JP4523153B2 - 易溶性薬物の二層性放出制御送達システムおよび方法 - Google Patents

易溶性薬物の二層性放出制御送達システムおよび方法 Download PDF

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は水に易溶性の薬物、例えば、抗糖尿病薬のメトホルミンなどの新しい剤形に関し、薬物を放出遅延させ、また長期間胃内に滞留させ、上部胃腸管に正常に吸収された薬物の有効な送達を可能にするものであり、またこのような剤形の製造方法に関する。
【0002】
(背景技術)
メトホルミンはインシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)の処置に用いられるビアグニド類の抗高血糖剤の1種である。これは通常グルコファージ(商品名)(TM−BMS)として塩酸塩の形で市販されている。
【0003】
メトホルミンは塩酸塩は本来胃腸管下部では本来透過性が低く、もっぱら胃腸管の上部でほとんど吸収されている。その経口的生物学的利用率は40〜60%の範囲であり、投与量の増加とともに減少する。このことはある種の飽和性吸収プロセス、または透過/移行時間制限吸収を示唆するものである。メトホルミンはまた水に非常によくとける(25℃にて >300mg/ml)。このことは製剤からの放出速度を緩慢にするのが困難であり、このような製剤からの薬物の初期爆破的放出の制御が問題になる。これら二つの難題はさらに、通常メトホルミン塩酸塩に要求されるという1錠あたり500mgという高投与単位量とあわさってさらに複雑になる(1997−PDR)。
【0004】
小腸、大腸および結腸での吸収の低さと一緒になって吸収が上部胃腸管に制限される薬物は通常経口制御送達システムの製剤の候補としては不適当であるとみなされている。吸収上のこの制限(例えば、胃腸管上部に)は「吸収領域(absorption window)」と言われている。
【0005】
胃腸管は胃(消化が行われる)からの消化物を小腸(原則的に吸収が行われる)に、さらに大腸(体液調節過程の一部として水が吸収/放出される)に進める。胃での非消化物の滞留時間は満腹なのか空腹なのかに関係する。粒状物質 (直径2、3ミリメートル以上)の典型的な胃からの移動時間は空腹状態の2、30分から満腹状態の2、3時間の間で変わる。小腸の通過時間は一定して3から4時間の程度である。
【0006】
経口放出制御送達システムは投与後遅延時間中、薬物の有効荷重の放出によって機能する。すなわち、放出制御投与形態は、ある種の薬物では吸収のよい胃腸管の領域で比較的短期間ですぎる。この投与形態は、やはり送達されるべき有効荷重のかなりの%で含まれている薬物を放出しながら、ある種の薬物では吸収が低いかない腸の領域を通過する。上記のような環境でこの投与形態から放出されるとき、薬物は吸収されない。すなわち、従来の放出制御送達システムにおける吸収領域に行われる当該薬物の投与は治療量以下の血中濃度となり、薬物の目的とする疾患の症状に効果のない処置となる。
【0007】
水にきわめて易溶性(例えば、100mg/ml以上)の薬物は放出制御経口投与形態に製剤化するのが困難である。溶解性は水に溶解するための医薬物質の推進力であり;他のすべての要素が一定であるならば、溶解性が高ければ、高いほど溶解率も大きい。
【0008】
放出制御投与形態では、製剤者は、例えば薬物をポリマーのマトリックスに包埋させるか、薬物が吸収のために分散し放出されるために通過するポリマー性障壁膜で薬物を包囲することによって溶解率を減少させようとする。この投与形態からの薬物の放出率を、水に高い易溶性を有する薬物を所望の血中濃度像に一致させた適当なレベルに減少させるために、大量のポリマーがマトリックスまたは障壁膜に必要である。送達されるべき薬物の総1日投与量が数ミリグラムのみのオーダーであれば、これは可能であるが、上記の水易溶性の多くの薬物は何百ミリグラムものオーダーの総1日投与量を必要とする。大量のポリマーを用いてこのような薬物の経口放出制御投与形態を作製することは可能であるが、許容できない程の大量の投与形態になる。
【0009】
放出制御投与形態に製剤化される高水溶性薬物のさらなる問題点は、著しくまた一定しない薬物の「爆発的放出」がこれらのシステムから起こることである。高水溶性薬物の爆発的放出は、投与形態の放出制御機構が確立され安定な放出速度になる前の、最初に例えば胃液などの液体に接触したとき、経口放出投与形態から生じる初期の急速な薬物の放出である。投与形態に製剤化するために用いられるポリマーマトリックスの水和は安定な放出速度を確立するための前提要件である。すなわち、容易に水和されるポリマーが所望の安定な放出速度を確立するために必要である。しかし、用いられるポリマーがゆっくり水和されると、望ましくないかつ一定しない爆発的放出が起こり得る。
【0010】
ビドンら(1)の検討はメトホルミンの吸収制限透過性を強く示唆している。挿管技術による空腸への薬物の潅流は、回腸への薬物の同様の導入と比較して、血漿濃度−時間像(一定量の吸収薬物)では2.5倍である。薬物が結腸中に投与されたとき、薬物は血漿に検出されない。薬物は摂取された投与形態から溶出後小腸に下降し、もし吸収速度が緩慢であると、所与の投与量の吸収が完了する前に、薬物が透過性の低い領域に到達し得る可能性がある。このような場合、所与の投与量の増加は吸収される投与量のパーセントの減少をもたらすことが予想される。
【0011】
メトホルミンを用いる治療計画の改革は投与回数の減少および多分服薬率を改善するであろう便宜を患者に与えることになる。従来の放出遅延製剤は常にメトホルミンの利用能に妥協してきた(2)。これは多分、投与形態が薬物に対して非常に低い透過性をもった胃腸管の領域に運ばれたとき、投与形態が放出されずに残っている薬物含有量のかなりの比率を含んでいるからである。投与回数を減らすために投与形態からの放出速度を有効血漿濃度を上げるようにしなければならないが、この速度での有効送達の可能性は、隣接する小腸から結腸に下降して行く過程での薬物に対する透過性の著しい減少と、薬物が十分吸収される胃腸管の領域での滞留時間の制限との作用の組合せの妥協である。胃腸管の「役に立つ」領域への下降時間は数時間のオーダーの可能性があるのみである。
【0012】
しかし、延長時間の薬物の所望の血漿濃度をもたらす可能性のある速度でのメトホルミンを放出する放出遅延投与形態から、生物学的利用率を持続または改良さえすることは、上部胃腸管での滞留を延長する投与形態から可能であるかもしれないが、固体物質について正常な移行時間は短くなるという機構とは反する。実際にこの原理が働くことは、メトホルミンを胃腸の運動性を減少させる薬剤であるプロパンテリンと同時投与した社内実験で示されている。メトホルミンのみを投与と比較すると、組合せるとAUCの増大、tmaxの遅延および薬物の治療的有効血漿濃度が維持される期間の延長をもたらした。
【0013】
糖尿病の治療のために用いるのでなく、第二の薬剤を用いる意図が上部腸管での滞留時間延長を達成することのみである場合に、プロパンテリンなどのさらなる薬剤とともに糖尿病の治療のためにメトホルミンなど薬物の投与を行うことは、最適吸収部位にメトホルミンの有効遅延送達の可能性はあるが、多くの不利益な点がある。同時投与薬物は他の望ましくない薬理学的作用、すなわち良好な患者に有害な副作用をもたらし、糖尿病の治療によって提供される患者の生活の質を落とす。さらに、化学的適合性または溶解度の相違のために2種の薬剤を適切に同時処方することが困難または不可能なことがあり、後者が上部胃腸管での滞留時間に影響を与える薬剤の必要な放出速度を阻害することがある。すなわち、患者は別々に服用し、所望の効果を達成するための複合投薬する必要がある。2つの投薬剤を服用する時期は、制限された吸収領域を有する薬物の効果的な送達にとっては重大であるが、多くの患者は正確に投薬剤を服用に失敗し、糖尿病に効果のない処置になる。
【0014】
先行技術の胃−滞留システム
本来長期胃滞留の性質を持ち、物質の胃腸管通過を促進するのに役立つ胃腸管に存在する運動性の波動像になんらかの抵抗性がある投与形態を提供するのが望ましい。このために種々検討がなされたが、成功の程度はいろいろである。
【0015】
先行文献に記載の研究方法にはつぎのようなものが含まれ得る:
(1)浮揚または浮遊システム
このシステムでは、投与後このシステムが分解する(そして多分得られた粒子が胃から移動する)か、そのデバイスの密度が浮遊性を失い、胃からの移動の原因である運動性波動で胃を容易に通過することができるまで、そのデバイスが液体を吸収するかのいずれかまで、低密度で従って胃の内容物に浮遊しているように設計されている。
