JP6290031B2 - 磁気抵抗センサ - Google Patents

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Description

本発明は、感度の高い磁界センサであって、具体的には感磁部にグラファイトシートを用いた磁気抵抗センサに関するものである。
携帯電話やノートパソコン等の電気機器の開閉状態の検知や、モータの回転の制御など機器類の様々な場面において、磁場を検知するための磁界センサが用いられている。主な磁界センサには、ローレンツ力を利用したホール素子と、磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗素子がある。感磁部の材料としてシリコンを用いたホール素子は、低コストで大量生産が可能であるが、キャリア移動度が低いためセンサの感度が低くなるという問題を有している。このため、シリコンと比較してキャリア移動度が高く、センサ感度を高めることができるInSb、GaAsなどのIII−V族化合物半導体を用いた磁界センサが利用されている。キャリア移動度が高い材料を用いると出力信号を大きくすることができるためである。しかしながら、キャリア移動度の高い材料は、一般的に価電子帯と伝導帯のバンドギャップが小さいため、キャリア移動度・キャリア密度・出力電圧の温度依存性が大きいという問題がある。また、III−V族化合物半導体は、稀少元素(レアメタル)を含むことから、材料の価格や供給が安定しない可能性がある。そこで、従来の半導体材料が有していた課題を解決するために、新たな磁界センサ用の材料が開発されており、その一つにグラファイトがある。グラファイト単結晶のキャリア濃度は約1×1019cm-3程度であり、そのBasal面方向のキャリア移動度は12500〜14000cm2/V・secと高い(非特許文献1)。また、グラファイトは、他の半導体とは異なり、価電子帯と伝導帯のグラフがディラックポイントでぶつかるという特殊なバンド構造をしているため、温度依存性が低い。このように、グラファイトは優れた特徴を有していることから、シリコンやIII−V族化合物半導体に代わる磁界センサ用材料として期待されている。
グラファイトを磁界センサに適用した例として、特許文献1には、厚さ1nmのグラフェン層をセンス層に用いた磁気抵抗センサが示されており、特許文献2には、1原子層〜10原子層のグラファイト薄膜をチャネル領域に用いたホール素子が示されている。
また、非特許文献2には、グラファイトフィルム(パナソニック社製、PGS(厚さ100μm、電気伝導度10000S/cm、いずれもパナソニック社カタログより))の磁場0.4Tにおける室温でのa−b面方向の磁気抵抗率が6.3%であることが示されている。また、このグラファイトフィルムを用いてグラファイト層間化合物を作製すると磁気抵抗率は数%に減少する事が報告されている。
特開2011−40750号公報 特開2013−197165号公報
I.L.Spain,in:P.L.Warker Jr.,P.A.Thrower(Eds).Chemistry and Physics of Carbon,vol,8,Marcel Dekker,Inc.,New York,1973,pp.1−150. Y.Gotoh,et al.,J.Phy.Chem.Solids,74,1875(2013) K.Nagashio,et al.,J.J.Appl.Phys.49,051304(2010) 谷腰欣司 (第1版)センサーのしくみ(株式会社電波新聞社(2004年3月20日発行))
しかしながら、特許文献1に記載された厚さ1nmのグラフェン層や特許文献2に記載された厚さ約3nm(10原子層分)のグラファイト薄膜を商業規模で製造するには多大なコストがかかり、採算性に問題がある。
また、上記のように非特許文献2にはグラファイト層間化合物の磁気抵抗率が数%であることが開示されているが、グラファイトを用いた磁気抵抗センサの実用化を実現するためには感度の向上は必須である。
そこで、本発明は、材料価格や供給が安定しており、温度依存性が少なく製造容易なグラファイトシートを感磁部に用いた磁界センサであって、感度が高い磁気抵抗センサを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、グラファイトシートを用いた磁界センサの感度を高めることについて詳細な検討を行った。まず、グラファイトシートの厚さと磁気抵抗率の関係を整理した。特許文献2に示された10原子層のグラフェンの厚さはおよそ3.345nmであるが、このような厚さのグラフェンは電子密度に対して正孔密度が大きい。従って、厚さが3.345nm以下のグラファイトシートは正孔をキャリアとする1キャリアモデルとして振る舞うため、磁場に対する応答電圧は線形性を示す。また、1キャリアモデルでは、キャリア密度の磁場依存性が低いため、磁気抵抗率も低い。一方、厚さが4nm以上のグラファイトシートの場合、電子密度と正孔密度はほぼ同数となり、2キャリアモデルとして振る舞うため、磁場に対する応答電圧は二次応答を示す。2キャリアモデルでは、電子と正孔がローレンツ力によってそれぞれ形成する電場が打ち消し合うことになるため、グラファイトシートの電気伝導度は低下し、磁気抵抗率が増加する(非特許文献3)。従って、厚さが3.345nm以下のグラファイトシートは、ホール素子として利用するのに適しており、厚さが4nm以上のグラファイトシートは、磁気抵抗素子として利用するのに適している。
以上のことから、グラファイトの厚さを調整して、キャリア密度を制御することによって、グラファイトはホール素子にも磁気抵抗素子にもなりえる。しかしながら、約3nmのグラファイトシートを商業規模で製造するには多大なコストがかかることから、本発明者らは、グラファイトシートを磁気抵抗素子に用いることを考えた。磁気抵抗素子は、2キャリアモデルであることを利用しているため、磁場への応答は極性によらないというメリットがある。
また、グラファイトシートの結晶品質が高いほどキャリア数は減少し(非特許文献1)、電子密度と正孔密度はほぼ同数となる。このことから、本発明者らは、より高品質なグラファイトシートを製造できれば、さらに磁気抵抗率が大きく感度の高い磁気抵抗センサを得ることができると考え、種々の実験を試みた。その結果、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率が20%以上であるグラファイトシートを作製することに成功し、このような特性を持つグラファイトシートを磁気抵抗センサの感磁部として用いることに想到した。
すなわち、前記課題を解決することができた本発明の磁気抵抗センサは、基材と、該基材の少なくとも一方主面側に形成されているグラファイト層と、該グラファイト層に接続されている少なくとも2つの電流電極を有する磁気抵抗センサであって、前記グラファイト層は、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率が20%以上であることを特徴とする。本発明の磁気抵抗センサは、感磁部に高い磁気抵抗率を有するグラファイト層を用いているため、感度が高い。
他方、グラファイトの磁気抵抗率をどの様にすれば大きく出来るのか、特に実用的に必要と想定される室温での磁気抵抗率を20%以上にするためにはどうすれば良いかは全く未知であったが、本発明者らは、鋭意努力した結果、20%以上の磁気抵抗率を可能とする以下の方法を初めて見出した。
