JP4324399B2 - グラファイトフィルム及びポリイミドフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気伝導体、熱伝導体、回路形成材料、等として使用される、従来のグラファイト材料よりも大きな電気伝導度をもつグラファイトフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
グラファイトフィルムは優れた耐熱性、耐薬品性、高熱伝導性、高電気伝導性のため工業材料として重要な位置をしめ、電気伝導体、放熱材料、耐熱シール材、ガスケット、発熱体、等として広く使用されている。
【0003】
グラファイト結晶の基本的な構造は、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面が規則正しく積み重なった層状構造(積み重なった方向をc軸と言い、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面の広がる方向をa−b面方向と言う)である。基底面内の炭素原子は共有結合で強く結ばれ、その原子間隔は1.421A゜である。一方、積み重なった層面間の結合は弱いVan der Walls力によっており、層間隔は3.354A゜である。理想的なグラファイト結晶は層間の積み重なり方によって、六方晶系に属するものと菱面体晶系に属するものとがあるが、普通の構造は六方晶系である。グラファイトにおける電気伝導はこの様な異方性を反映してa−b面方向に大きく、この方向の伝導度は六角網目状に結ばれた炭素原子が作る層の構造の良否、従ってグラファイトの品質を判定する良い指標となる。
【0004】
従来知られた、最も良いグラファイトのa−b面方向の電気伝導度は天然に産出する単結晶とみなされるグラファイト、あるいはキッシュグラファイトと呼ばれる溶融金属に溶解した炭素から得られるグラファイトの25000S/cmである。この値はグラファイトにおける極限の値であると考えられて来た。(非特許文献1,2)
これらのグラファイトとは別に特殊な高分子を直接熱処理、炭素化・グラファイト化する方法(以下、高分子グラファイト化法と呼ぶ)が開発されている。この目的に使用される高分子としては、ポリオキサジアゾール、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、などがある。この方法は非常に簡単であり、さらには優れた熱伝導性や電気伝導特性を持つ良質のグラファイトが得られると言う特徴があった。(特許文献1〜4)しかし、従来はこの高分子グラファイト化法を用いて、例えば25μm以上の厚さの各種ポリイミドフィルムを3200℃の超高温で熱処理しても、a−b面方向の電気伝導度は最大22000S/cm程度であり(非特許文献3)、ポリイミド(カプトン)を使った例では12.5μmの厚さのフィルムを3000℃で焼成した例でも(非特許文献4)、最大24000S/cmの値が得られているだけである。すなわち、これらに具体的に開示されている方法は、原料として各種のポリイミドを用いているがいずれも12.5μm以上のポリイミドフィルムを用いており、5μm以下というごく薄い高分子フィルムを熱処理してグラファイト化する事については記載はなく、25000S/cm以上の伝導度を持つグラファイトフィルムは知られていない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−275516
【0006】
【特許文献2】
特開昭61−275517
【0007】
【特許文献3】
特開平4−310569、
【0008】
【特許文献4】
特開平3−75211
【0009】
【非特許文献1】
L. Spain, A. R. Ubbelohde、and D. A. Young "Electronic properties of oriented graphite" PHILOSOPHICAL TRANSACTIONS OF THE ROYALSOCIETY
【0010】
【非特許文献2】
T. C. Chieu, M. S. Dresselhaus and M. Endo,Phys. Rev. B26, 5867(1982)
【0011】
【非特許文献3】
Y. Kaburagi and Y. Hishiyama, Carbon, vol.33, 773(1995)
【0012】
【非特許文献4】
M. Murakami, N. Nishiki,K. Nakamura, J.Ehara, H. Okada, T. Kouzaki,K. Watanabe,T. Hoshi, and S. Yoshimura, Carbon, vol.30, 2, 255(1992)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高分子グラファイト化法を用いてa−b面方向の電気伝導度が25000S/cm以上である、従来知られていなかった極めて高品質の新しいグラファイトを得る事を目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高分子フィルムのグラファイト化の検討を行い、特に高分子超薄膜のグラファイト化の検討を行った。その結果、同じ高分子フィルムを用いた場合でも、その厚みを5μm以下にすることによりグラファイト化が容易に進行し、従来、極限と考えられていた、a−b面方向の電気伝導度の25000S/cmよりも大きな電気伝導度を有する新たなグラファイトを作製する事に成功し、本発明を成すに至った。
(1)本発明の第1は、25℃におけるa−b面方向の電気伝導度が25000S/cm以上であるグラファイトフィルムである。
(2)本発明の第2は、厚さが5ミクロンメートル以下の高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られる(1)記載のグラファイトフィルムである。
(3)本発明の第3は、前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリオキサジアゾール、ポリパラフェニレンビニレンから選ばれた少なくとも一種を含む高分子フィルムである(2)記載のグラファイトフィルムである。
(4)本発明の第4は、前記高分子フィルムが、100〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数が3.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムである(3)のグラファイトフィルムである。
(5)本発明の第5は、前記高分子フィルムが、複屈折が0.1以上であるポリイミドフィルムである(3)または(4)記載のグラファイトフィルムである。