(2)生物学的接着システム
このシステムでは、投与後液体を吸収し、外側の層が胃の粘膜に付着する粘着性であり接着性のある物質になるように設計されている。これは、例えば、このデバイスの外側の層が継続的な水和によって、またはずれに持続的にさらされることによって接着力が弱まるまで胃中での滞留を促進する。
【0016】
膨潤または膨張シテスム
このシステムでは、投与に際して投与形態の摂取が困難にならないように(例えば、長さ23mm巾11mmの長円形またはカプセル形の錠剤)十分小型に設計されている。摂取時、このシステムは急速に膨潤し、薬物の放出が必要な程度まで進行するまで幽門への通過を妨げる大きさまで膨潤する。このシステムのより小さな粒子への漸進的侵食または崩壊は胃から出て行くことを可能にする。
【0017】
(1)浮動/浮遊システム
胃の内容物中に浮遊するように設計された浮遊システムでは、浮遊は製剤成分の低密度よって生まれる。例えば、ワタナベらは、ポリマーおよび薬物の層が充填されている球状の発砲ポリスチレン粒子などの低密度外殻を用いている(3)。このようなシステムは必要な低密度を有しており、小粒子に分解して胃から移動する必要がないが、一方結局胃から出て行くのに必要な密度の制御された損失がないかも知れない。このシステムはまた、ポリスチレンの外殻の周囲に適用され得る薄層中に薬物が充填される容量が制限されている。このシステムに大量のポリマーをかぶせて、きわめて水易溶性の薬物の放出を遅延させるのは困難である。
【0018】
シェスは、胃の内容物に浮遊し得る低密度を有し、投与後ゆっくりと侵食され、浮遊性を失い、胃から放出されるカプセルおよび錠剤を含む水和制御システムを開示している(4、5、6)。
【0019】
浮遊性はまた、種々のpH値での薬物放出の制御と組み合わせて、pHでの溶解性にきわめて依存性の高い薬物の場合(7)により良い制御性、従ってpH環境に依存する薬物の溶解性を有するデバイスを作製することができる。
【0020】
これらの方法は、1日当たり最大数百ミリグラムまでの投与量で投与される薬物には適用可能であるが、より水易溶性の同様またはより多量の投与量には適用できない。より水易溶性の薬物を使用する場合のように、大量のポリマーが薬物の放出を遅延させるために必要な場合、カプセル投与形態は大きさが原因で不可能である。さらに、この技術の錠剤形態で薬物の比較的均一な分散は、きわめて水に易溶な薬物に見られる爆発的放出作用を容易に制御しないであろう。
【0021】
浮遊性の発生が、別の層から放出速度調節性を有する薬物含有層へと来る二層性錠剤法(8)は水和動力学的調節システムに見られるある種の課題を克服できるかもしれないが、この種のシステムは多分大きさの制限のために低い薬物負荷充填しかできないであろう。
【0022】
このシステム内の用時調製ガス発生による方法は、ガスが発生時に投与形態内に捕獲される場合、浮遊性を上昇させ、浮遊の程度、開始および持続について制御を改善できるかもしれない。イチカワはガス発生層に包囲された薬物充填核を有するデバイスを開示しており(9)、これはかわるがわるこのシステムから薬物の放出を制御し得るポリマー層に包囲されている。
【0023】
このような浮遊または浮揚性投与形態は、この投与形態が適当量の液体取りこむという必要性のために臨床的成功は限られてしまうように思われる(ひと飲みの水を摂取したときでも、利用され得る液体の総量がこのシステムの作動の助けとならないように、正常な胃の内容物が数十ミリリットル程度の少なさであることもあり得る)。デイビスら(10)はインビボで実験したとき、浮遊性製剤が非浮遊性製剤以上の利点がないと報告している。それらの性能は姿勢によっても変わる。垂直に座っている患者は浮遊性投与形態の胃内滞留を確実に延長させるかもしれないが、あお向けの患者は浮遊性投与形態をすぐに幽門へ提示し、胃からこの投与形態を早々と出してしまうことを可能にする(11)。この投与形態の物理的な大きさは、胃内滞留の延長を促進するために浮遊力が重要であるほどではないにしても重要であると思われる。従って、浮遊性/浮揚性投与形態は期待されても限られた適用のみである。
【0024】
(2)生物学的付着システム
ポリカルボフィルは経口投与形態の胃粘膜への付着を促進し、それによって、隣接する小腸の吸収部位に薬物をゆっくりと送達するように設計されたシステムの滞留時間を延長するのを促進するための適切なポリマーとして確認されている(ロンガーら、J. Pharm. Sci., 74, 406-411 (1985))。このシステムの動物モデルでの成功が、動物とヒトの粘膜量、粘稠度、ひだの違いのためにヒトの患者にあてはまらないことがわかっている。生物学的付着システムは投与形態を粘液性膜(mucous)に付着させるのであって粘膜(mucosa)にではない。ヒトの粘液性層は容易に投与薬物をつけたまま入れ替わるように思われる。従って、生物学的付着投与形態は、ヒトの小腸上部に数時間以上の薬物送達の遅延ための解決法を提供するとは思えない。
【0025】
(3)膨潤および膨張システム
胃内滞留の延長を促進するもう1つの解決法には、胃から出ていくのを妨げる大きさに胃内で急速に膨張する投与形態が挙げられる。このシステムは長時間完全な状態を保ち、こなごなに崩壊するまで全く胃から出ていかない。コールドウェル(12)は侵食性ポリマーでできた十文字形のデバイスであって、薬物が負荷され、包埋されゼラチンカプセル中に入っている。経口投与後、ゼラチン殻が分解し、包埋されたデバイスが外に出る。最少1.6cmで最大5cmの大きさで、胃を通過し得る大きさにポリマーが侵食されるまで、幽門を経て胃を通過しない。このシステムは実際幽門を塞ぐか、または予定より早くまたは遅く開き、食道または小腸を閉塞する可能性がある。それ自体、患者を非常な危険な目に合わせるかもしれない。
【0026】
投与形態を胃内滞留を調整するために大きさを利用する別の方法は、ヒトに投与するのに都合の良い大きさである、親水性侵食性ポリマーを用いるものである。このシステムは、水を飲むと短期間で胃内滞留を促進する大きさに膨潤し、上部胃腸管の吸収部位に、含有薬物の徐放性送達を可能にする。これらのシステムは侵食性親水性ポリマーまたはポリマー混合物でできているから、妥当な時間で容易に侵食され、胃を通過していく。膨張の時間を、膨張が食道内で起らないようにし、もしこのシステムが一部膨張した状態で腸に行った場合、水和ポリマーの侵食性および弾力性がこのデバイスによる腸閉塞の機会をなくする。
【0027】
ママジェクら、米国特許第4207890号は、薬物放出速度制御(調節)成分および膨張成分を膜内に封入した薬物と混合したシステムを開示している。膨張成分は液体を膜を通して引き込み、それが機能している間、システムを完全な状態に保ち、薬物調節成分は膜を通して薬物放出速度を制御する。
【0028】
ウアカートは、胃内滞留時間の延長を促進する大きさに達するように、液体を吸収してシステムが膨潤するヒドロゲルのマトリックスからなる異なる方法を開示している(13)。各ピルを包囲している脂肪酸およびろうの放出速度制御壁を有する薬物からなる多数の小さなピルをマトリックスが包囲している。
【0029】
シェル(14、15、16)は上部胃腸管の処置のための薬物送達または胃腸粘膜を刺激するまたは有害な薬物送達のためのシステムを開示している。膨潤ヒドロゲルポリマーは、その中にひとたびヒドロゲルマトリックスが水和されれば溶解する薬物粒子を包埋している。膨潤したマトリックスは胃内滞留を促進する大きさであるが、溶解した薬物のみが粘膜に到達し、徐々に送達され得る。すなわち、このシステムは刺激的薬物の固体粒子で粘膜を傷つけないし、上部胃腸管に薬物を送達するのに適している。これらのシステムは限られた水溶解性薬物の場合にのみ適用される。
【0030】
メトホルミンの場合、薬物の送達延長を可能にし、包埋されたデバイスを開くか膨張させるよりもこのシステムの膨潤を経て胃内滞留を延長し、しかも市場規模で製造し得る投与形態が好ましい。胃内滞留延長期間はメトホルミンの場合吸収領域のために必要である。
【0031】
メトホルミンの送達延長に関する別の問題はその非常に高水溶性である。必要な放出速度を得るために多くの先行技術が採用されるとしても、高濃度のポリマーが必要である。このことは放出延長投与形態からの薬物の急速なかつ一定でない初期放出(爆発)をもたらし得る。すなわち、後者は薬物放出および薬物血漿濃度の患者間の最少可変性(個々の患者に与えられる薬物の放出が変化する可能性を生じる)の真の制御を得るのを困難にするものである。
