JP5281539B2 - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
すなわち本発明は下記の通りである。
前記第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との混合物が下記式(1)及び(2)で表される条件を満足する、ポリアセタール樹脂組成物。
T1<T2 (1)
T1<T3 (2)
(式(1)及び(2)中、T1は、示差走査熱量計を用いて前記混合物に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、前記混合物が融解するまで2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)であり、T2は、前記示差走査熱量計を用いて前記第1のヒドラジン誘導体に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、前記第1のヒドラジン誘導体に対して2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)であり、T3は、前記示差走査熱量計を用いて前記ポリアセタール樹脂に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、前記ポリアセタール樹脂に対して2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)である。)
[2]前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物が、前記第1のヒドラジン誘導体とは異なる1種又は2種以上の第2のヒドラジン誘導体である、[1]に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[3]前記第1のヒドラジン誘導体がカルボン酸ヒドラジドであり、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物が、前記第1のヒドラジン誘導体とは異なる1種又は2種以上のカルボン酸ヒドラジドである、[1]又は[2]に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[4]前記第1のヒドラジン誘導体が下記一般式(3)で表されるカルボン酸ジヒドラジドであり、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物が、前記第1のヒドラジン誘導体とは異なる1種又は2種以上のカルボン酸ヒドラジドである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[5]前記第1のヒドラジン誘導体が、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド及びドデカン二酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸ジヒドラジドである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[6]前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物とが、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド及びドデカン二酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる互いに異なるカルボン酸ジヒドラジドを含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[7]前記ポリアセタール樹脂100質量部に対して、前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との合計の含有量が0.03〜0.2質量部である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[8]前記第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との含有比が、質量基準で2:8〜8:2である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[9]前記第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との含有比が、質量基準で3:7〜7:3である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[10]前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との質量比1:1の混合物の吸熱容量が最も大きな吸熱ピークのピーク面積が、前記混合物の全吸熱ピークの総ピーク面積の95%未満である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[11]前記ポリアルキレングリコールの数平均分子量は300〜10000である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[12]前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである、[1]〜[11]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[13]前記ポリアセタール樹脂が、ポリアセタールコポリマーである、[1]〜[12]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[14]前記ポリアセタール樹脂が、メチラールに連鎖移動させて得られるポリアセタールコポリマーである、[1]〜[13]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[15][1]〜[14]のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む自動車内装・機構用成形品。
[16]ドア、サンルーフ、シートベルト、スイッチ、クリップ、シート及びワイパーからなる群より選ばれる、[15]に記載の自動車内装・機構用成形品。
T1<T2 (1)
T1<T3 (2)
ポリアセタール樹脂(A)としては、従来知られているものであれば特に限定されず、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。ポリアセタールホモポリマーとしては、例えば、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる、実質的にオキシメチレン単位のみからなるポリアセタールホモポリマーが挙げられる。また、ポリアセタールコポリマーとしては、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコール若しくはジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマーが挙げられる。さらに、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも挙げられる。
