JP2021073157A - グラファイト薄膜及び、その製造方法 - Google Patents

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Mutsuaki Murakami
睦明 村上
雄樹 川島
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雄樹 川島
修平 尾崎
Shuhei Ozaki
修平 尾崎
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Masamitsu Tachibana
正満 立花
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Abstract

【課題】本発明の課題は、配線材料等に有用な薄くかつ高い電気伝導度を有するグラファイト薄膜を提供すること、およびそのグラファイト薄膜を効率よく作製することにある。【解決手段】本発明の解決手段は、薄くかつ高い電気伝導度を有するグラファイト薄膜を作製する製造方法において、高品質のグラファイト膜をプラズマエッチングし、グラファイト薄膜を得るプラズマエッチング工程を含むグラファイト薄膜の製造方法とすることである。【選択図】図1

Description

本発明は、大面積で膜面方向の電気伝導度が高いグラファイト薄膜、およびプラズマエッチングを用いたそのグラファイト薄膜の製造方法に関する。
近年、カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボンが電気伝導体として研究開発されている。しかし、カーボンナノチューブには極めて細い短繊維状であるために、十分な低抵抗化や微細配線回路形成が困難であるという問題がある。また、グラフェンの回路形成の提案は金属触媒を用いた化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition、以下CVD法)によって多層グラフェンあるいはグラファイト薄膜を作製する事を基本プロセスとしている。しかし、CVD法では配線回路に必要な厚さの多層グラフェンあるいはグラファイト薄膜を作製しても高い電気伝導特性が得られ無い、と言う問題があった。
一般的に半導体の微細配線回路においては厚さ5nm〜1μm程度の配線を必要とするが、CVD法では結晶性が高く高電気伝導性であるグラフェン層は、金属触媒に接触した2〜3層であり、それより上層は結晶性が低い層となる。例えば、グラフェン4層の厚みは約1.4nmである。従って、CVD法では2nm以上の厚さを有し、かつ高電気伝導性を有する多層グラフェンあるいはグラファイト薄膜を製造することが難しかった。
一方、グラファイト膜の製造方法としては、特殊な高分子(例えば、芳香族ポリイミド)膜を焼成して製造する製造方法(以下高分子焼成法)がある。特許文献1には、ポリイミドフィルムを焼成することにより得られる配線材料に適したグラファイト膜が記載されている。比較的薄めのポリイミドフィルムを焼成することにより、薄いグラファイト膜を製造することはできるが、その製造方法ではグラファイト膜の厚さが500nm以下になると、高い電気伝導度やキャリア移動度の特性を実現させる事が難しくなり、特に50nm未満の場合には極めて困難であると言う課題があった。さらに、この様な厚さ領域の大面積グラファイト薄膜の作製が極めて困難であるという課題もあった。
例えば、特許文献1によれば、3000℃で処理した厚さ4.7μm、2.1μm、1.2μm、720nm、310nm、140nm、60nm、40nm、20nmのグラファイト薄膜のキャリア移動度は、それぞれ8200、9400、9800、10200、9800、9300、9100、8060、6520cm/V・secであると記載されている。すなわち、厚さが720nmの場合を最高値として、これより厚くなっても、薄くなってもキャリア移動度の値は小さくなる。特に、厚さ20nmの場合にはたとえ3200℃で処理しても8200cm/V・sec以上の特性を有するキャリア移動度特性は実現できない。キャリア移動度の特性は電気伝導度特性と直接つながっており、電気伝導度についても同じ議論が成り立つ。
この様に500nm以下の厚さの高電気伝導性や高キャリア移動度特性を有するグラファイトを作製する事は難しいが、さらにこの様な厚さの大面積グラファイト薄膜を作製する事も同様に難しい。それはグラファイト化反応の際に発生する膜の伸縮みによって膜が破損する事に由来する。例えば、厚さ500nmで100cm以上の面積を作製するのは難しく、50nm以下の厚さになると20cm以上の面積を作製する事も非常に難しくなる。また、500nm以下の厚さのグラファイト薄膜の場合には、作製してもその取り扱いが非常に難しく、その様な厚さのグラファイト薄膜を用いたデバイス作製プロセスの確立は困難であると言う課題もある。
なお、厚さに関して多層グラフェンとグラファイト薄膜を明確に区別する一般的な定義はないが、本発明においては、5nm未満の厚さを有するものを多層グラフェンとし、5nm以上の厚さを有するものをグラファイト薄膜と定義した。その理由は5nm未満の厚さではその物性値(キャリア移動度、電気伝導度の温度依存性)が明らかにグラファイトの物性値と異なり、5nm以上の厚さの物性値はほぼグラファイトの物性値と見なし得るためである。(非特許文献1,2)
WO2015/045641 K. Nagashio, et al., J. Appl. Phys., 49, 051304(2010) Y. Zhang, et al., Appl. Phys. Lett., 86, 073104(2005) H. Al-Mumen, et. al., Nano-Micro Lett., 6(2),116-124(2014) T. Feng, et. al., Materials Lett., 73, 187(2012) C-M. Seah., et. al., Carbon, 105, 496(2016)K.