(6)本発明の第6は、前記高分子フィルムが、下記構造で表される酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムである(3)〜(5)のいすれか一項に記載のグラファイトフィルムである。
【0015】
【化4】
Figure 0004324399
であり、式中R1は、
【0016】
【化5】
Figure 0004324399
からなる群から選択される2価の有機基であって、R2はそれぞれ独立して、−CH3、−Cl、−Br、−F、または−OCH3である。
(7)本発明の第7は、前記ポリイミドフィルムが、下記構造で表される酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項(6)に記載のフィルム状グラファイトの製造方法。
【0017】
【化6】
Figure 0004324399
(8)本発明の第8は、前記ポリイミドフィルムが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする(3)〜(7)のいずれか一項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
(9)本発明の第9は、前記ポリイミドフィルムが、ピロメリット酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする(3)〜(8)のいずれか一項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
(10)本発明の第10は、前記ポリイミドフィルムが、p−フェニレンジアミンを原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする(3)〜(9)のいずれか一項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
(11)(1)または(2)記載のグラファイトフィルムに用いるためのポリイミドフィルムであって、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が3.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムである。
(12)(1)または(2)記載のグラファイトフィルムに用いるためのポリイミドフィルムであって複屈折が0.1以上であるポリイミドフィルムである。
【0018】
本発明のグラファイトフィルムは、厚さ5μm以下の高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理することによって得ることができる。5μm以下の高分子フィルムを熱処理すると、グラファイトのa−b面方向の電気伝導度を25000S/cm以上にする事ができる。より電気伝導度を容易に上昇させることができるという点から、高分子フィルムの厚さは2μm以下が好ましく、更には1μm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いることができる高分子フィルムとしては、特に限定はされないが、ポリイミド、ポリオキサジアゾール、ポリパラフェニレンビニレンから選ばれる少なくとも1種を含む高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの電気伝導度が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。
【0020】
上記高分子フィルムの中でも、ポリイミドを含むフィルムであることが、5μm以下とフィルムを薄くした場合に容易にグラファイトに転化させることができ、電気伝導度が大きくなる効果が顕著に現れるという点から好ましい。
また、ポリイミドフィルムの中でも、よりグラファイトへの転化が容易であるという点から、分子構造およびその高次構造が制御されたフィルムを用いることが好ましく、具体的には、分子の配向性を制御する事が好ましい。出発原料となる高分子フィルムのどの様な物性値が最終的なグラファイト化に影響を与えるかを検討した結果、線膨張係数や複屈折率で表現できる物性が最も直接的に良質のグラファイトに転化出来るかどうかの指標となる事が分った。
【0021】
すなわち、100〜200℃の範囲におけるフィルムの面方向の平均線膨張係数が3.5×10-5cm/cm/℃以下、好ましくは2.5×10-5cm/cm/℃以下、更に好ましくは1.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムであることが好ましい。なお、ここで言う線膨張係数はフィルム面方向の線膨張係数である。線膨張係数を上記範囲にすることによって、グラファイトへの転化は2400℃から始まり、2600℃で十分良質のグラファイトに転化する事ができ、フィルム面方向で25000S/cmの電気伝導度を得ることが可能となる。この理由は定かではないが、一般にグラファイト化のためには分子が再配列する必要があるが、配向性にすぐれたポリイミドではその再配列が最小で済むために、低温でも充分に高電気伝導性のグラファイト化進むためであると推測される。
【0022】
本発明に用いられるグラファイトフィルムの原料となるポリイミドフィルムは、100〜200℃の範囲におけるフィルムの面方向の平均線膨張係数が3.5×10-5cm/cm/℃以下、好ましくは2.5×10-5cm/cm/℃以下、更に好ましくは1.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムである。線膨張係数を上記範囲にすることによって、グラファイトへの転化は2400℃から始まり、2600℃で十分良質のグラファイトに転化する事ができ、フィルム面方向で25000S/cmの電気伝導度を得ることが可能となる。この理由は定かではないが、一般にグラファイト化のためには分子が再配列する必要があるが、配向性にすぐれたポリイミドではその再配列が最小で済むために、低温でも充分にグラファイト化進むためであると推測される。尚、フィルムの線膨張係数は、TMA(熱機械分析装置)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させたのち一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目昇温時の100℃〜200℃の平均線膨張係数を測定することによって得られる。具体的には、熱機械分析装置(TMA:セイコー電子製SSC/5200H;TMA120C)を用いて、測定試料サイズ:3mm幅×20mm長で所定の治具にセットし、引張モードで3gの荷重をかけて、窒素雰囲気下で測定する。
【0023】
