JP4647014B2 - 電池、電極およびこれらに用いる集電体 - Google Patents

電池、電極およびこれらに用いる集電体 Download PDF

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Description

本発明は、集電体と集電体に担持された活物質とを有する電極に関し、詳しくは、集電体の構造に関する。
近年、ノートパソコン、携帯電話などのポータブル機器の開発に伴い、その電源として電池の需要が増大している。これらの機器に用いられる電池には、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が要望される。この要望に対して、正極および負極のそれぞれにおいて、新たな活物質材料の開発が行われている。なかでも、非水電解質二次電池の高容量化のために、電極の活物質として、Si元素を含む材料(Si系材料)、Sn元素を含む材料(Sn系材料)などが注目されている。例えば、Si単体の理論放電容量は約4199mAh/gであり、黒鉛の理論放電容量の約11倍である。
しかし、Si系材料およびSn系材料は、リチウムイオン吸蔵時に構造が大きく変化し、膨張する。その結果、活物質粒子が割れたり、集電体から活物質が剥がれたりする。よって、活物質と集電体との間の電子伝導性が低下し、サイクル特性などの電池特性が低下する。
そこで、SiまたはSnを含む化合物(酸化物、窒化物、酸窒化物など)を活物質として用いることが提案されている。これらの活物質の放電容量は、単体の放電容量に比べて若干低下するが、活物質の膨張および収縮は軽減される。
活物質粒子間に予め空間を設けることにより、リチウムイオン吸蔵時の膨張応力を緩和することも提案されている。例えば、特許文献1は、フォトレジスト法、めっき法などにより、集電体上に所定のパターンで柱状粒子からなる活物質層を形成することを提案している。活物質を柱状にすることで、活物質層に空隙が形成され、活物質の膨張応力が緩和される。
特許文献2は、表面粗さRaが0.01μm以上である集電体上に活物質層を形成することにより、活物質と集電体との接触面積を大きくすることを提案している。活物質と集電体との接触面積を大きくすることで、集電体からの活物質の剥離を抑制することができる。
さらには、例えば、Si系材料またはSn系材料を負極活物質として用いる場合、負極の変形も大きな問題となる。充放電時に、このような負極活物質がリチウムイオンを吸蔵および放出すると、負極活物質の膨張または収縮による大きな応力が発生する。このため、負極に歪みが生じ、集電体にしわが生じたり、集電体が切れたりする。これにより、負極とセパレータとの間に空間が生じ、正極と負極との間の距離が不均一となるため、充放電反応が不均一になる。その結果、電池の内部で局部的な特性低下が生じる。
上記のような問題を解決するために、例えば、活物質層中に空隙を設けることが提案されている。例えば、特許文献3は、凹凸を有する集電体上に活物質粒子を堆積させ、活物質粒子間に空隙を形成することを提案している。特許文献4は、集電体上に活物質粒子を堆積させ、一次粒子が集合して二次粒子を形成し、二次粒子間に空隙を有する負極を提案している。
このように、活物質層中に空隙を設けることにより、活物質の膨張または収縮による応力が緩和されて、負極の歪みが抑制される。このため、集電体にしわが生じたり、負極活物質が集電体から剥がれたりすることを防止でき、よって、電池容量の低下およびサイクル特性の低下を抑制することができる。
特開2004−127561号公報 WO01/31722号公報 特開2002−313319号公報 特開2006−155958号公報
リチウムイオン吸蔵時の膨張応力を緩和する観点から、集電体上に活物質を柱状に成長させる場合、図1に示すように、集電体の表面に突起を形成することが有効である。図1は、従来の集電体10の平坦面11aに垂直な断面である。集電体10は、平坦な基材部11を有し、基材部11の表面には複数の突起12が形成されている。このような集電体上に、斜め方向から活物質を蒸着させると、陰影効果により、活物質が突起12に選択的に付着する。よって、活物質は柱状に成長し、柱状の粒子間に空隙を有する活物質層が形成される。
しかし、集電体の表面に突起を設け、活物質を柱状に成長させると、集電体と活物質との接合力が小さくなり、活物質が剥がれやすくなる。
また、特許文献3および4において、活物質粒子間の空隙は、負極の製造工程で自然に形成されているため、空隙のパターンが制御されていない。そのため、充放電に伴う体積変化が非常に大きいケイ素またはスズを負極活物質として用いる場合、特許文献3または4に開示される技術では、活物質層内に十分な空隙を確保することができない。よって、活物質の膨張および収縮により発生する応力を十分に緩和することができない。
特許文献1に開示される技術においては、活物質粒子が規則的なパターンで集電体上に形成されているため、特許文献3および特許文献4の場合よりも、活物質の膨張および収縮により発生する応力を緩和することができる。しかし、活物質粒子間に規則的な空隙を設けただけでは、活物質の膨張および収縮により生じる非常に大きな応力を十分に緩和することはできない。
以上のように、従来技術では、充放電反応に伴う活物質の膨張および収縮によって集電体と活物質との界面に生じる非常に大きな応力を十分に緩和することができない。この場合、負極が変形したり、負極活物質が集電体から剥がれたりすることがある。そのため、活物質を有効に利用することができず、電池容量が低下する。
そこで、本発明は、Si系材料およびSn系材料のように、高容量ではあるがリチウムイオン吸蔵時の膨張率の大きい活物質を用いる場合に、活物質の集電体からの剥がれおよび/または電極の変形を抑制することを目的とする。
本発明における集電体は、平坦面を有する基材部と、平坦面から突出した複数の第1突起と、第1突起の頂部から突出した複数の第2突起と、を有する。第1突起は、基材部上に規則的なパターンで配置されていることが好ましい。第2突起の高さおよび径は、第1突起の高さおよび径よりも小さいことが好ましい。
第1突起の高さは、3〜15μmであることが好ましい。
第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は、0.9〜9μmであることが好ましく、1.5〜7μmであることがさらに好ましい。基材部の平坦面の表面粗さRz0の1.3倍以上、もしくは5倍以上であることが好ましい。
第1突起の径は、第2突起の径の1.3倍以上、もしくは2倍以上であることが好ましい。
第2突起の最大径は、第2突起の根元の径よりも大きいことが好ましい。
第2突起は複数の粒状析出物を含んでもよい。
粒状析出物は、集電体の法線方向に複数層形成されていてもよい。
電体は、平坦面を有する基材部と、前記平坦面から突出した複数の第1突起とを有し、前記第1突起の頂部の粗化率が3以上、20以下である。前記第1突起は、規則的に配列されていることが好ましい。また、基材部の平坦面の粗化率も3以上、20以下であることが好ましい。
上述の集電体において、前記複数の第1突起は、前記平坦面内で互いに平行でかつ第1の間隔で配置された複数の第1の仮想直線と、前記平坦面内で前記第1の仮想直線と垂直で前記第1の間隔より小さい第2の間隔で配置された複数の第2の仮想直線との交点、および隣接する2つの前記前記第1の仮想直線と隣接する2つの前記第2の仮想直線とによって構成される矩形の中心に配置されていることが好ましい。
前記基材部は、長尺状であり、前記第1の仮想直線と前記第2の仮想直線のいずれかが、長尺状の基材部の長手方向と平行であることがさらに好ましい。前記第1の仮想直線が、前記基材部の長手方向と平行であること特に好ましい。
また、前記基材部の幅方向における第1の突起の最大径は、第1の間隔の1/2以上で
あることがさらに好ましい。
本発明は、集電体と、その集電体に担持された、ケイ素元素を含む材料を含む活物質層と、を有し、集電体が、平坦面を有する基材部と、平坦面から突出した複数の第1突起と、第1突起の頂部から突出した複数の第2突起と、を有し、活物質層が、内部に空隙を有し、第1突起の頂部と接合する複数の柱状粒子を含む電極に関する。本発明は、更に、上記の電極と、その対極と、電解質とを含む電池に関する。
活物質層は、複数の柱状粒子を含むことが好ましい。
柱状粒子は、集電体の法線方向に対して傾斜していることが好ましい。
柱状粒子は、集電体の法線方向に対して傾斜した複数の粒層の積層体を含むことが好ましい。
柱状粒子は、第1突起の頂部と接合していることが好ましい。
活物質層はケイ素元素を含む材料を含むことが好ましい。前記ケイ素元素を含む材料は、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、およびケイ素と窒素とを含む化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記活物質層において柱状粒子間に空隙が存在することが好ましい。
上述の柱状粒子は、その内部に空隙を有する。このとき、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は1〜7μmであることが好ましい。前記空隙は、集電体に設けられた突起と柱状粒子との界面に存在することが好ましい。活物質層の空隙率は、10%以上、70%未満であることが好ましい。
電極用集電体の製造方法は、(i)平坦面を有する基材部(base portion)と、平坦面から突出した第1突起と、を有するシート状の基材(substrate)を準備する工程と、(ii)第1突起の頂部に、第2突起を形成する工程と、を有する。
シート状の基材を準備する工程(i)は、例えば、シート状の材料の表面に、規則的なパターンの開口を有するレジストからなるマスクを形成し、次に、シート状の材料の表面にめっきを行う工程を含む。または、それぞれ規則的なパターンで凹部が配置された一対のローラの間にシート状の材料を通過させる工程を含む。
第2突起を形成する工程(ii)は、例えば、限界電流密度以上の第1電流密度でめっきを行う工程(a1)と、限界電流密度以下の第2電流密度(第1電流密度>第2電流密度)でめっきを行う工程(b1)とを有する。
工程(a1)は、10〜30g/Lの濃度で銅イオンおよび50〜150g/Lの濃度で硫酸を含む第1めっき液中で、液温25±5℃、電流密度8〜30A/dm2で、陰極電解を行うことにより、第1突起の頂部に粒状析出物を形成する工程を含むことが好ましい。
工程(b1)は、45〜100g/Lの濃度で銅イオンおよび50〜150g/Lの濃度で硫酸を含む第2めっき液中で、液温50±5℃、電流密度1〜8A/dm2で、陰極
電解を行うことにより、粒状析出物の表面に被膜を形成する工程を含むことが好ましい。
第2突起を形成する工程(ii)は、第1の定電位でめっきを行う工程(a2)と、第2の定電位(第2の定電位>第1の定電位)でめっきを行う工程(b2)とを有してもよい。このとき、工程(b2)において、工程(a2)で用いた後のめっき液を用いてもよい。
工程(a2)は、45〜100g/Lの濃度で銅イオンおよび50〜150g/Lの濃度で硫酸を含むめっき液中で、液温50±5℃、電位−2000〜−1700mV(vs.Cu)で、陰極定電位電解を行うことにより、第1突起の頂部に粒状析出物を形成する工程を含むことが好ましい。
工程(b2)は、工程(a)で用いた後のめっき液中で、液温50±5℃、電位−750〜−650mV(vs.Cu)で、陰極定電位電解を行うことにより、粒状析出物の表面に被膜を形成する工程を含むことが好ましい。
他の電極用集電体の製造方法は、(ア)表面粗さRz2が0.9〜9μm、もしくは1.5〜7μmであるシート状の材料を準備する工程と、(イ)前記シート状の材料の表面の凸部よりも大きな径を有する凹部が配列されたローラで、シート状の材料をプレスすることにより、凸部を頂部に有する突起と、平坦面とを形成する工程と、を有する。
電極の製造方法は、(ア)表面粗さRz2が0.9〜9μm、もしくは1.5〜7μmであるシート状の材料を準備する工程と、(イ)前記シート状の材料の表面の凸部よりも大きな径を有する凹部が配列されたローラで、シート状の材料をプレスすることにより、凸部を頂部に有する突起と、平坦面とを形成する工程と、(ウ)前記突起の頂部に、集電体の法線方向に対して傾斜した柱状粒子を成長させる工程と、を有する。
第2突起を形成する工程(ii)は、ブラスト法でも行うことができる。すなわち、第2突起を形成する工程(ii)は、微粉末を、所定のエア圧力(例えば0.1〜1MPa)で基材の表面に衝突させる工程を含むことができる。
ブラスト法としては、例えばウエットブラスト法が好ましい。ウエットブラスト法は、微粉末と水とを、所定のエア圧力で基材の表面に衝突させる工程を含む。
ブラスト法の処理速度は、例えば0.1〜10m/分が好適である。この場合、例えば基材を0.1〜10m/分の速度で移動させながら、固定された噴出口から基材に微粉末を衝突させる。
第2突起を形成する工程(ii)は、基材をエッチング液と接触させる工程を含むことができる。この工程は、例えば基材をエッチング液に浸す工程、または、基材にエッチング液をスプレーする工程を含む。ここで、エッチング液は、二価の銅イオンを含み、基材は、銅または銅合金を含むことが好ましい。
上述の集電体を用いることにより、活物質と集電体との接合面積が大きくなる。よって、活物質と集電体との接合が堅牢となり、Li吸蔵時において、活物質の膨張応力による活物質の集電体からの剥がれ、が抑制される。よって、本発明の電極を用いることにより、高容量で、サイクル特性に優れた、信頼性の高い電池が得られる。本発明は、特に、高容量活物質(例えばSi元素を含む材料(Si系材料)およびSn元素を含む材料(Sn系材料))を用いる場合に有効である。
さらに、活物質層が複数の柱状粒子を含み、前記柱状粒子の内部に空隙が設けられることにより、活物質の膨張および収縮によって生じる応力が十分に緩和される。このため、負極に変形を抑制することができる。よって、充放電時の体積変化が大きい活物質を用いた場合でも、サイクル特性により優れた電池用電極を提供することができる。さらには、前記空隙は、粒状粒子と集電体の突起との界面に存在する場合には、集電体と活物質との界面での応力をより十分に緩和することが可能となり、活物質の集電体からの剥がれをさらに抑制することが可能となる。よって、サイクル特性をさらに向上することが可能となる。
従来の集電体の平坦面に垂直な断面を示す概略図である。 本発明の集電体の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の集電体の一例の平坦面に垂直な断面を示す概略図である。 集電体の平坦面に垂直な断面における第2突起の形状を例示する概略図である。 集電体の平坦面に垂直な断面における第2突起の形状を例示する概略図である。 集電体の平坦面に垂直な断面における第2突起の形状を例示する概略図である。 本発明の集電体の製造工程を示すフロー図である。 本発明の集電体の製造工程の一実施形態を示す概略図である。 本発明の集電体の製造工程の他の実施形態を示す概略図である。 本発明の集電体の製造工程の更に他の実施形態を示す概略図である。 本発明の電極の一例の法線方向に平行な断面を示す概略図である。 本発明の電極の別の例の法線方向に平行な断面を示す概略図である。 第1突起上への柱状粒子の形成方法を説明するための概略図である。 集電体に活物質を担持させる蒸着装置の一例を示す概略図である。 本発明の電極のさらに別の例の法線方向に平行な断面を示す概略図である。 図12に示されるような柱状粒子の形成方法を説明するための概略図である。 集電体に活物質を担持させる蒸着装置の別の例を示す概略図である。 第1突起の配置パターンの一例を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る捲回型リチウム二次電池の一部を展開した断面斜視図である。 本発明の別の実施形態に係るコイン型リチウム二次電池を概略的に示す縦断面図である。 本発明のさらに別の実施形態に係る積層型リチウム二次電池を概略的に示す縦断面図である。 本発明の集電体のさらに別の例の法線方向に平行な断面を示す概略図である。 第1突起頂部の粗化率を測定するときの範囲を説明するための電子顕微鏡写真である。 実施例1−1に係る第1突起を形成した基材の上面からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−1に係る第1突起を形成した基材の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 第1突起の各寸法を説明するための概略図である。 実施例1−1に係る集電体の上面からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−1に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−1に係る負極板の断面を示す電子顕微鏡写真である。 実施例1−2に係る第1突起を形成した基材の上面からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−2に係る第1突起を形成した基材の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−2に係る集電体の上面からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−2に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−3に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−4に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−5に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−6に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−7に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−7に係る負極板の断面を示す電子顕微鏡写真である。 実施例1−8に係る集電体の上面からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−8に係る集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。 実施例1−9に係る集電体の上面からの電子顕微鏡写真である。 実施例2−1で作製した負極の断面の電子顕微鏡写真(a)および比較例2−1で作製した負極の断面の電子顕微鏡写(b)である。 実施例2−2で作製した負極の断面の電子顕微鏡写真(a)、実施例2−3で作製した負極の断面の電子顕微鏡写真(b)、実施例2−4で作製した負極の断面の電子顕微鏡写真(c)、実施例2−5で作成した負極の断面の電子顕微鏡写真(d)および比較例2−2で作製した負極の断面の電子顕微鏡写真(e)である。 粗化率と50サイクル後の容量劣化率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の電極用集電体は、平坦面を有する基材部と、平坦面から突出した複数の第1突起と、第1突起の頂部から突出した複数の第2突起と、を有する。基材部と第1突起とは、一体となっている。
