JP5317312B2 - ポリアセタール樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
1. (A)下記に示す不安定末端の加熱処理を経て得られ、窒素雰囲気下、200℃で50分加熱したときのホルムアルデヒド発生量が100ppm以下である末端安定化処理を施したポリアセタール樹脂100質量部、および(B)ヒドラジド化合物0.01〜5質量部、(C)酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤および離型(潤滑)剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.1〜10質量部を含有するポリアセタール樹脂組成物。
<不安定末端の加熱処理>
下記一般式(1)で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物が、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する、下記式(2)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppm存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理する。
[R 1 R 2 R 3 R 4 N + ] n X −n (1)
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、またはアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表す。Xは水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
P×14/Q (2)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマー及び第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する量(ppm)を表し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
2. ポリアセタール樹脂の融点が155〜171℃である上記1記載のポリアセタール樹脂組成物、
3. ポリアセタール樹脂が三フッ化ホウ素配位錯化合物を用いて重合されたポリアセタールコポリマーであって、且つ該ポリアセタールコポリマーに残存するフッ素濃度が13ppm以下である上記1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物、
4. ヒドラジド化合物が下記一般式(3)で表される上記1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物、
H2NNHCO−R5−CONHNH2 (3)
(式中、R5は炭素数2〜20の炭化水素を表す)
5. ヒドラジド化合物の融点が160℃以上である上記1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物、
6. ヒドラジド化合物(B)がセバチン酸ジヒドラジドである上記1〜5のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物、
7. 更に、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(D)補強剤、導電材、熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を0〜60質量部、および(E)顔料0〜5質量部を含有する上記1〜6のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物、
8. 200℃で成形して得られ、VDA275法に従って測定されるホルムアルデヒドの放出量が1mg/kg以下である成形品を提供する、上記1〜7のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物、
9. 240℃で成形して得られ、VDA275法に従って測定されるホルムアルデヒドの放出量が3mg/kg以下である成形品を提供する、上記1〜7のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物、および
10. VDA275法に従って測定されるホルムアルデヒドの放出量が1mg/kg以下である、上記1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形品である。
(式中、R1、R2、R3、R4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
この内、一般式(1)におけるR1、R2、R3、及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、更に、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH−)、硫酸(HSO4 −、SO4 2−)、炭酸(HCO3 −、CO3 2−)、ホウ酸(B(OH)4 −)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタール樹脂及び第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する量(ppm)を表し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下し、50質量ppmを超えると不安定末端部分解除去後のポリアセタール樹脂の色調が悪化する。好ましい熱処理は、ポリアセタール樹脂の融点以上260℃以下の樹脂温度で押出機、ニーダーなどを用いて行う。260℃を超えると着色の問題、およびポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。分解で発生したホルムアルデヒドは、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法は、特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、樹脂パウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタール樹脂を熱処理する工程で添加されていれば良く、押出機の中に注入したり、押出機などを用いてフィラーやピグメントの配合を行う場合であれば、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端の分解を実施してもよい。不安定末端の分解は、重合で得られたポリアセタール樹脂中の重合触媒を失活させた後に行うことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活は、アミン類などの塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行わずに、ポリアセタール樹脂の融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下で加熱し、重合触媒を揮発低減した後に、本発明の不安定末端の分解を行っても良い。
(式中、R5は炭素数2〜20の炭化水素を表す)
中でも、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらのジカルボン酸ジヒドラジドのなかで好ましいのはセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドであり、更に好ましいのはセバチン酸ジヒドラジドである。ヒドラジド化合物の添加量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.03〜3質量部、特に好ましくは0.05〜1質量部である。これらのヒドラジド化合物は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。またヒドラジド化合物の融点は160℃以上が好ましく、より好ましいのは170℃以上である。
