JP4391623B2 - セラミック電子部品用生シートの仮止め粘着テープ及びセラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクター、抵抗器、フェライト、センサー素子、サーミスタ、バリスタ、圧電セラミック等のセラミック電子部品の製造において、特にセラミックよりなる生シートを複数のチップに切断する工程で使用される仮止め粘着テープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、積層セラミックコンデンサは次の工程を経て製造されている。
【0003】
セラミック粉末のスラリーをドクターブレードで薄く延ばしてセラミックの生シートを形成し、該生シートの表面に複数の電極を印刷した後、複数の生シートを積層一体化して生シートの積層体を形成する。次に、該積層体を仮熱圧着した後、ダイサーもしくはギロチン刃等の切断具を用いて積層体を縦横に切断して複数のセラミック積層体のチップを形成し、そして、このチップ(ワークともいう)を焼成し、得られたチップの端面に外部電極を形成する。
【0004】
上記積層体を一体化する工程および積層体を裁断して生チップを形成する工程では、粘着テープを用いて生シートをシート固定用の台座上に仮固定し、切断した後、ワークを台座表面の粘着テープから剥離させる必要がある。その剥離の際に、ワークと粘着テープとの粘着力を低減させる必要があるが、粘着力を低減できない場合には、次のような問題が生じる。
(1)積層体そのものは未焼成体であるため、積層間の接着が十分ではない。そのため、チップを粘着テープ表面から剥離する際に、粘着テープの粘着力が強すぎると積層体に層間剥離を引き起こす。
(2)層間剥離を引き起こさない場合でも、粘着剤層がチップ底面に汚染物として付着し、次の工程にチップを送った場合、ブロッキングを起こしたり、汚染物の残渣も焼成されることにより有機物の焼成によりボイドやクラックの原因となる。
【0005】
以上のことにより、製品の信頼性や歩留まりに悪影響を及ぼす。
【0006】
そこで、従来では、例えば特公平6−79812号公報に開示されているように、熱発泡タイプの粘着剤層を有する粘着テープが使用されている。この粘着テープの粘着剤層には発泡剤が混入されており、積層体を切断した後加熱することによって、該発泡剤の作用でワークとの接触面積を小さくし、ワークが粘着テープ表面から容易に離型できるようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この粘着テープは発泡温度が高いため、粘着テープを加熱する際に積層体中のバインダーが蒸発してワークを汚染したり、仮焼成前にバインダーが蒸発するので積層体が所定硬度にならないという欠点があり、また発泡むらのため粘着力が低下しない場合があり、ワークを粘着テープから剥離できないという不具合があった。
【0008】
本発明は上記の実状に着目してなされたものであり、その目的とすることろは、生シートの切断工程までは、チップの飛散やずれがない十分な粘着力を有し、その後ワークを剥離するときは、層間破壊を引き起こすことがなく、且つ残渣として残らない程度の粘着力低減が可能な、セラミック電子部品用生シートの仮止め粘着テープとセラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック電子部品用生シートの仮止め粘着テープは、基材フィルムの片面もしくは両面に粘着剤層が設けられたセラミック電子部品用生シートの仮止め粘着テープにおいて、該粘着剤層が、感圧性接着剤と1〜30重量%の側鎖結晶化可能ポリマーを含有する接着剤組成物から形成され,該側鎖結晶化可能ポリマーが、ステアリルアクリレート80〜98重量部、アクリル酸2〜20重量部およびドデシルメルカプタン2〜10重量部の共重合体であり、該ポリマーの重量平均分子量が3,000〜15,000であり、該接着剤組成物が、35℃以上に加温した時のステンレス鋼板に対する接着強度が、23℃でのステンレス鋼板に対する接着強度の10%以下であることを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0010】
基材フィルムの両面に粘着剤層を設ける場合には、該粘着剤層を形成する第2の面の感圧接着剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0011】
天然ゴム接着剤;合成ゴム接着剤;スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤;ブロック共重合体型の熱可塑性ゴム;ブチルゴム;ポリイソブチレン;アクリル接着剤;ビニルエーテルの共重合体接着剤組成物。
【0013】
一つの実施態様では、前記接着剤組成物が、35℃以上ではセラミック電子部品用生シートより容易に剥離する性質を有する。
【0014】
一つの実施態様では、前記側鎖結晶化可能ポリマーが、15℃より狭い温度範囲にわたって起こる融点を有する。
【0017】