【0032】
易溶性薬物の先行技術放出制御システム
放出制御経口投与形態を創出する典型的な先行技術はマトリックスシステムか多粒子システムのいずれかである。マトリックスシステムは薬物を、親水性ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、カルボマー、ある種のメタアクリル酸ポリマー誘導体、アルギン酸ナトリウム、またはこれらの成分から選ばれる成分の混合物、と均一に混合し、得られた混合物(必要ならば、いくつかの添加物を用いて)を錠剤に打錠して製剤化される。エチルセルロース、ある種のポリマー性メタアクリル酸エステル、セルロースアセテートブチレート、ポリ(エチレン−共重合−ビニルアセテート)などの疎水性ポリマーを上記の材料と均一に混合してさらに放出制御を加えることができる。さらなる別法として、カルナウバ蝋、微結晶性ろうまたは市販の精製脂肪酸エステルなどのろうと薬物を顆粒化するか、または単純に混合することによるろうベースの錠剤内に薬物を包埋したものが挙げられる。上記のように、このような方法は非常に高水溶性薬物に用いることができない。
【0033】
多粒子システムは、十分な濃度に到達するまで核、通常、直径約0.8mm糖−澱粉混合物スフィアの上に薬物を重ね、薬物負荷スフィアの周囲に薬物放出障壁を生成させることによって調製される複数の薬物負荷スフィアに基づく投与形態からなる。薬物負荷スフィアはまた、薬物と添加物の混合物を湿った固まりとし、湿った固まりを穴のあいたスクリーンを通過させて短い糸状とし、球状化装置中で丸くし、乾燥し、薬物放出障壁を加える。薬物放出障壁は、カルナウバ蝋、またはグリセリン脂肪酸エステルなどのろう、またはエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物などのポリマー性障壁であってもよい。1日当たり数百ミリグラム以下のミリグラム単位の投与量の中程度可溶性薬物については、これらは十分役にたつ。
【0034】
いくつかの例において、先行技術のシステムは多粒子システム法を改良することによって非常に高水溶性薬物の放出制御製剤を提供するように思われる。フィシャーは、高酸性pHで部分的に溶解する性質を持つ薬物放出制御障壁で包囲された薬物含有核に基づく高水溶性薬物、特にアヘン作動薬についての多粒子システムを開示している(17)。
【0035】
ハンスラヤは薬物負荷核を、少なくとも1種の陰イオン界面活性剤を含有させることによってその性質を修飾し得るメタアクリル酸またはアクリル酸ポリマー誘導体で被覆している。このようなシステムで、放出速度制御層に厚い被覆層の使用に頼ることなく、高水溶性薬物の薬物放出を制御している(18)。
【0036】
ロレットは、親水性および疎水性シリカまたは珪酸塩の微粒子に基づく多粒子製剤からの薬物放出遅延を行っている(19)。多分、このシステムは高水溶性薬物に対して機能するであろう。
【0037】
多粒子システムは、錠剤に打錠しようとした場合粒子が損傷するため、通常カプセル中に充填され、単位投与形態にされている。一単位に含まれる総投与量は、容易に飲み込める大きさのゼラチンカプセル内の負荷可能量に抑えられており、通常は数百ミリグラム以下である。
【0038】
高水溶性薬物に適用可能な単位放出制御システムには、ハワード(20)に記載されている投与形態の周囲に数種の層をもったものが挙げられる。コーティングをしない場合は、ポリマーの特殊な混合物または薬物との複合体の形成が用いられる。マクレー(21)は、適当な腸溶性ポリマーとともにポリエチレンオキシドとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物を用いて、高水溶性薬物に一定の放出速度をもたせている。ベレンデュィック(22)は、高水溶性薬物とアクリル酸に基づく親水性ポリマーとを組合せ、これを疎水性マトリックス中に分散させている。
【0039】
アルザ浸透性システムの変法がベンラファキシン塩酸塩(23)などの高水溶性薬物に適していると報告されている。これらのシステムは薬物層と、水透過性/薬物不透過性膜(薬物のために膜に通過口のある)によってすっかり包囲されている浸透性誘導置換層の二層が必要である。
【0040】
高水溶性クラブラネートの顆粒は疎水性樹脂様物質の障壁層を採用して調製されており(24)、カプセルまたは圧縮錠中に放出制御性アモキシリン三水和物顆粒とともに処方される場合この物質を放出制御性にする。
【0041】
(発明の開示)
本発明により、胃腸管上部に吸収領域(窓口)をもつメトホルミンまたはその塩などの高水溶性および吸収領域をもつ薬物の処方についての新規な方法が見出され、本来的に胃内滞留の長い投与形態を提供する。これは(a)プロパンテリンなどの薬剤との同時投与が必要でなく、(b)製剤内に低密度製剤またはガス生成が必要でなく実施される。本発明の製剤は(a)大きさによって胃内滞留の延長を行うが、インビボで胃または腸の損傷を起こさないように分解し、(b)薬物放出を十分に制御し、薬物の初期爆発的放出は制御されている。本発明の製剤は、薬物動力学的パラメーターにおいて最少の患者間変化で薬物の放出遅延製剤を提供する。
【0042】
本発明は高水溶性および限られた吸収領域をもつすべての薬物に適用可能である。
【0043】
本発明の二層性放出制御送達システムは、(1)(a)高水溶性および限られた吸収領域(例えば、胃腸管上部)をもつ薬物、および(b)1種またはそれ以上の親水性ポリマー、および/または1種またはそれ以上の疎水性ポリマー、および/または他の種類の親水性化合物(例えば、1種またはそれ以上のろう、脂肪族アルコールおよび/または脂肪酸エステル)を含む、個々の顆粒または粒子の形態中に内側固体粒子層、および(2)内側固体粒子層の顆粒または粒子が分散され包埋されており、この外側固体連続層が1種またはそれ以上の親水性ポリマー、および/または1種またはそれ以上の疎水性ポリマー、および/または1種またはそれ以上の他の型の親水性化合物(例えば、1種またはそれ以上のろう、脂肪族アルコールおよび/または脂肪酸エステル)で形成された放出遅延物質を含んでいる外側固体連続層を含む、不均一な二層システムである。
【0044】
本発明の二層性放出制御製剤は、薬物の著しい初期爆発的放出なく制御および遅延させる方法で、特にメトホルミンまたはその医薬的に許容され得る塩などの高水溶性薬物の送達に適しており、薬物の放出(内側固体粒子層を形成する個々の分散粒子から遊離する)は効果的に制御される。薬物が内側層の粒子から放出されると、実質的に外側固体連続層を経て移動し、製剤から吸収可能な上部胃腸管に放出される。
【0045】
上記のように、内側固体粒子層は、その各々が薬物および1種またはそれ以上のポリマー性物質および/または他の型の疎水性物質を含んでいる個々に分離した粒子または顆粒で形成されている。実質的に、内側固体粒子層の成分は、個々の粒子または顆粒の周囲に障壁層のない粒子会合体中に存在する。
【0046】
外側固体連続層は、好ましくは連続外側固体層中に全体に分散され包埋された、薬物を含む粒子または顆粒(内側固体層を形成する)の連続層またはマトリックスである。
【0047】
さらに、本発明によって、糖尿病の治療方法が提供され、抗糖尿病薬を含む本発明の二層性放出制御製剤は治療を必要とする患者に投与される。採用される抗糖尿病薬はビグアニド、好ましくはメトホルミンまたは、塩酸塩、フマール酸塩またはコハク酸塩などの医薬的に許容され得る塩である。
【0048】
内側固体粒子層および外側固体連続層中に存在する、用語「放出遅延物質」とは、1種またはそれ以上の親水性ポリマー、および/または1種またはそれ以上の疎水性ポリマーおよび/または、例えば、1種またはそれ以上のろう、脂肪族アルコールおよび/または脂肪酸エステルなど他のタイプの疎水性化合物をいう。内側固体粒子層に存在する「放出遅延物質」は、外側固体連続層に存在する「放出遅延物質」と同じであっても異なっていてもよい。しかし、内側固体粒子層に存在する「放出遅延物質」は、外側固体連続層に存在する「放出遅延物質」と異なっているのが好ましい。
【0049】
用語「高水溶性薬物」または類似する用語は本発明の製剤中に用いるための薬物、薬剤または調合薬の特性を表す場合は、外界温度における水に対する溶解性をいい、少なくとも約50mg/ml H2O、好ましくは少なくとも約100mg/ml以上、さらに好ましくは、150mg/mlより大である。
【0050】
