JP5097748B2 - 経口投与製剤 - Google Patents
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Description
例えば、特開平2−76826号公報には、苦味を有する酸性の薬物(塩基性薬物の酸付加塩)にメントールおよびアルカリ性物質を添加すると苦味が感じられないと記載され、特開平4−327529号公報には、塩基性薬物の酸付加塩を含有する核が弱アルカリ性化合物にて覆われてなる苦味の改善された経口剤が記載されている。
すなわち、苦味を有する薬物1重量部に対し、糖類や糖アルコール類を少なくとも25重量部以上は配合する必要があり、また、より苦味を改善するには50重量部以上あるいは100重量部以上配合する必要があった。
この場合の剤形としては、シロップ剤、トローチ剤、ドロップ剤(飴)などであり、比較的大きな製剤にせざるを得ないという欠点があった。特に、投与量が1回100mg以上の薬物では、糖類や糖アルコール類の添加による方法では、苦味を低減させる効果はあるものの、苦味を全く感じない程度に改善することは、服用できる製剤の大きさや量に制限があることから、錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤などに製剤化するには、実際上困難であった。
すなわち、本発明は、不快な味を有する薬物、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールおよびpH調節剤を含有する経口投与製剤に関する。
本発明によれば、具体的には、pH調節剤を併用することにより、糖アルコールを単独で使用した場合と比較して、添加量を少なくとも1/5、より好ましくは1/10、さらに好ましくは1/20に低減した、製剤としての服用量がより少ない経口投与製剤が提供される。
なお、塩基性基とは1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基などの基を意味し、具体的にはアミノ基、アミジノ基、メチルアミノ基等を挙げることができる。
すなわち、a)薬物がその構造中に塩基性基を有する化合物の場合、pH調節剤により、口腔内のpHを薬物のpKa値以上に高めて、塩基の解離を抑制し、非解離(分子型)にして口腔内での溶解度を低下させる。また、薬物の脂溶性を高めて呈味を変化させ(油脂の味に)、ひいては薬物が有する不快な味を低減させる。
構造中に塩基性基を有する化合物としては、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、アセトアミノフェン、エピリゾール、ピラジナミド、カフェイン、エチオナミド、カルベジロール、アミノフィリン、スルピリン、テオフィリン、ジフェンヒドラミン、メトクロプラミド、フェニルブタゾン、フェノバルビタールおよびクロラムフェニコールなどを挙げることができる。
生薬としては、例えばエンゴサク、オウバク、オウレン、ホミカ、マオウ、トコン、ロートコン、ベラドンナおよびクジンなどを挙げることができる。
そのため、本発明においては不快な味を有する薬物のpKa値または不快な味を有する薬物1%(w/v)水溶液あるいは1%(w/v)水懸濁液のpH値は、2〜11がよく、3〜10が好ましく、4〜9がさらに好ましい。
本発明のpH調節剤のpH値としては、3〜12が好ましく、より好ましくは4〜11,特に好ましくは5〜10である。
ここで、1%(w/v)水溶液とは、溶媒100ml中に溶質が1g溶解しているものを意味する。懸濁液の場合も水溶液と同様である。
中でも、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウムおよび沈降炭酸カルシウムがさらに好ましい。
不快な味を有する薬物1重量部に対して、pH調節剤は0.1〜200重量部、好ましくは0.2〜50重量部、より好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜7重量部添加すればよい。
したがって、薬物の吸収に対するpH調節剤の影響はほとんど生じない。
このような糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール(溶解熱:−42.9cal/g)、キシリトール(溶解熱:−35cal/g)、マンニトール(溶解熱:−28.9cal/g)およびソルビトール(溶解熱:−24.1cal/g)などを挙げることができ、吸収する溶解熱が大きい程、不快な味の改善効果が大きく、また添加量を少なくすることができるので、上述の糖アルコールのなかではエリスリトールが特に好ましい。
例えば、溶解熱が−20cal/g以下でない糖アルコールであるマルチトール(溶解熱:−5.5cal/g)では、不快な味(苦味)を有する薬物1重量部に対し、20重量部添加しても、良好な不快な味(苦味)の改善効果は得られなかった(後記参考例5参照)。
しかしながら、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールを用いることにより、薬物が有する不快な味が改善され、清涼感があり、良好な服用感のある経口投与製剤を得ることができる。
また、製剤全重量に対しては、30重量%以上がよく、好ましくは、30〜90重量%であり、さらに好ましくは40〜70重量%である。
なお、錠剤にはチュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤や口腔内で速やかに溶解、崩壊し、水なしでも服用できる成形物を含み、また用時溶解して用いる発泡錠も含む。
顆粒剤、散剤および細粒剤には、用時溶解して用いるドライシロップ剤を含み、また、口腔内で速やかに溶解、崩壊し、水なしでも服用できる粒状物を含む。
製剤添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、着香剤、甘味剤および矯味剤などを挙げることができる。
