JP5850489B2 - SiC単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
溶液法は、黒鉛坩堝中でSi又はSi含有合金を融解し、その融液中に黒鉛坩堝もしくは炭化水素ガス供給によって気相からCを溶解させ、低温部に設置した単結晶基板上にSiC結晶層を溶液析出によって成長させる方法である。溶液法は気相法に比べ比較的熱平衡状態に近い条件で結晶成長が進行すると考えられることから、一般的には高品質な単結晶を得る方法としては好都合であることが知られている。上述の理由から、近年、溶液法によるSiC単結晶の成長方法について、成長速度や結晶品質を高める検討がなされている。
しかしながら、不純物元素の少ない高品質で、高い成長速度で結晶成長を実施するためには、Si及びCの2元系溶液を用い、かつ2000℃以上の高温下で成長することが望まれる。この場合、Si溶液の蒸発を防ぐために雰囲気ガスを加圧する方法がとられる。発明者らが実験を行ったところ、結晶成長温度2100℃、雰囲気ガス(He)0.95MPaの結晶成長条件において、気泡の巻き込みを抑制することはできなかった。
しかしながら、該特許文献2に記載の技術は、融液組成が限定されており、これ以外の融液組成を用いた場合には、SiC単結晶の溶液成長に対して汎用的に効果を発揮するとは限らない。
しかしながら、該特許文献3に記載の技術は、ボイド欠陥の完全な抑制は達成できておらず、且つ、溶液界面の面積(Ss)に対するSiC種結晶の表面積(Sc)の割合(Sc/Ss)を0.01〜0.13にする必要があることから、結晶の成長に用いる種結晶の直径よりも7〜100倍大きな直径の坩堝を用いなくてはならず、装置の大型化が必要であり、工業生産上は問題がある。また、不純物元素の少ない高品質で、高い成長速度で結晶成長を実施するためには、Si及びCの2元系溶液を用い、かつ2000℃以上の高温下の条件が望まれる。この場合、該特許文献3に記載の方法ではSi溶液の蒸発が顕著であり、2100℃を超える温度では実施が困難である。
本発明は、雰囲気ガスの種類、結晶成長条件(温度勾配・雰囲気ガス圧力など)の如何を問わず、溶液成長法で典型的に発生するボイド欠陥を大幅に抑制することが可能であるSiC単結晶の成長方法を提供することを目的とする。
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)Si及びCを含む溶液中に、SiCの種結晶を浸漬し、SiCを析出・成長させる溶液成長法によるSiC単結晶の製造方法であって、前記種結晶が上下可能な種結晶保持機構で保持され、該種結晶保持機構が、該種結晶の成長面法線ベクトル側に結晶成長できる空間を有し、かつ該種結晶の成長面法線ベクトルの向きと反対側の種結晶面を保持するとともに、該種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下に保持することを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
(2)坩堝とは独立した種結晶保持棒によって、前記種結晶の成長面法線ベクトルと前記溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下に保持された前記種結晶を、該坩堝内の溶液に浸漬してSiCを析出・成長させ、結晶成長終了時には該種結晶を該坩堝内溶液と切り離すことを特徴とする(1)に記載のSiC単結晶の製造方法。
(3)前記SiC単結晶の製造をガス雰囲気下で行い、該雰囲気ガスの圧力が、0.1MPa以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のSiC単結晶の製造方法。
(4)結晶成長温度が、1700℃以上、2400℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のSiC単結晶の製造方法。
(5)前記溶液中に遷移金属元素および/または希土類元素を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のSiC単結晶の製造方法。
本発明においては、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下となるように保持する。なお、これらのベクトル方向は図1で図示した通りである。
種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度は、90°以下(±90°以下)となるように保持するとボイド発生を低減することが可能であるが、結晶成長面内を均一な温度環境に保つことが必要な場合には、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を0°となるように保持することが好ましい。
ここで、図1では、黒鉛坩堝1は断熱材6で覆われ、この外側に高周波コイル7が設置されている。
なお、図1に示した種結晶保持機構の図は1例であり、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下となるように保持する方法としてはこの限りではない。
ここで、種結晶の成長面法線ベクトルが複数存在する場合は、種結晶から成長する結晶量が最も多い面の成長面法線ベクトル(例えば、円盤、六角形平板、四角形平板等の板状であれば、円盤平面、六角平面、四角形平面上の法線ベクトル)と溶液表面の法線ベクトルとのなす角度である。本発明においては、種結晶から成長する結晶量が最も多い面以外の部分からの結晶成長が少ない形状の種結晶を用いるのが好ましく、このため立方体よりも板状のものが好ましい。