ここで、式(7)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基はその水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
ここで、式(8)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
本実施形態に係るヒドラジン誘導体(B)は、窒素原子間の単結合を有するヒドラジン構造(N−N)を有するものであれば特に限定されず、例えばヒドラジン;ヒドラジン水和物;コハク酸モノヒドラジド、グルタル酸モノヒドラジド、アジピン酸モノヒドラジド、ピメリン酸モノヒドラジド、スペリン酸モノヒドラジド、アゼライン酸モノヒドラジド、セバシン酸モノヒドラジド等のカルボン酸モノヒドラジド;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等の飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等の芳香族カルボン酸ジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド;トリマー酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド等のトリヒドラジド;ピロメリット酸テトラヒドラジド、ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド等のテトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラート)と反応させてなるポリヒドラジド等のポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド;ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジン及び/又は上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;上記ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類又はポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に、上記のいずれかのジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;上記多官能セミカルバジドと上記水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾン等が挙げられる。
本発明者らは、種々のヒドラジン誘導体(B)を検討した結果、ヒドラジン誘導体(B)がホルムアルデヒドと効率よく反応するためには、その分子内に複数のヒドラジド基を有する化合物が有効であるものの、ヒドラジド誘導体(B)自体の融点は上昇していく傾向にあり、ポリアセタール樹脂(A)の融点よりも高くなることを知見した。さらに、ポリアセタール樹脂(A)の融点とヒドラジン誘導体(B)の融点との差が広がるとモールドデポジットになりやすいことが判明した。そこで、本発明者らは、ヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物に着目した。
ヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)としては、ヒドラジン誘導体(B)への添加により上記融点を低下できるものであれば特に制限はない。その中でも、化合物(C)が、ヒドラジン誘導体(B)とは異なる1種又は2種以上のヒドラジン誘導体であると好ましい。例えば、ヒドラジン誘導体(B)がモノヒドラジドの場合の化合物(C)は、ヒドラジン誘導体(B)とは異なる1種又は2種以上のモノヒドラジド及び/又はジヒドラジド、ヒドラジン誘導体(B)がジヒドラジドの場合の化合物(C)は、ヒドラジン誘導体(B)とは異なる1種又は2種以上のジヒドラジド及び/又はモノヒドラジドがより好ましい。このように、化合物(C)もヒドラジン誘導体であって、それらヒドラジド誘導体(B)と化合物(C)との組合せが、互いに異種の構造を有するヒドラジド誘導体の組合せであると、ヒドラジド誘導体(B)の融点を低下させるのに効果的である。
例えば、アジピン酸ジヒドラジド単体を、上述のようにして示差走査熱量測定に供したしたところ、2つの吸熱ピークが認められ、それらのピークの頂点から176℃と171℃とに融点が認められた。また、各々の吸熱ピークの面積から算出した吸熱容量(以下「ΔH」という)は、それぞれ5.4J/g、229.2J/gであった。それらのΔHの合計量に対する、171℃の融点を示す吸熱ピークのΔHの割合、すなわち、それらの吸熱ピークの総ピーク面積に対する171℃の融点を示す吸熱ピークのピーク面積の割合は、98%であった(図1参照)。また、セバシン酸ジヒドラジド単体を同様に示差走査熱量測定に供したところ、185℃、180℃及び172℃に融点が認められ、各々のΔHは、5.4J/g、32.4J/g及び16.4J/gであった。さらに、それらのΔHの合計量に対するそれぞれの融点を示す吸熱ピークのΔHの割合は、185℃が10%、180℃が60%、172℃が30%であった(図2参照)。同様にしてドデカン二酸ジヒドラジド単体を測定したところ、183℃、177℃及び171℃に融点が認められ、各々のΔHは、2.4J/g、18.1J/g及び32.4J/gであった。さらに、それらのΔHの合計量に対するそれぞれの融点を示す吸熱ピークのΔHの割合は、183℃が5%、177℃が34%、171℃が61%であった。ΔHが最も大きな吸熱ピークの頂点が示す温度を、ここで「融点のメインピーク温度」と呼ぶと、アジピン酸ジヒドラジドの融点のメインピーク温度は171℃、セバシン酸ジヒドラジドの融点のメインピーク温度は180℃、ドデカン二酸ジヒドラジドの融点のメインピーク温度は171℃であった。
T1<T2 (1)
T1<T3 (2)
ここで、式(1)及び(2)中、T1は、示差走査熱量計を用いて上記ヒドラジン誘導体と、ヒドラジン誘導体の融点を低下させる化合物との混合物に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、上記混合物が融解するまで2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)であり、T2は、上記示差走査熱量計を用いてヒドラジン誘導体(B)に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)であり、T3は、上記示差走査熱量計を用いてポリアセタール樹脂(A)に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)である。また、上述の「所定の温度プログラム」とは、上記混合物又はヒドラジン誘導体(B)の吸熱ピークよりも低い温度から上記混合物又はヒドラジン誘導体(B)が融解する温度まで2.5℃/分の速度で昇温し、次いで、2分間その温度で保持し、その次に、100℃まで10℃/分の降温速度で降温する温度プログラムを意味する。ポリアセタール樹脂(A)の場合、上述の「所定の温度プログラム」とは、ポリアセタール樹脂(A)の吸熱ピークよりも低い温度から200℃まで速度320℃/分で昇温し、200℃で2分間保持した後に、速度10℃/分で100℃まで降温する温度プログラムを意味する。
