JP5218348B2 - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子デバイス、光学デバイス等の材料として特に好適な炭化珪素単結晶の製造方法に関する。本発明の方法は良質なウェハ状(膜状)の炭化珪素単結晶の製造が可能である。
炭化珪素(SiC)は、広いバンドギャップ、大きな熱伝導率、低い誘電率などの材料特性を有することから、動作損失の少ない電力制御用パワーデバイス材料、高耐圧な高周波デバイス材料、高温の環境で使用される耐環境デバイス材料、耐放射線デバイス材料、など広い範囲への応用が期待されている。
SiCは結晶多形(ポリタイプ)を呈する。結晶多形とは、化学量論的には同じ組成でありながら原子の積層様式がc軸方向にのみ異なる多くの結晶構造を取りうる現象である。SiCの代表的な結晶多形としては、6H型、4H型、3C型などがあり、用途に応じて適当な結晶形が選択される。
いずれの応用においても、欠陥や多形の混入が少ない高品質なウエハ状SiC単結晶が必要である。結晶品質に優れたSiC単結晶を得ることができる方法として溶液成長法がある。溶液成長法では、SiまたはSi含有合金の融液中に炭素を溶解させ、溶媒となる該融液中にSiCが飽和濃度付近まで溶解している高温のSiC溶液を調製する。この高温のSiC溶液に種結晶を浸漬し、少なくとも種結晶近傍において溶液を過冷却状態にすることによってSiCの過飽和状態を作り出し、SiC単結晶を種結晶上に成長させる。
成長したSiC単結晶は、厚いものはスライスし研磨加工を施すことによりウエハ状の製品となる。また、成長膜厚を薄く、かつ表面を平坦に制御したいわゆるエピタキシャル成長膜は、直ちにデバイス構造形成可能なエピタキシャルウエハと呼ばれる製品となる。
溶液成長法で得られる単結晶の品質を左右するパラメータとして、結晶の成長形態の安定性、すなわち成長表面の平坦性が挙げられる。平坦な成長表面を実現するには、結晶成長が2次元的な層状成長の繰り返しによって進行することが望ましい。層状成長の継続により緻密で平坦な高品質の単結晶が得られる。
これに対し、2次元的な層状成長でなく、3次元的な塊状の結晶成長が支配的になると、成長速度が場所によって著しく異なるため、凹凸の多い、平坦性の悪い成長表面形態となる。表面の凹凸が大きいと、成長中にしばしば溶液が結晶中に取り込まれ、単結晶中の介在物となる。これらの介在物は、微細なクラックの発生源となり、またマイクロパイプの生成起点ともなるので、ウエハの結晶性および品質を著しく劣化させる。また、結晶表面の凹凸が大きく、平坦性が損なわれると.エピタキシャルウエハとして直ちにデバイス作製工程で使用することができなくなり、精密な研磨をするなど余分な工程が必要となって、経済上不利である。
SiCの結晶成長に関して上記成長形態の安定性の制御を検討した先行技術文献として下記の文献を挙げることができる。
特開2006−240968 特開2008−303125
W. L. Sarney, M.C. Wood, L. Salamanca-Riba, P. Zhou and M. Spencer , Journal of Applied Physics, vol. 91, p. 668 (2002)
特許文献1によれば、昇華法(昇華再結晶法ともいう)によりSiC単結晶を種結晶としてSiCを成長させる場合に、結晶育成炉内に酸素を導入することで、多形混入が少なくマイクロパイプなどの結晶欠陥の少ない高品質の結晶が得られるとしている。
現在市販されているSiC単結晶ウエハは主に昇華法により製造されている。昇華法では、原料のSiC粉末を坩堝内で2200〜2500℃の高温に加熱して昇華させ、坩堝内の低温部に配置した種結晶上にSiCの単結晶を再結晶化させる。しかし、昇華法で成長させたSiC単結晶は、種結晶から引き継がれる転位やマイクロパイプ欠陥を含み、さらに結晶成長中に発生したと考えられる多数の転位も存在するので、前述した溶液成長法に比べて結晶品質は劣る。
特許文献2には、SiとTiとの融液を用いた溶液成長法によりSiCを成長させる際に、SnまたはGeを添加することによって、Sn、Geのサーファクタント効果により平坦な成長表面を有するSiC単結晶が育成できることが記載されている。
非特許文献1によれば、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法により、Si基板上に3C多形のSiCを結晶成長させる際に、Geを微量添加することでGeが結晶成長の潤滑材として作用し、2次元的な層状成長を促進し、かつSiC結晶中に侵入することで3C多形を安定化させSiC結晶の品質を改善できるとしている。