基材部と第1突起とは、例えば、一枚のシート状の材料(例えば金属シート)を変形させることにより、同時に形成される。また、基材部となるシート状の材料の表面に、金属を堆積させることにより、堆積した金属からなる第1突起を形成してもよい。
第2突起は、どのような方法で形成してもよいが、例えば、ブラスト法、電着法、めっき法、エッチング法などで形成することができる。
基材部と第1突起とを、一枚の金属シートを変形させて同時に形成する場合、第1突起は、例えば、規則的なパターンで配列された凹部を表面に有するローラで、金属シートをプレスすることにより得ることができる。
また、基材部となる金属シートの表面に、金属を堆積させて第1突起を形成する場合、第1突起は、レジスト法、めっき法などにより形成することができる。
第1突起の形状は、特に限定されないが、例えば柱状(円柱状や角柱状)である。また、第1突起の横断面の形状は、特に限定されないが、矩形、多角形、円形、楕円形などであってもよい。第1突起の径Dは、第1突起の部位によって変化していてもよい。第1突起の頂部は、平坦でもよく、凹凸を有してもよく、曲面を有してもよい。第1突起の頂部は、活物質層を形成する柱状粒子の成長開始点となる。
第2突起の高さhおよび径dは、第1突起の高さHおよび径Dよりも小さいことが好ましい。第1突起よりも高さと径の小さな第2突起は、第1突起と活物質との密着性を向上させる働きを有する。よって、活物質が膨張と収縮とを繰り返す際に、集電体からの活物質の剥離が抑制される。
ここで、第1突起の高さHとは、基材部の平坦面から第1突起の頂部までの鉛直距離であり、第2突起の高さhとは、第1突起の頂部から第2突起の頂部までの鉛直距離である。なお、頂部が平坦でない場合には、基材部の平坦面から最も高い点が頂部となる。
なお、第2突起を、ブラスト法またはエッチング法により第1突起の一部を除去して形成する場合、ブラスト法またはエッチング法を行う前の第1突起の頂部が、第2突起の頂部に相当し、除去跡の最も低い点が第1突起の頂部に相当する。
第1突起の径Dとは、基材部の平坦面と平行な、第1突起の1/2高さにおける最大径であり、第2突起の径dとは、基材部の平坦面と平行な、第2突起の1/2高さにおける最大径である。なお、1/2高さとは、基材部の平坦面から第1突起の頂部までの鉛直距離、または、第1突起の頂部から第2突起の頂部までの鉛直距離の中間点である。
図2Aは、本発明の集電体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2Bは、本発明の集電体の一例の平坦面に垂直な断面である。図2Aおよび図2Bにおいて、集電体20は、平坦面21aを有する基材部21と、平坦面21aから突出した複数の第1突起22と、第1突起22の頂部22aから突出した複数の第2突起23とを有する。第1突起22は、基材部21上に規則的なパターンで配置されている。1つの第1突起22の頂部22aには、第1突起よりも高さおよび径の小さな複数の第2突起23が形成されている。
第1突起の高さHは、30μm以下であればよく、3〜20μmが好適であり、3〜15μmがさらに好適であり、6〜12μmが特に好適である。第1突起の高さが3μm以上であれば、陰影効果(第1突起で遮蔽された集電体部位に活物質が蒸着されない現象)を利用して、活物質層に十分な空隙を形成することが容易となる。第1突起の高さを20μm以下とすることにより、電極において集電体が占める体積割合を小さくできるため、高エネルギー密度の電極を容易に得ることができる。また、高さが3〜20μmであれば、第1突起の強度を大きく維持できる。更に、高さが3〜20μmの第1突起は形成が容易である。
第1突起の径(最大幅)Dは、2〜200μmが好適であり、50μm以下が更に好適であり、1〜35μmが特に好適である。第1突起の径が2μm以上であれば、充放電時に第1突起の変形を抑制できるため好ましい。また、第1突起の径が200μm以下であれば、充放電時の極板変形をより効率的に抑制できるため好ましい。
第1突起は、規則的なパターンで配置されていることが好ましい。例えば、以下でも説明するように、複数の第1突起は、基材部の平坦面内で、互いに平行でかつ第1の間隔S1で配置された複数の第1の仮想直線と、前記平坦面内で、第1の仮想直線と垂直で第1の間隔S1より小さい第2の間隔S2で配置された複数の第2の仮想直線との交点上、および隣接する2つの第1の仮想直線と隣接する2つの第2の仮想直線とによって構成される矩形の中心上に配置することができる。この場合、第1の仮想直線と第2の仮想直線との所定の交点上に配置された第1の突起と、前記交点を含む上記矩形の中心上に配置され、前記交点上に配置された第1突起と最も近い別の第1突起との間隔(ピッチ)Sは、3〜100μmであることが好ましく、10〜100μmであることが更に好ましく、20〜80μmであることがより更に好ましく、40〜80μmであることが特に好ましい。ここで、ピッチとは、第1突起の中心間距離であり、第1突起の中心とは、第1突起の最大径の中心点である。
集電体の表面粗さについて説明する。本発明において、表面粗さは十点平均粗さRzおよび算術平均粗さRaのいずれかを示している。
十点平均粗さRzおよび算術平均粗さRaは、JIS B 0601−1994に準拠して求めることができる。
第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は、0.9〜9μmが好ましく、1.5〜7μmがよりさらに好ましい。Rz2を0.9μm以上とすることで、活物質と第1突起の頂部との接合強度を大きくすることができる。Rz2を9μm以下とすることで、電極において集電体が占める体積割合を小さくできるため、高エネルギー密度の電極を容易に得ることができる。
第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRaは、0.3〜5μmが好適である。Raを0.3μm以上とすることで、活物質と第1突起の頂部との接合強度をより大きくすることができる。Raを5μm以下とすることで、電極において集電体が占める体積割合を小さくできるため、高エネルギー密度の電極を容易に得ることができる。
第2突起の径dは、0.3〜10μmが好適であり、0.5〜5μmがさらに好適である。径dが0.3μm以上であることで、活物質と集電体との密着強度をより大きくすることができる。一方、径dが10μm以下であることで、充放電時に、集電体からの活物質層の剥離を、より効率的に抑制することができる。
第2突起の平均突起間隔sは、0.5〜6μmであることが好適である。第2突起の平均突起間隔sとは、隣接する第2突起の中心間距離であり、第2突起の中心とは、第2突起の最大径の中心点である。ここで、平均突起間隔sは、10組の第2突起間の間隔を測定し、それらを平均して求められる。
第2突起の高さhに対する第1突起の高さHの比:H/hは、1.3〜10が好適であり、2〜10が更に好適である。H/hが大きすぎると、活物質と第1突起の頂部との接合強度を十分に高めることが困難になる場合がある。H/hが小さすぎると、第2突起の形成に長時間を要する場合がある。
第2突起の径dに対する第1突起の径Dの比:D/dは、1.3〜50が好適であり、2〜20が更に好適である。D/dを1.3以上とすることで、第1突起の頂部に複数の第2突起を配置することが容易となる。よって、活物質と第2突起との接合点が多くなり、活物質と集電体との接合強度を大きくすることが容易となる。D/dが小さすぎると、第1突起の頂部に複数の第2突起を配置することが困難になる場合がある。D/dが大きすぎると、活物質と第1突起の頂部との接合強度を十分に大きくできない場合がある。
第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は、基材部の平坦面の表面粗さRz0の1.3倍以上が好適であり、5倍以上がより好適であり、10倍以上が更に好適である。Rz2をRz0の1.3倍以上とすることで、活物質と第1突起の頂部との接合強度を大きくすることができるとともに、電解液の注入時に、活物質層内での気泡発生を低減できる。Rz0がRz2に近くなると、基材部に多くのガスが吸着するため、電解液が速やかに電極全体の表面を覆うことができない場合がある。よって、注液に時間がかかりやすい。
第2突起の最大径は、第2突起の根元の径よりも大きいことが好ましい。図3A〜Cは、集電体の平坦面に垂直な断面における第2突起の形状を例示する概略図である。図3Aの第2突起33aは、逆円錐台形状である。この場合、基材部31上の第1突起32と第2突起33aとの接合部(第2突起33aの根元)では径が最小となり、第2突起33aの頂部では径が最大となる。図3Bの第2突起33bは、樽型である。また、図3Cの第2突起33cは、略球状である。なお、第2突起の形状は、これらに限定されない。
第2突起の最大径が第2突起の根元の径よりも大きいことにより、第2突起が活物質に食い込んだ状態となり、活物質と集電体との接合界面および界面近傍における機械強度が大幅に向上する。最大径が根元の径よりも大きい第2突起を形成する方法としては、例えば銅粒子などを用いる電着法もしくはめっき法が有効である。
第2突起は、複数の粒状析出物を含んでもよい。このとき、粒状析出物が集電体の法線方向に複数層形成されていてもよい。粒状析出物が集電体の法線方向に複数層形成されていることで、表面粗さが大きくなるため好ましい。
第2突起は、第1突起の頂部だけでなく、側面部ならびに第1突起間の平坦面に形成されていてもよい。側面部や第1突起間の平坦面に第2突起が形成されることで、活物質と集電体との密着性はより強固なものとなる。
第2突起を頂部に有する第1突起は、必ずしも集電体の全面にわたって配置されている必要はない。第2突起を頂部に有する第1突起の配置は、電池設計や工程上の都合に依存する。よって、第2突起を頂部に有する第1突起は、集電体の一部だけに配置されていてもよい。
基材部、第1突起および第2突起は、同じ材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。ただし、基材部、第1突起および第2突起は、いずれも、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼などの金属で形成されていることが好ましい。例えば、基材部が銅を含む場合、基材部としては、圧延銅箔、圧延銅合金箔、電解銅箔、電解銅合金箔等を用いることができる。なかでも、銅合金箔を用いることが好ましい。また、例えば、基材部には、シート状の金属箔を用い、第1突起は金属箔の一部を変形させて形成することが好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、例えば、1〜50μmが一般的である。なかでも、電極強度を維持するとともに電極の体積エネルギー密度を確保する観点から、集電体の厚さは10〜50μmが好ましく、15〜40μmが特に好ましい。また、取り扱いの容易性の観点からも、このような厚さの集電体が好ましい。ここで、集電体の厚さとは、集電体の両面に突起が設けられている場合、集電体の一方の面の第2突起の頂部から他方の面の第2突起の頂部までの距離である。集電体の片面にのみ突起を含む場合には、集電体の一方の面に設けられた第2突起の頂部から、集電体の他方の面までの距離である。
なお、上記では、作製後の集電体、つまり活物質層が形成される集電体について説明している。例えば、以下で説明するように、第2突起をめっき法で作製した場合、第2突起を薄膜で固定化した後の集電体の各種寸法が、上記で説明した範囲内に入ればよい。
次に、本発明の電極用集電体の製造方法を例示するが、製造方法は以下に限定されない。本発明の電極用集電体は、例えば以下の方法で作製することが可能である。以下、図4および図5を参照しながら説明する。図4は、本発明の集電体の製造工程を示すフローチャートである。図5は、本発明の集電体の製造工程の一例を示す概略図である。
第1工程(第1突起の形成)
平坦面を有する基材部と、平坦面から突出した第1突起と、を有するシート状の基材を形成する。出発材料には、図5(a)に示すような、シート状の材料201を用いる。第1突起を形成する方法としては、例えばめっき法とロールプレス法が挙げられる。
めっき法では、例えば、シート状の材料201の表面に、規則的なパターンの開口を有するレジストからなるマスクを形成する。次に、シート状の材料201の表面にめっきを行い、第1突起202を形成する。その後、レジストを除去すると、図5(b)に示すようなシート状の基材200が得られる。シート状の基材200は、平坦面205を有する基材部201’と、平坦面205から突出した第1突起202とを有する。
ここで、めっき法には、電気めっき法と、無電解めっき法とがある。無電解めっき法では、非金属からなるマスク上にも金属被膜が形成される。この金属被膜は、レジストを除去する際の阻害因子となり、レジスト残渣の原因となりやすい。よって、マスク上に金属被膜が形成されない点で、電気めっき法が好ましい。
ロールプレス法では、表面に凹部(もしくは溝)が形成されたローラを用いて、シート状の材料201を機械的に加工し、塑性変形させることにより、第1突起202を形成する。例えば、それぞれ規則的なパターンで凹部が配置された一対のローラの間に、シート状の材料201を通過させる。この場合、基材部201’の両面に第1突起202を設けることができる。
ここで、ロールプレスの線圧は、0.5〜5t/cmが好ましい。0.5t/cm未満の線圧では、シート状の材料201の表面に、形状の明確な第1突起202を形成することが困難になりやすい。一方、線圧が5t/cmより大きくなると、シート状の材料201の破断が発生する場合がある。
シート状の材料201は、例えば、リチウムと電気化学的に反応しない材料からなることが好ましく、銅、ニッケル、鉄もしくはこれらを主成分とする合金が好ましい。なかでも銅または銅合金は、取り扱いが容易であり、低コストである点で好ましい。また、銅または銅合金を用いることにより、銅めっきにより第1突起202または第2突起206を形成することが容易となる。特に電解銅箔、電解銅合金箔、圧延銅箔などを、シート状の材料として、好ましく用いることができる。
銅合金には、例えば析出硬化型合金またはその複合合金を用いることができる。析出硬化型の銅合金に含まれる銅以外の金属としては、亜鉛、スズ、銀、クロム、テルル、チタン、ベリリウム、ジルコニア、鉄、リン、アルミニウム等が挙げられる。これらの金属は、1種のみが単独で銅合金に含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。銅合金に含まれる銅以外の金属の量は、0.01重量%〜10重量%であることが好ましい。
第2工程(第2突起の形成)
次に、第1突起の頂部から突出した第2突起を形成する。第2突起を形成する方法としては、例えば、めっき法、ブラスト法、エッチング法等が挙げられる。
めっき法によって第2突起を形成する場合、第2突起を形成する工程は、2段階に分けて行うことが好ましい。めっき法は特に限定されないが、例えば、陰極定電流電解や、陰極定電位電解が挙げられる。
陰極定電流電解を行う場合について説明する。
第1段階では、図5(c)に示すように、第1突起202の頂部202aに、粒状析出物203を析出させる。金属を効率よく粒状に析出させる観点から、第1段階でのめっきは、限界電流密度付近か、限界電流密度以上の第1電流密度で行うことが好ましい。
限界電流密度は、生産設備的負荷を小さくする観点から、できるだけ低い電流値で達成されることが好ましい。そのためには、めっき液中の金属イオン濃度を低く設定して、濃度分極を促進することが有効である。また、めっき液の液温を低く設定して、金属の析出反応速度を小さくすることが有効である。
ここで、限界電流密度(limiting current density)とは、拡散によるイオンの補給が限界に達し、電圧を上げても電流密度が増加しなくなる電流密度の最大値である。電流密度が限界電流密度を超えると、金属の析出と同時に水素が発生する。
第1段階で、例えば、銅を含む粒状析出物203を形成する場合には、10〜30g/Lの濃度で銅イオンおよび50〜150g/Lの濃度で硫酸を含む第1めっき液中で、液温25±5℃、電流密度8〜30A/dm2(好ましくは9〜25A/dm2)で、陰極電解を行うことが好ましい。
なお、粒状析出物203は、図5(c’)に示すように、第1突起202の側面や基材部201’の表面等、第1突起202の頂部202a以外に形成されていてもよい。
第2段階では、図5(d)に示すように、粒状析出物203の表面に被膜(被覆めっき層)204を形成することにより、粒状析出物203の固定化を行い、第2突起206を完成させる。被膜204は、粒状析出物203同士の接合と、第1突起202と第2突起206との接合とを、補強する役割を果たす。
第2段階では、粒状析出物が生成しないように、限界電流密度以下の第2電流密度でめっきを行う。そのため、第1段階で用いる第1めっき液に比べて、濃度分極が起こりにくいように、高濃度の金属イオンを含む第2めっき液を用いることが好ましい。また、めっき液の液温を高くして、析出反応速度を高めることが好ましい。
第2段階で、例えば、銅を含む被膜204を形成する場合には、45〜100g/Lの濃度で銅イオンおよび50〜150g/Lの濃度で硫酸を含む第2めっき液中で、液温50±5℃、電流密度1〜8A/dm2(好ましくは3〜6A/dm2)で、陰極電解を行うことが好ましい。
なお、被膜204は、粒状析出物203の表面だけでなく、第1突起202の側面や基材部201’の表面にも形成されてもよい。
陰極定電位電解を行う場合について説明する。
第1突起の形状の影響によって、電流分布にばらつきが生じ、第2突起の形状の制御が困難になる場合がある。陰極定電位電解を行うことで、電流分布のばらつきを抑制することができるため、第2突起の形状の制御が容易になる。
陰極定電位電解を行う場合、銅イオンの拡散が律速になることを抑制する観点から、高濃度の銅イオンを含有するめっき液を用いることが好ましい。
第1段階では、図5(c)に示すように、第1突起202の頂部202aに、粒状析出物203を析出させる。第2突起の粒径を制御し、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2の制御性を向上させる観点から、第1段階でのめっきは、以下に示す第1の定電位で行うことが好ましい。
