JP5079525B2 - 薄膜積層体及びそれを用いたInSb薄膜磁気センサ並びにその製造方法 - Google Patents

薄膜積層体及びそれを用いたInSb薄膜磁気センサ並びにその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、薄膜積層体及びそれを用いたInSb薄膜磁気センサ並びにその製造方法に関し、より詳細には、高感度で磁束密度が直接検出でき、かつ消費電力や消費電流の少ない微小なInSb薄膜磁気センサに用いられる薄膜積層体及びそれを用いた高感度InSb薄膜磁気センサ並びにその製造方法に関するものである。
携帯機器や小型のバッテリ駆動の電子機器では、センサの駆動やセンサ信号の制御や処理などの電子回路の駆動に電池による電源が使われる。このような電子機器に用いられる電子部品や磁気センサには、消費電力の低減が求められている。
また、非接触の高精度回転センサ、微弱磁界センサ、地磁気検出による方位センサ、磁気インクによって生じた微弱な磁界を検出して行う磁気インク印刷パターンの検出などの新規用途で使われるホール素子や磁気抵抗素子には磁界に対して高感度、高い素子の入力抵抗値、更には、極めて小型で素子表面が極めて平坦性がよく高精度で素子の加工ができ、素子の製作精度が高く、特性ばらつきや製作精度のばらつきの少ない、高性能、高信頼性が求められている。更には、室温周辺で温度依存性が少ないことなどの極めて要求される項目は多く、また、厳しい仕様である。更に、超小型磁気センサであること等が求められている。
特に近年、ホール素子など磁気センサを用いる応用が検討されている1ミクロン、あるいはサブミクロンの超微細磁性微粒子検出ではマイクロテスラ、ナノテスラの超微弱磁界の検出感度が、ホール素子など磁気センサに要求されている。
1)高感度(μ大)であること、2)温度依存性の少ない(ドナー不純物のドープ、例えば、Snドープがされている動作層)こと、3)低消費電力(高い素子の入力抵抗=薄い動作層)であること、4)超小型素子であることが要求されている。
このような要求に応える磁気センサの製作には、電子移動度が最も大きいInSbが最適である。更に、磁界検出感度が高い磁気センサが製作出来る大きな電子移動度を有し、かつ極めて少ない電力や電流で駆動できる高入力抵抗値の磁気センサが製作できる薄膜材料、すなわち、シート抵抗値の大きい、従って、極めて薄いInSbの薄膜が必要とされる。
従来は、GaAsなどの絶縁性基板上にInSbを直接成長させて製作したInSb薄膜を用いてホール素子や磁気抵抗素子などのInSb薄膜磁気センサを製作するのが一般的であった。然るに、このように直接GaAs基板にInSb薄膜を成長し、このInSb薄膜を磁気センサ部にして磁気センサを製作する場合、磁界での感度を上げるため、電子移動度を大きくしようとすると、その結果として電気伝導度が大きくなり、シート抵抗値が低下する。更には、結晶性を良くし電子移動度を向上させる手段としてInSbの膜厚を大きくすると、この場合もシート抵抗値が低下するという問題があった。
更には、温度依存性を改善する目的でInSbにSiやSn等のドナー不純物をドープすることも行う必要があるが、これらの手段は全て素子抵抗値を下げる方向であり、これまでInSb薄膜の感磁部を有する磁気センサでは、高感度化など特性を上げようとすると素子抵抗値が必然的に小さくなる方向であり、高感度の特性と素子抵抗値の値を大きくすることの両立は極めて難しかった。
このような課題は、素子部のInSb薄膜を薄くし、シート抵抗値を大きくすることで解決されるが、しかし、格子定数がInSbと同じで、かつ絶縁性の基板が無い。このため、絶縁性を有するGaAs基板上にInSb薄膜を成長させた場合、電子移動度などの特性の膜厚依存性が極めて大きく、更に、InSb薄膜の結晶性も膜厚の減少と共に急激に低下する。この結果、InSbの膜厚が薄い場合は、GaAs基板に直接形成したInSb薄膜の特性は極めて悪く、特性を低下させずにより薄膜化することは、これまで極めて至難であった。
この原因は、InSb薄膜を成長させる基板とInSbとの格子定数の違い、すなわち、InSbと基板の間の大きな格子ミスマッチにある。InSb薄膜を成長させるために通常使われる絶縁性の単結晶基板としてGaAsやInPなどの基板があるが、これらの基板は、InSbと格子定数が大きく異なっている。例えば、GaAsとInSbの格子定数のずれは14%ある。InSbと格子定数が一致する絶縁性のIII−V族の化合物半導体は存在しない。このため、格子定数がInSbと大きくずれているにもかかわらずGaAs基板やInP基板、Si基板、サファイア基板などがInSbの単結晶薄膜を成長する基板として用いられてきた。
このような基板との大きな格子定数のずれを解消する試みがある。例えば、特許文献1には、活性層のInSbと格子定数のずれをなくすため(格子整合させるため)に、基板上にアクセプタ不純物をドーピングしたInSbバッファ層を置き、更にアンドープのInSbの活性層が形成され、次に、不純物がドーピングされ、基板面に対して水平方向の格子定数がInSbと同一である歪みAlGaInSbキャリア供給層が形成され、更に、その上にアンドープInSbキャップ層が形成された構造を提案しているが、極めて複雑で実用的には製作しにくい構造である。実用的な素子を製作しない場合のこの構造でのInSb層の特性はよいものが得られるように見えるが、実用的な素子を製作する場合は大きな問題を包含している。
すなわち、この構造には、動作層以外に動作層と同じ材質の導電層であるアンドープInSb層がその最上部に形成されている。この構造で磁気センサなどの素子を製作した場合は、通常、この層に接してその上に絶縁膜が形成されるが、InSbの薄層は絶縁膜との格子のミスマッチや絶縁膜形成時の衝撃などで格子が破壊され、InSb層のキャリヤの増大や、更に、電子移動度も極端に低下する等の特性劣化することが知られている。
この構造でホール素子や磁気抵抗素子などを製作した場合は、この劣化したInSb層は、素子の駆動電流の単純なリーク層となり、動作層に流れる駆動電流が分流し、実質的に少なくなり、磁界感度などの特性を著しく低下させる。このため、実用的なホール素子などの磁気センサ製作には不向きな構造であり、実用的なホール素子や磁気抵抗素子などの製作は難しかった。
更に、動作層となるアンドープのInSb層に接して格子定数の同一のアクセプタ不純物ドープのInSb層の形成が必須である。室温あるいはそれ以上の温度で真性半導体であるInSb層にアクセプタ不純物をドープして室温で絶縁性を付与することは、バンドギャップ(0.17eV)が小さいために一般には極めて難しく、高度の絶縁性や高抵抗を得ることは不可能である。室温や更に高温度では、p型化しないInSbでは、p−n接合で電気的に絶縁することは不可能である。
このように、特許文献1の技術では、格子定数のずれを解消し、高性能のInSb薄膜動作層を製作しようとすると極めて複雑な構造が必要で、その構成の最上部にも動作層でないInSbの形成が必要とされている。このような構成では、磁気センサが使われる室温や更に高い温度では大きな問題があり、特に、低温度から高温度まで使用できる実用的なInSb磁気センサの製作は極めて難しい。−40〜150℃の範囲又はそれ以上の温度で安定な動作が要求される車載の磁気センサ等の用途で使える実用的な磁気センサ製作は実現していない。
このような、従来技術でInSbの薄膜を極めて薄く製作し、ホール素子などの高感度の磁気センサを製作することはこれまで不可能であった。特に、高いシート抵抗値が得られる厚さが1.0μm以下、更には0.5μm以下、0.2μm以下などの極めて薄いInSb単結晶薄膜で高い電子移動度を得て高感度の磁気センサを製作する技術はこれまで見いだされていなかった。
そこで本発明者らは、従来技術では不可能であったInSb単結晶薄膜を動作層にした高感度で、かつ高抵抗の実用的なInSb磁気センサ及びその製作法を検討した。
InSbと格子整合するIII−V属化合物半導体の絶縁基板が製作できれば好都合であるが、そのような基板は存在しない。このため、InSb薄膜の製作においては、基板との格子不整合が極めて大きい問題である。この格子不整合があっても結晶性の良い高電子移動度のInSb単結晶薄膜を製作する技術を創る必要があり、これが本発明の目的である。
そこで、本発明者らは、この格子整合を前提にしなくても良特性のInSb薄膜が得られる結晶成長方法の研究にチャレンジした。すなわち、InSbを成長させる基板との格子ミスマッチがあってもInSbの単結晶が成長し、特性の優れた薄膜が得られる結晶成長技術の研究である。その結果、基板上に、InSbとは格子整合しないが、絶縁性でミスマッチの小さい、特別な条件を満たすIII―V属の混晶層を形成し、この混晶層の上にInSbを分子線エピタキシー法(MBE法)で成長させると、厚さが薄くても極めて良質のInSbが成長することを見いだした。
すなわち、InSb薄膜が直接触れる混晶層(その上にInSbが直接結晶成長する層)とInSbとの格子のミスマッチがあってもある値の範囲であり、更に、混晶層の組成と結晶性がしかるべき条件を満たすと混晶層上に成長するInSbの特性は良質であることを見いだした。
例えば、InSbをGaAs基板上に直接成長した場合は、14%の格子不整合があり、厚さが1μm以下のInSb薄膜の場合は、単結晶薄膜であっても高い電子移動度は得られない。更に、0.5μm、更には、0.2μm等膜厚の低下とともにInSbの電子移動度は急激に低下する。このことは図10において□印の線で実験的データが示してある。
図10は、GaAs基板上に直接形成したInSb薄膜の膜厚と電子移動度の関係(△)を示す図である。
この図10のデータから、InSb薄膜の厚さが0.1μmでは3,000cm/Vsという極めて小さい値となり、高感度の磁気センサ製作は難しいことが理解される。これは14%の格子不整合からくる必然的な結果である。このようなGaAs上に成長したInSbの電子移動度については非特許文献1にも示されている。
上述した特許文献1のものは、その構造が、AlGaInSb層上に形成したp型又は絶縁体のInSb(ドープ)層をバッファ層として用いることによって格子不整合をなくし、その上に形成した動作層としてのInSb(ノンドープ)の膜質を確保している。
また、非特許文献1によれば、GaAs基板上に直接形成されたInSb薄膜は、GaAs基板結晶とInSbの格子常数の14%違いに基づく格子不整合により、GaAs基板とInSbとのヘテロ界面近傍に形成されたInSbの低電子移動度層の存在と、InSb薄膜表面に自然に形成される低電子移動度層の存在が述べられている。このようなInSb薄膜の両面の低電子移動層により、InSb膜厚が薄くなるに従って電子移動度が小さくなる(低下する)ことが知られている。特に、0.2μmの厚さより薄くなるとInSb薄膜の電子移動度低下は著しく、実用的な感度のInSbホール素子の製作はこれまで難しかった。
このような、InSbの薄膜の電子移動度の膜厚減少による低下は、結晶成長時にGaAs基板とのヘテロ界面に生じる低電子移動度層の存在とその厚さに対応している。この低電子移動度層の厚さは、結晶成長条件にもよるが一般的には0.1〜0.2μmである。薄い膜厚でInSb薄膜の電子移動度を大きくするためには、上述したような低電子移動度層の厚さを少なくするか、なくすことが必須である。
非特許文献1によれば、GaAs基板上に成長したInSb薄膜は、厚さ方向に大きな電子移動度や電子濃度の変化があることが知られているが、その様子は、簡単な薄膜の特性の分布のモデルで説明すれば、基板とのヘテロ界面に接し、最初に成長した部位である低電子移動度層(基板との格子のミスマッチにより欠陥が多く、物性的に特性が優れていない層)があり、その上に高電子移動度の(ミスマッチの影響がなくなり物性的に特性が改善されて欠陥などが極めて少ない層)から構成される。
高い電子移動度を有する高電子移動度層が厚ければ、すなわち、低電子移動度層の厚さの割合を少なくすることで、InSb薄膜の電子移動度は大きくなり、高感度のホール素子などの磁気センサ製作が可能である。
InSb膜厚を単純に厚くすると容易に高電子移動度層を厚くできるが、そうした場合は、磁気センサを製作した場合に入力抵抗が小さくなり、消費電力の増大等の問題が生じ、実用性に欠けるデメリットが生じる。
入力抵抗を大きくするためには、InSb薄膜を薄くする必要があるが、そのときには高電子移動度層が極めて薄くなるか、場合によっては無くなってしまい電子移動度の大きいInSb薄膜が得られない。例えば、0.2μmより少ない膜厚では、高電子移動度の部分は殆ど無くなってしまう。0.3μmの厚さでも、低電子移動度層が高電子移動度層より厚く、結果として期待したほど電子移動度は大きくならない。
このように、上述したヘテロ界面付近に形成される低電子移動度層の厚さにほぼ対応する厚さ以下、あるいは膜厚の50%以上を占めるような場合は、極端に電子移動度が低下し、このため、従来は高感度ホール素子などの実用的な磁気センサを製作することは不可能であった。このことは、非特許文献1や図10に示されているようにGaAs(100)基板上に直接アンドープInSb薄膜を成長したときの膜厚と電子移動度の関係からも明らかである。
このように、InSbの膜厚が薄くなると、上述した非特許文献1に記載されている高電子移動度の層がきわめて薄くなり、InSb薄膜の大部分は低電子移動度になるので、InSb薄膜全体の電子移動度が急激に低下する。
基板がGaAsから他の基板に変わっても、基板との格子不整合がある場合は同様である。このように、高感度の磁気センサを製作するためには、大きな電子移動度を有するInSb薄膜が必須であるが、InSbの膜厚が小さくなると、電子移動度が急激に低下してしまう。このため、極めて薄いInSb薄膜では、これまで高感度で磁界を検出できる磁気センサの動作層に使えるInSbの導電層を有する薄膜積層体やそれを磁気センサ部に使ったInSb磁気センサが製作できなかった。
ところでInSb膜厚を薄くすると、高いシート抵抗値が期待できるが、磁気センサの感度を決める電子移動度が極めて小さくなる。例えば、GaAs(100)基板上に直接形成した、1.0μのInSb薄膜の電子移動度は50、000cm/Vsを超えるが、0.3μmのInSb薄膜の電子移動度は、20,000cm/Vs程度、0.2μmの膜厚では、10.000cm/Vs以下、0.15μmInSb薄膜は7000cm/Vs程度以下となり、0.1μmでは5,000cm/Vs以下であり、急激に膜厚の減少とともに低下する。このことからInSb薄膜の電子移動度の低い層の部分の厚さは、0.15乃至0.2μmの間にあることが理解される。
このように、電子移動度はInSb膜厚の減少とともに急激に低下し、極めて小さい値となる。従って、当該InSb薄膜をセンサ部に使用する磁気センサの感度は、InSbの膜厚と共に急激に低下し、高感度の実用的なホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサは製作できない。このように、GaAs基板上に直接製作したInSb薄膜の例では、大きな格子ミスマッチによりInSbの膜厚によって電子移動度が大きく変わる、すなわち、膜厚の減少とともに電子移動度が急激に減少することが知られている。
繰り返すが、特に、膜厚0.2μm以下に薄くなると格子ミスマッチの効果により、GaAs基板上に製作したInSb薄膜の電子移動度は急激に低下する。このことは、GaAs基板上に成長したInSb薄膜の特性が膜厚方向において大きく変化することが原因である。このため、従来技術では厚さが0.2μm以下では実用的な高感度のホール素子や磁気抵抗素子の製作に適する薄膜はなかった。しかし、薄いInSb薄膜を磁気センサ部に使った、高入力抵抗値のInSbホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサは、応用上極めて重要である。そのニーズも高いが、しかし、これまで誰も実用的な磁気センサに使える電子移動度の大きいInSb薄膜も磁気センサも製作出来ていなかったことを述べておく。
次に、この低電子移動度層の生成の理由について説明する。
その理由のひとつは、特に、基板とInSbのヘテロ界面付近に存在する格子欠陥密度が大きな部分の存在である。すなわち、InSbは、GaAsとの格子のミスマッチが大きく、GaAsとのヘテロ界面から0.2ミクロン以下の厚さの層は、格子欠陥密度が大きく、InSbの結晶性が極めて悪く、電子移動度が小さくなっており、その結果として、電子移動度の極めて低い層を形成しており、電子移動度が数千以下の極めて低い値となっていることがInSb薄膜に固有の電子輸送の現象の解析により明らかにされていた(例えば、非特許文献1参照)。この結果、InSb薄膜の電子移動度は、極めて大きな膜厚依存性を有し、InSbの厚さが薄くなるにつれて電子移動度などの磁気センサ製作に重要な物理特性は、急激に低下することは必然の結果であった。
しかし、InSbと格子定数が一致する絶縁基板があれば、この問題は解決の可能性があるが、そのようなIII―V族の化合物半導体で、かつ絶縁若しくは絶縁性の材料は存在しないことも知られていた。この結果、現象論的にも理論的にも高感度と高入力抵抗値を備えたInSbホール素子や磁気抵抗素子などの実用的なInSb薄膜磁気センサを製作できる可能性の高い厚さが0.3μm以下、更には、0.2μm以下のInSb薄膜または薄膜積層体は工業的規模で量産製作することが出来なかった。
更に、上述した非特許文献1に記載されているように、InSb薄膜の表面層にも、InSb薄膜の電子輸送の現象の詳細な検討から50nm程度の低電子移動度の薄層が見出されている。これは、InSb表面は、物質が何もない空気又は真空の場合、表面の内側50nm程度の厚みの部分の格子がゆがみ低電子移動度の薄層を形成すると考えられるためである。この表面部分の低電子移動度層もInSbの膜厚の減少と共に低下する膜厚依存性に影響する。
従って、この表面と基板とのヘテロ界面に形成される2つの低電子移動度層の厚さを加えた厚み以下では、高い電子移動度を有するInSb薄膜は製作が不可能となる。この厚さは凡そ0.2μmである。
高感度のInSb薄膜ホール素子などの実用的な磁気センサを製作する上では、上述したような種々の原因で生じるInSb薄膜の基板との界面付近や表面付近に形成される比較的厚い低電子移動度層は、大きな問題であった。すなわち、InSbの極めて薄い薄膜を磁気センサ部とする実用的な磁気センサを製作する上で大きな障害であり、問題であり、その解消や極薄化は解決すべき極めて重要な技術課題である。
実際にホール素子などの磁気センサを使う上では、従来から高い信頼性が要求されていた。すなわち、産業用や車載センサ用途などでは、より高信頼性、高耐久性、対環境性能の向上など実用に関わる信頼性上の高性能化の付与などが要求されていた。このため、InSb薄膜表面の保護膜、いわゆるパッシベーション膜を形成することが要求されている。また、他の応用では、例えば、InSbホール素子による磁性微粒子検出では、InSb薄膜のセンサ部を数十ミクロン、ミクロン、更には、サブミクロンの距離まで測定対象に磁気センサを近接して磁界を検出することが求められている。このため、磁界計側時にInSb薄膜やその表面を傷つけないInSb薄膜表面の保護膜を形成することが要求されている。
また、磁気センサ部のInSb薄膜の表面には、素子の信頼性を確保する目的やパッケージ樹脂などからの熱硬化時に生じる熱に起因する薄膜へのストレスを緩和するなどの目的で絶縁膜、例えば、SiやSiO等の絶縁膜を形成する。すなわち、保護層又は保護膜を形成する。この保護層は、その結晶格子がInSbとは異なるのは勿論、格子定数も大きく違い、更に、プラズマCVDなどで製作する際に、InSbの表面がプラズマイオンの衝突にさらされダメージを受けることもしばしばあった。例外的に保護層をしなくて良いこともあるが、磁気センサの製作工程ではこの保護層は常識的に行われ必須である。
特開2000−183424号公報
ジャーナル オブ クリスタルグロウス、Vol.251,ページ560〜564,及び Vol 278、ページ604〜609
このように、磁気センサ部を構成するInSb薄膜の上面には、保護膜の形成が必要とされていた。しかし、この保護層の形成により、磁気センサ部を構成するInSb薄膜の表面に近接した薄層部分がダメージを受け、薄膜の特性の大きな低下を招き、所望の磁気センサ特性が得られないという大きな問題があった。これは保護層を形成する工程で必然的に生じる工程変動である。
保護層の形成によるInSb薄膜のダメージは、例えば、1μmの厚さのInSb薄膜をホール素子に製作した場合、絶縁膜形成による感度低下(InSb薄膜の電子移動度低下)は10%程度であるが、厚さが薄くなるとこの値はきわめて大きくなり、厚さ0.3ミクロンの場合は、この感度低下量は40%から場合によっては70%を超える値となる。
以下に示す表1は、0.3μm厚さのSiNを表面に形成した時のInSb薄膜の電子移動度の低下とInSb膜厚の関係を示す表である。
Figure 0005079525
このため所望の高感度磁気センサの製作は不可能となっていた。この理由は、InSb薄膜の表面がプラズマCVDの衝撃や格子のミスマッチにより破壊されるため、その部分が低電子移動度化し、InSb薄膜の表面付近に低電子移動度の比較的厚い層が形成され、結果としてInSb薄膜の大きな特性劣化を生じると考えられる。
保護層の形成や形成時の衝撃は、結果としてInSb薄膜の表面をある厚さで低電子移動度の層にしてしまい、素子の特性の低下を招く。この低電子移動度の層の厚さは、保護層形成の条件にもよるが、50〜100nm(0.10〜0.05μm)であり、InSb薄膜の表面に自然に形成される低電子移動度層の厚さ50nmより厚い。従って、基板上にエピタキシャル成長させて形成したInSbの薄膜を高電子移動度の膜にするには、このInSb薄膜表面及び基板とのヘテロ界面に接して形成された低電子移動度の層を如何に少なく、薄くするか、もしくは、無くすることが必須である。