ポリアルキレングリコール(D)は特に限定されないが、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールを含有すると好ましく、ポリエチレングリコールを含有するとより好ましい。ポリアルキレングリコール(D)の数平均分子量は、エージング下でのクラック抑制の観点から300〜10000であると好ましく、より好ましくは300〜9000である。なお、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、GPCにより測定される。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、用途に応じて適当な添加剤を配合することができる。具体的には、添加剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物、蟻酸捕捉剤、離型剤等が挙げられる。
なお、ポリアセタール樹脂組成物における各添加剤の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.8質量部、更に好ましくは0.01〜0.7質量部である。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられるがこの限りではない。これらの中でも、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。更に、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、エージング下でのクラックの抑制改良の観点からより好ましい。これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物は、ホルムアルデヒドと反応可能な窒素原子を分子内に有する重合体又は化合物(単量体)であり、その具体例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12が挙げられる。また、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物として、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。より具体的には、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。さらに、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物として、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物も挙げられる。
蟻酸捕捉剤は蟻酸を効率的に中和し得るものであり、例えば、上記のアミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
離型剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステルが好ましく用いられるが、特に好ましい離型剤としては、エチレングリコールジステアレートが挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、無機充填剤、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー、顔料が挙げられる。
無機充填剤としては、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の無機充填剤が挙げられる。繊維状無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮などの金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も繊維状無機充填剤として例示される。
導電剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物も熱可塑性樹脂に含まれる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものをいい、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックが挙げられる。有機系顔料としては、例えば、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ペリレン系、ジオキサジン系の顔料が挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法は特に制限されない。例えば、ポリアセタール樹脂(A)とヒドラジン誘導体(B)と化合物(C)とポリアルキレングリコール(D)と、必要に応じてヒンダードフェノール系酸化防止剤とをヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで予め混合した後、1軸又は多軸混錬押出機等を用いて溶融混錬するなど、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法として一般的に知られている方法により製造することができる。それらの中でも、減圧装置を備えた2軸混練押出機を用いる方法が好ましい。また、ポリアセタール樹脂(A)とヒドラジン誘導体(B)と化合物(C)とポリアルキレングリコール(D)とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを予め混合することなく、定量フィーダーなどで各成分を単独又は数種類ずつまとめて押出機に連続供給することによりポリアセタール樹脂組成物を製造することも可能である。また、予めポリアセタール樹脂(A)、ヒドラジン誘導体(B)、化合物(C)及びポリアルキレングリコール(D)からなる高濃度マスターバッチを作製しておき、押出溶融混練時又は射出成形時にポリアセタール樹脂(A)で希釈することによりポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形する方法は特に制限されるものではない。よって、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによってポリアセタール樹脂組成物を成形することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる成形品は、成形リサイクル性に優れるため、様々な用途の成形品に用いることが可能である。