JP5812342B2 - グラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの製造方法に関する。
青色/白色LEDには、基板上にGaN、InGaNおよび類似の化合物半導体をエピタキシャル成長によって製膜したものが使用されているが、一般に、上記エピタキシャル成長用の基板にはサファイアウエハが用いられている。これは、サファイアの格子定数がGaN、InGaNに近く、またGaN、InGaNのMOCVD法でのエピタキシャル成膜条件(焼成温度1300℃、NH雰囲気)で化学的に安定なためである。
しかし、サファイアウエハは製造コストが高く、大面積化に不向きであり、また低熱伝導率で放熱性が低いために高輝度化が困難である。一方、炭素材料は、低コスト化、大面積化が可能で、高熱伝導率で放熱性が高いために高輝度化が期待される材料であるが、高温下でNHと反応するためエピタキシャル成長用基板として使用することができなかった。
そこで、近年、芳香族ポリイミド、ポリオキサジアゾール(POD)、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー(BBL重合体)、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸−3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミン重合体(BNTCA−BPTA重合体)等からなる有機ポリマーフィルムを1800℃以上に熱処理してなるグラファイトフィルムが提案されるに至っており(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)、特にBBL重合体やBNTCA−BPTA重合体由来のグラファイトフィルムは、同じ熱処理温度で比較すると、芳香族ポリイミドやPOD由来のグラファイトフィルムに比較して高い結晶性を示すとされている。
しかしながら、BBL重合体やBNTCA−BPTA重合体を原料として形成されてなるグラファイトフィルムは、炭素化時に円盤状の剥れが生じ、十分な平坦性を得ることができず、エピタキシャル成長用基板として好適に使用することができなかった。
また、グラファイトフィルムは、エピタキシャル成長用基板以外にも、透明導電膜や、トランジスタの形成材料等として用いられるものであることから、結晶性が高く、平坦性に優れるものが求められるようになっている。
特開2009−200207号公報
"High-quality pyrographite films",Murakami M. et al, Appl.Phys.Lett., 48,p.1954、1986 " ベンズイミダゾベンゾファナントロリンラダーを出発原料とする高結晶性炭素フィルム"山下順也ほか、第34回炭素材料学会年会要旨集、p.314、2007.
このような状況下、本発明者等が鋭意検討したところ、ガラス質カーボン(GC)基板等の基板に対し、BBL重合体やBNTCA−BPTA重合体の溶液をコートした後、炭素化、黒鉛化することにより、基板上に平坦性および結晶性(配向性)が向上したグラファイトフィルムを生成し得ることを見出した。
しかしながら、この方法で作製されたグラファイトフィルムは、配向度の違いに起因して基板とグラファイトフィルムとの熱膨張差を生じ、冷却時に高さ数百nm程度の皺がフィルム一面に発生して、平坦性や結晶性を低下させる場合があることが判明した。このように平坦性や結晶性が低下したグラファイトフィルムをエピタキシャル成長用基板として使用した場合には、皺の周りで化合物半導体に欠陥が多く発生し、また、基板に転写してトランジスタの形成材料として使用した場合には、得られるトランジスタの品質が低下してしまう。
また、グラファイトフィルムは、厚さが薄くなるほど結晶性が高くなることが分かっているが(”High-quality and highly oriented graphite block from polycondensation polymer films”, Murakami M. et al, Carbon., 30,2,p.255、1992等参照)、厚さが1μm以下、例えば数百nm程度のグラファイトフィルムを作製した場合、基板からフィルムを剥がす際に応力を生じ、グラファイトフィルムに反りを生じたり、結晶性を低下させる場合があった。
このような状況下、本発明は、平坦性および結晶性に優れ、自立可能で皺の発生が抑制されたグラファイトフィルムを提供するとともに、該グラファイトフィルムを簡便に製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、上記技術課題を解決するために鋭意検討したところ、基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下2000〜3000℃の温度条件下で熱処理を行うことによって、表面における円盤状の剥れが0〜10個/0.01cm、表面に形成された皺の高さが0〜50nm、グレインサイズが1μm以上、厚さが1μm以下であるグラファイトフィルムが得られることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1層状珪酸塩基板の表面にカーボン層が形成されてなる基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、
前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、
得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理する
ことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法
)前記複素環状高分子がベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーまたは4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸−3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミン重合体である上記(1)に記載のグラファイトフィルムの製造方法、