このような保護膜形成に関わるInSb層の特性劣化の問題点の解決は長い間望まれていた。すなわち、磁気センサ部の表面に形成される絶縁性、すなわち、保護層の形成などでInSb薄膜の特性を劣化させないことや構造上InSb薄膜が特性劣化をしない素子構造の実現など、InSb薄膜を素子化する工程で特性変動が生じないInSb磁気センサ構造が求められていた。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高感度で磁束密度が直接検出でき、かつ消費電力や消費電流の少ない微小なInSb薄膜磁気センサに用いられる薄膜積層体及びそれを用いたInSb薄膜磁気センサ並びにその製造方法を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、基板上に形成されたInSb薄膜であるInSb動作層と、該InSb動作層より高抵抗又は絶縁性を示し、バンドギャップがInSbより大きい層である第1及び第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)とを備え、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、前記基板と前記InSb動作層との間に前記InSb動作層と直接接するように設けられ、前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、前記InSb動作層に対して前記基板側とは逆の面上に前記InSb動作層と直接接するように設けられ、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層及び前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、各々独立にAlとGaの原子の含有率(x+y)が、5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)かつ前記InSb動作層と接する前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が、0.25%から1.0%の範囲であることを特徴とする薄膜積層体である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層が、(004)格子面からのX線回折によるロッキングカーブの半値幅が1秒以上1300秒以下であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記InSb動作層の室温の電子濃度が、1.2×1016〜5.0×1018cm−3の範囲であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記InSb動作層は、Sn,Si,S,Te,Seのいずれかのドナー不純物がドープされていることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記InSb動作層は低電子移動度層と高電子移動度層を有し、該低電子移動度層は前記第1のAlxGayIn1−x−ySb混晶層に接する部分及び第2のAlxGayIn1−x−ySb混晶層に接する部分の双方に存在し、2つの該低電子移動度層の間には該高電子移動度層が存在し、該低電子移動度層の厚みが0.5nm以上30nm以下であることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記第1のAlxGayIn1−x−ySb混晶層又は前記第2のAlxGayIn1−x−ySb混晶層、もしくはその何れもが、Gaを含まないAlxIn1−xSb混晶層であることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の薄膜積層体の製造方法であって、前記基板上に予め定められた基板温度で前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層を積層した後、前記基板温度との差が±5度以内に設定された基板温度で前記InSb動作層を形成する工程を少なくとも有することを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の薄膜積層体の前記InSb動作層を磁気センサ部としたことを特徴とするInSb薄膜磁気センサである。
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記InSb動作層が、ホール素子、ホール効果を利用する素子、磁気抵抗素子又は磁気抵抗効果を利用する素子のいずれかの動作層であることを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記InSb動作層の厚さが、8nm以上2,000nm以下であることを特徴とする。
また、請求項11に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載の発明において、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層の厚さが、50nm以上3000nm以下であることを特徴とする。
また、請求項12に記載の発明は、請求項8乃至11のいずれかに記載の発明において、前記InSb動作層が、単結晶であることを特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、請求項8乃至12のいずれかに記載の発明において、前記InSb動作層の厚さが、8nm以上300nm以下であることを特徴とする。
また、請求項14に記載の発明は、請求項8乃至13のいずれかに記載の発明において、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層、又は、第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層、もしくはその何れもが、Gaを含まないAlIn1−xSb混晶層であることを特徴とする。
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の発明において、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層、又は、第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層、もしくはその何れもがAl0.1In0.9Sb混晶層であることを特徴とする。
また、請求項16に記載の発明は、請求項8乃至15のいずれかに記載の発明において、前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層の上に、更にGaAs層を備えることを特徴とする。
また、請求項17に記載の発明は、請求項8乃至16のいずれかに記載の発明において、前記InSb動作層にドナー不純物がドープされていることを特徴とする。
また、請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の発明において、前記ドナー不純物が、Sn,Si,S,Te,Seのいずれかであることを特徴とする。
また、請求項19に記載の発明は、請求項17又は18に記載の発明において、前記InSb動作層が、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層との界面から1.5nm以上20nm以下の距離だけ離れた部位にドナー不純物がドープされていることを特徴とする。
また、請求項20に記載の発明は、請求項17乃至19のいずれかに記載の発明において、前記InSb動作層の所要の表面部位に、電極としての金属薄膜が接して形成されており、該金属薄膜の形成された部位のInSb薄膜の少なくとも表面には、ドナー不純物が他の部位に比べて多くドープされていることを特徴とする。
また、請求項21に記載の発明は、請求項8乃至20のいずれかに記載の発明において、前記InSb薄膜磁気センサが、ホール素子又は磁気抵抗素子であることを特徴とする。
また、請求項22に記載の発明は、請求項8乃至21のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサの製造方法であって、前記基板上に予め定められた基板温度で前記第1のAlxGayIn1−x−ySb混晶層を積層した後、前記基板温度との差が±5度以内に設定された基板温度で前記InSb動作層を形成する工程を少なくとも有することを特徴とする。
本発明者らは、このような膜厚依存に関わる電子移動度低下を解決する目的で新たな絶縁性又は高抵抗の層を基板との間に形成する技術を検討した。InSbには結晶構造が同じのIII−V族化合物半導体の絶縁性基板や絶縁層が存在しない。InSbと格子整合するIII−V属半導体はInSbのみであり、InSbは、例え不純物をドープしても室温かそれより高温ではn型の導体であり、動作層の下層の絶縁層として使えない。
また、InSbと格子整合させるために歪みを含むIII−V属半導体を利用した場合は、歪みを含む半導体は、高温で熱的な作用や外部からの衝撃などから歪み緩和を生じる恐れがあることから高温度でも使われる実用的な磁気センサには避けるべきと考えた。
そこで本発明者らは、格子整合は好ましいが、従来のコンセプトと全く異なった、格子整合を前提としない、すなわち、格子不整合を前提とした結晶成長、薄膜構造で良質のInSb薄膜を成長し磁気センサ製作が出来る可能性を検討した。その結果、格子整合を前提としなくても良質のInSb薄膜を成長することが可能なことを見いだした。
本発明者が最初に注目したのは、格子定数はInSbと一致しないが近い値を有する小ミスマッチ材料で、かつ、絶縁性又は高抵抗が広い温度域で期待できるAlIn1−xSb(0<x<1)混晶層である。
Alの含有量がゼロあるいはゼロに近いときは、この3種の原子からなる混晶層は、InSbに近い狭バンドギャップの材料として絶縁層ではなくなる。しかし、Alの含有量がある程度ある場合は、この組成の結晶は高抵抗又は絶縁性若しくはP型の電導を示し、基板上の絶縁層としての機能を有する可能性があり、これを検討した。
このAlIn1−xSb(0<x<1)混晶層の製作であるが、例えば、GaAs基板上に分子線エピタキシー法により適当な成長条件を選択することで成長させることが出来る。しかし、Al組成の小さいときは導電性となり、絶縁層として機能しない。また、Al組成の大きい組成は、InSbとの格子定数が大きくずれる材料であり、格子のミスマッチが大きい。したがって、これまで詳細な研究の対象とはされておらず、InSbを成長する絶縁層としてはこれまでは考えられない材料であった。この材料を取り上げて、分子線エピタキシー法により絶縁層の成長とその上にInSb薄層を成長する実験を重ねた。
その結果、このAlIn1−xSb(0<x<1)混晶層は、AlとInの組成比が適切に選ばれると絶縁性又は高抵抗値の層として働き、更に、AlIn1−xSb(0<x<1)混晶層は、InSbと結晶格子間隔(格子定数)が同じでなくても、すなわち、格子の不整合、所謂、格子ミスマッチがあっても、ある条件を満たす場合は、当該混晶層の上に分子線エピタキシー法で成長させたInSb薄膜は、厚さが薄くても電子移動度が極めて大きいことが見出された。即ち、電子移動度の小さい低電子移動度層の厚さが小さくなる。
更に、上述した3種の原子からなるAlIn1−xSb(0<x<1)混晶層に若干のGaが添加された4種の原子からなるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0<x<1、0≦y<1)も適切な組成値パラメータx、yを選ぶことで絶縁性又は高抵抗値の層として働くことが分かり、更に、ある条件を満たす場合は、その上に分子線エピタキシー法で成長させたInSb薄膜は電子移動度が極めて大きいことも見出された。
本明細書では、必要に応じ、AlGaIn1−x−ySb(0<x<1、0≦y<1)の表記をAlGaInSb、同様にAlIn1−xSb(0<x<1)をAlInSbと簡略化して記載されていることもある。
更に、本発明では、AlGaInSb混晶層の意味するところは、特別に断らない限り、すなわち、AlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)は、AlとGaの原子の含有率(x+y=)が、5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)、若しくは、InSb導電層と接する絶縁性のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかであることを意味している。y=0のAlIn1-xSbの場合もこの中に含まれる事は勿論である。
また、InSb動作層より高抵抗又は絶縁性、若しくはp型の伝導性を示す層で、かつ、バンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)、更に、AlとGaの原子の含有率(x+y)が5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)、若しくは、InSb導電層と接する絶縁性のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が、0.25%から1.0%の範囲を有する本発明でいうAlGaIn1−x−ySb混晶層は、絶縁層ともまたはバッファ層などと呼称するが、上述したInSb動作層より高抵抗又は絶縁性、若しくはp型の伝導性を示す層で、かつ、バンドギャップがInSbより大きい層と同義であり、実質的に絶縁層として働く層であり、単純に絶縁層と称する場合もあるが上述した意味である。
本発明者らの研究によれば、GaAs基板上に分子線エピタキシー法でAlIn1−xSb(0<x<1)の薄層を成長し、更にその上に、InSbを成長した例では、成長したInSb層の電子移動度は、AlIn1−xSb(0<x<1)の層の結晶性に大きく依存することがわかった。更に、Alの含有量の増大に伴いAlIn1−xSb(0<x<1)の混晶層は、一般的に結晶性が悪くなり、また、InSbとの格子のミスマッチもAl含有量の増加につれて大きくなるのでAlの含有量が17%以上(格子定数のずれ1.0%以上)では、高電子移動度のInSb単結晶薄膜は成長しないことがわかった。
更に、格子定数がInSbに極めて近いAl組成、すなわち、Al含有量が5%以下(格子定数のずれ0.25%以下)では、混晶層の抵抗率が急減し導体層となってAlIn1−xSb(0<x<1)層は絶縁層の役割を果たさなくなる。この結果、Al組成が17%と5%の間であり、混晶層の結晶性があるレベル以上の質を有する場合に限り、厚さ0.15μmであっても電子移動度が27000cm/Vs以上、結晶成長条件によっては40,000cm/Vs以上の値が得られる。
また、厚さ0.3μmのInSb層を成長した場合では36,000cm/Vs以上、結晶成長条件によっては50,000cm/Vs以上の高電子移動度のInSb単結晶薄膜が製作できることが明らかになった。そこで、高い電子移動度のInSb薄膜が成長するためのAlIn1−xSb(0<x<1)層の結晶性をX線回折によって調べた。
すなわち、GaAs基板上に成長したAlIn1−xSb(0<x<1)混晶層や、更には、AlGaIn1−x−ySb(0<x<1、0≦y<1)混晶層の結晶性をCuのKα線をX線源として用い、平行光学系にて実施したX線回折の、AlGaIn1−x−ySb混晶層の(004)回折面から得られたロッキングカーブの前記混晶層に対応するピークにおける半値幅とInSbの電子物性やヘテロ界面付近に形成される低電子移動度の層の厚さとの関係を調べた。
GaAs基板上にInSb薄膜を直接成長させると、InSbとGaAs基板とのヘテロ界面に低電子移動度の層(格子のミスマッチの影響で生じる転移の多い低電子移動度の部分で格子欠陥由来の電子濃度が大きい層)が出来る。電子移動度が10,000cm/Vs以下の低電子移動度の層の厚さは、おおよそ0.2μm又は200nmである。従って、GaAs基板上に直接InSb層を薄く、例えば、0.15μm形成した例では、7,000cm/Vs程度の低い電子移動度しか得られない。
然るに、格子定数がInSbと一致していなくても、InSbとの格子不整合が0.25%から1.0%の範囲であり、このAlInSb混晶層の結晶の質を示す(004)面から得られるX線回折のピークの半値幅が1300秒以下の場合には、より好ましくは1,000秒以下、更に好ましくは500秒以下の場合にはInSb導電層の電子移動度の大きい値が得られることがわかった。
すなわち、一例を示せば、GaAs(100)基板上に、上述した条件を満たしたAlIn1−xSb(0<x<1)混晶層を形成し、その上に厚さ0.15μmのInSbを成長した場合は、InSb層の電子移動度は、27,000cm/Vsを超える大きな値を示す。GaAs基板上に直接InSb層を0.15μm成長した場合は、7,000cm/Vs程度の低い電子移動度であり、その差は極めて大きく、上述した条件を満たす絶縁層の存在によりInSb層の電子移動度は4倍の大きさが得られる。図10に本発明例と従来技術の比較を示した。
何故、このような大きな差が現れるかは、完全には解明されていないが、InSbが成長するAlInSb混晶層の格子定数がInSbと近いことと、更に、X線回折のピークの半値幅が1300秒以下という結晶性の良さが、InSbの結晶成長において、格子のミスマッチの影響を極小にする理想的な結晶成長条件を与えると推定される。この結果、ヘテロ界面に隣接するInSbの低電子移動度層が極めて薄くなり、結晶性に優れ、かつ、電子移動度の大きなInSb薄膜が得られていると考えられる。
例えば、3元混晶であるAlInSb混晶層とInSbのヘテロ界面のInSb薄膜内に形成される低電子移動度の層は、極めて薄く、電子濃度の厚さ依存性などから、厚さが10nm若しくは30nm程度である事がわかり、極めて薄く出来ることが見出された。また、場合によっては、低電子移動度層は3nm程度である事が見いだされた。
この例のように、本発明では、上述した混晶層の格子ミスマッチやX線回折の半値幅の1300秒以下の条件を満たすAlGaIn1−x−ySb(0<x<1、0≦y<1)混晶層の上に極めて薄いInSb導電層を形成した場合と、混晶層を形成しないで直接GaAs(100)基板上にInSb層を形成した場合のInSb層の電子移動度の差は極めて大きい。
しかし、上述した例において、InSbの高い電子移動度が得られる条件を満たすAlInSb混晶層が容易に得られるわけではない。MBE法による結晶成長条件が混晶層の結晶性を決定することはもちろんである。また、AlInSb混晶層は絶縁性でなければならないため、また、InSbに近い格子定数を持つので、基板との格子不整合はゼロではなく存在する。従って、AlInSb混晶層は、あるレベル以上の厚さを有しないとX線回折のピークの半値幅が1秒以上1300秒以下にはならず、更に、結晶成長条件が適切でなければ、X線回折のピークの半値幅が1300秒以下にはならない。
この場合は、当然であるがInSb導電層の電子移動度の大きい値が得られない。一般には、この最低限の厚さは混晶の成長条件やその下の基板の表面の状況にも依存するので明確ではないが、適切な結晶成長条件が選ばれ、一定に維持される条件下では、厚さの増加に伴い混晶層の質は向上するので、特別な場合を除き、通常は、混晶層の厚さは少なくとも50nm以上が好ましく、600nm以上であれば安定してX線回折のピークの半値幅が1300秒以下の混晶層が得られる。
また、混晶層が厚くなれば、X線回折のピークの半値幅が1300秒以下より更に低下し1000秒以下、さらには500秒以下のようにより結晶性の良い条件も得られ、それに応じてInSb導電層の電子移動度のより大きい値が得られることがわかった。
このように、本発明者らの研究により、InSb導伝層の電子移動度と混晶層の結晶性との相関が明らかとなり、InSb動作層の大きな電子移動度の得られる混晶の結晶性やその条件が明らかとなった。
更に、重要なことは、上述のような条件を満たすAlInSb混晶層に接して、その上に製作したInSbは、当該AlInSb混晶とのヘテロ界面に形成される低電子移動度の層が極めて薄くなっていることである。
本発明では、上述したように、InSbのヘテロ界面に接した部分に生じる低電子移動度層(電子移動度は、およそ7、000cm/Vs以下)の厚さを如何に低減するかが重要である。上述したようなAlInSb混晶の上にInSb動作層を形成した場合は、その厚さは、最大30nm、通常は20nm以下、より好条件の場合は、更に10nm以下である。また、最低値は、1.5nmである。すなわち、低電子移動度の層の厚さが極めて薄くなっている。上述したX線回折の条件は、このようにInSbの低電子移動度の層を薄くするための結晶の質を決定する条件である。
つまり、InSbはAlInSbとの格子不整合があっても、X線回折のピークの半値幅が1300秒以下の結晶性をAlInSb層が有すれば、低電子移動度層は極めて薄くなり、結晶性の優れた高電子移動度の層の電子移動度が電気伝導を支配し、その結果、AlInSbに形成されたInSb導電層の電子移動度は大きい値が得られる。
従来は、格子のミスマッチがあると良質のInSb結晶が成長しないとされていたが、本発明者らの実験によれば、このように、格子定数がInSbと一致していなくても、例えば、InSbとAlInSb混晶層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲であり、かつ、AlGaIn1−x−ySb(0<x<1、0≦y<1)混晶層の結晶の質を示すX線回折のピークの半値幅が1300秒以下の場合には、InSb導電層の電子移動度は、極めて大きい値が得られる。
しかし、この様な薄い低電子移動度層が形成される成長条件は、AlGaInSb層の成長を終了し、次のInSb層の成長に移るときの基板温度の変化が小さいことである。更に、InSb上にAlGaInSb層を成長するときの基板温度の変化も小さいことである。許されるAlInSbの成長の終了時の基板温度とInSbの結晶成長をスタートするときの基板温度の差は最大でもInSbの最適基板温度としたとき0℃が最も好まし±5℃以内であればよい。AlInSbの結晶成長時の基板温度は、InSbの結晶成長の最適温度から±5℃以内の最適値を選択し定められる。特にAlInSbの成長の終了時の基板温度は、InSbの結晶成長の最適温度から±5℃以内で定められる。第2のAlInSb層をInSbはく相乗に成長するときの基板温度やその設定条件も同様である。
このようにして成長したAlInSb層の効果は、InSbが薄い場合は特に顕著である。本発明者らの研究によれば、InSbの厚さが同じ場合で比較すると、得られるInSb層の電子移動度は、数倍またはそれ以上になる。InSbの厚さが薄いほど大きな効果が得られる。0.5μm以下や、更には0.3μm以下のようにInSb層の厚さが薄くなるに従って大きな効果が発現される。特に、InSb層がきわめて薄い0.1μm以下の場合は7乃至10倍以上になる。図10には本発明の薄膜積層体のInSbの動作層の電子移動度と従来技術のInSb薄膜の場合との実験的な比較が示されている。
これらの検討の結果、本発明者らは、InSb層の膜厚が薄くても高感度の磁気センサが製作できる大きな電子移動度を有するInSb薄膜の成長できる条件として、1)AlGaInSb層の組成(AlとGaの原子の含有率が5.0%から17%の範囲、2)格子定数のずれ、すなわち、格子不整合値又はミスマッチ(InSb導電層と接する絶縁性のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲)、3)AlGaInSb混晶層の結晶性の良さを示すX線回折のロッキングカーブの上記混晶層に対応するピークの半値幅;1300秒以下を見出した。更には、AlGaInSbの成長時の基板温度とInSb成長時の基板温度の差は±5℃以内である。
さらに、このような場合、InSbとAlGaIn1−x−ySb混晶層のヘテロ界面の微小な格子不整合により形成されるInSb薄膜の内部に形成される低電子移動度層は、極めて薄くて0.5nm以上30nm以下、結晶成長条件がより適切に選ばれた場合(より半値幅が少ない場合、例えば、500秒以下)及び厚さが薄い場合には、0.5乃至20nm以下、又は更に、0.5乃至10nm以下に出来ることを見出した。また、Sn,Si,S,Te,Seなど、InSbに対するドナー不純物をドープしたInSb導電層においても同様の効果が得られ、上述した結果は変わらない(電子濃度の小さい、例えば、アンドープのInSb薄膜の電子移動度は低温で一般に低下するが、Sn,Si,S,Te,Seなど、ドナー不純物をドープすることで低温領域においても高電子移動度を得ることができる)。
更に、本発明者らは、絶縁性又は高抵抗のAlGaIn1−x−ySb混晶層を薄いInSb薄膜の上に成長させた場合についても調べて研究を重ねた。その結果、AlGaIn1−x−ySb混晶層がInSb薄膜上に形成された場合は、余りInSbの特性を低下させないことが明らかとなった。第2のAlInSb混晶の結晶成長時の基板温度は、InSbの結晶成長の最適温度から±5℃以内の最適値を選択し定められる。特にAlInSbの成長のスタートの基板温度は、InSbの結晶成長の最適温度と同じであることが最も好ましいが±5℃以内で定めてもよい。
InSb層が極めて薄い場合、表面が空気に触れたり、あるいは、ホール素子や磁気抵抗素子など磁気センサを製作した場合、保護膜として使われるSiOやSiなどの無機質膜との接触、あるいは、樹脂パッケージしたときのストレスや異質の有機材料の影響などで大きく特性を低下させる場合が頻繁に起きる。InSbに直接保護膜を形成したときは、40〜70%の特性低下がみられたが、AlGaIn1−x−ySb混晶層をInSb薄膜上に形成した場合は、この混晶膜の形成によるInSbの特性は低下しない。この混晶層を介して上述した保護層であるSiOやSiを形成した場合は、上述した保護膜の大きな影響や、更に、樹脂パッケージしたときのストレスや異質の有機材料の影響などが極めて小さくなることがわかった。この結果、保護層形成によるInSb層の40〜70%の特性低下は高々3%程度の値に減少することが観察された。