本発明のセラミック電子部品の製造方法は、台座上に粘着テープを介してセラミックよりなる生シートの積層体を粘着させる工程と、該積層体を切断してチップを形成する工程と、該粘着テープを加温した状態で該切断されたチップをテープ表面から剥離させる工程と、を包含する、セラミック電子部品の製造方法であって、該粘着テープが、基材フィルムの片面もしくは両面に粘着剤層が設けられて構成され、該粘着剤層が、感圧性接着剤と1〜30重量%の側鎖結晶化可能ポリマーを含有する接着剤組成物から形成され、該側鎖結晶化可能ポリマーが、ステアリルアクリレート80〜98重量部、アクリル酸2〜20重量部、およびドデシルメルカプタン2〜10重量部の共重合体であり、該ポリマーの重量平均分子量が3,000〜15,000であり、35℃以上に加温した時のステンレス鋼板に対する接着強度が、23℃でのステンレス鋼板に対する接着強度の10%以下であることを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】
本発明の作用は次の通りである。
【0019】
電極印刷後のセラミック生シートを積層して得られる積層体を台座上に粘着テープを介して貼り付けし、そして積層体を裁断する。ここで、粘着テープは優れた粘着性を有していることにより、積層体は剥離することがない。積層体を切断した後ワークを台座から取り外すときには、粘着テープを所定温度以上に加熱することにより、ワークを粘着テープから容易に剥離することができる。
【0020】
すなわち、粘着テープを構成する接着剤組成物が、感圧性接着剤と、該接着剤組成物に対して1〜30重量%の側鎖結晶化可能ポリマーとを含有し、該側鎖結晶化可能ポリマーが、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とするアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主成分とすることにより、任意に設定した温度から温度を若干変化させると、ポリマーが結晶と非結晶との間を可逆的に変化することで、チップに対する粘着性が大きく変化する。
【0021】
従って、所定温度以上に加温すると、粘着剤層の接着力が急速に低下するので、セラミック電子部品用生シートを粘着テープに粘着して裁断加工した後に、該テープを加温してそのセラミック電子部品用生シートに対する粘着性を大きく低下させることで、チップ(セラミック電子部品)をテープから容易に剥離することができる。
【0022】
なお、本願でいうセラミック電子部品用生シートとは、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクター、抵抗器、フェライト、センサー素子、サーミスタ、バリスタ、圧電セラミック等のセラミック電子部品を製造する工程において使用する、セラミックよりなる生シートおよび生シートの積層体を包含するものとする。
【0023】
【発明の実施の形態】
(基材フィルム)
本発明の仮止め粘着テープに使用される基材フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムの単層体またはこれらの複層体からなる厚さが5〜500μmのシートなどがあげられる。基材フィルムの表面に粘着剤層に対する密着性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等を施してもよい。
【0024】
この基材フィルムの片面に、以下に説明する接着剤組成物から構成される粘着剤層が積層される。
【0025】
該接着剤組成物は、約15℃より狭い温度範囲にわたって起こる融点を持つ側鎖結晶化可能ポリマーと、感圧性接着剤とを含有し得る。この接着剤組成物は、温度T1でセラミック電子部品用生シートその他の被着体に対して接着性を示し、その温度T1より約15℃以上高い温度T2に加温することにより該セラミック電子部品用生シートその他の被着体に対する粘着性が大きく低下する性質を有するものである。
【0026】
(感圧性接着剤)
上記接着剤組成物に含有される感圧性接着剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0027】
天然ゴム接着剤;スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤;ABAブロック共重合体型の熱可塑性ゴム(Aは熱可塑性ポリスチレン末端ブロックを示し、Bはポリイソプレン、ポリブタジエンまたはポリ(エチレン/ブチレン)のゴム中間ブロックを示す);ブチルゴム;ポリイソブチレン;ポリアクリレート;および酢酸ビニル/アクリルエステル共重合体のようなアクリル接着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、およびポリビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテルの共重合体。
【0028】
特に、アクリル系感圧性接着剤を使用することにより、ポリマーとの相互作用をもつため、所定温度ではポリマーが良好に分散して粘着性を発揮すると共に、所定温度以上の加熱によりポリマーが剥離性を良好に発揮する。好ましいアクリル系感圧性接着剤は、エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等からなるものであり、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート80〜95重量部と2−ヒドロキシエチルアクリレート5〜20重量部との共重合体が挙げられる。
