JP7241562B2 - 樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアセタール樹脂成形体に関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、その加工が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲に用いられている。ただし、ポリアセタール樹脂自体は電気絶縁体であるため、摺動の際に発生する静電気の除去性能と導電性に劣る。
帯電防止性を付与する方法としては、界面活性剤を配合することが一般的である。しかし、界面活性剤の添加により得られた樹脂組成物からなる成形品の帯電防止性は、成形品表面に低分子量の界面活性剤がブリードアウトすることで効果が発現するため、成形品の水洗や拭き取り等により帯電防止効果が失われ、永久的な帯電防止性を保持することは困難であった。
その他に熱可塑性樹脂に永久帯電防止性を付与する方法としては、カーボンブラック等の導電性フィラーを練り込む方法や高分子型帯電防止剤を練り込む方法等が知られている。しかしながら、導電性フィラーを練り込む方法では、一般的に多量の導電性フィラーの配合が必要であるため、得られた成形品は耐衝撃性等の機械強度に劣るという問題があった。また、高分子型帯電防止剤を練り込む方法としては、ポリエーテルエステルアミド(特許文献1)やポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマー(特許文献2)等の高分子型帯電防止剤を樹脂中に比較的少量練り込む方法が知られているが、帯電防止性と成形品外観とを両立させることが困難であるという問題があった。
特開2012-31395号公報 特開2001-278985号公報
本発明は、帯電防止性及び外観に優れたポリアセタール樹脂成形体を得ることを課題とする。
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤、及びポリアルキレングリコールを含み、かつ特定の表面状態を有するポリアセタール樹脂成形体が、上記従来課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本実施形態は以下の通りである。
[1]
(A)ポリアセタール樹脂、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤、及び(C)ポリアルキレングリコールを少なくとも含み、前記(B)成分と前記(C)成分との合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して13~30質量部であり、ATR法により測定された赤外線吸収スペクトルのC=O伸縮振動ピークのピーク強度(D1640)に対するC-O伸縮振動ピークのピーク強度(D1090)の割合(D1090/D1640)が40以上である表面を有することを特徴とする、樹脂成形体。
[2]
前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、前記(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤の含有量が5~20質量部、前記(C)ポリアルキレングリコールの含有量が1~10質量部である、[1]に記載の樹脂成形体。
[3]
メルトフローレート(MFR)(ISO1133に準拠し、190℃、2.16kgの荷重で測定)が8.0g/10分以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂成形体。
[4]
前記(C)ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[5]
前記(C)ポリアルキレングリコールが、数平均分子量が10,000~25,000のポリエチレングリコールである、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[6]
前記(B)成分と前記(C)成分との合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して16~30質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂成形体。
[7]
前記(B)成分と前記(C)成分との質量比((B)/(C))が90/10~50/50である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂成形体。
本発明の樹脂成形体によれば、帯電防止性及び外観を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に制限するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変化して実施することができる。
<樹脂成形体>
本実施形態の樹脂成形体(以下、「ポリアセタール樹脂成形体」又は単に「成形体」ということもある。)は、(A)ポリアセタール樹脂、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤、及び(C)ポリアルキレングリコールを少なくとも含み、ATR法により測定された赤外線吸収スペクトルのC=O伸縮振動ピークのピーク強度(D1640)に対するC-O伸縮振動ピークのピーク強度(D1090)の割合(D1090/D1640)が40以上である表面を有する。
以下、本実施形態の樹脂成形体を構成する各成分について詳述する。
なお、本明細書において、本実施形態の樹脂成形体の原料混合物を、「ポリアセタール樹脂組成物」又は単に「樹脂組成物」と称する場合がある。ポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤、及び(C)ポリアルキレングリコールを少なくとも含み、後述するその他の成分を更に含んでいてもよい。
<(A)ポリアセタール樹脂>
本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある。)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられ、公知のものを用いてもよい。
ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3-ジオキソラン、1,4-ブタンジオールホルマール等のグリコール又はジグリコールの環状ホルマール等の、環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるものである。また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
さらには、(A)ポリアセタール樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコール、の存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーであってもよい。
同じく、(A)ポリアセタール樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコール、の存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。