すなわち、AlGaIn1−x−ySb混晶層は、InSb層の特性を劣化させず、更に、上述したような保護膜やパッケージの影響によるInSb層の特性劣化を防止するための半導体保護層的働きが大きいことが明らかとなった。
このようなInSb薄膜の動作層の上に形成された絶縁性の薄層若しくは保護層は、キャップ層(または半導体保護層)とも呼ばれる。また、このような絶縁性の半導体保護層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層は、バンドギャップがInSbと比較して大きいのでInSb層が極めて薄いときは、InSbの量子井戸を構成するポテンシャルのバリヤ層としての働きもするので、ポテンシャルのバリヤ層、あるいは単にバリヤ層と呼ばれることもある。AlGaIn1−x−ySb半導体保護層上に、更に、GaAs層を形成し両者の組み合わせでより強固な保護層とする場合も多い。このGaAs層はAlGaInSb層に比べて耐酸化性が優れており頻繁に使われる。AlGaInSbの成長時の基板温度と同じが好ましいが特に大きな制限は無い。
本発明者らは、上述したような格子のマッチングに関する前述の条件が必要ではあるが、AlGaIn1−x−ySb混晶層は、InSbとの格子ミスマッチが0.25%〜1.0%の範囲であれば、InSbの薄膜の表面保護層として極めて有効である事を見いだした。この表面保護層の場合は、その上にInSbを、結晶成長をしないのでX線で示される半値幅の条件は余り影響しないことも分かった。
しかし、量子井戸などのバリヤとして使う場合は、InSbの厚みが極めて薄いのでヘテロ界面に形成するバッファ層と同じく結晶性が問題となり、上述したような格子のマッチングに関する条件やX線の半値幅の条件がInSbの高電子移動度を得るために必要となる。その程度はInSbの膜厚に依存し、薄くなるに従って優れた結晶性が要求される。
このようなキャップ層を形成した場合は、キャップ層と接してInSb薄膜の表面付近に形成される低電子移動度の層が、キャップ層が無い場合に比較して薄く、30nm以下、又は20nm以下、更には、10nm以下で、最小値は0,5nmで極めて薄くなる。
このような検討結果から本発明者らは、エピタキシャル成長したInSb薄膜積層体を気センサ部に使う高感度InSb薄膜ホール素子において、1)磁気センサ部のInSb薄膜の基板とのヘテロ界面付近に形成される低電子移動度層の厚さを極めて薄くする積層構造を見いだした。更には、2)基板と反対側にあるInSb薄膜の表面に近接して形成される低電子移動度層を薄くする技術、すなわち、自然に形成される場合もあるが、多くの場合は、ホール素子を製作する工程で、直接InSbに接して保護膜を形成した場合や樹脂パッケージ等による表面の歪みなどによって磁気センサ部のInSb表面近傍に素子製作工程でやむを得ず形成される低電子移動度層を極めて薄くする技術を見いだした。
このように、本発明者らは、薄膜積層体のInSb導電層薄膜のパッシベーション保護膜の形成に伴う特性変動や磁気センサの樹脂パッケージに伴う感磁面の歪みやストレスによって生じる特性変動を極めて少なくするInSbの表面保護層、すなわち、キャップ層または半導体保護層の技術を見いだした。また、半導体保護層はInSbと格子定数が近い絶縁性のIII―V族化合物半導体の薄層が好ましく優れていることも見出した。
この結果、本発明者らは、初めてInSbの厚さが極めて薄い0.15μm又はそれより薄い場合であっても電子移動度が30,000cm/Vs以上の値が、0.05μmであっても電子移動度20,000cm/Vsもしくはそれ以上が得られる技術を確立すると共にホール素子や磁気抵抗素子などの高感度で実用的な磁気センサの磁気検出部に応用し、高感度InSb薄膜磁気センサを製作する技術を完成した。
すなわち、本発明者らは、ヘテロ界面の低電子移動度層が極めて薄い、若しくはInSb表面の低電子移動度層を極めて薄くした薄膜積層体を製作し、更には、前記両低電子移動度層が極めて薄いInSbホール素子や磁気抵抗素子のような磁気センサ及びその製作技術を完成、実現した。更に、本発明の薄膜積層体やInSb磁気センサでは、磁気センサ部のInSb薄膜にドナー原子がドープされていても、ドープされていない、いずれの場合も低電子移動度層が極めて薄くすることが可能である。本発明の結果はドーピングしたInSbホール素子においても、アンドープのInSbホール素子いずれの場合も、低電子移動度層が極めて薄いInSbホール素子の製作が可能である。磁気抵抗素子の場合も同様である。
すなわち、基板上にエピタキシャル形成されたInSb薄膜の導電層を動作層とし、この動作層の少なくとも一方の側には、この動作層より高抵抗又は絶縁性若しくはp型の伝導性を示す層でバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)が形成されており、Alの原子の含有率がx=5.0%から17%の範囲(0.05≦x≦0.17)、若しくは、InSb導電層と接する絶縁性の混晶層(AlGaIn1−x−ySb)との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかであることを特徴とし、かつ、X線回折のロッキングカーブの上記混晶層に対応するピークの半値幅が1300秒以下のAlGaIn1−x−ySb混晶層と直接接したInSb薄膜を動作層とする薄膜積層体を磁気センサ部として有する高感度InSb薄膜磁気センサである。
基板上にエピタキシャル形成され,室温の電子濃度が1.2×1016〜5.0×1018cm−3の範囲にあるInSb薄膜を動作層とし、この動作層の少なくとも一方の側には、この動作層より高抵抗又は絶縁性若しくはp型の伝導性を示す層でバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)が形成されており、Alの原子の含有率がx=5.0%から17%の範囲(0.05≦x≦0.17)、若しくは、InSb導電層と接する絶縁性の混晶層(AlGaIn1−x−ySb)との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかであることを特徴とし、かつ、X線回折のロッキングカーブの上記混晶層に対応するピークの半値幅が1300秒以下のAlGaIn1−x−ySb混晶層と直接接したInSb薄膜を動作層とする薄膜積層体の磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサである。
基板上にエピタキシャル形成され、室温の電子濃度が1.2×1016〜5.0×1018cm−3の範囲にあるInSb薄膜を動作層とし、この動作層の少なくとも一方の側には、この動作層より高抵抗又は絶縁性若しくはp型の伝導性を示す層でバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)が形成されており、Alの原子の含有率がx=5.0%から17%の範囲(0.05≦x≦0.17)、若しくは、InSb導電層と接する絶縁性の混晶層(AlGaIn1−x−ySb)との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかであることを特徴とし、かつ、X線回折のロッキングカーブの上記混晶層に対応するピークの半値幅が1秒以上1300秒以下のAlGaIn1−x−ySb混晶層と直接接し、かつ、Sn,Si,S,Te,Seなど、InSbに対するドナー不純物がドープされたInSb薄膜を動作層とする薄膜積層体の磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサである。
基板上にエピタキシャル形成され、室温の電子濃度が1.2×1016〜5.0×1018cm−3の範囲にあるInSb薄膜を導作層とし、この動作層の少なくとも一方の側には、この動作層より高抵抗又は絶縁性若しくはp型の伝導性を示す層でバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)が形成されており、AlGaIn1−x−ySb混晶層はAlの原子の含有率がx=5.0%から17%の範囲(0.05≦x≦0.17)又は(0.05≦x+y≦0.17)、若しくは、InSb導作層と接する絶縁性の混晶層(AlGaIn1−x−ySb)との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかであり、かつ、X線回折のロッキングカーブの上記混晶層に対応するピークの半値幅が1300秒以下であることを特徴とし、更に、AlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)とのヘテロ界面に接して形成された低電子移動度の層の厚さが0.5nm以上30nm以下であるInSb薄膜を動作層とする薄膜積層体であり、この薄膜積層体からなる磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサである。
基板上にエピタキシャル形成されたInSbを導電層とし、この動作層の少なくとも一方の側には、この動作層より高抵抗又は絶縁性若しくはp型の伝導性を示す層でバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)が形成されており、Alの原子の含有率がx=5.0%から17%の範囲(0.05≦x≦0.17)であり、かつ、InSb導電層と接する絶縁性の層(AlGaIn1−x−ySb)との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲であることを特徴としたInSb薄膜の動作層を有する薄膜積層体からなる磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサである。更に、AlGaIn1−x−ySb混晶層のシート抵抗値が10KΩ以上2000MΩ以下であることを特徴としている薄膜積層体の磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサである。
更に、基板上にエピタキシャル形成されたInSb薄膜を導作層とし、この動作層の少なくとも一方の側には、この動作層より高抵抗又は絶縁性若しくはp型の伝導性を示す層でバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb層が形成されており、AlもしくはGaの原子の含有率がx+y=5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)であり、両者の(接する面での)バンドギャップ差が好ましくは0.3eV以上2.4eV以下、かつ、InSbの導電層と接する絶縁性の層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲であり、更に、AlGaIn1−x−ySb層のシート抵抗値が10KΩ以上2000MΩ以下であることを特徴としたInSb薄膜積層体を磁気センサ部とした高感度InSb薄膜磁気センサである。
本発明では、InSb動作層とAlGaIn1−x−ySb混晶層とのヘテロ界面近傍に形成される低電子移動度の層の厚さが、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下であることを特徴としたInSb薄膜積層体からなる磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサである。また、AlGaIn1−x−ySb混晶層とInSbが接するヘテロ界面でのバンドギャップ差は、AlGaIn1−x−ySb層が絶縁若しくは高抵抗であればよいので、特に限定はしないが好ましくは0.3eV以上である。更に、磁気センサ部がホール素子、ホール効果を利用する素子、磁気抵抗素子又は磁気抵抗効果を利用する素子であることを特徴とする高感度InSb薄膜磁気センサである。
AlGaIn1−x−ySb混晶層のX線回折のピーク値における半値幅は、好ましくは1000秒以下、より好ましくは500秒以下である。
磁気センサ部のInSb薄膜の厚さは特に限定はしないが、好ましくは、8nm以上2,000nm以下、更に、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは、500nm以下、最も好ましい領域は300nm以下であることを特徴とする高感度InSb薄膜磁気センサである。
また更に、200nm以下では本発明の効果は著しく、100nm以下であっても極めてInSbの電子移動度が大きく、磁界で高感度、かつ入力抵抗値の大きな磁気センサが製作できる。
動作層のInSb薄膜層のAlGaIn1−x−ySb混晶層とのヘテロ界面に接して形成される低電子移動度層の許される厚さは、InSb動作層の厚さによって異なる。150nm以上の厚さでは30nmであってもよいが、より小さい厚さが好ましい。また、100nm以下のInSb動作層の場合は、低電子移動度の厚さは20nm以下が好ましく、更に、50nm以下の場合は、低電子移動度層の厚さは5nm以下にすることが必須である。すなわち、動作層の厚さの20%以下に低電子移動度層の厚さをすることが必須である。混晶層のX線回折のピーク値における半値幅は小さい値が好ましいが、動作層のInSb薄膜の厚さが薄いときはより小さい値が好ましく、InSbの厚さが200nm以下では1300秒以下でもよいが1000秒以下は好ましく、500秒以下は更に好ましい。この様な条件はAlGaInSb層の厚さを0.7μm乃至1.0μmにすると得られる。
以上の説明において、基板上に形成された絶縁層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層の上に成長したInSb薄膜動作層を例に示したが、InSb薄膜動作層の上面(基板と反対側の面)に上述したと同様の絶縁層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)で、AlとGaの原子の含有率(x+y)が5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)、若しくは、InSb導電層と接する絶縁性のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかである混晶層が形成される場合もある。更に、この場合、必須ではないが、InSb薄膜動作層の上面に形成される絶縁層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層の(004)格子面からのX線回折によるロッキングカーブの半値幅が1300秒以下である結晶性であることが好ましい事はもちろんである。
一般に、空気層と触れるInSb薄膜動作層の表面に形成される低電子移動度層は薄く最大でも50nm以下と推定されるが、信頼性付与や保護層の目的でInSb表面に磁気センサ制作時に形成される無機質の保護層、例えば、Si,SiO等が形成された場合は、形成時のダメージや形成後の格子不整合や面内の歪みなどによる、InSb表面層のダメージ層の厚さはこれより大きく、InSb薄膜の電子移動度などの特性が大きく損なわれる場合がしばしばである。このダメージによって形成されるInSbの低電子移動度層(この場合はダメージ層といってもよい)は,保護膜などの形成による大きなInSb薄膜の特性劣化やその膜厚依存性から50〜100nmの厚さに及ぶ。これら保護膜形成による特性変化は、一般的に素子製作工程での変動として把握され、低減が必須である。InSb動作層が極めて薄い場合は、これら工程変動値は極めて大きく、高感度の磁気センサ製作を不可能となる。
このようなInSbの保護膜形成や形成工程での衝撃などに伴うInSb層の表面付近のダメージを防止する目的で本発明では絶縁性の半導体保護層をInSbの上面に接して形成する場合もある。
このように、InSb層に接して形成される薄層は半導体保護層は絶縁性の化合物半導体薄層が好ましく用いられる。また、この半導体保護層は、InSbの表面にダメージを与えないためにInSbとの格子ミスマッチが小さい材料が選ばれる。このため、InSbの表面に接して形成される低電子移動度の層の厚さの低減にも適切な条件が選ばれれば効果がある。
従って、本発明では、InSb薄膜動作層の上面(基板と反対側の面)にAlGaIn1−x−ySb混晶層が、主としてInSb動作層の表面部分を保護層やパッケージの樹脂などからの歪みやそれらを形成する素子製作工程でのダメージからの保護する目的で形成される。
この場合は、AlGaIn1−x−ySb混晶層をInSbの表面に形成することにより、保護膜の形成時にInSb薄膜の表面に形成される低電子移動度の厚いダメージ層形成を防止、若しくは厚さを極小にする事が可能である。例えば、この層の形成により、InSb薄膜表面の低電子移動度層は自然表面の場合と同じか更に少ない厚さにすることが可能である。すなわち、表面の低電子移動度層の厚さが基板とInSbの界面の場合と同様、極小になる。動作層のInSb厚さが0.5μm以下の場合は、AlGaIn1−x−ySb混晶層をInSb薄膜の上面に接して形成する効果は特に顕著であり、好ましく行われる。このような役割の、AlGaIn1−x−ySb混晶層はキャップ層と呼ぶこともある。従って、AlGaIn1−x−ySb混晶層は磁気センサ部のInSb薄膜の上下の面に接して形成されることがInSb薄膜ホール素子など、本発明のInSbの薄膜積層体を感磁部と摺る磁気センサを製作する上では最も好ましい。更に、AlGaInSb保護層上に、更に、GaAs層を形成し両者の組み合わせでより強固な保護層とする場合もある。このGaAs層はAlGaInSb層に比べて耐酸化性が優れており頻繁に使われる。
InSb動作層の厚さが、8nm以上200nm以下、すなわち、200nm以下ではInSb薄膜の両面にAlGaIn1−x−ySb混晶層を形成し、低電子移動度層を低減するとともに工程変動の低減や防止の必要があり、本発明では好ましく行われる。100nm以下の動作層、更には、60nm以下のInSb動作層を有する磁気センサを製作する本発明の場合は、量子井戸構造の製作の目的、すなわち、キャリアである電子をInSb動作層中に閉じこめる目的にも用いられる。
このように、本発明ではInSb薄膜動作層の上面(基板と反対側の面)にAlGaIn1−x−ySb混晶層が形成される場合もあり、その場合にも等しく上述のAlGaIn1−x−ySb混晶層やInSb動作層の低電子移動度層の低減などに関することは上下の面近傍において等しく成り立つ事である。低電子移動度の層の厚さも上下の面において同じレベルの厚さになる。
また、本発明では、磁気センサ部のInSb薄膜は分子線エピタキシーなどの方法で製作されるが制御された所望の電子移動度やシート抵抗値などの物性値が得られれば、MOCVDなど他の方法であってもよく、方法にはこだわらない。また、本発明では、InSb薄膜動作層は単結晶でも多結晶でも良いが、単結晶はより好ましい材質である。
本発明によれば、基板上に形成されたInSb薄膜であるInSb動作層と、このInSb動作層より高抵抗又は絶縁性を示し、バンドギャップがInSbより大きい層である第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)と、第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層と同じ第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層が、InSb動作層に対して基板と接する面と逆の面上に設けられた絶縁性の半導体保護層として備えられ、第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、基板とInSb動作層との間に設けられ、AlとGaの原子の含有率(x+y)が、5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)又はInSb動作層と接する第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が、0.25%から1.0%の範囲であるので、高感度で磁束密度が直接検出でき、かつ消費電力や消費電流の少ない微小なInSb薄膜磁気センサに用いられる薄膜積層体及びそれを用いた高感度InSb薄膜磁気センサを実現することができる。
本発明の薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサの一実施形態を示す断面構成図である。 本発明の薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサの一実施形態を示す上面から見た構造図である。 本発明の薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサの他の実施形態を示す断面構造図である。 本発明の薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサの他の実施形態を示す上面から見た構造図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサのInSb薄膜からなる磁気センサ部の基本となる薄膜積層体の断面構成図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサのInSb薄膜からなる磁気センサ部の他の薄膜積層体の断面構成図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサの磁気センサ部のさらに詳細な薄膜積層体の断面構成図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサのさらに他の実施形態を示す図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサのさらに他の実施形態を示す図で、InSb薄膜の表面に絶縁性の半導体保護層が形成されているホール素子の断面構造図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサのさらに他の実施形態を示す図で、InSb薄膜の表面に絶縁性の半導体保護層及び保護層が形成されているホール素子の断面構造図である。 本発明のInSb薄膜磁気センサの磁気センサ部のさらに詳細な他の薄膜積層体の断面構造図である。 本発明の混晶層の含有率と電子移動度の関係を示す図である。 GaAs基板上に直接形成したInSb薄膜の膜厚と電子移動度の関係及び本発明の薄膜積層体(GaAs基板上にAlInSb層の上に形成され、更にInSb層上にInSb薄層が形成され、更にInSb層の上面にはAlInSb層とGaAs層が形成されている場合)と電子移動度の関係を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1A,図1Bは、本発明のInSb薄膜を動作層とする薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサの一実施形態を示す図で、InSb薄膜を磁気センサ部若しくは磁界検出部としたInSb薄膜磁気センサであるホール素子の構成図で、図1A)は断面構造図、図1Bは上面から見た構造図である。
図中符号1は基板、2はAlGaIn1−x−ySb混晶層(絶縁層)、3は動作層で、磁界の印加によりホール効果を生じるInSb薄膜、4(41,42,43,44)は、外部接続用の4個の端子電極、5は電極引き回し部分、6はリードに接続されているワイヤー示している。図1Aで中央部の磁気センサ部が本発明の薄膜積層体の断面構造を示している。
