JP3719341B2 - SiC結晶の液相エピタキシャル成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温動作デバイス、パワーデバイス、耐放射線デバイス等の材料として期待されているSiC結晶の育成方法に係り、特に、デバイス動作不良の原因となるマイクロパイプ、ポリタイプの混在等の結晶欠陥が無く、結晶の電気的特性に大きく影響を与える残留不純物濃度も大幅に低減された高品質でかつ大型のSiC結晶を育成可能なSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワイドギャップ半導体であるSiC結晶は、エネルギーギャップが約3eVと大きい上に、化学結合力が強固であるため物理的、化学的に安定で、耐熱性、耐放射線性に優れた材料である。更に、p、n両伝導型の制御が可能であることやキャリアの移動度がSi結晶並に大きいこと等から、次世代送電システム、電車、電気自動車などや、航空、原子力、宇宙科学などの分野で要求される高耐圧パワーデバイス、高温動作デバイス、耐放射線デバイス等、従来におけるSi等の半導体材料ではその物性値から実現不可能であった過酷な環境下でも使用できる電子デバイスの材料として最も期待されている。
【0003】
ところで、SiCは常圧では融点を持たないため、バルク結晶の育成は非常に困難である。そして、SiC結晶の育成方法としては、SiO2 とコークスを高温で反応させるアチソン法が古くから知られている。このアチソン法では、研磨剤、耐火材等の一般工業用SiC結晶が製造されているが、偶発的に径が10mm程度の六角板状単結晶が得られる。しかし、このアチソン法では、単結晶の成長を制御することは不可能であるため、再現性が無く高純度で大型結晶を育成することはできない。
【0004】
他方、1960年代から研究されたレイリー法(昇華法)、すなわち、グラファイト製容器内において2000℃以上の高温でSiC粉末を昇華再結晶させる方法も、結晶核の発生を制御することが困難なため大型のSiC結晶を育成することは難しかった。
【0005】
このような技術的背景の下、容器内の低温部に平板結晶を設置しこの平板結晶を種結晶としてSiCの昇華ガスを再結晶化させる改良型レイリー法(昇華法)が1978年にロシアのYu.M.Tairov等によって提唱され、SiC結晶の大型化に向けて大きく進展した。
【0006】
現在、一般的に行われている改良型レイリー法は、図4(A)〜(B)に示すように円筒形のグラファイトからなる容器1内の一方に原料となるSiC粉末2を収容し、もう一方に種結晶3となる平板状のSiC単結晶を配置し、Ar等の不活性ガス雰囲気中で高周波誘導加熱コイルあるいは抵抗加熱ヒータ等の加熱手段(図示せず)によって容器1を2300〜2700K程度に加熱して行われている。
【0007】
そして、加熱によって原料SiC粉末から昇華した気体が容器1内で温度が最も低く設定されている種結晶3部に集まり、種結晶3上で結晶成長が行われ、種結晶3と同一結晶方位のSiCバルク結晶4が得られている。
【0008】
更に、大面積のSiC結晶を得るため、直径6インチ、8インチが既に実用化されているSi結晶を基板として適用し、CVD法、MBE法等の気相成長法により上記Si結晶基板上にSiC膜をエピタキシャル成長させる方法も研究されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記改良型レイリー法(昇華法)を適用した場合、研究レベルで直径50mm程度のSiC結晶は得られているが、現実的にある程度の再現性を持って得られる結晶のサイズは直径30mm程度であり、実用的なサイズである結晶径50mm以上の大型結晶を再現性よく育成することは困難であった。
【0010】
更に、改良型レイリー法を用いて育成されたSiC結晶には、マイクロパイプ、ポリタイプの混在など、デバイス特性に大きな影響を与え半導体基板として本質的に存在してはならない重大な結晶欠陥が存在する。そして、マイクロパイプは、電子デバイスにおいてリーク電流を発生させる原因となり、マイクロパイプが存在する領域は基板材料として使用することができない。ポリタイプは、ポリタイプが異なるとバンドギャップが異なるため、これ等ポリタイプが存在する領域もデバイス作製には適用することができない。
【0011】
