JP2008098157A - リチウムイオン二次電池用負極およびそれを用いるリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シート状の集電体およびその上に担持された活物質層を備え、集電体は、基材部および基材部よりも塑性変形しやすい表層部を含み、表層部は、凹凸を有しており、活物質層は、ケイ素を含む複数の柱状粒子を含み、前記柱状粒子が表層部に担持されているリチウムイオン二次電池用負極、ならびにそれを用いるリチウムイオン二次電池。
【選択図】図5
Description
ただし、上記のような負極活物質は、リチウムを吸蔵するときに結晶構造が変化し、その体積が増加する。充放電時の活物質の体積変化が大きいと、活物質と集電体との接触不良等が生じるため、充放電サイクル寿命が短くなる。
このような表層部は、基材部の表面に圧着された純度の高い銅箔を含んでもよいし、基材部の表面に銅をメッキすることにより形成されてもよいし、基材部の表面に銅を蒸着することにより形成されてもよい。
また、基材部を、表層部と比較して硬度の高い層とすることで、金型を用いて、集電体の表面に凹凸を形成する場合に、集電体全体がゆがむことがない。
さらに、集電体上に活物質層を形成する場合、集電体の表面には凹凸が形成されているので、凸部に集中的に、ケイ素を含む柱状の活物質粒子を形成できる。このため、柱状粒子間に隙間が形成される。この結果、充電時の柱状粒子の膨張応力が緩和されて、柱状粒子が集電体から剥がれることが抑制されるとともに、極板の変形も抑制される。
なお、ビッカース硬さは、JIS Z2244に準拠して測定することができる。
集電体全体がゆがんだり、集電体にうねりが生じたりすると、負極、セパレータ、および正極を捲回して、電極群を構成することが困難となる。また、不必要な空間が電極群内に形成されるため、リチウムイオン二次電池の容量が低下する。
また、表層部が多孔質である場合、凹凸を設ける前の表層部の表面粗さRaは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、表面粗さRaは、JIS B0601−1994に準拠して測定することができる。
本発明において、電着とは、所定の金属イオンを含む電解液を用い、通常のメッキの場合よりも高い電流密度(例えば、限界電流密度以上)を用いることにより、所定のサイズの多数の金属粒子を基材部の表面に成長させ、金属粒子を固定させることをいう。金属粒子の基材部表面への固定は、例えば、金属粒子とその周りに、所定の金属からなる薄膜が形成されるようにめっきを施すことで行うことができる。
表層部の厚さは、上記と同様に、SEMを用いて求めることができる。
なお、表層部のビッカース硬さが200よりもかなり低い場合には、基材部のビッカース硬さは、200程度でもよい。
なお、表層部のビッカース硬さが低い場合には、ステンレス鋼箔を、基材部として用いることもできる。
また、基材部の厚さに対する凹凸が設けられた表層部の厚さの比は、基材部の上記厚さの範囲に応じて、3〜50%であることが好ましい。
このような集電体は、例えば、上記銅合金からなる硬質の銅箔(基材部)と、硬質の銅箔よりも純度の高い銅箔(表層部)とを張り合わせることにより形成することができる。なお、硬質の銅箔と純度の高い銅箔とは、純度の高い銅箔に凹凸を設ける時に、圧着させることができる。従って、このような構成の集電体は、接着剤等を使用することなく作製することができる。
銅比率の高い銅材料から構成される多孔質の表層部は、例えば、上記のように、銅を含む基材部と、基材部よりも純度の高い銅箔とに張り合わせ、その純度の高い銅箔をエッチングすることにより作製することができる。基材部と純度の高い銅箔を張り合わせる代わりに、メッキ法または蒸着法により、基材部の上に、基材部よりも純度の高い銅からなる層を形成し、その純度が高い銅からなる層をエッチングしてもよい。
または、銅を電着することにより、基材部の表面に、基材部よりも純度の高い銅から構成される多孔質の表層部を作製することもできる。
集電体の表面が凹凸を有する場合、集電体に活物質を堆積させると、活物質は集電体に設けられた凸部に主に担持されるため、集電体の表面には、活物質からなる複数の柱状粒子が形成される。つまり、各柱状粒子は離れて存在し、柱状粒子間には隙間が存在する。このため、活物質である柱状粒子の充電時の膨張応力が緩和されて、柱状粒子が集電体から剥がれることが抑制されるとともに、極板の変形も抑制される。よって、活物質の集電性が確保され、均一な電極反応を維持することができるので、サイクル特性が優れた電池を得ることが可能となる。
ケイ素合金としては、例えば、Si−Ti系合金、Si−Cu系合金が挙げられる。
ケイ素化合物としては、例えば、窒化ケイ素(SiNx)が挙げられる。
