JP5247101B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

Description

本発明は、ウッドクラブのヘッドであり、オフセンターヒット時でも飛距離のロスを少なくしたゴルフクラブヘッドに関する。

最近のウッドクラブのヘッドは、金属材料で少なくともフェース部分を形成したものが大半を占め、このフェース部分の肉厚は、ボールとの衝撃に耐え得る強度を保つために肉厚を厚くする必要があった。ヘッドの大型化がすすみ、ルール上４６０ｃｍ^３＋許容誤差１０ｃｍ^３の体積より小さくしなければならないとされ、ドライバーのヘッドは上限にきわめて近い４６０ｃｍ^３の大型ヘッドが大半を占めるに至っている。ヘッドサイズをアップすると、スィートエリアが拡大し、周辺重量配分が強調され、左右、上下の慣性モーメントが大きくなり、オフセンターヒット時のミスを軽減させることができる。しかしながら、ヘッドサイズを大きくし、ヘッド重量も増大させてしまうとヘッドスピードが落ちて飛距離ダウンになりかねない。そこで、比重が軽く、強度も大きなチタニウム（又はその合金、併せて以下「チタン」という）でヘッド全体を形成するか、カーボンとチタンのコンポジットヘッドにするなどの手段が採用されていた。

また、ヘッドサイズを大きくするのみならず、ヘッドの反発係数を高めた高反発ヘッドも数多く開発されるに至った。高反発ヘッドについては、２００８年から反発係数が０．８３０以上のものは、競技では使用できないことになった。今までは、ヘッドの大型化と平行して反発係数が上がる肉厚フェース材を積極的に用いるものが多かったが、高反発ヘッドでもスィートエリア以外のフェース部分でのヒット、すなわちオフセンターヒットではスプリング効果は期待できず、飛距離が極端に低下してしまう傾向があった。

フェース全体にバネ性を持たせ、スプリング効果を狙った従来例としては、フェースを形成する部分のスィートスポットを含むセンター個所の肉厚をボールとの衝撃に耐えるのに十分な強度を保つ厚みに形成し、センター個所の周辺の肉厚をセンター個所よりも薄くしてフェース全体にバネ性を持たせたものが知られている(特許文献１参照)。
特開平９−１９２２７３号公報（２頁、図１）

特許文献１に記載のものでは、スィートエリアでヒットしたときはフェース全体のバネ性が機能して飛距離を伸ばすが、オフセンターヒット時には著しく飛距離を減少させてしまう。

そこで、本発明は、反発係数をルール適合範囲とし、ボールの打点がフェースのセンターからずれたとき、すなわちオフセンターヒット時でもボールの初速の低下を防ぎ、飛距離をできるだけ減少させることのないゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。

上述の目的を達成するため、本発明は、金属材料で形成されたヘッドのフェース部材が、ヒールとトウ寄りに形成された本体部と、クラウンとソールの一部にまたがるように本体部に一体化されるインサート部とからなるゴルフクラブヘッドにおいて、前記インサート部が、トウ側に傾いた平行四辺形に近い形状に形成され、このインサート部にフェース部材のボールをヒットするフェース面の幾何学上の中心部分が存在し、この中心部分に中心が位置するだ円をインサート部に想定し、このだ円の長軸の両端側を中心部分（C）に向けて円弧状に窪ませた窪みを有する部分を他のインサート部の肉厚よりも厚い厚み部をインサート部の裏面に形成し、このだ円の長軸の両端はトウ側が高く、ヒール側が低くなるように傾いていて窪みがトウ側上部、窪みがヒール側下部を向くように形成され、前記厚み部の外側のフェース部分を厚み部の肉厚よりも薄く形成し、前記フェース部材のフェース面に占める厚み部の割合を２５〜４５％とし、且つ、フェース面中厚み部を除く部分のうち窪みが向いたトウ側上部とヒール側下部とが占める割合を６０％以上としたことを特徴としたものである。

