JP7053199B2 - 樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents
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Description
(1)(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス繊維10質量部以上55質量部以下とを含み、
前記(A)ポリアセタール樹脂のコモノマー濃度が0.001mol%以上1.2mol%以下であり、
メルトフローレイト(ISO1133準拠、温度190℃、荷重2.16kg)が8g/10分以上30g/10分以下である、ことを特徴とする、樹脂組成物。
(2)前記(A)ポリアセタール樹脂のコモノマー濃度が0.06mol%以上1.2mol%以下である、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記(A)ポリアセタール樹脂は、数平均分子量が10,000以上60,000以下である、(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
(4)(C)脂肪酸金属塩0.0001質量部以上0.1質量部以下を更に含む、(1)~(3)の何れか一つに記載の樹脂組成物。
(5)前記(B)ガラス繊維は、平均繊維径が12μm以下である、(1)~(4)の何れか一つに記載の樹脂組成物。
(6)(1)~(5)の何れか一つに記載の樹脂組成物を含む、ことを特徴とする、樹脂成形体。
(7)厚みが1.0mm以下である、(6)に記載の樹脂成形体。
(8)電気機器用部品又は電子機器用部品として用いられる、(7)に記載の樹脂成形体。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス繊維10質量部以上55質量部以下とを含み、上記(A)ポリアセタール樹脂のコモノマー濃度が0.001mol%以上1.2mol%以下であり、メルトフローレイト(ISO1133準拠、温度190℃、荷重2.16kg)が8g/10分以上30g/10分以下である。また、本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分に加え、(C)脂肪酸金属塩、摺動剤、安定剤、その他の成分などを含むことができる。
なお、MFRは、流動性の大きさの指標の一つであり、樹脂組成物のMFRは、例えば、樹脂組成物又はこれを含む樹脂成形体を細かく切り出し、ペレット状のサンプルとしたものを、上述の規格及び条件に準拠して測定することにより、確認することができる。
本実施形態の樹脂組成物に使用される(A)ポリアセタール樹脂(本明細書において、(A)成分、(A)などと記載する場合がある。)について、詳細に説明する。(A)ポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールコポリマーが挙げられる。
具体的に、ポリアセタールコポリマーとしては、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、コモノマーとしての環状エーテル又は環状ホルマールとを、共重合させて得られるポリアセタールコポリマーが挙げられる。ここで、環状エーテル又は環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド;プロピレンオキサイド;エピクロルヒドリン;1,3-ジオキソラン;1,4-ブタンジオールホルマールなどのグリコール又はジグリコールの環状ホルマール;等が挙げられる。
なお、ここでいう(A)ポリアセタール樹脂の数平均分子量とは、樹脂組成物の一部を切り出し、ヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPと略す)中に浸漬し溶解したポリアセタール樹脂成分をサンプルとして用い、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略すことがある)で、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略す)を標準物質として用いて計算されたPMMA換算分子量で表される数平均分子量である。この際のPMMA標準物質は、数平均分子量として、2,000程度から1,000,000程度の範囲で、少なくとも4サンプル程度を用いる必要がある。
本実施形態の樹脂組成物に使用される(B)ガラス繊維(本明細書において、(B)成分、(B)などと記載する場合がある。)としては、特に限定されないが、チョップドストランドガラス繊維、ミルドガラス繊維、ガラス繊維ロービング等が挙げられる。これらの中でも、取扱い性及び成形体の機械的強度の観点から、チョップドストランドガラス繊維が好ましい。
これら(B)ガラス繊維としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ここでいう繊維径は、樹脂組成物又はこれを含む樹脂成形体を十分に高い温度(例えば、400℃以上)で焼却して樹脂成分を除去したのち、得られた灰分を走査型電子顕微鏡で観察し、直径を測定することにより、容易に測定できる。そして、誤差をなくすため、少なくとも100本以上のガラス繊維の直径を測定し、その平均値を算出して、平均繊維径を求めることができる。
(B)ガラス繊維としては、繊維径の異なるガラス繊維を2種以上ブレンドして用いてもよい。