)前記層状珪酸塩基板表面のカーボン層が親水化処理されてなるものである上記()または()に記載のグラファイトフィルムの製造方法、
)前記剥離液が水である上記()〜()のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、
)複素環状高分子薄膜を基板から剥離して、得られた薄膜フィルムをすくい取って炭素基板上に転写した後、前記熱処理を行う上記()〜()のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、および
)前記炭素基板と該炭素基板上に形成されるグラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kである上記()に記載のグラファイトフィルムの製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、平坦性および結晶性に優れ、自立可能で皺の発生が抑制されたグラファイトフィルムを提供することができるとともに、該グラファイトフィルムを簡便に製造する方法を提供することができる。
実施例1で得られたグラファイトフィルムの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例1で得られたグラファイトフィルムの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 図2において観察される円盤状の剥れを示す図である。
先ず、本発明のグラファイトフィルムについて説明する。
本発明のグラファイトフィルムは、表面における円盤状の剥れが0〜10個/0.01cm、表面に形成された皺の高さが0〜50nm、グレインサイズが1μm以上、厚さが1μm以下であることを特徴とするものである。
本発明のグラファイトフィルムは、表面における円盤状の剥れが0〜10個/0.01cmであるものであり、0〜5個/0.01cmであるものが好ましく、0〜3個/0.01cmであるものがより好ましい。
本出願書類において、グラファイトフィルム表面における円盤状の剥れとは、グラファイトフィルムの形成時、原料を炭素化した際に生成するガスを逸出できずに内部応力が溜まり内部から破裂して発生するものを意味し、表面部分が完全に剥れたものの他、表面部分が残っているものも存在する。この円盤状の剥れは、通常直径が数〜数百μm程度であるものであり、表面部分が完全に剥れたものは平坦性を低下させ、表面部分が剥れずに残ったものも簡単に剥れ取れて、同様に平坦性を低下させる。
なお、本出願書類において、グラファイトフィルム表面に観察される円盤状の剥れは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−X100)を用いて、グラファイトフィルム上の任意の10箇所を計測したときの平均値を意味する。
本発明のグラファイトフィルムは、表面における円盤状の剥れが0〜10個/0.01cmに抑制されてなるものであることにより、高い平坦性を示す。
本発明のグラファイトフィルムは、表面に形成された皺の高さが0〜50nmであるものであり、0〜40nmであるものが好ましく、0〜30nmであるものがより好ましい。
本発明のグラファイトフィルムにおいて、表面に形成される皺とは、グラファイトフィルムの表面上に連続して形成される筋状の突起を意味し、このような皺は、グラファイトフィルムを基板上で作製した際に、グラファイトフィルムと基板との熱膨張差によって生じ得る。上記皺はフィルムの平坦部から浮き上がるように形成されており、熱膨張差が大きい程、皺(浮き上がり)が多くなり平坦性を低下させる。
なお、本出願書類において、表面に形成される皺の高さは、AFM(原子間力顕微鏡、(株)島津製作所製SPM−9600)を用い、グラファイトフィルム上の任意の10点を計測したときの平均値を意味する。
本発明のグラファイトフィルムは、表面に形成された皺の高さが0〜50nmに抑制されてなるものであることにより、皺の発生が抑制された高い平坦性を発揮することができる。
本発明のグラファイトフィルムは、グレインサイズ(結晶粒径)が1μm以上であるものであり、5μm以上であるものが好ましく、10μm以上であるものがより好ましい。グレインサイズの上限は特に制限されないが、通常500μm以下である。
なお、本出願書類において、グレインサイズは、JIS R 1670に規定されているファインセラミックスのグレインサイズ測定方法に基づいて20個の結晶粒子を測定したときの平均値を意味し、本出願書類においては、上記方法に従い、SEM(走査型電子顕微鏡 日本電子(株)製 JSM−6510LV)を用い、測定試料を7.5°傾斜させ、加速電圧5kV下で測定した。
本発明のグラファイトフィルムは、グレインサイズが1μm以上であることにより、高い結晶性を有している。
本発明のグラファイトフィルムは、厚さが1μm以下であり、0.7μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。グラファイトフィルムの厚さの下限は特に制限されないが、通常0.1μm以上である。
なお、本出願書類において、グラファイトフィルムの厚さは、JIS R 1636に規定されているファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式表面粗さ計による測定方法に基づき、段差計(KLA−Tencor Corporatin社製、Alpha−Step IQ)を用いて測定した値を意味する。
上述したように、一般にグラファイトフィルムは、厚さが薄くなる程結晶性が向上し易く、円盤状の剥れも形成され難いが、フィルムの作製時に反りや強度低下を招き易いため、厚さが1μm以下のものが得難かった。これに対して本発明のグラファイトフィルムは、厚さが1μm以下であっても十分な平坦性を確保することができ、エピタキシャル成長用基板等として好適に使用することができる。