第1段階で、例えば、銅を含む粒状析出物203を形成する場合には、45〜100g/Lの濃度で銅イオンおよび50〜150g/Lの濃度で硫酸を含むめっき液中で、液温50±5℃、電位−2000〜−1700mV(vs.Cu)で、陰極定電位電解を行うことが好ましい。なお(vs.Cu)は、銅に対する電位を表す。
なお、粒状析出物203は、図5(c’)に示すように、第1突起202の側面や基材部201’の表面等、第1突起202の頂部202a以外に形成されていてもよい。
第2段階では、図5(d)に示すように、粒状析出物203の表面に被膜(被覆めっき層)204を形成することにより、粒状析出物203の固定化を行い、第2突起206を完成させる。被膜204は、粒状析出物203同士の接合と、第1突起202と第2突起206との接合とを、補強する役割を果たす。
第2段階では、粒状析出物203同士の接合と、第1突起202と第2突起206との接合とを、良好に補強することができる被膜204を形成する観点から、(第2の定電位>第1の定電位)となる第2の定電位でめっきを行うことが好ましい。陰極定電位電解を用いる場合、設定電位を制御することによって、物質移動速度、すなわち銅イオンの移動量を小さく抑えることが、陰極定電流電解に比べて容易である。そのため、陰極定電位電解では、第1段階で用いた後のめっき液で第2段階のめっきを行うことができる。すなわち、1種類のめっき槽のみで第1段階と第2段階とを行うことができるため、製造コストを低減させることができる。
第2段階で、例えば、銅を含む被膜を含む被膜204を形成する場合には、第1段階で用いた後のめっき液中で、液温50±5℃、電位−750〜−650mV(vs.Cu)で、陰極定電位電解を行うことが好ましい。
なお、被膜204は、粒状析出物203の表面だけでなく、第1突起202の側面や基材部201’の表面にも形成されてもよい。
第2工程の第1段階および第2段階で用いるめっき液に含まれる銅イオン源としては、例えば、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅あるいはこれらの水和物を用いることができる。ただし、酸性浴を実現するために硫酸を用いる場合には、アニオンを共通化する観点から、硫酸銅もしくはその水和物が好ましく用いられる。硫酸は、塩酸や硝酸に比べて、揮発性が低く、めっき液の組成を変化させにくい点で好ましい。
めっきを行う際の対極となる陽極は、特に限定されない。ただし、陽極の溶解によるめっき液の組成の著しい変化は避けることが望まれる。よって、陽極としては、銅、白金、グラッシーカーボン、不溶性鉛などが好ましく用いられる。
次に、ブラスト法によって第2突起を形成する場合について説明する。
ブラスト法では、微粉末(ブラスト材)を、水や圧縮空気と一緒に所定の圧力で基材の表面に衝突させる。ブラスト材が基材に衝突したときの衝撃力によって、図6(a)に示すような第1突起202の頂部202aに、図6(b)に示すような凹凸(第2突起207)を形成する。
ブラスト法には、例えば圧縮空気とブラスト材とを用い、水を用いない乾式ブラスト法と、圧縮空気と水とブラスト材とを用いるウエットブラスト法等がある。なかでも、表面に凹凸を形成するだけでなく、基材の洗浄(例えば、基材とブラスト材との衝突の際に発生する研磨屑などの除去)にも優れることから、ウエットブラスト法を用いることがより好ましい。
ブラスト材を基材の表面に衝突させる際のエア圧力は、0.1MPa〜1MPa程度であることが好ましい。エア圧力が小さすぎると、基材に凹凸を形成することが困難となる場合がある。一方、エア圧力が大きすぎると、基材を変形させてしまう場合がある。
本発明においては、基材を移動させながら、固定された噴出口からブラスト材を基材に衝突させることが好ましい。基材を移動させる速度(処理速度)は、0.1〜10m/分程度が好適である。移動速度が速すぎると、基材に凹凸を形成することが困難となる場合がある。一方、移動速度が遅すぎると、基材を変形させてしまう場合がある。
ブラスト材の衝突による基材部の変形を抑制する観点から、基材をローラの周面に沿って移動させることが好ましい。また、基材の両面から同時にブラスト材を衝突させることにより、基材部の変形を抑制することができる。
ブラスト材としては、例えばアルミナ粒子、ジルコニア粒子、樹脂粒子などを用いることができる。ブラスト材の平均粒径は、例えば3〜250μmが好ましく、5〜15μmが特に好ましい。ブラスト材の平均粒径が小さすぎると、基材に凹凸を十分に形成できない場合がある。一方、平均粒径が大きすぎると、ブラスト材を基材の表面に衝突させる際、基材部を変形させてしまう場合がある。
次に、エッチング法によって第2突起を形成する場合について説明する。
エッチング法には、基材をエッチング液に浸す工程を含む浸漬法、基材にエッチング液をスプレーする工程を含むスプレー法等が含まれる。なかでもスプレー法は、深さ方向のエッチレートを大きくすることが容易である点で好ましい。この場合、スプレー圧は、例えば0.1〜1.5MPa程度が好適である。
エッチング量は、平均厚さで0.5μm〜3μmであることが好ましい。ここで、エッチング量は、基材の重量変化から求める。具体的には、エッチング前とエッチング後とで基材の重量を測定し、基材の減少量を求める。次に、基材の比重およびエッチング面積で基材の減少量を割ることで、エッチング量(平均厚さ)を求めることができる。
エッチング液としては、例えば過酸化水素と硫酸とを含む水溶液、塩化第二鉄水溶液等を用いることができる。過酸化水素と硫酸とを含む水溶液を用いる場合、過酸化水素の濃度は5〜200mol/Lであることが好ましく、硫酸の濃度は5〜300g/Lであることが好ましい。塩化第二鉄水溶液を用いる場合、塩化第二鉄の濃度は、1〜10重量%であることが好ましい。ただし、基材が銅または銅合金を含む場合には、銅イオン濃度1〜20mol/Lである二価の銅イオンを含む水溶液、例えば、塩化第二銅水溶液が好ましい。エッチング液の温度は、25〜55℃であることが好ましい。
ブラスト法やエッチング法では、図6に示すように、第1突起202の一部を除去することで、第1突起202の頂部202aに凹凸を形成する。このとき凹部の最も低い点が、本発明の集電体の第1突起の頂部となり、凸部の最も高い点が、第2突起207の頂部となる。
第3工程
第3工程は、必要に応じて、集電体の酸化を防止するために行う防錆処理工程である。防錆工程は、一般的な防錆処理工程であればよく、例えばクロメート処理を行う。または、ベンゾトリアゾールもしくはその誘導体等の塗布等を行う。
本発明の電極用集電体は、図7に示すように、最初にシート状の材料201に第2突起208を形成する第1工程を行い、その後、第1突起202を形成する第2工程を行う製造方法を用いてもよい。そのような製造方法について以下に例示する。
第1工程
十点平均高さRz2が0.9〜9μm、好ましくは1.5〜7μmであるシート状の基材201を準備する。シート状の基材201は、例えば、表面に微小な凹凸を有する銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔などの金属箔であればよい。金属箔の表面の微小な凹凸の凸部が第2突起208に相当する。微小な凹凸の形成方法は、特に限定されないが、ブラスト法、電着法、めっき法などが比較的簡便である。微小な凹凸を形成する際の条件(例えばブラスト粒子の大きさ、電着条件など)により、十点平均高さRz2を制御することができる。
電着法もしくはめっき法は、金属箔を所定の電解溶液(めっき液)に浸漬し、金属箔に電圧を印加して金属を析出させる方法である。電解溶液(めっき液)の組成と温度、電解溶液に含まれる添加剤、電流密度などの条件により、金属箔に析出する金属の状態(すなわち十点平均高さRz2)を変化させることができる。
十点平均高さRz2が0.9〜9μmであるシート状の基材は、商業的に入手することも可能である。例えば、古河サーキットフォイル株式会社製のWS箔、STD箔、MP箔(商品名)などを基材に用いることができる。これらの箔の十点平均高さRz2は、例えば1.5〜23μmであるが、この中から適宜、Rz2が0.9〜9μmである基材を選択して使用することも出来る。これらの箔は、例えば、硫酸銅等を溶解した電解溶液中に、筒状の陰極ドラムの一部を沈め、ドラムを囲むように陽極を配置し、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより得ることができる。この際、ドラム上に銅箔を析出させながらドラムを回転させることにより、連続的に電解銅箔を形成することができる。表面粗さを適正に制御するために、得られた電解銅箔の表面に、更に銅粒子を電着させる粗化処理を行うこともできる。
第2工程
次に、第2突起208よりも大きな径を有する凹部が配列されたローラで、第2突起208を有する基材をプレスする。その結果、第2突起208を頂部に有する第1突起202と、平坦面205を有する基材部201’とが形成される。この際、ローラの凹部は、第2突起208を変形させないように、十分な深さを有する。ローラの凹部以外の部分でプレスされた基材の表面は、基材部201’の平坦面205となる。第1突起202の配列パターンは、ローラ表面の凹部の配列パターンに依存する。一対のローラで基材をプレスする場合、一方のローラだけに凹部を配置すれば基材の片面だけに第1突起202を形成することができ、両方のローラに凹部を配置すれば基材の両面に第1突起202を形成することができる。
第2工程で形成される第1突起202の高さは、プレス圧、ローラ表面の凹部の形状、金属箔の機械特性などに依存する。例えば直径20μmの凹部が配列されたローラを用いて、1cmあたり1トンの線圧で、厚さ20μmの銅箔をプレスする場合、高さが5〜10μmの第1突起202を形成することができる。
ローラに設けられる凹部の深さは、第1突起202の高さよりも大きくする必要があり、その深さは第2突起208の高さによって異なる。凹部の深さを十分に大きくすると、第2突起208の頂部は凹部の底面にまで達しない。よって、第2工程を経た後も、第2突起208の形状が維持される。その結果、平坦面を有する基材部201’と、平坦面から突出した第1突起202と、第1突起202の頂部から突出した第2突起208とを有する集電体を得ることができる。
本発明は、上記の電極用集電体と、集電体に担持された活物質と、を有する電極にも関する。活物質層は、複数の柱状粒子を含むことが好ましい。活物質が柱状粒子を形成することで、活物質のリチウムイオン吸蔵時の体積膨張による応力を効果的に緩和できる。よって、電池の不具合が生じにくい。
柱状粒子は、第1突起の頂部と接合していることが好ましい。このような活物質は、気相法(例えば蒸着法、スパッタリング法、CVD法などのドライプロセス)により集電体に担持させることが好ましい。気相法によれば、第1突起の頂部に活物質を堆積させ、柱状に成長させることが容易である。
活物質層の厚さは、作製する電池の性能によって異なるが、概ね3〜100μmの範囲にあることが好ましい。活物質層の厚みは5μm以上であることがさらに好ましい。活物質層の厚さは、50μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることがよりさらに好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。活物質層の厚さが3μm未満になると、電極全体に占める活物質の体積割合が小さくなり、電池のエネルギー密度が小さくなる。特に、活物質層の厚さを5μm以上とすることにより、ある程度のエネルギー密度を確保することができる。よって、例えば、ケイ素元素を含む材料を活物質として用いる場合に、その高容量特性を十分に行かすことができる。活物質層の厚さを100μm以下とすることにより、充放電時に生じる応力を軽減して、活物質層の集電体からの剥離および集電体の変形を抑制することが可能となる。また、活物質層が複数の柱状粒子を含む場合、柱状粒子から集電体への電子伝導の抵抗の増加も抑制することができる。よって、大電流値での充放電に有利となる。
活物質層の厚さは、例えば以下のように測定することができる。
まず、活物質層形成後の電極全体の厚さを測定する。活物質層が集電体の片面だけに担持されている場合、電極全体の厚さから集電体の厚さを差し引くことで、活物質層の厚さが得られる。活物質層が集電体の両面に担持されている場合、電極全体の厚さから集電体の厚さを差し引くことで、両面の活物質層の合計厚さが得られる。なお、活物質層の表面が凹凸を有する場合、頂部を基準にして厚さを求める。
図8に、本発明の電極の一例を示す。図8は、電極40の法線方向に平行な断面である。電極40は、集電体20と、集電体20に担持された活物質層とを含む。活物質層は、複数の柱状粒子45を含む。柱状粒子45は、集電体20の第1突起22の頂部と接合しており、第2突起23は柱状粒子45の根元に食い込んでいる。なお、集電体20の他方の面(図8の下側)にも第1突起と第2突起が形成され、活物質が担持されていてもよい。
活物質は、単結晶でもよく、多結晶でもよく、微結晶でもよく、アモルファスでもよい。ここで、多結晶の活物質は複数の結晶子(結晶粒:crystallite)を含む。微結晶の活物質はサイズが50nm以下の結晶子を含む。
同様に、活物質が柱状粒子である場合、柱状粒子の形態も、特に限定されない。柱状粒子は、例えば、単結晶からなる粒子であってもよいし、複数の結晶子(crystallite)を含む多結晶粒子であってもよい。結晶子は、大きさが100nm以下の微結晶でもよい。あるいは、柱状粒子は、アモルファス(非晶質)であってもよい。この場合、粒子全体が、均一なアモルファス状態になっていることが好ましい。
活物質が非晶質であること、もしくは、活物質が微結晶であることは、X線回折(XRD)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて確認することができる。結晶子の粒径は、活物質のXRD測定で得られる回折パターンにおいて、2θ=15〜40°の範囲で最も強度の大きなピークの半価幅から、Scherrerの式によって算出される。回折パターンにおいて、2θ=15〜40°の範囲にシャープなピークが見られず、ブロードなハローパターンだけが観測される場合、活物質は実質的に非晶質であると判断できる。
高容量とすることができるため、活物質は、ケイ素元素(Si)およびスズ元素(Sn)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、活物質は、ケイ素元素を含む材料であることが特に好ましい。ケイ素元素を含む材料としては、例えば、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、ケイ素と窒素とを含む化合物を挙げることができる。ケイ素と酸素とを含む化合物は、更に窒素を含んでもよく、ケイ素と窒素とを含む化合物は、更に酸素を含んでもよい。活物質は、前記材料の一種のみを含んでいてもよいし、2種以上の材料を含んでいてもよい。このように、高容量で、充放電時の体積変化の大きい材料を活物質として用いる場合に、本発明は特に有効である。
ケイ素と酸素とを含む化合物は、ケイ素酸化物であることが好ましく、特に、一般式:SiOx(ただし、0<x<2)で表される組成を有するケイ素酸化物が好ましい。このようなケイ素酸化物は、ケイ素に対する酸素のモル比xを調整することにより、容量およびヤング率等の物性値を容易に制御することができる。ケイ素に対する酸素のモル比xは、0.01≦x≦1であることが更に好ましい。活物質は、ケイ素と酸素との比率が異なる複数のケイ素酸化物の複合物を含んでもよい。
柱状粒子45の径は特に限定されない。柱状粒子45の径は、応力に由来する柱状粒子の割れを抑制する観点から、50μm以下であることが好ましく、1〜20μmであることが更に好ましい。なお、柱状粒子の径は、例えば任意の2〜10個の柱状粒子の1/2高さにおける直径の平均値として求められる。直径とは、集電体の表面に平行な最大幅である。
図8に示されるように、柱状粒子45の成長方向Jは、集電体の法線方向Gに対して傾斜していてもよい。柱状粒子の成長方向を、集電体の法線方向に対して傾斜させることで、正極活物質に対向する集電体の露出部の割合を低下させることができる。この場合、例えば、充放電効率の向上などの効果が得られる。
集電体上の突起形状及び突起高さにもよるが、柱状粒子の成長方向の集電体の法線に対する傾斜角αは、10〜70°であることが好ましい。傾斜角が低い場合、集電体の平坦部から成長する活物質が増加するために、傾斜角αは10°以上であることが好ましい。また、傾斜角が大きくなると、成膜速度が低減し、生産効率が低下するために、傾斜角αは70°以下であることが好ましい。
なお、集電体の法線方向とは、集電体の表面に垂直な方向である。集電体の表面は、微視的に見れば凹凸を有するが、巨視的に見れば平坦であるため、集電体の表面およびその法線方向は一義的に定められる。
あるいは、柱状粒子は、図9に示されるように、その平均的な成長方向が、集電体の法線方向とほぼ一致していてもよい。図9に、本発明の別の実施形態に係る電極を示す。図9において、図8と同じ構成要素には、同じ番号を付している。なお、図9において、第2突起は省略している。
図9の柱状粒子50は、複数の粒層から構成される。つまり、柱状粒子50は、屈曲部で分割される第1の部分51、第2の部分52、第3の部分53、および第4の部分54を有する。
なお、柱状粒子の平均的な成長方向が、集電体の法線方向とほぼ一致していれば、例えば、所定の柱状粒子に含まれる部分51の成長方向は、他の柱状粒子に含まれる部分51の成長方向と同じであってもよいし、異なってもよい。このことは、他の部分においても同様である。柱状粒子に含まれる部分の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
このように、柱状粒子が、集電体の法線方向に対して傾斜した複数の粒層の積層体を含むことで、活物質のリチウムイオン吸蔵時の体積膨張による応力を、更に効果的に緩和できる。
集電体の両面に負極活物質層を形成した場合、集電体の両面で、柱状粒子は、屈曲部を有していても良いし、集電体の片面に担持される柱状粒子が、屈曲部を有していても良い。
活物質層においては、図8および9に示されるように、柱状粒子の間にも、空隙が存在することが好ましい。つまり、柱状粒子同士は接触していないことが好ましい。電池の充放電反応においては、活物質の膨張および収縮によって、柱状粒子間での衝突が生じ、応力が増大する。そこで、柱状粒子間に空隙を設けることにより、柱状粒子同士の接触を抑制することが好ましい。これにより、活物質の膨張応力を軽減することが可能となる。柱状粒子のサイズにもよるが、隣接する柱状粒子の間隔は、1μm〜30μmであることが好ましい。活物質の膨張に伴い柱状粒子が接触することにより集電体との界面に作用する応力が大きくなる。この応力を緩和するためには、1μm以上の空隙が形成されていることが好ましい。また、空隙が大きくなると、極板としての容量密度が低下するために、柱状粒子の間隔は30μm以下であることが好ましい。ここで、柱状粒子の間隔とは、柱状粒子の1/2高さにおける柱状粒子間の平均距離である。柱状粒子の1/2高さとは、第1突起の頂部から柱状粒子の頂部までの鉛直距離の平均値である。