これら被膜形成剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらカップリング剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタアクリロキシプロピルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシシランが好ましい。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシシランγ-アミノプロピルトリエトキシシランが、経済性及び樹脂組成物の成形時の熱安定性の観点より好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、更に(C)脂肪酸金属塩を含むことが好ましい。(C)脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム等が挙げられる。また、樹脂組成物における(C)脂肪酸金属塩の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.0001質量部以上0.1質量部以下の範囲であることが好ましい。このような範囲にあることで、成形時の高い熱安定性を得られるだけでなく、樹脂組成物の流動性を高めることができる。同様の観点から、樹脂組成物における(C)脂肪酸金属塩の含有量は、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましく、また、0.09質量部以下がより好ましく、0.08質量部以下が更に好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常ポリアセタール樹脂組成物に使用されている摺動剤を含んでもよい。摺動剤としては、ポリエチレン樹脂(超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等);プロピレン、ブテン、オクテン等のコモノマーを含有するエチレン系共重合体;モノエステルやジエステルなどのエステル系化合物;シリコン系化合物;PTFE等のフッ素系化合物;高級アルコール;などが挙げられる。また、樹脂組成物における摺動剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常ポリアセタール樹脂組成物に使用されている安定剤を含んでもよい。安定剤としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド、ギ酸の捕捉剤等が挙げられる。これら安定剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常ポリアセタール樹脂組成物に使用されている公知の、ガラス系充填剤(ガラスビーズ、ガラスバルーン等)、ガラス系充填剤以外の充填材(タルク、ウォラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム等)、導電性付与剤(カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等)、着色剤(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、有機染料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑材等の各種添加剤を含有することができる。これら添加剤の量は、ガラス系充填剤、ガラス系充填剤以外の充填剤、及び導電性付与剤については、樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、一方、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑材については、樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。これら添加剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法による製造することができる。具体的には、一軸又は多軸の混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等により、以下のように原料成分の混合及び溶融混練を行うことにより製造することができる。特に、減圧装置・サイドフィーダー設備を装備した二軸押出機が好ましく使用できる。
本実施形態の樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を含む。また、本実施形態の樹脂成形体は、上述した樹脂組成物から作製することができる。
なお、本実施形態における樹脂成形体とは、各種方法により成形された樹脂の成形体を全て包含する。具体的に、成形体としては、射出成形された成形体、押出成形やインフレーション成形された成形体(シート、フィルム、ストランド、ペレット等)、ブロー成形された成形体等が挙げられる。
また、本実施形態の樹脂成形体は、上述した部品以外にも、ポリアセタール樹脂の用途として公知の用途に適用できる。具体的には、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、ガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、自動車部品として、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、ウインドウレギュレータワイヤードラム、スピーカーグリル、ガラスホルダー、キャリアプレート等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ等の映像機器用部品;CD、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、その他光デイスクのドライブ;ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等に適用することができる。また、適用可能なその他の用品として、筆記具のペン先、芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、排水栓開閉機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機(開閉部ロック機構、商品排出機構部品)、家具、楽器、住宅設備機器部品、パーソナルコンピュータのキートップ及びキーステム等が挙げられる。
熱媒を通すことができるジャッケット付きの二軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整した。この重合機に、トリオキサンと、コモノマーとしての1,3-ジオキソランと、連鎖移動剤としてのメチラールとを添加した。その際、表1及び表2に示されるコモノマー濃度(全体のユニットに対する、エトキシユニットのmol%)、数平均分子量となるように、各原料の量を調整した。
