイメージから、その最大高さ(Rmax)の50%深さで水平方向にカットした破断面の面積占有率を求めることで、凹凸形状状態を比較することができる。すなわちこの面積占有率が、フェライト成形シートの場合、10〜80%であれば、焼成後の固着を防止できる。焼成後の焼結フェライト基板について測定すると、固着しなかった焼結フェライト基板の場合の面積占有率は5〜70%であった。なお、比較例の固着が激しい焼結フェライト基板の表面粗さの測定は、割れた基板から固着していない箇所について測定を行った。
フェライト粉末の平均粒子径は、日機装株式会社製マイクロトラックMT3300を用いて湿式法により測定した。分散剤としてヘキタメタリン酸0.2%と界面活性剤として非イオン界面活性剤(Triton X−100 ダウケミカル社製)0.05%を含む水溶液100mlにフェライト粉末5gを加え超音波ホモジナイザ(型式:300W
、日機装株式会社製)で300秒分散後、測定時間30秒、測定範囲0.021から1408μm、溶媒屈折率1.33、粒子屈折率2.94、粒子形状は非球形の条件で体積分布を測定した。
シートの厚みは外寸80mm角に切り出した成形シートの4隅をミツトヨ株式会社製デジマチックインジケーターID−S112を測定し平均値を求めた。
透磁率の測定は、焼結フェライト基板を外径φ14mm、内径φ8mmのリング状に切り出しリングの厚みを測定し試験片とする。インピーダンスアナライザーHP4291A(ヒューレットパッカ−ド社製)とそのテストステーションに装着された治具(HP1645A)を使用して、周波数13.56MHzの値を測定した。
アンテナモジュールの共振特性は図1に記載された構成からなる導電ループアンテナの共振特性を測定した。その方法は、図1に示される積層アンテナモジュールの給電線路のインピーダンスの周波数特性を測定し、給電線路に並列にコンデンサーを接続してその静電容量を調整し、共振周波数が13.56MHzとなった状態で、共振度Qをヒューレットパッカード社製インピーダンスアナライザーHP4291Aを用いて測定した。実施例7〜9と比較例5〜7において、アンテナモジュールと鉄板を積層した場合の共振周波数と共振度Qの測定は、比較のために鉄板を積層しない場合に設定した条件で行った。
導電層の表面電気抵抗は、低抵抗率計のLoresta−GP(MCP−T600型、三菱化学株式会社製)を用い、4探針法(JISK7149準拠)により測定した。
累積50%体積粒子径0.7μmに調整したNi−Zn−Cuフェライト粉末(組成、Fe2O3:48.5Mol%、NiO:20.5Mol%、ZnO:20.5Mol%、CuO:10.5Mol%、焼成条件:850℃90分)を1000重量部、チタネート系カップリング剤(味の素株式会社製 KR−TTS)10重量部で表面処理したフェライト粉末1000重量部と熱可塑性エラストマー(東ソー株式会社製LUMITAC 22−1)50重量部、密度0.9g/cm3のポリエチレン100重量部及びステアリン酸20重量部を加圧ニーダーで130℃40分混練した。得られたフェライト樹脂組成混練物を、中心線平均粗さが450nm、最大高さが8μmにサンドブラスト加工された鉄板を用いて、温度160℃、圧力100kg/cm2、加圧時間3分間プレス成形して、厚み77μm、サイズ100mm角のフェライト成形シートを作製した。このシートを10枚重ねた。焼成台座としてアルミナセッター(菊水化学工業株式会社製)に上下をはさみ500℃10時間脱脂し、920℃2時間で焼成冷却後に焼結物を剥したところ、板が破損すること無く容易に剥離できた。得られた焼結フェライト基板は厚み65μm、外寸80mm角であった。その焼結板から外径φ14mm、内径φ8mm試験片を切り出し、インピーダンスアナライザーHP4291A(ヒューレットパッカ−ド社製)とそのテストステーションに装着された治具(HP16454A)を使用して、周波数13.56MHzにおける透磁率はμr’が98、μr”が2.2であり、固着の無い磁気特性も良好な焼結フェライト基板が得られた。
実施例1と同じNi−Zn−Cuフェライト100重量部とブチルフタリルブチルグリコレート2重量部、ポリビニルアルコール樹脂(積水化学工業株式会社製 エスレックB BM−1)12重量部および溶媒としてn−ブタノール4:トルエン6に混合した溶剤60重量部をボールミルで混合・溶解・分散して、フェライト分散塗料を得た。フェライト分散塗料を油ロータリー真空ポンプで減圧脱泡した後、片面が中心線平均粗さが530nm、最大高さが5.6μmにサンドブラスト処理されたPETフィルム(パナック工業株式会社製ルミマット50S200トレス)にドクターブレードで一定の厚さに塗布し、100℃の熱風で30分間乾燥して、厚さ204μmのフェライト成形シートを得た。