本発明のInSb薄膜磁気センサは、基板1上にAlGaIn1−x−ySb混晶層(絶縁層)2が設けられ、さらにその上に、磁界の印加によりホール効果を生じるInSb薄膜、つまり動作層3が設けられ、この動作層3の端部には、図1Bに示すように、電極引き回し部分5を介して端子電極4がそれぞれ設けられている。また、この端子電極4の各々にはワイヤー6が取り付けられている。
このように、基板1上に形成されたInSb薄膜であるInSb動作層3と、このInSb動作層3より高抵抗又は絶縁性、若しくはp型の伝導性を示し、バンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)2とを備えている。
この混晶層2は、図9に示すように、AlとGaの原子の含有率(x+y)が、5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)で、かつ(004)格子面からのX線回折によるロッキングカーブの半値幅が1秒以上1300秒以下で、基板1とInSb動作層3との間に存在するように構成されている。なお、図9においては、Gaを含んでいない場合についての電子移動度をグラフに示しているが、これは上記y=0の場合で、このときはAlIn1−xSb混晶層であり、xの範囲が0.05≦x≦0.17のとき、電子移動度が大きいことを示している。
(実施形態2)
図2A,図2Bは、本発明のInSb薄膜を動作層とした薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサの他の実施形態を示す図で、2端子で複数のショートバー電極を有する磁気抵抗素子の構成図である。図2Aは断面構造図、図2Bは上面から見た構造図である。図1A,図1Bと同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。図中符号3は動作層で、磁界の印加により抵抗変化を示す層である。
図中符号7(71,72)は、2個の端子電極、8は磁気抵抗変化を大きくするためのショートバー電極を示している。磁気抵抗素子部、すなわち磁気センサ部は、両端に外部接続用の2個の端子電極7を備え、これらの端子電極71と端子電極72の間に設けられたInSb薄膜3には、複数のショートバー電極8が配置されている。
本発明のInSb薄膜を動作層にした薄膜積層体の基板1は、通常は高温度で安定な物質からなり、絶縁性、又は高抵抗で表面が平坦な基板が用いられる。このため、表面が平滑な結晶面が得られる絶縁性の単結晶基板が好ましく用いられる。特に、GaAsやInP等の絶縁性の基板は好ましく用いられる。または、表面に絶縁性、又は高抵抗の薄層が形成せられており、実質的に絶縁性、又は高抵抗で形成せられた薄層の表面が平坦な基板と同等であればよい。
また、表面に薄い絶縁層を形成したSi単結晶基板はその表面にGaAs等の絶縁性の化合物半導体層を更にのせることでInSbと結晶構造の同じ絶縁性の平滑な表面が得られるので基板として好ましく用いられる。絶縁性がよいサファイアも好ましい基板である。
(実施形態3)
図3は、本発明のInSb薄膜磁気センサのInSb薄膜からなる磁気センサ部の基本となる薄膜積層体の断面構成図である。
基板1上には、AlGaIn1−x−ySb混晶層である絶縁層2が設けられ、さらにその上に、磁界の印加によりホール効果や抵抗変化を生じるInSb薄膜の動作層3が磁気センサ部として設けられている。
(実施形態4)
図4は、本発明のInSb薄膜磁気センサのInSb薄膜からなる磁気センサ部の他の薄膜積層体の断面構成図で、基板の表面にSiOのような絶縁物や半導体からなる絶縁性又は高抵抗の薄層が形成されている。符号1(11,12)は基板で、第1の基板11の表面に絶縁性又は高抵抗の薄層である基板表面層12が設けられている。この基板表面層12上には、AlGaIn1−x−ySb混晶層(絶縁層)2が設けられ、さらにその上には、動作層3が設けられている。
また、本発明で用いられる基板1は、耐熱性があり絶縁性であればよい。更に、絶縁性、若しくは高抵抗のAlGaIn1−x−ySb混晶層2がその上に成長できれば、特に絶縁性には必ずしも拘らない。また、図4に示したように、基板11は絶縁性であることは好ましいが、図4に示すような絶縁性、若しくは高抵抗の基板表面層12が形成できれば、基板11は導電性があっても良い。
次に、基板1の表面は平坦でなくてはならない。ここで言う平坦とは、表面凹凸が0.2nm以上10nm以下、好ましくは5nm以下、更に、より好ましくは1nm以下であって、最適な場合は基板の表面に基板を構成する原子からなる結晶の格子面が一原子層の平坦さで格子面に平行に並んでいる状態、すなわち基板は単結晶基板であって結晶の格子面からなる原子一層以下の平坦性が好ましい。若しくは、一格子面の間隔以下の平坦性が最も好ましい平坦性である。
基板1は、絶縁性または高抵抗であれば、単結晶、多結晶、アモルファス状態など特に問わないが、最も好ましいのはInSbと同じ結晶構造の単結晶がよく、更にはIII−V族の化合物半導体の単結晶が良く、GaAsやInP、GaN等の絶縁又は半絶縁基板は好ましい。
これらの単結晶基板の表面は結晶格子面に沿って形成されていることが好ましく、更にはその上に結晶成長がし易いように結晶面からある角度を持って形成されていても良い。例えば、GaAsの基板の例では(100)、(111)、(110)等の基板面から0から10度程度の範囲で傾けられた表面が形成される場合があり好ましい。基板1の表面は、上述したインデックス面に拘らず使える。近年結晶成長が試みられている高インデックスの面でも良い。また更に、基板1は、高抵抗の単結晶Siやサファイア、高耐熱ガラス、セラミック基板でも良い。また、基板1は、少なくとも400℃に加熱したとき分解したりしない基板であることが好ましい。
(実施形態5)
図5は、本発明のInSb薄膜磁気センサの磁気センサ部のさらに詳細な他の薄膜積層体の断面構成図で、InSb薄膜とAlGaIn1−x−ySb混晶層2と基板とのヘテロ界面のInSb薄膜の内部に形成された低電子移動度層を示す図で、符号31は低電子移動度層を明確に表示している。
図5の磁気センサ部の断面に示すように、基板1上には絶縁層2が設けられ、その上には、動作層3が設けられ、この、動作層3内には、一般には低電子移動度層31が形成されている。基板1の表面に形成する絶縁層2は、AlGaInSb層のようなIII−V族の化合物半導体からなる絶縁層が好ましく用いられる。用いられる層としては、絶縁性又は高抵抗GaAsやInPの薄層やGaNの薄層等が用いられてもよい。さらに、絶縁性、若しくは高抵抗のAl、Ga及びSbからなる3元混晶,Al、Ga、As及びSbからなる4元の混晶、更に、Al、In、Ga、As及びSbからなる5元混晶やこれらに準じる多元の混晶等が好ましく用いられてもよい。また、これらの多元の混晶に更に必要に応じて新たな元素が加えられても良いが、この場合も本発明の技術的範囲である。
ところで、2元、3元、4元、5元の混晶の表記は、III−V族の化合物半導体では、一般に、AlInGazAsαSbβγ、x+y+z=1、α+β+γ=1、と記すことができる。この場合、簡略化のために、例えば、5元の混晶の場合AlInGaAsSbなどと本明細書で記す場合もあるが前記の意味である。更に、12の絶縁層についてであるが、この12の絶縁層は順次組成を変化(x、y、z、α、βを変化)させた傾斜組成状態で複数形成しても良い。また、複数の層から構成する替わりに1層で組成を連続的に変化させることで絶縁層を構成しても良い。このような化合物半導体の絶縁層または高抵抗層12の最上面はInSbと格子定数の近い単結晶または多結晶層、混晶層を成長させるためにInSbと同じ結晶構造の単結晶または多結晶であることが好ましい。
単結晶サファイア基板やSi、ガラス、石英ガラスSiO、Alからなるアルミナ基板等のIII−V族の化合物半導体と異なった材質の基板を用いる場合は、そのままでも良いが、より好ましくは、その表面にIII−V族の化合物半導体からなる絶縁層または高抵抗層12を形成することが必要であり、その形成が好ましい。更に、その層の最上面はAlGaIn1−x−ySb単結晶、または、表面が平滑な多結晶層を成長させるためにAlGaIn1−x−ySbと同じ結晶構造の単結晶または多結晶が形成されていることがより好ましい。
また、Si単結晶を基板として用いる場合は、導電性があるので、Siの表面に直接絶縁性のGaAs、AlGaAs等のIII−V族の化合物半導体の絶縁または高抵抗層を形成することや更に好ましくは、より基板との絶縁性を確実にする目的でSiの表面にSiO、Alや希土類金属の絶縁性酸化物、Siなど絶縁性の窒化物等の絶縁層を少なくとも一層予め形成した後、その層の最上面はAlInSbなどの単結晶または表面が平滑な多結晶層を成長させるためにAlInSbなどと同じ結晶構造の単結晶または多結晶が形成されていることがより好ましい状態として行われる。
上述したように、本発明では、図1A、図2A、更には図3に示したような構成で、結晶成長に関わらない元素である、水素、ヘリウム、CO、各種炭化水素、酸素、窒素(窒化物の形成時は除外される)等の全ガス圧が8×10−9Torr以下の超高真空中で、分子線エピタキシー法(MBE法)により、基板1の表面上にInSb動作層3より高抵抗又は絶縁性、若しくはp型の伝導性を示す層で、且つバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)を形成する。この混晶層はAlとGaの原子の含有率(x+y=)が5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)、若しくは、InSb導電層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲のいずれかであり、かつ、この混晶層はX線回折により評価した結晶性(結晶の質=特性)にも特徴があり、(004)格子面からのX線回折によるロッキングカーブの該混晶に対応するピークの半値幅(FWHM)が1300秒以下である。
次いで、MBE法により超高真空中で、特に、結晶成長に関わらない元素である、水素、ヘリウム、CO、各種炭化水素、酸素、窒素(窒化物の形成時は除外される)等の全ガス圧が8×10−9Torr以下でInSb薄膜動作層3を成長させることにより、厚さが極めて薄くても高い電子移動度を有するInSb導電層を有する高感度のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサに用い得るInSb薄膜を製作する。このInSb動作層を含む薄膜の積層構造を所望の形状で加工し、当該InSb薄膜を動作層とした磁気センサ部を有する高感度InSb薄膜磁気センサを製作する。
従来例、すなわち、格子ミスマッチが14%と大きいGaAs 基板上にInSb薄膜を直接成長した場合、GaAsとInSbとのへテロ界面には、InSb薄膜の厚さに関わらず、厚さで0.2μmまたは200nmのオーダの低電子移動度の層(領域)が形成される。この低電子移動度層の存在のために従来はInSb層が薄い場合、例えば、0.3μm以下では高い電子移動度は得られなかった。しかるに、本発明では、InSb薄膜動作層3との格子定数が極めて近いAlGaIn1−x−ySb層2の形成により、InSb薄膜3とAlGaIn1−x−ySb層2とのヘテロ界面に接して出来る低電子移動度層31の厚さが20nm以下で極めて薄い。
この低電子移動度層の厚さが薄いことが本発明のInSb薄膜動作層を有する薄膜積層体の特徴である。このため動作層が薄くても本発明の場合大きなInSb動作層の電子移動度が得られる。また、本発明で、InSb薄膜3の厚さにとくに限定はない。好ましく用いられる厚さは、8nm〜2000nmの範囲、より好ましくは8nm〜700mmである。
上述したように、図5には、本発明のInSb薄膜磁気センサの磁気センサ部の断面の一部が示されている。InSb薄膜と基板とのヘテロ界面に出来る低電子移動度層31を示した。この低電子移動度層31で示した層の厚さが、本発明の条件を満たすAlGaIn1−x−ySb混晶層2の形成により極めて薄くなり、例えば、30nm以下、または20nm以下となる。すなわち、基板上に形成されたAlGaIn1−x−ySbとの格子の不整合が原因で、AlGaIn1−x−ySb層とのヘテロ界面付近のInSb中に生じた欠陥に起因し、電流を運ぶ際にヘテロ界面を走行する電子数が激減し、かくして、低電子移動度のヘテロ界面の電子移動度への影響は極めて少なくなった。
この結果、InSb薄膜が極めて薄くても電子移動度が飛躍的に増大した。すなわち、InSb層が同じ厚さの場合、本発明の条件を満たすAlGaIn1−x−ySb層が形成された場合は、形成されていない場合に比較して数倍になる。例えば、8nm以上300nm以下のInSb動作層の場合は、この差は特に顕著であり、電子移動度が飛躍的に向上し、高いシート抵抗値のInSb薄膜で高感度の磁気センサに使えるInSb薄膜を実現した。その結果、InSbの膜厚が0.3μm以下では、高感度のInSb薄膜磁気センサを実現できなかったが本発明により実現した。
また、この低電子移動度の層の厚さは、InSb動作層の厚さにもよるが、一般的にはInSb動作層の厚さが0.3μm以下の場合は、InSb動作層の厚さのおおむね20%以下の厚さである。このようにして、本発明では格子不整合で形成されるヘテロ界面の低電子移動度層を薄くする条件が見いだされ、その結果、InSb薄膜動作層が薄くても大きな電子移動度が得られる。かくして、本発明により高感度の磁気センサ材料技術や動作層のInSbの電子移動度を大きくできる絶縁層技術が新たに生まれ、高感度のInSb薄膜磁気センサが実現した。さらには、それを応用した電子機器システムの新規機能の実現や付与、性能向上、低コスト化等大きな効用をもたらした。
本発明のInSb薄膜磁気センサは、一般には、図1A、図2Aあるいは図3に断面を示したような構造で使われる。InSb薄膜磁気センサは応用において、極めて高度の耐久性や信頼性を要求されることもある。
(実施形態6)
図6は、本発明のInSb薄膜磁気センサのさらに他の実施形態を示す図で、InSb薄膜の表面に絶縁層である保護層が形成されている図である。符号9は保護層を示している。図1に示した構造において、InSb薄膜の動作層3上及び電極引き回し部分5の端部を覆うようにして保護層9が設けられている。この保護層は、一般には磁気センサの作成工程で形成される。
磁気センサ部のInSb薄膜の特性劣化を防止することや磁気センサに高度の信頼性、耐久性を付与する目的で、図6に示したように、InSb薄膜からなる磁気センサ部表面にIII−V族の化合物半導体とは異なった、無機物又は有機物の絶縁層である保護層9を形成することもしばしば行われる。
この場合、無機物の絶縁層である保護層9の好ましい材質例としては、Si、SiO、Al、等がある。また、好ましい有機絶縁層の保護層9の例にはポリイミドやポリイミド系の有機絶縁層がある。また、この保護層9は、複数の材質からなる積層構造であっても良く、この積層構造は、複数の無機質層でも複数の有機物層でも良く、無機層、次いで有機層の積層された無機有機の複合層でも良い。
ところで、このような重要な保護層9であるが、InSbの厚さが1μm以上のときは、あまり問題とならないが、InSbの厚さが薄いときに保護層9をつけると大きな問題が生じる。すなわち、この様な無機物又は有機物の絶縁層9を薄いInSb薄膜上に直接形成すると、InSb薄膜3の表面を傷つけ、電子移動度の大幅な低下が起きる。InSbの厚さにもよるが、表1にも示したが、その大きさは30〜70%以上である。特にInSbの厚さが1μm以下、更には0.7μm以下、0.5μm以下、0.3μm以下のような極めて厚さが薄い場合は、この保護層9の影響は大きく、InSb薄膜3の表面を形成時の衝撃や歪などにより、歪ませたり、あるいは傷つけ、電子移動度の大幅な低下が起きる。InSbの厚さにもよるがその大きさは30〜70%又はそれ以上である。更には、0.3μ以下では通常は40%程度であるが条件によっては70%以上にも及ぶことがあり、更に、厚さにもよるがInSbのシート抵抗値の大きな変化等の特性の劣化を招く。
従って、このInSb薄膜を感磁部又は磁気センサ部にして高感度の磁気センサを製作しようとするとこの様な保護層9による大きなInSbの特性変動により高感度の磁気センサを製作することが不可能になる。特に、InSbの厚さが0.5μm以下、0.3μm以下のような極めて厚さが薄い場合は、所望の特性のInSb薄膜であっても保護膜による特性劣化で高感度の素子製作は不可能である。
このような問題点を克服し、保護層9をつけても特性の劣化を防止するために、図7A,図7Bに示した構造の本発明の薄膜積層体を磁気センサ部としたInSb薄膜磁気センサを示した。ホール素子の例でありその断面図を示している。
(実施形態7)
図7A,図7Bは、本発明のInSb薄膜磁気センサのさらに他の実施形態を示す図である。図7Aは、InSb薄膜の表面に絶縁性の半導体保護層(キャップ層というときもある)10が形成されているホール素子の断面構造図である。この半導体保護層10は複数の層構造で形成される場合もあるがここでは簡単のために1層で表示した。
半導体保護層10は、保護層9を直接InSb動作層に接して形成すると保護層9との格子のミスマッチや保護層9を形成する工程での衝撃などでInSbの特性劣化が大きいので、予めInSbと格子のミスマッチが少ない化合物半導体からなる絶縁層をInSb上に形成し、保護層9を形成しても特性劣化が小さくなるようにする目的で形成される層である。したがって、代表的な好ましい半導体保護層は、AlIn1−xSb混晶層が挙げられる。図7Bは、InSb薄膜の表面に絶縁性の半導体保護層10及び保護層9が形成されているホール素子の断面構造図である。
本発明では、動作層3に上にバンドギャップがInSbより大きい層であるAlGaIn1−x−ySb層10を形成することも屡々行われる。すなわち、AlもしくはGaの原子の含有率がx+y=5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)、若しくは、InSbの導電層と接する絶縁性の層との格子不整合が0.25%から1.0%の範囲であり、シート抵抗値が10KΩ以上あるAlGaIn1−x−ySb層10をInSb薄膜のダメージを防止する絶縁性の半導体保護層を形成することも行われる。図7Bに示したように、この予め形成した絶縁性の半導体保護層10の上に通常の保護層である保護層9を形成することが好ましく行われる。本発明の高感度InSb薄膜磁気センサはこの様な絶縁性の半導体保護層10がInSb薄膜に接して形成されて使われることが好ましいが、場合によっては、保護層9を省略して半導体保護層10のみで製作される場合もある。
(実施形態8)
図8は、本発明のInSb薄膜磁気センサの磁気センサ部のさらに他の薄膜積層体の断面構造図で、AlGaIn1−x−ySb半導体保護層10と接するInSb薄膜の表面及びAlGaIn1−x−ySb混晶層2とのヘテロ界面に接して形成された低電子移動度層が示されている。
基板1上には絶縁層2が設けられ、その上には動作層3が設けられている。この動作層3内には、絶縁層2側に低電子移動度層31が、反対側に低電子移動度層32が形成されている。さらにその上には、絶縁性の半導体保護層10が設けられている。
このような半導体保護層のメリットは、図8には、本発明のInSb磁気センサの磁気センサ部の薄膜積層体の断面を示してあるが、InSb薄膜表面に自然に形成される低電子移動度層32の厚さが通常は50nm程度であるが、絶縁性の半導体保護層10の形成により10nm以下になり、その影響が少なくなりInSb薄膜の電子移動度が向上することである。InSbの膜厚が薄い場合は特に顕著である。このようにInSb層の下面と表面にAlGaIn1−x−ySb混晶層を配置したな構造にすることでInSbの薄膜導電層は0.1μm以下の膜厚であっても高い電子移動度を示す。
本発明のInSb薄膜磁気センサは、磁気センサ部のInSb薄膜をInSbと格子定数が近いAlGaIn1−x−ySb絶縁層2及びAlGaIn1−x−ySb半導体保護層10若しくは半導体キャップ層10でサンドイッチすることでInSbの膜厚が薄くても極めて大きな電子移動度を得ることが出来る。特にInSb薄膜の両面にできる低電子移動度層の厚さを10nm以下に出来ることは大きなメリットである。AlGaIn1−x−ySb絶縁層2及びAlGaIn1−x−ySb半導体保護層10で薄いInSb層をサンドイッチした場合はInSbの量子井戸構造を形成し、この両層はポテンシャルのバリヤ層を形成することになる。
特に、この半導体保護層10の厚さは限定しないが、ある厚さ以上あることが好ましく、必要に応じて厚さを決めてよい。5nm程度の厚さでもキャップ層としての効果はあるが、十分な保護層として機能を発揮する厚さとして、例えば、10nm〜200nmの範囲は好ましい。勿論これ以上の厚さも可能である。また、薄い場合もある。
また、この半導体保護層の上に更に、絶縁性の高い2層目の半導体の薄層を形成することでより半導体保護層の効果を完全にすることも好ましく行なわれる。好例としては絶縁性の高いGaAs層がある。図示はしないが、このように半導体保護層10の上にもう一層の半導体保護層を形成する、又は、半導体保護層10は2層で形成されても良い。この2層の半導体保護層構造は極めて有効で頻繁に使われる。すなわち、本発明で、AlGaIn1−x−ySb絶縁層2及びAlGaIn1−x−ySb半導体保護層であるキャップ層10は複数の層からなっていても良い。このときInSbと接する側の層は前述の格子定数が近い層であり、かつ絶縁性が高い条件が必要である。しかし、InSbに接しない第2層目の半導体絶縁層、若しくは、2層目の半導体保護層はInSbとの格子のミスマッチがあっても良い。一例として、キャップ層では、予めInSbと格子定数の差が0.25%〜1.0%以下III−V族の化合物半導体であるAlGaIn1−x−ySbの層をInSbの表面に形成し、次いで、第2層としてInSbに比較してバンドギャップが大きく、絶縁性又は高抵抗のAlInGaAsαSbβγ、x+y+z=1、α+β+γ=1、などの層を形成し、しかる後に無機物や有機物の保護層9を形成することも好ましく行われる。この第2層目の半導体絶縁層であり、半導体保護層には絶縁性のGaAsは好ましく用いられる。
このような、本発明のInSb薄膜を動作層とする薄膜積層体を磁気センサ部にするInSb薄膜磁気センサは、AlGaIn1−x−ySb混晶から成る絶縁層2又はAlGaIn1−x−ySb混晶から成る半導体保護層であるキャップ層10の何れかがInSb薄膜に接して形成されていれば良く、基本的なこれらの構造を有するInSb薄膜積層物は全て本発明の技術的範囲である。
また、本発明でInSb層の膜厚は特には限定していない。このため、1μm以上の膜厚でも良いが、特にInSbの厚さが1μm以下、更には0.7ミクロン以下、0.5μm以下、0.3μm以下のような極めて厚さが薄い場合にあっても高い電子移動度を有し、更には、大きなシート抵抗値が得られる。また、本発明では、AlGaIn1−x−ySb絶縁層2及びAlGaIn1−x−ySb半導体保護層であるキャップ層10によりInSb薄膜がサンドイッチされた場合はInSbの厚さが0.1μm以下でも高い電子移動度を示す磁気センサ部が得られ、本発明の技術的範囲である。
このように、本発明の技術によれば、InSb薄膜のヘテロ界面に生成される低電子移動度層を薄くすることができる。
更に、本発明では、抵抗の温度変化や電子移動度の温度変化を低減する目的で、InSb薄膜にドナー不純物をドープすることも行われる。ドナー不純物は、VI族元素が好ましいが、IV族元素も好ましく用いられる。例を挙げると、S,Se、Te、Si,Ge,Sn等である。この中でも、Si,Snは分子線エピタキシー法で本発明のInSb積層物を製作する場合のドナー不純物として、好ましく用いられている。特に、Snは比較的低温で蒸気圧の制御が容易で好ましい材料である。