いずれの方法も結晶成長中に異種元素を添加するという比較的簡便な方法でSiC結晶の結晶性を向上させている点では有利である。しかし、特許文献1に記載の方法は昇華法のみに、非特許文献1に記載の方法はMOCVD法のみにそれぞれ適用できる方法であり、溶液成長法に直ちに応用できるものではない。特許文献2は溶液成長法に関する発明を開示するが、手法が溶液成分の制御に頼り、使用可能な元素がTi、Sn、Geに限定されていて、汎用性に乏しいという難点がある。
本発明は、スケールアップ可能な実用的な結晶育成装置を用いて、大気圧下で、発光デバイスや電子デバイス用基板として好適なSiC単結晶基板(ウエハ)の製造を安定して行うことを可能にする技術を提供することを課題とする。
別の課題は、使用可能な元素を特定することがなく、高品質なSiC単結晶ウェハの製造を可能にする、汎用性の高いSiC単結晶の製造方法を提供することである。
本発明者らは、SiC単結晶を育成する原料溶液に酸化物を添加するか、または原料溶液に酸素を添加することによって、原料溶液に溶存酸素を含有させると、結晶成長形態が安定化し、成長表面が著しく平坦化されることを見出した。その結果、従来技術では実現し得なかった高品位のSiC単結晶を安定して成長させることが可能となる。この手法は、原料融液を構成する元素の種類に関係なく有効である。
本発明は、SiまたはSiと他の金属との合金からなる融液にCが溶解している原料溶液に結晶成長用基板を浸漬し、少なくとも前記基板の近傍の溶液を過飽和状態とすることによって前記基板上にSiC単結晶を成長させるSiC単結晶の製造方法において、前記原料溶液が融液材料および/またはガスから供給された溶存酸素を含有することを特徴とするSiC単結晶の製造方法である。それにより、平坦性や結晶性に優れた高品質のSiC単結晶を安定して得ることができる。
「溶存酸素」とは、特定の原子と化合物(例、酸化物)を形成しているのではなく、原料溶液(これはSiと場合により他の金属との高温の融液中にCが溶解している高温融液状態)中で移動・拡散を主とする複雑な挙動を示す原子状の酸素を意味する。
原料溶液への酸素の供給は、下記(1)〜(3)のいずれか少なくとも1つの手法により行うことができる:
(1)前記融液の材料が少なくとも1種の酸化物を含む、
(2)酸素を含む不活性ガス雰囲気下で結晶成長を行う、および
(3)酸素を含む不活性ガスを原料溶液に吹き込みながら結晶成長を行う。
(1)の酸化物を用いる手法では、融液材料が融解する際に添加された酸化物が融液中に溶解するので、そこにさらにCを溶解させた得られた原料溶液は溶存酸素を含有することになる。
前記(1)〜(3)の手法により原料溶液中に添加された酸素の一部は、溶液の成分元素と反応して、放射により低温となる溶液表面では酸化物を形成し、或いは溶液中から雰囲気中に散逸するものがあるが、少なくとも一部は溶液中に留まって溶存酸素となる。この溶存酸素がSiC単結晶の成長を安定化させるメカニズムは完全には解明されていないが、現時点では次のように推測される。
溶存酸素は、結晶成長開始時において結晶成長用基板に吸着し、また結晶成長中においては成長途上にある結晶表面に吸着することにより、該表面の溶液による濡れ性を著しく改善する。その結果、溶液からのエピタキシャルなSiC成長が安定的に持続し、成長表面の平坦性が保たれ、凹凸部での介在物の発生やそれに伴うSiC結晶の割れが抑制され、平坦性および結晶性に優れたSiC単結晶が得られる。
本発明で得られたSiC単結晶は、自立結晶とし基板として使用することも可能である。また、平坦性に優れていることから、昇華法で作製された種々の結晶成長用基板上に薄膜として堆積させることにより、いわゆるエピタキシャルウエハとして使用することも可能である。自立結晶育成用の種結晶やエピタキシャルウエハ作製用の基板としては、6H、4H、3Cなどあらゆる結晶多形のSiC結晶の使用が可能である。パワーデバイス用には4Hが、発光素子用には6Hが好ましい。用途によっては、サファイア、Si、SOI基板などを用いた、SiC単結晶のヘテロエピタキシャル成長も可能である。
本発明により、平坦かつ結晶性の高い高品質なSiC単結晶の育成を行うことが可能となる。その結果、電子デバイスや発光素子応用に好適なSiC単結晶基板を安定して比較的安価に提供することができる。また、本発明の方法は、原料溶液の組成に関係なく(即ち、原料溶液を構成する元素を限定せずに)実施可能であるので、汎用性が高い。
実施例で用いた結晶育成装置の略式断面図である。 図2aは比較例1、図2bは実施例1でそれぞれ得られたSiC単結晶の断面光学顕微鏡写真である。 実施例で用いた別の結晶育成装置の略式断面図である。