本発明のグラファイトフィルムは、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数が−2×10−6/K〜2×10−6/Kであるものが好ましく、−1.5×10−6/K〜1.5×10−6/Kであるものがより好ましく、−1×10−6/K〜1×10−6/Kであるものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、平均線熱膨張係数は、炭素協会規格「石英膨張計による平均熱膨張係数の測定法」に準じた方法により、熱機械分析装置((株)島津製作所製、TMA−60H)を用いて測定した値を意味する。
本発明のグラファイトフィルムは、自立フィルムであってもよいし、炭素基板上に形成されてなるものであってもよい。
本出願書類において、自立フィルムとは、基板等により支持されることなく単独でフィルム状態を維持し得るものを意味し、フィルムの1辺を1本の棒で支持するかフィルムの2辺を2本の棒でそれぞれ支持したときに、膜の自重によって発生する鉛直下向きの力に対抗して膜の機械強度によって膜構造を保持できる鉛直上向きの抗力を発揮し得るものを意味する。
本発明のグラファイトフィルムが、炭素基板上に形成されてなるものである場合、グラファイトフィルムが炭素基板の両主表面上に形成されてなるものであってもよいし、片側主表面上に形成されてなるものであってもよい。
上記炭素基板は、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数が−2×10−6/K〜2×10−6/Kであるものが好ましく、−1.5×10−6/K〜1.5×10−6/Kであるものがより好ましく、−1×10−6/K〜1×10−6/Kであるものがさらに好ましい。
上記炭素基板としては、特に制限されないが、グラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が小さいものが好ましく、面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kであるものが好ましく、0〜1.5×10−6/Kであるものがより好ましく、0〜1×10−6/Kであるものがさらに好ましい。
炭素基板とグラファイトフィルムとの面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kであることにより、後述するように、皺の発生が抑制されたグラファイトフィルムを提供することができる。
本発明のグラファイトフィルムは、後述する本発明のグラファイトフィルムの製造方法により好適に作製することができる。
本発明のグラファイトフィルムは、平坦性および結晶性に優れ、自立可能で皺の発生が抑制されてなるものであることから、エピタキシャル成長用基板や、透明導電膜や、トランジスタの形成材料等として好適に使用することができる。
次に、本発明のグラファイトフィルムの製造方法について説明する。
本発明のグラファイトフィルムの製造方法は、基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理することを特徴とするものである。
本発明の製造方法において、複素環状高分子含有液を塗布する基板としては、表面にカーボン層が形成されてなる層状珪酸塩基板であることが好ましい。
本発明の製造方法において、層状珪酸塩基板としては、層状珪酸塩露出面をへき開して清浄面にすることができる平面基板であるものであれば、特に制限されない。
層状珪酸塩基板を構成する層状珪酸塩としては、例えば、金雲母(KMgAlSi10OH)、白雲母(KAlSi10OH)、セリサイト(KAlSi10OH)、フッ素金雲母(KMgAlSi10)、K四珪素雲母(KMg25Si10)、Na四珪素雲母(NaMg25Si10)、Naテニオライト(NaMgLiSi10)、Liテニオライト(LiMgLiSi10)、モンモリロナイト(Na0.33Mg0.33Al1.67Si10(OH))、Naヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si10(OH)、Na0.33Mg2.67Li0.33Si10)、Liヘクトライト(Li0.33Mg2.67Li0.33Si10、Li0.33Mg2.67Li0.33Si10(OH))、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi10(OH))等が挙げられる。
層状珪酸塩基板の厚さは特に制限されず、比較的厚みの薄いフィルム状のものであってもよい。
また、層状珪酸塩基板は、下地基板上に層状珪酸塩層が形成されてなるものであってもよい。この場合、下地基板としては、平坦性および密着強度が高く、後述する複素環状高分子薄膜を剥離するまでに層状珪酸塩と反応しないものであれば特に制限されず、例えば、SiO基板、Si基板、サファイア基板等を挙げることができる。
層状珪酸塩基板の表面に形成されるカーボン層としては、疎水性で、後工程で使用される複素環状高分子含有液に溶解しないものであることが好ましい。
層状珪酸塩基板に対してカーボン層を形成する場合、例えば、カーボンまたはカーボン形成材料を蒸着する方法を挙げることができる。
蒸着対象となるカーボンとしては、アモルファスカーボンおよびダイヤモンドライクカーボンから選ばれる一種以上を挙げることができ、蒸着対象となるカーボン形成材料としては、フェノール樹脂またはフラン樹脂等熱硬化性樹脂を挙げることができる。
層状珪酸塩基板に対してカーボン形成材料を蒸着した場合、蒸着後に焼成して炭素化することにより、カーボン層を形成することができる。
蒸着方法としては、例えば熱分解法、熱CVD法、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、スパッタ法、イオンビームデポジション法、レーザーアブレーション法およびイオン注入法等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