そのような成形品としては、例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及び、デジタルカメラに代表されるカメラ、又はビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk:CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む)、DVD(Digital Video Disk:DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む)、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品が挙げられる。また、本実施形態に係る成形品として自動車用の部品も挙げられ、例えば、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類、及びクリップ類の部品が挙げられる。さらには、本実施形態に係る成形品として、例えば、シャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び、排水口及び、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン、散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部、及び、床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び、住宅設備機器に代表される工業部品が挙げられる。その中でも、特に自動車用の内装・機構部品、例えば、ドア、サンルーフ、シートベルト、スイッチ、クリップ、シート及びワイパーが好適であり、より具体的には、インサイド・ハンドル/ベース、キャリアプレート、ウィンドウレギュレーター・プーリー、ドアラッチ部品、スピーカーグリル、サンルーフ部品、プレスボタン、リトラクター部品、シートベルトアジャスタ、ステアリング・コラム、レバー・コントロール、クラスタークリップ、ECUケース、カーテンエアバッグ・クリップ、アシストグリップ・クリップ、スピンドルナット、シートアジャスタ部品、ランバー・サポート、モーターギア部品に好適である。ただし、成形品はこれらに限定されない。
後述のポリアセタール樹脂組成物を射出成形機(住友重機工業株式会社製、商品名「SH−75」)を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度を90℃に設定し、射出圧力90MPa、射出時間40秒、冷却時間15秒の射出条件で成形して、ポリアセタール樹脂成形品として評価用ISOダンベルを得た。成形完了後、150℃に調整したギアオーブン(タバイエスペック社製)に成形品を収容し、成形品の表面に発生するクラックを目視で観察し、収容してからクラックが発生するまでの時間を測定した。
射出成形機(住友重機工業株式会社製、商品名「SH−75」)を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度を70℃に設定し、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間15秒の射出条件で、後述のポリアセタール樹脂組成物から外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmの円筒状の試験片を成形した。得られた試験片を東洋精機製作所製スラスト摩擦・磨耗試験機の所定位置に設置し、加圧加重4kgf、すべり速度20cm/secで24時間摺動試験を実施した。その摺動試験に用いた摺動の相手材として、後述のポリアセタール樹脂(a−1)又はポリアセタール樹脂(a−2)を上記試験片と同様に成形して得た円筒状の成形体を用いた。摺動試験後の試験片からのホルムアルデヒド放出量(mg/kg)を下記のようにして導出した。
射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名「IS−100GN」)を用いて、シリンダー温度を170℃、金型温度を60℃に設定し、射出圧力60MPa、射出時間60秒、冷却時間15秒の射出条件で、後述のポリアセタール樹脂組成物から厚さ2mm、幅80mm×80mmのシボ付平板の試験片をショートショット、すなわち金型内に樹脂組成物を完全に充填させない条件にて成形した。この試験片の質量は、金型内に樹脂組成物を完全に充填させて得られる試験片の95質量%であった。本条件で試験片を300ショット成形した後の金型内のモールドデポジット(MD)を目視にて観察した。「A」は、MDが認められないことを示し、「B」は、うっすらとMDが認められることを示し、「C」は、明らかな析出物が認められることを示す。この評価が「A」、「B」、「C」の順で、耐MD性が優れることを示す。
実施例、比較例において、ポリアセタール樹脂組成物に含有される成分には下記のものを用いた。
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整した。次いで、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを42.8g/hr(トリオキサン1molに対して、0.039mol)、連鎖移動剤としてメチラール(水分量1.3%、メタノール量0.99%)をトリオキサン1molに対して1.50×10-3molにて連続的に添加した。さらに、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molにて連続的に添加し重合を行った。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。重合触媒が失活したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過して分離回収した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合し、さらに120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調節は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。上記式(8)で表される水酸化コリン蟻酸塩由来の窒素の量に換算して20質量ppmとなる量の水酸化コリン蟻酸塩を添加した。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中で溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分間で不安定末端部の分解除去処理を行った。不安定末端部が分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押し出され、ペレット化した。こうして、ペレット化したポリアセタール樹脂(a−1)を得た。得られたポリアセタール樹脂(a−1)のメルトインデックスをASTM−D1238に準じて測定したところ、190℃、2169gの条件下で9g/10分であった(メルトインデックスの測定は以下同様。)。また、ポリアセタール樹脂(a−1)について、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、商品名「DSC7」)を用いて200℃まで速度320℃/分で昇温し、200℃で2分間保持した後に、速度10℃/分で100℃まで降温し、その後、昇温速度2.5℃/分で測定した融点(以下同様。)は165℃であった。