用語「限られた吸収領域(窓口)」または類似する用語は、本発明の製剤中に用いるための薬物、薬剤または調合薬の特性を表す場合は、約75%以下の経口生物学的利用能をいい、通常約60%以下、投与量の増加に伴ない通常減少し、ほぼ一定して透過性/移動時間制限的吸収であることをいう。
【0051】
本発明の二層性放出制御システムは、外側固体連続層に対する内側粒子層の重量比が約0.5:1〜約4:1、好ましくは約0.8:1〜約2:1の範囲である。
【0052】
内側固体粒子層は、約10〜約98重量%、好ましくは約15〜約95重量%の薬物を含み、約5〜約95重量%、好ましくは約7〜約85重量%の範囲内の量の親水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーおよび/または他の疎水性物質を含み、上記の%は内側固体粒子層の重量に基づく。混合物が用いられる場合は、親水性ポリマーは、疎水性ポリマーおよび/または別の疎水性ポリマーに対する重量比で、約0.05:1〜約19:1、好ましくは約0.1:1〜約10:1で含まれる。
【0053】
内側固体粒子層の粒子または顆粒の平均粒子径は、約30μm〜約0.8mm、好ましくは約50μm〜約0.5mmの範囲内である。
【0054】
外側固体連続層は親水性および疎水性ポリマーの混合物及び/または別の疎水性物質を、親水性ポリマーを、疎水性ポリマーまたは他の疎水性物質に対する重量比、約200:1〜約0.5:1、好ましくは約100:1〜約0.1:1で含む。
【0055】
内側固体粒子層および/または外側固体連続層に採用される親水性ポリマーとしては、これに限定されるものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、プロピレングリコールアルギネート、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポビドン、カルボマー、ペクチン酸カリウム、ペクチニン酸カリウムなどが挙げられる。
【0056】
内側固体粒子層および/または外側固体連続層に採用される疎水性ポリマーとしては、これに限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アンモニオメタクリレートコポリマー(Eudragit RL(商標)またはEudragit RS(商標))、メタアクリル酸コポリマー(Eudragit L(商標)またはEudragit S(商標))、メタアクリル酸−アクリル酸エチルエステルコポリマー(Eudragit L 100-5(商標))、メタアクリル酸エステル中性コポリマー(Eudragit NE30D(商標))、ジメチルアミノエチルメタアクリレート−メタアクリル酸エステルコポリマー(Eudragit E(商標))、ビニルメチルエーテル/マレイン酸無水物コポリマー、それらの塩およびエステル(Gantrez(商標))などが挙げられる。
【0057】
内側固体粒子層および/または外側固体連続層に採用される他の疎水性ポリマーとしては、これに限定されるものではないが、蜜蝋、カルナウバ蝋、微結晶性ろうおよびオゾケライトなどのろう;セトステアリルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール;セチルアルコールおよびミリスチルアルコール;およびグリセリルモノステアレート、グリセリルモノスオレアート、アセチル化モノグリセリド、トリステアリン、トリパルミチン、セチルエステルろう、グリセリルパルミトステアレート、グリセリルベヘネート、および水素化ひまし油などが挙げられる。
【0058】
親水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーが内側固体粒子層および/または外側固体連続層に用いられる場合、そのようなポリマーはイオン性または非−イオン性であってよく、好ましくは内側固体粒子層についてはイオン性であり、外側固体連続層については非−イオン性であることが好ましい。
【0059】
内側固体粒子層に使用するための好ましいイオン性ポリマーとしては、アルギン酸ナトリウム、カルボマー(Carbopol(商標))、カルシウムカルボキシメチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、メタアクリル酸−メタアクリル酸エチルエステルコポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート−メタアクリル酸エチルエステルコポリマー、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースマレエートなどが挙げられ、ナトリウムカルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0060】
外側固体連続層に使用するための好ましい非−イオン性ポリマーには、外側固体連続層の急速な水和を確実にし、薬物の一定でない重大な爆発的放出を最少化し、さらに効果的に内側固体粒子層を形成している分離した粒子または顆粒から遊離してくる薬物の放出を制御するものである。遊離する薬物は、外側固体連続層を形成する非−イオン性ポリマーを経て移動し、投与形態から放出されて吸収される。適当な水和性をもつ外側固体層のための好ましいポリマーには、約4000〜約100000cpsの粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP(メトキシル含有量19−24%であり、ヒドロキシプロピル含有量7−12%のヒドロキシプロピルメチルセルロース)、および約3〜約150cpsの粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USP(メトキシル含有量28−30%であり、ヒドロキシプロピル含有量7−12%のヒドロキシプロピルメチルセルロース)、および微結晶性セルロースなどを挙げることができる。外側固体層の特に好ましい具体例において、上記の好ましいポリマーは、約25:1〜約50:1、好ましくは、約30:1〜約40:1の重量比のヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP:ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USPの混合物として用いられる。
【0061】
本発明による好ましい二層性制御遅延放出送達システム下記のようなものである。
A.内側固体粒子層 内側固体粒子層の重量%
(1)メトホルミンHCl 55〜98
(またはコハク酸塩またはフマール酸塩)
(2)ポリマーまたは疎水性物質: 5〜45
エチルセルロースまたはナトリウム
カルボキシメチルセルロースまたは
グリセリルモノステアレート
(内側固体粒子層を形成する顆粒の平均粒子径:
0.05から2.0mm)

【0062】
B.外側固体連続層 外側固体連続層の重量%
(1)ヒドロキシプロピルメチル 60〜100
セルロース2208USP
(100,000cps)
(2)微結晶性セルロース 0〜30
(3)ヒドロキシプロピルメチル 1〜30
セルロース2910USP(5cps)
内側固体粒子層:外側固体層の重量比 0.5:1〜1.5:1
【0063】
C.任意成分 外側固体連続層の重量%
滑沢剤−Mgステアレート 0.02〜1
【0064】
ここに使用される好ましい薬物(高水溶性である)はメトホルミンまたはその医薬的に許容され得る塩、例えば、塩酸塩および、1997年12月に出願され係属中の米国特許出願番号(現在未定)(社内番号LA19)に記載(ここに、引用して明細書の記載とする)のメトホルミンのフマール酸塩(2:1)およびメトホルミンコハク酸塩(2:1)などの二塩基酸塩である。他のビグアニドはフェンホルミンまたはブホルミンまたはそれらの医薬的に許容される塩などが用いられる。
【0065】
最も好ましいのはメトホルミン塩酸塩、メトホルミン(2:1)コハク酸塩およびメトホルミン(2:1)フマール酸塩である。
【0066】
所望により、メトホルミンまたはその塩は他の抗高血糖剤と組合せて用いることができ、本発明の同一投与形態で経口的に、または別の経口投与形態でまたは注射により投与することができる。
【0067】
他の抗高血糖剤と組合せてのメトホルミンまたはその塩の使用は、これらの薬剤の個別から得られるであろう抗高血糖効果よりも大であり、またこれらの薬剤によって生じる抗高血糖効果を合計したものよりも大である。
【0068】