得られたフェライト成形シートを100mm角の大きさに切断しPETフィルムから剥離し、得られたシートを実施例1と同一条件で焼成した。得られた焼結フェライト基板の特性評価を行った結果、厚みは160μm、外寸80mm角であり、13.56MHzにおける透磁率はμr’が96、μr”が3であり、固着もなく剥離は容易であった。
累積50%体積粒子径6μmのNi−Zn−Cuフェライト粉末(組成、Fe2O3:48.5Mol%、NiO:20.5Mol%、ZnO:20.5Mol%、CuO:10.5Mol%、焼成条件:1000℃90分)を300重量部、実施例1と同じ累積50%体積粒子径0.7μmのNi−Zn−Cuフェライトを700重量部混合してその他は実施例1と同様な方法でフェライト樹脂組成混練物を得た。得られた混練物を、中心線平均粗さが120nm、最大粗さが2μmに加工された鉄板を用いて、温度160℃、圧力100kg/cm2、加圧時間3分プレス成形して、厚み200μm、外寸100mmのフェライト成形シートを作製した。得られたシートを実施例1と同様な条件で処理した焼結フェライト基板の評価を行った結果、厚みは167μm、13.56MHzにおける透磁率はμr’が80、μr”が1.1であり、固着もなく剥離は容易であった。
ドクターブレードでの塗布時に、厚さ42μmのフェライト成形シートを得る条件にした以外は実施例2と同様な方法で焼結フェライト基板を得た。得た焼結フェライト基板の特性評価を行った結果、厚みは37μm、13.56MHzにおける透磁率はμr’が95、μr”が2であり、固着もなく剥離は容易であった。
ドクターブレードでの塗布時に、厚さ405μmのフェライト成形シートを得る条件にした以外は実施例2と同様な方法で焼結フェライト基板を得た。得た焼結フェライト基板の特性評価を行った結果、厚みは350μm、13.56MHzにおける透磁率はμr’が102、μr”が3.2であり、固着もなく剥離は容易であった。
実施例1と同様な方法でフェライト樹脂組成混練物を作製し、中心線平均粗さが120nm、最大粗さが2μmに加工された鉄板を用いて組成物を挟み成形したこと以外は同様な条件で焼結フェライト基板を作製した結果、固着が激しく剥離が困難であり、部分的に剥離はしたが、板が割れたりして80mm角の焼結フェライト基板は1枚も出来なかった。ちなみに焼結フェライト基板の13.56MHzにおける透磁率はμr’が98、μr”が1.9であった。
実施例2と同様な方法でフェライト分散塗料を作製した。得られた塗料を、サンドブラスト加工されていない中心線平均粗さが17nm、最大高さが0.3μm、厚さ50μmのPETフィルムに、ドクターブレードで一定の厚さに塗布し、100℃熱風で30分間乾燥して、厚さ202μmのフェライト成形シートを得た。このシートをPETフィルムから剥離して10枚重ねて実施例1と同様な焼成処理を行い、得られた焼結フェライト基板の評価を行った。厚みは165μmで、固着が激しく剥離できなかった。
比較例2と同様の方法でシートを作製した後、PETフィルムからシートを剥離してフィルム面に接していたフェライト成形シート面に平均粒子径5μmのジルコニア粉末(第一稀元素化学工業株式会社製)を50mgブラッシングにより塗布した後、比較例2と同様な焼成処理を行い、得られた焼結フェライト基板の評価を行った。焼結フェライト基板の13.56MHzにおける透磁率はμr’が96、μr”が1.8であったが、ジルコニア粉末が焼結フェライト基板表面に固着している部位が認められそれをブラシで除去する際、10枚中3枚の板が割れた。粉末の塗布及び除去作業は大変煩雑であり、ジルコニア粉末は完全には除去できなかった。。
中心線平均粗さが1200nm、最大高さが14μmにサンドブラスト加工された鉄板を用いた以外は実施例1と同様な方法で焼結フェライト基板を得た。固着は無く板を破損することなく剥離できた。焼結フェライト基板の13.56MHzにおける透磁率はμr’が75、μr”が0.6と磁気特性的に満足できない値であった。これは表面粗さが大きくなりすぎ、結果として焼結フェライト基板の断面に空隙が多くなるので透磁率が低下した。