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスポピドン、カルメロースカルシウムおよびクロスカルメロースナトリウムなどを挙げることができる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルクおよびショ糖脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
着色剤としては、食用黄色5号色素、食用赤色2号色素、食用青色2号色素、食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄および酸化チタンなどを挙げることができる。
着香剤としては、オレンジ、レモン、各種香料などを挙げることができる。
アスパルテームの添加量は、製剤全重量に対して、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%である。
L−メントールの添加量は、製剤全重量に対して、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。
本発明の経口投与製剤は、公知の経口投与製剤の製造方法により製造することができる。例えば、固形製剤の造粒方法としては、流動層造粒法、攪拌造粒法、転動流動層造粒法、押し出し造粒法、噴霧造粒法および破砕造粒法などを用いることができる。以下に、流動層造粒法を用いた製造方法を詳細に説明する。
また、必要に応じて、顆粒剤を調製する際に、不快な味を有する薬物とpH調節剤とを別々の顆粒剤に調製し、それらを混合してもよい(多顆粒法)。
1.塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールおよびpH調節剤を含有する経口投与製剤。
3.塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル1重量部に対し、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールが0.1〜50重量部である態様1または2に記載の経口投与製剤。
5.pH調節剤の1%(w/v)水溶液または1%(w/v)水懸濁液のpH値が、不快な味を有する薬物のpKa値以上または1%(w/v)水溶液あるいは1%(w/v)水懸濁液のpH値以上である態様1〜4のいずれかに記載の経口投与製剤。
6.pH調節剤が炭酸水素ナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウムおよび沈降炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物である態様1〜5のいずれかに記載の経口投与製剤。
8.塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル1重量部に対し、pH調節剤が0.5〜7重量部である態様1〜6のいずれかに記載の経口投与製剤。
9.甘味剤および/または矯味剤をさらに含有する態様1〜8のいずれかに記載の経口投与製剤。
11.剤形が錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤またはシロップ剤である態様1〜10のいずれかに記載の経口投与製剤。
12.溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールおよびpH調節剤を含有させることにより、塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレルを含む経口投与製剤の服用性を改善する方法。
13.甘味剤および/または矯味剤をさらに含有させる態様12に記載の経口投与製剤の服用性を改善する方法。
シメチジン(pKa:7.1)50g、エリスリトール(日研化学(株)製:目開き350μmの篩パス品)250g、沈降炭酸カルシウム225g、炭酸水素ナトリウム75g、トウモロコシデンプン33.5gおよびアスパルテーム6.5gを量り、流動層造粒乾燥機に入れ、3分間混合した後、ヒドロキシプロピルセルロースの5%(w/v)の水溶液200mlを用いてスプレー圧1.5kg/cm2、スプレー液速度15ml/分で造粒を行った。乾燥後、得られた造粒物を目開き1000μmの篩で篩過し、散剤(散剤1.3g中にシメチジンを100mg含有する。)を得た。
シメチジン(pKa:7.1)50g、エリスリトール(日研化学(株)製:目開き350μmの篩パス品)350g、沈降炭酸カルシウム100g、炭酸水素ナトリウム75g、トウモロコシデンプン32.1g、結晶セルロース30gおよびアスパルテーム6.5gを量り、流動層造粒乾燥機に入れ、3分間混合した後、ヒドロキシプロピルセルロースの2.5%(w/v)水溶液100mlを用いてスプレー圧1.5kg/cm2、スプレー液速度15ml/分で造粒を行った。乾燥後得られた造粒物を目開き1000μmの篩で篩過し、これに、ステアリン酸マグネシウムを0.6重量%添加して混合した。次に、単発打錠機を用いて、外径18mm、穴径6mmのリング状杵で、錠剤重量1300mgで打錠し、チュアブル錠(1錠中にシメチジンを100mg含有する。)を得た。
参考例1および参考例2で得たシメチジンを含有する固形製剤につき、苦味の官能試験を行った。官能試験はパネラー5名で行い、口腔内に約20秒間含み、苦味の程度を下記評価基準で判定した。結果を表1に示す。
B:苦味をほとんど感じない。
C:苦味をわずかに感じる。
D:苦味を感じる。
E:苦味を強く感じる。
シメチジン、エリスリトール、炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウム、アスパルテームの粉末を表2に示す重量比で量り、乳鉢で混合した後、得られた混合末について苦味の官能試験を行った。官能試験はパネラー2名で行い、口腔内に約20秒間含み、苦味の程度を下記評価基準で判定した。結果を表2に示す。