図1の装置は、2つの凹凸形成用の加工ロール1と、加工ロールを支える2つのバックアップロール2とを備える。凹凸形成用の加工ロール1の表面は硬質材料から構成されており、規則的に凹凸が形成されている。加工ロール1の例としては、孔を規則的に形成したセラミック層を表面に備える鉄製ロールが挙げられる。なお、上記セラミック層は、鉄製ロールの表面に、酸化クロムのようなセラミックを溶射することにより形成することができる。孔は、レーザー加工によりセラミック層に形成することができる。
集電体前駆体10を2つの加工ロール1で加圧しながら、集電体前駆体10を矢印の方向に移動させる。本発明においては、集電体の表面に塑性変形しやすい表層部が設けられているために、図3に示されるような、凹凸を有する表層部11bを含む負極集電体11を容易に形成することができる。
蒸着装置40は、酸素ガスをチャンバー41内に導入するための配管44とノズル43を具備する。ノズル43は、真空チャンバー41内に導入された配管44に接続されている。配管44は、マスフローコントローラ(図示せず)を経由して、酸素ボンベ(図示せず)と接続されている。
ノズル43の上方には、負極集電体11を固定する固定台42が設置されている。固定台42の鉛直下方には、ターゲット45が設置されている。負極集電体11と、ターゲット45との間には、酸素ガスからなる酸素雰囲気が存在している。
ターゲット45には、ケイ素を含む材料、例えば、ケイ素の単体を用いることができる。
ターゲット45としてケイ素の単体を用いる場合、ターゲット45に電子ビームを照射すると、ターゲット45から、ケイ素原子が蒸発する。蒸発したケイ素原子は、酸素雰囲気を通過して、酸素原子とともに、集電体の表層部11b上に堆積する。このようにして、ケイ素酸化物を含む活物質層12が集電体上に形成される。このとき、集電体表面の凸部に集中して、酸素原子とともにケイ素原子が堆積され、凹部には、それらの原子はほとんど堆積されない。このため、活物質層12は、表層部11bの凸部上に担持された、ケイ素酸化物を含む複数の柱状粒子12aから構成されることとなる。
このようにして、図5に示されるような、一方の表層部11b上のみに活物質層12が形成された負極13を形成することができる。
あるいは、柱状粒子全体としての成長方向が、集電体の表面の法線方向と平行となれば、各粒層の成長方向は、それぞれ異なる方向に傾斜していてもよい。
図7の柱状粒子の各粒層の厚みは、図6の柱状粒子の粒層の厚みより薄い。また、図7の柱状粒子は、その輪郭が、図6の柱状粒子と比較して、滑らかとなっている。
図7の柱状粒子においても、柱状粒子全体としての平均的な成長方向が集電体の表面の法線方向と平行となれば、各粒層の成長方向は、集電体の表面の法線方向から傾斜していてもよい。なお、図7の柱状粒子において、第1の粒層71の成長方向はA方向であり、第2の粒層72の成長方向は、B方向である。
(180−β)°である位置(位置B)である。角度β°は、形成しようとする負極活物質層の寸法などに応じて適宜選択できる。
また、酸素雰囲気の代わりに窒素雰囲気を用い、ターゲットとしてケイ素の単体を用いることにより、集電体上に窒化ケイ素を堆積させることもできる。
さらに、例えば、ケイ素の単体からなる活物質粒子またはケイ素合金からなる活物質粒子は、上記蒸着装置において、ケイ素の単体、またはケイ素合金を構成する元素を含む材料(混合物を含む)をターゲットとして用い、真空下で蒸発させることにより、作製することができる。
図9の電池90は、電池ケース94に収容された積層型の電極群および電解質(図示せず)を含む。電極群は、正極91、負極92および正極91と負極92との間に配置されたセパレータ93を含む。負極92は、上記のように、基材部と凹凸を有する表層部とを含む集電体92aおよび負極活物質層92bを具備する。負極活物質層92bは、前記表層部の上に形成された複数の柱状の負極活物質粒子を含む。なお、図9の電池において、負極活物質層は、負極集電体の片面にのみ設けられている。
正極91は、正極集電体91aおよびその片面に担持された正極活物質層91bを具備する。
電池ケース94は、互いに反対方向の位置に開口部を有しており、電池ケース94の一方の開口部から、正極リード95の他端が外部に延ばされており、電池ケース94の他方の開口部から、負極リード96の他端が外部に延ばされている。電池ケース94の開口部は、シール材97を用いて密封されている。
正極に添加される結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
正極に添加される導電剤としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類、ならびにポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
