JP4419337B2 - 高配向グラファイト層状シ−ト物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高配向グラファイト層状シ−ト物及びその製造方法に関し、さらに詳しくは層状構造を有し柔軟性および靭性を持つ高配向グラファイト層状シ−ト物及びその製造方法に関する。
本発明の高配向グラファイト層状シ−ト物は、電気伝導体としてあるいは熱伝導体として放熱材、均熱材に利用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、高分子膜を炭化させて炭化膜として使用する技術が提案されている。これにはセルロ−ス、熱硬化性樹脂、ピッチタ−ルを前駆体に用いたものが多い。
また、グラファイトの製造方法として、特開昭61−275114号公報、特開昭61−275115号公報、特開昭61−275117号公報になど特定の耐熱性高分子フィルムを熱処理するグラファイトの製造方法が開示されている。
【0003】
グラファイトは抜群の耐熱性、耐薬品性、高電気伝導性等を有するため、工業材料として重要な地位を占め、ガスケット、電極、発熱体、構造材として広く使用されている。中でも高配向性グラファイトはX線や中性子線に対する優れた分光、反射特性を有するため、X線や中性子線のモノクロメ−タ−、あるいはフィルタ−として広く用いられている。
【0004】
このような目的に使用されるグラファイトとしては、天然に産するものを使用するのが一つの方法であるが、良質のグラファイトは生産量が非常に限られており、しかも、取り扱いにくい粉末状、またはリン片状であるため、人工的にグラファイトを製造することが行われている。
【0005】
従来、このような人工的なグラファイトの製造方法としては、気相中での炭化水素ガスの高温分解沈積と、その熱間加工による方法があり、圧力を印加しつつ3400℃で長時間再焼鈍することによりグラファイトを製造する。
【0006】
このようにして製造されるグラファイトは、高配向性グラファイト(HOPG)と呼ばれ、天然の単結晶グラファイトと比較して優れた特性を有している。しかし、この製造方法は製造工程が極めて複雑であり、かつ歩留りも著しく低く、その結果、製造された高配向性グラファイトは極めて高価なものであった。
【0007】
ポリイミドフィルムから柔軟性のあるグラファイトシ−トを直接的に得る方法として、特公平1−49642号公報が知られている。このシ−トは、芳香族系ポリイミドフィルムを窒素やArなどの不活性ガス雰囲気中で予備熱処理を行い、その後、さらに同じく不活性ガス雰囲気中で、ある昇温速度で高温熱処理を行うことによって得られる。
【0008】
この発明により、予備熱処理と高温熱処理時の昇温速度等の焼成条件を制御することによって、焼成後の厚さを制御したグラファイトシ−トを作製することができる。しかしながら、この製法では焼成条件を最適に制御できないと、焼成後のグラファイトはシ−ト形状とならなかったり、柔軟性をもたせることが困難となる場合がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、層状構造を有し柔軟性および靭性を持つ高配向グラファイト層状シ−ト物及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、20〜200℃における線膨張係数が20ppm/℃以下であるポリイミドフィルムから得られ、SEMによる断面観察によってグラファイト層状構造を有し、厚みが1〜50μmである高配向グラファイト層状シ−ト物に関する。
【0011】
また、この発明は、厚みが1〜80μmで、20〜200℃における線膨張係数が20ppm/℃以下であるポリイミドフィルムを不活性ガス雰囲気下で比較的低温で焼成することにより炭化膜とし、これをさらに高温でグラファイト化する高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の好ましい態様を列記する。
1)厚みが、出発材料であるポリイミドフィルムの厚み以下である前記の高配向グラファイト層状シ−ト物。
2)ポリイミドフィルムを不活性ガス雰囲気下で1000〜2000℃で焼成することにより炭化膜とし、これを2600〜3000℃でグラファイト化する前記の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
【0013】
3)ポリイミドフィルムが、イミダゾ−ル類を添加したポリアミック酸溶液から得られたポリイミドフィルムである前記の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
4)ポリイミドフィルムが、面配向性を制御したものである前記の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
【0014】
この発明においては、厚みが1〜80μmで、20〜200℃における線膨張係数が20ppm/℃以下、好適には5〜20ppm/℃であり、特に引張弾性率が500kg/mm2以上であるポリイミドフィルムを出発材料とする。
前記のポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体フィルムを熱イミド化および/または化学イミド化することによって得られる。
前記のポリイミド前駆体とは、テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを重合して得られたポリアミック酸あるいはその部分的にイミド化したものであり、化学イミド化剤の不存在下あるいは存在下に熱処理(熱処理或いは化学処理)してポリイミドとすることができるものである。
【0015】
前記のテトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とは、有機溶媒中に大略等モル溶解、重合して、対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL NMP)が0.3以上、特に0.5〜7であるポリアミック酸であるポリイミド前駆体が製造される。また、重合を約80℃以上の温度で行った場合に、部分的に閉環した部分イミド化物であるポリイミド前駆体が製造される。
【0016】
前記のテトラカルボン酸成分としては、3,3’,4,4’− ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)が好ましいが、2,3,3’,4’− ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもある)、2,3,3’,4’− 又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、あるいは2,3,3’,4’− 又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の塩またはそれらのエステル化誘導体であってもよい。ビフェニルテトラカルボン酸成分は、上記の各ビフェニルテトラカルボン酸類の混合物であってもよい。