1:種結晶、2:シード軸、3:冷却ガス導入管、4:放射温度計、5:溶液、6:黒鉛坩堝、7:熱電対、8:坩堝軸、9:断熱材、10:高周波コイル、11:炉体、12:酸素含有ガス吹き込み用ノズル
本発明は、SiまたはSiと他の金属Mとの合金からなる融液にCが溶解している原料溶液に結晶成長用基板を浸漬し、少なくとも前記基板の近傍の溶液を過飽和状態とすることによって前記基板上にSiC単結晶を成長させるSiC単結晶の製造方法、即ち、溶液成長法によるSiC単結晶の製造方法に関する。
本発明によれば、前記原料溶液は融液材料および/またはガスから供給された溶存酸素を含有することを特徴とする。この原料溶液への酸素の供給は、下記(1)〜(3)のいずれか少なくとも1つの手法により行うことができる:
(1)前記融液の材料が少なくとも1種の酸化物を含む、
(2)酸素を含有させた不活性ガス雰囲気下で結晶成長を行う、および
(3)酸素を含有させた不活性ガスを原料溶液に吹き込みながら結晶成長を行う。
本発明の方法では、原料溶液に酸素を添加することによって、結晶成長用基板上に平坦性および結晶性に優れた高品質のSiC単結晶を安定して育成することが可能となる。これは、次のような作用によるのではないかと考えられる。
・融液原料に酸化物を添加するか、または酸素を含む不活性ガスを雰囲気ガスもしくは溶液原料の吹き込みガスとすることにより、O(酸素)が原料溶液中に含まれる。即ち、原料溶液が溶存酸素を含有するようになる。
・この原料溶液中の溶存酸素は、結晶成長開始時においては結晶成長用基板に吸着し、また結晶成長中においては成長途上にある結晶表面に吸着して、結晶成長面の溶液による濡れ性を著しく高める。
・高い濡れ性による効果として、溶液からのエピタキシャルなSiC成長が安定的に持続し、成長表面の平坦性が保たれ、凹凸部での介在物の発生やそれに伴うSiC結晶の割れが抑制される。
・その結果、平坦性および結晶性に優れたSiC単結晶が得られる。
本発明のSiC単結晶の製造方法は、本発明の特徴である、上述した原料溶液への酸素の供給以外のSiC単結晶成長条件については、通常の溶液成長法によるSiC単結晶の製造と同様に実施することができる。以下では、主に本発明の特徴である原料溶液の酸素の供給手法について説明する。
(1)融液原料に酸化物を添加して含有させる
本発明で使用するのに好ましい酸化物としては、酸化物としての安定性、溶液原料作成時の取り扱いの容易さなどの観点より、酸化ホウ素、酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化カルシウム、酸化バナジウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化モリブデン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化テルル、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステンが挙げられる。これらのうち、特に好ましいのは酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ホウ素、および酸化アルミニウムである。
これらの2種以上の酸化物が複合した複合酸化物や、これらの酸化物を2種以上混合した混合物を添加してもよい。また、上記酸化物の亜酸化物、過酸化物、あるいはそれらの亜酸化物、過酸化物の複合した物や、2種以上混合した混合物も使用可能である。
酸化物の好ましい添加量は、原料溶液の質量を1として、酸化物の質量(2種以上の場合は合計量)が1.0×10-5以上、0.2以下となる範囲である。この酸化物の添加量が1.0×10-5以上になると、酸素を結晶成長界面により多く存在させることができ、濡れ性の改善効果が高くなる。しかし、この添加量が0.2を超えると、溶液そのものの組成が大きく変わる結果、安定した成長が見られなくなる可能性がある。酸化物のより好ましい添加量は、原料溶液1質量部に対し、酸化物の質量部が1.0×10-4〜5.0×10-2の範囲内である。
(2)酸素(O)を含む不活性ガス雰囲気下での結晶成長
酸素(O)を含有させた不活性ガス雰囲気下でSiC単結晶の成長を行なうことによって原料溶液中に酸素を添加しても、原料溶液による成長表面の濡れ性の改善が可能である。不活性ガスとしてはHe、Ar、Ne、N2などが使用可能である。不活性ガスは2種以上のものを混合して使用しても良い。