図9に示すような積層型のリチウムイオン二次電池を作製した。
(i)正極の作製
正極活物質である平均粒径約10μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末10gと、導電剤であるアセチレンブラック0.3gと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン粉末0.8gと、適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを充分に混合して、正極合剤ペーストを調製した。
得られたペーストを、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の片面に塗布し、乾燥し、圧延して、正極活物質層を形成した。次いで、得られた正極シートを、所定形状に切断して、正極を得た。得られた正極において、アルミニウム箔の片面に担持された正極活物質層は、厚み70μmであり、30mm×30mmのサイズであった。
正極集電体の正極活物質層を有さない方の面には、アルミニウム製の正極リードの一端を接続した。
図1に示すような、凹凸形成用の加工ロールと、加工ロールを支えるバックアップロールとを備える装置を用いて、基材部と、凹凸を有する表層部とを含む集電体を作製した。凹凸形成用の加工ロールとしては、規則的に形成された孔を有する酸化クロム層を備える鉄製のロールを用いた。酸化クロム層は、鉄製のロールに酸化クロムを溶射することにより形成した。孔は、レーザー加工により形成した。孔の直径は10μmとし、孔の深さは11μmとした。隣り合う孔の中心間距離は20μmとした。
図10に、本実施例で作製した集電体を模式的に表した縦断面図を示す。本実施例では、直径が10μmの円柱状の凸部を形成した。集電体の表面の法線方向に平行な方向から見たときの凸部の形状は円形であるため、その重心と中心とは一致する。よって、本実施例において、隣接する凸部間の間隔Pは、20μmであった。
蒸着装置に設けられたノズルからは、純度99.7%の酸素ガス(日本酸素(株)製)を、流量80sccmで放出した。ターゲットには、純度99.9999%のケイ素単体((株)高純度化学研究所製)を用いた。
得られた負極板の重量から負極集電体の重量を差し引いて、活物質層の重量Wを求めた。その活物質層の重量WとSiO0.5の密度D(2.3g/cm3)から、活物質層の体積(W/D)を求めた。活物質層の厚みT(17μm)と、活物質層を担持する集電体の領域の面積S(961mm2)とから、活物質層の全空間体積(S×T)を求めた。得られた活物質層の体積(W/D)および活物質層の全空間体積(S×T)を用いて、活物質層の空隙率P(=100〔{ST−(W/D)}/ST〕)を求めた。その結果、活物質層の空隙率は、40%であった。
なお、上記の計算において、Siの真密度(2.33g/cm3)とSiOの真密度(2.24g/cm3)の平均値を、SiO0.5の密度とした。
蒸着装置内に、負極板およびタンタル製ボートを配置し、ボートに所定量のリチウム金属を装填した。ボートは、負極板の活物質層に対向するように固定した。
ボートに流す電流値を50Aに設定して、10分間蒸着を行った。このように負極にリチウム金属を蒸着することによって、SiO0.5からなる負極活物質に、初回充放電時に蓄えられる不可逆容量のリチウムを補填した。この後、リチウム金属を蒸着させた負極板を31mm×31mmのサイズに裁断した。このようにして、負極1Aを得た。
負極集電体の負極活物質層を有さない面には、ニッケル製の負極リードを接続した。
上記のようにして得られた正極と負極との間に、厚み20μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ(旭化成(株)製)を配置して、積層型の電極群を作製した。このとき、正極と負極とは、正極活物質層と負極活物質層とがセパレータを介して対向するように配置した。
得られた電極群を、電解質とともに、アルミニウムラミネートシートからなる電池ケースに挿入した。
電解質は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:1の体積比で含む混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
(負極1B)
実施例1で用いた銅合金箔のみを負極集電体として用いた。銅合金箔には、実施例1と同様にして、凹凸を形成した。凹凸の平均高低差は1μmであった。
得られた負極集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、負極1Bを作製した。負極1Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較電池1Bを作製した。
