JP5682026B2 - エピタキシャル成長用基板およびエピタキシャル成長用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、サファイアウエハは製造コストが高く、大面積化に不向きであり、また低熱伝導率で放熱性が低いために高輝度化が困難である。一方、炭素材料は、低コスト化、大面積化、高熱伝導率で放熱性が高いために高輝度化が期待される材料であるが、高温下でNH3と反応するためエピタキシャル成長用基板として使用することができなかった。
パルス励起堆積法では真空中で成膜するためグラファイトフィルムをGaN成長基板として用いることが可能である。しかしグラファイトフィルムは、炭素化、黒鉛化に伴う内部応力により、膨れや割れが発生するためサファイア基板に比べると表面粗さが大きく平坦性が低いという技術課題を有している(非特許文献1、非特許文献2参照)。
しかしながら、BNTCA−BPTA重合体を黒鉛化したグラファイトフィルムでは平坦性、配向性が低く、またエピタキシャル成長用基板として、さらに放熱性、輝度高いものが求められるようになっていた。
(1)算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下である炭素基板の少なくとも一方の主表面に、算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下であり、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅が1.5度以下であり、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比が0.01以下であり、2層以上のグラフェンからなる厚み0.67nm〜5μmの高結晶グラファイト層を形成してなることを特徴とするエピタキシャル成長用基板、
(2)前記炭素基板の熱伝導率が10〜250W/m・Kである上記(1)に記載のエピタキシャル成長用基板、
(3)前記炭素基板の熱膨張係数が2×10−6〜7×10−6/Kである上記(1)または(2)に記載のエピタキシャル成長用基板、
(4)前記炭素基板が等方性黒鉛材、押し出し成形黒鉛材、モールド成形黒鉛材、およびガラス状炭素材から選ばれる一種以上から形成されてなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエピタキシャル成長用基板、
(5)請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエピタキシャル成長用基板を製造する方法であって、
算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下である炭素基板の少なくとも一方の主表面に、
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合してなる複素環状高分子の含有液を塗布して薄膜を形成した後、500℃〜1500℃で焼成して炭素化し、さらに2000℃〜3200℃で焼成して2層以上のグラフェンからなる厚み0.67nm〜5μmの高結晶グラファイト層を形成する
ことを特徴とするエピタキシャル成長用基板の製造方法、および
(6)前記複素環状高分子がベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマ、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとの重合体である上記(5)に記載のエピタキシャル成長用基板の製造方法、
を提供するものである。
本発明のエピタキシャル成長用基板は、炭素基板の少なくとも一方の主表面に、算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下であり、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅が1.5度以下であり、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比が0.01以下である高結晶グラファイト層を形成してなることを特徴とするものである。
本発明のエピタキシャル成長用基板においては、高結晶グラファイト膜の表面粗さが小さいほど配向度の高いグラファイト膜になり、平坦性が高く欠陥密度の小さいGaN膜を形成することができる。
なお、本出願書類において、算術平均表面粗さRaおよび表面粗さの最大値Ryは、JIS B 0601−1994に準じて測定した値を意味する。
本発明のエピタキシャル成長用基板においては、高結晶グラファイト層のX線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅が1.5度以下であることにより、欠陥密度の小さい良質なGaN膜を形成することができる。
なお、本出願書類において、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅は、Philips社製多目的X線回折装置X’PartMPDを用いて測定することができる。
上記Gバンドのピークがグラファイト構造に関連し、上記Dバンドのピークが構造の乱れに関連する。
本発明のエピタキシャル成長用基板において、高結晶グラファイト層は、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比が0.01以下であることにより、乱層構造が少なく、グレインサイズが大きい結晶構造を採ることができ、発光に有効な面積を大きくとることができる。