メルトインデックスが40g/10分になるように連鎖移動剤のメチラールの量を変更した以外はポリアセタール樹脂(a−1)と同様にして、ポリアセタール樹脂(a−2)を得た。その融点は165℃であった。
カルボン酸ヒドラジド(bc−1)としてアジピン酸ジヒドラジドを、カルボン酸ヒドラジド(bc−2)としてセバシン酸ジヒドラジドを、カルボン酸ヒドラジド(bc−3)としてドデカン二酸ジヒドラジドを、カルボン酸ヒドラジド(bc−4)としてイソフタル酸ジヒドラジドを、カルボン酸ヒドラジド(bc−5)としてテレフタル酸ジヒドラジドをそれぞれ準備した。これらを、ヒドラジン誘導体(B)及び/又はヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)として用いた。
ポリアルキレングリコール(D)として数平均分子量400のポリエチレングリコール(d−1)、数平均分子量8500のポリエチレングリコール(d−2)を準備した。
〈蟻酸捕捉剤(E)〉
蟻酸捕捉剤(e−1)としてジステアリン酸カルシウムを準備し、蟻酸捕捉剤(e−2)として珪酸マグネシウムを準備した。
離型剤(f)としてエチレングリコールジステアレートを準備した。
ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体(g)としてナイロン6−6を準備した。
酸化防止剤(h)としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]を準備した。
実施例、比較例において、ベント付2軸押出機として東芝機械社製TEM26SSを用いた。
表2に示した割合で、ポリアセタール樹脂(a−1)又は(a−2)100質量部に、カルボン酸ヒドラジド(bc−1)、(bc−2)及び(bc−3)から選ばれたヒドラジン誘導体(B)及びヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)とポリアルキレングリコール(d−1)又は(d−2)とを添加し、タンブラーで混合して、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材として、実施例2、4ではポリアセタール樹脂(a−2)を用い、その他ではポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。また、各実施例で用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物を上述の示差走査熱量測定に供した際の融点のメインピーク温度を表2に示した。
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、ヒドラジン誘導体(bc−1)0.075質量部、ヒドラジン誘導体の融点を低下させる化合物(bc−2)0.075質量部、ポリアルキレングリコール(d−1)0.3質量部、及び蟻酸捕捉剤(e−1)としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部を添加してタンブラーで混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物の融点のメインピーク温度は、154℃であった。
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、ヒドラジン誘導体(bc−1)0.075質量部、ヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(bc−2)0.075質量部及びポリアルキレングリコール(d−1)0.3質量部、蟻酸捕捉剤(e−1)としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、及び離型剤(f)としてエチレングリコールジステアレート0.03質量部を添加してタンブラーで混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物の融点のメインピーク温度は、154℃であった。
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、ヒドラジン誘導体(bc−1)0.075質量部、ヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(bc−2)0.075質量部及びポリアルキレングリコール(d−1)0.3質量部、蟻酸捕捉剤(e−1)としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、離型剤(f)としてエチレングリコールジステアレート0.03質量部、及びホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体(g)としてナイロン6−6 0.05質量部を添加してタンブラーで混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物の融点のメインピーク温度は、154℃であった。
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、ヒドラジン誘導体(bc−1)0.075質量部、ヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(bc−2)0.075質量部及びポリアルキレングリコール(d−1)0.3質量部、蟻酸捕捉剤(e−1)としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、離型剤(f)としてエチレングリコールジステアレート0.03質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体(g)としてナイロン6−6 0.05質量部、及び酸化防止剤(h)としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加してタンブラーで混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物の融点のメインピーク温度は、154℃であった。
[実施例22]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、ヒドラジン誘導体(bc−1)0.075質量部、ヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(bc−2)0.075質量部及びポリアルキレングリコール(d−1)0.3質量部、蟻酸捕捉剤(e−2)として珪酸マグネシウム0.01質量部、離型剤(f)としてエチレングリコールジステアレート0.03質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体(g)としてナイロン6−6 0.05質量部、及び酸化防止剤(h)としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加してタンブラーで混合し、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後試験片からのホルムアルデヒド放出量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物の融点のメインピーク温度は、154℃であった。