本発明によれば、金属材料で形成されたヘッドのフェース部材が、ヒールとトウ寄りに形成された本体部と、クラウンとソールの一部にまたがるように本体部に一体化されるインサート部とからなるゴルフクラブヘッドにおいて、前記インサート部が、トウ側に傾いた平行四辺形に近い形状に形成され、このインサート部にフェース部材のボールをヒットするフェース面の幾何学上の中心部分が存在し、この中心部分に中心が位置するだ円をインサート部に想定し、このだ円の長軸の両端側を円弧状に窪ませた窪みを有する部分を他のインサート部の肉厚よりも厚い厚み部をインサート部の裏面に形成し、このだ円の長軸の両端はトウ側が高く、ヒール側が低くなるように傾いていて窪みがトウ側上部、窪みがヒール側下部を向くように形成され、前記厚み部の外側のフェース部分を厚み部の肉厚よりも薄く形成し、前記フェース部材のフェース面に占める厚み部の割合を２５〜４５％とし、且つ、フェース面中厚み部を除く部分のうち窪みが向いたトウ側上部とヒール側下部とが占める割合を６０％以上としたので、アマチュアゴルファーの打点のばらつきが集中するトウ側上部とヒール側下部とにボールが当った場合、厚み部に２つの窪みが形成されていることにより、ボールはトウ側上部の肉厚の薄い部分（２．５ｍｍ以下）とヒール側下部の肉厚の薄い部分（２．５ｍｍ以下）とに集中し、ボール初速をさほど落とすことなくボールをヒットできる。すなわち、窪みから外れたトウ側上部とヒール側下部でヒットしたボールは、厚み部よりも肉厚が薄い部分によりスプリング効果が生じ、ボール初速の低下を防ぐ。フェース部材のフェース面の周囲よりも中央の肉厚を少し厚くすることにより、芯をはずしたショットの減速を緩和するという技術は、従来から知られているが、中央の肉厚の具合とその範囲並びに周囲の肉厚の具合とその範囲を究明し、工夫し、フェース中央で打った際のボールスピードを最大限に引き出しながら、芯をはずれたショットの減速を最小にすることを実現したのが本発明である。

以下に本発明の実施形態について、図面を参照にして説明する。

図１では、ウッドクラブのドライバーと呼ばれるクラブのヘッド正面図を示し、ヘッド内部に表われる部分も実線で示した（実際のフェース正面図には表われない）。このヘッドのフェース部材１は、ヒール２とトウ３寄りに形成されたチタン製の本体部６と、クラウン４とソール５の一部にまたがるように本体部６に一体化されるチタン製のインサート部７とから成り、インサート部７はトウ３側に傾いた平行四辺形に近い形状に形成されている。このインサート部７は、ヘッドの本体部分に溶接され、表面処理が施され、フェース正面の外観には明瞭には表われない。また、インサート部７には、フェース部材１のボールをヒットするフェース面の幾何学上の中心部分Ｃが存在し、この中心部分Ｃに中心が位置するだ円（長軸６０ｍｍ、短軸４０ｍｍ）を想定し、このだ円の長軸の両端側を円弧状に窪ませた窪み８Ａ、８Ｂを有する厚み部８をインサート部７の裏面に形成してある。この厚み部８の中心部分の肉厚は、３．７ｍｍ（３．０〜４．０ｍｍの範囲内）とし、周辺に向かって肉厚を除々に薄く形成し（最外周で２．７〜２．５ｍｍ）、この厚み部８の外側のフェース部分は２．５ｍｍ以下（１．５〜２．８ｍｍ、好ましくは１．８〜２．５ｍｍ）とした。前記中心部分Ｃは、スイートスポットを含む直径３〜５ｍｍ程度の領域をいう。

前記厚み部８の長軸の傾きは、ソール５に接する水平線から１５．２８°としたが、１０°〜３０°の範囲内であればよい。アマチュアゴルファーの打点のばらつきは、トウ３の上部とヒール２の下部に集中することが、統計上わかっているので、厚み部８の窪み８Ａ、８Ｂがトウ３側上部とヒール２側下部を向くようにすることが重要であり、その向く角度をだ円の長軸の傾きとして１０°〜３０°としたのである。また、窪み８Ａ、８Ｂの向き合うエリアは、厚み部８を除いたフェース面の６０％以上、好ましくは７０％以上を占めていることがよい。

さらに、厚み部８の窪み８Ａ、８Ｂの曲率半径はＲ１５（ｍｍ）としたが、Ｒ１２〜Ｒ２５の範囲内とすることもできる。また、厚み部８のクラウン４とソール５側の円弧は、Ｒ４０としたが、Ｒ３５〜Ｒ６０の範囲内とすることもできる。さらに、厚み部８のフェース部材１のフェース面に占める割合は、２５〜４５％とすることが好ましい。また、厚み部８の長軸（窪み８Ａ、８Ｂ間長さ）と短軸との比率は、５：４〜５：６の範囲内が好ましい。

図２は、インサート部７の裏面図であり、このインサート部７はフェース部材１の主要部分を形成するものであり、チタンを鍛造、鋳造いずれの方法でも形成可能である。インサート部７の上端７Ａは内側に折り曲げられ、クラウン４の一部を形成し、下端７Ｂも内側に折り曲げられ、ソール５の一部を形成する。このインサート部７の周辺をチタニウム合金製のヘッド本体に溶接して固着する。