非水電解質と柱状粒子との接触面積を十分に確保するとともに、柱状粒子の膨張による応力を十分に緩和する観点から、負極活物質層の空隙率は、10%〜70%であることが望ましく、30%〜60%であることがさらに望ましい。負極活物質層の空隙率が10%以上であれば、柱状粒子の膨張および収縮による応力を緩和するのに十分と考えられる。よって、粒状粒子と接触する非水電解質の量も十分に確保できる。負極活物質層の空隙率が70%を超えると、負極のエネルギー密度が小さくなる。なお、負極活物質層の空隙率が70%より大きい場合でも、電池の用途によっては、好適に負極として用いることができる。
次に、第1突起の頂部に、図8に示されるような、集電体の法線方向に対して傾斜した柱状粒子を成長させる工程の例について、図10および図11を参照しながら説明する。図10は、蒸着法で電極を作製する際の、集電体上の第1突起に対する蒸着粒子の入射方向を示す概略図である。図11は、集電体に活物質を担持させる蒸着装置の一例を示す概略図である。
図10の集電体60は、規則的なパターンで形成された第1突起61を有する。第1突起61の高さはKであり、隣接する第1突起61間の距離はLである。
図10において、活物質は、集電体の法線方向から角度θだけ傾いた方向から、蒸着されている。このとき、高さKの第1突起61により、集電体上の平坦部には、h×tanθの長さだけ、陰影効果により蒸着粒子が成長しない部分が生じる。よって、L<h×tanθとなるように、第1突起61の間隔および高さ、ならびに蒸着粒子の入射角度θを制御することで、第1突起61上に柱状粒子を成長させるとともに、柱状粒子間に空隙を形成することが可能となる。
図8に示されるような電極は、例えば、図11に示される蒸着装置70を用いて作製することができる。
蒸着装置70は、チャンバ72を有する。チャンバ72の内部は、排気ポンプ71により排気されている。チャンバ72の内部には、巻き出しロール78、巻き取りロール73、搬送ローラ75a〜75f、第1キャン76および第2キャン77が設置されている。
長尺の集電体702は、巻き出しロール78から捲き出され、搬送ローラ75aを通過して、円筒状の第1キャン76の周面に沿って走行する。その後、集電体702は、搬送ローラ75b〜75eを通過して、裏返された状態で円筒状の第2キャン77の周面に沿って走行する。最後に、搬送ローラ75fを通過して、巻き取りロール73に巻き取られる。
第1キャン76および第2キャン77の下方空間は、中央隔離板70aにより2つの領域に分割されており、各領域には活物質源を収容した坩堝79が設置されている。活物質源は、特に限定されないが、例えばケイ素、スズなどが用いられる。活物質源は、電子ビームなどの加熱装置(図示せず)により加熱され、蒸発する。
蒸発した活物質源は、遮蔽板70bの開口部を通過して、第1キャン76の周面および第2キャン77の周面に入射される。その際、活物質源は、集電体702の法線方向に対して傾斜した方向から入射されるため、第1突起で遮蔽された集電体部位には活物質は堆積しない。第1キャン76の周面では、集電体の一方の面に活物質が堆積し、第2キャン77の周面では、集電体の他方の面に活物質が堆積する。
なお、活物質を堆積させた集電体を巻き取りロール73から巻き出し、巻き出しロール78に巻き取りながら、再度活物質源を蒸発させることで、図9に示されるような屈曲部を有する活物質の柱状粒子を形成することもできる。例えば、この操作をn回繰り返すことで、複数の粒層の積層体からなり、屈曲部を複数箇所有し、かつ見かけ上集電体の法線方向に対して平行に成長した柱状粒子を形成することができる。複数の屈曲部を有する柱状粒子を形成することで、活物質の膨張および収縮に伴う応力を、効率よく緩和することができる。
活物質としてケイ素と酸素とを含む化合物、ケイ素と窒素とを含む化合物、スズと酸素とを含む化合物、スズと窒素とを含む化合物などを堆積させる場合、酸素ガスや窒素ガスをガス導入管701から導入する。これらのガスを含む雰囲気下で、ケイ素やスズを蒸発させることにより、ケイ素やスズの酸化物もしくは窒化物が得られる。
活物質層が、前記突起に担持された柱状粒子を含む場合、前記柱状粒子は、その内部に、空隙を有することが好ましい。図12に、内部に空隙を有する柱状粒子の一例の縦断面図を示す。
図12の電極80は、集電体81と、集電体81に担持された活物質層82とを含む。集電体81は、平坦面84を有する基材部83と、平坦面84から突出した第1突起85と、第1突起85の表面から突出した第2突起(図示せず)を含む。
活物質層82は、複数の柱状粒子86を含み、柱状粒子86は、第1突起85に担持されている。柱状粒子86は、内部に空隙87を有する。
特に充放電時の体積変化が大きい材料を負極活物質として用いた場合、集電体に非常に大きな応力がかかる。活物質層を構成する柱状粒子がその内部に空隙を有することにより、負極活物質の膨張および収縮により生じる大きな応力を十分に緩和することができる。よって、充放電を繰り返した場合でも、負極の変形や、負極活物質の集電体からの剥がれを防止することができる。このため、充放電時の体積変化が大きい負極活物質を用いた場合でも、サイクル特性を向上させることができる。
柱状粒子に設けられる空隙87は、柱状粒子と突起との界面に存在することが好ましい。
充放電によって生じる膨張応力は、集電体と活物質との界面において非常に大きくなる。そのため、集電体と活物質との界面に空隙を設けることで、膨張応力を更に軽減し、極板の変形および活物質の集電体からの剥がれを更に抑制することができる。
活物質層82においても、図12に示されるように、柱状粒子の間にも空隙88が存在することが好ましい。つまり、柱状粒子同士が接触していないことが好ましい。本実施形態においても、隣接する柱状粒子の間隔は、1μm〜30μmであることが好ましい。
柱状粒子86は、図9に示されるように、複数の粒層から構成されてもよい。この場合、柱状粒子内の空隙は、集電体81と柱状粒子の第1の部分との界面に形成されているとともに、例えば柱状粒子の成長方向と平行または略平行に形成されていてもよい。
内部に空隙を有する柱状粒子から構成される活物質層82の空隙率は、10%以上70%未満であることが好ましく、30〜60%であることが更に好ましい。活物質層82の空隙率が10%以上であれば、負極活物質の膨張および収縮に伴う応力を十分に緩和することができる。活物質層82の空隙率が70%以上となると、活物質層82に占める柱状粒子の割合が低くなるため、従来と同じ程度の容量を得るためには、活物質層82の厚さを大きくする必要が生じることがある。このため、電池の容量密度が低下することがある。したがって、活物質層82の空隙率は、上記範囲内に制御することが好ましい。
活物質層82の空隙率は、例えば、基材部上に形成した突起の形状及び突起の高さ、斜方蒸着における活物質入射角度等を制御することにより調節することができる。
活物質層82の空隙率は、例えば、複数の方向からの断面の電子顕微鏡の観察結果から算出することができる。空隙率は、例えば、走査型電子顕微鏡で得られた活物質層の断面の画像を画像処理ソフトに読み込み、空隙部と活物質部の画素数をカウントすることで計算することができる。この方法により得られる空隙率は、柱状粒子内の空隙87および柱状粒子間の空隙88を含む活物質層の空隙率である。なお、この方法によれば、柱状粒子内の空隙率と柱状粒子間の空隙率を、別個に測定することもできる。
または、活物質層82の空隙率は、活物質の真密度に対する、活物質層の見かけの密度の比から求めることもできる。活物質層の見かけの密度は、所定の面積の集電体に担持される活物質層の重量と厚さとから求めることができる。この方法で得られる空隙率は、柱状粒子内の空隙87および柱状粒子間の空隙88を含む活物質層の空隙率である。
あるいは、活物質層の空隙率をより正確に測定したい場合には、ガス吸着法、ポロシメータを用いる水銀圧入法などを用いることもできる。この方法によっても、柱状粒子内の空隙87および柱状粒子間の空隙88を含む活物質層の空隙率が得られる。
空隙87による柱状粒子86内の空隙率は、0.5〜20%であることが好ましく、1〜10%であることが更に好ましい。
活物質層の空隙率のうち柱状粒子内の空隙87が寄与する空隙率は、活物質層の空隙率のうち柱状粒子間の空隙88が寄与する空隙率と比べて非常に小さい。よって、負極活物質層の空隙率のうち柱状粒子間の空隙88のみが寄与する空隙率は、9%〜69%であることが好ましく、20〜60%であることが更に好ましい。
柱状粒子内の空隙率は、例えば、柱状粒子の集電体表面に垂直な面における面内空隙率として規定することができる。面内空隙率は、柱状粒子の縦断面の電子顕微鏡観察の結果から、全体の面積に対する空隙部分の面積比として求めることができる。
断面観察から得られる活物質粒子内の空隙の最大幅は、0.1μm以上であることが好ましい。空隙が小さいと応力緩和空間としての効果が乏しくなる。このため、空隙の最大幅は0.1μm以上であることが好ましい。空隙の最大幅は、活物質粒子の太さにもよるが10μm以下であることが好ましい。活物質粒子内の空隙が大きくなると、活物質の太さが小さくなるために、活物質柱の強度が弱くなる。このため、活物質粒子の空隙は10μm以下であることが好ましい。
柱状粒子内の空隙率の場合と同様に、負極活物質層の空隙率のうち柱状粒子間の空隙88のみが寄与する空隙率は、集電体の表面に垂直な面における空隙88のみからなる空隙率として規定することができる。この場合にも、空隙88のみからなる空隙率は、活物質層の縦断面の電子顕微鏡観察の結果から、全体の面積に対する空隙88の面積比として求めることができる。
活物質層82の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることが更に好ましい。活物質層の厚さが5μm以上であれば、ある程度のエネルギー密度を確保できる。よって、例えば、ケイ素の単体を負極活物質として用いる場合に、その高容量特性を十分に活かすことができる。充放電に伴う活物質の膨張収縮による応力は容量に依存して大きくなるために、活物質の厚さが100μm以下であれば、応力を軽減して活物質の剥離及び集電体の変形を抑制することが可能となる。また、柱状粒子からの電子伝導抵抗の増加も抑制できる。よって、大電流値での充放電に有利である。
活物質層が、前記突起に担持された柱状粒子を含み、柱状粒子が内部に空隙を有する場合、集電体81においても、第1突起85は、上記と同様に、基材部83上に規則的なパターンで配置されていることが好ましい。例えば、複数の第1突起は、基材部の平坦面内で、互いに平行でかつ第1の間隔S1で配置された複数の第1の仮想直線と、前記平坦面内で、第1の仮想直線と垂直で第1の間隔S1より小さい第2の間隔S2で配置された複数の第2の仮想直線との交点上、および隣接する2つの第1の仮想直線と隣接する2つの第2の仮想直線とによって構成される矩形の中心上に配置することができる。
内部に空隙を有する柱状粒子を担持する集電体において、第1の仮想直線と第2の仮想直線との所定の交点上に配置された第1の突起と、前記交点を含む上記矩形の中心上に配置され、前記交点上に配置された第1突起と最も近い別の第1突起との間隔(ピッチ)Sは、10〜100μmであることが好ましく、40〜80μmであることが更に好ましい。ここで、ピッチとは、第1突起の中心間距離である。第1突起の中心とは、第1突起の最大径の中心点である。
集電体81に含まれる第1突起85の高さおよび径は、上記範囲内にあればよいが、第1突起85上に担持された柱状粒子の膨張応力による負極の変形を防止する観点から、第1突起85の径は、50μm以下が好ましく、1〜20μmが更に好ましい。第1突起85の高さは、第1突起85の強度の観点から、30μm以下が好ましく、3μm〜20μmが更に好ましい。
次に、内部に空隙を含む柱状粒子からなる活物質層の製造方法の一例について説明する。
上記のような、活物質粒子内および活物質粒子間に空隙を有する負極活物質層は、分散めっき、蒸着法等を用いて作製することができる。このような方法の中でも、活物質層の形成速度が速く、柱状粒子内および柱状粒子間に空隙を容易に設けることができる点で、蒸着法などのドライプロセスが好ましい。
内部に空隙を含む柱状粒子の形成方法について、図13を参照しながら説明する。
蒸着法により柱状粒子の内部に空隙を設ける場合には、例えば、集電体の第1突起90の頂部に、第2突起91を設ける。第2突起91は、第1突起90の頂部を粗化することにより、第1突起90上に設けることができる。
図13において、第1突起90上には、錐形の第2突起91が複数個形成されている。第2突起91の頂部から第2突起91のすそへ続く線の進行方向は、集電体の法線方向に対して角度βだけ傾いている。このとき、集電体の法線方向に対する蒸着粒子の入射角θと、角度βとが、θ>βを満たす場合には、第1突起90の頂部には、第2突起91の陰影効果により、活物質粒子が成長しない部分が生じる。このように、蒸着粒子の入射角度、第2突起の形状等を調節することにより、第1突起90上に、活物質粒子が成長しない領域が形成される。このため、第1突起に担持された柱状粒子の内部に空隙を設けることができる。
上記では、第2突起の形状が錐形である場合について説明したが、第2突起の形状は特に限定されない。
柱状粒子内の空隙率は、例えば、第2突起間の間隔、第2突起の高さ等を調節することにより、制御することができる。例えば、柱状粒子の内部に空隙を設ける場合、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は、1.0〜7.0μmが好適であり、2.0〜5.0μmが更に好適である。
なお、蒸着法においては、上記のように、集電体に設けられた第1突起の形状、その間隔、およびその高さ、ならびに蒸着粒子の入射角度を制御することにより、隣接する柱状粒子との間に空隙を設けることができる。
上記のような電極は、図11に示される蒸着装置の他に、図14に示される蒸着装置を用いて作製することができる。図14(a)に、蒸着装置の正面図を示し、図14(b)に、図14(a)のb−b線断面図を示す。
蒸着装置100は、真空雰囲気を実現するためのチャンバ101と、蒸発源105と、蒸発源105を加熱するための電子ビーム装置などの加熱手段(図示せず)と、チャンバ101内にガスを導入するガス導入部と、集電体106を固定する固定台102とを具備する。
ガス導入部は、ガスを供給するノズル103と、外部からノズル103にガスを導入する配管104とを具備する。集電体106を固定する固定台102は、ノズル103の上方に設置されている。固定台102の鉛直下方には、蒸発源105が設置されている。
ケイ素酸化物を活物質とする場合、蒸発源105には、例えばケイ素の単体を用いる。ノズル103から、高純度の酸素ガスが、集電体106と蒸発源105との間に供給されて、集電体106と蒸発源105との間に、酸素雰囲気が形成される。電子ビームを蒸発源105であるケイ素の単体に照射すると、ケイ素が加熱され、気化する。気化したケイ素は、酸素雰囲気を通過して、酸化ケイ素となって、集電体106の表面に蒸着する。なお、酸素ガスを導入せずにケイ素の蒸着を行うことによって、ケイ素を活物質とする電極を作製することも可能である。
図14の蒸着装置において、板状部材である固定台102は回転可能であり、集電体106と蒸発源105との位置関係を変更可能である。よって、固定台102と水平面とが成す角γを、0°<γ<90°の範囲となるように傾斜させることができる。これにより、入射方向を集電体の法線方向に対して傾斜させた状態で活物質の蒸着を行うことができる。このため、第1突起に担持され、かつ一定方向に傾斜した柱状粒子が得られる。更に、上記のように、第1突起の頂部には、第2突起が形成されているために、第1突起に担持された柱状粒子内に、空隙を設けることができる。
柱状粒子が複数の粒層から構成される柱状粒子も、図14の蒸着装置を用いて作製することができる。上記のように、固定台102は回転可能であるため、例えば、位置Aと位置Bとの間を交互に角変位させることにより、例えば、図9に示されるような、複数の粒層からなる柱状粒子を形成することができる。ここで、図14(b)に示されるように、実線で表される位置Aは、固定台102の負極集電体106を固定する側の面が鉛直方向下方の蒸着源105を臨み、固定台102と水平方向の直線とがなす角との角度がγ°である位置とすることができる。破線で表される位置Bは、固定台102の負極集電体106を固定する側の面が鉛直方向下方の蒸着源105を臨み、固定台102と水平方向の直線とが成す角の角度が(180−γ)°である位置とすることができる。例えば、固定台102を位置Aに配置することによって、第1突起上に、図9の柱状粒子の第1の部分を形成することができる。固定台102を位置Bに配置することにより、図9の柱状粒子の第2部分を形成することができる。このように固定台102の位置を交互に角変位させることによって、図9に示されるような複数の粒層からなる柱状粒子が形成することができる。角度γ°は、形成しようとする負極活物質層の寸法などに応じて適宜選択できる。
なお、柱状粒子内における空隙の形成は、分散めっきを用いて行うことができる。分散めっきでは、活物質層をめっきにより形成するときに、発泡剤を含むめっき液を用いて、活物質層を形成する。その後、活物質層を加熱して、発泡剤を除去することにより、柱状粒子内に、空隙を設けることができる。
活物質からなる柱状粒子の空隙率は、めっき液に含まれる発泡剤の量を調節することにより、制御することができる。例えば、発泡剤は、めっき液の10〜50重量%を占めることが好ましい。
なお、分散メッキにより柱状粒子の内部に空隙を設ける場合、第1突起の表面に第2突起を設けてもよいし、設けなくてもよい。
上記のように、集電体に設けられる第1突起は、めっき法、ロールプレス法などにより形成することができ、第2突起は、めっき法、エッチング法、ブラスト処理などにより形成することができる。
活物質層における空隙の分布を均一にするとともに、活物質層の空隙率を大きくする観点から、第1突起は、基材部上に規則的なパターンで配置されていることが好ましい。最も近くに隣接する第1突起間の間隔は、一定であることが好ましい。また、規則的なパターンは、周期的に変化していてもよい。第1突起は、例えばマトリックス状に配置されていることが好ましい。
例えば、第1突起が規則的に配置されることにより、第1突起上に担持された柱状の活物質粒子も、例えば均等な間隔で配置されることとなる。このため、活物質粒子の膨張した際に、活物質粒子から集電体にかかる応力を低減させることが可能になると同時に、活物質粒子同士の衝突による活物質層の破壊、活物質粒子の集電体からの剥離等を抑制することができる。