ドープする不純物のドープ方法は、AlGaIn1−x−ySbとのヘテロ界面から10nm程度は不純物のドープをせず、その他の部分、すなわち、10nmから表面までドープするのが好ましい。又は、InSbの層の一部をドープする場合や全体をドープする場合などいくつかの方法が選べる。
このように、本発明のInSb薄膜は上述の構造であれば、InSb薄膜層が薄くても、特にInSbの厚さが1μm以下、更には0.7μm以下、0.5μm以下、0.3μm以下のような極めて厚さが薄い場合であってもInSb薄膜層の電子移動度は30,000cm2/Vs以上ある。後出の実施例に拠れば、InSb層の厚さが0.15μmであっても電子移動度は28,000cm2/Vsが得られている。
このように、本発明は、InSbが薄膜であり、電子移動度が大きく高感度の磁気センサが得られるとともに、更に、InSbが薄膜であり、シート抵抗値が大きく、高入力抵抗で消費電力の少ないホール素子や磁気抵抗素子が製作できる。更に、詳しくいえば、本発明ではInSb層が同じ厚さの場合、本発明の条件を満たすAlGaIn1−x−ySb層が形成された場合は、形成されていない場合に比較して数倍の電子移動度が得られる。この差は、極めて大きく、その差はInSbの膜厚が薄くなるに従ってより大きくなり、極めて顕著になる。特に、InSb層が0.5μm以下、0.3μm以下のような極めて厚さが薄い場合、更には、0.1μm以下の場合は極めて顕著で、高感度の磁気センサ製作の出来る高い電子移動度は本発明のAlGaIn1−x−ySb層の形成によって初めて実現された。
次に、例を持って本発明の効果を示すと、図1に示したAlGaIn1−x−ySb層の1例であるInAlSb層2の形成により、磁気センサを製作するときはその磁界検出の感度に対応する電子移動度を向上させる効果はきわめて大きい。
例えば、GaAs(100)基板上に厚さ0.15μmのInSbを直接製作した場合、電子移動度の大きさは凡そ7,000cm/Vsである。厚さ0.15μmのInSb薄膜をGaAs基板上に製作した場合は、上記のように低い電子移動度しか得られないが、本発明の図1に示したAlGaIn1−x−ySb層の例の一つであるInAlSb層2の形成により、InAlSb層が無い場合に比較して、電子移動度が28,0000cm/Vs、結晶成長条件によっては40,000cm/Vs以上の値が得られる。この値は、直接InSb層を成長した場合に比較して4ないし5倍の電子移動度の大きさである。また、厚さ0.3μmのInSb層を成長した場合では、40,000cm/Vs以上、結晶成長条件によっては50,000cm/Vs以上の高電子移動度のInSb単結晶薄膜が製作できる。このように、本発明は磁気センサをその磁界検出の感度に対応する電子移動度を向上させる効果はきわめて大きい。
更に、本発明のAlGaIn1−x−ySb層をキャップ層としてInSb層の表面に形成した場合は、InSb層が極めて薄い場合、SiやSiO等の無機質の保護層を形成したとき、キャップ層がない場合には50%又はそれ以上の工程変動(感度特性低下)が在ったが、本発明の場合は工程変動が5%以下、更には3%程度となった。こうして工程変動が磁気センサの特性上問題とならない値に小さくなった。すなわち、本発明の技術を使えば、InSb層が極めて薄くても極めて高い電子移動度が得られ、更に、工程でその特性を劣化させる事も極めて少なく、高感度の磁気センサが製作できる。このように本発明の効果は高感度の磁気センサを造る上で極めて顕著であり、その産業への影響は計り知れない。
特に、InSb層の厚さが0.7μm以下では1.5倍以上、0.5μm以下では2倍以上、0.35μm以下では3倍以上、0.25μm以下では4倍又は以上、0.10μm以下では6倍若しくはそれ以上となり、このInAlSb層の効果は著しい。InAlSb層により、InSbの膜厚が薄くなったときでも、InSb層の大きな電子移動度が得られる効果は、InSb層にドナー不純物としてSi,Sn,Te,S,Se等をドープする場合でも本質的には変わらない。また、InSb層3にドナー不純物をドープすることで感度や入力抵抗値、ホール係数などの温度依存性が小さい高感度薄膜磁気センサが製作できる。ここで言うドナー不純物は、InSbのn型導電性を付与するものであれば何れでもよいが、好例として、Sn,Si,Ge,C,S,Se,Te,などVI族元素、IV族元素などがある。
InSb層3に直接ドープしないで近接した絶縁性又は高抵抗のAlInGaAsαSbβγ、(x+y+z=1、α+β+γ=1)などの層2にドナーとなる不純物をドープし、変調ドープ的に電子をInSb薄膜層に注入しても温度依存性は大幅に改善されるのでこの方法もしばしば用いられる。
次に、本発明のInSb薄膜磁気センサの製造方法について説明する。
本発明では、InSb薄膜磁気センサの製作は、一般的に、分子線エピタキシー法により、基板1上にAlGaIn1−x−ySb混晶層2を成長させ、次いで、InSb薄膜を該混晶層の上にエピタキシャル成長させる。
次に、製作されたInSb薄膜を感光性のレジストを使ったフォトリソグラフィーをベースにしたInSb薄膜のパターンエッチング、また、キャップ層のAlGaIn1−x−ySb混晶の必要な部位を窓あけしてInSb層の表面を露出する工程、金属薄膜を蒸着、スパッタ、湿式メッキ法などによりInSbの所要の部位、若しくは窓あけされInSbの表面が露出した電極コンタクト部に形成する電極パターンの形成工程、必要に応じて素子の感磁部表面を覆うように、かつ、外部接続のボンデング電極を除いた部位に形成される無機質の保護層形成工程、更には、必要に応じてSi樹脂などゴム弾性を有する薄層を、感磁部を覆うようにフォトリソグラフィー等の手法で形成する工程等からなる本発明の磁気センサに固有のウエーハプロセスにより加工し、微小、かつ、多数のホール素子や磁気抵抗素子などの高感度InSb薄膜磁気センサのウエーハ上に一度に製作する。
次いで、ダイシングソーにより個別にホール素子チップ等に切りわけられる。更に、このInSb薄膜磁気センサのチップは標準的なトランスファーモールド工程を経て一般にはパッケージされ、特性検査され製品となる。
以下、具体的な実施例について説明する。
本発明の薄膜積層体の作製につかう分子線エピタキシー装置は、真空を保持するための円筒型の真空槽からなり、表面に結晶成長を行うGaAs基板を水平方向に保持する機構とこの基板面に製作する薄膜の構成元素の蒸気を蒸発源から一様に、かつ均一に照射せしめる回転などの周期的な運動を付与する機構を少なくとも備えている。更に、該基板を結晶成長室の真空を保持した状態で結晶成長室に搬入、搬出する手段を備えた結晶成長装置である。本装置は、以下の工程でInSb薄膜を成長させるGaAs(100)面を有する基板に近接し、InSb薄膜の成長面と反対側に設置した電気的に加熱された高温の熱輻射源である抵抗加熱ヒータおよび基板温度を測定出来る温度センサを備える。
さらに、定められた時間定められた強度で蒸発源にチャージされた元素の蒸気ビームを基板面に照射することが出来る複数の蒸発源、すなわち、電気的に加熱することによって薄膜を形成する構成元素の蒸気を発生する手段である複数の蒸発源(クヌードセンセル:K―セルとも言う)と共にその蒸気の強度を制御するための蒸発源に夫々設置された温度測定センサと予め定められた蒸気の強度に対応して蒸発源にチャージされた元素の蒸気を発生する状態を保持するために、夫々の蒸発源に対応して設置され、蒸発源を予め定められた蒸発源温度に維持する電力供給手段、更に電力供給手段(機構)を備えている。
また、蒸発源から発生した蒸気を遮断することが出来るシャッターまたはバルブなどの手段を備え、更に、該蒸気の強度を測定することが出来る蒸気強度測定器を備える結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置において、残留不純物ガス、例えば、H、CO、CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、絶縁性の厚さ0.35mmで直径2インチのGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら630℃に加熱した後、420±2℃以内で制御した。
次に、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。
次いで、基板温度420±2℃でInとSbを同時に蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.7μmの単結晶のInSb薄膜を製作した。更に、この試作条件でGaAS(100)面上に成長したAlInSb層のX線回折の実験を行い、Al0.1In0.9Sb混晶層の結晶性を評価した。その結果、(004)面からのX線回折のロッキングカーブのAl0.1In0.9Sb混晶のピークにおける半値幅(FWHM)は1150秒であった。尚、Al0.1In0.9Sbの膜厚を1.0μmにすると半値幅は600秒に小さくなったが本例では0.7μmの厚さとした。
この構造で製作したInSb薄膜の電子移動度は、53,000cm/Vs、シート抵抗値は101Ω/□であり、電子移動度、シート抵抗値が極めて高い。このInSb薄膜積層物を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(200Ω以上の高感度で)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作を行うことが出来る。本例のInSb薄膜を感磁部としたでホール素子を製作し得られた特性は、入力抵抗値が200Ω、定電圧1Vで駆動したとき、50mTの磁束密度の印加でホール電圧が132mVであった。すなわち、磁界での感度は、132mV/V・50mTの高感度を示した。
実施例1のInSb薄膜は、そのまま磁気センサの製作に使われる場合もあるが、更に、耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、実施例1のInSb薄膜層上に対環境保護層としてSiやSiO等の保護層をプラズマCVD法で形成することも頻繁に行われる。特に、InSb薄膜の厚さが1μm以下の実施例1のようにInSb層が薄い場合、InSbの表面にプラズマCVD法で、例えば、0.3μmのSiを直接形成すると厚みによって変わるが少なくとも35〜40%の電子移動度とシート抵抗値の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の高感度特性の磁気センサが製作できないという問題があった。
InSb薄膜が薄くなると保護層として用いられるSiをInSb上に直接形成することで本発明のInSb積層物の磁気センサ材料としての良い特性が消滅してしまうこの問題はきわめて大きい問題である。
この問題を解決するために、本発明では、InSb薄膜の上にInSbと格子定数の近い半導体絶縁層である半導体保護層を形成する場合がある。この半導体絶縁層は一層でも、2層でも良いがInSb薄膜に接する面は、InSbと格子定数の近いAlInSbやAlGaInSb層を形成する。本実施例では、実施例1と同様の方法(構成)で同一厚さ0.7μmのInSb薄膜を形成した。ついで基板温度420±2℃でAl0.1In0.9Sb層を形成し、更にその上にGaAs層を形成し、キャップ層、すなわち半導体絶縁層である半導体保護層を形成した。すなわち、In:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μm)の厚さで成長した。
次に、6nmのGaAsを成長した。この化合物半導体の保護層を形成した。本実施例のInSb薄膜の電子移動度は、51,600cm/Vs、シート抵抗値は97Ω/□であった。実施例1と大きな特性変化もなく、大きな電子移動度と大きなシート抵抗値がえられた。すなわち、このInSb薄膜積層を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(200Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、高感度磁気センサの製作に使えることが実証された。
この半導体保護層の形成により、上述した保護層による特性低下が抑制される効果が得られた。すなわち、InSb薄膜積層体を磁気センサ部とするホール素子の製作工程で、保護膜形成のためプラズマCVD法で最上層のGaAs層上に0.3μmのSiを形成したが、電子移動度とシート抵抗値の低下は5%以下と極めて少なかった。すなわち、保護層による大幅な特性低下が無くなり、高い電子移動度と高シート抵抗などの特性が保護層形成工程を経ても低下しなかった。この結果、本実施例のInSb薄膜を用いると高感度、高入力抵抗値(200Ω以上の高感度で)更にきわめて高い耐環境信頼性を有するホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作ができる。
ホール素子を製作した結果得られた素子の特性は、入力抵抗値が205Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで126mVであった。すなわち、磁界での感度は、126mV/V・50mTの高感度を示した。実施例1に比較して、ホール素子の特性は余り変わっていないので、このことによりAlInSb半導体絶縁層の形成で0.3μmのSi保護層の影響は殆ど見られなくなった。
実施例1において使ったと同一の機能と結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、絶縁性の厚さ0.35mmで直径2インチのGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら630℃(±2℃で制御)に加熱した後、As蒸気を照射しながら温度を420℃まで下げ、次に420℃付近の予め定められた温度パターンに従って基板の温度を中心温度に対して±2℃以内で制御した。
また、蒸発源にチャージされた元素の蒸気を、すなわち、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、InとSbを同時にInとSbが夫々チャージされた蒸発源より蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.3μmでシート電子濃度が5.8×1011/cmの単結晶のInSb薄膜を製作した。
更に、このInSb薄膜の上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この構造で製作した本実施例3のInSb薄膜の電子移動度は、37,000cm/Vs、シート抵抗値は300Ω/□であり、電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜積層物を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(500Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作ができる。
このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(200Ω以上の高抵抗)のホール素子の製作を行った。その結果得られた素子の特性は、入力抵抗値が550Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで92mVであった。すなわち、磁界での感度は、92mV/V・50mTの高感度を示した。また、この素子は入力抵抗値が極めて大きいので駆動電力も少ない。
耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、最上層のGaAs(GaAs無い場合はAl0.1In0.9Sb絶縁層)の表面にSiをプラズマCVD法で0.3μ程度形成することも頻繁に行われる。
特に、InSb薄膜の厚さが1μm以下の本実施例のようにInSb層が薄い場合、InSbの表面にプラズマCVD法で、例えば、0.3μmのSiを直接InSb薄膜上に形成すると厚みによって変化量は変わるが多くの場合大きな特性変動を伴う。厚さが0.3μmのInSbに直接0.3μmのSiをプラズマCVDで形成した場合、少なくとも35〜50%以上の電子移動度とシート抵抗値の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の特性の磁気センサが製作できないという問題があった。
しかし、本実施例では、InSb薄膜上に、半導体保護層として絶縁性のAl0.1In0.9Sb更にGaAs(6nm)が形成されており、プラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は5%以下と極めて少なかった。
この結果、本実施例の場合は、InSb薄膜が0.3μmの薄さにもかかわらず高感度、高入力抵抗値(500Ω以上の高抵抗)更にきわめて高い耐環境信頼性を有するホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が出来た。このような0.3μmのSiをプラズマCVD法で形成する保護層の形成工程が磁気センサ製作工程に付加されても製作した素子特性は、殆ど変化を受けない。
すなわち、得られた素子の特性は、入力抵抗値が590Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで89mVであった。すなわち、磁界での感度は、89mV/V・50mTの高感度を示し保護層による感度低下の影響は殆ど見られない。一方、ホール素子の対環境性能や長寿命化など高い信頼性がこの0.3μmのSi保護膜の形成で付与された。
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、降温し、ついで420±2℃に設定し保持した。この状態で、蒸発源にチャージされた元素の蒸気を、すなわち、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁、若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、InとSbを同時に蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたシート電子濃度が2.0×1012/cmシート抵抗77Ω/□電子移動度34,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜を製作した。
この本実施例のInSb薄膜は、ドナー不純物のSnのドープによりInSb薄膜中の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、シート電子濃度やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)がアンドープの実施例1と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本実施例のInSb薄膜を用いホール素子を製作した結果は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)の温度依存性が一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。入力抵抗値の温度依存性も1/10〜2/10に低減された。このようなホール素子の温度依存性の低減は、実用上は極めて重要で、ホール素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
得られた素子特性を列記すると、入力抵抗値が164Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで85mVであった。すなわち、磁界での感度は、85mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。
実施例4において、更に、InSb薄膜の上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
Snドーピングにより若干のシート抵抗値の低下や不純物散乱による若干の電子移動ど低下が見られるがInSb薄膜の特性は、電子移動度が34,000cm/Vs、シート抵抗値は80Ω/□であった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(抵抗180Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、実施例4と同様に、高感度で、かつ、温度依存性の少ない磁気センサの製作に使えるInSb薄膜である。
更に、この実施例では、InSb薄膜のシート電子濃度の室温周辺−40〜150℃の範囲での温度依存性(温度係数)が実施例1と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本実施例のInSb薄膜を磁気センサ部にして製作したホール素子は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)及び、ホール素子の入力抵抗値の温度依存性が一桁、すなわち、アンドープの場合に比較して1/10〜2/10に低減された。
ホール素子製作工程中でのSiの絶縁層0.3μmの形成は行わないで製作したときのホール素子の特性は、入力抵抗値が175Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで82mVであった。すなわち、磁界での感度は、82mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。また、Snドーピングをしているにもかかわらず入力抵抗値も175Ωと十分大きい。
さらに、耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、InSb積層物の最上層のGaAsの表面にSiをプラズマCVD法で0.3μm形成し、ホール素子を製作した場合について説明する。
InSb薄膜の厚さが、0.3μmで半導体保護層が無ければSiをInSb上に直接形成した場合、35〜50%以上の電子移動度とシート抵抗値の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれる。本実施例ではSiをプラズマCVD法で0.3μm形成する保護層形成工程を実施したときの素子特性への影響を調べた。半導体保護層が形成されているのでプラズマCVDによるダメージは3%程度と少なく、ホール素子の感度、温度依存性、素子抵抗値などホール素子の基本特性は殆ど低下しなかった。従って、製作したホール素子の特性は先に述べたSiが形成されていない本実施例の前記素子特性と変わらなかった。
実施例1において使われた装置と同一の機能、構造の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb2、Sb4等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mm、直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら630℃(±2℃で制御)に加熱した後、Asを照射しながら420℃まで降温し、基板温度は予め定められた420±2℃に設定した。