本発明の課題は、膜厚が5nm以上、500nm未満で、大面積で高い電気伝導性を有するグラファイト薄膜を製造することである。
本発明は、以下のグラファイト薄膜に関する。
[1]厚さが、5nm以上、50nm未満であり、面積が20cm2以上であり、
平均結晶粒径が2.0μm以上であるグラファイト薄膜。
[2]厚さが、50nm以上、500nm未満であり、面積が100cm2以上であり、平均結晶粒径(ドメインサイズ)が2.0μm以上であるグラファイト薄膜。
[3]グラファイト薄膜の膜面方向の電気伝導度が、16000S/cm以上である[1]あるいは[2]に記載のグラファイト薄膜。
[4]グラファイト薄膜の平均結晶粒径が2.4μm以上3.5μm未満である[1]〜[3]のいずれかに記載のグラファイト薄膜。
また、本発明は、以下のグラファイト薄膜の製造方法に関する。
[5]グラファイト膜をプラズマエッチングしてグラファイト薄膜にするプラズマエッチング工程を含むグラファイト薄膜の製造方法であり、グラファイト薄膜の厚さが、5nm以上、500nm未満であるグラファイト薄膜の製造方法。
[6]グラファイト薄膜の面積が100mm2以上である[5]に記載のグラファイト薄膜の製造方法。
[7]グラファイト薄膜の膜面方向の電気伝導度が、16000S/cm以上である[5]あるいは[6]に記載のグラファイト薄膜の製造方法。
[8]グラファイト膜の厚さが、500nm以上、10μm未満である[5]〜[7]のいずれかに記載のグラファイト薄膜の製造方法。
[9]プラズマエッチングが、酸素プラズマ、空気プラズマ、水素プラズマおよびアルゴンプラズマからなる群より選ばれるプラズマを用いたプラズマエッチングである[5]〜[8]のいずれかに記載のグラファイト薄膜の製造方法。
本発明の製造方法により、膜面方向の高い電気伝導性を有する膜厚が5nm以上、500nm未満の大面積グラファイト薄膜が得られ、これは電気配線回路や熱制御・熱拡散材料として使用できる。また、厚さが50nm未満の大面積グラファイト薄膜はEUV露光に用いられるぺリクル膜、あるいは半導体の微細配線回路用材料として使用できる。
プラズマエッチング装置 (a)空気プラズマによってエッチングしたグラファイト膜(b)グラファイト膜の厚さの測定結果 空気プラズマによってエッチングしたグラファイト膜の表面写真 空気プラズマによってエッチングしたグラファイト膜のレーザーラマンスペクトル グラファイト薄膜の結晶粒径(ドメイン)の写真
本発明は、グラファイト膜をプラズマエッチングしてグラファイト薄膜にする工程を含むグラファイト薄膜および、その製造方法である。特に厚さが5nm以上、50nm以下で面積が20cm以上の高品質グラファイト薄膜、および厚さが50nmm以上、500nm未満で、面積が100cm以上の高品質グラファイト薄膜に関する。ここで高品質とは膜面方向の電気伝導度が16000S/cm以上であるグラファイト薄膜の事である。
先に述べた様に、高分子焼成法によって、厚さ500nm以下の高い電気伝導度を有する大面積グラファイト薄膜を作製する事は難しいが、500nm以上の厚さであれば大面積、高電気伝導度のグラファイト薄膜を作製する事は可能である。そこで、本発明においては、例えば、高分子焼成法で得られた厚さ500nm以上の大面積、高品質のグラファイト膜をプラズマエッチング処理する事により、その物性値を劣化させる事無く、厚さが5nm以上、500nm未満であり、大面積で、かつ高い電気伝導度を有するグラファイト薄膜を製造する。これによって厚さが5nm以上、50nm未満で膜面方向の電気伝導度が1600S/cm以上である、従来知られていなかった高い物性を有するグラファイト薄膜が得られる。
この様な高い物性の発現はグラファイト構造の観点からも明らかで、本手法によって平均結晶粒径(ドメインサイズ)が2.0μm以上であるようなグラファイト薄膜を作製する事が出来る。一般に、例えば500nm以下の厚さのグラファイト薄膜では3000℃の処理によって2.0μm以上のドメインサイズを持つグラファイト薄膜を作製する事は難しく、特に50nm以下の厚さのグラファイト薄膜においては極めて難しい。大きなドメインサイズを有するグラファイト薄膜はその強度も向上すると考えられ、薄膜の機械的強度向上にとっても好ましい。
高配向性・高品質のグラファイト薄膜では、プラズマエッチングによる薄層化は極めて均一に進行するために、大面積で均一な厚さを有する極めて薄いグラファイト薄膜を作製する事が出来る。この事は、高配向性グラファイトの層間は弱いファンデルワールス力で結合されているが、プラズマエッチングが層間剥離に近い状態で進行する事を意味しており、その為にプラズマエッチングが極めて均一に進行すると同時に、母材であるグラファイト膜の物性値が全く影響を受ける事はない。
さらに、プラズマエッチングを、酸素プラズマ、空気プラズマ、水素プラズマ、アルゴンプラズマのいずれかで行い、条件を選択すれば工業的なプロセスとして成立する速いエッチング速度での均一エッチングが可能である。中でも、酸素プラズマ、空気プラズマが好ましい。
先行技術として、CVD法で作製した(数層の)多層グラフェンを極めて弱い条件の酸素プラズマでエッチングし、単層グラフェンあるいは数層(2〜3層)のグラフェンを作製できる事がすでに報告されている(非特許文献3〜5)。この事は極めて弱い条件であればエッチングを均一に進行させる事が可能である事を意味している。しかしながら、本発明の様な速度でエッチングしても、均一なエッチングが可能である事は全く知られていなかった。例えば、実施例に示す様に700nm/hrの速度でエッチングしても平滑性は失われない。ちなみに、700nmの厚さは2000層以上のグラファイト層に相当し、700nm/hrのエッチング速度は極めて速いエッチング速度である。この様な発見に基づき、我々は5nm以上、500nm未満の厚さと高い電気伝導度を備えたグラファイト薄膜の作製技術を完成させた。