すなわち、本発明に係るグラファイト層は、芳香族高分子を成膜してフィルムにし、このフィルムを炭素化した後、温度3000℃以上で熱処理することによって得られるものであることが好ましい。これにより、高品質のグラファイト層を形成することが出来るため、磁気抵抗センサの感度を向上させることが可能となる。
本発明に係るグラファイト層の電気伝導度は20000S/cm以上であることが好ましい。グラファイト層の電気伝導度が低すぎると言う事は電子とホールの数が異なる事を意味し、この事は出力信号が低下することになるからである。また、電気伝導度が高ければ高いほど、一定電場における耐電流密度は大きくなるため、大電流化に対応可能な磁気抵抗センサを得ることができる。
本発明に係るグラファイト層のキャリア移動度は8000cm2/V・sec以上であることが好ましい。グラファイト層のキャリア移動度が大きければ大きいほど、磁気抵抗率を大きくすることができる。
本発明に係るグラファイト層の厚さは10nm以上、20μm以下であることが好ましい。グラファイトシートの厚さが10nm以上であれば、電子と正孔の2キャリアモデルとみなすことができるため、グラファイト層を磁気抵抗センサの感磁部として用いることが可能である。また、グラファイトシートの厚さを20μm以下とすることによりグラファイト化時に炭素化シート内部のグラファイト構造が乱れず、空洞や欠損ができにくくなるため、センサ感度を一層向上させることができる。
本発明に係る基材とグラファイト層の間に第1の絶縁層が形成されていることが好ましい。絶縁性を有しない基材を用いることが可能である。また、キャリア移動度を低下させる不純物による散乱を防止することができ、リーク電流を低減することができる。
本発明に係るグラファイト層上に第2の絶縁層が形成されていることが好ましい。感磁部であるグラファイト層を保護することができるため、キャリア移動度を低下させる不純物による散乱を防止することができる。
本発明の磁気抵抗センサは、感磁部にグラファイト層を用いていることから、材料の供給や価格が安定しており、製造にも特段の困難性がなく、温度依存性も少ない。また、このグラファイト層は、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率が20%以上と高いため、磁気抵抗センサの感度を向上することが出来る。
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気抵抗センサの斜視図である。 図2は、本発明の実施の形態1に係る磁気抵抗センサの電流電極の配置を示す平面図であり、図2(a)は平行型であり、図2(b)はバーバーポール型であり、図2(c)は図2(a)に短絡電極を追加した平行型であり、図2(d)はミアンダ型である。 図3は、本発明の実施の形態2に係る磁気抵抗センサにゲート電極が設けられた場合の断面図である。 図4は、本発明の実施の形態3に係る磁気抵抗センサの構成を示す模式図であり、図4(a)は2つの磁気抵抗素子を直列接続した場合、図4(b)は4つの磁気抵抗素子をブリッジ型に配置した場合である。 図5は、本発明の実施の形態4に係る磁気抵抗センサの斜視図である。 図6は、本発明の実施の形態4に係る磁気抵抗センサの側面図である。
本発明の磁気抵抗センサは、基材と、該基材の少なくとも一方主面側に形成されているグラファイト層と、該グラファイト層に接続されている少なくとも2つの電流電極を有する磁気抵抗センサであって、前記グラファイト層は、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率が20%以上である。本発明の磁気抵抗センサは、感磁部に従来にはない高い磁気抵抗率を有するグラファイト層を用いている。
磁界センサとは、磁気エネルギーを検出する装置であり、磁場Bによって発生するローレンツ力fに対抗する反力としてホール起電力(電圧)が発生する電流磁気効果を応用している。電流磁気効果を応用した素子には、ホール素子や磁気抵抗素子がある(非特許文献4)。
ホール素子は、感磁部に電流が流れている状態で磁場が印加されたとき、電流と磁場の両方に直交する方向にホール電圧が発生するというホール効果を利用したものである。一方、磁気抵抗素子は、磁場が印加されたとき感磁部の電気抵抗が、磁場が印加されない場合よりも増加する磁気抵抗効果を利用したものであり、磁場の有無や磁場の強さを検知することができるものである。ホール素子は、感磁部に電流を流すための少なくとも2つの電流電極と、ホール効果により生じるホール電圧を検知するための少なくとも2つの電圧電極が必要な4端子素子である。これに対して、磁気抵抗素子は2つの電流電極があれば、2端子素子のみで電気抵抗の変化を検知でき構造を単純化しやすい。また、ホール素子は磁極を判別することができるのに対して、磁気抵抗素子は磁場に対して二次の応答電圧を示すため、磁気抵抗素子単体では磁極を判別することはできない。上記のとおり、ホール素子と磁気抵抗素子は動作原理が異なるため、使用目的や用途によって、使い分けがなされるものであるが、本発明は磁気抵抗素子としての磁気抵抗センサに関するものである。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気抵抗センサの斜視図である。図1において磁気抵抗素子5(磁気抵抗センサ1)は、基材30の上に感磁部10と2つの電流電極20を有している。感磁部10は磁場を検知する部分で、グラファイトシートを、例えばパターンニング加工することにより得られるグラファイト層15であり、感磁部10の電流方向の長さはL、幅はWで表される。磁気抵抗素子5が磁場Bを検知したときの電気抵抗値をR、磁場Bがない(磁場がゼロである)ときの電気抵抗値をRとすると、磁気抵抗率は、100×ΔR/R=100×(R−R)/Rで表され、磁気抵抗率が大きいほど磁気抵抗センサとしての感度が高いといえる。
図1において、磁気抵抗素子5に磁場Bが印加されると、電子と正孔は片側の端面に蓄積されて、電流Iと磁場Bの両方に直交する向きにホール電場が生じる。電子と正孔がつくるホール電場は、互いに逆向きで打ち消し合うため、Y軸方向(グラファイト層15のb軸方向)に働くローレンツ力は釣り合わなくなり、X軸方向(グラファイト層15のa軸方向)の電気伝導度が低下して電気抵抗Rは大きくなることから磁気抵抗率が大きくなる。グラファイト層15のキャリア移動度が高ければ高いほど、磁気抵抗率は大きくなる。
磁気抵抗率を測定するためには、磁場をかけない状態でグラファイト層15の電気抵抗値Rを測定し、また、グラファイト層15に垂直な方向に磁場0.4Tをかけて電気抵抗値Rを測定し、上述のように100×(R−R)/Rの値を算出することによって行う。電気抵抗値Rおよび電気抵抗値Rは、2つの電流電極20間で測定されるグラファイト層15のa−b面方向の電圧値/電流値により求められる。なお、本発明において、前記磁気抵抗率は、室温下での磁気抵抗率を意味するものである。