この不活性ガスに酸素(O)を数パーセント程度以下含有させた雰囲気でSiC単結晶を成長させればよい。不活性ガス中に含有させる酸素(O)は、分子状酸素(O2)でよい。この場合の酸素の量は必要に応じて調節することができる。好ましい酸素含有量は、1.0×10-5〜1.0×10-1の範囲内である。酸素含有量が1.0×10-5以上になると、雰囲気から原料溶液中に溶解した溶存酸素が結晶成長界面に十分に存在し、濡れ性の改善効果が高くなる。一方、酸素含有量が1.0×10-1を超えると、酸素が黒鉛などの坩堝材を酸化により損耗させる可能性が高くなる。
分子状酸素(O2)に加えて、または代えて、一酸化炭素や二酸化炭素などの酸素を含む分子のガスを一種または2種以上混合して使用することもできる。
この酸素を含有する不活性ガスは、単結晶の成長中だけに炉内に存在させればよいが、その前から、例えば、融液材料を炉内に装入し、加熱して融液を調製し、その融液にCを溶解させて原料溶液を調製する際の最初から、または途中から、炉内雰囲気が酸素を含有することも可能である。但し、溶液調整の最初から酸素を導入した場合には、溶液原料表面が酸化して溶解しにくくなったり、溶液表面に厚い酸化膜が形成されて種結晶浸漬時に種結晶表面に付着することもあるので、種結晶浸漬後に酸素を含有する不活性ガスを導入することが好ましい。
(3)酸素を含むガスを溶液に吹き込みながらの結晶成長
酸素(O)を含有させた不活性ガスを直接溶液中に吹き込みながら、SiC単結晶を成長させることによっても、原料溶液中に酸素を添加し、成長表面の原料溶液による濡れ性を改善することができる。この場合のガスは上記(2)と同様でよい。
即ち、不活性ガスとしてはHe、Ar、Ne、N2などが使用可能である。吹込む不活性ガス中の好ましい酸素(分子状酸素)の含有量は、上記と同じ理由で1.0×10-5〜1.0×10-1の範囲内である。この場合も、不活性ガスは2種以上のものを混合して使用しても良い。また、分子状酸素(O2)に加えて、または代えて、一酸化炭素や二酸化炭素などの酸素を含む分子のガスを一種または2種以上混合して使用することもできる。
本発明の原料溶液は、Si金属またはSiと他の金属Mとの合金(Si−M合金)の融液中にCを溶解させることにより調製された、該融液を溶媒とするSiC溶液である。まず、Si金属またはSi−M合金の原料を適当な坩堝に入れて加熱し、融解させる。形成された融液にCを溶解させると原料溶液が得られる。坩堝の加熱は、坩堝材料に応じて高周波誘導加熱、通電加熱などから選択すればよい。
溶媒がSi−M合金である場合、金属Mの種類は、SiC(固相)と熱力学的に平衡状態となる液相(溶液)を形成できれば、特に制限されない。適当な金属Mの例としては、Ti、Mn、Cr、Co、V、Feなどが挙げられる。好ましいのはTiおよびMnであり、特にTiが好ましい。合金中の好ましい合金元素Mの原子比は、Si−M合金の組成をSi1-xxで表して、MがTiの場合は0.1≦x≦0.25、MがMnの場合は0.1≦x≦0.7である。
原料溶液に含まれるCは、坩堝を超高純度な黒鉛製坩堝、または超高純度なSiCが少なくとも内表層にコートされた坩堝とし、坩堝の溶解によって融液中に供給することができる。別の方法として、Siと一緒に固体として外部からCを添加するか、或いは溶媒であるSi金属またはSi−M合金の融液に、メタン、プロパンなどの炭化水素ガスを炉内に通じて融液表層にてガスの熱分解により生じた炭素を融液に溶解させてもよい。このようなCの融液への供給は、1つの手法のみを採用しても、複数の手法を併用してもよい。
上記方法でCの供給を続けて、溶媒であるSi金属またはSi合金の融液中のSiCの濃度がSiC(固相)と熱力学的に平衡状態近傍になるまで十分な量のCが融液中に溶解したら(即ち、SiC溶液の濃度が飽和濃度近くに達したら)、結晶保持具を用いて、結晶成長用基板をSiC溶液に浸漬させる。浸漬速度や浸漬深さは、坩堝の形状や結晶成長用基板の形状を考慮して適宜設定すればよい。
結晶成長を均質かつ促進するため、原料溶液を収容する坩堝および結晶保持具の一方または両方、好ましくは両方を、結晶成長中に回転させてもよい。坩堝と結晶保持具の両方を回転させる場合、両者の回転方向は同じでも反対向きでもよい。また、回転は、常時同じ速度で行うこともできるが、回転速度および/もしくは方向を周期的に変化させたり、回転を周期的に中断することもできる。
結晶成長用基板としては、6H、4H、3Cなどあらゆる結晶多形のSiC結晶の使用が可能である。パワーデバイス用には4Hが、発光素子用には6Hが好ましい。用途によっては、サファイア、Si、SOI基板などのSiC以外の基板の使用も可能である。即ち、SiC単結晶の成長は、ホモエピタキシャルとヘテロエピタキシャルのいずれも可能である。