加えて、改良型レイリー法で原料として通常用いられるSiC粉末は上述したアチソン法で合成されたものが一般的であり、SiC粉末の純度は高々98%程度である。このため、改良型レイリー法による育成中に、原料のSiC粉末に含まれる不純物元素も昇華し結晶中に取り込まれてしまう。従って、この方法で育成されたSiC結晶に含まれる残留不純物濃度は1017〜1018/cm2 以上となる。そして、この高い残留不純物濃度は結晶の電気的特性に大きな影響を与えることから、改良型レイリー法では、電子デバイス用材料として所望の電気的特性を有する結晶を得ることは非常に困難となる。
【0012】
尚、原料粉末として、気相合成法などアチソン法以外の方法で合成された高純度品を適用することもできるが、原料粉末の生産性が悪いことから原料コストがアチソン法の100倍以上と高くなる問題があり、更に、アチソン法以外の方法で得られたSiC原料粉末でさえも純度は99.5%程度であり、半導体結晶を育成するための原料として期待される6N(99.9999%)あるいは7N(99.99999%)という値と比較すると十分な純度ではない。
【0013】
他方、Si結晶を基板として適用した気相成長法においては、上記マイクロパイプの結晶欠陥はみられないが、その成長速度がせいぜい2〜3μm/hr.と上記改良型レイリー法の数百〜数千μm/hr.に較べて生産性が非常に劣る問題点を有している。また、成長温度が1000〜1100℃程度で行われるために、低温安定型でエネルギーバンドギャップがSiCポリタイプの中で最も狭い3Cタイプの結晶しか得られていないのが現状である。
【0014】
加えて、SiとSiCとでは格子定数で約20%、熱膨張係数で約8%もの差があるため、得られるSiC膜に、Si基板との界面付近のボイド、さらにツイン、アンチフェーズドメイン等の結晶欠陥が含まれる場合があった。
【0015】
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、デバイス動作不良の原因となるマイクロパイプ、ポリタイプの混在等の結晶欠陥が無く、結晶の電気的特性に大きく影響を与える残留不純物濃度も大幅に低減された高品質でかつ大型のSiC結晶を育成可能なSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
SiC結晶の液相エピタキシャル成長方法を前提とし、
Si−Cの2成分系状態図で示される包晶点と共晶点間の組成を有するSi−C系融液を原料融液とし、SiC膜が形成されたSi基板をSiC結晶の成長基材にすると共に、成長容器内において成長基材の上記Si基板側と原料融液を接触させてSi基板とこれに隣接する結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去させた後、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係るSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法を前提とし、
成長容器内の上方側にSi基板側が露出するように成長基材を配置しかつ成長容器内の下方側にSi原料とグラファイトを配置する工程と、
成長容器内をSiの融点以上に加熱してSi−C系融液を得た後、成長容器の上下を反転させてSi−C系融液と成長基材のSi基板とを接触させると共に、Si−C系融液内の温度分布を成長基材配置側が最も低温となるように設定して成長基材のSi基板を溶解除去する工程と、
上記Si−C系融液の温度が所定の温度(1600℃以上)まで到達し、かつ、Si−C系融液内におけるC濃度が平衡状態に達した後、Si−C系融液内の温度分布を成長基材配置側が最も高温となるように設定して成長基材の結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去する工程と、
結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去した後、上記成長基材側温度を降下させてSi−C系融液内において成長基材配置側が最も低温となるようにSi−C系融液内の温度分布を変更し、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させる工程、
の各工程を具備することを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、
SiC結晶の液相エピタキシャル成長方法において、