層状珪酸塩基板に形成されるカーボン層の厚みは、1〜1000nmであることが好ましく、20〜700nmであることがより好ましく、50〜500nmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、層状珪酸塩基板に形成されるカーボン層の厚みは、JIS R 1636に規定されているファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式表面粗さ計による測定方法に基づき、段差計(KLA−Tencor Corporatin社製、Alpha−Step IQ)を用いて測定した値を意味する。
層状珪酸塩基板に形成されるカーボン層は疎水性であり、後述する複素環状高分子を含む溶液を均一にコートするためにはカーボン層表面を親水性に変えることが好ましい。
親水化方法としては、層状珪酸塩基板に対して後述する複素環状高分子含有液を均一にコートして濡らすことができ、層状珪酸塩基板を浸食しない方法であれば特に制限されない。
親水化方法として、具体的には、酸素ガス含むガス雰囲気中で、低温プラズマ処理、常圧プラズマ処理、コロナ放電処理または紫外線照射処理を行うか、オゾンガス含む雰囲気中に保持するか、酸素、二酸化炭素、水、アンモニア等による高温賦活処理を行うか、シランカップリング剤等による親水化コートを行うか、過酸化水素水、硫酸等によるエッチングを行う方法等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、上記基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を形成する。
本発明の製造方法において、複素環状高分子としては、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンとの縮合物を挙げることができ、このような複素環状高分子としては、例えばポリイミド重合体、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー(BBL重合体)、ポリオキサジアゾール重合体、ポリパラフェニレンビニレン重合体、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとの重合体(4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸−3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミン重合体(BNTCA−BPTA重合体))等が挙げられる。
このような複素環状高分子として、具体的には、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるものを挙げることができる。下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位からなる複素環状高分子としては、固有粘度が0.5〜8.5dlg−1であるものが好ましく、3.0〜6.0dlg−1であるものがより好ましく、3.5〜5.0dlg−1であるものがさらに好ましい。
高分子の固有粘度(η)は分子量の指標となる物性値であり、分子量が大きくなるにつれてηは大きくなる。固有粘度の測定法はすでに知られており、本出願書類においては、重合体をメタンスルホン酸に溶解し、濃度0.15gdl−1と調整し、30℃雰囲気において測定したときの値を意味する。
一般式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体は、ビナフチルテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のビナフチルテトラカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ビナフチルテトラカルボン酸としては、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸を例示することができ、ビフェニルテトラアミンとしては3,3’,4,4’−ビフェニルテトラアミンを例示することができる。ビフェニルテトラアミンの塩としては3,3’,4,4’−ビフェニルテトラアミンの四塩酸塩を例示できる。
4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸は、4−クロロ−1,8−ナフタル酸無水物から、エステル化、カップリングおよび加水分解の3ステップの反応によって合成してもよいし、市販品を購入してもよい。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラアミンは、o(オルト)−ニトロアニリンからヨウ素化,クロスカップリング,アミノ基の還元の3ステップの反応によって合成してもよいし、市販品を購入してもよい。
上記ビナフチルテトラカルボン酸またはその誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを、溶媒を収めた反応容器内に添加し、100〜250℃で3〜72時間、好ましくは3〜48時間攪拌することにより、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体を得ることができる。
上記溶媒としては、上記出発材料及び生成する重合体を溶解し、重合を促進する触媒としての作用を有するものであれば特に制限されない。具体的には、ポリリン酸、ポリリン酸エステル、リン酸ジフェニルクレシル等や五酸化二リン等を溶解したメタンスルホン酸等を挙げることができる。
本発明の製造方法において、複素環状高分子としては、例えば下記一般式(2)で表される繰り返し単位からなるものを挙げることができる。下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位からなる複素環状高分子としては、固有粘度が0.5〜8.5 dlg−1であるものが好ましく、3.0〜6.0dlg−1であるものがより好ましく、3.5〜5.0dlg−1であるものがさらに好ましい。