実施例2と同様な方法でフェライト分散塗料を作製した。得られた塗料を、中心線平均粗さが252nm、最大高さが3.3μmに粗さ加工されたPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製U4−50)に、ドクターブレードで一定の厚さに塗布し、100℃熱風で30分間乾燥して、厚み200μmのフェライト成形シートを得た。このシートをPETフィルムから剥離して10枚重ねて実施例1と同様な焼成処理を行い、得られた焼結フェライト基板の評価を行った。厚みは171μmで、固着が激しく剥離できなかった。得たフェライト成形シートの表面粗さは中心線平均粗さが319nm、最大高さが3.3μm、100μm四方のエリアにおいて最大高さの50%深さで水平方向にカットした破断面の面積占有率は95%であった。また焼結フェライト基板の表面粗さは中心線平均粗さが246nm、最大高さが3.3μm、100μm四方のエリアにおいて最大高さの50%深さで水平方向にカットした破断面の面積占有率は96%であった。
実施例1で得られた焼結フェライト基板の凹凸加工面に厚さ50μmの両面粘着テープ(製品名467MP 住友スリーエム製)を貼り付け、焼結フェライト基板層63μmと粘着層50μmからなる積層体を作製した。この積層体に屈曲性を持たせるために、厚さ10mm発泡倍率約10倍のウレタンシートに載せ、外形約50mm、幅約15cmのゴムローラーを用いてロール線圧力が約1kg/cmの圧力で積層体を縦・横それぞれ加圧して焼結フェライト基板全体に割れを入れた後、外形14mmφ内径8mmφに打ち抜き透磁率を測定した。透磁率は13.56MHzにおいてμr‘が83でありμr“が0.8であった。また同積層体を外形30mmφの鉄の棒に巻きつけた後、前述同様の試験片を切り出し透磁率を測定した結果μr‘が82.5でありμr“が0.8とほぼ変化が無く、屈曲性も良好であり透磁率μr’は80以上と良好であった。
25μmのPETフィルムに7ターンの渦巻き状の導電ループを設けた平面アンテナを作成した、そのループ形状は縦45mm横75mmの長方形にした。また実施例1で用いたNi−Zn−Cuフェライトを用いて、実施例2と同様な方法で厚さ180μmのフェライト成形シートを作製し、成形シート表面にV型の刃先各30°のトムソン刃により間隔が2mmの格子状で深さ約90μmのV溝を設けた。得られた溝付きフェライト成形シートを100mm角に切断し、PETフィルムから剥離し、得られたシートを実施例1と同一の条件で焼成した。得られた焼結フェライト基板は厚さ150μm、外寸80mm角であった。焼結フェライト基板の溝のない面に、ポリエステル系樹脂に銀及び銅粉末を分散させた導電塗料(商品名ドータイトXE−9000、藤倉化成株式会社製)を塗布し、50℃30分乾燥させ30μmの導電層を設けた。導電層の表面電気抵抗は0.2Ω/□であった。この導電面に両面粘着テープ(製品名467MP、住友スリーエム株式会社製)に貼り付けた後、実施例6と同様な方法でフェライト焼結基板を割り屈曲性を付与した。そのときフェライトの個片は2mm角でほぼ均一な形であった。このシートの透磁率μr‘は84、μr“は0.4であった。
実施例7と同様な方法で作製したアンテナモジュールにおいて、焼結フェライト基板の導電層をニッケル・アクリル系導電塗料(商品名ドータイトFN−101)を塗工し、50℃30分乾燥し、塗膜厚さ10μm表面電気抵抗が2Ω/□であったこと以外は、実施例7と同様の評価を行った。その結果、共振特性は共振周波数13.6MHzおよびQは60であり、鉄板の装着の有無に関わらずほとんど変化は認められなかった。
焼結フェライト基板の導電層をグリーンシートに印刷積層した導電銀ペーストを900℃で一体焼成した10μmの導電層を設けた焼結フェライト基板を用いた以外は実施例7と同様な方法で作製したアンテナモジュールにおいて実施例7と同様な評価を行った。導電層の表面電気抵抗が0.1Ω/□であり、共振特性は共振周波数13.55MHzおよびQは66であり、鉄板の装着の有無に関わらずほとんど変化は認められなかった。