なお、上下可能な種結晶保持機構、特に種結晶保持棒により、SiC単結晶成長終了後速やかに、溶液が固化してしまわない融点以上の温度状態で、成長した単結晶を溶液から取り出すことができる。SiC種結晶が溶液に浸漬された状態のまま、溶液が固化すると、熱膨張率の違いからSiC単結晶に割れが生じるなどの問題が発生する。このため、本発明の方法は、上記のように、SiC単結晶(基板)を保持する種結晶保持機構を用いて、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度が90°以下となるように種結晶のSiCからなる単結晶基板を接着又は機械的固定し、SiC単結晶成長後に種結晶保持機構、特に種結晶保持棒を上昇させることにより、溶液と種結晶を完全に切り離すことができる。
すなわち、Si及びCを含む溶液中に、SiCの種結晶を浸漬し、SiCを析出・成長させるにあたり、該種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下に保持して製造することで得られるSiC単結晶はボイド密度を1000個/cm3以下とすることができる。ボイド密度は、好ましくは100個/cm3以下、さらに好ましくは0〜10個/cm3である。これにより、ボイドの発生で問題とする直径1μm以上のボイドの発生は大幅に抑制できる。
すなわち、光学顕微鏡を用い、透過照明によって、結晶成長部分の厚み方向にすべて含んだ領域にてボイド数を計測する。ここで、ボイドは透過照明で黒丸点として観測されるので、容易に計測できる。また、光学可能顕微鏡観察の空間分解能は1μm程度であり、問題とする1μm以上の大きさのボイドは十分に検出できる。より具体的には、結晶成長部分の平面の2mm×2mmの領域で、結晶成長部分の全厚み(例えば結晶成長した厚みが100μmの場合であれば100μm)の領域を、顕微鏡観察してボイド数計測を行い、それを任意の場所で計6回繰り返し、1cm3当たりに換算してその平均値を求める。以後の実施例、比較例はこのようにして求めたものである。なお、ここで、透過照明で全厚みを観察できない厚みの場合は、厚み方向に分割して計測を繰り返すことで計測することができる。
実験では、黒鉛坩堝にSiを充填し、1Pa以下の減圧下で黒鉛坩堝及びSi原料を1100℃程度の温度に保持し、これらに吸着した吸着ガスを脱気した後、雰囲気ガスとしてArガスを0.95MPaの圧力になるように充填し、黒鉛坩堝の底面が1900℃になるように加熱し、Si原料を融解させた。黒鉛坩堝の内壁からSi溶液へCが飽和濃度まで十分に供給されるように、2時間保持した。その後、図1に例示した種結晶保持機構と同様な構造、または種結晶に穴をあけ、黒鉛製のねじなどによって機械的に固定する方法によって、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下に保持したSiC種結晶を溶液に浸漬し、12時間の浸漬時間が経過した後、種結晶保持機構を保持している種結晶保持棒を上昇させ、種結晶を溶液から引き揚げた。結晶成長中は種結晶保持棒と黒鉛坩堝を互いに逆方向に回転させた。
種結晶を種結晶保持棒の先端に、SiCからなる単結晶基板を接着又は機械的固定により、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°を超え、180°以下の範囲となるように種結晶を保持することとした以外は実施例1と同様にしてSiC単結晶を製造した。
なお、種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を0°、30°、60°、90°とした場合、ボイド密度は0〜10個/cm3であった。
溶液原料をSi0.77Ti0.23とし、Si−C−Ti溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてSiC単結晶を製造した。
溶液原料をSi0.6Cr0.4とし、Si−C−Cr溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてSiC単結晶を製造した。
2 SiC種結晶
3 種結晶保持機構
4 種結晶保持棒
5 溶液
6 断熱材
7 高周波コイル
Claims (5)
- Si及びCを含む溶液中に、SiCの種結晶を浸漬し、SiCを析出・成長させる溶液成長法によるSiC単結晶の製造方法であって、前記種結晶が上下可能な種結晶保持機構で保持され、該種結晶保持機構が、該種結晶の成長面法線ベクトル側に結晶成長できる空間を有し、かつ該種結晶の成長面法線ベクトルの向きと反対側の種結晶面を保持するとともに、該種結晶の成長面法線ベクトルと溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下に保持することを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
- 坩堝とは独立した種結晶保持棒によって、前記種結晶の成長面法線ベクトルと前記溶液表面の法線ベクトルとのなす角度を90°以下に保持された前記種結晶を、該坩堝内の溶液に浸漬してSiCを析出・成長させ、結晶成長終了時には該種結晶を該坩堝内溶液と切り離すことを特徴とする請求項1に記載のSiC単結晶の製造方法。
- 前記SiC単結晶の製造をガス雰囲気下で行い、該雰囲気ガスの圧力が、0.1MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のSiC単結晶の製造方法。
- 結晶成長温度が、1700℃以上、2400℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のSiC単結晶の製造方法。
- 前記溶液中に遷移金属元素および/または希土類元素を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のSiC単結晶の製造方法。
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