500nm以上の厚さのグラファイト膜は、比較的容易に作製できるため、本発明の手法では、例えば、厚さ500nm以上であり、膜面方向の電気伝導度が16000S/cm以上であるグラファイト膜をプラズマエッチング処理によって、薄層化し、5nm〜500nmの厚さのグラファイト薄膜が作製できる。
また、500nm以上の厚さのグラファイト膜では、3000℃以上のグラファイト化処理によって、2μm以上の大きさを有する平均結晶粒径(ドメインサイズ)を持つグラファイト膜を作製する事が出来る。プラズマエッチング処理によって、この様なドメインサイズを保ったまま薄層化が可能であるために、この様な大きさのドメインサイズを有する、5nm〜500nmの範囲の厚さのグラファイト薄膜を作製できる。
プラズマエッチングする前のグラファイト膜の厚さの上限は10μm未満である事が好ましい。これは、10μm以上の厚さでは高品質のグラファイト膜を作製する事が難しくなること、厚いグラファイト膜を用いる事でプラズマエッチングに長時間を必要とするためである。
本発明において、プラズマエッチングに用いるグラファイト膜は、その膜面方向に対しグラファイトのBasal面(以下a−b面)が配向している事が好ましい。グラファイト膜の配向性はa−b面方向の電気伝導度の値によって評価する事ができる。本発明に用いられるグラファイト膜の膜面方向における電気伝導度は16000S/cm以上が好ましく、18000S/cm以上がより好ましく、20000S/cm以上が特に好ましい。電気伝導度が16000S/cm以下であるグラファイト膜では、エッチング条件を調整しても、均一なエッチングを行なえないことがある。
グラファイト膜におけるグラファイト層が、膜方向と並行に配向しているかどうかは、膜面方向と膜厚方向の電気伝導度の比率で評価することができる。グラファイト膜の膜厚方向の電気伝導度に対するグラファイト膜の膜面方向の電気伝導度の倍率は、200倍以上が好ましく、400倍以上がより好ましく、600倍以上が特に好ましい。
グラファイト膜の面積は電気伝導体等の応用展開にとって必要である。本発明で得られるグラファイト薄膜の面積は、グラファイト薄膜の厚さが5nm以上、50nm未満の場合、20cm以上が好ましく、30cm以上がより好ましく、40cm以上がさらに好ましく、50cm以上が特に好ましい。
また、本発明で得られるグラファイト薄膜の面積は、グラファイト薄膜の厚さが50nm以上、500nm未満の場合、100cm以上が好ましく、150cm以上がより好ましく、200cm以上がさらに好ましく、300cm以上が特に好ましい。
プラズマエッチングは、広い面積のグラファイト膜を均一に薄層化できるため、大面積で均一な厚さのグラファイト薄膜を作製すると言う観点からも好ましい。
本発明に用いるエッチング前のグラファイト膜の製造方法としては、上記特性を満足するものが好ましいが、特に制限はない。グラファイト膜としては、液相(溶融金属)から炭素を再結晶して作製するKishグラファイト、気相から作製するHOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)、高分子焼成法によるグラファイト膜が知られている。Kishグラファイトは燐片状の小さな形状としてしか得られず、大面積で膜厚が制御されたグラファイト膜を得ることは難しい。また、HOPGは熱分解炭素を高温(3000℃以上)・加圧下で長時間(数週間〜2ヶ月)かけてグラファイト化するもので小型ブロックの形で得られる。しかしこの様なブロックから剥離法によって高品質・高配向性で、厚さが制御され、しかも、100mm以上の面積を持つグラファイト膜を安定に作製する事は難しく、ましてや20cm以上の面積のグラファイト膜を作製する事はほぼ不可能である。
本発明において、エッチング前のグラファイト膜は、先に述べた高分子焼成法で得られたグラファイト膜が最も好ましい。その理由の一つは、大面積グラファイト薄膜が得られるためである。
高分子焼成法で用いられる高分子膜としては、芳香族ポリイミド、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種の高分子からなる膜が用いることができる。
これらの高分子の中でも、芳香族ポリイミドが特に好ましい。さらに、芳香族ポリイミドは、ピロメリット酸無水物、あるいは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンのいずれかをそれぞれに組み合わせて作製される芳香族ポリイミドが特に好ましい。
高分子焼成法では高分子フィルムを不活性ガス中で加熱し炭素化を行う。不活性ガスとしては窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。加熱は通常1000℃程度の温度で行う。通常ポリイミドフィルムは500〜600℃付近で熱分解し、1000℃付近で炭化し、炭素化フィルムを得る。
グラファイト化は炭素化されたフィルムを超高温炉で加熱処理する事により行なう。炭素化フィルムのセットはCIP材やグラッシーカーボン基板に挟んで行う事が好ましい。グラファイト化反応は不活性ガス中で行うが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当である。処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来る。グラファイト膜を得るための処理温度(最高処理温度)は通常の高分子焼成法では2700℃以上で行なわれ、2800℃以上の温度で処理する事がより好ましいとされている。温度2700℃以上で熱処理してグラファイト化する場合、高温炉内の雰囲気は前記不活性ガスに依って加圧されているのが好ましい。