一般式(2)で表される繰り返し単位からなる重合体は、ビナフチルテトラカルボン酸またはその酸塩化物,酸無水物,エステルまたはアミド等のビナフチルテトラカルボン酸誘導体とベンゼンテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ビナフチルテトラカルボン酸またはその誘導体の具体例は上記のとおりである。ベンゼンテトラアミンとしては、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンを例示できる。ベンゼンテトラアミンの塩としては1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンの四塩酸塩を例示できる。
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンはm−クロロベンゼンから、ニトロ化、アミノ化およびニトロ基の還元の3ステップの反応によって合成し、四塩酸塩として単離してもよいし、市販品を購入してもよい。
前記ビナフチルテトラカルボン酸またはそのカルボン酸誘導体とベンゼンテトラアミンまたはその塩とから、上記一般式(2)で表される繰り返し単位からなる重合体を得る反応条件は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体を得る条件と同様である。
本発明の製造方法において、複素環状高分子としては、例えば下記一般式(3)で表される繰り返し単位からなるものを挙げることができる。下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位からなる複素環状高分子としては、固有粘度が0.5〜3.5 dlg−1であるものが好ましく、1.0〜3.5dlg−1であるものがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1であるものがさらに好ましい。
一般式(3)で表される繰り返し単位からなる重合体は、ナフタレンテトラカルボン酸またはその酸塩化物、酸無水物、エステルまたはアミド等のナフタレンテトラカルボン酸誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とを反応させて得ることができる。ナフタレンテトラカルボン酸としては、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸を例示でき、ビフェニルテトラアミンまたはその塩の具体例は上記のとおりである。
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸は、ピレンから過マンガン酸カリウムによる酸化、次亜塩素酸ナトリウム溶液による酸化の2ステップの反応によって合成してもよいし、市販品を購入してもよい。
上記ナフタレンテトラカルボン酸またはその誘導体とビフェニルテトラアミンまたはその塩とから、上記一般式(3)で表される繰り返し単位からなる重合体を得る反応条件は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体を得る条件と同様である。
本発明の製造方法においては、上記一般式(1)、(2)および(3)で表わされる繰り返し単位からなる複素環状高分子含有液を基板上に塗布することが好ましい。
なお、本実刑形態における複素環状高分子を次の(a)または(b)のように記載することもできる。
(a)下記一般式で表される複素環状高分子。
(一般式)

(式中、Arは下記官能基1又は官能基2を示し、Arは官能基3又は官能基4を示し、nは重合度を示す自然数である。ただし、Arが官能基2のときはArは官能基4ではない。)。
(官能基1)
(官能基2)
(官能基3)
(官能基4)
上記一般式で表わされる複素環状高分子において、Arが官能基1でArが官能基3または官能基4である場合、複素環状高分子の固有粘度は0.5〜8.5dlg−1であることが好ましく、3.0〜6.0dlg−1であることがより好ましく、3.5〜5.0dlg−1であることがさらに好ましい。
また、上記一般式で表わされる複素環状高分子において、Arが官能基2でArが官能基3である場合、複素環状高分子の固有粘度は0.5〜3.5dlg−1であることが好ましく、1.0〜3.5dlg−1であることがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1であることがさらに好ましい。
(b)下記一般式(4)、(5)及び(6)で表されるいずれかの重合体。但し、一般式(4)、(5)及び(6)において、nは自然数である。
一般式(4)または一般式(5)で表わされる重合体において、重合体の固有粘度は0.5〜8.5dlg−1であることが好ましく、3.0〜6.0dlg−1であることがより好ましく、3.5〜5.0dlg−1であることがさらに好ましい。
一般式(6)で表わされる重合体において、nは、重合体の固有粘度が0.5〜3.5dlg−1であることが好ましく、1.0〜3.5dlg−1であることがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1であることがさらに好ましい。
一般式(4)または一般式(5)で表わされる重合体において、nは、重合体の固有粘度が0.5〜8.5dlg−1となる数であることが好ましく、3.0〜6.0dlg−1となる数であることがより好ましく、3.5〜5.0dlg−1となる数であることがさらに好ましい。
一般式(6)で表わされる重合体において、nは、重合体の固有粘度が0.5〜3.5dlg−1となる数であることが好ましく、1.0〜3.5dlg−1となる数であることがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1となる数であることがさらに好ましい。
複素環状高分子含有液の調製に使用する溶媒または分散媒としては、ニトロメタンとAlClとの混合溶液や、ニトロメタンとGaClとの混合溶液や、メタンスルホン酸や、クロロスルホン酸や、トリフルオロメタンスルホン酸や、硫酸等を挙げることができる。
本発明の製造方法において、複素環状高分子含有液における複素環状高分子の濃度は、0.07〜7質量%であることが好ましく、0.3〜3質量%であることがより好ましく、0.5 〜2.0質量%であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、基板上へ複素環状高分子含有液を塗布する方法としては、例えば、スピンコーター、ダイコーター、ディップコーターなどを用いた方法を挙げることができる。