A*:苦味を感じないが塩味を感じる。
B:苦味をほとんど感じない。
C:苦味をわずかに感じる。
C*:苦味をわずかに感じ、塩味も感じる。
D:苦味を感じる。
E:苦味を強く感じる。
一方、糖アルコールとpH調節剤を併用した場合には、シメチジン1重量部に対してエリスリトールを4重量部以上、より苦味を改善するには5重量部以上添加し、pH調節剤の炭酸水素ナトリウムを2重量部または炭酸水素ナトリウムを1.5重量部と沈降炭酸カルシウムを4.5重量部添加するとシメチジンの苦味を改善することができる(組成f〜i参照)。
シメチジン、キシリトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、マルチトール、ブドウ糖、白糖、炭酸水素ナトリウム、アスパルテームの粉末を表3に示す重量比で量り、乳鉢で混合した後、得られた混合末について苦味の官能試験を行った。官能試験はパネラー2名で行い、口腔内に約20秒間含み、苦味の程度を下記評価基準で判定した。結果を表3に示す。
また、糖類のブドウ糖や白糖では、シメチジンの苦みを改善できなかった(組成pおよびq参照)。
[実施例1]苦味の官能試験(4)
塩酸セトラキサート(pKa:4.5(カルボキシル基)、pKa:10.5(アミノ基))、塩酸チクロピジン(pKa:6.93)、トラネキサム酸(pKa:4.33(カルボキシル基)、pKa:10.65(アミノ基))、エリスリトール、無水リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アスパルテーム、L−メントールの各粉末を表4に示す重量比で量り、乳鉢で混合した後、得られた混合末について苦味の官能試験を行った。官能試験はパネラー2名で行い、口腔内に約20秒間含み、苦味の程度を下記評価基準で判定した。結果を表4に示す。
A*:苦味は感じないが、強い刺激感を感じる。
B:苦味をほとんど感じない。
C:苦味をわずかに感じる。
D:苦味を感じる。
E:苦味を強く感じる。
E*:強い苦味と強い刺激感を感じる。
また、糖アルコールの添加量が低減できるため、製剤を小型化することができ、服用性に優れたものである。
さらに、本発明の経口投与製剤は、工程数が多いなどの複雑な製造法を必要とせず、一般的な製造法で製造することができるので、経済的で工業生産性の高いものである。
Claims (12)
- 塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールならびに炭酸水素ナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウムおよび沈降炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種または2種以上のpH調節剤を含有する経口投与製剤。
- 溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールがエリスリトール、キシリトール、マンニトールおよびソルビトールからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項1に記載の経口投与製剤。
- 塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル1重量部に対し、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールが0.1〜50重量部である請求項1または2に記載の経口投与製剤。
- 塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル1重量部に対し、溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールが5〜10重量部である請求項1または2に記載の経口投与製剤。
- pH調節剤の1%(w/v)水溶液または1%(w/v)水懸濁液のpH値が、塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレルのpKa値以上または1%(w/v)水溶液あるいは1%(w/v)水懸濁液のpH値以上である請求項1〜4のいずれかに記載の経口投与製剤。
- 塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル1重量部に対し、pH調節剤が0.1〜200重量部である請求項1〜5のいずれかに記載の経口投与製剤。
- 塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレル1重量部に対し、pH調節剤が0.5〜7重量部である請求項1〜5のいずれかに記載の経口投与製剤。
- 甘味剤および/または矯味剤をさらに含有する請求項1〜7のいずれかに記載の経口投与製剤。
- アスパルテームおよび/またはL−メントールをさらに含有する請求項1〜7のいずれかに記載の経口投与製剤。
- 剤形が錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤またはシロップ剤である請求項1〜9のいずれかに記載の経口投与製剤。
- 溶解熱が−20cal/g以下の糖アルコールならびに炭酸水素ナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウムおよび沈降炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種または2種以上のpH調節剤を含有させることにより、塩酸チクロピジンまたは硫酸クロピドグレルを含む経口投与製剤の服用性を改善する方法。
- 甘味剤および/または矯味剤をさらに含有させる請求項11に記載の経口投与製剤の服用性を改善する方法。
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