原料溶液、即ち、SiC溶液の所定の位置に結晶成長用基板が浸漬されたら、SiC溶液における少なくとも結晶成長用基板の近傍を過冷却により過飽和状態として、結晶成長用基板上にSiC単結晶をエピタキシャル成長させる単結晶成長工程を行う。
結晶成長を行うために結晶成長用基板を過冷却させる冷却手段の手法は、特に限定されない。加熱手段の加熱方法を調整して、所定の領域の温度を他の領域よりも低下させるようにしてもよいし、冷却すべき領域を冷媒によって冷却してもよい。前者の場合には加熱手段における温度調整機構が冷却手段となり、後者の場合には冷媒を用いて冷却する機構が冷却手段となる。
結晶成長の駆動力となる過飽和状態を、上記のような融液中に温度差を設けることによって実現する方法の他に、結晶成長用基板を浸漬したSiC溶液全体を徐冷することによって過飽和状態を実現する方法を用いることもできる。
SiC単結晶成長中の坩堝周囲の雰囲気は、原料溶液調製用の加熱時も含めて、通常は不活性ガス雰囲気である。ただし、本発明の場合、前述したように不活性ガスは少量の酸素(これは分子状酸素(O2)ガスと、CO、CO2などの酸素含有化合物のガスのいずれでもよい)を含有しうる。酸素が原料溶液材料からのみ供給される場合は、雰囲気ガスは不活性ガスとすることが好ましい。
以下に本発明を具体的に説明する目的で実施例を示すが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。実施例および比較例中の高純度の意味は純度99.9%以上である。
[実施例1]
SiC単結晶の育成は、図1に示す装置(結晶育成炉)を用いて行なった。
本装置では、水冷した炉体11の中に、6kHzの高周波を用いて加熱することができる加熱用の高周波水冷銅コイル10が設置されている。このコイル内には円筒状の断熱材9が挿入され、さらにその中に溶液を保持する黒鉛坩堝6が、それを支持する坩堝軸8上に固定されている。結晶成長用基板1は、中空の黒鉛製シード軸(結晶保持具)2の下端部に固定され、溶液中に浸漬される。シード軸内部には結晶成長用基板1の背面を冷却するための不活性ガスを導入する管3が軸対称に挿入されている。通常、He、Arなどの不活性ガスを数リットル毎分噴出させることで結晶成長用基板1(以下、種結晶ともいう)を冷却し、その近傍の原料溶液を過冷却状態とし、過飽和状態を創出し、SiC単結晶の成長を行なう。種結晶の背面は放射温度計4により管3を介して常時測温されており、ガス導入による温度低下を正確に把握することが可能である。
本例では、内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に原料として高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入し、さらに酸化物として高純度のTiO2粉末を10g加えた。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱溶解し、溶液とした。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定・制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後、さらに1時間等温保持して原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1(結晶成長用基板)を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。次に冷却管3にArガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下した。この状態でSiC単結晶を3時間成長させた。成長は1気圧のHe雰囲気中で行なった。こうして平均厚み100μmのSiC単結晶が得られた。
[比較例1]
比較として、原料にTiO2を添加しないことを除いて、上記実施例1と全く同じ条件でSiC単結晶の成長を行った。平均厚み80μmのSiC単結晶が得られた。
実施例1および比較例1で得られたSiC結晶をシード軸から取り外し、フッ化水素酸と硝酸の混合溶液で洗浄して、表面に残留・付着した溶液を完全に除去したのち、矩形状の形状に切り出した。その後、ダイヤモンド研磨液を用いて断面を鏡面となるまで研磨することで断面観察用の試料を作成した。観察は光学顕微鏡を用いて行なった。
図2は、比較例1(a)および実施例1(図2b)で得られた結晶の断面写真を示したものである。図2(a)に示した比較例1では、3次元成長により著しく凹凸の大きい表面形態となっていた。これに対し、図2(b)に示した実施例1では、2次元層状での成長により、平坦な結晶が得られていることがわかる。
