JP5349006B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、ゴルフクラブヘッドに関し、詳しくは、フェース部の裏面に肉厚の改良を施したゴルフクラブヘッドに関する。
最近のウッドクラブのヘッドは、金属材料で少なくともフェース部分を形成したものが大半を占める。フェース部分の肉厚は、ボールとの衝撃に耐え得る強度を保つために肉厚を厚くする必要がある。ヘッドの大型化が進んでいるが、ルール上460cm+許容誤差10cmの体積より小さくしなければならないとされることから、ドライバーのヘッドは上限にきわめて近い460cmの大型ヘッドが大半を占めるに至っている。ヘッドサイズを大きくすると、スィートエリアが拡大し、周辺重量配分が強調され、左右、上下の慣性モーメントが大きくなるので、オフセンターヒット時のミスを軽減させることができる。しかしながら、ヘッドサイズを大きくし、ヘッド重量も増大させてしまうと、スイングバランスが大きくなり、ヘッドスピードが落ちて飛距離ダウンになりかねない。そこで、比重が軽く、強度も大きなチタン又はその合金(特に言及しない限り、併せて以下「チタン」という)でヘッド全体を形成するか、カーボンとチタンのコンポジットヘッドにするなどの手段が採用されている。
また、ヘッドサイズを大きくするのみならず、ヘッドの反発係数を高めた高反発ヘッドも数多く開発されるに至った。高反発ヘッドについては、2008年から反発係数が0.830以上のものは、競技では使用できないことになった。今までは、ヘッドの大型化と平行して反発係数が上がる肉厚フェース材を積極的に用いるものが多かった。しかし、高反発ヘッドでもスィートエリア以外のフェース部分でのヒット、すなわちオフセンターヒットではスプリング効果は期待できず、飛距離が極端に低下してしまう傾向があった。
特開平9−192273号公報には、フェースを形成する部分のスィートスポットを含むセンター個所の肉厚を、ボールとの衝撃に耐えるのに十分な強度を保つ厚みに形成し、センター個所の周辺の肉厚をセンター個所よりも薄くすることで、フェース全体にバネ性を持たせたゴルフクラブヘッドが記載されている。
特開2003−154040号公報にも、フェース部材の中央に肉厚な領域を設けたゴルフクラブヘッドが記載されている。本公報には、この肉厚な領域を、シャフト軸線に略直交する斜傾線とフェースライン溝とがなす角度をθとすると、傾斜線を対称軸として、フェースライン溝と反対側に角度θだけ傾斜する軸線に沿った略楕円状にすることが記載されている。
特開2008−132276号公報には、フェース裏面の中央領域に設けられた中央厚肉部と、この中央厚肉部からフェース周縁へと延びる少なくとも4本のリブと、隣り合うリブの間に形成される薄肉部とを含むフェース部を備えたゴルフクラブヘッドが記載されている。
特開平9−192273号公報 特開2003−154040号公報 特開2008−132276号公報
特開平9−192273号公報に記載されているようなフェース部の中央を厚肉にした場合、フェース部の反発性能は、スウィートスポットを外れてボールを打った場合、スウィートスポットでボールを打った場合に比べて、大きく低下することから、スウィートスポットでの反発性能を低く抑えると、スウィートスポット以外での反発性能は著しく低いものになるという問題がある。また、一般に、フェース部を薄肉化する程、フェース部の反発性能は高くなり、フェース部の強度は弱くなる傾向がある。よって、フェース部の軽量化を維持しながら、フェース部の強度も維持するとともに、スウィートスポットでの反発性能を低く抑えつつ、スウィートスポットを外れてボールを打った場合も、スウィートスポットに近い反発性能を得ることは難しいという問題がある。