本発明の製造方法において、基板として表面にカーボン層が形成されてなる層状珪酸塩基板を使用する場合には、カーボン層が形成された面上に複素環状高分子含有液を塗布する。
複素環状高分子含有液の塗布量は、得ようとするグラファイトフィルムの厚さに応じて適宜決定すればよく、得られるグラファイトフィルムの厚さが1μm以下、好ましくは0.7μm以下、より好ましくは0.5μm以下になるように塗布することが好ましい。
本発明の製造方法においては、上記複素環状高分子含有液を基板上に塗布した後、乾燥処理することにより、複素環状高分子含有液を構成する溶媒または分散媒を除去して、複素環状高分子薄膜を形成する。
本発明の製造方法において、乾燥処理は、自然乾燥であってもよいし、窒素ガス等の不活性ガスを送風したり、加熱することによる強制乾燥であってもよい。乾燥時間は、溶媒または分散媒が十分に除去し得る時間であれば特に制限されず、適宜選択すればよい。
上記乾燥処理して得られる複素環状高分子薄膜は、得ようとするグラファイトフィルムに対応した形状を有しており、乾燥処理後においては、基板と密着した状態で存在している。
本発明の製造方法においては、上記乾燥処理して形成された複素環状高分子薄膜を剥離液に浸漬することにより剥離して、薄膜フィルムを得る。
上記剥離は、剥離液として水を用い、複素環状高分子薄膜が形成された基板を水中に浸漬することにより行うことが好ましい。
上記水としては、純水が好ましく、具体的には、RO膜分離水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
また、剥離時における純水の温度は5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜35℃がさらに好ましい。
剥離時間は特に制限されないが、通常、0.1〜10分間程度である。
具体的には、表面に複素環状高分子薄膜を形成した基板を、容器内で純水中に浸漬し、基板と複素環状高分子薄膜とが接触する界面に純水を侵入させて、複素環状高分子薄膜の端部をめくり上げた後、めくり上がった端部を水面に浮かせた状態で、基板を傾斜させつつさらに水中に(下方に)移動させる。本移動に伴って上記複素環状高分子薄膜の端部から徐々に剥離が進行し、最終的には上記複素環状高分子薄膜が完全に剥離して、水面上に浮遊するため、薄膜フィルムとして容易に回収することができる。
上記方法によれば、剥離処理のために、基板を強酸あるいは強アルカリ溶液に浸漬する必要がなく、純水に浸漬するだけで簡便に剥離することができる。これは、水の表面張力が72mN/mと大きく、基板と複素環状高分子薄膜との間でこの水の表面張力が作用して剥離を引き起こすためと考えられる。また、複素環状高分子薄膜は疎水性であることから、剥離後に水に浮遊して、簡単に回収することができる。
このように、表面に複素環状高分子薄膜を形成した基板を水中に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を剥離した場合には、水の表面張力と複素環状高分子薄膜の浮力とを利用して簡便に剥離することができる。また、上記方法によれば、複素環状高分子薄膜に対して過度の応力を加えることなく剥離し得ることから、得られる薄膜フィルムに反り等が生じ難い。
複素環状高分子薄膜の剥離を水中への浸漬により行う場合、得られた薄膜フィルムは、適宜水中からすくい取って回収する。
具体的には、先ず、水面に浮遊した複素環状高分子薄膜の二つの辺に二本の棒状物をそれぞれ接触させ、複素環状高分子薄膜を付着させつつ徐々に二本の棒状物を引き上げることにより、棒状物間に薄膜フィルムを回収することができる。
また、水面に浮遊した複素環状高分子薄膜の一辺に一本の棒状物を接触させ、高分子薄膜を付着させつつ徐々に棒状物を引き上げることによっても、薄膜フィルムを回収することができる。
上記棒状物としては、銅やアルミ、PTFE等からなるワイヤを挙げることができる。また、棒状物の形状や寸法は、複素環状高分子薄膜をすくい取ることが可能な限り特に制限されない。
また、得られた薄膜フィルムは、自立フィルムとしてそのまま使用してもよいし、適宜炭素基板上に転写してもよい。また、適宜真空乾燥処理してフィルム中に残った水分を除去することが好ましい。
薄膜フィルムを炭素基板上に転写する場合、薄膜フィルムがアモルファスカーボン層を有するものである場合には、アモルファスカーボン層を有する側を炭素基板に接触させつつ転写することが好ましい。
薄膜フィルムを転写する炭素基板としては、a軸とc軸に異方性があり、後述する熱処理により炭素基板上に形成されるグラファイトフィルムとの面方向の平均線熱膨張係数の差が0〜2×10−6/Kであるものが好ましく、0〜1.5×10−6/Kであるものがより好ましく、0〜1×10−6/Kであるものがさらに好ましい。
上記面方向の平均熱膨張係数の差が小さいほど後述する熱処理による黒鉛化時に皺が発生し難くなる。
薄膜フィルムを転写する炭素基板としては、例えばグラファイトフィルム、PGS(登録商標)グラファイトシート、ポリイミド系黒鉛シート、天然黒鉛シート、HOPGグラファイトシート(advanced ceramics社製)、熱分解黒鉛基板等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、上記薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理する。
上記焼成処理は、2段階に行うことが好ましく、500〜1500℃で焼成して炭素化処理を施した後、さらに2000℃〜3000℃で焼成してグラファイト化(黒鉛化)処理を施すことが好ましい。
本発明の製造方法において、上記炭素化処理時における焼成温度は、500〜1500℃であることが好ましく、700〜1500℃であることがより好ましく、1000〜1500℃であることがさらに好ましい。
炭素化処理時の焼成時間は、0.1〜100時間が好ましく、0.3〜10時間がより好ましく、0.5〜5時間がさらに好ましい。