なお、本出願書類において、ラマンスペクトルは、HORIBA社製トリプル・レーザラマン分光測定装置、RAMANOR T6400を用いて、露光時間60秒、積算回数5の条件でGバンド(1580cm―1)とDバンド(1360cm―1)とを含む領域を測定することにより得ることができ、得られたスペクトルにおけるGバンド(1580cm―1)のピーク強度とDバンド(1360cm―1)のピーク強度とを求めることにより、その比(Dバンドのピーク強度/Gバンドのピーク強度)を算出することができる。
第一原理計算により、GaN膜を形成するエピタキシャル成長用基板の最上層のグラファイト層では20%程格子定数が伸びており、上記グラファイト層を形成するグラフェンは層状物質であるために下地のグラフェンに盃みは生じないとされている。グラファイト層上にGaN膜を成長させるには最低2層必要であることから、上記知見に基づけば、高結晶グラファイト層の厚みは0.67nm以上必要とされ、また、上記厚みが5μmを超えると生成ガスの応力集中による表面剥れが発生し易くなるため、グラファイト層の厚みは0.67nm〜5μmであることが好ましい。
本発明のエピタキシャル成長用基板において、炭素基板の算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下であることにより、優れた平坦性を有するエピタキシャル成長用基板を提供しやすくなる。
炭素基板の熱伝導率が上記範囲内にあることにより、所望の熱伝導率を有するエピタキシャル成長用基板を提供しやすくなり、放熱性に優れることから、素子化した場合に高輝度化し易くなる。
炭素基板の熱膨張係数が上記範囲内にあることにより、GaNの熱膨張係数との差が小さくなり、エピタキシャル成長した際に結晶性に優れた半導体層を形成可能なエピタキシャル成長用基板を提供することができる。
本発明のエピタキシャル成長用基板の厚さ方向の熱伝導率が上記範囲内にあることにより、優れた放熱性を発揮して、素子化した場合に高輝度化することが可能になる。
本発明のエピタキシャル成長用基板の厚さ方向の熱膨張係数が上記範囲内にあることにより、GaNの熱膨張係数との差が小さくなり、結晶性に優れた半導体層を形成可能なエピタキシャル成長用基板を提供することができる。
本発明のエピタキシャル成長用基板の製造方法は、炭素基板の少なくとも一方の主表面に、芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合してなる複素環状高分子の含有液を塗布して薄膜を形成した後、500〜1500℃で焼成して炭素化し、さらに2000℃〜3000℃で焼成してグラファイト層を形成することを特徴とするものである。
上記溶媒としては、上記原料及び生成する重合体を溶解し、重合を促進する触媒としての作用を有するものであれば特に制限されない。具体的には、ポリリン酸、ポリリン酸エステル、リン酸ジフェニルクレシル等や五酸化二リン等を溶解したメタンスルホン酸等を挙げることができる。
(1)下記一般式で表され、固有粘度が0.5〜8.5dlg-1である重合体。
一般式(4)、(5)において、nは、上記固有粘度が0.5〜8.5dlg−1となる数であり、3.0〜6.0dlg−1となる数であることが好ましく、3.5〜5.0dlg−1となる数であることがより好ましい。一般式(6)において、nは、上記固有粘度が0.5〜3.5dlg−1となる数であり、1.0〜3.5dlg−1となる数であることが好ましく、1.5〜3.0dlg−1となる数であることがより好ましい。
複素環状高分子を溶解又は分散させる酸性の液体又は分散媒としては、メタンスルホン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸等を挙げることができる。
複素環状高分子の塗布条件は、炭素基板の主表面に所望厚さのグラファイト層が形成されるように、所望厚さの複素環状高分子を塗布し得る条件であれば特に制限されない。
複素環状高分子は、炭素基板の片側主表面へのみ塗布してもよいし、両側主表面に塗布してもよい。
本発明の製造方法において、炭素化した複素環状高分子からグラファイト層を形成するグラファイト化工程における焼成温度は、2000℃〜3000℃であり、2500℃〜3000℃が好ましく、2700〜3000℃がより好ましい。
本発明の製造方法において、上記範囲内の温度で焼成することにより、グラファイト層を好適に形成することができる。
(株)ミツトヨ社製SV−524を用いてJIS B 0601−1994に準じて測定し、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値(最大高さ)Ryを算出した。
Philips社製多目的X線回折装置X’PartMPDを用いて、(0002)方向の((0002)面の)ロッキングカーブ測定を行い、得られたピークを分離して、グラファイト層のロッキングカーブの半値幅を求めた。
(株)堀場製作所製トリプル・レーザラマン分光測定装置、RAMANOR T64000を用いて、露光時間60秒、積算回数5の条件で1300cm−1から1800cm−1の領域を測定し、グラファイト構造に関連づけられているGバンド(1580cm−1)と構造の乱れに対応しているDバンド(1360cm−1)のピーク強度から、Gバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(Dバンドのピーク強度/Gバンドのピーク強度)を算出した。