以上のように、本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂として、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いられ得る。また、これら(A)ポリアセタール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。この場合、(A)ポリアセタール樹脂は、ポリアセタールコポリマーを50質量%以上含むものが好ましく、80質量%以上含むものがより好ましく、実質的にほぼすべて(95質量%以上)がポリアセタールコポリマーであることが最も好ましい。なお、ここでのパーセンテージは、(A)ポリアセタール樹脂の全体量を100質量%としたものに基づく。
ポリアセタールコポリマーを得る方法について、以下に詳細に述べる。
トリオキサンを用いてポリアセタールコポリマーを得る場合、上記1,3-ジオキソラン等のコモノマーは、一般的には、トリオキサン100mol%に対して0.1~60mol%が好ましく、より好ましくは0.1~20mol%、更に好ましくは0.13~10mol%用いられる。
本実施形態において、ポリアセタールコポリマーの好適な融点は162℃~173℃であり、より好ましくは167℃~173℃、更に好ましくは167℃~171℃であるところ、その融点が167℃~171℃であるポリアセタールコポリマーは、トリオキサン100mol%に対して1.3~3.5mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
ポリアセタールコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸-3級ブチルエステル、アセチルパークロラート及びトリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル及び三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテルが好適な例として挙げられる。
また、ポリアセタールコポリマーを得る際には、重合触媒に加えて、メチラール等の重合連鎖剤(連鎖移動剤)を適宜用いてもよい。さらにメチラールを用いる際、含有水分量が100質量ppm以下で含有メタノール量が1質量%以下のもの、より好ましくは、含有水分量が50質量ppm以下で含有メタノール量が0.7質量%以下のメチラールが好ましい。
ポリアセタールコポリマーは、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58-98322号公報及び特開平7-70267号公報に記載の方法によって重合することができる。上記の重合により得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部(-(OCH2n-OH基;以下、「不安定末端部」という。)が存在するため、そのままでは実用に供することは困難である。そこで、不安定末端部の分解除去処理(末端安定化)を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。すなわち、その特定の不安定末端部の分解除去処理では、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーに対して、それを溶融させた状態で加熱処理を施すことが好ましい。
[R1234+nn- (1)
ここで、式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1~30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6~20のアリール基;炭素数1~30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6~20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6~20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1~30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基であると好ましい。また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルアリール基において、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1~3の整数を示す。Xは水酸基、又は、炭素数1~20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1~20の有機チオ酸の酸残基を示す。
第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に制限はないが、本発明による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、一般式(1)におけるR1、R2、R3及びR4が、各々独立して、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム等の水酸化物;それらのアンモニウムの塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;それらのアンモニウムの硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、ケイ酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;それらのアンモニウムのチオ硫酸等のチオ酸塩;それらのアンモニウムの蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、アンモニウムの水酸化物(OH-)、並びに、硫酸(HSO4 -、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、及びカルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、好ましくは0.05~50質量ppm、より好ましくは1~30質量ppmである。
P×14/Q (2)
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
第4級アンモニウム化合物の使用量が0.05質量ppm以上であると不安定末端部の分解除去速度の低下を抑制しやすくなり、50質量ppm以下であると不安定末端部の分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調の悪化を抑制しやすくなる。
本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂の不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去されるので好ましい。この分解除去処理に用いる装置としては特に制限はないが、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物をポリアセタールコポリマー中に存在させる方法には特に制約はなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。例えば、ポリアセタールコポリマーが溶融混練され押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリアセタールコポリマーに充填剤や顔料を配合する場合、ポリアセタールコポリマーを含む樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後の充填剤や顔料の配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理としては、アミン類(例えばトリエチルアミン)等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