[実施例2]
実施例1と同様の装置を使用し、内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に、高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入し、さらに酸化物として高純度のSiO 2 粉末を20g加えた。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱融解させて融液とした。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定、制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後、さらに1時間等温保持して原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1(結晶成長用基板)を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。次に冷却管3にArガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下した。この状態でSiC単結晶を3時間成長させた。成長は1気圧のHe雰囲気中で行なった。平均厚み95μmのSiC単結晶が得られた。
SiO2を添加しないことを除いては実施例2とまったく同じ条件でのSiCの成長は比較例1に示されている。この場合は、上述したように3次元成長により著しく凹凸の大きい表面形態となっているのに対し、SiO2を添加した実施例2では、実施例1と同様に、2次元層状での成長により平坦な結晶が得られたことを顕微鏡観察で確認した。
[実施例3]
実施例1と同様な成長装置を用い、内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入し、さらに高純度のCr 2 3 粉末を30g加えた。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱融解させて融液とした。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定、制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後、さらに1時間等温保持して原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。次に冷却管3にArガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下した。この状態でSiC単結晶を3時間成長させた。成長は1気圧のHe雰囲気中で行なった。平均厚み105μmのSiC単結晶が得られた。
Cr23を添加しないことを除いては実施例2とまったく同じ条件でのSiCの成長は比較例1に示されている。この場合は、上述したように3次元成長により著しく凹凸の大きい表面形態となっているのに対し、Cr23を添加した実施例3では、実施例1と同様に、2次元層状での成長により平坦な結晶が得られたことを顕微鏡観察で確認した。
[実施例4]
実施例1と同様の成長装置を用い、内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入し、さらに高純度のTiO2粉末を50mg、100mg、1g、10g、100g、200g、250gと量を変えて加えた7種類の融液原料を調製した。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱融解させて融液を得た。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定、制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後、さらに1時間等温保持して原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。次に冷却管3にArガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下した。この状態でSiC単結晶を3時間成長させた。平均厚み90〜110μmのSiC単結晶が得られた。
得られた結晶をシード軸から取り外しフッ化水素酸と硝酸の混合溶液で洗浄し表面に残留・付着した溶液を完全に除去したのち、矩形状の形状に切り出した。その後、ダイヤモンド研磨液を用いて断面を鏡面となるまで研磨することで断面観察用の試料を作成した。観察は光学顕微鏡を用いて行なった。