しかしながら、本発明に用いるエッチング前のグラファイト膜は、高品質・高配向性である事が望ましく、高分子焼成法の製造条件として、グラファイト化温度は3000℃以上が好ましい、3100℃以上がより好ましく、3200℃以上が特に好ましい。
当該グラファイト化温度の保持時間は5分以上、好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上であり、1時間以上であっても良い。保持時間の上限は特に限定されないが、通常10時間以下、特に8時間以下程度としても良い。
さらに、例えば芳香族ポリイミド膜を原料として用いる場合には、出発原料フィルムの厚さを1μm以上、20μm以下とする事が好ましい。これは芳香族ポリイミドにおいては3000℃処理によって厚さがほぼ半分となり、結果的に500nm〜10μmの範囲のグラファイト膜が得られる事を意味する。
また、本発明は、グラファイト膜と基板からなる複合体を形成する工程、複合体のグラファイト膜をプラズマエッチング処理する工程を含むグラファイト薄膜と基板の複合体の製造方法であってもよい。グラファイト膜をプラズマエッチングする場合に、グラファイト膜と基板からなる複合体とすることで、エッチングされるグラファイト膜の表面をさらに均一にすることができ、さらにエッチングプロセスを効率的に実施する事が出来る。また、プラズマエッチング処理後、グラファイト薄膜と基板からなる複合体をそのままデバイスとして使用する事が出来る。
用いられる基板について制限はないが、例えば、シリコン基板、または表面に酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板、あるいは金属板、有機基板や有機膜であってもよい。さらに、例えば枠構造などであっても良い。グラファイト膜と基板の接合は全く接合層を介さない直接接合でも良く、何らかの接合層を介していても良い。
エッチング前のグラファイト膜と基板を直接接合する事は、エッチング後のグラファイト薄膜を用いたデバイス作製には特に好ましい。直接接合時の温度は特に限定されないが、常温〜400℃以下が好ましく、また、直接接合を、真空中、または不活性ガス中で行なう事が好ましい。良好な直接接合を実現するためには、グラファイト膜の表面、および基板の表面が平滑であり、表面の不純物が少ないことが必要とされる。表面の不純物を少なくし、表面活性化のためにはイオンビームやアルゴンプラズマ等の処理をする事が好ましい。
エッチング前のグラファイト膜と基板を接着層で接合する場合、接着層がニッケルや金などの金属、あるいは銀ロウなど最終的に金属層での接合となる物である事が好ましい。これらの接合には、最適な温度、圧力、処理時間を採用することができる。例えば、加圧、加熱下で行う場合、400℃以上、900℃以下、加圧は10kg以上、3000kg以下である事が好ましい。
次に、グラファイト膜を、プラズマエッチング処理して薄層化し、高品質なグラファイト薄膜を作製するが、薄層化によってグラファイト薄膜の物性が変化(劣化)しない事とプラズマエッチングを均一に進行させる事が重要である。我々は幾つかのエッチング手法を検討したが、プラズマエッチング法は高配向性を有する高品質グラファイト膜を原料として用い、エッチング条件を選択すれば、薄層化によってグラファイト膜の物性がほとんど変化せず、さらに好ましい速度で均一な薄層化が進行する非常に優れた方法である事を見出した。
プラズマは、正電荷を持つ粒子と負電荷を持つ電子が電離状態で同程度分布し、電気的中性を保っている状態である。プラズマの生成に用いる電源の周波数によって放電方式を分類すると、高周波放電(RF)とマイクロ波放電があり、さらにプラズマ発生の方式にはマイクロ波ECRプラズマ方式、容量結合型プラズマ方式(CCP)、誘導結合型プラズマ方式(ICP)等がある。本発明にとってその方式は制限されない。我々は簡易に使用でき、さらにそのエッチング条件の広範囲な選択が可能である事からECR方式のACプラズマ装置で検討を行った。無論、市販のRFプラズマ装置やICPプラズマ装置も好ましく用いる事が出来る。
本発明には、酸素プラズマ、空気プラズマ、水素プラズマ、アルゴンプラズマを特に好ましく用いる事が出来、中でも空気プラズマ、酸素プラズマによるエッチングがエッチング速度、均一薄層化の点で好ましい。我々の検討では酸素プラズマ中でのエッチング速度は空気プラズマの3〜5倍になった。無論この様なエッチング速度は、用いる機器や加える電力、によって変化し、さらには微量の水分の存在などの影響も大きい。
一方で、フッ素系の活性ガスを用いたプラズマエッチングは、エッチング速度が非常に速く、その反応条件を選択する事で均一な薄層化を実現する事は難しい。例えば、CF4を用いた場合、30Wで5400nm/分の薄層化が実現出来たが、エッチング面の粗度は大きくなった。従って、この様なエッチング手法によって5nm〜500nmの範囲の厚さを精密に制御する事は難しい。ただし、活性ガスを用いたエッチングは多層グラフェンにビアホール(貫通孔)を形成する目的には有効に用いる事が出来る。
プラズマエッチング速度と表面粗さの関係について検討した。酸素プラズマ、または空気プラズマの場合、表面粗さは高速でのエッチングを行なうと増加する傾向にあるが、10nm/分〜100nm/分のエッチング速度ではその表面粗さはほぼ保持され、10nm/分以下の速度でのエッチングでは、表面粗さは減少(向上)する傾向にあった。