この基板温度でAl,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、基板温度420±2℃でInとSbを同時に蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、Al0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.15μmの単結晶のInSb薄膜を製作した。更に、InSb薄膜の上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁、若しくは高抵抗の半導体保護層として単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。基板温度はこの間全て一定の420℃に保持した。
製作したInSb薄膜の電子移動度は、28,200cm/Vs、シート抵抗値は700Ω/□であり、シート電子濃度が3.3×1011/cmであった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(1,000Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、極めて消費電力の少ない、かつ、高感度磁気センサの製作に使えることは明らかである。
そこで、本実施例では、このInSb薄膜を用い、0.3μm厚さのSiを形成する保護層の形成(パッチベーション=RC形成)工程を実施してホール素子を製作した。特に、InSb薄膜の厚さが本実施例のように0.15μmと極めて薄い場合、InSbの表面に直接プラズマCVD法で、例えば、0.3μmのSiを直接形成すると60〜70%以上の電子移動度とシート抵抗値の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の特性のホール素子は製作できない。
しかし、本実施例の場合はプラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は3%以下と極めて少なく、すなわち、保護層形成工程での特性の低下が極めて少なく、極めて高い耐環境信頼性と、高感度、高入力抵抗値を有するホール素子を製作した。
その特性は、1Vの駆動で50mTの磁界でのホール電圧は70mV、入力抵抗値は1200Ωであった。また、磁界での感度は、70mV/V50mTの高感度を示した。また、更に加えて、入力抵抗値が1200Ωと言う高抵抗値が得られ、駆動時の消費電力が極めて少ないホール素子が製作できた。
(InP基板の例)
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のInP基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射しながら620℃に加熱した後、420℃まで降温し、InSbの結晶成長の最適基板温度である420±2℃に保持した。
次に、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でInP(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、基板温度を420±2℃に保持し、InとSbを同時に蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、InP(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたシート電子濃度が2.42×1012/cmの単結晶のInSb薄膜を製作した。更に、このInSb薄膜の上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の半導体保護層である単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
Snドーピングにより若干のシート抵抗値の低下や不純物散乱による若干の電子移動度の低下が見られるがInSb薄膜の特性は、電子移動度が38,200cm/Vs、シート抵抗値は70Ω/□であった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値で温度依存性も少ないホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能である。
そこで本実施例のInSb薄膜を使用してホール素子を製作した。ホール素子の製作工程中でのSiの絶縁層0.3μmの形成は行わないで製作したときのホール素子の特性は、入力抵抗値が150Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで95mVであった。すなわち、磁界での感度は、95mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。また、Snドーピングをしているにもかかわらず入力抵抗値も150Ωと十大きい。
このInSb薄膜積層体を使用したホール素子の実施例では、Snドープにより、室温周辺−40〜150℃の範囲でのホール素子の特性の温度依存性(温度係数)がドープしていない実施例1と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)及び、ホール素子の入力抵抗値の温度依存性が一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。
さらに、耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、保護層を形成したホール素子の特性について説明する。その結果、最上層のGaAs薄層の上にSiをプラズマCVD法で0.3μm形成する保護層の形成工程を実施してホール素子を製作したが、その影響は極めて少なく、製作したホール素子の感度、温度依存性、素子抵抗値などホール素子に基本特性は殆ど影響を受けなかった。従って、製作したホール素子の特性は先に述べた本実施例の素子特性と変わらなかった。この例から分かるように、基板がGaAsからInPに変わっても本発明の結果は殆ど変わらない。
(Si基板の例)
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチ、表面に高周波スパッタリングで形成したSiOの絶縁層を1μm形成したSi単結晶基板をセットした。このSi基板上のSiO表面に絶縁性のGaAs層をGaとAsのビームを当てることにより0.5μm形成した。次いで、As4若しくはAs2を含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら610℃に加熱した後、420℃に降温し、基板温度を420±2℃の予め定められたInSbの結晶成長に最適な温度に設定した。
この基板温度で、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs薄膜面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、基板温度420±2℃でInとSbを同時に蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、Al0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.3μのSnをドープしたシート電子濃度が2.42×1012/cmの単結晶のInSb薄膜を製作した。
この実施例のInSb薄膜は、電子移動度やシート抵抗値、ホール係数、シート抵抗値などの特性が室温周辺−40〜150℃の範囲での温度依存性(温度係数)が実施例1のアンドープInSb薄膜と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。この結果、ホール素子を製作したところ、高感度で、かつ定電流駆動のホール電圧(磁気界の検出信号)の温度依存性が一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減されたホール素子が得られた。
また、本実施例に見られるように、GaAs(100)基板が表面にSiOの絶縁層を有するSi基板に変わっても、若干の成長工程や結晶成長時の操作手順の変化はあるが本発明の結果は殆ど変わらず、GaAs(100)基板と同様の結果が得られる。サファイアなど他の基板を用いる場合も同様である。また、本実施例ではSiOの絶縁層が用いられたがその上に形成されるGaAs薄層が、絶縁性が高い(低温度で形成するなどした場合GaAs薄層は絶縁性が高い)場合はSiOを省略しても良い。
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs4若しくはAs2を含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら630℃(±2℃で制御)に加熱した後、420℃に降温し、基板温度420±2℃に設定した。
次に、Ga,Al、In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に蒸発させ、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、Ga5%、In85%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1Ga0.05In0.85Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、InとSbを同時に蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを蒸発させ、Al0.1Ga0.05In0.85Sb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたシート電子濃度が2.4×1012/cmシート抵抗74Ω/□電子移動度34,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜を製作した。
この本実施例9のInSb薄膜はドナー不純物のSnのドープによりInSbの導電帯の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、ホール係数、シート電子濃度やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)が実施例1のアンドープInSb薄膜と比較して比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本例のInSb薄膜を用いホール素子を製作した結果は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)の温度依存性が一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。入力抵抗値の温度依存性も1/10〜2/10に低減された。このようなホール素子の温度依存性の低減は、実用上は極めて重要で、ホール素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
得られた素子の特性を列記すると、入力抵抗値が168Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで90mVであった。すなわち、磁界での感度は、90mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、420℃に降温し、基板温度を420±2℃の温度に設定した。
次に、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に蒸発させ、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、InとSbを同時に蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたシート電子濃度が2.4×1012/cmシート抵抗77Ω/□、電子移動度35,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜を製作した。
本実施例のInSb薄膜積層体はInSbの膜厚が薄く、電子移動度も大きく、かつ、シート抵抗値が大きいので、無磁界のとき高抵抗値で、かつ、高抵抗変化率の磁気抵抗素子の製作に適する。更に、この本実施例のInSb薄膜はドナー不純物のSnのドープによりInSbの導電帯の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、ホール係数やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)が実施例1のInSb薄膜と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。そこで、本実施例のInSb薄膜を使い、磁気抵抗素子を製作してその特性を調べた。
製作した2端子磁気抵抗素子は、多数のショートバーを有する構造で、図2に示してある。端子電極部を除いてInSbの薄膜からなる磁気抵抗素子部の長さが1450μm、InSb薄膜の幅が120μm、幅120μmのInSb磁気抵抗素子部を跨いで形成されたCu/Ni/Au/Niの4層からなるショートバー電極は長さ120μmでその幅は9μmであり、等間隔でInSb薄膜に直接接触して形成した。電極間の抵抗値は磁界の印加がない場合は650Ωであった。
磁気抵抗素子を磁気センサとして使うときに加えられる磁束密度領域、すなわち、磁気抵抗変化が磁束密度に直線的に変化する磁束密度の領域でもあり、かつ、高感度で微弱な磁界変化を検出するためのバイアス磁束密度の領域でもある0.45Tの磁束密度のときの絶対的な抵抗変化率は210%であり、極めて大きな磁気抵抗変化示した。この厚さのInSb薄膜では、これまで実現できなかった極めて高抵抗変化率の磁気抵抗素子であり、極めて高感度の磁気抵抗素子による磁気センサが製作できた。また、Snドープの効果で本例の磁気抵抗素子の入力抵抗値の温度依存性は、凡そ0.2%/℃で極めて少なかった。このようなInSb薄膜の磁気抵抗素子の抵抗変化の向上と高入力抵抗値、かつ、入力抵抗の少ない温度依存性は、実用上は極めて重要であり、InSb薄膜の磁気抵抗素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
実施例1において使ったと同一の機能と結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、絶縁性の厚さ0.35mmで直径2インチのGaAs基板の(100)面上にAs4若しくはAs2を含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、420℃まで降温した。次に、420±2℃に基板温度を設定した。
次いで、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に蒸発させ、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、同じ基板温度でInとSbを同時に蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAlInSb層の上に、厚さ0.05μmの単結晶のInSb薄膜を製作した。
更に、このInSb薄膜の上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μm)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この構造で製作した本実施例のInSb薄膜の電子移動度は、20,000cm/Vs、シート抵抗値は3,000Ω/□である。また、厚0.05μmという極薄のInSb薄膜の電子移動度としては、電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜積層物を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作ができる。
その結果得られた素子の特性は、入力抵抗値が6,200Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで50mVであった。磁界での感度は、50mV/V・50mTの高感度を示した。また、この素子は入力抵抗値が極めて大きいので駆動電力も少ない。
耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、最上層のGaAs(GaAs無い場合はAl0.1In0.9Sb絶縁層)の表面にSiをプラズマCVD法で0.3μm程度形成することも頻繁に行われる。特に、InSb薄膜の厚さが1μm以下の本実施例のようにInSb層が薄い場合、InSbの表面にプラズマCVD法で、例えば、0.3μmのSiを直接形成すると厚みによって変化量は変わるが多くの場合大きな特性変動を伴う。厚さが0.05μmのInSbに直接0.3μのSiをプラズマCVDで形成した場合、少なくとも80%以上の電子移動度低下やシート抵抗値の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の特性の磁気センサが製作できない。
しかし、本実施例では、InSb薄膜上に、絶縁性のAl0.1In0.9Sb更にGaAs(6nm)が形成されており、プラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は5%以下と極めて少なかった。この結果、本実施例の場合は、InSb薄膜が0.05μmの薄さにもかかわらず高感度、高入力抵抗値で、更に、極めて高い耐環境信頼性を有するホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が出来た。このような0.3μmのSiをプラズマCVD法で形成する保護層の形成工程が磁気センサ製作工程に付加されても製作した素子特性は、殆ど変化を受けない。
得られた素子の特性は、入力抵抗値が5、900Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTであった。磁界での感度は、50mV/V・50mTの高感度を示し保護層による感度低下の影響は殆ど見られない。一方、ホール素子の対環境性能や長寿命化など高い信頼性がこの0.3μmのSiの保護層の形成で付与された。
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、420℃まで降温し、ついで420±2℃に基板温度を設定した。
次に、Ga、Al、In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、Ga5%、In85%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1Ga0.05In0.85Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。
次いで、InとSbを同時に蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、Al0.1Ga0.05In0.85Sb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたInSb単結晶薄膜を成長し、更に、このInSb上に2層の半導体保護層としてIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この結果、シート電子濃度が2.4×1012/cm、シート抵抗76Ω/□電子移動度35,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜を製作した。
この本実施例12のInSb薄膜はドナー不純物のSnのドープによりInSbの導電帯の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、ホール係数、シート電子濃度やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)が実施例1と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本実施例のInSb薄膜を用いホール素子を製作した結果は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)の温度依存性が一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。入力抵抗値の温度依存性も1/10〜2/10に低減された。このようなホール素子の温度依存性の低減は、実用上は極めて重要で、InSb層の薄膜化とともにホール素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
得られた素子の特性を列記すると、入力抵抗値が170Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで90mVであった。すなわち、磁界での感度は、90mV/V50mTの極めて高い感度を示した。
真空を保持するための円筒型の真空槽からなり、表面に結晶成長を行うGaAs基板を水平方向に保持する機構と該基板面に製作する薄膜の構成元素の蒸気を蒸発源から一様に且つ、均一に照射せしめる回転などの周期的な運動を付与する機構を少なくとも備えている。
更に、該基板を結晶成長室の真空を保持した状態で結晶成長室に搬入、搬出する手段を備えた結晶成長装置であって、InSb薄膜を成長させるGaAs(100)面を有する基板に近接し、InSb薄膜の成長面と反対側に設置した電気的に加熱された高温の熱輻射源である抵抗加熱ヒータ、更に、GaAs基板面から30cm以上離れて設置されており、定められた時間定められた強度で蒸発源にチャージされた元素の蒸気ビームを基板面に照射することが出来る複数の蒸発源、即ち、電気的に加熱することによって薄膜を形成する構成元素の蒸気を発生する手段である複数の蒸発源(クヌードセンセル:K―セル)と共にその蒸気の強度を制御する為の蒸発源に夫々設置された温度測定センサと予め定められた蒸気の強度に対応して蒸発源にチャージされた元素の蒸気を発生する状態を保持する為に、夫々の蒸発源に対応して設置され、蒸発源を予め定められた蒸発源温度に維持する加熱手段及び電力供給手段(機構)を備え、かつ、蒸発源から発生した蒸気を遮断することが出来るシャッターまたはバルブなどの手段を備えている。
更に、該蒸気の強度を測定することが出来る蒸気強度測定器を備える結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置において、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、620℃に加熱保持された絶縁性の厚さ0.35mmで直径2インチのGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(即ち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)した後、基板温度を420℃±2℃で設定保持し、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。この試作条件でGaAs(100)面上に成長したAl0.1In0.9Sb層のX線回折の実験を行い、Al0.1In0.9Sb混晶層の結晶性を評価した。
その結果、X線回折のロッキングカーブのAl0.1In0.9Sb混晶のピークに於ける半値幅(FWAHM)は1150秒であった。次いで、InとSbを同時に蒸発させ、Al0.1In0.9Sb層上に、基板温度をAl0.1In0.9Sbの成長時と同じに保持し、InSb層を成長した。成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成される低電子移動度層の厚さは成長時の温度などの条件によって異なるが本例では20nmであった。即ち、単結晶で、全厚さが0.7μmのInSb薄膜を成長するとともにInSb薄膜を動作層にする薄膜積層体を製作した。