グラファイト層15に印加する磁場の方向は、グラファイト層15に垂直な方向を中心として±15度以内であれば許容される。なお、RやRの値は、磁気抵抗センサの形状により異なるが、100×ΔR/Rで表される磁気抵抗率は、磁気抵抗センサの形状による因子はキャンセルされているため、例えばグラファイト層15の縦横比L/Wや厚さtの違い、或いは電流電極20の形状によっては、理論的には変わらない。但し、tを小さくすることによって、グラファイト層15自身による磁場の遮蔽を防止することができるので、一層感度の高い測定をすることができる。
まず、本発明において最も重要のグラファイト層について述べる。グラファイト結晶の基本的な構造は、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面が規則正しく積み重なった層状構造(層が積み重なった方向をc軸と言い、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面の広がる方向をa−b面方向と言う)である。基底面内の炭素原子は共有結合で強く結ばれ、一方、積み重なった層面間の結合は弱いVan der Walls力によっており、理想的な構造での層間距離は0.3354nmである。グラファイトにおける電気伝導度や熱伝導率はこの様な異方性を反映してa−b面方向に大きい。
上述のように、本発明の磁気抵抗センサのグラファイト層は、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率が20%以上である。磁気抵抗率は大きければ大きいほど、磁気抵抗センサとしての感度が向上する。したがって、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率は25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
さらに本発明のグラファイト磁気抵抗センサはそのセンサ感度が使用環境によってあまり変化しないという特徴をももつ。これはグラファイトa−b面方向の電気伝導度が温度によってあまり変化しないという事に基づいている。高品質グラファイトは−180℃以下では、電気伝導度が急激に大きくなるが、センサとして通常使用される温度範囲(−80℃〜300℃)では電気伝導度はあまり変化しない。そのため実用的な磁気抵抗センサとして温度による感度補正はほとんど必要としない。
本発明の磁気抵抗センサのグラファイト層に用いられるグラファイトシートの製造方法について説明する。
<高分子原料>
最初に本発明のグラファイトシート作製に用いられる高分子フィルム原料について記述する。本発明のグラファイトシート作製に好ましく用いられる高分子原料は芳香族高分子である事が好ましく、芳香族高分子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのフィルムは公知の製造方法で製造すればよい。
特に好ましい芳香族高分子として芳香族ポリイミドを例示する事ができる。中でも以下に記載する酸二無水物(特に芳香族酸二無水物)とジアミン(特に芳香族ジアミン)からポリアミド酸を経て作製される芳香族ポリイミドは本発明のグラファイト作製のための原料高分子として特に好ましい。
本発明のグラファイトシートは、例えば芳香族高分子を成膜して厚さが50μm〜30nmまたは厚さが6μm〜30nmの範囲のフィルムにし、このフィルムを炭素化した後、温度3000℃以上で熱処理することで得られてもよい。
<芳香族ポリイミドの合成、製膜>
以下、本発明の高分子原料として特に好ましい、芳香族ポリイミドフィルムの作製方法について詳述する。芳香族ポリイミドフィルムの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸
モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。特に、直線的で剛直な構造を有した高分子構造を持つほどポリイミドフィルムの配向性が高くなること、さらには入手性の観点から、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
本発明において芳香族ポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独で、または任意の割合の混合物で用いることができる。さらにポリイミドフィルムの配向性を高くすること、入手性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成する事が好ましい。
以上から、前記芳香族高分子のポリイミドはピロメリット酸無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも一つと、4,4−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンから選ばれる少なくとも一つから作製されてもよい。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を有機溶媒中に溶解させて、得られた原料溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る事が出来る。
前記原料溶液中の酸二無水物とジアミンとは、実質的には等モル量にすることが好ましく、モル比は例えば、1.5〜1〜1:1.5、好ましくは1.2:1〜1:1.2、より好ましくは1.1:1〜1:1.1である。
芳香族ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類の両方または片方をイミド化促進剤として用い、イミド転化するケミカルキュア法がある。高磁気抵抗率、高電気伝導度、高キャリア移動度、高熱伝導率を有するグラファイトシートを実現するためにはケミカルキュア法である事が好ましい。熱キュア法では150〜200℃の間で解重合反応と呼ばれるアミド酸形成の逆反応が起こることが避けられないが、ケミカルキュア法では解重合反応が起こりにくく、連鎖配列を制御したポリイミドを作製しやすい。そのためケミカルキュア法による薄膜のポリイミドフィルムはより高配向性を持ち、良好なグラファイトを得やすいと考えられる。
本発明のグラファイトシートは厚さが10nm以上、20μm以下の範囲であることが好ましい。グラファイトシートの厚さが10nm以上であれば、2キャリアモデルとみなすことができるため、磁気抵抗素子として用いることが有効である。また、グラファイトシートの厚さが20μmより大きいとグラファイト化時に炭素化シート内部のグラファイト構造が乱れ、空洞や欠損ができやすくなることがあり、センサ感度を低下させる原因となるため好ましくない。以上述べたように、本発明のグラファイトシートの厚さの下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましく、40nm以上であることが特に好ましく、50nm以上であることが最も好ましい。本発明のグラファイト層の厚さの上限は、20μm以下であることが好ましく、9.6μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、2.1μm以下であることが最も好ましい。