【0029】
(側鎖結晶化可能ポリマー)
接着剤組成物に含有される側鎖結晶化可能ポリマーは、約15℃より狭い温度範囲にわたって起こる融点を持つものが好ましく使用される。
【0030】
本明細書で使用される「融点」という用語は、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていたポリマーの特定の部分が無秩序状態となる温度を意味する。
【0031】
一つの実施態様では、好ましくは、ポリマーの融点は約30℃から100℃の範囲、さらに好ましくは約35℃から65℃の範囲である。溶融は急速に、すなわち約15℃より小さい、好ましくは約10℃より小さい比較的狭い温度範囲において起こることが好適である。ポリマーが急速に結晶化することは好適である。この点に関しては、シーディング剤すなわち結晶化触媒を該ポリマーに混入し得る。
【0032】
使用後は使用温度よりほんの僅か高い温度に加熱することによりセラミック電子部品用生シートまたはチップ面から容易に剥離され得る。加熱温度は、通常40℃〜100℃であり、好ましくは40℃〜70℃、さらに好ましくは50℃〜70℃である。
【0033】
接着剤組成物に含有される側鎖結晶化可能ポリマーは、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とするアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを構成成分とする。
【0034】
上記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とするアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル(以下、(メタ)アクリレートともいう)としては、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0035】
さらに、上記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とする(メタ)アクリレートに代えてまたはそれと共に以下のモノマーも使用することができる。
【0036】
少なくとも一部がフッ素置換された炭素数16以上の脂肪族基を有するアクリレート、同メタクリレート、同アクリルアミド誘導体、同メタクリルアミド誘導体、同ビニルエーテル誘導体、同ビニルエステル誘導体、α−オレフィンおよびその誘導体、並びに、炭素数16以上のアルキル基を有するスチレン誘導体等から選ばれた少なくとも1種のモノマーが挙げられる。
【0037】
特に、炭素数16以上の直鎖脂肪族基を有するアクリレート、同メタクリレート、同アクリルアミド誘導体、同メタクリルアミド誘導体等が好ましい。さらに好ましくは、炭素数14〜22の直鎖脂肪族基を有するアクリレート、同メタクリレート、同アクリルアミド誘導体、同メタクリルアミド誘導体等である。特に好ましくは、炭素数14〜18の直鎖脂肪族基を有するアクリレートおよびメタクリレートである。
【0038】
さらに、以下の官能基を有するモノマーを共重合成分として使用することもできる。そのような官能基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等の中から選ばれた、少なくとも一種以上のものが挙げられる。このモノマーは、上記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とする(メタ)アクリレートの使用量を考慮して使用されるが、ベースポリマーの原料となる全モノマーの総量中に1〜30重量%の範囲で含有することができる。
【0039】
以下に、炭素数16〜22の直鎖アルキル基を有するモノマーによって得られる側鎖結晶化可能ポリマーの融点を示す。
【0040】
使用したモノマー 融点(℃)
C16アクリレート 36
C16メタクリレート 26
C18アクリレート 49
C18メタクリレート 39
C20アクリレート 60
C20メタクリレート 50
C22アクリレート 71
C22メタクリレート 62
接着剤組成物に含まれるポリマーの好ましい例を示すと次の通りである。
【0041】
(1)ステアリルアクリレート80〜98重量部、アクリル酸2〜20重量部、ドデシルメルカプタン2〜10重量部との共重合体
(2)ドコシルアクリレート5〜90重量部、ステアリルアクリレート5〜90重量部、アクリル酸1〜10重量部とドデシルメルカプタン2〜10重量部の共重合体
(3)ドコシルアクリレート80〜98重量部とアクリル酸2〜20重量部とドデシルメルカプタン2〜10重量部の共重合体
接着剤組成物中の結晶化可能ポリマーの量は約1重量%から約30重量%の範囲である。好ましくは5重量%から20重量%である。特に、5重量%〜15重量%が好ましい。上記ポリマーの含有割合が接着剤組成物中で1重量%未満の場合および30重量%を超える場合には、ポリマーによる上記効果が見られない。