例えば、第1突起は、図15に示されるように配置することができる。
図15においては、複数の第1突起301が、前記平坦面内で、互いに平行でかつ第1の間隔S1で配置された複数の第1の仮想直線302と、前記平坦面内で、第1の仮想直線302と垂直で第1の間隔S1より小さい第2の間隔S2で配置された複数の第2の仮想直線303との交点304上、および隣接する2つの第1の仮想直線302と隣接する2つの第2の仮想直線303とによって構成される矩形の中心305上に配置されていることが好ましい。図15において、複数の第1突起は、その中心が、前記交点304および前記矩形の中心305にほぼ重なるように配置されている。なお、図15において、第1突起の形状は楕円形としているが、第1突起の形状は特に限定されない。
このように第1突起を格子状に規則的に配置することにより、柱状の活物質粒子の集積率を高くすることができる。これにより、エネルギー密度をさらに向上させることができる。
さらに、基材部が長尺状である場合(つまり集電体が長尺状である場合)、第1の仮想直線302または第2の仮想直線303のいずれか一方が、長尺状の基材部の長手方向Tと平行であることが好ましく、特に、第1の仮想直線302が前記長手方向Tと平行であることが好ましい。
前記長尺状の基材部の幅方向における第1突起の最大径P1は、前記第1の間隔S1の1/2以上であることが好ましい。つまり、比P1/S1は、1/2以上、1未満であることが好ましい。なお、この場合にも、比P1/S1は、作製後の集電体、つまり活物質層が形成される直前の集電体における値である。
また、活物質を蒸着させる方向を集電体の表面に投影した方向Eは、第1突起の最大径P1に垂直またはほぼ垂直であることが好ましい。前記方向Eは、基材部の長手方向Tと平行であることがさらに好ましい。
前記のような構成とすることにより、基材部の平坦部に活物質が、必要以上に堆積することを抑制することができる。
なお、第1の仮想直線と第2の仮想直線との所定の交点上に配置された第1の突起と、前記交点を含む上記矩形の中心上に配置され、前記交点上に配置された第1突起と最も近い別の第1突起との間隔(ピッチ)Sは、上記のように、3〜100μmであることが好ましい。同様に、第1の間隔S1および第2の間隔S2も、3〜100μmの範囲内であればよい。図15に示されるような配置において、第1突起間の間隔(ピッチ)Sと、第1の間隔S1と、第2の間隔S2とは、以下の式:
S=(√(S1 2+S2 2))/2
を満たす。
なお、第2突起を備える第1突起は、必ずしも集電体の全面に渡って配置されている必要はない。第1突起の配置は、電池設計や工程上の都合に依存する。よって、第1突起は、集電体の一部だけに配置されていてもよい。基材部の片面のみに第1突起が配置され、その面のみに活物質層が担持されてもよいし、基材部の両面に第1突起が配置され、その基材部の両面に活物質層が担持されていてもよい。
本発明は、更に、上記の電極と、電極の対極と、電解質とを含む電池に関する。電池の種類は特に限定されないが、本発明はリチウム二次電池に適用することが好ましい。本発明の電極は、リチウム二次電池の負極として好適である。対極は、リチウム二次電池の正極として用いられる電極であればよい。正極と負極との間には、セパレータを配置する。セパレータには、ポリオレフィンからなる微多孔製フィルムが好ましく用いられる。リチウム二次電池は、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質を含む。
正極活物質には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)などのリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができるが、これらに限定されない。正極活物質層は、正極活物質のみから構成されてもよいし、正極活物質の他に結着剤、導電剤等を含んでいてもよい。正極活物質層が正極活物質のみから構成される場合、負極活物質層と同様に、正極活物質層は、複数の柱状粒子から構成されてもよい。
正極集電体の構成材料には、例えばAl、Al合金、およびTiを用いることができる。
リチウムイオン伝導性を有する非水電解質には、様々なリチウムイオン伝導性の固体電解質および非水電解液を用いることができる。非水電解液は、例えば、非水溶媒と、それに溶解したリチウム塩を含む。リチウム塩には、6フッ化リン酸リチウム、4フッ化ホウ酸リチウムなどが好ましく用いられる。非水溶媒には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類が好ましく用いられる。リチウム塩および非水溶媒には、前記のような材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セパレータを構成する材料、電池ケースを構成する材料、および封口板を構成する材料も、特に限定されない。例えば、セパレータ、電池ケースおよび封口板の材料には、様々な形態のリチウムイオン二次電池に用いられている材料を用いることができる。
本発明は、様々な形状のリチウム二次電池に適用可能である。電池の形状および封止形態は特に限定されない。電池の形状としては、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電池の大きさも特に限定されない。例えば、小型携帯機器などに用いる小型であってもよく、電気自動車等に用いる大型であってもよい。本発明は、特に、折り畳み型電池、捲回型電池等に対して有効である。捲回型電池は、例えば、以下に示す構造を有することができる。
図16は、本発明の一実施形態に係る捲回型リチウム二次電池の一部を展開した断面斜視図である。
電池110は、捲回型の電極群114と、これを収容する電池ケース118とを有する。電極群114は、帯状の正極111と帯状の負極112とを、それらの間に配置された幅広のセパレータ113とともに捲回することで得られる。電極群114には、リチウムイオン伝導性を有する電解質(図示せず)が含浸されている。電池ケース118の開口は、正極端子115を有する封口板119で塞がれている。
正極111には例えばアルミニウム製の正極リード111aの一端が接続されており、その他端は封口板119の裏面に接続されている。封口板119の周縁には、例えばポリプロピレン製の絶縁パッキン116が配されている。負極112には、例えば銅製の負極リード(図示せず)の一端が接続されており、その他端は電池ケース118に接続されている。電極群114の上下には、それぞれ上部絶縁リング(図示せず)および下部絶縁リング117が配されている。
正極は、正極集電体と、その上に担持された正極活物質層を含むことができる。同様に、負極は、負極集電体と、その上に担持された負極活物質層を含むことができる。正極活物質層は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時には、負極活物質が放出したリチウムイオンを吸蔵する。負極活物質層は、充電時に、正極活物質層が放出したリチウムイオンを吸蔵し、放電時には、リチウムイオンを放出する。
図17に、本発明の別の実施形態に係る電池を示す。図17のコイン型電池120は、正極、負極、セパレータ124、非水電解質、およびこれらを収容する電池ケース125を含む。電池ケース125は、その開口端部を封口板121の周縁部に絶縁パッキン128を介してかしめることにより、密封されている。
負極は、負極集電体123およびその上に担持された負極活物質層122とを含む。正極は、正極集電体127およびその上に担持された正極活物質層126を含む。負極集電体123は、封口板121に接しており、正極集電体127は、電池ケース125に接している。
負極活物質層122と正極活物質層126とは、非水電解質を含むセパレータ124を介して対向している。
図18に、本発明のさらに別の実施形態に係る電池を示す。図18の積層型電池130は、発電要素、非水電解質(図示せず)、およびこれらを収容する電池ケース138を備える。発電要素は、正極、負極およびそれらの間に配置されたセパレータ133を備える。正極は、正極集電体131とその上に担持された正極活物質層132を含む。負極は、負極集電体134とその上に担持された負極活物質層135を含む。
発電要素は、正極と負極とを積層したスタックを含む。図18の積層型電池の正極において、正極活物質層は、正極集電体の両面に担持されている。正極の両側には、セパレータを介して、負極が配置されている。負極においては、負極集電体の片面にのみ負極活物質層が形成されており、前記負極活物質層は、セパレータを介して、正極活物質層に対向している。
電池ケース138は、互いに対向する側に開口部を有する。負極リード137の一端は、電池ケース138の一方の開口部から外部に延びている。負極リード137の他端は、負極集電体134の活物質層を形成していない面に接続されている。正極リード136の一端は、電池ケースの他方の開口部から外部に延びている。正極リード136の他方の端部は、正極集電体の露出部に接続されている。
電池ケース138の開口部は、封止剤139を用いて封止されている。
積層型電池においては、正極と負極とを3層以上に積層してもよい。この場合、全ての正極活物質層が負極活物質層と対向し、かつ全ての負極活物質層が正極活物質層と対向するように、両面または片面に正極活物質層を有する正極と、両面または片面に負極活物質層を有する負極とを用いることが好ましい。なお、負極と正極の配置が逆でもかまわない。
(実施の形態2)
本発明の別の実施形態に係る電池用集電体を、図面を参照しながら説明する。図19に、本発明の別の実施形態に係る集電体を示す。図19の集電体140は、平坦面を有する基材部141と、前記平坦面から突出した第1突起142とを有し、かつ前記第1突起142の頂部の粗化率が3以上、20以下である。前記集電体において、前記第1突起は、規則的に配列されていることが好ましい。
次に、粗化率について説明する。本発明において、粗化率は、第1突起の頂部の所定の領域の見かけの面積に対する前記領域の表面積の比のことをいう。つまり、粗化率は、(第1突起の頂部の所定の領域の表面積)/(前記領域の見かけの面積)として定義される。
第1突起の頂部の所定の領域の表面積とは、集電体の表面の法線方向から前記領域をレーザー顕微鏡を用いて測定したときの表面積のことをいう。レーザー顕微鏡としては、例えば、(株)キーエンス製の超深度形状測定顕微鏡VK−8500を用いることができるが、前記装置に限られない。本測定法は、レーザーを利用した測定であるため、非破壊分析法であり、かつ簡便な測定法である。
なお、前記表面積を測定する場合、集電体の表面の法線方向から、集電体にレーザーが照射されるために、レーザーに対し、第1突起等により影になる部分の凹凸は、前記表面積に含まれない。
見かけの面積とは、集電体の表面の法線方向から見たときの前記領域の面積(投影面積)のことをいう。
前記所定の領域とは、集電体の表面の法線方向から見たときの第1突起の形状において、辺の長さ、直径等のような特徴となる長さWとした場合、前記第1突起の形状と相似であり、前記特徴となる長さがW/2となる領域のことをいう。
具体的に、図20に、略菱形の第1突起が形成された集電体の一例を、レーザー顕微鏡で観察したときの結果を示す。図20のレーザー顕微鏡写真に示されるように、集電体の表面の法線方向から見たときの第1突起の形状が略菱形であり、長軸の長さがW1であり、短軸の長さがW2である場合、前記所定の領域(領域C)とは、前記第1突起の形状と相似であり、かつ長軸の長さがW1/2であり、短軸の長さがW2/2である領域のことをいう。
集電体に設けられた第1突起の頂部の粗化率を3以上とすることにより、第1突起と、活物質層との密着面積が十分に大きくなる。このため、高容量でかつ充放電時の体積変化の大きい活物質を用いた場合でも、活物質が膨張したときの応力に対し、十分な耐久性を得ることができ、活物質の集電体からの剥がれを十分に防止することができる。よって、前記集電体を用いることにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。
粗化率が20よりも大きい場合には、第1突起の頂部を粗化することにより形成された微小突起が非常に嵩高くなる。よって、粗化率が20以下の集電体と比較して、集電体上に活物質層を設けた場合に、活物質層に対する集電体の厚みの割合が大きくなる。つまり、電極の厚さにおける集電体の厚さの割合が大きくなる。このため、電池のエネルギー密度が小さくなることがある。さらには、第1突起の表面に形成された溝が細かくなるため、集電体表面に活物質前駆体または活物質を堆積した際に、活物質の溝の中への入り込みが起こりにくくなる。このため、高い粗化率を有効に使えないことがある。
第1突起の粗化率は、第1突起上に、所定の凹凸を設けることに制御することができる。例えば、第1突起上に、第1突起よりも小さい第2突起を設け、前記第2突起の直径、高さ、隣接する第2突起間の距離などを調節することにより制御することができる。前記第2突起は、実施の形態1と同様に、例えばめっき法、ブラスト処理等により、第1突起上に設けることができる。
第1突起は、実施の形態1で説明したように、めっき法、ロールプレス法などにより作製することができる。
集電体の平坦部においても、粗化率は3以上20以下であることが好ましい。平坦部の粗化率を前記範囲とすることにより、集電体の両面に、頂部の粗化率が3〜20の第1突起を容易に形成することができる。さらには、集電体の平坦部に活物質が堆積した場合でも、前記平坦部と活物質との密着性を向上させることができる。
なお、活物質層が堆積された集電体の第1突起の粗化率は、濃度30重量%程度の塩化第二鉄水溶液等を用いて集電体のみを溶出させ、活物質層の集電体と接していた面を、上記手法によって測定することにより、得ることもできる。
本実施形態の集電体を用いる電極においても、活物質層は、複数の柱状粒子を含み、前記柱状粒子は、第1突起に担持されていることが好ましい。このような活物質層は、上記のような図11の蒸着装置または図14の蒸着装置を用いて形成することができる。
前記柱状粒子の成長方向は、集電体の法線方向に対して傾斜していてもよいし、集電体の法線方向とほぼ平行であってもよい。また、柱状粒子は、同一部分から構成されてもよいし、複数の粒層から構成されてもよい。上記のように、例えば、柱状粒子を複数の粒層から構成することにより、柱状粒子の平均的な成長方向を、集電体の法線方向とほぼ平行とすることができる。
本実施形態においても、集電体、第1突起等を構成する材料、さらには集電体上に堆積される活物質等には、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。
なお、ケイ素元素を含む材料は、リチウムイオンの挿入および脱離に伴う膨張および収縮が大きい材料であるため、サイクル特性を向上させるためには、前記材料の集電体からの剥離を抑制することが重要となる。第1突起の頂部の粗化率を3〜20とすることにより得られる効果は、充放電時の体積変化が大きい材料を用いる場合に、顕著となる。
本実施形態においても、第1突起は、図15に示されるように、規則的に配置されていることが好ましい。つまり、第1突起は、基材部の平坦面内で、互いに平行でかつ第1の間隔で配置された複数の第1の仮想直線と、前記平坦面内で、第1の仮想直線と垂直で第1の間隔より小さい第2の間隔で配置された複数の第2の仮想直線との交点、および隣接する2つの第1の仮想直線と隣接する2つの第2の仮想直線とによって構成される矩形の中心に配置されていることが好ましい。
また、基材部が長尺状である場合、第1の仮想直線または第2の仮想直線のいずれか一方が基材部の長手方向と平行であることが好ましく、特に、第1の仮想直線が前記長手方向と平行であることが好ましい。比P1/S1は、1/2以上、1未満であることが好ましい。
活物質を蒸着させる方向を集電体の表面に投影した方向Eは、第1突起の最大径P1に垂直またはほぼ垂直であることが好ましい。前記方向Eは、基材部の長手方向Tと平行であることがさらに好ましい。
第1突起の間隔(ピッチ)S、第1の間隔S1、および第2の間隔S2は、実施の形態1と同様に、3〜100μmの範囲内であればよい。
本実施形態においても、活物質層の厚みは、実施の形態1と同様であればよいが、5μm以上、50μm以下であることが好ましく、5μm以上、30μm以下であることが特に好ましい。
なお、第1突起の各寸法、活物質層の空隙率等は、実施の形態1と同様であればよい。なお、本実施形態においても、上記実施の形態1と同様に、第1突起は、規則的に配列されていることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1−1》
(i)集電体の作製
第1工程
出発材料である厚さ18μmの圧延銅箔上に、厚さ25μmのドライフィルムレジスト(日立化成工業(株)製)を貼り付けた。
略菱形のドットパターンを有するガラス製マスクを、ドライフィルムレジストの上に配置した。平行露光機を用いて、i線(波長365nmの紫外線)を、マスクの上から照射して、レジストを露光した。その後、アルカリ水溶液で現像し、レジストに所定のパターンの開口部を形成した。次に、形成された略菱形の開口部に、めっき法により、銅を析出させた。その後、レジストを除去し、略菱形の第1突起を有するシート状の基材を得た。図21は、得られた基材の表面の電子顕微鏡写真である。図22は、同基材の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。
ここで、略菱形の第1突起の高さは10μm、略菱形の2つの対角線の長さは28μmと12μmであった。第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz1は0.9μmであった。また、第1突起間の平坦面の表面粗さ(十点平均高さ)Rz0、すなわち出発材料である圧延銅箔の表面粗さは0.2μm(面粗さ0.6μm)であった。
なお、本発明において、Ra、Rz0、Rz1、Rz2のような集電体の表面粗さの測定は、共焦点レーザー顕微鏡((株)キーエンス製のVK−8500)を用いて求められる線粗さに基づいて行った。前記共焦点レーザー顕微鏡により、表面粗さに関し、線粗さと面粗さの2種類を測定することができる。表面の凹凸の程度が大きく、かつ光の反射の大きい試料(例えば、金属)の面粗さを測定した場合、ハレーションが生じ、明部と暗部との差が大きくなって、高さ情報が正確に得られない場合がある。一方、線粗さの測定においては、ハレーションの影響を受けにくいため、光の反射が大きい試料を測定する場合でも、正確な高さ情報を得やすい。さらに、JIS B 0601−1994には、表面粗のうち、十点平均粗さRzおよび算術平均粗さRaは、基準長さについての粗さ曲線から求められることが示されている。よって、本発明者らは、表面粗さの測定は、線粗さに基づいて行い、必要に応じて面粗さの測定も行った。