芳香族ポリイミドを用いた場合、最終的に得られるグラファイトシートの厚さは、一般に出発高分子フィルムの80〜30%の範囲となり、一般的には出発高分子フィルムの厚さが薄いほど厚さの減少率は大きくなる傾向にある事から、出発高分子フィルムの厚さは50μm〜30nmまたは6μm〜30nmの範囲である事が好ましい。高分子フィルムの厚さは、例えば50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、さらにより好ましくは10μm以下、特に好ましくは6μm以下、最も好ましくは4μm以下であってもよい。高分子フィルムの厚さは、例えば30nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上、特に好ましくは100nm以上、最も好ましくは200nm以上であってもよい。一方、長さ方向は100〜70%程度に縮小する事が多いので、製造されるシートの面積はこの様な条件を考慮して決定すれば良い。高分子フィルムは、前記高分子原料又はその合成原料から公知の種々の手法によって製造できる。この様な高分子フィルムの超薄膜を作製するには、エンドレスベルト、ドラム、金属フィルムなどの基板上へのワイヤバーによる薄膜作製、スピンコート法による薄膜作製、さらには真空中で蒸着して反応させる真空薄膜作製法などを好ましく用いる事が出来る。なお、本発明では、50μm〜1μmのシートを得るためにワイヤバーを使用し、1μm〜20nmのシートを得るためにスピンコートを使用することが好適である。
以下に本発明の芳香族ポリイミド薄膜の作製方法の一例について述べる。本発明のポリイミド薄膜は、上記ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液をエンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥・イミド化させることにより製造される。具体的にケミカルキュアによるフィルムの製造法は以下のようになる。まず上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量のイミド化促進剤を加え支持板やPET等の有機フィルム、ドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延又は塗布後、ワイヤバーまたはスピンコートを用いて薄膜状とし、有機溶媒を蒸発させることにより自己支持性を有する膜を得る。次いで、これを更に加熱・乾燥させながらイミド化させてポリイミドフィルムを得る。加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲の温度が好ましい。さらに、ポリイミドの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを固定したり、延伸したりする工程を含む事が好ましい。これは、分子構造およびその高次構造が制御されたフィルムを用いる事でグラファイトへの転化がより容易に進行すると言う事によっている。すなわち、グラファイト化反応をスムーズに進行させるためには炭素前駆体中の炭素分子が再配列する必要があるが、配向性にすぐれたポリイミドではその再配列が最小で済むために、低温でもグラファイトへの転化が進み易いと推測される。
芳香族ポリイミド薄膜の作製時には通常製膜時の耐電防止、基板との接着防止、量産時の巻取りを容易にするなどのためにフィラーと言われる粉体が添加される。最も一般的に使用されるフィラーは例えば燐酸カルシウムであり、通常、ポリイミド全体の10〜1質量%程度の量が添加され、フィラーの粒径は3μm〜1μm程度である事が多い。燐酸カルシウムの融点は1230℃であって通常のポリイミド膜にフィラーが含まれる事は問題にならない。また、ポリイミド薄膜の厚さが25μm以上であり、これを用いてグラファイトシートを作製する場合、フィラーは分解・ガス化してしまうので最終的に得られるグラファイトシートの特性に影響を与える事はほとんど無い。しかしながら本発明の様に薄いグラファイトシートの場合には炭素化の過程で分解・ガス化して抜け出したフィラーの後がグラファイト化過程でのグラファイト層形成を妨げ、結果的に磁気抵抗率、電気伝導度、キャリア移動度、熱伝導率特性の実現に悪影響を与える場合がある。従って本発明において燐酸カルシウムに代表されるフィラーは可能な限り含まない事が好ましい。
本発明において、前記芳香族高分子の成膜時に添加されるフィラーの量は、芳香族高分子フィルム全体の0.1質量%以下である事が好ましく、実質的にフィラーを含まない事が最も好ましい。
<炭素化・グラファイト化反応>
次に、芳香族ポリイミドに代表される高分子フィルムの炭素化・グラファイト化の手法について述べる。本発明では出発物質である高分子フィルムを不活性ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。予備加熱は通常1000℃程度の温度で行う。通常ポリイミドフィルムは500〜600℃付近で熱分解し、1000℃付近で炭素化する。予備処理の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われない様に、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。
グラファイト化反応は、上記の方法で炭素化されたフィルムを超高温炉内にセットして行う。炭素化フィルムのセットはCIP材やグラッシーカーボン基板に挟んで行う事が好ましい。グラファイト化は通常2500℃以上の高温で行われるが、本発明においては2600℃以上の温度でグラファイト化する事が望ましい。この様な高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行なう。グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えても良い。処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来る。熱分解と炭素化によりその面積は元のポリイミドフィルムより約10〜40%程度収縮し、グラファイト化の過程では逆に約10%程度拡大する事が多い。このような収縮、拡大によってグラファイトシート内には内部応力が発生しグラファイトシート内部にひずみが発生する。この様なひずみや内部応力は3000℃以上で処理することにより緩和されてグラファイトの層が規則正しく配列し、さらに磁気抵抗率、電気伝導度、キャリア移動度、熱伝導率が高くなる。本発明のグラファイトシートを得るための処理温度(最高処理温度)は3000℃以上が好ましく、3100℃以上の温度で処理する事がより好ましく、3200℃以上である事が最も好ましい。グラファイトシートを得るための処理温度(最高処理温度)を3000℃以上にする事によって室温での磁気抵抗率を20%以上にする事が可能となり、3200℃以上にする事によって室温での磁気抵抗率を30%以上にする事が出来る。無論、この処理温度はグラファイト化過程における最高処理温度としてもよく、得られたグラファイトシートをアニーリングの形で再熱処理してもよい。なお熱処理温度の上限は、例えば、3600℃以下、より好ましくは3500℃以下である。当該最高処理温度での保持時間は、例えば、20分以上、好ましくは30分以上であり、1時間以上であってもよい。保持時間の上限は、特に限定されないが、通常、8時間以下、特に4時間以下程度としてもよい。温度3000℃以上で熱処理してグラファイト化する場合、高温炉内の雰囲気は前記不活性ガスに依って加圧されているのが好ましい。