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部を、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−1)を用いた。
ポリアセタール樹脂(a−1)に代えてポリアセタール樹脂(a−2)を用いた以外は比較例1と同様にして、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−2)を用いた。
表3に示した割合で、ポリアセタール樹脂(a−1)又は(a−2)100質量部に、カルボン酸ヒドラジド(bc−1)、(bc−2)、(bc−4)及び(bc−5)から選ばれたヒドラジン誘導体(B)及びヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)とポリアルキレングリコール(d−1)とを添加し、タンブラーで混合して、ベント付2軸押出機で溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットについて、上述のようにしてエージング下でのクラック発生の評価、摺動後のホルムアルデヒド発生量及び耐MD性の評価を行った。なお、ホルムアルデヒド発生量の評価に際し、摺動試験の相手材としてポリアセタール樹脂(a−2)を用いた。また、各比較例で用いたヒドラジン誘導体(B)とヒドラジン誘導体(B)の融点を低下させる化合物(C)との混合物を上述の示差走査熱量測定に供した際の融点のメインピーク温度を表3に示した。
Claims (10)
- ポリアセタール樹脂と、第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点(下記式(1)中のT2)を低下させる化合物と、前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる化合物との混合物に対して2〜20質量倍のポリアルキレングリコールと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドとを含有する原料組成物から得られるポリアセタール樹脂組成物であって、
前記ポリアセタール樹脂が、ポリアセタールコポリマーであって、下記一般式(7)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下で、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理されたポリアセタール樹脂であって、
[R1R2R3R4N+]nXn- (7)
(式(7)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基はその水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。)
前記第1のヒドラジン誘導体がカルボン酸ヒドラジドであり、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物が、前記第1のヒドラジン誘導体とは異なる1種又は2種以上のヒドラジン誘導体であり、
前記第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との混合物が下記式(1)及び(2)で表される条件を満足し、
前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物とが、アジピン酸ジヒドラジド及びセバシン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる互いに異なるカルボン酸ジヒドラジドを含む、ポリアセタール樹脂組成物。
T1<T2 (1)
T1<T3 (2)
(式(1)及び(2)中、T1は、示差走査熱量計を用いて前記混合物に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、前記混合物が融解するまで2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)であり、T2は、前記示差走査熱量計を用いて前記第1のヒドラジン誘導体に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、前記第1のヒドラジン誘導体に対して2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)であり、T3は、前記示差走査熱量計を用いて前記ポリアセタール樹脂に対して所定の温度プログラムで加熱及び冷却を施した後に、前記ポリアセタール樹脂に対して2.5℃/分の速度で昇温したときに得られる吸熱ピークのうち、吸熱容量が最も大きな吸熱ピークの頂点を示す温度(℃)である。) - アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドの配合量が、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01〜0.7質量部である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記ポリアセタール樹脂100質量部に対して、前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との合計の含有量が0.03〜0.2質量部である、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との含有比が、質量基準で2:8〜8:2である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記第1のヒドラジン誘導体と、前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との含有比が、質量基準で3:7〜7:3である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記第1のヒドラジン誘導体と前記第1のヒドラジン誘導体の融点を低下させる前記化合物との質量比1:1の混合物の吸熱容量が最も大きな吸熱ピークのピーク面積が、前記混合物の全吸熱ピークの総ピーク面積の95%未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記ポリアルキレングリコールの数平均分子量は300〜10000である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む自動車内装・機構用成形品。
- ドア、サンルーフ、シートベルト、スイッチ、クリップ、シート及びワイパーからなる群より選ばれる、請求項9に記載の自動車内装・機構用成形品。
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