次に、形成直後の第1突起の各寸法は、以下の通りである。なお、第1突起400の対角線の長さP1およびP2、第1突起400間の間隔(ピッチ)S、ならびに第1の仮想直線401の間隔S1および第2の仮想直線402の間隔S2は、図23に示す通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:10μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.9μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ0.6μm)
第2工程
第1突起を有するシート状の基材に対し、2段階のめっき処理を行った。
第1段階では、略菱形の第1突起の頂部に粒状析出物を析出させた。第2段階では、粒状析出物の表面に被膜を形成し、第2突起を得た。各段階でのめっき液組成及びめっき条件は表1に示したとおりであった。なお、第1段階の限界電流密度は2.5A/dm2であり、第2段階の限界電流密度は27.5A/dm2であった。
第3工程
得られた集電体は、1H−ベンゾトリアゾールを3重量%含むエタノール溶液に15秒間浸漬した後、水洗し、乾燥させて、防錆処理を施した。
図24は、集電体の表面の電子顕微鏡写真である。図25は、集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は8.2μm(面粗さ26.0μm)であり、Rz2/Rz0は41(面粗さの比43.3)であった。
第2突起形成後(つまり、めっき終了後)の第1突起の各寸法および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:33μm、P2:15μm
第1突起の高さH 14.5μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第2突起の平均径d:2.5μm
第2突起の平均高さh:4.4μm
第2突起の平均突起間隔s:3.4μm
十点平均高さRz2:8.2μm(面粗さ26.0μm)
算術平均粗さRa:1.7μm
比P1/S1:0.66
図23に示されるように、第1突起は、基材部の平坦面内で、互いに平行でかつ第1の間隔で配置された複数の第1の仮想直線と、前記平坦面内で、前記第1の仮想直線と垂直で前記第1の間隔より小さい第2の間隔で配置された複数の第2の仮想直線との交点、および隣接する2つの第1の仮想直線と隣接する2つの第2の仮想直線とによって構成される矩形の中心に配置されている。なお、本実施例において、複数の第1突起は、その中心が、前記交点および前記矩形の中心にほぼ重なるように配置した。また、第1突起は、第1突起の最大径P1が、集電体の長手方向と垂直となるように配置した。
以下の実施例においても、第1突起は、前記のようにして配置した。
なお、第2突起の平均径d、平均高さh、平均突起間隔sは、いずれも10個もしくは10組の第2突起の平均値である。以下の実施例および比較例についても同様である。
図24からわかるように、第2突起は、粒状である。また、その最大径は、ほとんどが根元の径よりも大きかった。
(ii)負極の作製
得られた集電体の両面に、電子ビーム(EB)を用いた蒸着法により、SiO0.5からなる活物質を担持させて負極を得た。ここでは、図11に示すような蒸着装置と、ケイ素単体のターゲットを用い、蒸着装置のチャンバ内に酸素を導入した。なお、活物質を蒸着させる方向を集電体の表面に投影した方向は、第1突起の最大径P1にほぼ垂直とした。
蒸着条件は以下の通りである。
ターゲットに照射するEBの加速電圧:−10kV
エミッション電流:600mA
酸素流量:50sccm(standard cc/min)
基板(集電体)走行速度:2cm/min
図26に、得られた負極の断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。活物質は集電体の法線方向(基材部701の法線方向)に対して傾斜した柱状粒子704を形成していることがわかった。柱状粒子704は、いずれも第2突起703を有する第1突起702の頂部と接合していた。活物質層の厚さは24μmであった。
(iii)正極の作製
正極活物質である平均粒径約10μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末を100重量部と、導電剤であるアセチレンブラックを3重量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン粉末を8重量部と、適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを、充分に混合して、正極合剤ペーストを調製した。
得られたペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の片面に塗布し、乾燥後、圧延して、正極活物質層を形成した。正極活物質層の厚さは約75μmとした。その後、活物質層を担持した正極集電体を、電極群の作製に適した帯状の寸法に裁断し、これを正極とした。正極の長手方向における一方の端部付近で、活物質層を担持していない正極集電体の裏面に正極リードを溶接した。
(iv)電極群の作製
正極活物質層と負極活物質層とを対向させ、これらの間にセパレータを介在させて、正極と負極とを捲回し、円筒型の電極群を構成した。セパレータには、厚さ20μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。
(v)電池の作製
得られた電極群を、電池ケースに挿入し、その後、非水電解質をケース内に注液した。非水電解質は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1モル/Lの濃度で溶解させることにより調製した。ケース内を真空状態にして電極群に非水電解質を含浸させ、その後、ケースを密封した。こうして、図16に示されるような円筒型の電池を作製した。
[評価]
(i)電極の評価
作製した負極について、活物質と集電体との接合強度(タッキング強度)を、タッキング試験器((株)レスカ製のTAC−II)で測定した。負極は2cm×3cmに切り出し、タッキング試験器の測定子と対向する負極位置に、両面テープで固定した。測定子の先端(先端直径2mm)に、負極を両面テープ(日東電工(株)製のNo.515)で接続した。押し込み速度30mm/min、押し込み時間10秒、荷重400gf、引き上げ速度600mm/minで測定を行った。試験の結果、タッキング強度は27.9kgf/cm2であった。
(ii)電池の評価
作製した電池のサイクル特性を、以下の要領で評価した。
作製した電池について、充放電レート0.1C(公称容量に相当する電気量を充電または放電するのに10時間を要する電流値)で、8サイクルの充放電を行った。その後、充放電レート1C(公称容量に相当する電気量を充電または放電するのに1時間を要する電
流値)で、100サイクルの充放電を行った。なお、充電終止電圧は4.05V、放電終止電圧は2.0Vとした。1サイクル目の放電容量を100%としたときの、100サイクル目の容量維持率は92%であった。
《実施例1−2》
負極の集電体の作製において、第1工程をめっき法で行う代わりに、厚さ20μmの銅箔を、それぞれ規則的なパターンで略菱形の凹部が配置された一対のローラの間に通過させた。ここでは、ステンレス鋼製のローラを用い、線圧は1.5t/cmとした。図27は、得られた基材の表面の電子顕微鏡写真である。図28は、同基材の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。
第1工程の後、略菱形の第1突起の高さは6μm、略菱形の2つの対角線の長さは28μmと12μm、ピッチSは20μmであった。第1突起間の平坦面の表面粗さ(十点平均高さ)Rz0は0.2μm(面粗さ1.5μm)であった。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ1.5μm)
上記以外は、実施例1−1と同様に、集電体を作製した。
第2工程の後、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は3μm(面粗さ8.2μm)であった。よって、Rz2/Rz0は15(面粗さ比5.4)であった。図29は、得られた集電体の表面の電子顕微鏡写真である。図30は、集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。図30からわかるように、第2突起は、粒状である。また、その最大径は、ほとんどが根元の径よりも大きかった。
第2突起形成後(つまり、めっき終了後)の第1突起の各寸法および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:32μm、P2:15μm
第1突起の高さH:7.2μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
第2突起の平均径d:0.56μm
第2突起の平均高さh:1.1μm
第2突起の平均突起間隔s:0.85μm
十点平均高さRz2:3μm(面粗さ8.2μm)
算術平均粗さRa:0.79μm
比P1/S1:0.84
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1−1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1−1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は26.3kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は90%であった。
《比較例1−1》
負極の集電体の作製において、第1工程の後、第2工程を行わなかった(第2突起を形成しなかった)こと以外、実施例1−1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は23.3kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は75%であった。
形成した第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH 10μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.9μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ0.6μm)
比P1/S1:0.56
《比較例1−2》
負極の集電体の作製において、第1工程の後、第2工程を行わなかった(第2突起を形成しなかった)こと以外、実施例1−2と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1−1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は20.2kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は70%であった。
形成した第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ1.5μm)
比P1/S1:0.74
《実施例1−3》
負極の集電体の作製において、実施例1−2と同様に第1工程を行った。形成された第1突起の各寸法は、以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ1.5μm)
その後、作製した第1突起を有するシート状の基材に対し、第2工程として、ウエットブラスト処理を行った。ここでは、基材を上下に設置されたノズルの間を移動させながら、ブラスト材を基材両面に上下から衝突させた。ブラスト材には、平均粒径7μmのアルミナ粉末を用いた。その結果、第1突起の頂部に凹凸が形成され、第2突起が得られた。ウエットブラスト処理の条件を表2に示す。
図31は、条件Cで作製した集電体の表面の電子顕微鏡写真である。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は1〜1.2μm(面粗さ2.0〜2.4μm)であった。
第2突起形成後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:27μm、P2:11μm
第1突起の高さH:5.5μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
十点平均高さRz2:1〜1.2μm(面粗さ2.0〜2.4μm)
比P1/S1:0.71
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1−1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池は、実施例1−1と同様に評価した。結果を表2に示す。
《実施例1−4》
負極の集電体の作製において、実施例1−1と同様に第1工程を行った。形成した第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:10μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.9μm
第1突起の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ0.6μm)
その後、作製した第1突起を有するシート状の基材に対し、第2工程として、平均粒径7μmのアルミナ粉末を用いて、実施例1−3と同様のウエットブラスト処理を行った。これにより、第1突起の頂部に凹凸が形成され、第2突起が得られた。ウエットブラスト処理の条件を表3に示す。
図32は、条件Aで作製した集電体の表面の電子顕微鏡写真である。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は0.9〜1.1μm(面粗さ1.8〜2.0μm)であった。
第2突起形成後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:27μm、P2:11μm
第1突起の高さH:9.5μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
十点平均粗さRz2:0.9〜1.1μm(面粗さ1.8〜2.0μm)
比P1/S1:0.54
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池は、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
《実施例1−5》
負極の集電体の作製において、実施例1−2と同様に第1工程を行った。形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.2μm(面粗さ1.5μm)
その後、作製した第1突起を有するシート状の基材に対し、第2工程として、エッチング処理を行った。ここでは、シート上の基材を30秒間かけて、直線上に並んだスプレー装置の下方で移動させた。その結果、第1突起の頂部に凹凸が形成され、第2突起が得られた。エッチング液には、メック(株)製のCZ−8100(有機酸系)を用いた。エッチング処理の条件を表4に示す。
図33は、実施例1−5で作製した集電体の表面の電子顕微鏡写真である。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は1.8μm(面粗さ5.4μm)であった。
第2突起形成後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:26.5μm、P2:10.2μm
第1突起の高さH:5.2μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
十点平均粗さRz2:1.8μm(面粗さ5.4μm)
比P1/S1:0.70
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1−1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池は、実施例1−1と同様に評価した。結果を表4に示す。
《実施例1−6》
負極の集電体の作製において、あらかじめ平坦面に第2突起が形成された表面粗さRz2が3.2μm(面粗さ19μm)、厚さ35μmの粗面化銅箔を、それぞれ規則的なパターンで略菱形の凹部が配置された一対のローラの間に通過させて、第1突起を形成した。ここでは、ステンレス鋼製のローラを用い、線圧は1.0t/cmとした。第1突起間の平坦面の表面粗さRz0は、1.5μmであった。
図34は、得られた基材の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。
第1突起の高さは6μm、略菱形の2つの対角線の長さは28μmと10μm、ピッチ(隣接する第1突起の中心間の最短距離)は20μmであった。第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は3.2μm(面粗さ19μm)であった。またRz2/Rz0は2.1であった。
第1突起および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:10μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:20μm
第1の仮想直線の間隔S1:38μm
第2の仮想直線の間隔S2:19μm
第2突起の平均径d:2μm
第2突起の平均高さh:2.7μm
第2突起の平均突起間隔s:3.1μm
十点平均高さRz2:3.2μm(面粗さ19μm)
算術平均粗さRa:1.8μm
比P1/S1:0.74
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1−1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1−1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は28.0kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は90%であった。
《実施例1−7》
(i)集電体の作製
第1工程
出発材料である合金銅箔に対し、2段階のめっき処理を行った。
第1段階では、表5に示す組成の第1めっき液を用いて、表5に示す条件でめっきを行い、出発材料である厚さ18μmの合金銅箔(日立電線(株)製、Zr添加量0.02重量%)の両面に粒状析出物を析出させた。第2段階では、表5に示す組成の第2めっき液を用いて、表5に示す条件でめっきを行い、粒状析出物の表面に被膜を形成し、第2突起を得た。第1段階の限界電流密度は合金銅箔を電極とした場合に10A/dm2であり、第2段階の限界電流密度は110A/dm2であった。