また、研磨した試料につき、(0001)回折を用いたX線ロッキングカーブ測定を実施し、半価幅が50arcsec以下のものを効果ありとし、半価幅が50arcsecを超えるものを効果なしとして、結晶性を評価した。結晶表面の平坦性が低いと介在物などの混入を招き格子欠陥を発生させることから、結果的に結晶内部の結晶性も劣化させるので、ロッキングカーブの半価幅で結晶性の評価が可能である。表1に評価結果を比較例Iの結果と併せて示す。
表1に示すように、TiO2の添加量を変化させても、高品質の平坦なSiC単結晶を安定して成長させることができた。一方、TiO2を添加しない比較例1では、半価幅が68arcsecと非常に大きく、結晶性に劣っていた。これは、図2(a)の顕微鏡観察結果とも一致する。
[実施例5]
図1に示す装置を用いて、結晶育成中の雰囲気ガスを、5%の分子状酸素を含むAr−酸素混合ガス雰囲気とし、融液材料には酸化物を添加せずに、次に述べるようにSiC単結晶成長を行なった。
内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に、高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入した。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱融解させて融液を得た。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定、制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後、さらに1時間等温保持して原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。炉内雰囲気は、結晶育成開始までは常圧のHeガス雰囲気とした。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。
次に、冷却管3に分子状酸素を5%含むAr−酸素混合ガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下した。このAr−酸素混合ガスは、種結晶治具の上部に開いた穴を通って融液上部の空間に流入するため、育成装置内の雰囲気ガスは、酸素を含有するArガスに次第に置換された。この状態(即ち、雰囲気ガスが少量の酸素を含有し、融液が雰囲気ガスから溶け込んだ溶存酸素を含有する状態)でSiC単結晶を3時間成長させた。平均厚み140μmのSiC単結晶が得られた。
比較として、結晶育成時の雰囲気ガスを、酸素を含まないArガスとしたことを除き、実施例5と同じ条件でSiC単結晶の成長を行った実験は比較例1に示されている。この場合は、上述したように3次元成長により著しく凹凸の大きい表面形態となっているのに対し、雰囲気ガスに酸素を含有させることによって原料溶液中に溶存酸素を含有させた実施例5でも、実施例1と同様に、2次元層状での成長により平坦な結晶が得られたことを顕微鏡観察で確認した。
[実施例6]
図1に示す装置を用いて、結晶育成中の雰囲気ガスを、分子状酸素を5%含むHe−酸素の混合ガス雰囲気とし、次のようにSiC単結晶成長を行なった。
内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に、高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入した。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱融解させて融液を得た。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定、制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後さらに1時間等温保持し原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。炉内雰囲気は結晶育成開始までは常圧のHeガス雰囲気とした。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。次に、冷却管3に酸素を5%含むHe−酸素混合ガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下し、炉内雰囲気は、実施例5に述べたのと同様の理由で、酸素含有Heガスに次第に置換された。この状態(即ち、雰囲気ガスが少量の酸素を含有し、融液が雰囲気ガスから溶け込んだ溶存酸素を含有する状態)でSiC単結晶を3時間成長させた。平均厚み130μmのSiC単結晶が得られた。