アルバック理工(株)社製TC−7000を用いてJIS R 1611-1997に準じて基板厚さ方向の熱伝導率を算出した。
アルバック理工(株)製、レーザー熱膨張計LXを用いてJIS R3251−1995に準じて基板厚さ方向の熱膨張係数を測定した。測定温度は700℃で、ポリイミドの熱膨張係数に関しては、“原子動力学の第一原理計算から考える化合物半導体のエピタキシャル成長”、石井晃、表面科学 29、p.765、2008に記載された文献値を用いた。なお、同文献によれば、GaNの熱膨張係数は5.59×10−6である。
CSM Instruments SA 社製ボール研磨式精密膜厚測定機 Calotestを用い、カロテスト法に基づいてグラファイト膜の膜厚を測定した。標準ボール直径は30mm、研磨時間は1分で基板と膜を削り、基板、膜の研磨痕の幅、標準ボール直径からグラファイト膜の厚みを算出した。
(複素環状高分子の作製)
Ar流通下、ポリリン酸(オルトリン酸換算濃度115%)100g中に、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸と1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン四塩酸塩とを10mmmolづつ加え、200℃の温度条件下で72時間反応させた後、不純物を除去するために、多量の純水、メタンスルホン酸、ジメチルアセトアミドを加えて攪拌し、その後、200℃の温度条件下で12時間減圧乾燥することにより、固有粘度が2.5dlg―1であるベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマ(BBL重合体)を得た。
(グラファイト層の形成)
上記BBL重合体0.5gをメタンスルホン酸49mlに投入し溶解液を作製した。東海カーボン(株)製ガラス状炭素基板(商品名 GC―30、厚み0.5mm、主表面の平均粗さ0.011μm、表面粗さの最大値0.142μm、熱伝導率10W/m・K、熱膨張係数4.0×10−6/K)を、上記溶解液に浸し、あすみ技研社製ディップコーター(製品名 MX215)を用いて速度1mm/秒の速度で引き上げた後、真空中200℃で加熱してメタンスルホン酸を除去することにより、上記炭素基板上にBBL重合体の膜を形成し、固定化した。
表面に重合体の膜を形成した上記炭素基板を、シリコニット電気炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温し、1時間保持して表面に形成した重合体の膜の炭素化を行った。その後、黒鉛抵抗炉にてAr気流中で室温から毎分5℃の割合で2800℃まで昇温し、1時間保持して上記炭素化した重合体の黒鉛化を行うことにより、炭素基板の表面にグラファイト層が形成されてなるエピタキシャル成長用基板を得た。
得られたエピタキシャル成長用基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの写真を図1として示す。図1に示すように、得られた基板には、後述する図2、3に示すような皺や表面はがれは観察されず、平坦性が非常に高いことが分かる。
BBL重合体0.5gに代えて、固有粘度が4.1dlg―1である4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとの重合体0.5gを用い、これをメタンスルホン酸49mlに投入して作製した溶解液を用いた以外は実施例1と同様に処理してエピタキシャル成長用基板を得た。
得られたエピタキシャル成長用基板において、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値Ry、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅((0002)FWHM)、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(D/G)、熱伝導率、熱膨張係数およびグラファイト層の片側主表面上の厚みを上記の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。
得られたエピタキシャル成長用基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に皺や表面はがれは観察されず、平坦性が非常に高いことが分かった。
炭素基板として東海カーボン(株)製等方性黒鉛基板(商品名 HK―3、厚み0.5mm、主表面の平均粗さ0.030μm、表面粗さの最大値0.261μm、熱伝導率90W/m・K、熱膨張係数5.0×10−6/K)を用いた以外は、実施例2と同様に処理してエピタキシャル成長用基板を得た。
得られたエピタキシャル成長用基板において、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値Ry、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅((0002)FWHM)、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(D/G)、熱伝導率、熱膨張係数およびグラファイト層の片側主表面上の厚みを上記の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。得られたエピタキシャル成長用基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に皺や表面はがれは観察されず、平坦性が非常に高いことが分かった。