また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、面内配向性を示す複屈折Δnが、複屈折率が0.1以上、好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上のポリイミドフィルムである。複屈折の値はフィルム面方向の分子の配向性をより直接的に表す物性値であり、その値が0.1以上である場合にはより容易に目的とする高電気伝導性のグラファイトが得られる。さらに最高温度を下げ、焼成温度も短くすることができる。
【0024】
ここでいう複屈折とはフィルム面内方向の屈折率と厚み方向の屈折率の差であり、本明細書においてはフィルム面内X方向の複屈折Δnxは下式で与えられる。
複屈折Δnx=(面内X方向の屈折率Nx)−(厚み方向の屈折率Nz)
具体的測定方法を説明すると、フィルム試料をくさび形に切り出してナトリウム光をフィルム面内のX方向に垂直な方向から当て、偏光顕微鏡で観察すると干渉縞がみられる。この干渉縞の数をnとすると、フィルム面内X方向の複屈折Δnxは、
Δn=n×λ/d
で表される。ここで、λはナトリウム光の波長589nm、dは試料の巾(nm)である。詳しくは「新実験化学講座」第19巻(丸善(株))などに記載されている。
なお、前記した「複屈折Δnがフィルム面内のどの方向においても」とは、例えばフィルム製膜時の流れ方向を基準として、面内の0゜方向、45゜方向、90゜方向、135゜方向のどの方向においても、の意味である。
【0025】
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液をエンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥・イミド化させることにより製造される。
【0026】
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
【0027】
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、特に好ましい重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。
【0028】
ここで、本発明にかかるポリイミド前駆体ポリアミド酸組成物に用いられる材料について説明する。
【0029】
本発明のポリイミドに用いられる酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0030】
本発明のポリイミドに用いられるジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0031】
特に、線膨張係数を小さく、複屈折率を大きくできるという点から、本発明におけるポリイミドフィルムは、下記構造で表される酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
【0032】
【化7】
Figure 0004324399
であり、R1は、
【0033】
【化8】
Figure 0004324399
からなる群から選択される2価の有機基であって、R2はそれぞれ独立して、−CH3、−Cl、−Br、−F、または−CH3Oである。
【0034】
また、前記の酸二無水物を用いることにより比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得られるので、グラファイト過程での水分による発泡を防止することができるという点からも好ましい。
【0035】
特に、前記酸二無水物におけるR1が、
【0036】
【化9】
Figure 0004324399
に示すようなベンゼン核が結合されたものを使用すると、得られるポリイミドフィルムの配向性が高くなり、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折率が高く、さらには吸水率が低くなるという点から好ましい。
【0037】
特に、酸二無水物として2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を持つ前記酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むものの全体として非常に直線的なコンフォメーションをとりやすく、比較的剛直なポリイミドとなる。その結果、この原料を用いれば線膨張係数を小さくすることができ、例えば1.5×10-5cm/cm/℃以下にできる。また、弾性率を大きく、吸水率を小さくすることができ、弾性率は500kgf/mm2以上、吸水率は1.5%以下にすることができる。
【0038】
さらに、線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折率を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物を原料に用いていることも好ましい。
【0039】
さらに、線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折率を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いているとよい。
【0040】
本発明に用いられるポリイミドフィルムにおいて、最も適当な酸二無水物は
【0041】
【化10】
Figure 0004324399
で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物:TMHQと称する)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物から選択される少なくとも1種以上であり、これら単独もしくは混合物の量は、全酸二無水物に対して40モル%以上、更には50モル%以上、更には70モル%以上、また更には80モル%以上を用いるのが好ましい。これら酸二無水物の使用量がこの範囲を外れると、線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折率が小さくなる傾向にある。
【0042】
また、本発明に用いられるポリイミドにおいて、最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これら単独もしくは2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、更には50モル%以上、更には70モル%以上、また更には80モル%以上を用いるのが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが10モル%以上、更には20モル%以上、更には30モル%以上、また更には40モル%以上を用いるのが好ましい。これらジアミンの使用量がこの範囲を外れると、線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折率が小さくなる。
