JP5812342B2 - グラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents
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(1)層状珪酸塩基板の表面にカーボン層が形成されてなる基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、
前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、
得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理する
ことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法、
(2)前記複素環状高分子がベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーまたは4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸−3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミン重合体である上記(1)に記載のグラファイトフィルムの製造方法、
(3)前記層状珪酸塩基板表面のカーボン層が親水化処理されてなるものである上記(1)または(2)に記載のグラファイトフィルムの製造方法、
(4)前記剥離液が水である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、
(5)複素環状高分子薄膜を基板から剥離して、得られた薄膜フィルムをすくい取って炭素基板上に転写した後、前記熱処理を行う上記(1)〜(4)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、および
(6)前記炭素基板と該炭素基板上に形成されるグラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kである上記(5)に記載のグラファイトフィルムの製造方法
を提供するものである。
本発明のグラファイトフィルムは、表面における円盤状の剥れが0〜10個/0.01cm2、表面に形成された皺の高さが0〜50nm、グレインサイズが1μm以上、厚さが1μm以下であることを特徴とするものである。
なお、本出願書類において、平均線熱膨張係数は、炭素協会規格「石英膨張計による平均熱膨張係数の測定法」に準じた方法により、熱機械分析装置((株)島津製作所製、TMA−60H)を用いて測定した値を意味する。
本出願書類において、自立フィルムとは、基板等により支持されることなく単独でフィルム状態を維持し得るものを意味し、フィルムの1辺を1本の棒で支持するかフィルムの2辺を2本の棒でそれぞれ支持したときに、膜の自重によって発生する鉛直下向きの力に対抗して膜の機械強度によって膜構造を保持できる鉛直上向きの抗力を発揮し得るものを意味する。
上記炭素基板は、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数が−2×10−6/K〜2×10−6/Kであるものが好ましく、−1.5×10−6/K〜1.5×10−6/Kであるものがより好ましく、−1×10−6/K〜1×10−6/Kであるものがさらに好ましい。
炭素基板とグラファイトフィルムとの面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kであることにより、後述するように、皺の発生が抑制されたグラファイトフィルムを提供することができる。
本発明のグラファイトフィルムの製造方法は、基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理することを特徴とするものである。
層状珪酸塩基板を構成する層状珪酸塩としては、例えば、金雲母(KMg3AlSi3O10OH2)、白雲母(KAl3Si3O10OH2)、セリサイト(KAl3Si3O10OH2)、フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10O2F2)、K四珪素雲母(KMg25Si4O10O2F2)、Na四珪素雲母(NaMg25Si4O10O2F2)、Naテニオライト(NaMg2LiSi4O10O2F2)、Liテニオライト(LiMg2LiSi4O10O2F2)、モンモリロナイト(Na0.33Mg0.33Al1.67Si4O10(OH2))、Naヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4O10(OH2)、Na0.33Mg2.67Li0.33Si4O10F2)、Liヘクトライト(Li0.33Mg2.67Li0.33Si4O10F2、Li0.33Mg2.67Li0.33Si4O10(OH2))、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi4O10(OH2))等が挙げられる。
層状珪酸塩基板に対してカーボン形成材料を蒸着した場合、蒸着後に焼成して炭素化することにより、カーボン層を形成することができる。
なお、本出願書類において、層状珪酸塩基板に形成されるカーボン層の厚みは、JIS R 1636に規定されているファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式表面粗さ計による測定方法に基づき、段差計(KLA−Tencor Corporatin社製、Alpha−Step IQ)を用いて測定した値を意味する。
親水化方法としては、層状珪酸塩基板に対して後述する複素環状高分子含有液を均一にコートして濡らすことができ、層状珪酸塩基板を浸食しない方法であれば特に制限されない。
このような複素環状高分子として、具体的には、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるものを挙げることができる。下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位からなる複素環状高分子としては、固有粘度が0.5〜8.5dlg−1であるものが好ましく、3.0〜6.0dlg−1であるものがより好ましく、3.5〜5.0dlg−1であるものがさらに好ましい。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラアミンは、o(オルト)−ニトロアニリンからヨウ素化,クロスカップリング,アミノ基の還元の3ステップの反応によって合成してもよいし、市販品を購入してもよい。