(式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An−はn価(nは1以上の整数)のアニオンを表し、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。)
M2+の例としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等、An−の例としては、OH−、F−、Cl−、Br−、NO3 −、CO3 2−、SO4 2−、Fe(CN)6 3−、CH3COO−、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等をあげることができる。特に好ましい例としてはCO3 2−、OH−をあげることができる。具体例としてはMg0.75Al0.25(OH)2(CO3)0.125・0.5H2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で示される合成ハイドロタルサイトを挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系物質の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。蓚酸アリニド系物質の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドなどが挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ヒンダードアミン系物質の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、などが挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
中でも好ましい耐候剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。
1.プリンターおよび複写機などに代表されるOA機器
2.VTRおよびビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、デジタルカメラなどに代表されるカメラ・ビデオ機器
3.カセットプレイヤー、LD、DAT、MD、CD、DVD、その他の光ディスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム、およびモバイルパーソナルコンピュータ、などに代表される音楽、映像または情報機器
4.携帯電話およびファクシミリなどに代表される通信機器
5.ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ、などに代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウィンドウレギュレータ、スピーカグリル、などに代表されるドア回り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン、などに代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類の自動車内外装部品
6.使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、および住宅設備機器などに代表される工業部品など
(1)ポリアセタール樹脂の融点
示差熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−2C)を用い、一旦200℃まで昇温させ融解させた試料を100℃まで冷却し、再度2.5℃/分の速度にて昇温する過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を融点とした。
(2)ポリアセタール樹脂に残存するフッ素濃度
ポリアセタール樹脂を1NのHClで加熱分解した後、フッ素イオン電極(HORIBA製)を用いてポリアセタール樹脂中のフッ素濃度を測定した。
(3)ポリアセタール樹脂から発生するホルムアルデヒドの量
窒素気流下(50NL/hr)において、ポリアセタール樹脂(ペレット)を200℃で50分間加熱溶融し、ポリアセタール樹脂から発生するホルムアルデヒドガスを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定して求めた。この条件下においては発生するホルムアルデヒドの殆どはポリアセタール樹脂の不安定な末端(−(OCH2)n−OH基)からの分解による。
(4)成形品から放出されるホルムアルデヒド量
(株)東芝製IS−80A射出成形機を用いて、シリンダー温度:200℃,240℃、射出圧力:(1次圧力/2次圧力=63.7MPa/50.0MPa)射出時間:15秒、冷却時間:20秒、金型温度;77℃で試験片を作成し、VDA275法(下記条件)により測定し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を求めた。
<VDA275法>
1Lのポリエチレン容器に蒸留水50mLと規定されたサイズの試験片(縦100mm×横40mm×厚み3mm)を入れ密閉し、60℃で3時間加熱後、蒸留水中のホルムアルデヒドをアンモニウムイオン存在下においてアセチルアセトンと反応させ、その反応物をUV分光計にて412nmの吸収ピークを測定し、ホルムアルデヒド放出量(mg/kg)を求めた。
(5)長期耐熱エージング性
140℃のギアオーブン中において、下記成形条件で得られたポリアセタール樹脂成形品(厚み3mm)の劣化状態を成形直後の引張強度に対して20%強度低下に要する期間(日数)で評価した。
成形機:住友金属工業(株)製SH−75射出成形機、シリンダー温度:200℃、射出圧力:54.0MPa、射出時間:25秒、冷却時間:15秒、金型温度:70℃
引張強度の試験方法はASTM D638に準じて行った。
(ポリアセタール樹脂a−1)
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.4g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.7×10−3molを連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10−5molで連続的に添加し重合を行った。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行った。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、ペレタイズされた。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−1)の融点は164.5℃、残存フッ素濃度は7.1ppm、ホルムアルデヒドの発生量は21ppmであった。
(ポリアセタール樹脂a−2)
1,3ジオキソランの連続添加量を42.8g/h(トリオキサン1molに対して、1.3mol%)とした以外はポリアセタール樹脂(a−1)の製造と同様の操作を行いポリアセタール樹脂(a−2)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−2)の融点は169.5℃、残存フッ素濃度は7.3ppm、ホルムアルデヒド発生量は52ppmであった。
(ポリアセタール樹脂a−3)
失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマーに第4級アンモニウム化合物を添加せずに120℃で乾燥し、乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水及び塩基性物質としてトリエチルアミンを各々3質量部及び0.1質量部添加した以外は、ポリアセタール樹脂(a−1)の製造と同様の操作を行いポリアセタール樹脂(a−3)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−3)の融点は164.3℃、残存フッ素濃度は7.5ppm、ホルムアルデヒド発生量は450ppmであった。
(ヒドラジド化合物)
b−1:セバチン酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業株式会社製)