(負極1C)
実施例1で用いた圧延銅箔のみを負極集電体として用いた。実施例1と同様にして、圧延銅箔に凹凸の形成を試みた。しかしながら、圧延銅箔が加工ロールを通過して出てきたところで、圧延銅箔にシワが生じた。このため、圧延銅箔のみを、負極集電体とすることは不適切であると判断された。
(i)サイクル特性
まず、電池1Aおよび比較電池1Bを、それぞれ20℃の恒温槽に収容し、以下のような定電流定電圧方式で、電池を充電した。各電池を、電池電圧が4.2Vになるまで1Cレート(1Cとは1時間で全電池容量を使い切ることができる電流値)の定電流で充電した。電池電圧が4.2Vに達した後は、電流値が0.05Cになるまで、各電池を4.2Vの定電圧で充電した。
次に、20分間休止した後、充電後の電池を、1Cレートのハイレートの定電流で、電池電圧が2.5Vになるまで放電を行った。
このような充放電を100サイクル繰り返した。
また、100サイクル後の負極の状態を目視により確認した。結果を、表2に示す。
表層部の形成方法を、以下のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、負極2A〜2Eを作製した。負極2A〜2Eを用いたこと以外、実施例1と同様にして、電池2A〜2Eを作製した。
表層部を構成する材料として、実施例1で用いた圧延銅箔を、真空中、200℃で1時間熱処理した銅箔を用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極2Aを作製した。真空中での熱処理により、組成を変化させることなく、ビッカース硬さを低下させることができる。
表層部のビッカース硬さをビッカース硬度計で測定した結果、ビッカース硬さは70であった。集電体の凹凸の平均高低差は9μmであった。凹凸を設けた後の表層部の厚さは、8μmであった。
実施例1で用いた基材部である銅合金箔の表面上に、銅をメッキすることにより表層部を形成したこと以外、実施例1と同様にして、負極集電体を作製した。
メッキ法による表層部の作製は、以下のようにして行った。
硫酸銅五水和物を270g/Lの濃度で含み、硫酸を100g/Lの濃度で含む電解液中に、陰極として銅合金箔を浸し、電流密度5A/dm2、液温50℃の条件で、銅合金箔の表面に表層部である銅層を形成した。表層部の銅比率は99.9wt%以上であった。
メッキ法で形成した表層部のビッカース硬さをビッカース硬度計で測定した結果、ビッカース硬さは160であった。
集電体の凹凸の平均高低差は5μmであった。凹凸を設けた後の表層部の厚さは、8μmであった。
基材部である銅合金箔の表面上に、銅を蒸着させることにより、表層部を形成したこと以外、実施例1と同様にして、負極集電体を作製した。
蒸着法による表層部の形成には、図4に示すような、電子ビーム加熱手段(図示せず)を具備する蒸着装置((株)アルバック製)を用いた。
固定台に銅合金箔を固定した。固定台は水平面となるように固定した(α=0°)。固定台の鉛直下方には、銅合金箔の表面に堆積させるターゲットを設置した。ターゲットには、純度99.9wt%の銅単体((株)高純度化学研究所製)を用いた。
ターゲットに照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを100mAに設定した。
ターゲットに電子ビームを照射すると、銅原子が蒸発し、蒸発した銅原子が、固定台に設置された銅合金箔上に堆積し、銅層が形成される。蒸着時間は20分間に設定した。
表層部の銅比率は99.9wt%以上であった。蒸着法で形成した表層部のビッカース硬さをビッカース硬度計で測定した結果、ビッカース硬さは120であった。
集電体の凹凸の平均高低差は8μmであった。凹凸を設けた後の表層部の厚さは、8μmであった。
基材部である銅合金箔の表面をエッチング液で粗化することで、多孔質の表層部を形成したこと以外、実施例1と同様にして、負極集電体を作製した。
エッチング液としては、部分エッチング液(メック(株)製)を用いた。エッチング液の液温を35℃とし、エッチング時間を30秒とした。エッチング後の銅合金箔の表面粗さRaは、1.5μmであった。
エッチング法で形成した表層部のビッカース硬さをビッカース硬度計で測定した結果、ビッカース硬さは200であった。集電体の凹凸の平均高低差は3μmであった。
基材部である銅合金箔の表面に、電着により多孔質の表層部を形成したこと以外、実施例1と同様にして、負極集電体を作製した。
表層部を以下のようにして形成した。