他の抗高血糖剤は、経口抗高血糖剤で、好ましくは、例えば、グリブリド(グリベンクラミドとも言われる)、グリメピリド(米国特許番号第4,379,785号に記載)、グリピジド、グリクラジドまたはクロルプロパミドなどのスルホニルウレアであり、他の公知のスルホニルウレアまたはβ−細胞のATP−依存性チャネルに作用する他の抗高血糖剤であり、好ましくはグリブリドである。
【0069】
メトホルミンまたはその塩は、スルホニルレアに対して、約300:1〜約50:1、好ましくは約250:1〜約75:1の重量比で用いられる。
【0070】
経口投与抗高血糖剤はまた、例えば、アカルボース(米国特許番号第4,904,769号に記載)またはミグリトール(米国特許番号第4,639,436号に記載)などのグリコシダーゼ阻害剤であってもよく、これらは別々の投与形態で投与することができる。
【0071】
本発明のメトホルミンの塩は、グリコシダーゼ阻害剤に対して、約300:1〜約2:1、好ましくは約200:1〜約25:1の重量比で用いられる。
【0072】
メトホルミンまたはその塩は、例えば、トログリタゾン(ワーナーランバートのレズリン(商標)、米国特許番号第4,572,912号に記載)、ゾルグリタゾーン(SKB)、ピオグリタゾン(Takeda)、ミツビシのMCC−555(米国特許番号第5,594,016号に記載)、グラクソウェルカムのGL−262570、エングリタゾン(CP−68722、ファイザー)またはダーグリタゾン(CP−86325、ファイザー)などのチアゾリジンジオン経口抗糖尿病薬(これはNIDDM患者にインシュリン感受性効果を有する)と組合せて用いることができる。
【0073】
メトホルミンまたはその塩は、チアゾリジンジオンに対して、約75:1〜約0.1:1、好ましくは約5:1〜約0.5:1の重量比で用いられる。
【0074】
経口投与抗糖尿病薬のスルホニルウレアおよびチアゾリジンジオンは約150mg以下の量で、別の急速溶解層としての本発明の二層性放出制御製剤とともに一つの錠剤に組込むことができる。
【0075】
メトホルミンまたはその塩は、例えば、インシュリンなどの非−経口投与抗高血糖薬、またはGLP−1(1−36)アミド、GLP−1(7−36)アミド、GLP−1(7−37)(ヘベナーの米国特許番号第5,614,492号に記載、この記載をここに引用して明細書の記載とする)などのグルカゴン様ペプチドなどのと組合せることができ、これは注射によってまたは経皮または口内錠によって投与することができる。
【0076】
さらに、本発明はII型糖尿病(NIDDM)および/またはI型糖尿病(IDDM)の治療方法を提供し、メトホルミンまたはその塩を含む本発明の二層性製剤の治療的有効量を所望により、他の抗高血糖剤と組合せて、処置を必要とする患者に投与される。
【0077】
例えば、グリブリド、グリメピリド、グリピリド、グリピジド、クロルプロパミドおよびグリクラジドなどのスルホニルウレアおよび、グリコシダーゼ阻害剤のアカルボースおよびミグリトールを上記製剤中に医師の使用説明書に指示された量および投与法によって用いることができる。
【0078】
チアゾリジンジオン抗糖尿病薬は、約0.01〜約2000mg/日を、1日当たり1回または1〜4回に分けて投与することができる。
【0079】
インシュリンは製剤中に医師の使用説明書に指示された量および投与法によって用いることができる。
【0080】
GLP−1ペプチドは、米国特許番号第5,346,701号に記載(セラテク)、米国特許番号第5,614,492号および第5,631,224号に記載(ここに引用して明細書の記載とする)されるように、経口口内錠で、経鼻投与でまたは非経口的に投与することができる。
【0081】
下記のさらなる種類の高水溶性薬物が本発明の二層性放出制御送達システムに使用することができる。
降圧剤および抗うつ剤は、グアネチジン(米国特許番号第2,928,829号に記載)およびグアノキシフェン(ベルキー国特許番号第612,362号に記載)関連するもの。
【0082】
抗生物質およびビリサイドは、例えば、アミジノマイシン(日本特許第21,418号に記載);
スタリマイシン(ドイツ特許第1,039,198号に記載);
アルファメニンB(公開ヨーロッパ特許出願第85/133550A2号に記載);
キチノボリン−A(公開ヨーロッパ特許出願第85/150,378A2号および米国特許番号第4,723,004号に記載);
ストレプトマイシン(米国特許番号第2,868,779号に記載);
SB−59(Justus Liebigs, Ann. Chem. (1973) 7, 1112-1140に記載);
TAN−1057−A(米国特許番号第4,971,965号に記載);
ストレプトニアジド(J. Am. Chem. Soc. (1953) 75, 2261に記載)などに関連するもの。
【0083】
免疫刺激剤は、ST−789(公開ヨーロッパ特許出願第88/260588号に記載)に関連するもの。
【0084】
ペプチドヒドロラーゼ阻害剤は、
ナファマスタト(米国特許番号第4,454,338号に記載);
ガベキサート(米国特許番号第3,751,447号に記載);
セピモスタト(米国特許番号第4,777,182号および第4,820,730号に記載)に関連するもの。
【0085】
Xa因子阻害剤は、
DX−9065a(公開ヨーロッパ特許出願第92/0540051号に記載)に関連するもの。
【0086】
抗炎症剤は、パラニリン(米国特許番号第2,877,269号に記載)
ペプチジルアルデヒド類(国際公開WO94/13693に記載)に関連するもの。
【0087】
抗アナフィラキシー剤は、GMCHA−TBP(バテブラスト)(米国特許番号第4,465,851号に記載)に関連するもの。
【0088】
抗−潰瘍剤は、ベネキサート(米国特許番号第4,348,410号に記載)、
デオキシスペルグアリン(米国特許番号第4,518,532号、第4,658,058号および第4,983,328号に記載)およびアルギニンに関するもの。
【0089】
ここに使用される適切な水溶性薬物には、分子量が好ましくは約100〜10000、より好ましくは約100〜約6000であり、アミノ酸分子を2〜35有するペプチドが含まれる。より高い分子量10000より大で約50000までの高分子量ペプチドも本発明の二層性製剤に含ませることができる。
【0090】
適切な小分子量ペプチドはアミノ酸分子約2〜約10、より好ましくは約2〜約6である。より好ましい小分子量ペプチドには、平均分子量約600のテトラペプチドであるフィブリノーゲン受容体拮抗剤(RGD含有ペプチド)が含まれる。これらのペプチド拮抗剤は1pmol/mLの低い血漿濃度の強力な血小板凝集阻害剤である。好ましいフィブリノーゲン拮抗剤としては、ペプチド シクロ(S,S)−Na−アセチル−Cys−(Na−メチル)Arg−Gly−Asp−Pen−NH2(アリら、ヨーロッパ特許第0341915号、その記載をここに引用して明細書の記載とする。)およびペプチド シクロ(S,S)−(2−メルカプト)ベンゾイル−(Na−メチル)Arg−Gly−Asp−(2−メルカプト)−フェニルアミド(ヨーロッパ特許第0423212号、その記載をここに引用して明細書の記載とする。)本発明に有用な他のフィブリノーゲン拮抗剤は、ピエルシュバッハーら、国際公開WO89/05150(US/88/04403);マルゲリー、ヨーロッパ特許第0275748号;アダムスら、米国特許番号第4,857,508号;ジマーマンら、米国特許番号第4,683,291号;ナットら、ヨーロッパ特許第0410537号、第0410539号、第0410540号、第0410541号、第0410767号、第0410833号、第0422937号、第0422938号;アリら、ヨーロッパ特許第0372486号、オーバら、国際公開WO90/02751(PCT/JP89/00926);クレインら、米国特許番号第4,952,562号;スカルボローウら、国際公開WO90/15620(PCT/US90/03417);アリら、PCT/US90/06514およびPCT/US92/00999に記載のペプチド; アリら、ヨーロッパ特許第0381033号およびヨーロッパ特許第0384362号に記載されたペプチド様化合物;および、RGDペプチド、シクロ−Na−アセチル−Cys−Asn−Dtc−Amf−Gly−Asp−Cys−OH(式中、Dtcは、4,4'−ジメチルチアゾリジン−5−カルボン酸およびAmfは、4−アミノメチルフェニルアラニン)である。
【0091】