b−2:ドデカン二酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業株式会社製)
b−3:イソフタル酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業株式会社製)
b−4:ジナフタレン酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業株式会社製)
[実施例1〜8]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体としてナイロン6,6を0.05質量部、および表−1に示したヒドラジド化合物を混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の成形条件にて試験片を成形し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量と長期耐熱エージング性の評価を行った。
[実施例9〜16]
ポリアセタール樹脂(a−2)を使用した以外は実施例1〜6と同様に操作してポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の成形条件にて試験片を成形し、放出されるホルムアルデヒド量と長期耐熱エージング性の評価を行った。
[比較例1]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、およびホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体としてナイロン6,6を0.05質量部を混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の成形条件にて試験片を成形し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量と長期耐熱エージング性の評価を行った。
[比較例2]
ポリアセタール樹脂(a−2)を使用した以外は比較例1と同様に操作してポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の成形条件にて試験片を成形し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量と長期耐熱エージング性の評価を行った。
[比較例3]
ポリアセタール樹脂(a−3)を使用した以外は比較例1と同様に操作してポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の成形条件にて試験片を成形し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量と長期耐熱エージング性の評価を行った。
[比較例4〜7]
ポリアセタール樹脂(a−3)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体としてナイロン6,6を0.05質量部、および表−1に示したヒドラジド化合物を混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の成形条件にて試験片を成形し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量と長期耐熱エージング性の評価を行った。
[比較例8]
旭化成ケミカルズ(株)製ポリアセタールコポリマーテナックC4520を前述の成形条件にて試験片を成形し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量の評価を行ったところ、成形温度200℃でのホルムアルデヒド放出量は2.0mg/kg、成形温度240℃でのホルムアルデヒド放出量は12.8mg/kgであった。
Claims (10)
- (A)下記に示す不安定末端の加熱処理を経て得られ、窒素雰囲気下、200℃で50分間加熱したときのホルムアルデヒド発生量が100ppm以下である末端安定化処理を施したポリアセタール樹脂100質量部に、(B)ヒドラジド化合物0.01〜5質量部、(C)酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤および離型(潤滑)剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.1〜10質量部を含有するポリアセタール樹脂組成物。
<不安定末端の加熱処理>
下記一般式(1)で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物が、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する、下記式(2)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppm存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理する。
[R 1 R 2 R 3 R 4 N + ] n X −n (1)
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、またはアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表す。Xは水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
P×14/Q (2)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマー及び第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する量(ppm)を表し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。) - ポリアセタール樹脂の融点が155〜171℃である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂が三フッ化ホウ素配位錯化合物を用いて重合されたポリアセタールコポリマーであって、且つ該ポリアセタールコポリマーに残存するフッ素濃度が13ppm以下である請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ヒドラジド化合物が下記一般式(3)で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
H2NNHCO−R5−CONHNH2 (3)
(式中、R5は炭素数2〜20の炭化水素を表す) - ヒドラジド化合物の融点が160℃以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ヒドラジド化合物(B)がセバチン酸ジヒドラジドである請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 更に、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(D)補強剤、導電材、熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を0〜60質量部、および(E)顔料0〜5質量部を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 200℃で成形して得られ、VDA275法に従って測定されるホルムアルデヒドの放出量が1mg/kg以下である成形品を提供する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 240℃で成形して得られ、VDA275法に従って測定されるホルムアルデヒドの放出量が3mg/kg以下である成形品を提供する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- VDA275法に従って測定されるホルムアルデヒドの放出量が1mg/kg以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形品。
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