Si−Cの2成分系状態図で示される包晶点と共晶点間の組成を有するSi−C系融液を原料融液とし、SiC膜が形成されたSi基板をSiC結晶の成長基材にすると共に、成長容器内において成長基材の上記Si基板を融解除去してSiC膜を露出させた後、成長基材の上記SiC膜と原料融液を接触させて結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去し、かつ、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項3記載の発明に係るSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法を前提とし、
成長容器内の上方側にSi基板側が露出するように成長基材を配置しかつ成長容器内の下方側にSi原料とグラファイトを配置する工程と、
成長容器内をSiの融点以上に加熱し成長基材のSi基板を融解除去してSiC膜を露出させると共にSi−C系融液を得る工程と、
上記Si−C系融液の温度が所定の温度(1600℃以上)まで到達し、かつ、Si−C系融液内におけるC濃度が平衡状態に達した後、成長容器の上下を反転させてSi−C系融液と成長基材のSiC膜とを接触させると共に、Si−C系融液内の温度分布を成長基材配置側が最も高温となるように設定して結晶性に劣る上記SiC膜の一部を溶解除去する工程と、
結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去した後、上記成長基材側温度を降下させてSi−C系融液内において成長基材配置側が最も低温となるようにSi−C系融液内の温度分布を変更し、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させる工程、
の各工程を具備することを特徴とする。
【0018】
そして、請求項1〜4記載の発明に係るSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法によれば、
Si−Cの2成分系状態図で示される包晶点と共晶点間の組成を有するSi−C系融液を原料融液とし、SiC膜が形成されたSi基板をSiC結晶の成長基材にすると共に、成長容器内においてSi基板とこれに隣接した結晶性に劣るSiC膜の一部を融解若しくは溶解除去して得られた結晶性良好なSiC膜を種結晶としこのSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させているため、従来より大型で、かつ、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ないSiC結晶を簡便に得ることが可能となる。
【0019】
また、Si基板が除去された結晶性良好なSiC膜を種結晶としているため、Si−C系融液の成長温度をSiの融点より高い1600℃以上に設定できることから、電子デバイス用材料として必要とされている4H(六方晶系)あるいは6H(六方晶系)の周期を持つポリタイプのSiC結晶を簡便かつ確実に得ることが可能となる。
【0020】
更に、成長原料としてSiC粉末を用いていないため上述した改良型レイリー法(昇華法)で得られたSiC結晶よりも残留不純物濃度の低いSiC結晶を得ることができ、かつ、その成長速度も、成長温度やSi−C系融液内の温度勾配等に依存するが、数百μm/hr.以上とSi基板を用いた上述の気相成長法の百倍以上であり、高速でかつ再現性よくSiC結晶を得ることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図3は、常圧におけるSi−Cの2成分系状態図である。この2成分系状態図で示されるようにSi単体の融点は1414℃であるが、Si−Cの2成分系は2545±40℃で包晶点を、また、1404±5℃で共晶点を持つ。包晶点での組成は、Siが73at%、Cが27at%であり、共晶点での組成は、Siが99.25±0.5at%、Cが0.75±0.5at%である。
【0023】
これ等の包晶組成と共晶組成の間の組成を有するSi−C系融液、例えば、図3において始めに点Aの状態にある融液を徐冷すると、融液の温度がTとなり、液相線上の点Bに到達した後は、Si−C系融液はSiC結晶を晶出しながら組成を液相線に沿って変化させる。温度降下に伴ってSi−C系融液の組成が液相線に沿って変化しても、晶出する結晶は常にSiCである。この状態は、Si−C系融液の組成が共晶点に到達するまで続く。そして、共晶点温度よりも低温では、もはや液相は存在せずに共晶点に達するまでに晶出したSiCと共晶組成のSiとSiCの混合物から成る固相となる。