【0042】
また、使用する結晶化可能ポリマーの特有の分子量は、本発明で使用する接着剤組成物が、温度変動性粘着および/または接着結合強さをどのように示すかを決定する重要な因子である。すなわち、低分子量の結晶化可能ポリマーは、加熱により結合強さを失う。例えば、室温(23℃)での接着強度(剥離強度)に対する、60℃に加熱したときの接着強度の低下率は、90%以上となる(詳しい接着力の試験条件は後述する)。
【0043】
従って、ポリマーの重量平均分子量は3,000〜25,000が好ましく、さらに好ましくは4,000〜15,000である。ポリマーの重量平均分子量が25,000を越える場合には、加熱によっても粘着性の低下が小さい。ポリマーの重量平均分子量が3,000未満の場合には、経時による接着力の変化が大きいので好ましくない。
【0044】
本発明の接着剤組成物は相溶性溶媒中で感圧性接着剤と結晶化可能ポリマーを混合し、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、架橋剤等のような任意の成分を添加してもよい。固体含有物を所望の粘度に調節し、混合物を均質になるまでブレンドする。ブレンド後、混合物から気泡を除去する。
【0045】
上記タッキファイヤーとしては、特殊ロジンエステル系、テルペンフェノール系、石油樹脂系、高水酸基価ロジンエステル系、水素添加ロジンエステル系等があげられる。
【0046】
上記架橋剤としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対し、0.1〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0047】
温度活性接着剤組成物を基材フィルムに設けるには、一般的にはナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーターなどが多く用いられる。また、塗工厚みや材料の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーターにより行うことができる。また、粘着剤組成物は、転写印刷の場合と同様の方法でリリースシートからの転写により塗布され得る。組成物はそのままで、または適切な溶剤により、またはエマルジョンもしくはラテックスとして塗布され得る。このようにして接着剤組成物から粘着剤層が形成される。
【0048】
粘着剤層は、保管時や流通時等における汚染防止等の観点からセラミック電子部品用生シート表面に接着するまでの間、セパレータにより接着保護することが好ましい。セパレータとしては、紙、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、金属箔などからなる柔軟な薄葉体で形成され、必要に応じ剥離剤で表面処理して易剥離性が付与される。
【0049】
次に、セラミック電子部品としてセラミック積層コンデンサの製造方法を説明する。
【0050】
まず、セラミック粉末のスラリーをドクターブレードで薄く延ばしてセラミックの生シートを形成し、該生シートの表面に電極を印刷する。次に、複数の生シートを積層一体化して生シートの積層体を形成する。次に、積層体を本発明の粘着テープを介して台座上に固定する。この際の温度は、比較的低い温度(例えば、20℃〜40℃)であるので、積層体は粘着テープの粘着剤層に良好に粘着する。
【0051】
次に、積層体を圧着及び切断する。ここで、ワークが粘着剤層から剥離もしくは未切断生シート上へ乗り移ることがない。このようにして複数のセラミック積層体のチップを形成した後、得られたワークを粘着テープから取り出した後、仮焼成工程、本焼成工程へ送る。その際、粘着テープは上記したように所定温度以上に加熱することにより容易に粘着テープ上よりワークを剥離することができる。その後、ワークを焼成し、ワークの端面に外部電極を形成してチップ形積層セラミックコンデンサが得られる。
【0052】
粘着テープの加温方法としては、テープあるいは該テープの保持部材(台座)を例えば以下の方法で加温する方法があげられる。
【0053】
ホットプレート上に乗せる、温風を吹き付ける(例えば、温風機やドライヤー)、オーブン中に入れる、蒸気を吹き付ける、高周波を当てて加熱する、ランプ(赤外線、遠赤外線)を当てる等がある。
【0054】
具体的には、使用するポリマーの融点以下で、粘着テープ表面にセラミック電子部品用生シートを貼り付け、切断後はポリマーの融点以上でチップを粘着テープ表面から剥離するのが好ましい。
【0055】
また、側鎖結晶性ポリマーの融点以上で剥離強度が10%以下となるようにするのが好ましい。前記接着剤組成物が、35℃以上に加温した時のステンレス鋼板に対する接着力が、23℃でのステンレス鋼板上の接着強度の10%以下もしくは10g/25mm以下が好ましい。
【0056】
なお、上記ではセラミック電子部品として積層セラミックコンデンサについて説明したがこれに限定されるものではなく、本発明は、例えば、IC基板、フェライト、センサー素子、バリスタ等のファインセラミック部品の製造において、セラミック電子部品用生シートを複数のチップに切断する工程で使用される仮止め粘着テープに適用できる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、以下で「部」は重量部を意味する。