この構造で製作したInSb薄膜は電子移動度は、53,000cm/Vs、シート抵抗値は101Ω/□であり、電子移動度、シート抵抗値が極めて高い。このInSb薄膜積層物を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(200Ω以上で高感度で)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作を行うことが出来る。本例のInSb薄膜を感磁部としたでホール素子を製作し得られた特性は、入力抵抗値が200Ω、定電圧1Vで駆動したとき、50mTの磁束密度の印加でホール電圧が132mVであった。即ち、磁界での感度は、132mV/V・50mTの高感度を示した。
試作例1のInSb薄膜はそのまま磁気センサの製作に使われる場合もあるが、更に、耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、試作例1のInSb薄膜層上に対環境保護層としてSiやSiO等のパッシベーション層をプラズマCVD法で形成することも頻繁に行われる。
本実施例14では、実施例13と同様の条件下で、形成した単結晶InSb薄膜0.7μmの表面に、更に、Al0.1In0.9Sb層を形成し、更にその上にGaAsの薄い層を形成して半導体保護層とした。即ち、単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)、次に、6nmのGaAs層を、InSbを成長したときと同じ基板温度で成長して化合物半導体保護層を形成した。
このAl0.1In0.9SbとGaAsの薄層とGaAs層の2層から成る半導体保護層の形成により、InSbの表面直下の部位にはInSbとAl0.1In0.9Sbとの格子の微弱な(0.5%)不整合により20nmの電子移動度の低い層が形成された。この厚さは条件によって一般に異なる。本例の条件では20nmであった。
本実施例のInSb薄膜の電子移動度は、51,600cm/Vs、シート抵抗値は97Ω/□であった。半導体保護層形成によって大きな特性劣化もなく、大きな電子移動度と大きなシート抵抗値がえられた。即ち、このInSb薄膜積層物を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(200Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、高感度磁気センサの製作に使える薄膜積層体である。
この半導体保護層の形成により、上述のパッシベーションによる特性低下が抑制される効果が得られた。プラズマCVD法で最上層のGaAs層上に0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は5%以下と極めて少なかった。即ち、パシベーションによる大きな特性低下が無くなり、高い電子移動度と高シート抵抗などの特性がパシベーション工程を経ても低下しなかった。この結果、本試作例のInSb薄膜積層体を磁気センサ部に用いると高感度、高入力抵抗値(200Ω以上で高感度)更にきわめて高い耐環境信頼性を有するホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作ができる。
ホール素子を製作し得られた特性は、入力抵抗値が205Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで126mVであった。即ち、磁界での感度は、126mV/V・50mTの高感度を示した。試作例1に比較して、ホール素子の特性は余り変わっていないので、このことによりAlGaSb半導体絶縁層の形成でパッシベーションの影響は殆ど見られなくなった。
試作例1において使ったと同一の機能と結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時に於いて1×10−8Torr以下に保持し、620℃に加熱保持された絶縁性の厚さ0.35mmで直径2インチのGaAs基板の(100)面上に、As若しくはAsを含むAs蒸気を照射(即ち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)した後、降温し、基板温度を420±2℃に設定保持し、次いで、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。
次いで、InとSbを同時に蒸発源より蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、基板温度をAl0.1In0.9Sbの成長時と同じに保持し、厚さが0.3μmのInSb層を成長した。成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成される低電子移動度層の厚さは成長時の温度などの条件によって異なる。本例では20nmであった。更に、このInSb薄膜の上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm、次に、6nmのGaAs層を順次、InSbと同じ基板温度で成長した。キャップ層のAl0.1In0.9Sb層とInSbとの格子のミスマッチの存在により、InSbの表面直下に形成された低電子移動度層は20nmであった。こうしてInSbの厚さが0.3μmの薄膜積層体を製作した。
この構造で製作した本実施例15のInSb薄膜の電子移動度は、37,000cm/Vs、シート電子濃度が5.8×1011/cmの単結晶のInSb薄膜である。更に、InSb薄膜のシート抵抗値は300Ω/□である。半導体保護層の形成による電子移動度の低下は少なく、電子移動度、シート抵抗値が極めて高い。このInSb薄膜積層体を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(500Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作ができる。
このInSb薄膜積層体を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(500Ω以上で高感度)のホール素子の製作を行った。得られた素子の特性は、入力抵抗値が550Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで92mVであった。即ち、磁界での感度は、92mV/V・50mTの高感度を示した。また、この素子は入力抵抗値が極めて大きいので駆動電力も少ない。
耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、薄膜積層体の磁気センサ部の表面にSiをプラズマCVD法で0.3μ程度形成することも頻繁に行われる。特に、本例のようにInSb層が0.3μmと薄い場合、InSb層の表面に直接接してプラズマCVD法で、例えば0.3μmのSiを直接形成すると、少なくとも40%〜50%以上の電子移動度の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の特性の磁気センサが製作できないという問題があった。
しかし、本実施例では、InSb薄膜上に、半導体保護層として2層からなる絶縁性のAl0.1In0.9Sb、更にGaAs(6nm)が形成されており、プラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は3乃至5%と極めて少なかった。この結果、本試作例の場合は、InSb薄膜が0.3μmの薄さにもかかわらず、素子製作工程での特性劣化が極めて少なく高感度、高入力抵抗値(500Ω以上)、更に、高い耐環境信頼性を有するホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が出来た。この様に、半導体保護層の形成により、0.3μmのSiをプラズマCVD法で形成するパシベーション工程が磁気センサ製作工程に付加されても、この工程の前後で製作した素子特性は、殆ど変化を受けない。
即ち、得られた素子の特性は、入力抵抗値が590Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで89mVであった。即ち、磁界での感度は、89mV/V・50mTの高感度を示した。一方、ホール素子の対環境性能や長寿命化など高い信頼性がこの0.3μmのSiパッシベーション薄膜の形成で付与された。
実施例13の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、420℃以上の定められた温度に加熱保持された厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上に、基板温度600℃で、As若しくはAsを含むAs蒸気を照射(即ち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)した後、降温し、基板の温度を420±2℃に設定保持した。次いで、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μ/時の成長速度でGaAs(100)面上に、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。
次いで、InとSbを同時にInとSbが夫々チャージされた蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、Al0.1In0.9Sb層の上に、基板温度を420±2℃に保持しInSb層を成長した。成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成される低電子移動度層の厚さは本例では20nmであった。こうして、単結晶で、全厚さが0.3μmで、Snが一様にInSb層にドープされたInSb薄膜積層体を製作した。
こうして、全厚さが0.3μmのSnをドープしたシート電子濃度が2.0×1012/cm2シート抵抗77Ω/□電子移動度37,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜積層体を製作した。Snドーピングにより若干のシート抵抗値の低下や不純物散乱による若干の電子移動度低下が見られるが良い特性である。
この本実施例のInSb薄膜積層体はドナー不純物のSnのドープによりInSbの導電帯の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、シート電子濃度やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)がInSb層に不純物がドープされていないアンドープの試作例13のInSb動作層と比較して凡そ一桁、即ち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本例のInSb薄膜積層体を用いホール素子を製作した結果は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)の温度依存性が一桁、即ち、1/10〜2/10に低減された。入力抵抗値の温度依存性も1/10〜2/10に低減された。この様なホール素子の温度依存性の低減は実用上は極めて重要で、InSb層の薄膜化とともにホール素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
得られた素子の特性を列記すると、入力抵抗値が160Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで90mVであった。即ち、磁界での感度は、90mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。
実施例16に於いて、更に、InSb薄膜の上に絶縁性の2層からなる半導体保護層として単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを基板温度420℃±2℃で成長した。
この結果、キャップ層のAl0.1In0.9Sb層とInSbとの格子のミスマッチの存在により、InSbの表面直下に厚さが20nmの低電子移動度層を持ち、全厚さが0.3μmのSnを一様ドープしたInSb薄膜動作層を有する薄膜積層体を製作した。
特性は、電子移動度が34,000cm/Vs、シート抵抗値は80Ω/□であった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高い。このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(180Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、試作例16と同様に、高感度で、かつ、温度依存性の少ない磁気センサの製作に使えるInSb薄膜積層体である。
更に、この実施例では、InSb薄膜のシート電子濃度の室温周辺−40〜150℃の範囲での温度依存性(温度係数)がInSb層に不純物がドープされていない試作例13のInSb動作層と比較して凡そ一桁、即ち、1/10〜2/10に低減されている。この結果、本試作例のInSb薄膜を磁気センサ部にして製作したホール素子は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)及び、ホール素子の入力抵抗値の温度依存性が一桁、即ち、1/10〜2/10に低減された。
ホール素子製作工程中でのSiの絶縁層0.3μmの形成は行わないで製作したときのホール素子の特性は、入力抵抗値が175Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで82mVであった。即ち、磁界での感度は、82mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。また、Snドーピングをしているにもかかわらず入力抵抗値も175Ωと十分大きい。
さらに、耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、InSb薄膜積層体の最上層のGaAs層の表面にSiをプラズマCVD法で0.3μm形成するパシベーション工程を実施した。しかし、その影響は極めて少なく、ホール素子の感度、温度依存性、素子抵抗値などホール素子に基本特性は殆ど影響を受けなかった。従って、製作したホール素子の特性は先に述べた本例の素子特性と変わらなかった。
実施例13の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時に於いて1×10−8Torr以下に保持し、420℃以上の定められた温度に加熱保持された厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上に620℃の基板温度でAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(即ち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)した後、降温し、基板温度を420±2℃に設定保持し、かつ、蒸発源にチャージされた元素の蒸気を、即ち、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。
次いで、基板温度を変えずに420±2℃に設定保持した状態でInとSbを同時に蒸発源より蒸発させ、更に、少し遅れてドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させた。即ち、Al0.1In0.9Sbとのヘテロ界面より10nmのアンドープInSb層を形成する目的で、InとSbセルのシャッターを開いた後、36秒遅れてSnセルのシャッターを開いた。こうした手順でGaAs(100)面上に形成されたAlInSb層の上に、基板温度をAl0.1In0.9Sbの成長時と同じに保持し、InSb層を成長した。 成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成される低電子移動度層の厚さは20nmであった。
InSb層の成長を終了するに当たって、SnのシャッターをInとSbセルより36秒早く閉めた。こうして、単結晶で、InSb層の上下にアンドープ層10nmを持ち、中央部に均一にSnがドープされており、かつ、全厚さが0.3μmのInSb単結晶薄膜を成長した。このInSb薄膜のシート電子濃度は1.8×1012/cm、シート抵抗82Ω/□、電子移動度40,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜積層体を製作した。
この本試作例18のInSb薄膜積層体はSnのドープによりInSbの導電帯の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、シート電子濃度やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)がInSb層に不純物がドープされていない試作例13のInSb動作層と比較して凡そ一桁、即ち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本例のInSb薄膜積層体を用いホール素子を製作した結果は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)の温度依存性が一桁、即ち、1/10〜2/10に低減された。入力抵抗値の温度依存性も1/10〜2/10に低減された。この様なホール素子の温度依存性の低減は、実用上は極めて重要で、InSb層の薄膜化とともにホール素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
得られた素子の特性を列記すると、入力抵抗値が170Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで99mVであった。即ち、磁界での感度は、99mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。
このように、InSbの上下の面に接した低電子移動度の部位にSnドープをしないと高い電子移動度を得ることができ、しかも、シート抵抗値が下がらないというメリットがある。この為、磁気センサを創ると感度が上がり、素子抵抗値も若干大きくなるメリットが得られる。この効果は、InSb膜厚に依らず効果があるがInSbの膜厚が薄いほど大きい。
実施例18と同様、InSb層の上下に10nmのアンドープ層を持ち、Snが中央部にドープされた厚さ0.3μmのInSb薄膜を成長し、更に、InSb薄膜の上に半導体保護層として単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この結果、Al0.1In0.9SbとInSbとの格子不整合により、InSbの表面直下の部位には薄い厚さが20nmの低電子移動度層が形成される。こうして、全厚さが0.3μm、中央部にSnが均一にドープされ、Al0.1In0.9Sbと接する界面部分の10nmがアンドープのInSb単結晶薄膜を有する薄膜積層体を製作した。
InSb薄膜の特性は、電子移動度が37,200cm/Vs、シート抵抗値は75Ω/□であった。Snの中央部のみのドープにより、電子移動度、シート抵抗値ともに大きくなった。このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(抵抗値150Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、高感度で、且つ、温度依存性の少ない磁気センサの製作に使えるInSb薄膜である。
更に、この実施例では、InSb薄膜のシート電子濃度の室温周辺−40〜150℃の範囲での温度依存性(温度係数)がInSb層に不純物がドープされていない試作例13のInSb動作層と比較して凡そ一桁、即ち、1/10〜2/10に低減されている。この結果、本試作例のInSb薄膜を磁気センサ部にして製作したホール素子は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)及び、ホール素子の入力抵抗値の温度依存性が一桁、即ち、1/10〜2/10に低減された。
ホール素子製作工程中でのSiの絶縁層0.3μmの形成は行わないで製作したときのホール素子の特性は、入力抵抗値が180Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで92mVであった。即ち、磁界での感度は、92mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。また、Snドーピングをしているにもかかわらず入力抵抗値も180Ωと十分大きい。
さらに、耐環境性能をより向上した磁気センサを製作する目的で、InSb積層物の最上層のGaAs(GaAs無い場合はAlInSb絶縁層)の表面にSiをプラズマCVD法で0.3μm形成する工程を形成するパシベーション工程を実施した。しかし、その影響は極めて少なく、ホール素子の感度、温度依存性、素子抵抗値などホール素子の基本特性は殆ど影響を受けなかった。従って、製作したホール素子の特性は先に述べた本例の素子特性と変わらなかった。
実施例13において使われた装置と同一の機能、構造の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mm、直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、Asを照射しながら420℃まで降温し、基板温度を420±2℃に保持した。
次いで、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を1.0μm成長させた。このような条件化で製作したAl0.1In0.9SbのX線回折の半値幅は500secであった。半値幅はAlInSbの厚さの増大と共に少なくなることも確かめられた。
次いで、InとSbを同時に蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、基板温度をAl0.1In0.9Sbの成長時と同じ420±2.0℃に保持し、厚さ0,15μmのInSb層を成長した、成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成される低電子移動度層の厚さは本例では10nmであった。即ち、単結晶で、全厚さが0.15μmで、ドナー原子としてSnが一様にドープされたInSb薄膜を成長した。
更に、InSb薄膜の上に単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この結果、Al0.1In0.9SbとInSbとの格子不整合により、AlInSbとInSbのヘテロ界面に接して1nm、InSbの表面直下の部位には厚さが20nmの低電子移動度層が形成される。こうして、全厚さが0.15μm、中央部にSnが均一にドープされたInSb単結晶薄膜を有する薄膜積層体を製作した。
このInSb薄膜の電子移動度は、29,300cm/Vs、シート抵抗値は680Ω/□であり、シート電子濃度が3.2×1011/cmであった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(1,000Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、極めて消費電力の少ない、かつ、高感度磁気センサの製作に使えることは明らかである。