第2段階後の合金銅箔は、1H−ベンゾトリアゾールを3重量%含むエタノール溶液に15秒間浸漬した後、水洗し、乾燥させて、防錆処理を施した。
第2工程
第1工程で得られたシート状の基材を規則的なパターンで、略菱形の凹部が配置された一対のローラの間に通過させた。ここでは、ステンレス鋼製のローラを用い、その線圧は1.0t/cmとした。図35は、作製した集電体の表面の電子顕微鏡写真である。
第2工程の後、略菱形の第1突起の高さは6μm、略菱形の2つの対角線の長さは21μmと11μm、ピッチSは28μmであった。第1突起間の平坦面の表面粗さ(十点平均高さ)Rz0は0.7μmであった。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は3μm(面粗さ8.8μm)であった。よって、Rz2/Rz0は4.3であった。
第1突起および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:21μm、P2:11μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:28μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.7μm
第2突起の平均径d:1.8μm
第2突起の平均高さh:2.5μm
第2突起の平均突起間隔s:2.6μm
十点平均高さRz2:3μm(面粗さ8.8μm)
比P1/S1:0.42
(ii)負極の作製
得られた集電体の両面に、電子ビーム(EB)を用いた蒸着法により、SiO0.5からなる活物質を担持させて負極を得た。ここでは、図11に示すような蒸着装置と、ケイ素単体のターゲットを用い、蒸着装置のチャンバ内に酸素を導入した。
なお、活物質の蒸着を以下の条件で行った後、集電体を巻き取りロールから取り出し、再度巻き出しロールに取り付け、同様の条件で蒸着した。この操作を計7回繰り返し、屈曲部を6箇所有する柱状粒子を含む活物質層を得た。柱状粒子は見かけ上、集電体の法線方向に対して平行であった。図36は、得られた負極の断面を示す電子顕微鏡写真である。
蒸着条件は以下の通りである。
ターゲットに照射するEBの加速電圧:−10kV
エミッション電流:600mA
酸素流量:50sccm(standard cc/min)
基板(集電体)走行速度:14cm/min
繰り返し回数:7回
本実施例で作製した集電体および負極を用いたこと以外、実施例1−1と同様にして電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1−1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は26.8kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は91%であった。
《実施例1−8》
(i)集電体の作製
第1工程
出発材料である厚さ18μmの合金銅箔(日立電線(株)製、Zr添加量0.02重量%)を、それぞれ規則的なパターンで略菱形の凹部が配置された一対のローラの間に通過させた。ここでは、ステンレス鋼製のローラを用い、線圧は1.0t/cmとした。
第1工程の後、集電体の略菱形の第1突起の高さは6μm、略菱形の2つの対角線の長さは18μmと14μm、ピッチSは22μmであった。第1突起間の平坦面の表面粗さ(十点平均高さ)Rz0は0.4μm(面粗さ1.2μm)であった。
作製直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:18μm、P2:14μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:22μm
第1の仮想直線の間隔S1:40μm
第2の仮想直線の間隔S2:20μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.4μm(面粗さ1.2μm)
第1工程で作製した第1突起を有するシート状の基材に対し、第2工程として、以下に示す2段階のめっき処理を行った。
第2工程
第1段階では、表6に示す組成のめっき液を用いて、表6に示す条件でめっきを行い、シート状の基材の両面に粒状析出物を析出させた。第2段階では、第1段階で用いた後のめっき液を用いて、表6に示す条件でめっきを行い、粒状析出物の表面に被膜を形成し、第2突起を得た。
第2段階後の合金銅箔は、1H−ベンゾトリアゾールを3重量%含むエタノール溶液に15秒間浸漬した後、水洗し、乾燥させて、防錆処理を施した。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は7.2μm(面粗さ18.0μm)であった。よって、Rz2/Rz0は18.0(面粗さの比15.0)であった。
第2突起形成後(つまり、めっき終了後)の第1突起の各寸法および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:21μm、P2:17μm
第1突起の高さH:11μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:22μm
第1の仮想直線の間隔S1:40μm
第2の仮想直線の間隔S2:20μm
第2突起の平均径d:1.9μm
第2突起の平均高さh:4.6μm
第2突起の平均突起間隔s:2.9μm
十点平均高さRz2:7.2μm(面粗さ18.0μm)
算術平均粗さRa:2.2μm
比P1/S1:0.53
図37は、集電体の表面の電子顕微鏡写真である。図38は、集電体の斜め上方からの電子顕微鏡写真である。図37からわかるように、第2突起は、集電体の法線方向に複数層形成された粒状析出物を含む。また、その最大径は、ほとんどが根元の径よりも大きかった。
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1−7と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1−1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は28.7kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は93%であった。
《実施例1−9》
第1工程
出発材料である厚さ18μmの合金銅箔(日立電線(株)製、Zr添加量0.02重量%)を、それぞれ規則的な実施例1−8と異なるパターンで略菱形の凹部が配置された一対のローラの間に通過させた。ここでは、ステンレス鋼製のローラを用い、線圧は1.0t/cmとした。
第1工程の後、集電体の略菱形の第1突起の高さは5μm、略菱形の2つの対角線の長さは18μmと14μm、ピッチSは29μmであった。
第1突起間の平坦面の表面粗さ(十点平均高さ)Rz0は0.4μm(面粗さ1.3μm)であった。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:18μm、P2:14μm
第1突起の高さH:5μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:29μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起間の平坦面の十点平均粗さRz0:0.4μm(面粗さ1.3μm)
第1工程で作製した第1突起を有するシート状の基材に対し、第2工程として、表7に示す条件でめっきを行ったこと以外、実施例1−8と同様にして集電体を作製した。
ここで、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は7.9μm(面粗さ23.0μm)であった。よって、Rz2/Rz0は19.8μm(面粗さの比17.6)であった。
第2突起形成後の第1突起および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:25μm、P2:17μm
第1突起の高さH:12μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:29μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第2突起の平均径d:4.8μm
第2突起の平均高さh:6.4μm
第2突起の平均突起間隔s:5.7μm
十点平均高さRz2:7.9μm(面粗さ23.0μm)
算術平均粗さRa:1.8μm
比P1/S1:0.5
図39は、集電体の表面の電子顕微鏡写真である。図39からわかるように、第2突起は、集電体の法線方向に複数層形成された粒状析出物を含む。また、その最大径は、ほとんどが根元の径よりも大きかった。
本実施例で作製した集電体を用いたこと以外、実施例1−1と同様に、負極を作製し、更に電池を作製した。得られた負極と電池を実施例1−1と同様に評価したところ、負極のタッキング強度は27.4kgf/cm2であり、100サイクル目の容量維持率は94%であった。
《実施例2−1》
(i)集電体の形成
工程1
出発材料である厚さ18μmの圧延銅箔上に、ネガ型フォトレジストを塗布した。次いで、ひし形のドットパターンを有するネガ型マスクを用いて、銅箔上のレジストを露光し、現像した。次に、形成された菱形の溝に、めっき法により、銅を析出させた。その後、レジストフィルムを除去して、基材部の上に複数のひし形の第1突起を、図23に示されるように規則的に形成した。
第1突起の高さHは10μmであり、2つの対角線P1およびP2の長さは、それぞれ28μmおよび12μmであった。第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz1は0.9μmであった。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:10μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.9μm
工程2
次に、第1突起を有するシート状の基材に対し、2段階のめっき処理を行った。
まず、硫酸銅・5水和物の量が50g/Lであり、濃硫酸の量が100g/Lである水溶液(第1めっき液)を調製した。第1めっき液に含まれる銅イオンの量は、12.7g/Lであった。第1めっき液を用い、25℃で、対極に銅板を用い、0.1A/cm2(すなわち10A/dm2)の電流密度で、第1突起を形成した圧延銅箔を、12秒間めっきした(第1めっき)。この第1めっきにより、第1突起上に、銅粒子を堆積させた。第1めっき後の銅箔は、水洗した。
次に、硫酸銅・5水和物の量が250g/Lであり、濃硫酸の量が100g/Lである水溶液(第2めっき液)を調製した。第2めっき液に含まれる銅イオンの量は、63.6g/Lであった。第2めっき液を用い、50℃で、対極に銅板を用い、0.05A/cm2(すなわち5A/dm2)の電流密度で、第1めっき後の銅箔を、40秒間めっきした。この第2めっきにより、銅粒子の表面に被膜(被膜めっき層)が形成され、銅粒子が第1突起上に固定化される。第2めっき後の銅箔は、水洗した。
工程3
最後に、第2めっき後の銅箔を、3重量%のベンゾトリアゾールを含むエタノール溶液に15秒間浸漬させて、前記銅箔に防錆処理を施した。こうして、負極集電体を得た。
第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さ(十点平均高さ)Rz2は、1.7μmであった。
第2突起形成後(めっき終了後)の第1突起の各寸法および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:33μm、P2:15μm
第1突起の高さH:14.5μm
第1突起間の間隔S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第2突起の平均径d:2.5μm
第2突起の平均高さh:4.4μm
第2突起の平均突起間隔s:3.4μm
十点平均粗さRz2:1.7μm
比P1/S1:0.66
(ii)負極の作製
上記のようにして得られた負極集電体上に、負極活物質層を形成した。負極活物質層の形成は、図14に示す蒸着装置((株)アルバック製)を用いて行った。蒸発源には、純度99.9999%のケイ素((株)高純度化学研究所製)を用いた。ノズルからは、酸素ガス(エアウォーター(株)製)を、10sccmの流量で、蒸発源と集電体との間に供給した。
作製した負極集電体を固定台に固定し、水平面と固定台とのなす角度γを60°とした。
蒸発源に照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッション電流を250mAに設定した。
上記の条件で、所定の時間蒸着を行い、ケイ素酸化物を含む柱状粒子を含む活物質層を形成した。こうして負極2−1を作製した。負極活物質層の厚さは、20μmであった。
得られた負極活物質に含まれる酸素量を燃焼法により定量した。その結果、負極活物質の組成はSiO0.3であった。
負極活物質層の空隙率は、48%であった。柱状粒子内の空隙率は、4.2%であった。なお、それぞれの空隙率は、走査型電子顕微鏡を用いて活物質層の縦断面を観察し、得られた画像データから空隙部分と活物質の部分をカウントし、それらの比率を計算することにより求めた。なお、上記負極活物質層の空隙率は、柱状粒子内の空隙と柱状粒子間の空隙との合計である。このことは、以下の実施例2−2〜2−5でも同じである。
柱状粒子内の空隙の最大径は、0.5μmであり、柱状粒子の径は、24μmであった。
(iii)電池の作製
負極2−1を用い、対極として金属リチウムを用いて、図17に示すようなコイン型電池を作製した。なお、この場合、対極として金属リチウムを用いているため、負極2−1は正極として機能するが、コバルト酸リチウム(LiCoO2)などのリチウム含有遷移金属酸化物を活物質として含む対極を用いた場合には、負極として機能する。
まず、15mmφに打ち抜いた厚さ300μmの金属リチウムを、ステンレス鋼(SUS)製封口板の内面に貼り付けた。このとき、金属リチウムと封口板との間には、集電体は配置しなかった。
金属リチウムの上に、セパレータを配置した。セパレータには、厚さ20μmのポリエチレンからなる微多孔質膜(旭化成ケミカルズ(株)製)を用いた。セパレータの上に、12.5mmφの円形状に成形した上記負極1を配置した。この後、非水電解質を滴下した。非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:5:2の混合溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で溶解することにより、調製した。
極板群の厚さを調整するために、負極2−1の上に、厚さ100μmのステンレス鋼板を配置し、その上に、ステンレス鋼製電池ケースを配置した。かしめ機を用いて、電池ケースの開口端部を、ポリプロピレン製絶縁パッキンを介して、封口板にかしめて、電池ケースを封口した。こうして、コイン型電池2−1を作製した。
《比較例2−1》
工程2および3を行わなかったこと以外、実施例2−1と同様にして、比較負極2Aを作製した。比較負極Aを用いたこと以外、実施例2−1と同様にして、比較電池2Aを作製した。
比較負極2Aの活物質層の厚さは、20μmであった。柱状粒子の径は20μmであった。負極活物質層の空隙率は、47.2%であった。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:10μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.9μm
比P1/S1:0.56
[評価]
(電子顕微鏡観察)
負極2−1および比較負極2Aの縦断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。負極2−1の電子顕微鏡写真を図40(a)に、比較負極2Aの電子顕微鏡写真を図40(b)に示す。
図40(a)に示されるように、負極2−1においては、第1突起に担持される柱状粒子の内部および柱状粒子と第1突起との界面に、微細な空隙が形成されていることが確認された。一方、比較負極2Aにおいては、第1突起に担持された柱状粒子内には、空隙は形成されていなかった。
(充放電試験)
充放電装置を用いて、以下の条件で、電池2−1および比較電池2Aの充放電試験を行い、1サイクル目の充電容量、1サイクル目の放電容量および1サイクル目の充放電効率を求めた。充電容量に対する放電容量の比を百分率値で表した値を、充放電効率とした。結果を、表8に示す。なお、表8において、充電容量と放電容量は、金属リチウムと負極との単位対向面積あたりの容量として表している。
定電流充電:充電電流:0.1mA、充電終止電圧:0V
充電後の休止時間:30分
定電流放電:放電電流:0.1mA、放電終止電圧:1.5V
更に、充放電試験後の電池2−1および比較電池2Aを分解し、活物質の剥がれおよび負極の変形の有無を目視で確認した。結果を表8に示す。
表8に示されるように、柱状粒子が内部に空隙を有さない比較電池2Aでは、充放電試験後に、比較負極2Aの活物質層が集電体から剥がれていた。そのために、比較電池2Aでは、充放電効率が顕著に低くなっていた。
一方、電池2−1においては、充放電試験後も、負極2−1の変形や活物質の剥がれは発生せず、充放電効率が65%という値を示した。
《実施例2−2》
基材部として、圧延銅箔の代わりに、ジルコニアを0.02重量%含有する、厚さ26μmの銅合金箔を用いた。工程1において、めっき法の代わりに、ロールプレス法を用いて、実施例2−1と同様な第1突起を形成したこと以外、実施例2−1と同様にして負極2−2を作製した。ロールプレス法においては、実施例2−1と同様のパターンでひし形の凹部が規則的に配置された、ステンレス鋼製のローラを用いた。ローラの線圧は1.5t/cmとした。プレス後の基材部の厚さは、20μmであった。第1突起の高さは、6μmであった。第1突起間のピッチS1およびS2は、それぞれ42μmおよび28μmであった。第1突起の頂部の表面粗さRz1は、0.2μmであった。第2突起を形成した後の、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は、3μmであった。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔:S:25μm
第1の仮想直線の間隔S1:42μm
第2の仮想直線の間隔S2:28μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.2μm
第2突起形成後の第1突起の各寸法および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:32μm、P2:15μm