【0024】
上記過程において、包晶組成と共晶組成の間の組成を有するSi−C系融液がSiC結晶を晶出する反応を、種結晶基板上で行わせればエピタキシャル成長が起こり、種結晶基板上にSiC結晶を育成させることが可能となる。
【0025】
このとき、SiCの晶出反応を効率よく種結晶基板上で行わせるために、Si−C系融液内に基板側が最も低温となる温度勾配を設定する。晶出反応は、この温度勾配を保持したままでSi−C系融液全体の温度を降下させることで起こすことができるが、Si−C系融液内における最も高温部にC供給源となるグラファイトを配置しかつSi−C系融液内における最も低温部に種結晶基板を配置させると共に、基板側低温−C供給源側高温の上記Si−C系融液の温度分布を保持することでも晶出反応を起こすことが可能である。これは、高温部で平衡濃度となったSi−C系融液中のCが、融液中のC濃度の差による拡散で種結晶基板が設置されている低温部に達すると過飽和状態となり、基板部の温度で平衡状態に近付こうとするときにSiCを晶出し、最も低温に保たれている種結晶基板上でSiCのエピタキシャル成長が行われる(すなわち温度差を利用した晶出方法)。また、他の方法として、Si−C系融液内の温度分布は一定に保ったままで溶媒であるSiを蒸発させ、Si−C系融液内をC過剰の過飽和状態とすることでSiCの晶出反応を起こすこともできる。
【0026】
そして、これ等の中で、特に上記温度差を利用した晶出方法では、基板側低温−C供給源側高温のSi−C系融液の温度分布を保持する方法であることから、結晶育成中、常に温度が一定に保たれる上に、溶媒Siを蒸発させることなく成長が行われるため、温度変化によるポリタイプ変化等の結晶欠陥の発生を抑制できるだけでなくCの供給がなくなるまでSiCの成長を行うことが可能であり、十分な厚さのSiC結晶が得られる利点を有する。
【0027】
以下、SiC膜が形成されたSi基板を液相エピタキシャル成長の成長基材(すなわち種結晶基板)とし、上記温度差法によりSiC結晶を育成する方法について具体的に説明する。
【0028】
まず、Si基板11とSiC膜12から成る成長基材10について図1(A)に示すように成長容器20内の上方側に、そのSi基板11側が露出するように配置し、かつ、成長容器20の下方側に、溶融して溶媒となりかつSi−C系融液の原料となるSi多結晶体31と融液にCを供給する原料となるグラファイト32をそれぞれ配置する。
【0029】
次に、上記成長容器20を、Arガス等の雰囲気中で高周波誘導加熱法あるいは抵抗加熱法等によりSi単体の融点Tm 以上の温度に加熱して図1(B)に示すようにSi−C系融液30を得る。このとき、Si多結晶体31とグラファイト32の設置部は、Si単体の融点Tm 以上の温度(例えば、図3のT)に昇温されるが、成長基材10の設置部は、Si基板11が融解しないようにSi単体の融点Tm を越えないように調整することが必要である。
【0030】
次に、図1(C)に示すように成長容器20の上下を反転させ、Si−C系融液30と成長基材10のSi基板11とを接触させてSi基板11を溶解除去する。但し、エピタキシャル成長時の種結晶となるSiC膜12までがSi−C系融液30中に溶解してしまわないように、Si−C系融液30内の温度分布を成長基材10配置側が最も低温となるように設定することを要する。
【0031】
次に、Si−C系融液30の温度が1600℃以上の所定の温度まで到達し、かつ、Si−C系融液30内におけるC濃度がほぼ平衡状態となるまで十分に放置したら、Si−C系融液30内の温度分布を成長基材10配置側が最も高温となるように成長基材10側の温度を上昇させる。この昇温処理により、成長基材10のSiC膜12が配置されている付近のC濃度が未飽和状態となり、不足分のCを補うために上記SiC膜12の一部が溶解する。この工程で、SiC膜12におけるSi基板11との界面付近にあった結晶性に劣るSiC膜が取り除かれる。このとき、この後のエピタキシャル成長工程に必要十分な厚さのSiC膜12が残留できるようにSiC膜12の溶解時間を適宜設定する。
【0032】
次に、結晶性に劣るSiC膜が取り除かれた後、上記成長基材10側の温度を降下させてSi−C系融液30内において成長基材10配置側が最も低温となるようにSi−C系融液30内の温度分布を変更する。
【0033】