RGDペプチドは本発明の製剤中に親水性層に対して約600mg/gまで、または製剤中0.1〜60mg/gの量で好適に含まれる。
【0092】
本発明の有用な他のペプチドは、これに限定されないが、例えば、モマニー、米国特許番号第4,411,890号および第4,410,513号;ボワーズら、米国特許番号第4,880,778号、米国特許番号第4,880,777号、第4,839,344号;および国際公開WO89/10933号(PCT/US89/01829号)に記載された他のRGD含有ペプチド;ペプチド、Ala−His−D−Nal−Ala−Trp−D−Phe−Lys−NH2(式中、Nalは、β−ナフチルアラニンを表す)およびモマニーら、米国特許番号第4,228,158号、第4,228,157号、第4,228,156号、第4,228,155号、第4,226,857号、第4,224,316号、第4,223,021号、第4,223,020号、第4,223,019号および第4,410,512号に記載のペプチドを含む。
【0093】
他の適切なペプチドには、成長ホルモン分泌ペプチド、(GHRP)His−D−Trp−Ala−Trp−D−Phe−Lys−NH2(モマニー、米国特許番号第4,411,890号、そのすべての記載をここに引用して明細書の記載とする)などのヘキサペプチドを含む。これは親水性層の約250mg/gまで、または製剤中の0.1〜25mg/gが都合よく含まれる。
【0094】
本発明の放出制御製剤中に使用するための適切なより大きいポリペプチドおよびタンパク質には、インシュリン、カルシトニン、エルカトニン、カルシトニゲン関連ペプチドおよびブタソマトスタチンおよびそれらの類似体およびそれらの同族体が含まれる。他の適切なより大きいポリペプチドには、ピエルシュバッハーら、米国特許第4589881号(?30残基);ビトルら、米国特許第4544500号(?20−30残基);およびディマルチら、ヨーロッパ特許第0204480号(?34残基)に記載されたポリペプチドが含まれる。
【0095】
本発明に有用な他の種類の化合物には、強いLH放出活性を示すかまたはLHRHの活性を阻害するLHRHの類似体または同族体;造血活性を有するHP5の類似体または同族体;降圧活性を有するエンドセリンの類似体または同族体;抗侵害活性を有するエンケファリンの類似体または同族体;コレシストキニンの類似体または同族体;免疫抑制活性を有するシクロスポリンAの類似体または同族体;心房性ナトリウム利尿因子の類似体または同族体;ペプチド性抗悪性腫瘍剤;ガストリン放出ペプチドの類似体または同族体;成長ホルモン抑制ホルモンの類似体または同族体;ガストリン拮抗剤;ブラディキニン拮抗剤;ニューロテンシン拮抗剤;ボンベシン拮抗剤;オキシトシン作動剤および拮抗剤;バソプレッシン作動剤および拮抗剤;ヒルジン類似体および同族体;細胞保護的ペプチドシクロリノペプチドの類似体および同族体;アルファMSH類似体; MSH放出因子(Pro-Leu-Gly-NH2)の類似体および同族体;コラーゲナーゼを阻害するペプチド;エラスターゼを阻害するペプチド、レニンを阻害するペプチド;HIVプロテアーゼを阻害するペプチド;アンギオテンシン変換酵素を阻害するペプチド;キマーゼおよびトリプターゼを阻害するペプチドおよび血液凝固酵素を阻害するペプチドなどが挙げられる。
【0096】
他の適切な薬物には、抗生物質、抗菌剤、抗悪性腫瘍剤、心血管性および利尿剤、抗炎症剤、免疫抑制および免疫刺激剤およびCNS剤などの非−ペプチド治療剤が含まれる。
【0097】
好ましくは、水溶性薬物は、上記のようなメトホルミンまたはその塩である。
【0098】
本発明の二層性放出制御製剤は、イヌ、ネコ、ヒトなどの治療を必要とする種々の哺乳動物に投与することができる。
【0099】
本発明の二層性放出制御製剤は、錠剤またはカプセルなどの従来のシステムの投与形態に組込ませることができる。上記の投与形態はまた必要な生理学的に許容され得る物質、賦形剤、滑沢剤、緩衝液、抗菌剤、増量剤(マンニトールなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸または重亜硫酸ソーダ)などを含んでいてもよい。
【0100】
投与量は、年令、体重、患者の症状および投与経路、投与形態および投与計画、および所望の効果によって慎重に調整されなければならない。一般に、上記のメトホルミンまたはその塩を含む製剤の投与形態は(それのみかまたは他の抗高血糖剤とともにかのいずれにせよ)、医師の使用説明書に記載されたメトホルミン塩酸塩(ブリストルマイヤーズスキブのグルコファージ(商標))について記載された量で投与することができる。
【0101】
メトホルミンまたはその塩および他の抗高血糖剤の組合せは別々にまたは、可能な場合は、従来の製剤法を採用して単一の製剤に処方することができる。
【0102】
本発明の種々の製剤は所望により、約0〜約90重量%、好ましくは約1〜80重量%の量で、ラクトース、糖、トウモロコシ澱粉、変性トウモロコシ澱粉、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウムなどの無機塩および/または木材セルロースおよび微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体などの充填剤または賦形剤を含むことができる。
【0103】
充填剤に加えてまたはその代わりに、1種またはそれ以上の結合剤を組成物の約0〜約35重量%、好ましくは約0.5〜30重量%の範囲内の量で含んでいてもよい。この使用に適した結合剤の例として、ポリビニルピロリドン(分子量約5000〜約80000、好ましくは約40000)、ラクトース、トウモロコシ澱粉、変性トウモロコシ澱粉などの澱粉、糖、アラビアゴムなどおよびカルナウバ蝋、バラフィン、鯨蝋、ポリエチレンまたは微結晶性ろうなどの微粉末状(500ミクロン以下)のろう結合剤などが挙げられる。
【0104】
組成物が錠剤の形態である場合は、1種またはそれ以上の、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、カルナウバ蝋などの錠剤用滑沢剤を、組成物の約0.2〜約8重量%、好ましくは約0.5〜2重量%の量で含んでいてもよい。所望により含まれていてもよい他の通常の成分には、保存剤、安定剤、抗接着剤またはシリカ流動調節剤またはシロイド銘柄の二酸化ケイ素などの滑沢剤およびFD&C色素を含んでいてもよい。
【0105】
本発明の錠剤はまた、錠剤組成物当たり0〜約15重量%のコーティング層を含んでいてもよい。コーティング層はそこに包埋されている内側固体層を含む外側固体層に適用され、1種またはそれ以上の、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマー、および/またはメタアクリル酸エステル中性ポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール−マレイン酸無水物コポリマー、β−ピネンポリマー、木材樹脂のグリセリンエステルなどの疎水性樹脂などのフィルム形成剤または結合剤、およびクエン酸トリエチル、フタール酸ジエチル、プロピレングリコール、グリセリン、フタール酸ブチル、ひまし油などの可塑剤を含む。核の錠剤およびコーティング処方のいずれも着色のためのアルミニウムレーキを含んでいてもよい。
【0106】
フィルム形成剤は、水、メチルアルコール、エチルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、塩化メチレン、ジクロロエタン、および1,1,1−トリクロロエタンなどの塩素化炭化水素を含む1種またはそれ以上の溶媒を含む溶媒系から用いられる。
【0107】
着色剤を使用する場合、着色剤はフィルム形成剤、可塑剤または溶媒組成物とともに使用する。
【0108】
投与にあたって治療効果に必要な薬物の量は当然選択される薬物、症状の性質および重篤性および処置を受けている動物によって変わり、最終的には医師の判断によることは当業者に自明である。さらに、薬物の最適量および各投与間隔は治療を受けている症状の性質および程度、投与の形態、経路および部位、治療を受けている具体的な患者によって決定され、このような最適条件は通常の技術によって定めることができる。また、治療の最適治療単位、すなわち投与の回数は通常の治療単位決定試験を用いて当業者によって確認される。
【0109】