本実施形態で用いる(A)ポリアセタール樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」とも記す。)は、後述の(B)成分の分散性の観点から、0.1~100g/10分であることが好ましく、0.5~30g/10分であることがより好ましく、1.0~10g/10分であることが更に好ましく、1.0~8.0g/10分であることがより更に好ましく、1.0~5.0g/10分であることが特に好ましい。
なお本開示で、(A)ポリアセタール樹脂のMFRは、ISO1133に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定される値である。
本実施形態において、樹脂成形体100質量%中における(A)ポリアセタール樹脂の含有量は、
75質量%以上としてよく、好ましくは78質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
<(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤>
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤(以下、単に「(B)ポリマー型帯電防止剤」又は「(B)成分」と称する場合がある。)を含む。
本実施形態で使用する(B)ポリマー型帯電防止剤としては、従来公知のものを好適に用いることができるが、ポリマー型帯電防止剤からの揮発性成分やナトリウムイオン、カリウムイオンの溶出量が問題とならないものを使用することが好ましい。
(B)ポリマー型帯電防止剤のMFR(ISO1133準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定)は、好ましくは5~30g/10分、より好ましくは10~25g/10分である。
(B)ポリマー型帯電防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<ポリエーテルエステルアミドコポリマー>>
(B)ポリマー型帯電防止剤に含まれるポリエーテルエステルアミドコポリマーは、基本単位がアミド結合しているポリアミドセグメントと、基本単位がエーテル結合しているポリエーテルセグメントとがエステル結合してなる重合体である。ポリエーテルエステルアミドコポリマーは、ポリエーテルセグメントが親水性セグメントとして機能するとともに、ポリアミドセグメントが疎水性セグメントとして機能する。すなわち、親水性セグメントは、その吸湿性によって成形体の表面抵抗を低下させる作用を奏し、疎水性セグメントは、基材である(A)ポリアセタール樹脂との相溶性を高める作用を奏することから、ポリエーテルエステルアミドコポリマーは、特に優れた帯電防止剤である。なお、ポリエーテルエステルアミドコポリマーは、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマーであることが好ましい。
ポリエーテルセグメントを構成するオキシアルキレン基としては、例えば、アルキレンの炭素数が2~4のオキシアルキレン基であるオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。
ポリエーテルセグメントを構成するオキシアルキレン鎖中におけるオキシエチレン基の占める割合は、帯電防止性を高めるという観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10~100質量%、更に好ましくは60~100質量%である。
一方、ポリアミドセグメントとしては、例えば、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド12、ポリアミド66/6共重合体等が挙げられる。
ポリエーテルエステルアミドコポリマー中のポリエーテルセグメントとポリアミドセグメントとの質量比(ポリエーテル/ポリアミド)は、80/20~50/50であることが好ましく、70/30~55/45であることがより好ましい。
上記のような(B)ポリマー型帯電防止剤の市販例としては、例えば、「ペレクトロン(登録商標)」(三洋化成工業(株)製)や「スタットライト(登録商標)」(The Lubrizol Corporation社製)等が挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体における(B)ポリマー型帯電防止剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、5~25質量部であることが好ましく、より好ましくは7~25質量部であり、更に好ましくは10~20質量部である。5質量部以上であれば高い帯電防止性能が得られ、25質量部以下であれば、良好な外観となる。
<(C)ポリアルキレングリコール>
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体に含まれる(C)ポリアルキレングリコール(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある。)としては、特に限定はないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールがより好ましく、特に好ましいのはポリエチレングリコールである。
(C)ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、体積固有抵抗率の観点から、10,000~25,000が好ましく、15,000~25,000がより好ましい。
なお、(C)ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
これらの(C)ポリアルキレングリコールは、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体における(C)ポリアルキレングリコールの含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、1~15質量部であることが好ましく、より好ましくは3~10質量部、更に好ましくは3~8質量部である。1質量部以上であれば高い帯電防止性能が得られ、15質量部以下であれば、良好な押出し性となる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体の好ましい組成としては、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤の含有量が5~20質量部、(C)ポリアルキレングリコールの含有量が1~10質量部であることが挙げられる。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂成形体における前記(B)成分と(C)成分との質量比((B)/(C))は、90/10~40/60であることが好ましく、90/10~50/50であることがより好ましく、更に好ましくは85/15~60/40であり、更に好ましくは80/20~60/40である。この範囲とすることで、帯電防止性と外観とのバランスが良好となる。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂成形体における(B)成分と(C)成分との合計含有量は、体積固有抵抗率と外観との観点から、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、13~30質量部であることが好ましく、16~30質量部であることがより好ましく、更に好ましくは19~30質量部である。