本発明のグラファイトシートは、3000℃以上での熱処理が不活性ガス中で行われ、そのガスの雰囲気圧力(ゲージ圧)が0.09MPa以上(好ましくは0.10MPa以上)とする条件で得られてもよい。この時、雰囲気圧力(ゲージ圧)の上限は、特に限定されないが、例えば5MPa以下であってもよい。
加圧下でグラファイト化反応を行う理由としては(1)加圧下での処理により厚さが不均一となるのを防止する、(2)表面が荒れるのを防止する、(3)熱処理炉のヒーターの長寿命化を実現する、の3点を挙げる事が出来る。例えば、0.09MPa以下の圧力下、3000℃以上の温度で熱処理すると、シートから炭素が昇華しやすくなりシート表面が毛羽立ち、グラファイトが不均一に薄くなる場合がある。本発明の様に極めて薄いグラファイトシートを作製する場合には、シート全体で均一に厚さが減少する事が重要であり、厚さを均一にするためにも3000℃以上の温度での熱処理を加圧下で行う事が重要である。
本発明に係るグラファイト層の電気伝導度が20000S/cm以上であることが好ましい。グラファイト層の電気伝導度が低すぎると、出力信号が低下することになるからである。また、電気伝導度が高ければ高いほど、一定電場における耐電流密度は大きくなるため、大電流化に対応可能な磁気抵抗センサを得ることができる。従って、グラファイト層の電気伝導度は、21000S/cm以上であることがより好ましく、22000S/cm以上であることがさらに好ましく、22500S/cm以上であることが特に好ましく、23000S/cm以上であることが最も好ましい。グラファイト層の電気伝導度を20000S/cm以上にする事によって室温での磁気抵抗率を20%以上にする事が可能となり、23500S/cm以上にする事によって室温での磁気抵抗率を30%以上にする事が出来る。また、グラファイト層の電気伝導度は、例えば26000S/cm以下、好ましくは25000S/cm以下であってもよい。
本発明に係るグラファイト層のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上であることが好ましく、より好ましくは9000cm2/V・sec以上、さらに好ましくは10000cm2/V・sec以上、特に好ましくは11000cm2/V・sec以上である。グラファイト層のキャリア移動度を8000cm2/V・sec以上にする事によって室温での磁気抵抗率を20%以上にする事が可能となり、11000cm2/V・sec以上では室温での磁気抵抗率を30%以上にする事が出来る。また、キャリア移動度は、例えば15000cm2/V・sec以下または14000cm2/V・sec以下であってもよい。グラファイト層のキャリア移動度が大きければ大きいほど、磁気抵抗率は大きくなる。グラファイト層の磁気抵抗率が大きければ大きいほど、感度の高い磁気抵抗センサを得ることができる。
また、本発明に係るグラファイト層のキャリア密度は、1×1020cm-3以下であることが好ましい。キャリア密度とは、2キャリアモデルの場合は電子密度と正孔密度の和であり、1キャリアモデルの場合は多数キャリアのキャリア密度である。本発明に係るグラファイト層は、磁気抵抗素子として機能することからもわかるように、2キャリアモデルを用いていることから、ここでのキャリア密度は電子密度と正孔密度の和である。グラファイト層のキャリア密度は小さければ小さいほど、磁気抵抗率が大きくなるため、1×1020cm-3以下であることがより好ましく、5×1019cm-3以下であることがさらに好ましく、3×1019cm-3以下であることが特に好ましく、2×1019cm-3以下であることが最も好ましい。前記キャリア密度の下限は、磁気抵抗センサとして機能する限り、特に限定されない。
本発明に係るグラファイト層は、温度25℃におけるa−b面方向の熱伝導率が1600W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が高ければ高いほど、磁気抵抗センサを駆動させたときに発生する熱を効率よく放熱することが可能である。グラファイト層の熱伝導率は、好ましくは1600W/m・K以上であり、より好ましくは1800W/m・K以上であり、最も好ましくは1900W/m・K以上である。また熱伝導率は、例えば、2400W/m・K以下であってもよく、2300W/m・K以下であってもよい。
次に、グラファイト層を用いた磁気抵抗センサの作製方法について述べる。
上記の製造方法により得られたグラファイトシートを基材に固定し、グラファイト層とする。基材の種類は特に限定されないが、絶縁性を有していることが好ましい。基材としては、例えば、耐熱性ポリイミド基板、PEN基板、あるいはガラスエポキシ基板等の有機高分子フィルム、ガラス基板、セラミック基板、金属基板等の無機基板、またはこれらの組み合わせを好ましく用いることができる。
また、基材とグラファイト層の間に第1の絶縁層が形成されていることも好ましい。これにより、絶縁性を有しない基材を用いることが可能であり、磁気抵抗率、電気伝導度、キャリア移動度、熱伝導率等を低下させる不純物による散乱を防止することができ、リーク電流を低減することができる。第1の絶縁層は、高い誘電率を有する材料であることが好ましく、例えば、HfO2、ZrO2、La23、HfSiO、Al23、Si34、Y23、Pr23、Gd23、TiO2、ZrO2、AlN、BN、SiC、Ta25、SrTiO3、ZrAlxy、HfAlxy、BaSr1−xTiO3、PbZr1−xTiO3を用いることができる。
基材は、グラファイトシートを接着させるための接着層を設けていてもよい。接着層としては、例えば、熱圧着用のポリイミドや変性アクリル系接着剤シートなどの熱可塑性高分子を用いることができる。
基材、接着層、グラファイトシートの固定方法としては、熱プレス、真空プレス、ラミネート(熱ラミネート)、真空ラミネート、熱ロールラミネート、真空熱ロールラミネート等の各種熱圧着方法を挙げることができる。
基材に固定されたグラファイトシートを所望の形状や構造にするためのパターニングを行うことにより、磁気抵抗センサの感磁部を形成する。パターニングは、例えば、プラズマエッチング、イオンエッチング、化学エッチング、レーザーエッチング及びこれらの組合せによって行うことができるが、本発明の磁気抵抗センサにおけるグラファイトシートは、比較的薄いものであるので、レーザーエッチングにより高速でパターニングすることができる。
以下、レーザーのエッチングによって基材に固定されたグラファイトシートを部分的に除去することによって行うことについて説明する。グラファイトシートが10nm以上20μm以下の厚さであり極めて薄い場合には、基材を損傷することなくレーザーエッチングを行うことができる。また、特に熱圧着によって基板とグラファイト膜が接着されている場合には、レーザーによるエッチング工程で接着層が溶解して熱吸収をするため、基板にほとんどダメージを与える事無く、グラファイト層のみをエッチング除去する事が出来る。レーザーは、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバーレーザー、エキシマレーザーなどの公知の加工用レーザーを用いることができる。