上記炭素化処理は複数回行ってもよく、その場合は、炭素化処理に要する合計時間が上記炭素化処理時における焼成時間内にあることが適当である。
上記炭素化工程における焼成雰囲気は、不活性雰囲気で行う。本出願書類において、不活性雰囲気としては、酸素など酸化活性の気体が存在しない雰囲気を意味し、例えば、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができ、特にアルゴン雰囲気が好ましい。
上記炭素化処理は、炭素基板上に形成した薄膜フィルムの表面に垂直に圧力を加えながら行うことが好ましく、上記圧力を加えることによって、炭素化時に生じる収縮を抑制し、炭素化処理時に前駆体が配向し易くなるために、強度の高い炭化物を形成することができる。
本発明の製造方法において、上記グラファイト化処理時における焼成温度は、2000℃〜3000℃が好ましく、2500℃〜3000℃がより好ましく、2700〜3000℃がさらに好ましい。
本発明の製造方法においては、上記温度で焼成することにより、グラファイトフィルムを好適に形成することができる。
本発明の製造方法において、グラファイト化処理時における焼成時間は、1〜8時間が好ましく、1〜5時間がより好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。
本発明の製造方法において、グラファイト化処理工程における焼成雰囲気は、不活性雰囲気であり、例えば、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができ、特にアルゴン雰囲気が好ましい。
上記グラファイト化処理は複数回行ってもよく、その場合は、グラファイト化処理に要する合計時間が上記グラファイト化処理時の焼成時間内にあることが適当である。
本発明の製造方法においては、上記グラファイト化処理によりグラファイト層を形成した後、適宜公知の方法により不純物を除去する高純度化処理を施してもよい。高純度化処理としては、例えば特開平2-83205号公報、特開平3-45508号公報記載の方法を採用することができる。
本発明によれば、平坦性および結晶性に優れ、自立可能で皺の発生が抑制されたグラファイトフィルムを簡便に製造する方法を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(複素環状高分子の作製)
Ar流通下、ポリリン酸(オルトリン酸換算濃度115%)100g中に、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとを10mmolづつ加え、200℃の温度条件下で72時間反応させた後、不純物を除去するために、メタンスルホン酸、ジメチルアセトアミド中で攪拌し、その後、200℃の温度条件下で12時間減圧乾燥することにより、固有粘度が4.1dlg―1のBNTCA−BPTA重合体を得た。
(フィルムの作製)
マイカ(LADO Research Industries社販売、厚さ0.127mm)の劈開面にアルバック機工(株)製真空蒸着装置(VPC−410)によりアモルファスカーボンを約100nm堆積させた。
次いで、アモルファスカーボン層に親水化処理を行うため、電子顕微鏡用親水化処理装置(JEOL社製、HDT−400)により、アモルファスカーボン層を60秒間処理した。アモルファスカーボン堆積面に、BNTCA−BPTA重合体0.6g/メタンスルホン酸50ml溶液を数滴滴下して、スピンコーター(ミカサ社製、MS―A100)を用い、1250rpmで30秒間成膜した。次に膜中の溶媒を除去するために、250℃で2時間熱処理を行った。BNTCA−BPTA重合体フィルムの膜厚は約250nmであった。このマイカ−アモルファスカーボン−BNTCA−BPTA重合体フィルムを純水に浸漬することにより、水面にBNTCA−BPTA重合体フィルムを剥離、浮上させた後、銅ワイヤですくい取り、110℃で1時間乾燥して自立薄膜フィルムを得た。
(炭素化、グラファイト化)
上記自立薄膜フィルムを2枚の黒鉛基板(東海カーボン(株)製、HK3)で挟み込み、シリコニット電気炉にて、Ar気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温した後、1時間保持して炭素化処理を施した。
その後、黒鉛抵抗炉にて、Ar気流中、室温から毎分5℃の割合で3000℃まで昇温した後、1時間保持して上記炭素化した重合体にグラファイト化処理を施すことにより、自立グラファイト薄膜フィルムを作製した。
得られた自立グラファイト薄膜フィルムのグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数および膜厚を表1に示す。
また、得られた自立グラファイト薄膜フィルムの走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6510LV)によるチャネリングコントラスト像を図1に示す。
(実施例2)
実施例1において、剥離のため純水に浸漬した後、すくいとったBNTCA−BPTA重合体フィルムをグラファイトフィルム(パナソニック社製、厚さ25μm、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数0.92×10−6/K)に転写し、該グラファイトフィルムに転写した状態で、実施例1と同様にして、乾燥処理、炭化処理および黒鉛化処理を順次施してグラファイト薄膜を作製した。
得られたグラファイト薄膜のグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数、膜厚および得られたグラファイト薄膜フィルムと下地であるグラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける平均線熱膨張係数の差を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、剥離のため純水に浸漬した後、すくいとったBNTCA−BPTA重合体フィルムをグラファイトシート(advanced ceramics社製HOPG、12mm×12mm×2mm、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数0.92×10−6/K)に転写し、該グラファイトシートに転写した状態で、実施例1と同様にして、乾燥処理、炭化処理および黒鉛化処理を順次施してグラファイト薄膜を作製した。