更に、本実施例では、このInSb薄膜を用い、0.3μm厚さのSiを形成する保護層の形成(パッシベーション薄膜製作)工程を実施してホール素子を製作した。特に、InSb薄膜の厚さが本実施例のように0.15μmと極めて薄い場合、InSbの表面に直接プラズマCVD法で、例えば、0.3μmのSiを直接形成すると60〜70%以上の電子移動度とシート抵抗値の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の特性のホール素子は製作できない。
しかし、本実施例の場合は、半導体保護層の影響で、プラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は3%以下と極めて少なく、すなわち、保護層形成工程での特性の低下が極めて少なく、極めて高い耐環境信頼性と、高感度、高入力抵抗値を有するホール素子を製作した。
その特性は、1Vの駆動で50mTの磁界でのホール電圧は75mV、入力抵抗値は1150Ωであった。また、磁界での感度は、75mV/V50mTの高感度を示した。また、更に加えて、入力抵抗値が1150Ωと言う高抵抗値が得られ、駆動時の消費電力が極めて少ないホール素子が製作できた。
実施例13において使われた装置と同一の機能、構造の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mm、直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、Asを照射しながら420℃まで降温し、基板温度を420±2℃に設定保持した。
また、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を1.0μm成長させた。このような条件化で製作したAl0.1In0.9SbのX線回折の半値幅は500secであった。
次いで、InとSbを同時にInとSbが夫々チャージされた蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、基板温度をAl0.1In0.9Sbの成長時と同じに保持し、InSb層を成長した成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成される低電子移動度層の厚さは、本例では10nmであった。即ち、単結晶で、全厚さが0.15μmで、ドナー原子としてSnが一様にドープされたInSb薄膜を成長した。
次いで、半導体保護層として高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を70nm(0.07μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この結果、Al0.1In0.9SbとInSbとの格子不整合により、InSbの表面直下の部位には薄い厚さが10nmの低電子移動度層が形成された。こうして、全厚さが0.15μm、中央部にSnが均一にドープされたInSb単結晶薄膜を有する薄膜積層体を製作した。
このInSb薄膜の電子移動度は、29,800cm/Vs、シート抵抗値は670Ω/□であり、シート電子濃度が3.2×1011/cmであった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(1,000Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、極めて消費電力の少ない、かつ、高感度磁気センサの製作に使えることは明らかである。
そこで、本実施例では、このInSb薄膜を用い、0.3μm厚さのSiを形成する保護層の形成(パッシベーション層の形成)工程を実施してホール素子を製作した。特に、InSb薄膜の厚さが本実施例のように0.15μmと極めて薄い場合、InSbの表面に直接プラズマCVD法で、0.3μmのSiを直接形成すると60〜70%以上の電子移動度の低下が生じ、当初期待した磁気センサの高感度の特性が損なわれ所望の特性のホール素子は製作できない。
しかし、本実施例の場合はプラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は3%以下と極めて少なく、すなわち、保護層形成工程での特性の低下が極めて少なく、極めて高い耐環境信頼性と、高感度、高入力抵抗値を有するホール素子を製作した。
その特性は、1Vの駆動で50mTの磁界でのホール電圧は77mV、入力抵抗値は1150Ωであった。また、磁界での感度は、77mV/V50mTの高感度を示した。
また、更に加えて、入力抵抗値が1110Ωと言う高抵抗値が得られ、駆動時の消費電力が極めて少ないホール素子が製作できた。
実施例13において使われた装置と同一の機能、構造の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mm、直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら610℃に加熱した後、Asを照射しながら420℃まで降温し、ついで基板温度を420±2℃に設定保持した。
次に、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.9μm成長させた。このような条件化で製作したAl0.1In0.9SbのX線回折の半値幅は700secであった。
次いで、InとSbを同時にInとSbが夫々チャージされた蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、基板温度をAl0.1In0.9Sbの成長時と同じ420±2℃に設定保持し、InとSbのシャッターを同時に開け、InSbの成長をスタートした。次いで、36秒遅れてドーパントのSnの蒸発源のシャッターを開け、Snのドーピングを開始した。こうしてInSbにSnをドープしながらInSb層を成長行った。InSbの成長を終了するに当たっては、ドーパントのSnのシャッターを閉めた36秒後にInとSbのシャッターを閉め厚さ0.15μmのInSb薄膜の成長を終了した。
InSbの成長の初期にはAl0.1In0.9Sb層との格子ミスマッチが0.5%あるので低電子移動度層が形成されるが、順次InSbの膜厚が厚くなるに従って格子ミスマッチの影響が解消され、電子移動度の高い層、高電子移動度層が形成される。このとき形成された低電子移動度層の厚さは10nmであった。こうして製作したInSb薄層は、InSbの成長の初期に積層した低電子移動度の10nmの部分はアンドープであり、最後に積層した10nmもアンドープである。中間の130nmの高電子移動度部はSnがドープされている構造の厚さ0.15μmのInSb薄膜を製作した。次ぎに、同じ基板温度において、InSb薄膜の上に単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を70nm(0.07μm)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この結果、Al0.1In0.9SbとInSbとの格子不整合により、InSbの表面直下の部位でSnがドープされていない厚さが10nmの部分は低電子移動度層化した。こうして、全厚さが0.15μm、InSb層の下面、及び、表面部分それぞれ10nmがアンドープで、中央部の130nm厚さの高電子移動度部のみにSnが均一にドープされたInSb単結晶薄膜を有する薄膜積層体を製作した。
このInSb薄膜の電子移動度は、31,500cm/Vs、シート抵抗値は630Ω/□であり、シート電子濃度が3.0×1011/cmであった。電子移動度、シート抵抗値が極めて高く、このInSb薄膜を感磁部に使うことで高感度、高入力抵抗値(1,000Ω以上)のホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサの製作が可能であり、極めて消費電力の少ない、かつ、高感度磁気センサの製作に使えることは明らかである。
そこで、本実施例では、このInSb薄膜を用い、0.3μm厚さのSiを形成する保護層の形成(パッチベーション=RC形成)工程を実施してホール素子を製作した。InSb薄膜の厚さが0.15μmと極めて薄い場合、InSbの表面に直接プラズマCVD法で、0.3μmのSiを直接形成すると60〜70%以上の電子移動度とシート抵抗値の低下が生じる。しかし、本実施例の場合は、InSb層の上に半導体絶縁層が形成されているので、プラズマCVD法で0.3μmのSiを形成しても、電子移動度とシート抵抗値の低下は3%以下と極めて少なく、すなわち、保護層形成工程での特性の低下が極めて少なく、極めて高い耐環境信頼性と、高感度、高入力抵抗値を有するホール素子を製作できた。
その特性は、1Vの駆動で50mTの磁界でのホール電圧は85mV、入力抵抗値は1050Ωであった。また、磁界での感度は、85mV/V50mTの高感度を示した。
また、更に加えて、入力抵抗値が1050Ωと言う高抵抗値のため、駆動時の消費電力が極めて少ないホール素子が製作できた。
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら610℃に加熱した後、420℃まで降温し、次に基板温度を420±2℃で設定した。
また、蒸発源にチャージされた元素の蒸気を、In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、Ga5%、In85%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.85Ga0.05In0.10Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。
次いで、InとSbを同時に蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAlInSb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたInSb単結晶薄膜を成長し、更に、InSbの成長時と同じ基板温度でInSb薄膜上にIn:90%とAl:10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.85Ga0.05In0.10Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を50nm(0.05μ)の厚さで成長し、次に、6nmのGaAsを成長した。
この結果、シート電子濃度が2.4×1012/cm、シート抵抗76Ω/□電子移動度35,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜を製作した。InSb薄膜はドナー不純物のSnのドープによりInSbの導電帯の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、ホール係数、シート電子濃度やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)がアンドープのInSbと比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。この結果、本実施例のInSb薄膜を用いホール素子を製作した結果は、定電流駆動のホール電圧(磁界の検出信号)の温度依存性が一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。入力抵抗値の温度依存性も1/10〜2/10に低減された。このようなホール素子の温度依存性の低減は、実用上は極めて重要で、InSb層の薄膜化とともにホール素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。
得られた素子の特性を列記すると、入力抵抗値が170Ω、定電圧1Vで駆動したときのホール電圧が50mTで90mVであった。すなわち、磁界での感度は、90mV/V・50mTの極めて高い感度を示した。
実施例1の結晶成長装置と同一の機能の結晶成長室を有する結晶成長装置である分子線エピタキー装置を用い、残留不純物ガス、例えば、H、CO,CO、He、N、O、等、(薄膜を形成する元素の蒸気である、例えば、As、As,Sb、Sb等を除いた)の積算した蒸気圧が基板加熱時において1×10−8Torr以下に保持し、厚さ0.35mmで直径2インチの絶縁性のGaAs基板の(100)面上にAs若しくはAsを含むAs蒸気を照射(すなわち、GaAs基板表面を構成している成分元素離脱防止工程)しながら620℃に加熱した後、420℃に降温し、ついで420±2℃に設定保持した。
次に、Al,In及びSbを予め定められた蒸気圧比で(ビームモニタで測定されたビーム強度比で)同時に入射して、1μm/時の成長速度でGaAs(100)面上に、In90%とAl10%の原子数組成比で、かつ、絶縁又は半絶縁若しくは高抵抗の単結晶のAl0.1In0.9Sb混晶薄膜(InSbとの格子定数の差は0.5%)を0.7μm成長させた。次いで、InとSbを同時にInとSbが夫々チャージされた蒸発源より蒸発させ、更に、ドナー不純物としてSnを入れた蒸発源よりSnを蒸発させ、GaAs(100)面上に形成されたAl0.1In0.9Sb層の上に、厚さ0.3μmのSnをドープしたシート電子濃度が2.4×1012/cmシート抵抗77Ω/□電子移動度35,000cm/Vsの単結晶のInSb薄膜を製作した。Snドーピングにより若干のシート抵抗値の低下や不純物散乱による若干の電子移動度低下が見られるが良い特性である。こうして本発明の薄膜積層体を製作した。
本実施例のInSb薄膜積層体はその膜厚が薄く、電子移動度も大きく、かつ、シート抵抗値が大きいので、無磁界のとき高抵抗値で、かつ、高抵抗変化率の磁気抵抗素子の製作に適する。更に、この本実施例のInSb薄膜はドナー不純物のSnのドープによりInSb層の電子がアンドープの場合に比べて増加しており、その効果により、ホール係数やシート抵抗値の室温周辺(−40〜150℃の範囲)での温度依存性(温度係数)がアンドープのInSb薄膜と比較して凡そ一桁、すなわち、1/10〜2/10に低減された。そこで、本実施例のInSb薄膜を使い、磁気抵抗素子を製作してその特性を調べた。
製作した2端子磁気抵抗素子は、多数のショートバーを有する構造で、図2に示してある。端子電極部を除いてInSbの薄膜からなる磁気抵抗素子部の長さが1450μm、InSb薄膜の幅が120μm、幅120μmのInSb磁気抵抗素子部を跨いで形成されたCu/Ni/Au/Niの4層からなるショートバー電極は長さ120μmでその幅は9μmであり、等間隔でInSb薄膜に直接接触して形成した。ショートバー電極及び端子電極を形成するに当たって、電極の下部に対応するInSb表面部分にn+層を形成する目的で、端子電極及びショートバー電極下部のInSb層表面には、予めフォトレジストをマスクにしたリフトオフ法でSnを2nm蒸着し、次いでSnのInSb層の表面への拡散をするため300℃で5分間加熱した。こうして製作した磁気抵抗素子の電極間の抵抗値は磁界の印加がない場合は650Ωであった。
磁気抵抗素子を磁気センサとして使うときに加えられる磁束密度領域、すなわち、磁気抵抗変化が磁束密度に直線的に変化する磁束密度の領域でもあり、かつ、高感度で微弱な磁界変化を検出するためのバイアス磁束密度の領域でもある0.45Tの磁束密度のときの絶対的な抵抗変化率は210%であり、極めて大きな磁気抵抗変化示した。この厚さのInSb薄膜では、これまで実現できなかった極めて高抵抗変化率の磁気抵抗素子であり、極めて高感度の磁気抵抗素子による磁気センサが製作できた。また、Snドープの効果で本例の磁気抵抗素子の入力抵抗値の温度依存性は、凡そ0.2%/℃で極めて少なかった。このようなInSb薄膜の磁気抵抗素子の抵抗変化の向上と高入力抵抗値、かつ、入力抵抗の少ない温度依存性は、実用上は極めて重要であり、InSb薄膜の磁気抵抗素子の実用的な性能や機能を格段に向上させた。

Claims (22)

  1. 基板上に形成されたInSb薄膜であるInSb動作層と、
    該InSb動作層より高抵抗又は絶縁性を示し、バンドギャップがInSbより大きい層である第1及び第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層(0≦x、y≦1)とを備え
    前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、前記基板と前記InSb動作層との間に前記InSb動作層と直接接するように設けられ、
    前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、前記InSb動作層に対して前記基板側とは逆の面上に前記InSb動作層と直接接するように設けられ、
    前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層及び前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層は、各々独立にAlとGaの原子の含有率(x+y)が、5.0%から17%の範囲(0.05≦x+y≦0.17)かつ前記InSb動作層と接する前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層との格子不整合が、0.25%から1.0%の範囲であることを特徴とする薄膜積層体。
  2. 前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層が、(004)格子面からのX線回折によるロッキングカーブの半値幅が1秒以上1300秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜積層体。
  3. 前記InSb動作層の室温の電子濃度が、1.2×1016〜5.0×1018cm−3の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜積層体。
  4. 前記InSb動作層は、Sn,Si,S,Te,Seのいずれかのドナー不純物がドープされていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の薄膜積層体。
  5. 前記InSb動作層は低電子移動度層と高電子移動度層を有し、該低電子移動度層は前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層に接する部分及び第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層に接する部分の双方に存在し、2つの該低電子移動度層の間には該高電子移動度層が存在し、該低電子移動度層の厚みが0.5nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜積層体。
  6. 前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層又は前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層、もしくはその何れもが、Gaを含まないAlIn1−xSb混晶層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜積層体。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の薄膜積層体の製造方法であって、前記基板上に予め定められた基板温度で前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層を積層した後、前記基板温度との差が±5度以内に設定された基板温度で前記InSb動作層を形成する工程を少なくとも有することを特徴とする薄膜積層体の製造方法。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の薄膜積層体の前記InSb動作層を磁気センサ部としたことを特徴とするInSb薄膜磁気センサ。
  9. 前記InSb動作層が、ホール素子、ホール効果を利用する素子、磁気抵抗素子又は磁気抵抗効果を利用する素子のいずれかの動作層であることを特徴とする請求項8に記載のInSb薄膜磁気センサ。
  10. 前記InSb動作層の厚さが、8nm以上2,000nm以下であることを特徴とする請求項9に記載のInSb薄膜磁気センサ。
  11. 前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層の厚さが、50nm以上3000nm以下であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  12. 前記InSb動作層が、単結晶であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  13. 前記InSb動作層の厚さが、8nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  14. 前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層、又は、第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層、もしくはその何れもが、Gaを含まないAlIn1−xSb混晶層であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  15. 前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層、又は、第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層、もしくはその何れもがAl0.1In0.9Sb混晶層であることを特徴とする請求項14に記載のInSb薄膜磁気センサ。
  16. 前記第2のAlGaIn1−x−ySb混晶層の上に、更にGaAs層を備えることを特徴とする請求項8乃至15のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  17. 前記InSb動作層にドナー不純物がドープされていることを特徴とする請求項8乃至16のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  18. 前記ドナー不純物が、Sn,Si,S,Te,Seのいずれかであることを特徴とする請求項17に記載のInSb薄膜磁気センサ。
  19. 前記InSb動作層が、前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層との界面から1.5nm以上20nm以下の距離だけ離れた部位にドナー不純物がドープされていることを特徴とする請求項17又は18に記載のInSb薄膜磁気センサ。
  20. 前記InSb動作層の所要の表面部位に、電極としての金属薄膜が接して形成されており、該金属薄膜の形成された部位のInSb薄膜の少なくとも表面には、ドナー不純物が他の部位に比べて多くドープされていることを特徴とする請求項17乃至19のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  21. 前記InSb薄膜磁気センサが、ホール素子又は磁気抵抗素子であることを特徴とする請求項8乃至20のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサ。
  22. 請求項8乃至21のいずれかに記載のInSb薄膜磁気センサの製造方法であって、前記基板上に予め定められた基板温度で前記第1のAlGaIn1−x−ySb混晶層を積層した後、前記基板温度との差が±5度以内に設定された基板温度で前記InSb動作層を形成する工程を少なくとも有することを特徴とするInSb薄膜磁気センサの製造方法。
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