[比較例2]
比較として、結晶育成時の雰囲気ガスを、酸素ガスを含まないHeガスとしたことを除き、実施例6と同じ条件でSiC単結晶の成長を行った。平均厚み105μmのSiC単結晶が得られた。
比較例2では、比較例1と同様に、3次元成長により著しく凹凸の大きい表面形態となっているのに対し、不活性雰囲気ガス(He)に酸素を含有させた実施例6では、実施例1に示したのと同様の2次元層状での成長により平坦な結晶が得られたことを顕微鏡観察で確認した。
[実施例7]
図3に示す装置を用いて、図3に示すように黒鉛製のノズルを介して、ルツボ中の原料溶液に酸素を5%含むAr−酸素の混合ガスを吹き込みながら、融液材料には酸化物を添加せずに、次のようにSiC単結晶成長を行なった。
内径100mmの高純度黒鉛坩堝中に高純度Siを490g、高純度Tiを250g、Crを330g装入した。この原料の入った坩堝を結晶育成炉内に装填し、高周波加熱により加熱融解させて融液を得た。溶解温度は坩堝底に装着した熱電対7により1650℃に設定、制御し、室温から2時間で設定温度まで加熱昇温させた。設定温度に到達後、さらに1時間等温保持して原料を完全に融解させると同時に、坩堝からSiC単結晶成長に十分な量のCを溶解させてSiC溶液を得た。
その後、2インチ径のSiC単結晶からなる種結晶1を下部先端に固定したシード軸を、1mm/分の速度でゆっくりと溶液中に下降させた。その後、内径5mm、外径8mmの黒鉛ノズル12から、酸素を5%含むAr−酸素混合ガスを用いて、0.5L/minの流速で溶液中への吹き込みを開始し、結晶成長終了まで継続した。種結晶の位置は、溶液表面から5mm下とした。種結晶が溶液表面から5mm下の位置に到達してから、種結晶表面の汚れなどを溶解除去するために5分間保持した。この時、種結晶背面部分の温度は熱電対7による設定温度より100℃程度高い約1750℃であった。次に,冷却管3にも酸素を5%含むAr−酸素混合ガスを5リットル/minの流量でシード軸上部から流入させて、種結晶背面に噴出させた。このガス冷却により種結晶背面温度は1720℃まで低下した。この状態でSiC単結晶を3時間成長させた。成長中の装置内の雰囲気は1気圧に保った酸素−Arの混合ガスとした。平均厚み120μmのSiC単結晶が得られた。
原料溶液へのガス吹込みを行なわず、成長中の装置内の雰囲気をArガスとする(冷却管からのガスにより供給)以外は実施例7と同じ条件でのSiC単結晶の成長実験は比較例1に示されている。比較例1では上述したように3次元成長により著しく凹凸の大きい表面形態となっているのに対し、実施例7では、実施例1と同様に2次元層状での成長により平坦な結晶が得られた。

Claims (1)

  1. SiまたはSiとM(MはSi以外の1種以上の金属)との合金からなる融液にCが溶解している原料溶液にシード軸に固定された結晶成長用基板を浸漬し、少なくとも前記基板の近傍の溶液を過飽和状態とすることによって前記基板上にSiC単結晶を成長させるSiC単結晶の製造方法であって、
    前記原料溶液が融液材料および/またはガスから供給された溶存酸素を含有し、
    前記原料溶液への酸素の供給が下記(1)〜(3)のいずれか少なくとも1つの手法により行われ:
    (1)前記融液材料が少なくとも1種の酸化物を含む、
    (2)酸素を含有させた不活性ガス雰囲気下で結晶成長を行う、および
    (3)酸素を含有させた不活性ガスを原料溶液に吹き込みながら結晶成長を行う、
    前記(1)により酸素の供給がなされる場合、前記酸化物が、酸化スカンジウム、酸化ホウ素、酸化チタニウム、酸化ケイ素、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化カルシウム、酸化バナジウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ニオビウム、酸化セレン、酸化モリブデン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化テルル、酸化ハフニウム、酸化タンタル及び酸化タングステンから選ばれた少なくとも1種であり、前記酸化物の添加量が、前記原料溶液1質量部に対して1.0×10 -5 〜0.19質量部の範囲内である、
    ことを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
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