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、フェース部の軽量化および強度を維持しつつ、フェース部の反発性をルール適合範囲内に抑えることができるとともに、ボールをスウィートスポットから外れて打った場合でも、反発性能が大きく低下するのを防ぐことができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、金属材料で形成されたフェース部を備えたゴルフクラブヘッドであって、このフェース部は、フェース部の中央に位置する厚肉部と、この厚肉部の外周に位置する外周部と、前記厚肉部と前記外周部との間に部分的に位置する薄肉部とを備えており、前記厚肉部は、楕円形状または円形状を、互いに対向する2つの側において、中心方向に略円弧状に窪ませた形状を有し、これら窪みのうち、トウ側の窪みはソール方向斜めを向き、ヒール側の窪みはクラウン方向斜めを向き、前記厚肉部は、フェース部の中心部において最も厚い肉厚を有し、この中心部から前記外周部に向かって肉厚は除々に薄くなっており、前記薄肉部は、前記楕円形状の両端と前記窪みとで囲まれた領域に位置し、前記厚肉部は、前記外周部よりも厚い肉厚を有するともに、前記薄肉部は、前記外周部よりも薄い肉厚を有することを特徴する。前記フェース部に占める前記外周部と、前記薄肉部と、前記厚肉部との割合は、8〜10:1〜3:7〜9とすることが好ましい。
また、前記フェース部は、前記肉厚部の中心部を通って、フェース部のヒール側且つクラウン側の外縁からトウ側且つソール側外縁へと延びるリブを更に備えることが好ましい。このリブは、前記外周部よりも厚い肉厚を有する。前記フェース部に占める前記外周部と、前記薄肉部と、前記厚肉部と、前記リブとの割合は、16〜20:2〜6:14〜18:1〜6とすることが好ましい。
前記厚肉部の中心部の肉厚は約3.4mm〜約4.0mmが好ましく、前記薄肉部の肉厚は1.8mm〜2.2mmが好ましく、前記外周部の肉厚は2.1mm〜2.5mm画好ましい。また、前記リブの肉厚は2.5mm〜4.0mmが好ましい。
このように、本発明に係るゴルフクラブヘッドによれば、フェース部の中央に位置する厚肉部を上記のように窪ませた領域に、フェース部材の外周部よりも肉厚を薄くした薄肉部を形成したので、フェース部の軽量化を維持できるとともに、スウィートエリアである厚肉部でボールを打った場合でも、ルール適合範囲内の反発性に抑えることができ、また、ボールをスウィートスポットから外れて打った場合でも、反発性能が大きく低下するのを防ぐことができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施の形態を示す正面図である。
図1に示すように、ゴルフクラブヘッド1は、フェース部を備えたフェース部材10と本体部材20とから構成されている。本体部材20は、クラウン部4、ソール部5、ホゼル部6及びサイド部7を備え、一体的に形成されている。このフェース部材10と本体部分20は溶接により接合され、これによってヘッド内部が中空構造になっている。なお、フェース部材10の中空構造側の表面、すなわち裏面に表われる構成を破線で示した。フェース部材10の裏面には、フェース部材10の厚みを変化させるための凹凸が形成されている。フェース部材10の裏面について説明する。
図2は、図1に示すゴルフクラブヘッド1を構成するフェース部材10の裏面を示す図である。図3は、図2のフェース部材をIII−III線に沿って示す模式的な断面図である。なお、図1及び図2には、厚肉部16の厚さの変化を表現するために、等高線を描いている。また、図3の断面図は、本発明の構成を容易に理解できるように意図したものであって、縮尺通りに描いたものではいない。
図2に示すように、フェース部材10の裏面には、平らな表面を有する外周部12に対して、フェース部材の厚みを変化させた楕円状の区画を示すライン13が形成されている。このライン13で示される楕円には、その楕円の中心に向かって徐々に厚みが増す厚肉部16が形成されている。但し、楕円の長軸の両端部分には、それぞれ、厚肉部16を中心方向に向かって円弧状に窪ませた窪み15a、15bが形成されている。すなわち、厚肉部16は、この窪み15と、楕円の短軸の両側部分の楕円ライン13とで囲まれている。
図2及び図3に示すように、楕円の中心には、フェース部材10において最も厚い厚さを有し、表面が平らで円形状である中心部17が形成されている。厚肉部16は、この中心部17から楕円ライン13または窪み15まで、徐々に厚さが減るように構成されている。楕円の外周部12の厚さは均一である。楕円の長軸の両端部分における楕円ライン13と窪み15a、15bとで囲まれた部分には、外周部12よりも厚さを薄くした薄肉部14a、14bがそれぞれ形成されている。フェース部材10の外縁部11は、外周部12よりも厚く形成されている。また、フェース部材10の裏面には、フェース部材の厚さを更に厚くした唯一のリブ18が形成されている。フェース部材10裏面の各部について、更に詳細に説明する。