この操作によって、Si−C系融液30内の温度分布は、成長基材10配置側が最も低温に、Cの供給源であるグラファイト32側が高温となり、上述した温度差法により成長基材10のSiC膜12上にエピタキシャル成長が起こり、SiC結晶を得ることができる。
【0034】
また、図2(A)〜(C)は、SiC膜が設けられたSi基板を液相エピタキシャル成長の成長基材(すなわち種結晶基板)とし、温度差法によりSiC結晶を育成する別の方法を示す工程説明図である。
【0035】
まず、Si基板11とSiC膜12から成る成長基材10について図2(A)に示すように成長容器20内の上方側に、そのSi基板11側が露出するように配置し、かつ、成長容器20の下方側に、溶融して溶媒となりかつSi−C系融液の原料となるSi多結晶体31と融液にCを供給する原料となるグラファイト32をそれぞれ配置する。
【0036】
次に、上記成長容器20内を、Arガス等の雰囲気中で高周波誘導加熱法あるいは抵抗加熱法等によりSi単体の融点Tm 以上の温度に加熱して図2(B)に示すようにSi−C系融液30を得ると共に、成長基材10のSi基板11を融解除去してSiC膜12を露出させる。
【0037】
次に、Si−C系融液30の温度が1600℃以上の所定の温度まで到達し、かつ、Si−C系融液30内におけるC濃度がほぼ平衡状態となるまで十分に放置したら、図2(C)に示すように成長容器20の上下を反転させ、Si−C系融液30と成長基材10のSiC膜12とを接触させると共に、Si−C系融液30内の温度分布を成長基材10配置側が最も高温となるように成長基材10側の温度を上昇させる。この昇温処理により、成長基材10のSiC膜12が配置されている付近のC濃度が未飽和状態となり、不足分のCを補うために上記SiC膜12の一部が溶解する。この工程で、SiC膜12におけるSi基板11との界面付近にあった結晶性に劣るSiC膜が取り除かれる。このとき、この後のエピタキシャル成長工程に必要十分な厚さのSiC膜12が残留できるようにSiC膜12の溶解時間を適宜設定する。
【0038】
次に、結晶性に劣るSiC膜が取り除かれた後、上記成長基材10側の温度を降下させてSi−C系融液30内において成長基材10配置側が最も低温となるようにSi−C系融液30内の温度分布を変更する。
【0039】
この操作によって、Si−C系融液30内の温度分布は、成長基材10配置側が最も低温に、Cの供給源であるグラファイト32側が高温となり、上述した温度差法により成長基材10のSiC膜12上にエピタキシャル成長が起こり、SiC結晶を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0041】
[実施例1]
まず、内壁をBNでコートしたグラファイト製の成長容器20内の上方側に、図1(A)に示すようにSi基板11とSiC膜12から成る成長基材10をそのSi基板11側が露出するように配置し、かつ、成長容器20内の下方側にSi多結晶体31とグラファイト32をそれぞれ配置した。
【0042】
次に、上記成長容器20を、Arガス雰囲気中で、Si多結晶体31とグラファイト32の設置部が1430℃、成長基材10の設置部が1400℃となるように高周波誘導加熱法により加熱し、図1(B)に示すようにグラファイト32が浮かぶSi−C系融液30を得た。
【0043】
次に、図1(C)に示すように成長容器20の上下を反転させ、Si−C系融液30と成長基材10のSi基板11とを接触させてSi基板11を溶解除去する。但し、エピタキシャル成長時の種結晶となるSiC膜12までがSi−C系融液30中に溶解してしまわないように、Si−C系融液30内の温度分布を成長基材10配置側が最も低温となるように設定した。
【0044】
次に、Si−C系融液30の温度が1600℃以上の所定の温度(1700℃)まで到達し、かつ、Si−C系融液30内におけるC濃度がほぼ平衡状態となるまで十分に放置したら、Si−C系融液30内の温度分布を成長基材10配置側が最も高温となるように成長基材10側の温度を1800℃まで上昇させる。この昇温処理により、成長基材10のSiC膜12が配置されている付近のC濃度が未飽和状態となり、不足分のCを補うために上記SiC膜12の一部が溶解する。この工程で、SiC膜12におけるSi基板11との界面付近にあった結晶性に劣るSiC膜が取り除かれる。このとき、この後のエピタキシャル成長工程に必要十分な厚さのSiC膜12が残留できるようにSiC膜12の溶解時間を1時間に設定した。
【0045】