上記のように、好ましい高水溶性薬物はメトホルミンまたはその塩であり、これは、1回、または2〜4回に分けての1日投与量につき、約2〜約43mg/kg、好ましくは約3〜36mg/kg、より好ましくは約4.5〜30mg/kg(または、約150〜約3000mg、好ましくは約250〜2500mg)の投与量で用いられる。
【0110】
本発明の二層性放出制御製剤は、本発明の下記の方法に従って調製される。
薬剤(好ましくはメトホルミンHCl)と親水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーおよび/または他の疎水性物質の混合物は、水、またはエタノール、イソプロパノール、アセトンまたはジクロロメタンなどの不活性有機溶媒、またはそれらの2種またはそれ以上の適当な混合物中に、分散/溶解され、実質的に均一な顆粒に調製される。この顆粒は乾燥され、固まりを砕くために0.5〜2mmの開口部のふるいを通す。
【0111】
得られた乾燥顆粒を親水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーおよび/または他の疎水性ポリマーと混合する。得られた混合物は通常滑沢剤とともに錠剤に打錠するか、またはカプセルに充填する。
【0112】
最終的な投与形態は圧縮錠剤かゼラチンカプセルかのいずれかであり、好ましくは錠剤である。錠剤は所望により、フィルムでコーティングしてもよい。単位投与量当たりの薬物の総量は患者にとって都合の良い大きさの投与量形態なるようにするが、食事とともに服用した場合、摂取後、容易に幽門を通過しない大きさ(15mmまたはそれ以上)のまま(または錠剤の構成に用いたポリマーの水和によって膨潤して)である。錠剤が水和後乾燥時の大きさの約3倍まで膨張すると、各薬物の実際の性質によって変わるが、750mgの薬物負荷量が可能である。15時間以上にわたって製剤のポリマーが徐々に侵食される場合、この投与形態は胃腸傷害を起こさないことは確実である。
【0113】
本発明の有用なメトホルミン製剤は、インビトロで試験した場合は下記のような薬物放出特性を示す。
時(時間) 放出%
1 28−39
2 43−57
3 53−70
5 70−88
7 80−98
10 >85
【0114】
実施例
下記の実施例は本発明の好ましい具体例を示す。
実施例1
二層性メトホルミンHCl製剤
エチルセルロースN10NF25gを、95%エタノール100ml中に溶解/分散させた。分散物にプラネタリーミキサー中でゆっくりと、メトホルミン塩酸塩500gを添加し、均一な湿った顆粒を生成させた。この顆粒を55℃にて1時間乾燥させ、口径0.8mmのふるいに通し、凝塊物を破砕した。メトホルミン−エチルセルロース顆粒(541g)をヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP351.5g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USP10gおよび微結晶性セルロース100.5gとプラネタリーミキサー中で10分間混和した。最終的にこの混合物を1w/w%ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、カプセル状錠剤に打錠し、各錠はメトホルミン塩酸塩500mgを含む。インビトロ薬物放出試験にかけると、下記の結果が得られた。
【0115】
時(時間) メトホルミン放出%
1 38.1
2 56.3
3 69.5
4 79.7
5 87.4
6 93.1
7 97.7
8 100
【0116】
実施例2
二層性メトホルミンHCl製剤
ナトリウムカルボキシメチルセルロース(ブラノーズ7HF)51gをメトホルミン塩酸塩500gと混合し、プラネタリーミキサー中で95%エタノールを用いて顆粒化させた。湿った顆粒を口径2mmのふるいに通し、ついで55℃にて1時間乾燥させた。乾燥顆粒(530g)をヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP(100000cps級)344g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USP(5cps級)9.5gおよび微結晶性セルロース100gとプラネタリーミキサー中で10分間混和した。この混和物を1w/w%ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、カプセル状錠剤に打錠し、各錠はメトホルミン塩酸塩500mgを含む。インビトロ薬物放出試験にかけると、下記の結果が得られた。
【0117】
時(時間) メトホルミン放出%
1 35.3
2 51.4
3 62.6
4 70.7
5 76.7
6 82.1
7 85.3
8 88.5
10 92.6
【0118】
実施例3
二層性メトホルミンHCl製剤
メトホルミン塩酸塩(502.5g)をナトリウムカルボキシメチルセルロース(ブラノーズ7HF)(50g)と小プラネタリーミキサー中で5分間混合し、混和を続けながら、十分量の水を添加し、湿った顆粒状の物体を生成させた。この湿った顆粒を60℃にて1時間乾燥させ、ハンマーミル中で細かくした。この顆粒化物をヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP(100000cps級)358g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USP(5cps級)10gおよび微結晶性セルロース102gから調製した混合物とプラネタリーミキサー中で10分間混和した。最後にこの混和物を1w/w%ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、カプセル状錠剤に打錠し、各錠はメトホルミン塩酸塩0.5gを含む。メトホルミンのインビトロ薬物放出試験にかけると、下記の結果が得られた。
【0119】
時(時間) メトホルミン放出%
1 33.1
2 47.6
3 57.5
4 65.1
6 76.5
8 84.3
10 88.6
【0120】
実施例4
二層性メトホルミンHCl製剤
グリセリンモノステアレート200gを高速シアーミキサー器中70℃に加熱し、メトホルミン塩酸塩199gを添加し、ミキサーを回転翼90rpm、チョッパー215rpmにて5分間作動させた。さらに、メトホルミン塩酸塩796を混和を続けながらゆっくりと添加し、顆粒を70℃に維持し、最初500rpmにて13分間、ついでさらに3分間、1000rpmにチョッパー速度を上げた。ついで器を65℃に冷却し、回転翼速度を20rpmに減速し、チョッパー速度を2000rpmに上げた。回転翼速度およびチョッパー速度を調節し、冷却を継続し、最終的に冷却固体顆粒を生成させた。0.8mmのふるいを通して塊をつぶした。
【0121】
この顆粒化物540.5gをヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP(100000cps級)350g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USP(5cps級)10gおよび微結晶性セルロース100gとプラネタリーミキサー中で10分間混和した。この混和物を1w/w%ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、カプセル状錠剤に打錠し、各錠はメトホルミン塩酸塩500mgを含む。メトホルミンのインビトロ薬物放出試験にかけると、下記の結果が得られた。
【0122】
時(時間) メトホルミン放出%
1 32.4
2 45.7
3 55.8
4 63.7
5 70.3
6 75.7
8 83.3
10 88.6
【0123】
実施例5
二層性メトホルミンHCl製剤
実施例3で調製したメトホルミン塩酸塩500mgを含む錠剤またはグルコファージ銘柄のメトホルミン塩酸塩500mg錠剤を、24人の患者に食後すぐに投与した(2×500mg錠)。血液試料を、0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、16、20、24時間後採取し、メトホルミンを測定した。平均血漿像は、製剤直接放出と比較して、インビボ薬物放出の有用な変化を示し、文献に記載の他のメトホルミン放出遅延製剤とは異なり、生物学的利用能に悪影響を与えなかった。
【0124】
薬理学的動態パラメーターにおける患者間個人差は下記の錠剤の平均パラメーター(%CV)によって具体的に示されるように許容されるものであった:
【0125】
Figure 0004523153
*中央値(min.、max.)