中心部17は、ゴルフクラブヘッド1のスイートスポットを含む。また、この中心部17は、ライン13で示される楕円の中心点を含む。この楕円の中心点とスイートスポットとは、同一であってもよいし、異なってもよい。中心部17の半径は、約3.0mm以上が好ましく、約3.5mm以上がより好ましい。また、中心部17の半径は、約6mm以下が好ましく、約5mm以下がより好ましい。中心部17の半径をこの範囲にすることで、フェース部の重量を抑えることができる。なお、中心部17は、図2に示した円形に限定されず、楕円形、長方形や菱形などの四角形、五角形や六角形などの多角形にしてもよい。中心部17の厚さは、約3.4mm以上が好ましく、約3.6mm以上がより好ましい。また、中心部17の厚さは、約4.0mm以下が好ましく、約3.8mm以下がより好ましい。中心部17の厚さをこの範囲にすることで、フェース部の反発係数をルール内におさめることができる。
ライン13で示される楕円の長軸は、トウ3側がクラウン方向に、ヒール2側がソール方向に傾いている。これは、一般に、ゴルファーの打点のばらつきが、トウ3側ではクラウン側に、ヒール2側ではソール側に片寄っていることから、このように傾けることで、スウィートスポットを外した際の打点をより多く薄肉部14の領域内に入れることができる。具体的には、図4に示すように、ゴルフクラブヘッドを通常のアドレスポジションに置いたときの水平線40に対して、楕円の長軸42の傾きθaが、約5°以上となるように配置することが好ましく、約10°以上となるように配置することがより好ましい。また、楕円の長軸42の傾きθaは、約40°以下が好ましく、約30°以下がより好ましい。
ライン13で示される楕円の長軸と短軸の長さの比率は、100:50〜50:50の範囲内が好ましく、95:50〜70:50の範囲内がより好ましい(長軸と短軸が同じ比率の場合は、楕円でなく、円となることは言うまでもない)。また、厚肉部16の楕円長軸における長さ(すなわち、窪み15a、15b間の長さ)と楕円短軸における長さの比率は、5:4〜5:6の範囲内が好ましい。ソール側の窪み15aの曲率半径は、約12mm以上が好ましく、約13mm以上がより好ましい。ソール側の窪み15aの曲率半径は、約25mm以下が好ましく、約20mm以下がより好ましい。
厚肉部16は、図3に示すように、中心部17から楕円ライン13または窪み15まで連続的に厚さが減るような裾広がり状の弯曲した表面を有しているが、これに限定されず、例えば、段階的に厚さが減るような階段状の表面を有していてもよいし、一定の割合で連続的に厚さが減るような円錐台状の表面を有していてもよい。
外周部12は、楕円ライン13から外縁部11まで均一な厚さを有している。外周部12の厚さは約2.1mm以上が好ましく、約2.2mm以上がより好ましい。一方、外周部12の厚さは約2.5mm以下が好ましく、約2.4mm以下がより好ましい。外周部12の厚さをこの範囲にすることで、反発係数を抑えながら、フェース部を軽量化することができる。
薄肉部14は、外周部12よりも厚さが薄く形成されている。薄肉部14と外周部12との厚さの差は、約0.1mm以上が好ましく、約0.2mm以上がより好ましい。また、薄肉部14の厚さは約1.8mm以上が好ましく、約1.9mm以上がより好ましい。一方、薄肉部14の厚さは約2.2mm以下が好ましく、約2.1mm以下がより好ましい。薄肉部14の厚さをこの範囲にすることで、反発性能が通常は低いトウ側およびヒール側において、反発性能を向上することができる。
リブ18は、少なくとも外周部12よりも厚い厚さを有している。リブ18は、図3に示すように、中心部17と同じ厚さから、外縁部11に向かって連続的に厚さが減少するように構成されている。リブ18をこのように中心部17から外縁部に向かって厚さを減少させることで、フェース面の強度を維持しながら、フェース面の反発性能の低下を最低限にすることができる。なお、これに限定されず、例えば、リブ18の厚さを一定にすることもできる。リブ18の厚さは、約2.5mm以上が好ましく、約2.7mm以上がより好ましい。一方、リブ18の厚さは、約4.0mm以下が好ましく、約3.6mm以下がより好ましい。