A.ポリマーの調製
(合成例1)
ステアリルアクリレート95部、アクリル酸5部、ドデシルメルカプタン5部、及びカヤエステルHP−70(化薬アクゾ社製)1部を混合し、80℃で5時間撹拌してこれらのモノマーを重合させた。得られたポリマーの重量平均分子量は8,000、融点は50℃であった。
【0058】
(合成例2)
2−エチルヘキシルアクリレート92部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8部、及びトリゴノックス23−C70(化薬アクゾ社製)0.3部を酢酸エチル/ヘプタン(70/30)150部の中に混合し、55℃で3時間撹拌後、80℃に昇温し、カヤエステルHP−700.5部を加え、2時間撹拌してこれらのモノマーを重合させた。得られたポリマーの重量平均分子量は600,000であった。
【0059】
B.積層セラミックコンデンサ用生シートの仮止め粘着テープの作製
(実施例1)
上記合成例1と合成例2とで得られたポリマーを5部対100部の割合で混合した。このポリマー溶液に架橋剤としてコロネートL45(日本ポリウレタン社製)を合成例2のポリマー100部に対して0.5部添加し、100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのコロナ処理した面に、ロールコータにて塗布し、アクリル系粘着剤層(厚み30μm)を有する離型シート付き仮止め粘着テープを得た。
【0060】
得られた仮止め粘着テープを用いて以下の評価を行った。
(1)剥離強度
粘着テープの180度剥離強度をJISC2107に準じ対SUSで測定した。測定温度は、23℃と60℃でそれぞれ行った。
(2)ワーク剥離状態
粘着テープをSUS表面から剥離後、SUS表面の汚染性をTDS(Thermal Desorption Spectroscopy)法に従って測定した。また、ワークの層間破壊の有無を、ワーク断面を目視観察することにより行った。それらの結果を表1に示す。表中○は適合、×は不良品であることを示す。
【0061】
(実施例2)
実施例1で得られたポリマー溶液に、架橋剤としてコロネートL45を合成例2のポリマー100部に対して1.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして仮止め粘着テープを得た。得られた仮止め粘着テープの剥離強度とワーク剥離状態を実施例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
実施例1で得られたポリマー溶液に、架橋剤としてコロネートL45を合成例2のポリマー100部に対して3.0部添加したこと以外は、実施例1と同様にして仮止め粘着テープを得た。得られた仮止め粘着テープの剥離強度とワーク剥離状態を実施例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
上記合成例2で得られたポリマー100部に架橋剤としてコロネートL45(日本ポリウレタン社製)を3部添加し、このものを100μmのPETフィルムのコロナ処理した面にロールコータにて塗布し、アクリル系粘着剤層(厚み50μm)を有する離型シート付き仮止め粘着テープを得た。
【0064】
得られた仮止め粘着テープの剥離強度とワーク剥離状態を実施例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
上記合成例2で得られたポリマー100部に架橋剤としてコロネートL45(日本ポリウレタン社製)を6部添加し、このものを100μmのPETフィルムのコロナ処理した面にロールコータにて塗布し、アクリル系粘着剤層(厚み50μm)を有する離型シート付き仮止め粘着テープを得た。
【0066】
得られた仮止め粘着テープの剥離強度とワーク剥離状態を実施例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0067】
(比較例3)
市販品であるリバアルファ3914MS(日東電工社製)を用いて、その仮止め粘着テープの接着力と汚染性を実施例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【表1】
【0068】
比較例1および2では、ワーク表面からの粘着テープの剥離性が悪く、層間破壊を生じている。また比較例1〜3ではワーク表面の汚染が見られた。これに対して、実施例1〜3においては、初期(23℃)の接着力を高めながら加温後(60℃)の剥離性および汚染性共に優れていた。
【0069】
(実施例4)
次に、粘着剤層に含まれる側鎖結晶性ポリマーの分子量と、該粘着剤層を有する仮止め粘着テープの加熱時の剥離強度の低下率との関係を示した実験を行ったので、以下に示す。
【0070】
ステアリルアクリレート95部およびアクリル酸5部を混合し、これにドデシルメルカプタン(重合禁止剤)の部数を変えて添加したモノマー混合物を、80℃で5時間撹拌して重合させ、重量平均分子量が、2,000、4,000、8,000、15,000、19,000のポリマーを得た(表2中にそれぞれポリマー1〜5として示す)。