炭素基板として東海カーボン(株)製等方性黒鉛基板(商品名 HK―6、厚み0.5mm、主表面の平均粗さ0.044μm、表面粗さの最大値0.379μm、熱伝導率100W/m・K、熱膨張係数6.5×10−6/K)を用いた以外は、実施例2と同様に処理してエピタキシャル成長用基板を得た。
得られたエピタキシャル成長用基板において、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値Ry、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅((0002)FWHM)、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(D/G)、熱伝導率、熱膨張係数およびグラファイト層の片側主表面上の厚みを上記の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。得られたエピタキシャル成長用基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に皺や表面はがれは観察されず、平坦性が非常に高いことが分かった。
炭素基板として東海カーボン(株)製押出成形黒鉛基板(商品名 EE250、厚み0.5mm、主表面の平均粗さ0.047μm、表面粗さの最大値0.422μm、熱伝導率162W/m・K、熱膨張係数3.3×10−6/K)を用いた以外は、実施例2と同様に処理してエピタキシャル成長用基板を得た。
得られたエピタキシャル成長用基板において、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値Ry、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅((0002)FWHM)、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(D/G)、熱伝導率、熱膨張係数およびグラファイト層の片側主表面上の厚みを上記の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。得られたエピタキシャル成長用基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に皺や表面はがれは観察されず、平坦性が非常に高いことが分かった。
炭素基板として東海カーボン(株)製モールド成形黒鉛基板(商品名 G145、厚み0.5mm、主表面の平均粗さ0.043μm、表面粗さの最大値0.418μm、熱伝導率145W/m・K、熱膨張係数3.9×10−6/K)を用いた以外は、実施例2と同様に処理してエピタキシャル成長用基板を得た。
得られたエピタキシャル成長用基板において、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値Ry、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅((0002)FWHM)、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(D/G)、熱伝導率、熱膨張係数およびグラファイト層の片側主表面上の厚みを上記の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。得られたエピタキシャル成長用基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に皺や表面はがれは観察されず、平坦性が非常に高いことが分かった。
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン、厚さ50μm)を黒鉛基板(東海カーボン(株)製 等方性黒鉛基板、商品名 HK−3)で挟み、シリコニット電気炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温し、1時間保持して上記ポリイミドフィルムの炭素化を行った。その後、黒鉛抵抗炉にてAr気流中で室温から毎分5℃の割合で2800℃まで昇温し、1時間保持して上記炭素化されたポリイミドフィルムの黒鉛化を行うことにより、黒鉛化フィルムを得た。得られた黒鉛化フィルムの厚さは35μmであった。
上記炭素化されたフィルムは、炭素化前のポリイミドフィルムと比べ面方向に20%程収縮していた。また、上記黒鉛化されたフィルムは結晶化の進行により膨張したがそれでも炭素化前のポリイミドフィルムよりも8%収縮していた。
得られた黒鉛化フィルムの表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの写真を図2として示す。図2に示すように、得られた黒鉛化フィルムの表面には皺が発生していた。皺の発生は黒鉛化時の膨張によるものと考えられた。
フィルム形成時に厚さ50μmになるように、固有粘度が2.5dlg―1であるBBL重合体を0.3g秤量し、これをメタンスルホン酸7mLに投入して溶解液を作製した後、この溶解液を内径60mmのシャーレに展開した。
このシャーレをマントルヒータ内に置いた500ml平底セパラブルフラスコ内に水平を保って静置した。セパラブルフラスコ内をロータリーポンプで減圧して真空雰囲気にした後、段階的に200℃まで加熱して脱溶媒することにより、重合体フィルムを作製した。