<その他の成分>
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、更に、任意成分として以下に説明するその他の成分を含んでいてもよい。
<<窒素化合物>>
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、窒素化合物を含んでいてもよい。
窒素化合物とは、ポリアセタール樹脂の熱加工時に発生するホルムアルデヒドと反応し、ホルムアルデヒドを捕捉する性能を有するものである。例えば、高分子反応性窒素化合物や非高分子反応性窒素化合物が挙げられる。また、高分子の反応性窒素化合物を除くものであり、従来、そのような性能を有する反応性窒素化合物として知られている化合物であってもよい。
本実施形態においては、反応性窒素化合物は、ホルムアルデヒド捕捉材としてもさることながら、樹脂組成物の溶融加工時の熱安定性向上や成形時の寸法安定効果を発現する目的においても用いることができる。一般的に反応性窒素化合物は、高分子の反応性窒素化合物も包含するが、本実施形態において、寸法安定性を重視したい場合は、除外したほうが好ましい場合がある。非高分子反応性窒素化合物は、繰り返し単位を有していないことが好ましいが、有していてもよく、その場合、その繰り返し数は3以下であることが好ましい。
高分子の反応性窒素化合物としては、例えば、分子構造中にアミド結合を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。その具体例としては、ポリアミド4,6、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド12、及びこれらの共重合体が挙げられる。
非高分子反応性窒素化合物としては、例えば、グアナミン化合物、メラミン、ヒドラジド化合物、及びこれらとホルムアルデヒドとの反応生成物等が挙げられる。
グアナミン化合物としては、脂肪族グアナミン系化合物、脂環族グアナミン系化合物、芳香族グアナミン系化合物及びヘテロ原子含有グアナミン系化合物が例示できる。
脂肪族グアナミン系化合物の例としては、バレログアナミン、カプログアナミン、ヘプタノグアナミン、カプリログアナミン及びステアログアナミン等のモノグアナミン類;並びに、サクシノグアナミン、グルタログアナミン、アジポグアナミン、ピメログアナミン、スベログアナミン、アゼログアナミン及びセバコグアナミン等のアルキレンビスグアナミン類等が挙げられる。
脂環族グアナミン系化合物の例としては、シクロヘキサンカルボグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン及びノルボルナンカルボグアナミン等のモノグアナミン類;並びに、それらのシクロアルカン残基に官能基、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基、が1~3個置換した誘導体が挙げられる。
芳香族グアナミン系化合物の例としては、ベンゾグアナミン、ベンゾグアナミンのフェニル残基に官能基、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる1種以上の官能基、が1~5個置換した誘導体(例えば、トルグアナミン、キシログアナミン、フェニルベンゾグアナミン、ヒドロキシベンゾグアナミン、4-(4’-ヒドロキシフェニル)ベンゾグアナミン、ニトリルベンゾグアナミン、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンゾグアナミン及び3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾグアナミン)、ナフトグアナミン、及び、ナフトグアナミンのナフチル残基に官能基、例えば上述の官能基、が1~7個置換した誘導体等のモノグアナミン類;フタログアナミン、イソフタログアナミン、テレフタログアナミン、ナフタレンジグアナミン及びビフェニレンジグアナミン等のポリグアナミン類;並びに、フェニルアセトグアナミン、β-フェニルプロピオグアナミン及びキシリレンビスグアナミン等のアラルキル又はアラルキレングアナミン類等が挙げられる。
ヘテロ原子含有グアナミン系化合物の例としては、2,4-ジアミノ-6-(3,3-ジメトキシプロピル)-s-トリアジン等のアセタール基含有グアナミン類;[2-(4’-6’-ジアミノ-s-トリアジン-2’-イル)エチル]-1,3-ジオキサン、及び[2-(4’-6’-ジアミノ-s-トリアジン-2’-イル)エチル]-4-エチル-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン等のジオキサン環含有グアナミン類;CTU-グアナミン及びCMTU-グアナミン等のテトラオキソスピロ環含有グアナミン類;並びに、1,3,5-トリス[2-(4’,6’-ジアミノ-s-トリアジン-2’-イル)エチル]イソシアヌレート及び1,3,5-トリス[3-(4’,6’-ジアミノ-s-トリアジン-2’-イル)プロピル]イソシアヌレート等のイソシアヌル環含有グアナミン類等が挙げられる。
また、ヒドラジド化合物としては、脂肪族又は脂環族カルボン酸ヒドラジド及び芳香族カルボン酸ヒドラジドが例示できる。
脂肪族又は脂環族カルボン酸ヒドラジドの例としては、ラウリン酸ヒドラジド、パルミチン酸ヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、ソルビン酸ヒドラジド等の飽和又は不飽和脂肪酸ヒドラジド;α-オキシ酪酸ヒドラジド、グリセリン酸ヒドラジド等のオキシ脂肪酸ヒドラジド;7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン)、並びに、トリス(ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
芳香族カルボン酸ヒドラジドの例としては、1-ナフトエ酸ヒドラジド、2-ナフトエ酸ヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド及び2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド等が挙げられる。
これら、非高分子反応性窒素化合物の中でも好ましいものは、メラミン、ベンゾグアナミン、ステアリン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、及びこれらとホルムアルデヒドとの反応生成物からなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましいものはメラミン、及びメラミンとホルムアルデヒドとの反応生成物である。