さらに、上記の重合機に、重合触媒としての三フッ化硼素ジ-n-ブチルエーテラートを、トリオキサン1molに対して1.5×10-5molの量で連続的に添加し、重合を行った。
重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を行った。そして、重合触媒の失活を行ったポリアセタールコポリマーを、遠心分離機でろ過し、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。ここで、水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。なお、水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き二軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
不安定末端部分が分解されたポリアセタールコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
このようにして、(A)ポリアセタール樹脂を得た。
(B)ガラス繊維としては、日本電気硝子製「T-651H」を用いた。
(C)脂肪酸金属塩としては、大日化学工業製のステアリン酸カルシウムを用いた。
スクリュー径Dに対するスクリュー長さLの比(L/D)=48(バレル数12)であり、第6バレルと第8バレルにサイドフィーダーを有し、第11バレルに真空ベントを備えた同方向回転二軸押出機(東芝機械(株)製TEM-48SS押出機)を用いた。第1バレルを水冷し、第2~5バレルを220℃、第6~12バレルを180℃に設定した。
押出に用いたスクリューは以下のデザインとした。第1~4バレルの位置にフライトスクリュー(以下、FSと略す)を配し、第5バレルの位置に送り能力を有するニーディングディスク(以下、RKDと略す)2枚、送り能力のないニーディングディスク(以下、NKDと略す)2枚、及び逆方向への送り能力を有するニーディングディスク(以下、LKDと略す)1枚をこの順に配した。第6~第8バレルの位置にFSを配し、第9バレルの位置にRKDとNKDとを1枚ずつこの順に配し、第10~第11バレルの位置にFSを配した。
(B)ガラス繊維を第6バレルのサイドフィーダーより供給し、スクリュー回転数を150rpmとし、総押出量を70kg/hとして押出(溶融混練)を行い、樹脂組成物を調製した。
(C)脂肪酸金属塩を配合する場合は、トップフィーダーあるいはサイドフィーダーより供給することができる。トップフィーダーより供給することが好ましい。
次いで、調製した樹脂組成物を、射出成形機(EC-75NII、東芝機械(株)製)を用いて、シリンダー温度設定を205℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で成形することにより、ISO294-2に準拠した小型引張試験片形状の樹脂成形体を得た。なお、この際の金型温度は、90℃とした。
得られた樹脂成形体を細かく切り出し、ペレット状のサンプルにした。このペレット状のサンプルについて、ISO1133に準拠して、メルトフローレイト(g/10分)を測定した。なお、このとき、温度は190℃とし、荷重は2.16kgとした。
測定には、射出成形機(ファナック(株)製 ROBOSHOT α-50iA)を用いた。また、シリンダー温度設定を200℃、金型温度を80℃とし、0.5mmあるいは1.0mm厚のSFD金型を用いた。そして、射出圧力80MPa、射出速度50mm/秒における、各樹脂成形体の組成に関するSFD(cm)を評価した。SFDの値が大きいほど、流動性に優れ、薄肉成形性に優れることを示す。
得られた小型引張試験片形状の樹脂成形体を用い、ISO178に準拠した曲げ試験を行い、曲げ強度(MPa)、曲げ弾性率(MPa)を測定した。なお、押込み速度は、1mm/分とした。これらの測定値が大きいほど、剛性が高いことを示す。
得られた小型引張試験片形状の樹脂成形体を用い、ISO527-1に準拠した引張試験を行い、引張破壊応力(MPa)を測定した。なお、引張速度は、5mm/分とした。この測定値が大きいほど、剛性が高いことを示す。
得られた小型引張試験片形状の樹脂成形体を用い、120℃で、60日間熱処理したのち、ISO527-1に準拠した引張試験を行い、引張破壊応力(MPa)を測定した。そして、この測定値を、上記で求めた引張破壊応力の測定値で割返し、100倍することで、熱エージング強度保持率(%)を求めた。この値が大きいほど、成形時の熱安定性が高いことを示す。
Claims (8)
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)ガラス繊維10質量部以上55質量部以下とを含む樹脂組成物であって、
前記(A)ポリアセタール樹脂のコモノマー濃度が0.001mol%以上1.2mol%以下であり、
前記樹脂組成物のメルトフローレイト(ISO1133準拠、温度190℃、荷重2.16kg)が8g/10分以上30g/10分以下である、ことを特徴とする、樹脂組成物。 - 前記(A)ポリアセタール樹脂のコモノマー濃度が0.06mol%以上1.2mol%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記(A)ポリアセタール樹脂は、数平均分子量が10,000以上60,000以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- (C)脂肪酸金属塩0.0001質量部以上0.1質量部以下を更に含む、請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂組成物。
- 前記(B)ガラス繊維は、平均繊維径が12μm以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1~5の何れか一項に記載の樹脂組成物を含む、ことを特徴とする、樹脂成形体。
- 厚みが1.0mm以下である、請求項6に記載の樹脂成形体。
- 電気機器用部品又は電子機器用部品として用いられる、請求項7に記載の樹脂成形体。
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