リブ18は、図2に示すように、厚肉部16の中心部17を通って、ヒール2側且つクラウン側の外縁部11からトウ3側且つソール側の外縁部11まで、ほぼ直線状に延びるように形成されている。リブ18は、図4に示すように、ゴルフクラブヘッドを通常のアドレスポジションに置いたときの水平線40に対するリブの中心線44の傾きθbを、約45°以上にすることが好ましく、約50°以上とすることがより好ましい。また、リブの傾きθbを、約90°未満とすることが好ましく、約80°以下とすることがより好ましい。リブの傾きθbを、この範囲内にすることで、ボールの打点のばらつきが上述のように片寄っていることから、オフセンターヒットの際の反発性能をあまり損なわずに、フェース面の強度の維持を図ることができる。リブ18は、図2に示すように、中心部17や外縁部17に隣接する部分において、幅が広くなるように形成されているが、これに限定されず、例えば、リブ18の幅を均等にしてもよい。
フェース部10の全面積において、外周部12、薄肉部14、厚肉部16(ここでは中央部17を含む)、およびリブ18が占める面積の割合は、16〜20:2〜6:14〜18:1〜6とすることが好ましく、17〜19:3〜5:15〜17:1〜5とすることがより好ましい。このような範囲内にすることで、フェース全体での重さと強度のバランスをとることができる。なお、リブ18を設けない場合は、外周部12、薄肉部14、および厚肉部16(ここでは中央部17を含む)が占める面積の割合は、8〜10:1〜3:7〜9とすることが好ましく、17〜19:3〜5:15〜17とすることが好ましい。
フェース部材10は、鍛造、鋳造いずれの方法でも形成可能である。また、フェース部材10の材料としては、チタンまたはチタン合金やステンレス鋼などを用いることができる。ゴルフクラブヘッド1の体積は、約100cc以上が好ましく、約350cc以上と大型にすることがより好ましい。一方、ゴルフクラブヘッド1の体積は、約500cc以下が好ましく、約480cc以下がより好ましい。また、ゴルフクラブヘッド1の重量は、約150g以上が好ましく、約160g以上がより好ましい。一方、ゴルフクラブヘッド1の重量は、約250g以下が好ましく、約200g以下と軽量なものがより好ましい。
なお、図3では、本発明の構成を容易に理解できるように、フェース部材10の打球側の表面を平らに示したが、フェース部材10の打球面には、曲率半径250mm〜800mmのバルジを形成することができる。また、同様に、フェース部材の打球面には、曲率半径250mm〜800mmのロールを形成することができる。
また、図1に示すように、本実施の形態では、ゴルフクラブヘッド1のフェース部全体がフェース部材10となる場合について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、フェース部の中央の部分をフェース部材とし、フェース部の両端の残りの部分をヘッド本体と一体的に形成するようにしてもよい。
本発明のフェース部材について、ゴルフボール(質量:44.7g)を45m/sのヘッドスピードで打った場合の初速(m/s)と撓み量(mm)を、コンピュータを用いたシミュレーションによって算出した。フェース部材の構成は、図2及び図3に示したものを採用した。フェース部材の設計条件としては、楕円の長軸の長さを64mm、短軸の長さを40mm、楕円の角度θaを15°とし、トウ側およびヒール側の窪みの曲率半径をそれぞれ32mm、12mmとした。リブの角度θbは60°とした。フェース部全体に占める外周部、薄肉部、厚肉部およびリブの割合は、45:11:40:4とした。なお、この割合は、中央部を肉厚部に含んで計算したが、中央部は、フェース部全体の1%とした。
中央部、外周部、薄肉部の各厚さは、3.6mm、2.3mm、2.0mmとした。厚肉部の厚さは、中央部の3.6mmから外周部の2.3mmまで連続的に変化するようにした。リブの厚さは、中央部の3.6mmから外縁部の3.3mmまで連続的に変化するようにした。フェース部材の材料はチタン合金を想定し、ヤング率は108GPa、ポアソン比は0.30とした。また、ゴルフクラブヘッドの重量は190gとした。
ボールの打点は、図5に示すように、水平方向に異なる5つの打点について調べた。中央の打点50cは、スウィートスポットでの打球を想定しており、フェース部材の中央部17内とした。それ以外の4つの打点は、スウィートスポットを外した打球を想定しており、中央の打点50cからトウ側およびヒール側にそれぞれ12.5mm離れた厚肉部16内の位置を、打点50b、50dとし、さらにトウ側およびヒール側にそれぞれ12.5mm離れた薄肉部14内の位置を、打点50a、50eとした。