本実施形態の樹脂成形体において、窒素化合物の含有量の下限としては、より高い寸法安定性の観点や溶融加工時の熱安定性の観点より、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部であり、より好ましくは0.03質量部であり、更に好ましくは0.05質量部である。一方、成形体表面へのブリードアウトを一層防止する観点から、好ましい含有量の上限は0.5質量部であり、より好ましい上限は0.18質量部であり、更に好ましい上限は0.15質量部である。
また、本実施形態の樹脂成形体において、上記窒素化合物の他に、その他の成分として、従来、ポリアセタール樹脂成形体に添加してもよいとされている種々の樹脂及び添加剤等を含有させてもよい。具体的には、例えば、脂肪酸金属塩化合物、酸化防止剤、耐候(光)安定剤、離型剤、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチ含む)、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、帯電防止剤、流動性改良剤、他の充填材、補強材、展着剤、ゴム、強化剤並びに他のポリマー等が挙げられ、これらは本発明の目的達成を損なわない範囲で、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて添加されてもよい。
脂肪酸金属塩化合物における脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましく用いられ、より好ましい脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等が挙げられる。また、脂肪酸金属塩化合物の塩を形成する金属元素としては、アルカリ金属元素又は周期律表第二族元素が好ましく、それらの中でもナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムがより好ましく、カルシウムが特に好ましい。具体的な脂肪酸金属塩化合物としては、例えば、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム及びベヘン酸カルシウム等が挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態において好ましい酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4-ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。これらの中では、より好ましくは、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態において好ましい耐候(光)安定剤としては、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、並びにヒンダードアミン系光安定剤からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’、5’-ジ-t-ブチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール及び2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の具体例としては、2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2-エトキシ-5-t-ブチル-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド及び2-エトキシ-3’-ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドが挙げられる。これらの蓚酸アリニド系紫外線吸収剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、及び、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、好ましくはビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。
これらのヒンダードアミン系光安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態において用いられ得る離型剤としては、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、並びに、平均重合度が10~500であるオレフィン化合物等が挙げられる。これらの中では、ポリオキシアルキレングリコールが好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、本発明の目的の達成を損なわない範囲で、更に公知の添加剤を必要に応じて含有してもよい。そのような添加剤として、具体的には、無機充填剤、導電剤、他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及び顔料が挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状のものが用いられる。繊維状無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリウム繊維、並びに、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅及び真鍮等の金属繊維に代表される無機質繊維等が挙げられる。また、無機充填剤として、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー及び酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカーを用いてもよい。なお、本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質を含有してもよい。
粉粒子状無機充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレー、ケイ藻土及びウォラストナイトのようなケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン及びアルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム及びドロマイトのような炭酸塩、その他、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素及び各種金属粉末が挙げられる。
板状無機充填剤としては、例えば、マイカ、ガラスフレーク及び各種金属箔が挙げられる。
中空状無機充填剤としては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン及び金属バルーンが挙げられる。
これらの無機充填剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらの無機充填剤は、表面処理されたもの及び未表面処理のもののいずれであってもよいが、成形表面の平滑性、機械的特性の点から、表面処理されたものの方が好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。