【0126】
すなわち、本発明の新規な製剤は糖尿病の治療におけるヒトに対するメトホルミン塩酸塩の投与に有用な進歩を示す。
【0127】
メトホルミン(2:1)フマレートの製造
メトホルミン塩基(8.71モル)(イオン交換カラムを通してメトホルミン塩酸塩から調製)をメタノール/H2O[5:1]に溶解した。撹拌しながら、エタノール中フマール酸(4.05モル)の溶液を1時間かけて窒素雰囲気下周囲温度(〜20℃)にて添加した。結晶化が直ぐに始まった。スラリーを1時間周囲温度にて撹拌後、生成物を濾取し、エタノールで洗滌後、真空下乾燥し、さらさらした白色結晶固体として、メトホルミン(2:1)フマレート塩を72M%の収率で得、融点は247−249℃であった。
【0128】
得られたメトホルミン(2:1)フマレート塩は水に対する溶解度140(mg/ml)、95%相対湿度/25℃で測定したとき、6時間にて水分吸収7%の吸湿性であり、低い圧密発生率であった。
【0129】
このようにして形成されたメトホルミン塩は実施例3の方法を採用して二層性放出制御製剤の製造に用いられる。
【0130】
実施例7
メトホルミン(2:1)スクシネートの製造
メトホルミン塩基(8.95モル)(イオン交換カラムを通してメトホルミン塩酸塩から調製)をメタノール/H2O[5:1]に溶解した。撹拌しながら、エタノール中コハク酸(4.42モル)の溶液を1時間かけて窒素雰囲気下周囲温度(〜20℃)にて添加した。塩の結晶化がコハク酸溶液の添加後直ぐに始まった。スラリーを1時間周囲温度にて撹拌後、生成物を濾取し、エタノールで洗滌後、真空下乾燥し、さらさらした白色結晶固体としてメトホルミン(2:1)フマレート塩を89M%の収率で得、融点は246−247℃であった。
【0131】
得られたメトホルミン(2:1)フマレート塩は水に対する溶解度95(mg/ml)、95%相対湿度/25℃で測定したとき、30分にて水分吸収1%の吸湿性であり、低い圧密発生率であった。
【0132】
このようにして形成されたメトホルミン塩は実施例3の方法を採用して二層性放出制御製剤の製造に用いられる。
【0133】
引用文献
【表1】
Figure 0004523153
【表2】
Figure 0004523153

Claims (16)

  1. (1)内側固体粒子層、および(2)内側固体粒子層の粒子が分散され包埋されている外側固体連続層を含む二層性医薬製剤であって:
    該内側固体粒子層の粒子は、
    (a) メトホルミンまたは医薬的に許容されるその塩から選択される高水溶性を有する薬剤;および(b) アルギン酸ナトリウム、カルボマー、カルシウムカルボキシメチルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースから選ばれる1種またはそれ以上のイオン性ポリマーである放出遅延物質;
    を含み、
    該外側固体連続層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである非イオン性ポリマーである放出遅延物質を含み、
    該内側固体粒子層に存在する放出遅延物質は該外側固体連続層に存在する放出遅延物質と異なり、
    該内側固体粒子層は、該外側固体連続層に対して、0.5:1〜4:1の重量比で存在する;
    ことを特徴とする、該医薬製剤。
  2. 該ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USPおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USPである、請求項1に記載の医薬製剤。
  3. 該ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、4000〜100000cpsの粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USPおよび/または3〜150cpsの粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USPである、請求項1に記載の医薬製剤。
  4. 薬剤が内側固体粒子層を形成する粒子から外側固体連続層を経て上部胃腸管に放出されるように設計された、二層性異種放出制御製剤である、請求項1に記載の医薬製剤。
  5. 薬剤がメトホルミン塩酸塩である、請求項1に記載の医薬製剤。
  6. 1以上の錠剤および/または1以上のカプセルの形の請求項1に記載の医薬製剤。
  7. 内側固体粒子層が分離している個々の粒子または顆粒の形態であり、外側固体連続層が、内側固体粒子層を形成している個々の粒子をその中に包埋させ、全体に分散させている連続するマトリックスである、請求項1に記載の医薬製剤。
  8. メトホルミンがメトホルミン(2:1)フマレートである請求項1に記載の医薬製剤。
  9. 薬剤が、内側固体粒子層の10〜98重量%の範囲内で内側固体粒子層内に存在する、請求項1に記載の医薬製剤。
  10. 内側固体粒子層が、30μm〜0.8mmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
  11. 内側固体粒子層が、メトホルミン、メトホルミン塩酸塩、メトホルミンスクシネート(2:1)塩またはメトホルミンフマレート(2:1)塩、エチルセルロースおよび/またはナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはグリセリンモノステアレートを含み、外側固体連続層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208USP(100000cps)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース2910USP(5cps)、および/または微結晶性セルロースを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
  12. 他の抗高血糖剤を更に含む請求項1に記載の医薬製剤。
  13. 該他の抗高血糖剤が、スルホニル尿素、グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリデンジオン、インスリン、またはグルカゴン様ペプチド−1である請求項12に記載の医薬製剤。
  14. 該他の抗高血糖剤がグリブライド、グリピジド、ピオグリタゾン、ゾルグリタゾーン、エングリタゾン、またはダーグリタゾンである請求項12に記載の医薬製剤。
  15. 二層性放出制御送達システムの形の請求項1に記載の医薬製剤の製造方法であって、メトホルミンまたは医薬的に許容されるその塩および放出遅延物質を含む個々の粒子を調製して内側固体粒子層を形成させ、内側固体粒子層を形成する個々の粒子を、放出遅延物質を含む外側固体連続層と混合し、それによって、内側固体粒子層を形成する個々の粒子を外側固体連続層内に分散かつ包埋させる方法。
  16. 請求項15に記載の方法により形成された二層性放出制御送達システム。
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