これ等処理により結晶性に劣るSiC膜を取り除いた後、上記成長基材10側の温度を降下させてSi−C系融液30内において成長基材10配置側が最も低温となる1650℃に設定してSi−C系融液30内の温度分布を変更した。
【0046】
この操作によって、Si−C系融液30内の温度分布は、成長基材10配置側が最も低温に、Cの供給源であるグラファイト32側が高温となり、温度差法により成長基材10のSiC膜12上にエピタキシャル成長が起こり、SiC結晶を得ることができた。
【0047】
[実施例2]
まず、内壁をBNでコートしたグラファイト製の成長容器20内の上方側に、図2(A)に示すようにSi基板11とSiC膜12から成る成長基材10をそのSi基板11側が露出するように配置し、かつ、成長容器20内の下方側にSi多結晶体31とグラファイト32をそれぞれ配置した。
【0048】
次に、成長容器20内を、Arガス雰囲気中で高周波誘導加熱法によりSi単体の融点(1414℃)以上の温度(1500℃)に加熱して図2(B)に示すようにSi−C系融液30を得ると共に、成長基材10のSi基板11を融解除去してSiC膜12を露出させた。
【0049】
次に、Si−C系融液30の温度が1600℃以上の所定の温度(1700℃)まで到達し、かつ、Si−C系融液30内におけるC濃度がほぼ平衡状態となるまで十分に放置したら、図2(C)に示すように成長容器20の上下を反転させ、Si−C系融液30と成長基材10のSiC膜12とを接触させると共に、Si−C系融液30内の温度分布を成長基材10配置側が最も高温となるように成長基材10側の温度を1800℃まで上昇させる。この昇温処理により、成長基材10のSiC膜12が配置されている付近のC濃度が未飽和状態となり、不足分のCを補うために上記SiC膜12の一部が溶解する。この工程で、SiC膜12におけるSi基板11との界面付近にあった結晶性に劣るSiC膜が取り除かれる。このとき、この後のエピタキシャル成長工程に必要十分な厚さのSiC膜12が残留できるようにSiC膜12の溶解時間を1時間に設定した。
【0050】
これ等処理により結晶性に劣るSiC膜を取り除いた後、上記成長基材10側の温度を降下させてSi−C系融液30内において成長基材10配置側が最も低温となる1650℃に設定してSi−C系融液30内の温度分布を変更した。
【0051】
この操作によって、Si−C系融液30内の温度分布は、成長基材10配置側が最も低温に、Cの供給源であるグラファイト32側が高温となり、温度差法により成長基材10のSiC膜12上にエピタキシャル成長が起こり、SiC結晶を得ることができた。
【0052】
【発明の効果】
請求項1〜4記載の発明に係るSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法によれば、
Si−Cの2成分系状態図で示される包晶点と共晶点間の組成を有するSi−C系融液を原料融液とし、SiC膜が形成されたSi基板をSiC結晶の成長基材にすると共に、成長容器内においてSi基板とこれに隣接した結晶性に劣るSiC膜の一部を融解若しくは溶解除去して得られた結晶性良好なSiC膜を種結晶としこのSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させているため、従来より大型で、かつ、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少ないSiC結晶を簡便に得ることが可能となる。
【0053】
また、Si基板が除去された結晶性良好なSiC膜を種結晶としているため、Si−C系融液の成長温度をSiの融点より高い1600℃以上に設定できることから、電子デバイス用材料として必要とされている4H(六方晶系)あるいは6H(六方晶系)の周期を持つポリタイプのSiC結晶を簡便かつ確実に得ることが可能となる。
【0054】
更に、成長原料としてSiC粉末を用いていないため上述した改良型レイリー法(昇華法)で得られたSiC結晶よりも残留不純物濃度の低いSiC結晶を得ることができ、かつ、その成長速度も、成長温度やSi−C系融液内の温度勾配等に依存するが、数百μm/hr.以上とSi基板を用いた上述の気相成長法の百倍以上であり、高速でかつ再現性よくSiC結晶を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)〜(C)は実施例1に係る液相エピタキシャル成長方法の工程を示す説明図。