得られたグラファイト薄膜のグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数、膜厚および得られたグラファイト薄膜と下地であるグラファイトシートの室温〜1500Kにおける平均熱膨張係数の差を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で作製した、固有粘度が4.1dlg―1であるBNTCA−BPTA重合体を0.3g秤量し、これをメタンスルホン酸7mlに投入して溶解液を作製した後、溶解液を内径60mmのシャーレに展開した。
このシャーレをマントルヒータ内に置いた500ml平底セパラブルフラスコ内に水平を保って静置した。セパラブルフラスコ内をロータリーポンプで減圧して真空雰囲気にした後、段階的に200℃まで加熱して脱溶媒することにより、厚さ50μmの重合体フィルムを作製した。
上記シャーレから重合体フィルムを剥離して所定の大きさに切断した後、シリコニット電気炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温し、1時間保持して重合体フィルムの炭素化を行った。その後、黒鉛抵抗炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で2800℃まで昇温し、1時間保持して上記炭素化した重合体フィルムの黒鉛化を行うことにより、グラファイトフィルムを得た。得られたグラファイトフィルムの厚さは22μmであった。
得られたグラファイトフィルムのグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数および膜厚を表1に示す。
また、得られた自立グラファイトフィルムの走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6510LV)による顕微鏡写真を図2に示すとともに、図2において観察される円盤状の剥れを図3に示す(図3においては、図2で観察される各円盤状の剥れを太線で示した上で通し番号を付している)。
図2および図3に示す横1.3mm×縦1mmの観察範囲には、合計で143個の円盤状の剥れが存在しているため、1mmあたり(0.01cmあたり)110個の円盤状の剥れが存在していることが分かる。
(比較例2)
比較例1と同様にして、固有粘度が4.1dlg―1であるBNTCA−BPTA重合体を0.3g秤量し、これをメタンスルホン酸7mlに投入して溶解液を作製した後、脱溶媒後における重合体フィルムの厚さが100nmになるように量を調節してフィルムを作製し、比較例1と同様にグラファイトフィルムの作製を試みたが、粒径が数μm〜数mmの粉末状のものしか得ることができず、フィルム状のものを得ることができなかった。
表1および図1より、実施例1〜実施例3で得られたグラファイトフィルムは、グレインサイズが10μmと高い結晶性を有し、表面に円盤状の剥れや皺が観察されない高い平坦性を有し、薄膜フィルムでありながらフィルムとしての形状を維持し得る、自立可能なものであることが分かる。
一方、表1より、比較例1で得られたグラファイトフィルムは、グレインサイズが250nmと結晶性に劣るものであり、円盤状の剥れが110個/0.01cmに達する平坦性の低いものであり、比較例2においては、グラファイトフィルムを得ることができなかった。
本発明によれば、平坦性および結晶性に優れ、自立可能で皺の発生が抑制されたグラファイトフィルムを提供することができるとともに、該グラファイトフィルムを簡便に製造する方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 層状珪酸塩基板の表面にカーボン層が形成されてなる基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、
    前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、
    得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理する
    ことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法
  2. 前記複素環状高分子がベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーまたは4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸−3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミン重合体である請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  3. 前記層状珪酸塩基板表面のカーボン層が親水化処理されてなるものである請求項または請求項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  4. 前記剥離液が水である請求項〜請求項のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  5. 複素環状高分子薄膜を基板から剥離して、得られた薄膜フィルムをすくい取って炭素基板上に転写した後、前記熱処理を行う請求項〜請求項のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  6. 前記炭素基板と該炭素基板上に形成されるグラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kである請求項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
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