焼結フェライト基板に導電層を設けないこと以外は、実施例7と同様の方法によりアンテナモジュールを構成した。鉄板を積層しないときの共振周波数は13.55MHzであり、Qは67であった。これに実施例4と同様に厚み1mm鉄板を積層して共振特性を測定したところ、共振周波数が11.5MHzとなり2MHz低周波側にシフトした。Qは67であり共振度は変化しなかったが、周波数がシフトしたため13.56MHzでは共振していないので通信強度が著しく低下する結果であった。
比較例5と同様な構成であり、焼結フェライト基板の厚みを300μmにしたこと以外は比較例5と同様な評価を行った。鉄板を積層すると共振周波数は12.5MHzであり比較例5より周波数変化は少ないが通信強度が低下した。
実施例7と同様な方法で作製したアンテナモジュールにおいて焼結フェライト基板に設けた導電層の厚みが5μmでありその表面電気抵抗が5Ω/□であること以外は実施例7と同様な構成のアンテナモジュールの共振特性を評価した。その結果鉄板を積層すると共振周波数が10.9MHzに変化し13.56MHzの通信強度も低下した。
Claims (13)
- 少なくとも一方の表面の表面粗さにおいて、中心線平均粗さが170nm〜800nmであり、かつ最大高さが3μm〜10μmであり、100μm四方のエリアにおいて最大高さの50%深さで水平方向にカットした破断面の面積占有率が10〜80%であることを特徴とする、厚みが30μmから430μmのフェライト成形シート。
- フェライト成形シート表面をサンドブラストにより粗面加工したことを特徴とする請求項1記載のフェライト成形シート。
- フェライト成形シート表面を、凹凸に表面加工した金型あるいはカレンダロールにより加圧成形したことを特徴とする請求項1記載のフェライト成形シート。
- フェライト分散塗料を塗布乾燥して成形シートを得る場合においてサンドブラスト処理されたプラスチックフィルムに塗工し、表面の凹凸を転写して得られることを特徴とする請求項1記載のフェライト成形シート。
- フェライト分散塗料を塗布乾燥して成形シートを得る場合において、平均粒子径0.1から10μmのフェライト粉末の粒度を調整して表面に凹凸を設けた請求項1記載のフェライト成形シート。
- 少なくとも一方の表面の表面粗さにおいて、中心線平均粗さが150nm〜700nmであり、かつ最大高さが2μm〜9μmであり、100μm四方のエリアにおいて最大高さの50%深さで水平方向にカットした破断面の面積占有率が5〜70%であることを特徴とする、厚みが25μmから360μmの焼結フェライト基板。
- フェライトがNi−Zn−Cu系スピネルフェライトであり、かつ13.56MHzにおける透磁率の実数部μr’が80以上、透磁率の虚数部μr”が20以下であることを特徴とする請求項6記載の焼結フェライト基板。
- 焼結フェライト基板の片面に導電層を設けていることを特徴とする請求項6または7記載の焼結フェライト基板。
- 焼結フェライト基板の少なくとも片面に溝を設けていることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の焼結フェライト基板。
- 焼結フェライト基板の少なくとも片面に粘着フィルムを貼り付けており、かつ焼結フェライト基板に基板の屈曲性を生ずる割れが入っており、かつ13.56MHzにおける透磁率の実数部μr’が80以上、透磁率の虚数部μr”が20以下であることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の焼結フェライト基板。
- 無線通信媒体および無線通信媒体処理装置に用いられる導電ループアンテナモジュールにおいて、磁性部材の片面に導電ループアンテナを設け、かつアンテナを設けた磁性部材の面の反対の面に導電層を設けたことを特徴とするループアンテナモジュールであって、磁性部材が請求項8から10のいずれかに記載の焼結フェライト基板であり、前記導電層が厚みが50μm以下の表面電気抵抗が3Ω/□以下であることを特徴とするアンテナモジュール。
- 磁性部材がNi−Zn−Cu系スピネルフェライト焼結基板であって、導電層をアクリル又はエポキシ系導電塗料を塗布して設けたことを特徴とする請求項11に記載のアンテナモジュール。
- 磁性部材がNi−Zn−Cu系スピネルフェライト焼結基板であって、導電層をフェライト成形シートに銀ペーストにより印刷積層して一体焼成することによって設けたことを特徴とする請求項11に記載のアンテナモジュール。
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