本発明において好ましいエッチング速度は、0.2nm/分〜100nm/分が好ましく、0.5nm/分〜50nm/分がより好ましく、1.0nm/分〜20nm/分が特に好ましい。
無論、エッチングプロセスの途中において、エッチング速度を変える事は有効である。たとえば、初期のエッチング速度を速くし、希望する厚さになってからエッチング速度を遅くするなどの方法が好ましく用いられる。
本発明においては、500nm以上の厚さを有する高品質・高配向性のグラファイト膜を、この様なプラズマエッチングの手法で5nm以上、500nm未満の厚さとする。エッチング速度やエッチング時間を制御する事により、均一な薄層化が実現でき、その厚さを正確に制御する事が可能となる。
本発明の製造方法は、500nm未満であるグラファイト薄膜を作製するために有用であるが、より薄いグラファイト薄膜を作製するためにより有用である。
本発明のグラファイト薄膜の製造方法は、厚さが300nm未満であるグラファイト薄膜を作製するために有用であり、厚さが100nm未満であるグラファイト薄膜を作製するためにより有用であり、厚さが50nm未満であるグラファイト薄膜を作製するために特に有用でである。
厚さが50nm未満であるグラファイト薄膜は、例えばEUV露光の際の防塵膜として使用されるぺりクル膜として好ましく用いる事が出来る。ぺリクル膜にはEUV光の高透過性が要求され、グラファイトをぺリクル膜として使用する場合には、厚さが50nm未満である事が必要であり、20nm未満である事がより好ましく、15nm未満である事はさらに好ましく、10nm未満である事は最も好ましい。ぺリクル膜として用いるには大面積である事が要求されるために、本発明のグラファイト薄膜の製造方法は特に有用である。
本発明の製造方法は、膜面方向の電気伝導度が16000S/cmであるグラファイト薄膜を作製するために有用であるが、特に膜厚が薄くなるほど高電気伝導度を実現する事が困難であるため、例えば50nm以下の厚さの膜厚で16000S/cmの電気伝導度を実現するために極めて好ましい。また、無論より高い膜面方向の電気伝導度を有するグラファイト薄膜を作製するためも有用である。本発明の製造方法は、膜面方向の電気伝導度が18000S/cmであるグラファイト薄膜を作製するために有用であり、膜面方向の電気伝導度が20000S/cmであるグラファイト薄膜を作製するために特に有用である。
厚さが50nm未満で電気伝導度が16000S/cm以上であるグラファイト薄膜は半導体微細配線回路として好ましく用いられる。銅配線回路では配線幅が50nm以下になると急激にその比抵抗値が増加する事が知られているが、グラファイト配線ではその様な比抵抗値の増加は観察されないためである。
<製造例1−1〜1−4>
<ポリイミドフィルムの作製>
ポリイミドフィルムを、以下の方法で作製した。ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18質量%のDMF溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布し、さらスピンコーターを用いてアルミ箔上に1μm〜20μmの範囲の均一な厚さのポリアミド酸フィルムを作製した。アミド酸溶液の濃度、回転数を変えることで厚さの調整を行なった。ポリアミド酸膜を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後アルミ箔を除去し、厚さの異なる4種類(それぞれ、9.6μm、4.0μm、2.4μm、1.5μm)のポリイミドフィルム(A−1)(A−2)(A−3)(A−4)を作製した。
<製造例2−1〜2−6>
<グラファイト膜の作製>
<製造例2−1;グラファイト膜(B−1)の作製>
面積15×10cmであり、厚さが9.6μmであるポリイミドフィルム(A−1)を、電気炉を用いて、窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化した。
次に、得られた炭素化膜を、グラファイト化炉の内部にセットし、アルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm)の加圧下で、20℃/分の昇温速度で、3200℃まで昇温した。3200℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイト膜(B−1)を作製した。
<製造例2−2;グラファイト膜(B−2)の作製>
面積15×10cmであり、厚さが4.0μmであるポリイミドフィルム(A−2)を、電気炉を用いて、窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化した。
次に、得られた炭素化膜を、グラファイト化炉の内部にセットし、アルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm)の加圧下で、20℃/分の昇温速度で、3200℃まで昇温した。3200℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイト膜(B−2)を作製した。
<製造例2−3;グラファイト膜(B−3)の作製>
面積15×10cmであり、厚さが4.0μmであるポリイミドフィルム(A−2)を、電気炉を用いて、窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化した。