【図2】図2(A)〜(C)は実施例2に係る液相エピタキシャル成長方法の工程を示す説明図。
【図3】Si−Cの2成分系状態図。
【図4】図4(A)(B)は従来の改良型レイリー法(昇華法)の工程説明図。
【符号の説明】
10 成長基材
11 Si基板
12 SiC膜
20 成長容器
30 Si−C系融液
31 Si多結晶体
32 グラファイト
Claims (4)
- SiC結晶の液相エピタキシャル成長方法において、
Si−Cの2成分系状態図で示される包晶点と共晶点間の組成を有するSi−C系融液を原料融液とし、SiC膜が形成されたSi基板をSiC結晶の成長基材にすると共に、成長容器内において成長基材の上記Si基板側と原料融液を接触させてSi基板とこれに隣接する結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去させた後、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とするSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法。 - 成長容器内の上方側にSi基板側が露出するように成長基材を配置しかつ成長容器内の下方側にSi原料とグラファイトを配置する工程と、
成長容器内をSiの融点以上に加熱してSi−C系融液を得た後、成長容器の上下を反転させてSi−C系融液と成長基材のSi基板とを接触させると共に、Si−C系融液内の温度分布を成長基材配置側が最も低温となるように設定して成長基材のSi基板を溶解除去する工程と、
上記Si−C系融液の温度が所定の温度(1600℃以上)まで到達し、かつ、Si−C系融液内におけるC濃度が平衡状態に達した後、Si−C系融液内の温度分布を成長基材配置側が最も高温となるように設定して成長基材の結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去する工程と、
結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去した後、上記成長基材側温度を降下させてSi−C系融液内において成長基材配置側が最も低温となるようにSi−C系融液内の温度分布を変更し、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させる工程、
の各工程を具備することを特徴とする請求項1記載のSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法。 - SiC結晶の液相エピタキシャル成長方法において、
Si−Cの2成分系状態図で示される包晶点と共晶点間の組成を有するSi−C系融液を原料融液とし、SiC膜が形成されたSi基板をSiC結晶の成長基材にすると共に、成長容器内において成長基材の上記Si基板を融解除去してSiC膜を露出させた後、成長基材の上記SiC膜と原料融液を接触させて結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去し、かつ、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とするSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法。 - 成長容器内の上方側にSi基板側が露出するように成長基材を配置しかつ成長容器内の下方側にSi原料とグラファイトを配置する工程と、
成長容器内をSiの融点以上に加熱し成長基材のSi基板を融解除去してSiC膜を露出させると共にSi−C系融液を得る工程と、
上記Si−C系融液の温度が所定の温度(1600℃以上)まで到達し、かつ、Si−C系融液内におけるC濃度が平衡状態に達した後、成長容器の上下を反転させてSi−C系融液と成長基材のSiC膜とを接触させると共に、Si−C系融液内の温度分布を成長基材配置側が最も高温となるように設定して結晶性に劣る上記SiC膜の一部を溶解除去する工程と、
結晶性に劣るSiC膜の一部を溶解除去した後、上記成長基材側温度を降下させてSi−C系融液内において成長基材配置側が最も低温となるようにSi−C系融液内の温度分布を変更し、残留するSiC膜上にSiC結晶をエピタキシャル成長させる工程、
の各工程を具備することを特徴とする請求項3記載のSiC結晶の液相エピタキシャル成長方法。
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