一方、グラファイト膜が20μm超であり、さらに基材が有機基板である場合、基材上に貼り付けた状態で加工を行うと、レーザーエッチングの際の熱によって有機基板が燃焼、炭素化などにより損傷するためにパターニングを行うことが難しい。グラファイトは炭素のみから成っているので基本的にはレーザーの熱によって容易に燃焼して炭酸ガスとなり、結果的に公知の加工用レーザーで容易にエッチング(除去)できる。従って、20μm超の厚さのグラファイトシートを磁気抵抗センサに用いる場合には、パターニングを行った後で基材に固定することが好ましい。
本発明の磁気抵抗センサは、少なくとも2つの電流電極を有していればよく、電流電極の配置は特に限定されない。図2は、本発明の実施の形態1に係る磁気抵抗センサの電流電極の配置を示す平面図であり、図2(a)は平行型であり、図2(b)はバーバーポール型であり、図2(c)は図2(a)に短絡電極を追加した平行型であり、図2(d)はミアンダ型である。図2(a)の磁気抵抗素子5(磁気抵抗センサ1)は、電流電極20の間にグラファイト層15により形成される感磁部10が設けられる。平行型電極は、電流電極20を容易に形成することができる。図2(b)は、電流電極20の間にバーバーポール電極21と呼ばれる、X軸方向に対して角度θで傾斜した短冊状の電極が配置されている。バーバーポール型電極の場合、電流が斜めに流れるため、低磁場の場合のセンサ感度と直線性を改善することができ、また、磁極を判別することも可能である。図2(c)では、平行型の電流電極20の間に、短冊状の短絡電極22が配置されている。短絡電極22を設けることにより、ホール効果によるホール電圧の発生を抑えることができるため、キャリアの偏向量が増して磁気抵抗効果を増加させることができる。図2(d)では、電流電極20の間にミアンダ状と呼ばれるつづら折り状の感磁部10が設けられて、感磁部に沿って短絡電極22と接続電極23が配置される。ミアンダ型電極の場合、多数の電極が設けられるため、電気抵抗値と出力電圧を大きくすることができる。
電流電極の形成には、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることができる。例えば、グラファイト層上にポジ型のフォトレジスト層を形成し、電流電極の形成予定領域以外の領域に選択的に紫外線を照射した後にポジ型フォトレジスト層を現像液に浸漬させることにより、電流電極の形成予定領域のフォトレジスト層を除去し、電流電極の形成予定領域以外の領域のフォトレジスト層を残す。或いは、グラファイト層上にネガ型のフォトレジスト層を形成し、電流電極の形成予定領域に選択的に紫外線を照射した後にネガ型のフォトレジスト層を現像液に浸漬させることにより、電流電極の形成予定領域のフォトレジスト層を除去し、電流電極の形成予定領域以外の領域のフォトレジスト層を残す。次に、グラファイト層上、および、残存したフォトレジスト層(すなわちレジストマスク)上に電流電極の材料となる金属層を真空蒸着させる。そして、リフトオフ法によって、レジストマスクを金属層とともに剥離することにより、パターンニングされた電流電極を完成することができる。
電流電極材料は、グラファイトに対してオーミック接触となる導電性材料であれば特に限定されず、例えば、Cu、Au、Pd、Ti、Ni、またはこれらを1種以上組み合わせた合金を用いることができる。
本発明に係るグラファイト層上に第2の絶縁層が形成されていることが好ましい。これにより、感磁部であるグラファイト層を保護することができるため、磁気抵抗率、電気伝導度、キャリア移動度、熱伝導率等を低下させる不純物による散乱を防止することができる。第2の絶縁層は、第1の絶縁層と同様に、高い誘電率を有する材料であることが好ましく、例えば、HfO2、ZrO2、La23、HfSiO、Al23、Si34、Y23、Pr23、Gd23、TiO2、ZrO2、AlN、BN、SiC、Ta25、SrTiO3、ZrAlxy、HfAlxy、BaSr1−xTiO3、PbZr1−xTiO3を用いることができる。
(実施の形態2)
また、本発明に係る磁気抵抗センサには、ゲート電極が設けられることも好ましい。ゲート電極を用いれば、印加されるゲート電圧を変化させることにより、磁気抵抗センサの感度や電気抵抗を可変にすることができる。図3は、本発明の実施の形態2に係る磁気抵抗センサにゲート電極が設けられた場合の断面図である。基材30の上部に第1の絶縁膜40が設けられ、さらにその上部に第1の絶縁膜40と同じ大きさになるようにグラファイト層15(感磁部10)が設けられる。第1の絶縁膜40とグラファイト層15の左右端部を覆うように2つの電流電極20が設けられ、さらに保護層として機能する第2の絶縁層41が電流電極20とグラファイト層15を覆う。第2の絶縁層の上部にはゲート電極25が設けられており、このゲート電極に印加される電圧を変更すれば、グラファイト層15のキャリア密度を制御することができ、磁気抵抗率の大きさを調整することが可能である。
(実施の形態3)
本発明の磁気抵抗センサは磁気抵抗率が高く感度が高いため、単体で磁気抵抗素子として使用してもよいが、さらにセンサ感度を向上させるために、複数の磁気抵抗素子を組み合わせることも好ましい。図4は、本発明の実施の形態3に係る磁気抵抗センサの構成を示す模式図であり、図4(a)は同様の特性を有する2つの磁気抵抗素子5a,5bを直列接続した場合、図4(b)は同様の特性を有する4つの磁気抵抗素子5a,5b,5c,5dをブリッジ型に配置した場合を示している。図4(a)および(b)において、Vcは制御電圧であり、Voutは出力電圧である。図4(a)において、磁気抵抗素子5aに印加される磁場B1(図示しない)が磁気抵抗素子5bに印加される磁場B2(図示しない)よりも大きいとき、磁気抵抗素子5aの電気抵抗R1は、磁気抵抗素子5bの電気抵抗R2よりも大きくなるため、出力電圧Voutは、中点電圧と比べて大きくなる。ここで、中点電圧とは2つの磁気抵抗素子に均一な磁場を印加したときの出力電圧Voutで、Vc/2の値を示す。複数の磁気抵抗素子を組み合わせた場合、中点電圧に対する出力電圧の大きさを測定することで磁場の大きさを得ることができる。また、2つの磁気抵抗素子を組み合わせることにより磁気抵抗の温度補償を行うことができる。
図4(b)のように4つの磁気抵抗素子5a〜5dをブリッジ型に接続して磁気抵抗センサにした場合も、図4(a)と同様に、磁気抵抗素子5a〜5dに印加される磁場の変化を検知すると、出力電圧Voutも変化する。ブリッジ型の構造に形成された磁気抵抗センサも磁気抵抗の温度補償を行うことができる。また、磁気抵抗素子5aと5cを同一の特性を有する素子を用い、その他の磁気抵抗素子5bと5dを、5aと5cとは逆の特性を有する素子を用いれば、磁極を判別することも可能である。
さらに、低磁場でのセンサ感度を高める、あるいは磁極の判別を行うために、磁気抵抗センサにバイアス用磁石が設けられることも好ましい。バイアス用磁石がない場合、検出される磁場はN極、S極に関係なく同一方向に電気抵抗が変化するため、磁極の判別をすることはできない。これに対して、バイアス用磁石がある場合は検出された磁場に加えてバイアス磁場が重畳されるため、出力特性の直線性を改善することができる。バイアス用磁石としては例えば、SmCo磁石、NdFeB磁石、SmFeN磁石などの希土類磁石を用いることができる。
バイアス用磁石は、磁気抵抗センサの基材の主面側と反対側に設けられることが好ましい。すなわち、磁気抵抗センサのグラファイト層が設けられる側と反対側に設けられることが好ましい。