硫酸銅五水和物を47g/Lの濃度で含み、硫酸を100g/Lの濃度で含む電解液中に、陰極として銅合金箔を浸した。電流密度30A/dm2、液温50℃の条件で、銅合金箔上に、多数の銅粒子を形成させて、多孔質の表層部を形成した。さらに、硫酸銅五水和物を235g/Lの濃度で含み、硫酸を100g/Lの濃度で含む溶液に、表層部が形成された集電体を浸し、電流密度3A/dm2および液温50℃の条件で、表層部に銅メッキを施した。この銅メッキにより、表層部の銅合金箔への密着力を向上させた。銅メッキ後の表層部の厚みは10μmであった。
上記電着により形成された銅粒子のメジアン径は、2μmであった。
負極2Dにおいて、凹凸を設けた後の集電体の厚さは30μmであった。なお、エッチングを行う前の銅合金箔の厚さは26μmであった。
上記のように、活物質層の空隙率が20%以上と大きいために、活物質層の膨張応力が十分に緩和され、極板におけるシワの発生やおよび活物質の剥がれが抑制されたことが、良好な容量維持率が得られた要因と考えられる。
負極集電体の基材部の種類を、以下のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、下記負極3A〜3Bを作製した。負極3A〜3Bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、電池3A〜3Bを作製した。
厚さ18μmのニッケル箔(ビッカース硬さ:300)を基材部として用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Aを作製した。負極3Aを用いて、実施例1と同様にして、電池3Aを作製した。なお、表層部は、実施例1と同じであるため、表層部のビッカース硬度は120であった。集電体の凹凸の平均高低差は7μmであった。凹凸を設けた後の表層部の厚さは、8μmであった。
厚さ18μmのステンレス鋼箔(ビッカース硬さ:200)を基材部として用いたこと以外、実施例1と同様にして、負極3Bを作製した。負極3Bを用いて、実施例1と同様にして、電池3Bを作製した。なお、表層部は、実施例1と同じであるため、表層部のビッカース硬度は120であった。集電体の凹凸の平均高低差は7μmであった。凹凸を設けた後の表層部の厚さは、8μmであった。
負極3Aおよび3Bで用いた集電体において、基材部の厚さは、18μmであった。
また、表6の結果より、基材部がニッケル箔であっても、ステンレス鋼箔であっても、サイクル特性が優れることが判明した。
負極活物質として、以下のように作製したケイ素合金またはケイ素化合物を用いて、負極4A〜4Cを作製した。負極4A〜4Cを用いたこと以外、実施例1と同様にして、電池4A〜4Cを作製した。なお、ケイ素合金に含まれるケイ素以外の金属元素Mとしては、リチウムと合金を形成しないTi(負極4A)またはCu(負極4B)を用いた。また、ケイ素化合物(負極4C)は、ケイ素以外の元素として窒素を含んだ。
負極活物質層の形成において、ターゲットに、Si粉末((株)高純度化学研究所製)とTiSi2粉末((株)高純度化学研究所製)との混合物(Si:TiSi2=3:1(モル比))を用いた。固定台と水平面の成す角αを60°に設定し、蒸着時間を25分に設定した。酸素ガスの流量は0sccmに設定した。前記以外は、実施例1と同様にして、負極4Aを作製した。
得られた活物質層に含まれる元素を蛍光X線分光法により定量した。その結果、形成されたケイ素合金の組成は、SiTi0.2であった。
負極活物質層の形成において、ターゲットに、Si粉末((株)高純度化学研究所製)とCu粉末((株)高純度化学研究所製)との混合物(Si:Cu=5:1(モル比))を用いた。固定台と水平面の成す角αを60°に設定し、蒸着時間を25分に設定した。酸素ガスの流量は0sccmに設定した。前記以外、実施例1と同様にして、負極4Bを作製した。
得られた活物質層に含まれる元素を蛍光X線分光法により定量した。その結果、ケイ素合金の組成は、SiCu0.2であった。
負極活物質層の形成において、ターゲットに、ケイ素単結晶((株)高純度化学研究所製)を用いた。チャンバー内に、酸素ガスの代わりに窒素ガスを導入した。ターゲットに照射される電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを300mAに設定した。固定台と水平面の成す角αを60°に設定し、蒸着時間を40分に設定した。前記以外、実施例1と同様にして、負極4Cを作製した。
なお、窒素ガスには、純度99.7%の窒素ガス(日本酸素(株)製)を用い、窒素ガスの流量は20sccmに設定した。また、ノズル付近には、電子ビーム照射装置を設置して、窒素ガスをプラズマ化した。電子ビーム照射装置において、加速電圧は−4kVに設定し、エミッションは20mAに設定した。
得られた活物質層に含まれる元素を蛍光X線分光法により定量した。その結果、ケイ素と窒素とを含む化合物の組成は、SiN0.2であった。