第1突起の高さH:7.2μm
第1突起間の間隔S:25μm
第1の仮想直線の間隔S1:42μm
第2の仮想直線の間隔S2:28μm
第2突起の平均径d:0.56μm
第2突起の平均高さh:1.1μm
第2突起の平均突起間隔s:0.85μm
十点平均粗さRz2:3μm
比P1/S1:0.76
負極2−2において、活物質層の厚さは、20μmであった。活物質層の空隙率は、49.5%であった。柱状粒子内の空隙率は、4.3%であった。柱状粒子内の空隙の最大径は、1μmであり、柱状粒子の径は、18μmであった。
上記負極2−2を用いて、実施例2−1と同様にして、電池2−2を作製した。
《実施例2−3》
工程2において、第2突起を2段階のめっき法で形成する代わりに、エッチングによって第2突起を形成したこと以外、実施例2−2と同様にして、負極2−3を作製した。エッチング液には、CZ−8100(メック(株)製)を用いた。エッチング液を圧力0.2MPaで銅箔上に拭きつけた後純水で洗浄することによりエッチング処理を行った。なお、プレス後の基材部の厚さ、第1突起の高さ、第1突起間のピッチ、第1突起の頂部の表面粗さRz1は、実施例2−2と同じであった。エッチングにより第2突起を形成した後の、第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は、1.8μmであった。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔S:25μm
第1の仮想直線の間隔S1:42μm
第2の仮想直線の間隔S2:28μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.2μm
第2突起形成後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:26.5μm、P2:10.2μm
第1突起の高さH:5.2μm
第1突起間の間隔S:25μm
第1の仮想直線の間隔S1:42μm
第2の仮想直線の間隔S2:28μm
十点平均粗さRz2:1.8μm
比P1/S1:0.63
負極2−3において、活物質層の厚さは、20μmであった。活物質層の空隙率は、48.7%であった。柱状粒子内の空隙率は、1.3%であった。柱状粒子内の空隙の最大径は、1μmであり、柱状粒子の径は、18μmであった。
上記負極2−3を用いて、実施例2−1と同様にして、電池2−3を作製した。
《実施例2−4》
集電体に第1突起を形成する前に、あらかじめ第2突起を形成した。
まず、シート状の材料(厚さ18μmの電解銅箔)に、実施例2−1の工程2と同様にして、第2突起を形成した。その後、実施例2−2と同様のステンレス鋼製のローラを用いて、第1突起を形成した。この後、実施例2−1の工程3と同様にして、銅箔に防錆処理を施した。これにより、第2突起を担持した第1突起を含む集電体を得た。
プレス後の基材部の厚さ、第1突起の高さ、および第1突起間のピッチは、実施例2−2と同じであった。第2突起を含む第1突起の頂部の表面粗さRz2は、4.6μmであった。
第1突起の各寸法および第2突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:10μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔S:25μm
第1の仮想直線の間隔S1:42μm
第2の仮想直線の間隔S2:28μm
第2突起の平均径d:2μm
第2突起の平均高さh:2.7μm
第2突起の平均突起間隔:3.1μm
十点平均粗さRz2:4.6μm
比P1/S1:0.67
この集電体を用いたこと以外、実施例2−1と同様にして、負極2−4を作製した。負極2−4において、活物質層の厚さは、20μmであった。活物質層の空隙率は、47.6%であった。柱状粒子内の空隙率は、3.5%であった。柱状粒子内の空隙の最大径は、1.5μmであり、柱状粒子の径は、20μmであった。
上記負極2−4を用いて、実施例2−1と同様にして、電池2−4を作製した。
《実施例2−5》
実施例2−2と同様の銅合金箔上に、以下のような方法で、屈曲部を有する活物質粒子を形成した。
まず、実施例2−1と同様に、蒸着粒子の入射角を60°に固定して(位置A)、成膜し、3μmの活物質層を形成した。その後、真空装置から銅箔を取り出し、銅箔の方向を180°回転させて、再度真空装置の固定台の固定し(位置B)、逆方向から60°の入射角で蒸着粒子を3μm堆積させた。このように、銅箔を180°反転させながら、7回蒸着を行った。こうして、総厚21μmの活物質層を有する負極2−5を作製した。
負極2−5において、負極活物質層の厚みは21μmであった。負極活物質層の空隙率は50.2%であった。柱状粒子内の空隙率は5.2%であった。柱状粒子内の空隙の最大径は、4μmであり、柱状粒子の径は、24μmであった。
上記負極2−5を用いて、実施例2−1と同様にして、電池2−5を作製した。
《比較例2−2》
工程2および3を行わなかったこと以外、実施例2−2と同様にして、比較負極2Bを作製した。
比較負極2Bにおいて、プレス後の基材部の厚さ、第1突起の高さおよび第1突起の頂部の表面粗さRz1は実施例2−2と同じであった。負極活物質層の厚さは、20μmであった。負極活物質層の空隙率は、45.6%であった。柱状粒子の径は、20μmであった。
上記比較負極2Bを用いて、実施例2−1と同様にして、比較電池2Bを作製した。
形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:6μm
第1突起間の間隔:S:25μm
第1の仮想直線の間隔S1:42μm
第2の仮想直線の間隔S2:28μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.3μm
比P1/S1:0.67
[評価]
(電子顕微鏡写真)
負極2−2〜2−5および比較負極2Bの断面について、上記と同様に、電子顕微鏡を用いて観察した。得られた電子顕微鏡写真を図41に示す。図41(a)、図41(b)、図41(c)、図41(d)、および図41(e)は、それぞれ負極2−2、負極2−3、負極2−4、負極2−5および比較負極2Bの断面の電子顕微鏡写真である。
図41(e)から確認されるように、比較負極2Bでは、柱状粒子内に空隙が確認されなかった。一方、負極2−2〜2−5では、柱状粒子内、特に集電体との界面に空隙が形成されていることが確認された。
(充放電試験)
電池2−2〜2−5および比較電池2Bを用い、上記と同様にして、充放電試験を行った。また、充放電試験後の各電池を分解して、集電体からの活物質の剥がれおよび負極の変形の有無を目視で確認した。結果を表9に示す。
比較電池2Bでは活物質の剥がれが発生していた。一方、電池2−2〜2−5においては活物質の剥がれは発生せず、充放電効率も高い値を示すことが確認された。更に、銅合金箔を集電体に用いた電池2−2、電池2−3及び電池2−5では、負極の変形も確認されなかった。よって、負極集電体には、合金銅箔を用いることがより好ましい。
以上のように、柱状の活物質粒子がその内部および集電体と活物質粒子との界面付近に空隙を形成することにより、負極活物質粒子の膨張および収縮時の応力が緩和され、負極の変形および活物質の集電体からの剥がれを抑制できることが確認された。
《実施例3−1》
(i)負極の作製
実施例2−1と同様にして、第1突起を形成した。形成直後の第1突起の各寸法は以下の通りである。
第1突起の対角線の長さ P1:28μm、P2:12μm
第1突起の高さH:10μm
第1突起間の間隔(ピッチ)S:27μm
第1の仮想直線の間隔S1:50μm
第2の仮想直線の間隔S2:24μm
第1突起の頂部の十点平均粗さRz1:0.9μm
次に、第1突起を有する基材を、以下のような2段階のめっき処理に供して、第1突起の頂部を粗化した。基本的には、実施例1−1と同様の2段階のめっき処理に供した。
第1段階では、表10に示す組成の第1めっき液を用い、25℃で、表10に示す条件で、陰極電解を行い、第1突起上に粒状析出物を析出させた。第2段階では、表10に示す組成の第2めっき液を用い、50℃で、表10に示す条件で、陰極電解を行い、粒状析出物の表面に被膜を形成した。
次いで、第2突起を形成した基材は、実施例2−1と同様にして、防錆処理を施した。
このようにして、第1突起の頂部の粗化率が、7〜13.9の集電体3−1〜3−7を得た。なお、第1突起の頂部の粗化率は、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製の超深度形状測定顕微鏡VK−8500)を用い、上記で説明したようにして測定した。
次に、実施例2−1と同様にして、集電体3−1〜3−7上に、負極活物質層を形成した。負極活物質層の厚さは、集電体片面あたり22μmとした。
蒸着源には、純度99.9999%のケイ素単体((株)高純度化学研究所製)を用いた。水平面と固定台とのなす角度を60°とした。ケイ素単体の蒸着源に照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッション電流を250mAに設定した。酸素ガスの流量は、10sscmとした。
得られた負極活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量して、負極活物質(ケイ素酸化物)の組成を求めた。その結果、負極活物質の組成はSiO0.3であった。
集電体3−2〜集電体3−7を用い、上記と同様にして、負極3−2〜負極3−7を得た。
(ii)正極の作製
100重量部のコバルト酸リチウム(LiCoO2)(平均粒径5μm)と、3重量部のアセチレンブラック(導電剤)とを混合して、混合物を得た。得られた混合物に、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を加えて練合し、ペースト状の正極合材を得た。PVdFのNMP溶液は、4重量部のPVdFが添加されるように、前記混合物に加えた。
得られた正極合材を、アルミニウム箔からなる正極集電体(厚み15μm)の両面に塗着し、乾燥し、圧延して、正極を得た。塗布した正極合材の厚みは、集電体片面あたり85μmとした。
(iii)電池の組立
上記のようにして得られた負極3−1および正極を用いて、図18に示されるような積層型電池を作製した。
負極3−1を15mm×15mmのサイズに切り出し、負極集電体の活物質層を担持していない面に、ニッケル製の負極用リードをスポット溶接によって接合した。正極を14.5mm×14.5mmのサイズに切り出し、正極の端部に設けられた正極集電体の露出部に、アルミニウム製の正極リードをスポット溶接にした。正極の両面にポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ(厚み16μm)を配置し、さらにその外側に、負極を、正極活物質層と負極活物質層とが対向するように配置した。
積層した極板がずれないように、極板をポリプロピレン製の接着テープで固定して、スタックを得た。得られたスタックを、アルミニウムラミネート箔(昭和電工パッケージング(株)製、厚み95μm)からなる電池ケース68内に収容した。前記電池ケース68内に、1cm3の非水電解質を注入した。非水電解質は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジエチルカーボネートとを3:5:2の体積比で含む混合溶媒に、LiPF6(三菱化学(株)製)を1mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
次いで、電池ケースの開口部を、熱シールにより封口して、リチウム二次電池を得た。得られた電池を、電池3−1とした。
負極3−2〜3−7を用いたこと以外、上記のようにして、電池3−2〜3−7を得た。
《実施例3−2》
第1突起の表面を、ブラスト法を用いて粗化したこと以外、実施例3−1と同様にして、集電体を作製した。以下に、ブラスト処理の条件を示す。
ブラスト処理条件
研磨剤:アルミナ 粒径50μm
エア圧力:0.4MPa
処理時間:5秒(集電体3−8)および8秒(集電体3−9)
前記ブラスト処理により、粗化率が2.5の集電体3−8および粗化率が3.5の集電体3−9を得た。
集電体3−8および集電体3−9を用いて、実施例3−1と同様にして、電池3−8および電池3−9を作製した。なお、集電体3−8および電池3−8は比較例である。
《比較例3−1》
実施例3−1と同様にして、第1突起のみを形成した。こうして得られた集電体を、比較集電体3Aとした。比較集電体3Aのみを用いたこと以外、実施例3−1と同様にして、比較電池3Aを得た。
[評価]
上記のようにして得られた各電池のサイクル特性を、以下のようにして評価した。
(サイクル特性)
まず、各電池を、定電流定電圧充電により充電した。具体的に、各電池を、15mAの定電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、4.2vの定電圧で、電流値が0.75mAになるまで充電した。
10分間休止したのち、充電後の電池を、3mAの定電流で、電池電圧が2.0Vに低下するまで放電した。
上記のような充放電サイクルを50回繰り返した。なお、各充放電サイクル間において、10分間休止した。
50サイクル後の容量劣化率(%)を、表11に示す。なお、容量劣化率(%)は、以下の式:
100−{[(50サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)]×100}
により求めた。
また、粗化率と50サイクル後の容量劣化率との関係を、図42に示す。
表11および図42から、第1突起の頂部の粗化率が3.2以上の集電体を用いた場合には、50サイクル後の容量劣化率は、おおむね10%以下と非常に良好な値を示していることがわかる。一方、第1突起の粗化率が2.5以下の集電体を用いた場合には、容量劣化率が77%以上となり、サイクル特性が顕著に低下していた。
さらに、サイクル試験後に電池を分解し、負極を目視で観察した。その結果、粗化率が3.2以上の集電体の場合には、活物質層の集電体から剥離はほとんど観察されなかった。一方、粗化率が2.5以下の集電体の場合には、大半の電池において、活物質層の集電体からの剥離が観察され、集電体表面が露出していた。
なお、粗化率が20を超えるような集電体を用いる場合、第1突起の頂部の形状が非常に嵩高くなり、活物質層に対する集電体の厚みの割合が大きくなることがある。このため、電池のエネルギー密度が小さくなることがある。さらには、第1突起の表面の溝が細かくなることにより、集電体表面に活物質前駆体または活物質を堆積した際に、活物質前駆体または活物質が溝の中へ入り込みにくくなることがある。よって、高い粗化率を有効に使えなくなることがある。このため、第1突起の粗化率が20を超える集電体は、実用には適さない。
本発明は、様々な電池に適用可能であるが、特にリチウム二次電池に適用することが好ましい。本発明の電極および集電体は、特にリチウム二次電池の負極および負極用集電体として好適である。本発明によれば、リチウムイオン吸蔵時の膨張の大きい高容量の活物質を用いる場合でも、活物質の集電体からの剥がれを抑制することができるため、電池の信頼性が向上する。上記のような電極を含む本発明の電池は、例えば携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源に用いることができるが、その用途は特に限定されない。
10、20、140、60、81、106 集電体
11 基材部
11a、21a、205、84 平坦面
12 突起
21、31、201’、83 基材部
22、32、202、142、61、85、90、301 第1突起
22a、202a 第1突起の頂部
23、33a、33b、33c、206、207、208、91 第2突起
200 シート状の基材
201 シート状の材料
203 粒状析出物
204 被膜
40、80 電極
45、50、86 柱状粒子
51 第1の部分
52 第2の部分
53 第3の部分
54 第4の部分
70、100 蒸着装置
70a 中央隔離板
70b 遮蔽板
701 ガス導入管
702 集電体
71 排気ポンプ
72、101 チャンバ
73 巻き取りロール
75a〜f 搬送ローラ
76 第1キャン
77 第2キャン
78 巻き出しロール
79 坩堝
82 活物質層
87 柱状粒子内の空隙
88 柱状粒子間の空隙
102 固定台
103 ノズル
104 配管
105 蒸着源
302 第1の仮想直線
303 第2の仮想直線
304 第1の仮想直線と第2の仮想直線との交点
305 第1の仮想直線と第2の仮想直線とによって形成される矩形の中心
110、120、130 電池
111 正極
111a、136 正極リード
112 負極
113、124、133 セパレータ
114 電極群
115 正極端子
116、128 絶縁パッキン
117 下部絶縁リング
118、125、138 電池ケース
119、121 封口板
122、135 負極活物質層
123、134 負極集電体
126、132 正極活物質層
127、131 正極集電体
137 負極リード
139 封止剤

Claims (9)

  1. 集電体と、前記集電体に担持された、ケイ素元素を含む材料を含む活物質層と、を有し、
    前記集電体が、平坦面を有する基材部と、前記平坦面から突出した複数の第1突起と、前記第1突起の頂部から突出した複数の第2突起と、を有し、
    前記活物質層が、内部に空隙を有し、前記第1突起の頂部と接合する複数の柱状粒子を含む、電極。
  2. 前記柱状粒子が、前記集電体の法線方向に対して傾斜している、請求項1記載の電極。
  3. 前記柱状粒子が、前記集電体の法線方向に対して傾斜した複数の粒層の積層体を含む、請求項1記載の電極。
  4. 前記空隙が、前記集電体と前記柱状粒子との界面に存在する、請求項記載の電極。
  5. 前記第2突起を含む前記第1突起の頂部の表面粗さRz2が、1〜7μmである、請求項1から4のいずれか1項に記載の電極。
  6. 前記活物質層において、前記柱状粒子間に空隙が存在する、請求項記載の電極。
  7. 前記活物質層の空隙率が、10%以上70%未満である、請求項記載の電極。
  8. 前記ケイ素元素を含む材料が、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸素とを含む化合物、およびケイ素と窒素とを含む化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項記載の電極。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電極と、前記電極の対極と、電解質とを含む電池。
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