上記シャーレから重合体フィルムを剥離して所定の大きさに切断した後、シリコニット電気炉にてAr気流中、室温から毎分5℃の割合で1500℃まで昇温し、1時間保持して重合体フィルムの炭素化を行った。その後、黒鉛抵抗炉にてAr気流中で室温から毎分5℃の割合で2800℃まで昇温し、1時間保持して上記炭素化した重合体フィルムの黒鉛化を行うことにより、黒鉛化フィルムを得た。得られた黒鉛化フィルムの厚さは22μmであった。
上記炭素化されたフィルムは、炭素化前のフィルムと比べ面方向に7%程収縮していた。また、上記黒鉛化されたフィルムは結晶化の進行により膨張したがそれでも炭素化前のフィルムよりも3%収縮していた。
得られた黒鉛化フィルムの表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの写真を図3として示す。図3に示すように、得られた黒鉛化フィルムは、図2に示す比較例1で得られた黒鉛化フィルムに比べると、フィルムの炭素化、黒鉛化時における収縮、膨張が非常に少ないために皺は観察されなかったが、図3に示すように、長さ数十μmにおよぶ円盤状の表面剥れが観察され、平坦性に劣るものであった。
BBL重合体0.3gに代えて固有粘度が4.1dlg―1である4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとの重合体0.3gを用い、これをメタンスルホン酸7mlに投入して作製した溶解液を用いた以外は比較例2と同様に処理して黒鉛化フィルムを得た。得られた黒鉛化フィルムの厚さは20μmであった。
上記炭素化されたフィルムは、炭素化前のフィルムと比べ面方向に3%程収縮していた。また、上記黒鉛化されたフィルムは結晶化の進行により膨張したがそれでも炭素化前のフィルムよりも1.5%収縮していた。
得られた黒鉛化フィルムの表面は比較例2と同様にフィルムの炭素化、黒鉛化時における収縮、膨張が非常に少ないために皺は観察されなかったが、長さ数十μmにおよぶ円盤状の表面剥れが観察され、平坦性に劣るものであった。
得られたエピタキシャル成長用基板において、算術平均粗さRaと表面粗さの最大値Ry、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅((0002)FWHM)、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比(D/G)、熱伝導率を上記の方法により測定した。結果を表1および表2に示す。
これに対し、比較例1〜比較例3で得られた黒鉛化フィルムは、皺の発生や表面剥れに伴って平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRyが大きくなることから平坦性に劣り(比較例1〜比較例3)、ラマンスペクトルにおけるピーク強度比D/Gが大きいことから結晶性に劣り(比較例1)、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅が大きいことから配向性に劣り(比較例1〜比較例3)、熱伝導率が低かったり熱膨張係数が低いことからエピタキシャル成長用基板に適さない(比較例1〜比較例3)ことが分かる。
Claims (6)
- 算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下である炭素基板の少なくとも一方の主表面に、
算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下であり、X線回折法による(0002)面のロッキングカーブの半値幅が1.5度以下であり、ラマンスペクトルにおけるGバンドのピーク強度に対するDバンドのピーク強度の比が0.01以下であり、2層以上のグラフェンからなる厚み0.67nm〜5μmの高結晶グラファイト層を形成してなることを特徴とするエピタキシャル成長用基板。 - 前記炭素基板の熱伝導率が10〜250W/m・Kである請求項1に記載のエピタキシャル成長用基板。
- 前記炭素基板の熱膨張係数が2×10−6〜7×10−6/Kである請求項1または請求項2記載のエピタキシャル成長用基板。
- 前記炭素基板が等方性黒鉛材、押し出し成形黒鉛材、モールド成形黒鉛材、およびガラス状炭素材から選ばれる一種以上から形成されてなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエピタキシャル成長用基板。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエピタキシャル成長用基板を製造する方法であって、
算術平均表面粗さRaが0.05μm以下で、表面粗さの最大値Ryが0.5μm以下である炭素基板の少なくとも一方の主表面に、
芳香族系テトラカルボン酸と芳香族系テトラアミンを縮合してなる複素環状高分子の含有液を塗布して薄膜を形成した後、500〜1500℃で焼成して炭素化し、さらに2000℃〜3000℃で焼成して2層以上のグラフェンからなる厚み0.67nm〜5μmのグラファイト層を形成する
ことを特徴とするエピタキシャル成長用基板の製造方法。 - 前記複素環状高分子がベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマ、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸と3,3',4,4'−ビフェニルテトラアミンとの重合体である請求項5に記載のエピタキシャル成長用基板の製造方法。
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