【0043】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
【0044】
次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用い、イミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いても良いが、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折率が大きくなりやすく、フィルムの焼成中に張力をかけたとしても破損することなく、また早くかつ低温でグラファイト化され、品質の良いグラファイトを得ることができるという点から、ケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することが、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折率が大きくできる点から好ましくい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するために加熱処理プロセスにおいてイミド化反応を短時間に完結させることができることから、生産性に優れ、工業的に有利な方法である。
【0045】
具体的にケミカルキュアによるフィルムの製造は、以下のようになる。まず上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量のイミド化促進剤を加え支持板やPET等の有機フィルム、ドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延又は塗布して膜状とし、有機溶媒を蒸発させることにより自己支持性を有する膜を得る。次いで、これを更に加熱して乾燥させつつイミド化させ、本発明のポリイミド重合体からなるポリイミド膜を得る。加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲の温度が好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは断続的に、徐々に加熱して最高温度が上記の温度になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを固定したり、延伸したりする工程を含むと、線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折率が大きくなりやすくなるために好ましい。
【0046】
次に、ポリイミドフィルムのグラファイト化のプロセスについて述べる。
本発明では出発物質であるポリイミドフィルムを不活性ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば、10℃/分昇温速度で予備処理を行った場合には1000℃の温度領域で30分程度の保持を行なう事が望ましい。予備処理の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われない様に、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。
【0047】
次に、上記の方法で炭素化されたフィルムを超高温炉内にセットし、グラファイトを行なう。この様な超高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行なう。グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えるとさらに好ましい。処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来るが、本発明のグラファイトを得るためには処理温度は最低でも2400℃以上が必要で、最終的には2600℃以上の温度で処理する事、より好ましくは2800℃以上である事が好ましい。なお、2000℃以上の加熱はグラファイトの直流電流印加による抵抗加熱によって行うことができる。3000℃以上の温度領域では加熱に用いるグラファイト電極が急速に昇華により消耗するので、不活性ガス加圧下で処理をする事によって電極の消耗を防止する事が好ましい。
【0048】
グラファイト化は前処理で作製した炭素化フィルムをグラファイト構造に転化する事によって起きるが、その際には炭素−炭素結合の開裂・再結合化が起きなくてはならない。グラファイト化を出来る限り低温で起こすためには、その開裂・再結合が最小のエネルギーで起こる様にする必要がある。出発ポリイミドフィルムの分子配向は炭素化フィルムの炭素の配列に影響を与え、それはグラファイト化の際の、炭素−炭素結合の開裂・再結合化のエネルギーを少なくする効果を持つ。従って分子が配向するように分子設計を行い、高度な配向を生むことで低温でのグラファイト化が可能になる。特にこの配向はフィルムの面方向に二次元的な分子配向とすることで一層の効果を持つ。フィルムが薄いほどより低温でグラファイト化が進行するのは同じ理由で、表面では分子が動きやすいため炭素−炭素間の開裂・再結合化が進行しやすいためであると考えられる。
【0049】
なお、最終的に得られるグラファイトフィルムの厚さは、一般に出発高分子フィルムの厚さの60〜40%程度となる事が多く、一方、長さ方向にはあまり変化せず、100〜90%程度となる事が多い。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0051】
(物性評価方法)
まず、樹脂組成物の物性評価方法について説明する。
原料である高分子フィルムの厚さは、プラス、マイナス10〜20%程度の誤差があり、得られたフィルムの10点平均の厚さを試料の厚さとした。
原料である高分子フィルムの線膨張係数は、5μmおよび12.5μmの試料について実施した。1μmおよび2μmの厚さの試料については、5μmの厚さの測定値を線膨張係数の値とみなした。具体的には、フィルムの線膨張係数は熱機械分析装置(TMA:セイコー電子製SSC/5200H;TMA120C)を用いて、測定試料サイズ:3mm幅×20mm長で所定の治具にセットし、引張モードで3gの荷重をかけて、窒素雰囲気下、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させたのち一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時から100℃〜200℃の平均線膨張係数とした。
【0052】
原料である高分子フィルムの複屈折率は、次のようにして測定した。フィルム試料をくさび形に切り出してナトリウム光をフィルム面内のX方向に垂直な方向から当て、偏光顕微鏡で観察すると干渉縞がみられる。この干渉縞の数をnとすると、フィルム面内X方向の複屈折Δnxは、
Δn=n×λ/d