表面処理剤として、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤を用いることができる。具体的には、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート及びn-ブチルジルコネートが挙げられる。
導電剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末及び金属繊維が挙げられる。炭素繊維も導電性目的で配合していれば包含される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリ乳酸樹脂を除く)及び未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物を熱可塑性樹脂として用いてもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー及びポリアミド系エラストマーが挙げられる。
顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料及び蛍光顔料が挙げられる。ここで、無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に用いられているものが挙げられ、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック及びランプブラックが例示される。また、有機系顔料としては、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系及びフタロシアニン系の顔料が挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体において、顔料の含有量は、求められる色調により大幅に変化するため明確に規定することは困難であるが、一般的には、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.005~5質量部の範囲程度である。
<ピーク強度の割合(D1090/D1640)>
本実施形態の樹脂成形体は、特殊な表面を有することにより、帯電防止性及び外観において優れた効果を奏すると考えられる。
上記特殊な表面とは、赤外分光光度計の全反射法(ATR法)により測定された赤外線吸収スペクトルから得られる、成形体表面におけるC-O伸縮振動ピークのピーク強度(吸光度)(D1090)の、C=O伸縮振動ピークのピーク強度(D1640)に対する割合(D1090/D1640)が、40以上である表面を指す。
ATR法によれば、成形体の表面から数μmの深さにおける赤外線吸収スペクトルが得られるため、本実施形態の樹脂成形体において、表面のピーク強度の割合(D1090/D1640)は、表面近傍(表面からの深さ数μm以内)に存在する(B)ポリマー型帯電防止剤の量の指標となる。
以下、ATR法により得られる、成形体表面におけるC-O伸縮振動ピークのピーク強度(D1090)の、C=O伸縮振動ピークのピーク強度(D1640)に対する割合(以下、単に「ピーク強度の割合(D1090/D1640)」と略する事がある。)の値を得るための方法について述べる。
初めに、樹脂成形体表面のピーク強度の割合(D1090/D1640)を得るための測定機器(赤外分光光度計)としては、例えば、Agilent社製Cary620等を
用いることができる。
赤外分光光度計により得られたスペクトルは、ピーク強度(吸光度)の割合として解析される。具体的には、C-O(ポリアセタール由来)の信号「D1090」として、1040cm-1から1160cm-1の間にあるピークの強度(ピーク高さ)を、C=O(アミド由来)の信号「D1640」として、1600cm-1から1700cm-1の間にあるピークの強度をそれぞれ算出し、その割合(D1090/D1640)を樹脂成形体表面のピーク強度の割合(D1090/D1640)とする。この際、誤差をなくすため、ピーク強度を求める際のベースラインとして、それぞれ1030cm-1から1170cm-1、1590cm-1から1710cm-1に直線に引き、該ベースラインより正の高さをピーク強度として読み取る。
本実施形態の樹脂成形体のピーク強度の割合(D1090/D1640)は、40以上であり、45以上が好ましく、50以上がより好ましい。また、ピーク強度の割合(D1090/D1640)は、100以下としてよい。この値が40を下回るということは、(B)ポリマー型帯電防止剤が表面付近に偏在していることを示す。表面付近での表層剥離を抑制する観点から、樹脂成形体表面のピーク強度の割合(D1090/D1640)を40以上にすることが好ましい。
本実施形態の樹脂成形体のピーク強度の割合(D1090/D1640)を40以上に制御する方法としては、例えば、樹脂組成物を溶融混練する際に用いる二軸押出機のスクリュー構成や回転数を調整する方法が挙げられる。スクリュー構成として、例えば、逆送り型のニーディングディスクを少なくするとピーク強度の割合を上げることができ、逆送り型のニーディングディスクを多くすると、当該割合を下げることができる。また、スクリュー回転数を低くすると、ピーク強度の割合を上げることができ、スクリュー回転数を高くすると当該割合を下げることができる。
<曲げ弾性率>
本実施形態の樹脂成形体は、曲げ弾性率が、1800MPa以上であることが好ましく、1830MPa以上であることがより好ましい。
なお本開示で、曲げ弾性率は、ISO294-1に準拠して成形された多目的試験片を用いて、ISO178に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
<MFR>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、0.1~15g/10分であることが好ましく、1.0~8.0g/10分であることがさらに好ましい。
なお本開示で、ポリアセタール樹脂組成物のMFRは、ISO1133に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
<体積固有抵抗率>
本実施形態の樹脂成形体は、体積固有抵抗率が、1011Ωcm以下であることが好ましく、1010Ωcm以下であることがより好ましく、5×109Ωcm以下であることが更に好ましい。
なお本開示で、体積固有抵抗率は、ISO294-1に準拠して成形された多目的試験片を用いて、JIS K7194に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
<樹脂成形体の製造方法>
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、原料混合物であるポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述した(A)ポリアセタール樹脂100、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤、及び(C)ポリアルキレングリコールと、必要に応じてその他の成分とを溶融混練することにより得られ、公知の方法を用いることができる。