【0071】
上記で得られたポリマー15部に、上記合成例2で得られたポリマー85部を混合した。このポリマー溶液に架橋剤としてコロネートL45(日本ポリウレタン社製)を合成例2のポリマー100部に対して0.5部添加し、このポリマー溶液を50μmの表面マット処理ポリエステルフィルム(厚み50μm)の上にロールコータにて塗布し、アクリル系粘着剤層(乾燥厚み20μm)を有する離型シート付き仮止め粘着テープを得た。
【0072】
得られた仮止め粘着テープを25mm幅の短冊状に切り出して試験片とした。
【0073】
次に、表面が#280研磨されたSUS板上に、23℃下にて上記試験片の粘着剤層をゴムローラー(45m幅、荷重2Kg)を4往復させることで圧着貼り付けた。貼り付け後20分間静置し、試験片の端部を180°方向へ速度300m/分で剥離し、その時の抵抗値を23℃の剥離強度として測定した。
【0074】
さらに、上記と同様にして作製した試験片を、予め60℃に加熱したホットプレート上に載置し、さらに20分間静置し、該試験片の端部を180°方向へ速度300m/分で剥離し、その時の抵抗値を60℃の剥離強度として測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
【0075】
表2から、側鎖結晶性ポリマーの分子量が大きすぎると、加熱時の剥離強度が低下せず、低下率が低いことがわかる。
【0076】
(実施例5)
次に、粘着剤層に含まれる側鎖結晶性ポリマーの分子量と、該粘着剤層を有する仮止め粘着テープの剥離強度の経時変化との関係を示した実験を行ったので、以下に示す。
【0077】
上記実施例4と同様にして得られた仮止め粘着テープを25mm幅の短冊状に切り出して試験片とした。
【0078】
この試験片の23℃における剥離強度を実施例4と同様にして測定した。
【0079】
次に、上記と同様にして作製した試験片を、23℃の恒温恒湿室内に2ヶ月間放置し、試験片の23℃における剥離強度を実施例4と同様にして測定した。
【0080】
それらの結果を表3に示す。なお、表3において、経時2ヶ月の変化率は、試作直後を100とした割合を示す。
【表3】
【0081】
表3から、側鎖結晶性ポリマーの分子量が小さい場合は、粘着テープを保管しておくと、粘着力がやや低下することがわかる。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、仮止め粘着テープの温度を変えるだけでセラミック電子部品用生シートに対する粘着性を調整することができるので、セラミック電子部品用生シートの仮止め時では接着力を大きくし、ワークの取り出し時においては加熱するだけで容易に剥離することができ、またワークの汚染がないのでセラミック電子部品の信頼性を高めることができる。
【0083】
特に、重量平均分子量が3,000〜25,000の側鎖結晶化可能ポリマーを使用すると、加熱時の粘着性の低下が大きく、かつ経時による粘着力の変化が小さい仮止め粘着テープを得ることができる。
Claims (4)
- 基材フィルムの片面もしくは両面に粘着剤層が設けられたセラミック電子部品用生シートの仮止め粘着テープにおいて、
該粘着剤層が、感圧性接着剤と1〜30重量%の側鎖結晶化可能ポリマーを含有する接着剤組成物から形成され,
該側鎖結晶化可能ポリマーが、ステアリルアクリレート80〜98重量部、アクリル酸2〜20重量部およびドデシルメルカプタン2〜10重量部の共重合体であり、
該ポリマーの重量平均分子量が3,000〜15,000であり、
該接着剤組成物が、35℃以上に加温した時のステンレス鋼板に対する接着強度が、23℃でのステンレス鋼板に対する接着強度の10%以下である仮止め粘着テープ。 - 前記接着剤組成物が35℃以上ではセラミック電子部品用生シートより容易に剥離する性質を有する請求項1に記載の仮止め粘着テープ。
- 前記側鎖結晶化可能ポリマーが、15℃より狭い温度範囲にわたって起こる融点を有する請求項1に記載の仮止め粘着テープ。
- 台座上に粘着テープを介してセラミックよりなる生シートの積層体を粘着させる工程と、該積層体を切断してチップを形成する工程と、該粘着テープを加温した状態で該切断されたチップをテープ表面から剥離させる工程と、を包含する、セラミック電子部品の製造方法であって、
該粘着テープが、基材フィルムの片面もしくは両面に粘着剤層が設けられて構成され、該粘着剤層が、感圧性接着剤と1〜30重量%の側鎖結晶化可能ポリマーを含有する接着剤組成物から形成され、
該側鎖結晶化可能ポリマーが、ステアリルアクリレート80〜98重量部、アクリル酸2〜20重量部、およびドデシルメルカプタン2〜10重量部の共重合体であり、
該ポリマーの重量平均分子量が3,000〜15,000であり、
35℃以上に加温した時のステンレス鋼板に対する接着強度が、23℃でのステンレス鋼板に対する接着強度の10%以下であるセラミック電子部品の製造方法。
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