で表される。ここで、λはナトリウム光の波長589nm、dは試料の巾(nm)である。
【0053】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は、4端子法で測定した。具体的には、得られたグラファイトフィルムを約3mm×6mmサイズに切り出し、光学顕微鏡で試料に破れや皺が無いことを確認した後、両端銀ペーストで外部電極を取り付け、外部電極間に銀ペーストで内部電極を取り付けた。定電流源(ケースレー(株)社「プログラマブルカレントソース220」)を用いて外部電極間から1mAの定電流を印加し、内部電極間の電圧を電圧計(ケースレー(株)社「ナノボルトメーター181」)で測定した。電気伝導度は(印加電流/測定電圧)×(内部電極間距離/サンプル断面積)の式に代入することで算出した。また、得られたグラファイトフィルムの厚さは同じ試料の断面の電子顕微鏡測定によって行った。
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0055】
(実施例1)
ポリパラフェニレンオキサジアゾール(POD)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)をPODについては市販のフィルム(古河電工製PODフィルム(厚さ50μm)を硫酸に溶解し、硫酸キャスト法で各種厚みのフィルムを得た。また、PPVについては公知の方法(I.Murase 他、Polymer Commun.,25,327(1984))で得られたPPV前駆体をキャスト法によりフィルム化し、加熱処理をおこない各種厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの厚さは、表1の通りであった。
【0056】
次に、それぞれの厚さの試料フィルムを電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で表1に示した最高処理温度まで昇温し、この温度で10分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0057】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は表1に示した。いずれも25000S/cm以上と非常に優れた電気伝導性を示した。
【0058】
【表1】
Figure 0004324399
(実施例2)
ピロメリット酸二無水物と4,4’−オキシジアニリンをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔をエッチングにより除去しポリイミドフィルム(試料A)を作製した。また試料Aと同様にしてピロメリット酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用い、ポリイミドフィルム(試料B)を、3,3‘,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用いポリイミドフィルム(試料C)を作製した。得られたフィルムの厚さ、複屈折率、線膨張係数は表2に示した通りである。
【0059】
それぞれのフィルムを、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で表2に示した最高処理温度まで昇温し、この温度で10分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0060】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は表2に示した。いずれも25000S/cm以上と非常に優れた電気伝導性を示した。また、厚みが薄いほど、複屈折率が高いほど、線膨張係数が小さいほど電気伝導度が高くなることがわかった。また、厚みが薄くなるほど、複屈折率が高くなるほど、また線膨張整数が小さくなるほど、最高処理温度が低くても、高い電気伝導度のグラファイトが得られることがわかった。
【0061】
【表2】
Figure 0004324399
(実施例3)
ピロメリット酸二無水物、4,4‘−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミンをモル比で4/3/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔をエッチングにより除去しポリイミドフィルム(試料D)を製造した。得られたフィルムの厚さ、複屈折率、線膨張係数は表3に示した通りである。
【0062】
得られたフィルムを電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で3200℃までの適当な最高温度まで昇温、最高温度で10分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0063】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は表3に示した。いずれも25000S/cm以上と非常に優れた電気伝導性を示した。また、厚みが薄いほど、電気伝導度が高くなり、最高処理温度が低くても、高い電気伝導度のグラファイトが得られることがわかった。
【0064】
【表3】
Figure 0004324399
(実施例4)
ピロメリット酸二無水物、4,4‘−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミンをモル比で3/2/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔をエッチングにより除去しポリイミドフィルム(試料E)を製造した。得られたフィルムの厚さ、複屈折率、線膨張係数は表4に示した通りである。
得られたフィルムを電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で3200℃までの適当な最高温度まで昇温、最高温度で10分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0065】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は表4に示した。いずれも25000S/cm以上と非常に優れた電気伝導性を示した。また、厚みが薄いほど、電気伝導度が高くなり、最高処理温度が低くても、高い電気伝導度のグラファイトが得られることがわかった。
【0066】
【表4】
Figure 0004324399
(実施例5)
ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンジアミン、4,4 ’−オキシジアニリン、をそれぞれモル比で1/1/1/1となるようにして合成した。ポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔をエッチングにより除去しポリイミドフィルム(試料F)を得た。得られたフィルムの厚さ、複屈折率、線膨張係数は表5に示した通りである。