次に、得られた炭素化膜を、グラファイト化炉の内部にセットし、アルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm)の加圧下で、20℃/分の昇温速度で、3100℃まで昇温した。3100℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイト膜(B−3)を作製した。
<製造例2−4;グラファイト膜(B−4)の作製>
面積15×10cmであり、厚さが2.4μmであるポリイミドフィルム(A−3)を、電気炉を用いて、窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化した。
次に、得られた炭素化膜を、グラファイト化炉の内部にセットし、アルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm)の加圧下で、20℃/分の昇温速度で、3100℃まで昇温した。3100℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイト膜(B−4)を作製した。
<製造例2−5;グラファイト膜(B−5)の作製>
面積15×10cmであり、厚さが2.4μmであるポリイミドフィルム(A−3)を、電気炉を用いて、窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化した。
次に、得られた炭素化膜を、グラファイト化炉の内部にセットし、アルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm)の加圧下で、20℃/分の昇温速度で、3000℃まで昇温した。3000℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイト膜(B−5)を作製した。
<製造例2−6;グラファイト膜(B−6)の作製>
面積15×10cmであり、厚さが1.5μmであるポリイミドフィルム(A−4)を、電気炉を用いて、窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化した。
次に、得られた炭素化膜を、グラファイト化炉の内部にセットし、アルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kg/cm)の加圧下で、20℃/分の昇温速度で、3200℃まで昇温した。3200℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイト膜(B−6)を作製した。
得られたグラファイト膜(B−1)〜(B−6)の厚さ(μm)、電気伝導度(S/cm)を以下に示す。
(B−1)厚さ4.6μm、電気伝導度23900S/cm
(B−2)厚さ2.0μm、電気伝導度24300S/cm
(B−3)厚さ2.1μm、電気伝導度22000S/cm
(B−4)厚さ1.2μm、電気伝導度21500S/cm
(B−5)厚さ1.2μm、電気伝導度19040S/cm
(B−6)厚さ0.72μm、電気伝導度22000S/cm
また、グラファイト膜(B−1)〜(B−6)の面積は、100cm〜120cmの範囲にあった。グラファイト膜(B−1)〜(B−6)の層構造は、極めて綺麗に配向した層構造であり、グラファイト面方向に高い配向性を有する膜であった。
以下の表1に、製造例2−1〜2−6について、グラファイト膜(B−1)〜(B−6)を製造する際のポリイミドフィルムの厚さ、グラファイト化条件として炭化条件および黒鉛化条件、グラファイト膜(B−1)〜(B−6)の厚さおよび電気伝導度をまとめた。
Figure 2021073157
<電気伝導度の測定方法>
電気伝導度の測定は、ファン・デル・ポー法によって行った。測定試料を2×2cmの正方形に切り出し、4つの角に銀ペースト電極を取り付けて、(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、RESI Test 8300を用いて電気伝導度を測定した。
<プラズマエッチング装置>
実施例で用いたACプラズマエッチング装置(マグネトロン方式・交流電場方式)の概略図を図1に示した。装置は真空デバイス社製(PIB−20)である。この装置では放電電圧が0V〜700Vから、放電電流が0mA〜50mAから選択でる。最大の仕事率(照射電力)は35Wである。また、プラズマの種類は空気プラズマ、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、水素プラズマのいずれかから選択できる。動作圧は0−100Paから選択できる。
厚さ1.2μmのグラファイト膜(B−4)をドーナッツ状のグラファイト保持冶具で固定し、照射電力35Wで30分間、空気プラズマを照射した。図2(a)、プラズマが照射されなかった非エッチング部分6と、プラズマが照射されたエッチング部分5(グラファイト薄膜である部分)を示す。図2(b)には、走査型プローブ顕微鏡(SPM、Scanning Probe Microscope)によって測定した非エッチング部分6とエッチング部分5(グラファイト薄膜である部分)の厚さの測定結果を示す。。
図2(b)から、非エッチング部分6とエッチング部分5(グラファイト薄膜である部分)の厚さの差は、350nmであった。エッチング速度は、11.7nm/分であった。エッチング部分5(グラファイト薄膜である部分)の厚さは、0.85μmと推算される。非エッチング部分6の表面粗さ(Sa値)は0.076であり、エッチング部分5(グラファイト薄膜である部分)の表面粗さ(Sa値)は0.077であった。