樹脂組成物を溶融混練する装置としては、一般に実用されている混練機を適用することができ、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも、減圧装置やサイドフィーダー設備等を装備した二軸押出機が特に好ましく使用できる。
原料成分を混合及び溶融混練する方法としては、特に限定されず、当業者が周知の方法を利用可能である。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び所望のその他の成分をすべて、予めスーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダー等で混合し、二軸押出機で一括溶融混練する方法、(B)成分、(C)成分、所望のその他の成分、一部の(A)成分をあらかじめ混合し、二軸押出機等に供給して溶融混練しつつ、押出機途中から残りの(A)成分を添加する方法等が挙げられるが、これらはいずれも問題なく利用可能である。
また、二軸押出機の設定条件は、成形体の表面のピーク強度の割合(D1090/D1640)を40以上に制御できればいかなる方法であってもよく、比較的弱い剪断での溶融混練で十分である。
例えば、樹脂温度が好ましくは225℃以下、より好ましくは223℃以下となるように、スクリュー構成、回転数、押出温度を設定することが挙げられる。
具体例としては、二軸押出機のシリンダー温度を180~210℃に設定し、スクリュー構成は、二軸押出機のスクリューに2つの混練ブロックを設ける。第一の混練ブロックは、二軸押出機の上流から約20/100~40/100の位置のバレルに設け、その構成を、例えば、上流側より、L(混練ブロックを構成するスクリューのスクリュー軸方向の長さ)が20mmのR-KD(送り型:Rタイプニーディングディスク)を1個、27mmのN-KD(無搬送型:Nタイプニーディングディスク)を1個、20mmのR-KDを1個、27mmのN-KDを1個、及び20mmのL-KD(逆送り型:Lタイプニーディングディスク)を1個とする。第二の混連ブロックは、二軸押出機の上流から約60/100~75/100の位置のバレルに設け、その構成を、例えば、上流側より、Lが20mmのR-KDを2個、及びLが27mmのN-KDを1個とする。また、真空ベントを最終バレルに設置し、-0.06~-0.09MPaで真空引きする。
なお、「混練ブロック」とは、ニーディングディスクと呼ばれる混練効果の高いスクリューエレメントが複数個連続したブロックを指す。
本実施形態の樹脂成形体を得るための成形方法については、特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。例えば、押出成形、射出成形、真空成形、インフレーション成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
<樹脂成形体の用途>
本実施形態の樹脂成形体の用途としては、靭性と高い帯電防止性能が要求される用途が好適である。具体的には、ローラー等により好適に用いられる。
また、一般的なポリアセタール樹脂の用途である、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、ガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、デジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R(Recordable)、CD-RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD-ROM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW、DVD-R DL、DVD+R DL、DVD-RAM(Random Access Memory)、DVD-Audioを含む〕、Blu-ray(登録商標) Disc、HD-DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム、モバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。さらに、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;シャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品等も好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、後述する実施例及び比較例に限定されるものではない。実施例及び比較例のポリアセタール樹脂成形体に対する各種測定方法と、実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂成形体の原料成分とを以下に示す。
[原材料]
(A)ポリアセタール樹脂
(A-1)ポリアセタール樹脂
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン0.5mol%を共重合成分として含む、メルトマスフローレート(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が2.5g/10分のポリアセタールコポリマー
(A-2)ポリアセタール樹脂
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン0.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が8.0g/10分のポリアセタールコポリマー
(B)ポリマー型帯電防止剤
(B-1)ペレクトロンLIP(三洋化成工業(株)社製)
その他のポリマー型帯電防止剤
(B-2)メルポールF-220(三洋化成工業(株)社製)(ポリエーテル系水溶性高分子であり、ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含まない)
(C)ポリアルキレングリコール
(C-1)ポリエチレングリコール(数平均分子量:20000)
(C-2)ポリエチレングリコール(数平均分子量:400)
[測定方法]
<MFR>
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットのMFR(g/10分)は、ISO1133に準拠して、190℃、2.16kgの荷重で測定した。
<ピーク強度の割合(D1090/D1640)>
東芝機械(株)製EC-75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294-1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。
この試験片の表面におけるC-O伸縮振動ピークのピーク強度(D1090)のC=O伸縮振動ピークのピーク強度(D1640)に対する割合(D1090/D1640)を、以下のとおり赤外分光法で解析することにより得た。
測定機器としてAgilent社製のCary620を用い、ATR法により行った。
測定範囲を500cm-1から4000cm-1、波数分解能を4cm-1とし、積算回数を64回とした。測定時のC-O(ポリアセタール由来)の信号(D1090)として、1040cm-1から1160cm-1の間にあるピークの強度(ピーク高さ)、C=O(アミド由来)の信号(D1640)として1600cm-1から1700cm-1のピークの強度をそれぞれ算出し、「ピーク強度の割合(D1090/D1640)」を求めた。