【0067】
得られたフィルムを電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で3200℃までの適当な最高温度まで昇温、最高温度で10分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0068】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は表3に示した。いずれも25000S/cm以上と非常に優れた電気伝導性を示した。また、厚みが薄いほど、電気伝導度が高くなり、最高処理温度が低くても、高い電気伝導度のグラファイトが得られることがわかった。
【0069】
【表5】
Figure 0004324399
(実施例6)
ピロメリット酸二無水物と4,4’−オキシジアニリンをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各5分間加熱した後、アルミ箔をエッチングにより除去しポリイミドフィルム(試料A)を作製した。また試料Aと同様にしてピロメリット酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用い、ポリイミドフィルム(試料B)を、3,3‘,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用いポリイミドフィルム(試料C)を作製した。得られたフィルムの厚さ、複屈折率、線膨張係数は表6に示した通りである。
【0070】
それぞれのフィルムを、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で表2に示した最高処理温度まで昇温し、この温度で10分間保持し、その後40℃/分の速度で降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0071】
得られたグラファイトフィルムの電気伝導度は表6に示した。同じ処理温度で比較すると、実施例1には劣るものの25000S/cm以上と非常に優れた電気伝導性を示した。また、厚みが薄いほど、複屈折率が高いほど、線膨張係数が小さいほど電気伝導度が高くなることがわかった。また、厚みが薄くなるほど、複屈折率が高くなるほど、また線膨張整数が小さくなるほど、最高処理温度が低くても、高い電気伝導度のグラファイトが得られることがわかった。
【表6】
Figure 0004324399
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、5μm以下の薄さの高分子フィルムを熱処理する事により従来知られていなかったような高品質のグラファイトを容易に得る事が出来る。

Claims (13)

  1. 厚さが5ミクロンメートル以下の高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られる、25℃におけるa−b面方向の電気伝導度が25500S/cm以上のグラファイトフィルムであって、前記高分子フィルムが、ピロメリット酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とするグラファイトフィルム。
  2. ポリオキサジアゾール及びポリパラフェニレンビニレンから選ばれた少なくとも一種を含む高分子フィルムを熱処理して得られる、25℃におけるa−b面方向の電気伝導度が25000S/cm以上のグラファイトフィルム。
  3. 厚さが5ミクロンメートル以下の高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られる請求項2に記載のグラファイトフィルム。
  4. ポリイミドを含み複屈折が0.1以上である高分子フィルムを熱処理して得られる、25℃におけるa−b面方向の電気伝導度が25000S/cm以上のグラファイトフィルム。
  5. 厚さが5ミクロンメートル以下の高分子フィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られる請求項4に記載のグラファイトフィルム。
  6. 前記高分子フィルムが、100〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数が3.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムである請求項1、4又は5記載のグラファイトフィルム。
  7. 前記高分子フィルムが、下記構造で表される酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載のグラファイトフィルム。
    Figure 0004324399
    であり、式中R1は、
    Figure 0004324399
    からなる群から選択される2価の有機基であって、R2はそれぞれ独立して、−CH3、−Cl、−Br、−F、または−OCH3である。
  8. 前記高分子フィルムが、下記構造で表される酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載のグラファイトフィルム。
    Figure 0004324399
  9. 前記高分子フィルムが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  10. 前記高分子フィルムが、ピロメリット酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  11. 前記高分子フィルムが、p−フェニレンジアミンを原料に用いて得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1、4乃至10の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  12. 請求項1、4〜11の何れかに記載のグラファイトフィルムに用いるためのポリイミドフィルムであって、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が3.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルム。
  13. 請求項1、4〜11の何れかに記載のグラファイトフィルムに用いるためのポリイミドフィルムであって複屈折が0.1以上であるポリイミドフィルム。
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