厚さ0.72μmのグラファイト膜(B−6)に、照射電力28Wで、30分間、空気プラズマを照射した。その結果、グラファイト膜の厚さは、50nm減少した。エッチング速度は、1.7nm/分であった。
図3は、表面粗さの外観変化の測定結果を示す。非エッチング部分の表面粗さ(Sa値)は0.036であり、エッチング部分(グラファイト薄膜である部分)の表面粗さ(Sa値)は0.012となった。
図4には、エッチング前後のレーザーラマンスペクトルを示す。非エッチング部分のスペクトル11と比較して、エッチング部分(グラファイト薄膜である部分)のスペクトル9には、アモルファス状態の炭素成分由来のピーク(1380cm−1)の増加が認められた。アモルファス状態の炭素成分は、アルゴン中、600〜800℃程度温度で熱処理する事により完全に取り除く事が出来た。熱処理によって、グラファイト薄膜の物性値が変化する事はなかった。
空気プラズマの代わりに、酸素プラズマを用いた以外は、実施例1と同じ条件で24分間プラズマエッチングした。
その結果、エッチング部分のグラファイト薄膜の厚さは42nmとなった。エッチング前のグラファイト膜(B−4)に比べて膜厚は1158nm減少した。すなわちエッチング速度は約48nm/分であった。
厚さ0.72μmのグラファイト膜(B−6)を、実施例2において、空気プラズマの代わりに酸素プラズマを用いた以外は、プラズマエッチングを行なった。その結果、膜厚は200nm減少している事が分かった。すなわち、エッチング速度は6.7nm/分であった。膜の均一性測定の結果、グラファイト薄膜であるエッチング部分表面粗さ(Sa値)は、0.010であった。この条件でのエッチングによって表面粗さが小さくなる事が分かった。また、レーザーラマンスペクトル測定の結果、エッチング表面にアモルファス成分(1380cm−1)の存在は認められなかった。
厚さ4.6μmのグラファイト膜(B−1)を、照射電力を35Wとし、88分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして12分間、酸素プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。
得られたグラファイト薄膜の厚さは280nmであり、その電気伝導度は23300S/cmであった。得られたグラファイト膜のSEMチャネリングコントラスト法による結晶粒径の写真を図5に示す。測定は粘着テープを用いて試料の表面を剥離して行った。平均結晶粒径の大きさをSEM写真のチャネリングコントラスト法の測定結果より結晶粒径の大きさを読み取り、その平均を算出した結果、その平均結晶粒径は3.40μmであった。
厚さ2.0μmのグラファイト膜(B−2)を、照射電力を35Wとし、35分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして40分間、酸素プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。得られたグラファイト薄膜の厚さは120nmであり、その電気伝導度は24000S/cm、その平均結晶粒径は3.51μmであった。
厚さ2.1μmのグラファイト膜(B−3)に、照射電力を35Wとし、35分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして26分間酸素プラズマ中でエッチングした。得られたグラファイト薄膜の厚さは80nmであり、その電気伝導度は21200S/cmであり、その平均結晶粒径は3.02μmであった。
厚さ1.2μmのグラファイト膜(B−4)に、照射電力を35Wとし、15分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして65分間酸素プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。得られたグラファイト薄膜の厚さは42nmであり、その電気伝導度は20600S/cmであり、その平均結晶粒径は2.72μmであった。
厚さ1.2μmのグラファイト膜(B−5)に、照射電力を35Wとし、15分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして68分間酸素プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。得られたグラファイト薄膜の厚さは26nmであり、その電気伝導度は19000S/cm。その平均結晶粒径は2.42μmであった。
厚さ0.72μmのグラファイト膜(B−6)に、照射電力を35Wとし、12分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして20分間、酸素プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。得られたグラファイト薄膜の厚さは14nmであり、その電気伝導度は21800S/cmであり、その平均結晶粒径は3.21μmであった。
厚さ0.72μmのグラファイト膜(B−6)に、照射電力を35Wとし、12分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして300分間、空気素プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。得られたグラファイト薄膜の厚さは8nmであり、その電気伝導度は21000S/cm、その平均結晶粒径は2.53μmであった。