なお、各ピーク強度を求める際に、直線のベースラインを、それぞれ1030cm-1から1170cm-1、1590cm-1から1710cm-1に引いた上で、ベースラインより正の高さをピーク強度として読み取った。
[評価方法]
<曲げ弾性率>
東芝機械(株)製EC-75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294-1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。
得られた成形体を用いて曲げ試験(ISO178準拠)を行い、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
<体積固有抵抗率>
上記<曲げ弾性率>で得た試験片から30mm×20mm×4mmの平板を切り出し、この平板を体積固有抵抗率測定用のサンプルとした。
URS型リングプローブ(JIS K6911準拠)を上記作製したサンプル(平板)に押し当て、三菱化学(株)製ハイレスタ(登録商標)-UPにより測定電圧250Vで、体積固有抵抗率(Ωcm)を測定した。
<外観>
実施例・比較例得られた樹脂組成物ペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度180℃に設定されたL/D=25の30mmφ単軸押出機を用いて押出しを行い、押出機の先端部に設置された丸棒成形用金型(長さ0.5m、内径55mmφ、温度20℃)に流し込み、丸棒状の成形体を得た。この55mmφの丸棒を140℃のギヤオーブンで24時間アニーリングを行った。
上記アニーリング後の丸棒の外観を目視により下記評価基準で判定した。
[評価基準]
+++:剥離なし、++:一部剥離がある、+:全体的に剥離がある
[実施例1~5]
表1に示す配合に従い、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM-26SS押出機(バレル数12、L/D=48、ベント付き)を用いて、シリンダー温度をすべて200℃に設定し、(A)~(C)成分を押出機メインスロート部より定量フィーダーから供給して、押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で樹脂混練物をストランド状に押出し、ストランドバスにて急冷し、ストランドカッターで切断して樹脂組成物のペレットを得た。
押出機のスクリューには、2つの混練ブロックを設けた。その第一の混練ブロックは、押出機の第4バレルに位置し、その構成は、上流側より、L(混練ブロックを構成するスクリューのスクリュー軸方向の長さ)が20mmのR-KD(送り型:Rタイプニーディングディスク)を1個、27mmのN-KD(無搬送型:Nタイプニーディングディスク)を1個、20mmのR-KDを1個、27mmのN-KDを1個、及び20mmのL-KD(逆送り型:Lタイプニーディングディスク)を1個とした。第二の混連ブロックは、押出機の第8バレルに位置し、その構成は、上流側より、Lが20mmのR-KDを2個、及びLが27mmのN-KDを1個とした。また、真空ベントを第11バレルに設置し、-0.08MPaで真空引きした。
なお、「混練ブロック」とは、ニーディングディスクと呼ばれる混練効果の高いスクリューエレメントが複数個連続したブロックを指す。
得られた樹脂組成物を用いて上述の測定・評価方法により成形体を作製し、各物性を評価した。これらの評価結果等を表1に記載した。
[比較例1]
押出機のスクリューにおける2つの混練ブロックを以下のように設けた以外は、実施例1と同様とした。
第一の混練ブロックは、押出機の第4バレルに位置し、その構成は、上流側より、Lが20mmのR-KDを1個、20mmのL-KDを1個、20mmのR-KDを1個、27mmのN-KDを1個、及び20mmのL-KDを1個である。第二の混連ブロックは、押出機の第8バレルに位置し、その構成は、第一の混連ブロックと同様とした。
[比較例2]
押出機のスクリュー回転数を225rpmとした以外は、実施例1と同様とした。
[比較例3]
ポリマー型帯電防止剤として10質量部の(B-2)成分を使用した以外は、実施例1と同様とした。
[比較例4]
ポリマー型帯電防止剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様とした。
Figure 0007241562000001
表1より、(A)ポリアセタール樹脂、(B)ポリマー型帯電防止剤、(C)ポリアルキレングリコールを含むポリアセタール樹脂成形体において、ピーク強度の割合(D1090/D1640)が40以上である特定の表面状態にすることで、帯電防止性と外観とに優れることがわかった。
本発明に係るポリアセタール樹脂成形体は、ポリアセタール樹脂成形体が好適に使用されてきた種々分野において利用でき、電機電子機器の部品、その他工業等の分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. (A)ポリアセタール樹脂、(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤、及び(C)ポリアルキレングリコールを少なくとも含み、前記(B)成分と前記(C)成分との合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して13~30質量部であり、ATR法により測定された赤外線吸収スペクトルのC=O伸縮振動ピークのピーク強度(D1640)に対するC-O伸縮振動ピークのピーク強度(D1090)の割合(D1090/D1640)が40以上である表面を有することを特徴とする、樹脂成形体。
  2. 前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、前記(B)ポリエーテルエステルアミドコポリマーを含むポリマー型帯電防止剤の含有量が5~20質量部、前記(C)ポリアルキレングリコールの含有量が1~10質量部である、請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. メルトフローレート(MFR)(ISO1133に準拠し、190℃、2.16kgの荷重で測定)が8.0g/10分以下である、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記(C)ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
  5. 前記(C)ポリアルキレングリコールが、数平均分子量が10,000~25,000のポリエチレングリコールである、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
  6. 前記(B)成分と前記(C)成分との合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して16~30質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
  7. 前記(B)成分と前記(C)成分との質量比((B)/(C))が90/10~50/50である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂成形体。
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