上記溶媒としては、上記出発材料及び生成する重合体を溶解し、重合を促進する触媒としての作用を有するものであれば特に制限されない。具体的には、ポリリン酸、ポリリン酸エステル、リン酸ジフェニルクレシル等や五酸化二リン等を溶解したメタンスルホン酸等を挙げることができる。
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンはm−クロロベンゼンから、ニトロ化、アミノ化およびニトロ基の還元の3ステップの反応によって合成し、四塩酸塩として単離してもよいし、市販品を購入してもよい。
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸は、ピレンから過マンガン酸カリウムによる酸化、次亜塩素酸ナトリウム溶液による酸化の2ステップの反応によって合成してもよいし、市販品を購入してもよい。
(式中、Ar1は下記官能基1又は官能基2を示し、Ar2は官能基3又は官能基4を示し、nは重合度を示す自然数である。ただし、Ar1が官能基2のときはAr2は官能基4ではない。)。
また、上記一般式で表わされる複素環状高分子において、Ar1が官能基2でAr2が官能基3である場合、複素環状高分子の固有粘度は0.5〜3.5dlg−1であることが好ましく、1.0〜3.5dlg−1であることがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1であることがさらに好ましい。
一般式(6)で表わされる重合体において、nは、重合体の固有粘度が0.5〜3.5dlg−1であることが好ましく、1.0〜3.5dlg−1であることがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1であることがさらに好ましい。
一般式(6)で表わされる重合体において、nは、重合体の固有粘度が0.5〜3.5dlg−1となる数であることが好ましく、1.0〜3.5dlg−1となる数であることがより好ましく、1.5〜3.0dlg−1となる数であることがさらに好ましい。
上記水としては、純水が好ましく、具体的には、RO膜分離水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
また、剥離時における純水の温度は5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜35℃がさらに好ましい。
剥離時間は特に制限されないが、通常、0.1〜10分間程度である。
具体的には、先ず、水面に浮遊した複素環状高分子薄膜の二つの辺に二本の棒状物をそれぞれ接触させ、複素環状高分子薄膜を付着させつつ徐々に二本の棒状物を引き上げることにより、棒状物間に薄膜フィルムを回収することができる。
また、水面に浮遊した複素環状高分子薄膜の一辺に一本の棒状物を接触させ、高分子薄膜を付着させつつ徐々に棒状物を引き上げることによっても、薄膜フィルムを回収することができる。
上記面方向の平均熱膨張係数の差が小さいほど後述する熱処理による黒鉛化時に皺が発生し難くなる。
炭素化処理時の焼成時間は、0.1〜100時間が好ましく、0.3〜10時間がより好ましく、0.5〜5時間がさらに好ましい。
上記炭素化処理は複数回行ってもよく、その場合は、炭素化処理に要する合計時間が上記炭素化処理時における焼成時間内にあることが適当である。
本発明の製造方法においては、上記温度で焼成することにより、グラファイトフィルムを好適に形成することができる。
本発明の製造方法において、グラファイト化処理工程における焼成雰囲気は、不活性雰囲気であり、例えば、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができ、特にアルゴン雰囲気が好ましい。
(複素環状高分子の作製)
Ar流通下、ポリリン酸(オルトリン酸換算濃度115%)100g中に、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとを10mmolづつ加え、200℃の温度条件下で72時間反応させた後、不純物を除去するために、メタンスルホン酸、ジメチルアセトアミド中で攪拌し、その後、200℃の温度条件下で12時間減圧乾燥することにより、固有粘度が4.1dlg―1のBNTCA−BPTA重合体を得た。
マイカ(LADO Research Industries社販売、厚さ0.127mm)の劈開面にアルバック機工(株)製真空蒸着装置(VPC−410)によりアモルファスカーボンを約100nm堆積させた。
次いで、アモルファスカーボン層に親水化処理を行うため、電子顕微鏡用親水化処理装置(JEOL社製、HDT−400)により、アモルファスカーボン層を60秒間処理した。アモルファスカーボン堆積面に、BNTCA−BPTA重合体0.6g/メタンスルホン酸50ml溶液を数滴滴下して、スピンコーター(ミカサ社製、MS―A100)を用い、1250rpmで30秒間成膜した。次に膜中の溶媒を除去するために、250℃で2時間熱処理を行った。BNTCA−BPTA重合体フィルムの膜厚は約250nmであった。このマイカ−アモルファスカーボン−BNTCA−BPTA重合体フィルムを純水に浸漬することにより、水面にBNTCA−BPTA重合体フィルムを剥離、浮上させた後、銅ワイヤですくい取り、110℃で1時間乾燥して自立薄膜フィルムを得た。
上記自立薄膜フィルムを2枚の黒鉛基板(東海カーボン(株)製、HK3)で挟み込み、シリコニット電気炉にて、Ar気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温した後、1時間保持して炭素化処理を施した。
その後、黒鉛抵抗炉にて、Ar気流中、室温から毎分5℃の割合で3000℃まで昇温した後、1時間保持して上記炭素化した重合体にグラファイト化処理を施すことにより、自立グラファイト薄膜フィルムを作製した。
得られた自立グラファイト薄膜フィルムのグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数および膜厚を表1に示す。