(実施の形態4)
実施の形態1〜3では、磁気抵抗センサのグラファイト層が平面状である例について説明したが、磁気抵抗センサのグラファイト層を非平面状とすることも好ましい。グラファイト層に対して垂直に入射する磁場に対しては、ローレンツ力によるキャリアの移動距離が長くなるために磁気抵抗率を大きくすることができる。一方、グラファイト層に対して水平に入射する磁場に対しては、ローレンツ力によるキャリアの移動距離はグラファイト層の厚さに制限されるために長くとることができない。また、磁場からみたグラファイト層の厚さは、グラファイト層の水平方向となるため、磁場はグラファイト層に入射しにくくなる。
そこで、上記のようにグラファイト層を非平面状に形成することによりグラファイト層の法線方向の範囲が増えるため、検出可能な磁場の範囲を大きくすることができる。なお、感磁部であるグラファイトシートの好ましい厚さは10nm以上20μm以下と薄いため、グラファイトシートを折る、或いは曲げるなどして非平面状に配置することは比較的容易である。
図5は、本発明の実施の形態4に係る磁気抵抗センサ1の斜視図である。図5の磁気抵抗センサ1においては、棒状の基材30の外周にわたって感磁部10となるグラファイト層15が筒状に設けられている。グラファイト層15の端部には電流電極20が形成されているために、グラファイト層15中において電流は基材30の軸方向に流れる。グラファイト層15は非平面状であるから、様々な方向の磁場に対して高感度を発揮することができる。図5に示す磁気抵抗センサ1の場合は、基材30の軸方向に対して垂直な磁場を全方位的に検知することができる。
図6は、本発明の実施の形態4に係る磁気抵抗センサの側面図である。図6(a)のように、棒状の基材30の外周にグラファイト層15が設けられてもよい。グラファイト層の形状は非平面状であれば特に限定されず、例えば図6(b)〜(e)に示すように磁気抵抗センサを側面から見たときに、グラファイト層がU字状、逆U字状、V字状、一部がV字状であってもよい。本発明のグラファイトシートは薄く、加工しやすいものであり、感磁部の形状を被検知物の形状にあわせて変更することができる。このため、感磁部と被検知物との距離を一定にすることが可能であり、出力電圧が低下することを防止できる。
なお、実施の形態4に係る磁気抵抗センサのグラファイト層15の磁気抵抗率を測定する方法は、基本的には実施の形態1において説明した方法と同様であるが、実施の形態4のグラファイト層15は非平面状であるから、グラファイト層15から平面部分を選んでグラファイトの小片を切り出し、この小片の電気抵抗値Rを測定し、また、この小片に垂直な方向に磁場0.4Tをかけて電気抵抗値Rを測定し、100×(R−R)/Rの値を算出することによって行う。なお、小片をグラファイト層15の非平面部分から切り出す場合には、小片に印加する磁場の方向が小片に垂直な方向を中心として±15度以内となるように十分小さな面積で切り出す必要がある。
以上、本発明の実施の形態に係る磁気抵抗センサについて具体例を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下、グラファイトシートの物性測定方法及び作製手順について説明する。
(物性測定方法)
<膜厚>
原料である有機高分子シート、グラファイトシートの厚さは、フィルム(シート)の測定場所によって±5%程度の誤差があった。そのため得られたシートの10点平均の厚さを本発明における試料の厚さとした。
<磁気抵抗率>
室温下で、磁場をかけない状態でグラファイト層の電気抵抗値Rを測定し、また、室温下で、グラファイト層に垂直な方向に磁場0.4Tをかけて電気抵抗値Rを測定し、100×(R−R)/Rの値を算出することによって行った。電気抵抗値Rおよび電気抵抗値Rは、2つの電流電極間で測定されるグラファイト層のa−b面方向の電圧値/電流値により求められる。
<電気伝導度、キャリア移動度>
グラファイトシートの電気伝導度の測定はファン・デル・ポー法によって行った。この方法は薄膜状の試料の電気伝導度を測定するのに最も適した方法である。この測定法の詳細は(第四版)実験化学講座9 電気・磁気(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行(平成3年6月5日発行))のP170に記載されている。この手法の特徴は、任意の形状の薄膜試料端部の任意の4点に電極をとり測定を行うことが出来る事であり、試料の厚さが均一であれば正確な測定が行える点である。本発明においては正方形に切断した試料を用い、それぞれの4つの角(稜)に銀ペースト電極を取り付けて行った。測定は(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、ResiTest 8300を用いて行った。
キャリア移動度の測定は上記ファン・デル・ポー法による電気伝導度測定に用いた試料に磁場を印加し、そのホール係数を測定する事で行った。グラファイトの様に電子とホールがほぼ同じ数だけ存在する場合の計算は、Newton法を用いてその解析を行う必要がある(松本里香 炭素TANSO 2003[No.209]174−178)。この計算のポイントは、電子とホールの密度、両者の易動度で合計4個のパラメータがあり、3種の測定値、電気伝導度、ホール係数、磁気抵抗から3つの連立方程式となるので、仮定が必要になると言う点である。その仮定はグラファイトでは電子とホールの易動度(あるいは密度)が等しいとする事である。実際に高品質グラファイトでは電子とホールの数がほぼ等しい事が知られているので(非特許文献1)、この仮定は問題ない。我々の計算も(松本里香 炭素TANSO 2003[No.209]174−178)の手法に従い、上記仮定を用いてプログラムで数値計算を行い、キャリア移動度を算出した。
(製造例1)
ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18質量%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布し、さらにワイヤバーを用いて厚さ調整を行った。この様な方法で50μmから1μmの範囲の厚さの異なるフィルムを調製した。1μm〜20nmの範囲の均一な厚さの高分子フィルムはこの様な方法では作製が困難であるため、スピンコーターを用いて、アミド酸溶液の濃度、回転数を変えることで厚さの異なる何種類かのフィルムを作製した。なお、本発明の実施例において特に記載のない場合には、製膜時にフィラー成分を一切添加しないで成膜しており、実質的にフィラー成分は0.1質量%以下である。
攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔を除去しポリイミドフィルム(高分子試料A)を作製した。また前記試料Aと同様にしてピロメリット酸無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用い、ポリイミドフィルム(高分子試料B)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用いポリイミドフィルム(高分子試料C)とを作製した。この様な方法で50μmから50nmの範囲の厚さの異なる何種類かのフィルムを作製した。
(実施例1〜8)