厚さ0.72μmのグラファイト膜(B−6)に、照射電力を35Wとし、12分間、酸素プラズマ照射し、さらに照射電力を28Wとして302分間、空気プラズマ中でエッチングし、グラファイト薄膜を得た。得られたグラファイト薄膜の厚さは5nmであり、その電気伝導度は20100S/cmであり、その平均結晶粒径は2.38μmであった。
実施例5〜12において、得られたグラファイト薄膜の厚さ(nm)、電気伝導度(S/cm)の測定結果をまとめて表2に示す。
Figure 2021073157
実施例5〜10では、グラファイト薄膜の電気伝導度は、いずれも19000S/cm以上の優れた特性を示しており、プラズマエッチングによって薄層化して得られたグラファイト薄膜の電気伝導度は、エッチングする前のグラファイト膜の電気伝導度とほとんど変わっていない事が分かる。
実施例11、12は、それぞれ極限まで薄層化した厚さ8nm、厚さ5nmのグラファイト薄膜の例であり、若干の電気伝導度の低下が見られるが、それでも電気伝導度の値は21000〜20100S/cmの範囲、の高い数値を示した。この様にプラズマによる薄層化によって5nmの厚さまで、事実上その物性値を損なう事無く薄層化できる。
<比較例1>
面積4×4cm、厚さ400nmであるポリイミドフィルムを、電気炉に入れ、窒素ガス中で、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化フィルムを得た。次に、得られた炭素化フィルムを、圧力0.10MPaのアルゴンガス中で、円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の速度で3200℃の処理温度まで昇温し、30分間保って、40℃/分の速度で冷却し、面積18×18mm、厚さ180nmのグラファイト薄膜を作製した。その電気伝導度は14600S/cm、その平均結晶粒径は1.69μmであった。
<比較例2>
厚さ400nmのポリイミドフィルムにかえて、厚さ100nmのポリイミドフィルムを用いた以外は比較例1と同様にして、グラファイト薄膜を作製した。得られたグラファイト薄膜の厚さは50nmであり、その電気伝導度は12300S/cm、その平均結晶粒径は1.44μmであった。
<比較例3>
厚さ400nmのポリイミドフィルムにかえて、厚さ30nmのポリイミドフィルムを用いた以外は比較例1と同様にしてグラファイト薄膜を作製した。得られたグラファイト薄膜の厚さは18nmであり、その電気伝導度は8300S/cm、その平均結晶粒径は1.29μmであった。
比較例1〜3で得られたグラファイト薄膜の電気伝導度の値を表1に示す。電気伝導度の値は14600〜8300S/cmの範囲であり、薄くなるほど特性値は低下した。厚さは10%程度の誤差を含んでいるが、これらの値はその誤差を考慮しても、プラズマエッチング処理して得られた同じ程度厚さのグラファイト薄膜(実施例5〜12)の電気伝導度と比較して著しく劣るものであった。
本発明のプラズマエッチングによるグラファイト薄膜の製造方法が5nm以上、500nm未満の範囲の厚さを有する大面積・高電気伝導性グラファイト薄膜の作製に極めて有効である事が分かった。
実施例12で得られた厚さ5nmのグラファイト薄膜のEUV透過率の理論計算値は97.1%であった。グラファイト薄膜は、高いEUV透過率を有し、半導体露光装置用などの防塵膜として実用的に十分な特性を有している事が分かった。
本発明の製造方法により製造されるグラファイト薄膜は、高い電気伝導性を有し、配線材料等に有用である。
1 グラファイト膜
2 グラファイト膜のドーナッツ状保持冶具
3 高周波電源
4 酸素プラズマ、空気プラズマ、水素プラズマ、あるいはアルゴンプラズマ
5 エッチング部分
6 非エッチング部分
7 エッチング部分
8 非エッチング部分
9 エッチング部分のレーザーラマンスペクトル
10 境界部分のレーザーラマンスペクトル
11 非エッチング部分のレーザーラマンスペクトル


Claims (9)

  1. 厚さが、5nm以上、50nm未満であり、
    面積が20cm以上であり、
    平均結晶粒径が2.0μm以上であるグラファイト薄膜。
  2. 厚さが、50nm以上、500nm未満であり、
    面積が100cm以上であり、
    平均結晶粒径(ドメインサイズ)が2.0μm以上であるグラファイト薄膜。
  3. グラファイト薄膜の膜面方向の電気伝導度が、16000S/cm以上である
    請求項1あるいは請求項2に記載のグラファイト薄膜。
  4. グラファイト薄膜の平均結晶粒径が2.4μm以上3.5μm未満である
    請求項1〜請求項3のいずれかに記載のグラファイト薄膜。
  5. グラファイト膜をプラズマエッチングしてグラファイト薄膜にするプラズマエッチング工程を含む
    グラファイト薄膜の製造方法であり、
    グラファイト薄膜の厚さが、5nm以上、500nm未満である
    グラファイト薄膜の製造方法。
  6. グラファイト薄膜の面積が100mm以上である
    請求項5に記載のグラファイト薄膜の製造方法。
  7. グラファイト薄膜の膜面方向の電気伝導度が、16000S/cm以上である
    請求項5あるいは請求項6に記載のグラファイト薄膜の製造方法。
  8. グラファイト膜の厚さが、500nm以上、10μm未満である
    請求項5〜請求項7のいずれかに記載のグラファイト薄膜の製造方法。
  9. プラズマエッチングが、酸素プラズマ、空気プラズマ、水素プラズマおよびアルゴンプラズマからなる群より選ばれるプラズマを用いたプラズマエッチングである
    請求項5〜請求項8のいずれかに記載のグラファイト薄膜の製造方法。

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