また、得られた自立グラファイト薄膜フィルムの走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6510LV)によるチャネリングコントラスト像を図1に示す。
実施例1において、剥離のため純水に浸漬した後、すくいとったBNTCA−BPTA重合体フィルムをグラファイトフィルム(パナソニック社製、厚さ25μm、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数0.92×10−6/K)に転写し、該グラファイトフィルムに転写した状態で、実施例1と同様にして、乾燥処理、炭化処理および黒鉛化処理を順次施してグラファイト薄膜を作製した。
得られたグラファイト薄膜のグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数、膜厚および得られたグラファイト薄膜フィルムと下地であるグラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける平均線熱膨張係数の差を表1に示す。
実施例1において、剥離のため純水に浸漬した後、すくいとったBNTCA−BPTA重合体フィルムをグラファイトシート(advanced ceramics社製HOPG、12mm×12mm×2mm、室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数0.92×10−6/K)に転写し、該グラファイトシートに転写した状態で、実施例1と同様にして、乾燥処理、炭化処理および黒鉛化処理を順次施してグラファイト薄膜を作製した。
得られたグラファイト薄膜のグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数、膜厚および得られたグラファイト薄膜と下地であるグラファイトシートの室温〜1500Kにおける平均熱膨張係数の差を表1に示す。
実施例1で作製した、固有粘度が4.1dlg―1であるBNTCA−BPTA重合体を0.3g秤量し、これをメタンスルホン酸7mlに投入して溶解液を作製した後、溶解液を内径60mmのシャーレに展開した。
このシャーレをマントルヒータ内に置いた500ml平底セパラブルフラスコ内に水平を保って静置した。セパラブルフラスコ内をロータリーポンプで減圧して真空雰囲気にした後、段階的に200℃まで加熱して脱溶媒することにより、厚さ50μmの重合体フィルムを作製した。
上記シャーレから重合体フィルムを剥離して所定の大きさに切断した後、シリコニット電気炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温し、1時間保持して重合体フィルムの炭素化を行った。その後、黒鉛抵抗炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で2800℃まで昇温し、1時間保持して上記炭素化した重合体フィルムの黒鉛化を行うことにより、グラファイトフィルムを得た。得られたグラファイトフィルムの厚さは22μmであった。
得られたグラファイトフィルムのグレインサイズ、皺の高さ、円盤状の剥れ個数および膜厚を表1に示す。
また、得られた自立グラファイトフィルムの走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6510LV)による顕微鏡写真を図2に示すとともに、図2において観察される円盤状の剥れを図3に示す(図3においては、図2で観察される各円盤状の剥れを太線で示した上で通し番号を付している)。
図2および図3に示す横1.3mm×縦1mmの観察範囲には、合計で143個の円盤状の剥れが存在しているため、1mm2あたり(0.01cm2あたり)110個の円盤状の剥れが存在していることが分かる。
比較例1と同様にして、固有粘度が4.1dlg―1であるBNTCA−BPTA重合体を0.3g秤量し、これをメタンスルホン酸7mlに投入して溶解液を作製した後、脱溶媒後における重合体フィルムの厚さが100nmになるように量を調節してフィルムを作製し、比較例1と同様にグラファイトフィルムの作製を試みたが、粒径が数μm〜数mmの粉末状のものしか得ることができず、フィルム状のものを得ることができなかった。
Claims (6)
- 層状珪酸塩基板の表面にカーボン層が形成されてなる基板上に複素環状高分子含有液を塗布した後、乾燥処理することによって複素環状高分子薄膜を作製し、
前記複素環状高分子薄膜を形成した基板を剥離液に浸漬することにより複素環状高分子薄膜を基板から剥離して薄膜フィルムを作製し、次いで、
得られた薄膜フィルムを不活性雰囲気下で焼成処理する
ことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。 - 前記複素環状高分子がベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマーまたは4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸−3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミン重合体である請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記層状珪酸塩基板表面のカーボン層が親水化処理されてなるものである請求項1または請求項2に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記剥離液が水である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 複素環状高分子薄膜を基板から剥離して、得られた薄膜フィルムをすくい取って炭素基板上に転写した後、前記熱処理を行う請求項1〜請求項4のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記炭素基板と該炭素基板上に形成されるグラファイトフィルムとの室温〜1500Kにおける面方向の平均線熱膨張係数の差の絶対値が0〜2×10−6/Kである請求項5に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
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