以上の条件でシミュレーションした初速および撓み量の結果(実施例1)を、図6および図7に示す。なお、図6および図7のグラフでは、中央の打点50cの位置を0mmとし、ヒール側に向かう距離をプラスで、トウ側に向かう距離をマイナスで表した。
また、リブを設けなかった点を除き、実施例1と同様の条件で初速および撓み量のシミュレーションを行った(実施例2)。なお、比較のために、フェース部全体の厚さを均一に2.5mmとした点を除き、実施例1と同様の条件でシミュレーションを行った(比較例1)。また、薄肉部の厚さを外周部と同一にした点とリブを設けなかった点とを除き、実施例1と同様の条件でシミュレーションを行った(比較例2)。これらの結果も図6および図7に併せて示す。なお、実施例1、2及び比較例1、2の設計条件を表1にまとめた。
Figure 0005349006
図6に示すように、均一な厚さのフェース部材(比較例1)の初速は、打点が中央から±12.5mmの範囲内では高かったが、打点が中央から±25mm離れると大きく低下するという結果であった。また、この比較例1の撓み量は、図7に示すように、打点が中央の場合、非常に大きいものの、打点が中央から離れると、撓み量が大幅に減少するという結果であった。これに対し、実施例1の初速は、図6に示すように、打点が中央の場合、低く抑えられ、打点が中央から±25mm離れた位置では、比較例1よりも高いという結果であった。また、実施例1の撓み量は、図7に示すように、打点が中央から±25mm離れた位置でも、打点が中央の場合とほぼ同じ大きさを維持するという結果であった。
また、薄肉部のないフェース部材(比較例2)の初速は、打点が中央から±12.5mmの範囲内の場合、実施例1とほとんど同じ結果であったが、中央から±25mm離れた打点では、実施例1よりも低かった。同様に、比較例2の撓み量も、打点が中央から±12.5mmの範囲内の場合、実施例1より若干大きかったが、中央から±25mm離れた打点では、実施例1よりも顕著に低下した。この結果から、薄肉部を設けることで、スウィートスポットを外してこの薄肉部でボールを打った場合でも、スウィートスポットでボールを打った場合に近い反発性が発揮できることがわかる。
リブを備えていない実施例2の初速は、リブを備えた実施例1とほぼ同様の結果であった。また、リブを備えていない実施例2の撓み量は、リブを備えた実施例1と同様に、いずれの打点においてもほぼ同じ大きさを維持したが、リブを備えた実施例1と比べて、特にセンターヒット時において、より大きかった。この結果から、リブを設置することで、フェース部の変形が抑えられ、オフセンターヒット時の反発性がより均等になることがわかる。
次に、表1に示すように、リブの外縁の厚さを3.1mmと2.9mmにした点を除き、実施例1と同様の条件で初速および撓み量のシミュレーションを行った(実施例3、4)。これらの結果を図8および図9に示す。初速は、図8に示すように、リブの厚さを薄くしても、特に変化はなかった。撓み量は、図9に示すように、リブの厚さを実施例1よりも0.2mm薄くした実施例3で、実施例1よりも全体的に大きくなり、実施例1よりも0.4mm薄くした実施例4で、実施例1よりも更に全体的に大きくなった。この結果から、リブの外縁の厚さを薄くする程、オフセンターヒット時の反発性の低下を抑えることがわかる。
また、表1に示すように、中心部の厚さを3.8mm、外周部の厚さを2.2mmにして厚肉部における高低差を1.3mmから1.6mmと増やした点を除き、実施例1と同様の条件でシミュレーションを行った(実施例5)。反対に、中心部の厚さを3.4mm、外周部の厚さを2.4mmにして厚肉部における高低差を1.0mmと減らした点を除き、実施例1と同様の条件でシミュレーションを行った(実施例6)。これらの結果を図10および図11に示す。厚肉部における高低差を大きくした実施例5の初速は、図10に示すように、厚肉部における高低差を小さくした実施例6と比べて、特に打点が中央の場合において低くなった。また、厚肉部における高低差を大きくした実施例5の撓み量は、図11に示すように、厚肉部における高低差を小さくした実施例6と比べて、打点が中央の場合に小さくなり、打点が中央から±25mmの位置の場合に大きくなった。この結果から、厚肉部における高低差を大きくする程、オフセンターヒット時の反発性を高める効果があることがわかる。