図３は、図２のＡ−Ａ線断面であり、中心部分Ｃの肉厚が最も厚く（実施例では３．７ｍｍ）、上端７Ａや下端７Ｂに近づくにつれて最も薄くなる。図４は、図２のＢ−Ｂ線断面であり、同じく中心部分Ｃの肉厚を最も厚く形成し、両側で最も薄くなるように形成してある。図４では、打球面に凸状のＲ２５０〜Ｒ８００のバルジを形成してあり、打球面とは反対の面には山型の厚み部８を形成してある。厚み部８の外周線の薄い部分を２．５ｍｍとしたとき、この部分に隣接する厚み部８の外側のフェース部分の肉厚も２．５ｍｍとしたときも、「厚み部８の外側のフェース部分を厚み部８の肉厚よりも薄く形成」するという表現に含むことにする。

図５は、本発明の図１に示す中空部を有するチタニウム合金製ゴルフクラブヘッドを使用し、ヘッドスピード４５ｍ／ｓのゴルファーがフェース中心でボールをヒットしたとき（センターヒット）のボール初速を１００としたとき、オフセンターヒット時のボール初速を表したものである。本発明のヘッドでは、ヒール寄り下部で「９７」、ヒール寄り中間部で「９８」、ヒール寄り上部で「９６」、トウ寄り下部で「９５」、トウ寄り中間部で「９９」、トウ寄り上部で「９９」という結果であり、初速の著しい低下は見られなかった。センターの上下では、「９９」と「９８」というボール初速であった。

図６は、フェースセンターに長軸６０ｍｍ、短軸４０ｍｍのだ円形状の厚み部を長軸が水平になるように形成し、中心の厚さを３．７ｍｍ、周辺の厚さを２．５ｍｍとなるようにしたヘッドを用いたボール初速の実験結果を示す。ヘッドスピード４５ｍ／ｓで、図５に示すものと同一体積のヘッドを用いた。トウ上部では、ボール初速「９５」（本発明では「９９」）、ヒール下部では、ボール初速「９３」（本発明では「９７」）という結果であり、オフセンターヒット時の初速の減少が大きいことがわかる。

なお、ウッドクラブのドライバーのゴルフクラブヘッドについて説明してきたが、フェアウェイウッドとかユーティリティクラブ（ハイブリッドクラブ）のゴルフクラブヘッドにも本発明を適用することができる。

ヘッドのフェース正面図。 インサート部の裏面図。 図２のＡ−Ａ線断面図。 図２のＢ−Ｂ線断面図。 本発明のヘッドでのフェース面各部分でのヒット時のボール初速を示す図。 従来のヘッドでのフェース面各部分でのヒット時のボール初速を示す図。

符号の説明

１ フェース部材
２ ヒール
３ トウ
８ 厚み部
８Ａ、８Ｂ 窪み
Ｃ 中心部分

Claims (2)

1. 金属材料で形成されたヘッドのフェース部材（１）が、ヒール（２）とトウ（３）寄りに形成された本体部（６）と、クラウン（４）とソール（５）の一部にまたがるように本体部（６）に一体化されるインサート部（７）とからなるゴルフクラブヘッドにおいて、
   前記インサート部（７）が、トウ（３）側に傾いた平行四辺形に近い形状に形成され、このインサート部（７）にフェース部材（１）のボールをヒットするフェース面の幾何学上の中心部分（Ｃ）が存在し、
   この中心部分（Ｃ）に中心が位置するだ円をインサート部（７）に想定し、このだ円の長軸の両端側を中心部分（C）に向けて円弧状に窪ませた窪み（８Ａ）（８Ｂ）を有する部分を他のインサート部（７）の肉厚よりも厚い厚み部（８）をインサート部（７）の裏面に形成し、
   このだ円の長軸の両端はトウ（３）側が高く、ヒール（２）側が低くなるように傾いていて窪み（８Ａ）がトウ（３）側上部、窪み（８Ｂ）がヒール（２）側下部を向くように形成され、
   前記厚み部（８）の外側のフェース部分を厚み部（８）の肉厚よりも薄く形成し、
   前記フェース部材（１）のフェース面に占める厚み部（８）の割合を２５〜４５％とし、
   且つ、フェース面中厚み部（８）を除く部分のうち窪み（８Ａ）（８Ｂ）が向いたトウ（３）側上部とヒール（２）側下部とが占める割合を６０％以上としたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
2. 厚み部（８）以外のフェース部材（１）の肉厚を２．５ｍｍ以下としたことを特徴とする請求項１に記載のゴルフクラブヘッド。