電池4Cの結果から、ケイ素と窒素とを含む化合物を活物質に用いても、優れた容量維持率が得られることがわかる。
負極活物質層を下記のように形成したこと以外は、実施例1と同様にして、負極5Aを作製した。活物質層には、実施例1と同様にリチウムを蒸着した。
負極5Aを用いたこと以外、実施例1と同様にして、電池5Aを作製した。
実施例2の負極2Eで用いた負極集電体を用い、図8に示される蒸着装置を用いて、図6に示されるような柱状粒子を含む負極活物質層を形成した。
ターゲット45であるケイ素単体に照射する電子ビームの加速電圧を−8kVとし、エミッションを500mAに設定した。ノズルから放出される酸素ガスの流量を、80sccmとした。固定台81に設置された集電体上にケイ素と酸素とを堆積させて、凸部上に第1の粒層60aを形成した。蒸着時間は2分30秒に設定した。
2 バックアップロール
10 負極集電体前駆体
10a 基材部
10b 凹凸を設ける前の表層部
11 負極集電体
11b 凹凸を設けた表層部
12 負極活物質層
12a 柱状の活物質粒子
13 負極
40、80 蒸着装置
41 チャンバー
42 ノズル
43 配管
44、81 固定台
45 ターゲット
60、70 柱状粒子
60a、60b、60c、60d、60e、60f、60g、60h 粒層
71 第1の粒層
72 第2の粒層
90 電池
91 正極
91a 正極集電体
91b 正極活物質層
92 負極
92a 負極集電体
92b 負極活物質層
93 セパレータ
94 電池ケース
95 正極リード
96 負極極リード
97 シール材
Claims (13)
- シート状の集電体と前記集電体上に担持された活物質層とを備え、
前記集電体は、基材部と、前記基材部よりも塑性変形しやすい表層部とを含み、前記表層部は、凹凸を有しており、
前記活物質層は、ケイ素を含む複数の柱状粒子を含み、前記柱状粒子は、前記表層部に担持されているリチウムイオン二次電池用負極。 - 前記表層部の硬度が、前記基材部の硬度よりも低い、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記基材部および前記表層部が、銅を含み、前記表層部に含まれる銅の濃度が、前記基材部に含まれる銅の濃度よりも高い、請求項2記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記表層部が、前記基材部の表面に圧着された純度の高い銅箔を含む、請求項3記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記表層部が、前記基材部の表面に銅をメッキすることにより形成された、請求項3記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記表層部が、前記基材部の表面に銅を蒸着することにより形成された、請求項3記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記表層部が、多孔質である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記表層部が、前記基材部をエッチングすることにより形成された、請求項7記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記表層部が、前記基材部の表面に銅を電着することにより形成された、請求項7記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記基材部および前記表層部が、銅を含み、前記表層部に含まれる銅の濃度が、前記基材部に含まれる銅の濃度よりも高い、請求項7記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記柱状粒子が、前記集電体の表面の法線方向に対して傾斜して成長した複数の粒層の積層体を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極。
- 前記積層体に含まれる複数の粒層の成長方向が、前記集電体の表面の法線方向に対し、第1方向と第2方向に交互に傾斜している、請求項11記載のリチウム二次電池用負極。
- リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極、請求項1〜12のいずれかに記載の負極および前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータを含む電極群と、リチウムイオン伝導性を有する電解質と、前記電極群および前記電解質を収容する電池ケースと、を具備するリチウムイオン二次電池。
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