上述した実施例1〜6および比較例1、2のシミュレーションでは、フェース部材のみからボールの初速を算出したため、スウィートスポットでボールを打った場合の初速よりも、スウィートスポット以外でボールを打った場合の初速の方が高いという結果がでた。そこで、実施例1および比較例2の条件のフェース部材を、それぞれヘッド本体と組み合わせてゴルフクラブヘッドとし、ヘッド体積を452ccとし、ヘッド重量を185gとする条件で、ボールの初速についてシミュレーションを行った。その結果を図12に示す。図12に示すように、実施例1でも比較例2でも、打点がスウィートスポットを外れる程、ボールの初速は低下した。しかしながら、実施例1では、比較例2と比べて、オフセンターヒットにおけるボールの初速の低下が大きく緩和されるという結果であった。
本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施の形態を示す正面図である。 図1に示すゴルフクラブヘッドを構成するフェース部材を示す裏面図である。 III−III線に沿って図2のフェース部材を示す模式的な断面図である。 図2のフェース部材において楕円およびリブの角度を示す裏面図である。 実施例のシミュレーションにおける打点の位置を示す裏面図である。 実施例1及び2の初速のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例1及び2の撓み量のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例3及び4の初速のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例3及び4の撓み量のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例5及び6の初速のシミュレーション結果を示すグラフである。 実施例5及び6の撓み量のシミュレーション結果を示すグラフである。 ヘッド本体の条件も入れた実施例1の初速のシミュレーション結果を示すグラフである。
符号の説明
1 ゴルフクラブヘッド
2 ヒール
3 トウ
4 クラウン部
5 ソール部
6 ホゼル部
7 サイド部
10 フェース部材
11 外縁部
12 外周部
13 楕円ライン
14 薄肉部
15 窪み
16 厚肉部
17 中心部
18 リブ
20 ヘッド本体
40 水平線
42 楕円の長軸
44 リブの中心線
50 打点

Claims (4)

  1. 金属材料で形成されたフェース部を備えたゴルフクラブヘッドであって、このフェース部は、フェース部の中央に位置する厚肉部と、この厚肉部の外周に位置する外周部と、前記厚肉部と前記外周部との間に部分的に位置する薄肉部とを備えており、
    前記厚肉部は、楕円形状または円形状を、互いに対向する2つの側において、中心方向に略円弧状に窪ませた形状を有し、これら窪みのうち、トウ側の窪みはソール方向斜めを向き、ヒール側の窪みはクラウン方向斜めを向き、前記厚肉部は、フェース部の中心部において最も厚い肉厚を有し、この中心部から前記外周部に向かって肉厚は除々に薄くなっており、
    前記薄肉部は、前記楕円形状または円形状の両端と前記窪みとで囲まれた領域に位置し、前記厚肉部は、前記外周部よりも厚い肉厚を有するともに、前記薄肉部は、前記外周部よりも薄い肉厚を有するゴルフクラブヘッド。
  2. 前記フェース部が、前記肉厚部の中心部を通って、フェース部のヒール側且つクラウン側の外縁からトウ側且つソール側外縁へと延びるリブを更に備え、このリブは、前記外周部よりも厚い肉厚を有する請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
  3. 前記厚肉部の中心部の肉厚が3.4mm〜4.0mmであり、前記薄肉部の肉厚が1.8mm〜2.2mmであり、前記外周部の肉厚が2.1mm〜2.5mmである請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
  4. 前記リブの肉厚が2.5mm〜4.0mmである請求項に記載のゴルフクラブヘッド。
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