製造例1で作製した厚さの異なる8種類のポリイミドフィルム(高分子試料A、面積10×10cm2)を、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で3000℃の処理温度(最高処理温度)まで昇温した。この温度で30分間(処理時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した。処理はアルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm2)の加圧下で行った。得られたグラファイトシートの面積は厚さの違いによって収縮、膨張の比率が異なるために一定ではなかったが、いずれも6.5×6.5cm2〜9.5×9.5cm2の範囲にあった。
所定の厚さで得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、グラファイトシートの厚さ(μm)、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率(%)、電気伝導度(S/cm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)の結果を表1に示す。表1の結果から明らかな様に、いずれの実施例も磁気抵抗率は20%以上であった。また、実施例2〜7(グラファイトシートの厚さが4.7μm〜0.14μm)では、磁気抵抗率が21〜24%であり、一方で実施例1(グラファイトシートの厚さが18μm)では、磁気抵抗率が20%であった。この事から、グラファイトシートの厚さが18μmよりも薄くなると磁気抵抗率はわずかに上昇することが分かった。
(実施例9〜14)
実施例4、および実施例7で用いた高分子試料Aを用い、最高処理温度3100℃、3200℃、または3300℃とした以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたグラファイトシートに関し、高分子試料、最高処理温度(℃)、グラファイトシートの厚さ(μm)、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率(%)、電気伝導度(S/cm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)の結果を表1に示す。最高処理温度を3000℃から3100℃、3200℃、3300℃と高くするにつれて、電気伝導度、キャリア移動度、磁気抵抗率特性は向上した。電気伝導度が23500S/cm以上で、キャリア移動度が10100cm/V・sec以上の試料(実施例11、13、14)では30%以上の大きな磁気抵抗率を得る事ができた。
(実施例15〜20)
高分子試料B、および高分子試料Cを用いた以外は実施例1と同じ方法で厚さの異なる幾つかの試料の炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートに関し、高分子試料、最高処理温度(℃)、グラファイトシートの厚さ(μm)、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率(%)、電気伝導度(S/cm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)の結果を表1に示す。この結果から明らかであるように、高分子試料B、および高分子試料Cの場合でも、高分子試料Aと同様に20%以上の磁気抵抗率を実現できる事が分かった。
(比較例1〜4)
実施例4で用いたのと同じ厚さのポリイミドフィルム(高分子試料A)を原料として用い、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で、それぞれ2800℃、または2900℃(最高処理温度)まで昇温した。この温度でそれぞれ30分間、または120分間(2時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した。処理はアルゴン雰囲気で0.05MPa(0.5kg/cm2)の加圧下でおこなった。得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、最高処理温度の時間(分)、グラファイトシートの厚さ(μm)、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率(%)、キャリア移動度(cm2/V・sec)の結果を表2に示す。この結果から明らかであるように最高処理温度が2800℃、2900℃の場合には、キャリア移動度は6100〜7400cm/V・secとなり、磁気抵抗率も7〜18%の間であった。
(比較例5〜7)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(高分子試料A)を用い、最高処理温度3100℃30分、3200℃30分、3200℃120分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートの厚さはそれぞれ3100℃、30分間処理では30μm(比較例5)、3200℃、30分間処理では30μm(比較例6)、3200℃、120分間処理では29μm(比較例7)であった。得られた結果を表2に示す。この結果から明らかな様に厚みが29μm以上のグラファイトシートで磁気抵抗率を20%以上の大きさにする事は極めて困難である事が分かった。
1:磁気抵抗センサ
5,5a,5b,5c,5d:磁気抵抗素子
10:感磁部、15:グラファイト層
20:電流電極、21、バーバーポール電極、22:短絡電極、23、接続電極、25:ゲート電極
30:基材
40:第1の絶縁膜、41:第2の絶縁膜
Vout:出力電圧、Vc:制御電圧

Claims (7)

  1. 基材と、該基材の少なくとも一方主面側に形成されているグラファイト層と、該グラファイト層に接続されている少なくとも2つの電流電極を有する磁気抵抗センサであって、
    前記グラファイト層は、磁場0.4Tにおけるa−b面方向の磁気抵抗率が20%以上であることを特徴とする磁気抵抗センサ。
  2. 前記グラファイト層は、芳香族高分子を成膜してフィルムにし、このフィルムを炭素化した後、温度3000℃以上で熱処理することによって得られるものである請求項1に記載の磁気抵抗センサ。
  3. 前記グラファイト層の電気伝導度が20000S/cm以上である請求項1または2に記載の磁気抵抗センサ。
  4. 前記グラファイト層のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上である請求項1〜3のいずれかに記載の磁気抵抗センサ。
  5. 前記グラファイト層の厚さが10nm以上、20μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の磁気抵抗センサ。
  6. 前記基材と前記グラファイト層の間に第1の絶縁層が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の磁気抵抗センサ。
  7. 前記グラファイト層上に第2の絶縁層が形成されている請求項6に記載の磁気抵抗センサ。
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