【0017】
また、前記のテトラカルボン酸成分は、前述のビフェニルテトラカルボン酸類のほかに、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエ−テル、ブタンテトラカルボン酸、あるいはそれらの酸無水物、塩またはエステル化誘導体などのテトラカルボン酸類であってもよい。
【0018】
前記の芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミンが好ましいがその一部(85モル%以下)を4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルなどで置き換えてp−フェニレンジアミンと組み合わせることが好ましい。
また、前記の芳香族ジアミン成分としては、ジアミノピリジンであってもよく、具体的には、2,6−ジアミノピリジン、3,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジンなども挙げられる。
【0019】
前記のポリイミドフィルムは、例えば以下のようにして製造することができる。先ず、ビフェニルテトラカルボン酸類とフェニレンジアミン、好適には3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどのポリイミドの製造に通常使用される有機極性溶媒中で、好ましくは10〜80℃で1〜30時間重合して、ポリマ−の対数粘度(測定温度:30℃、濃度:0.5g/100ml溶媒、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)が0.3以上、特に0.5〜7、ポリマ−濃度が10〜35重量%であり、回転粘度(30℃)が500〜8000ポイズであるポリアミック酸(イミド化率:5%以下)溶液を得る。
【0020】
次いで、例えば上記のようにして得られたポリアミック酸溶液に、イミダゾ−ル類、特に、1,2−ジメチルイミダゾ−ルを、特にポリアミック酸のアミック酸単位に対して0.005〜2倍当量、好適には0.005〜0.8倍当量、特に0.02〜0.8倍当量程度の量含有させることが好ましい。1,2−ジメチルイミダゾ−ルの一部または全部を、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、N−メチルイミダゾ−ル、N−ベンジル−2−メチルイミダゾ−ル、2−メチルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、5−メチルベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどで置き換えてもよい。
【0021】
上記のポリアミック酸溶液に、リン化合物を、好ましくはこのポリアミック酸100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.01〜3重量部、その中でも特に0.01〜1重量部の割合で有機リン化合物、好適には(ポリ)リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩あるいは無機リン化合物を添加し、さらに好適には無機フィラ−を、特にポリアミック酸100重量部に対して0.1〜3重量部のコロイダルシリカ、窒化珪素、タルク、酸化チタン、燐酸カルシウム(好適には平均粒径0.005〜5μm、特に0.005〜2μm)を添加してポリイミド前駆体溶液組成物を得る。
【0022】
このポリイミド前駆体溶液組成物を平滑な表面を有するガラスあるいは金属製の支持体表面に連続的に流延して前記溶液の厚み25〜300μm程度、特に50〜200μmの薄膜を形成し、その薄膜を乾燥する際に、乾燥条件を調整し、温度:100〜200℃、時間:1〜30分間乾燥することにより、固化フィルム中、前記溶媒及び生成水分からなる揮発分含有量が30〜50重量%程度、イミド化率が5〜80%程度である長尺状固化フィルム(自己支持性フィルム)を形成し、上記固化フィルムを支持体表面から剥離する。
【0023】
前記の固化フィルムを、さらに乾燥条件を調整して、温度:室温(25℃)〜250℃、時間:0.5〜30分間程度乾燥する乾燥工程を加えてもよい。
これらの乾燥工程の少なくとも一部で固化フィルムの幅方向の両端縁を把持し延伸した状態を保つことによって、幅方向(TD)あるいは両方向(MD、TD)に少し延伸してもよい。
【0024】
ポリイミドフィルムは、次いで、好適にはキュア炉内において固化フィルムを高温に加熱して乾燥およびイミド化を完了させて得ることができる。
すなわち、前記のようにして得られた固化フィルムを必要であればさらに乾燥して、乾燥フィルムの幅方向の両端縁を把持した状態で、キュア炉内における最高加熱温度:400〜500℃程度、特に475〜500℃程度の温度が0.5〜30分間となる条件で該乾燥フィルムを加熱して乾燥およびイミド化して、残揮発物量0.4重量%以下程度で、イミド化を完了することによって長尺状の厚みが1〜80μm、好適には3〜50μmで、前記の線膨張係数を有するポリイミドフィルムを好適に製造することができる。
上記のようにして得られたポリイミドフィルムを、好適には低張力下あるいは無張力下に200〜400℃程度の温度で加熱して応力緩和処理して、巻き取ってもよい。
【0025】
この発明においては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸成分とp−フェニレンジアミンを含む芳香族ジアミン成分とを前記溶媒中で重合させたポリアミック酸の溶液をド−プとして支持体上に流延し、支持体から剥離した自己支持性フィルムを前記条件で加熱乾燥することによって、厚み1〜80μmの、特に面配向度を高く制御されたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0026】
この発明においては、好適には前記のポリイミドフィルムを不活性ガス雰囲気下で1000〜2000℃で焼成することにより炭化膜とし、これをさらに2600〜3000℃でグラファイト化する高配向グラファイト層状シ−ト物を得ることができる。
【0027】
炭化膜を得るには、ポリイミドフィルムを、不活性雰囲気下で前記温度範囲内で加熱し、炭化すればよい。
前記の炭化における不活性雰囲気とは、酸素など酸化活性の気体がないことが必要であり、アルゴン、ヘリウム、窒素などが適当である。特に炭化には、アルゴンが好ましい。
【0028】
ポリイミドフィルムを炭化する際、分解物がスム−ズに留去するように、またいったん蒸発した分解物が再び沈着しないように、不活性ガスの気流中で行うのが好ましい。前記炭化はポリイミドフィルムが徐々に炭化するのが好ましく、昇温速度30℃/分以下、特に0.5〜30℃/分程度の速度で昇温することが好ましい。
【0029】
次いで、得られた炭化フィルムを、さらに不活性雰囲気下で2600〜3000℃でグラファイト化して、高配向グラファイト層状シ−ト物を得ることができる。
このとき加熱と同時に圧力を加えながら処理してもよい。この場合、等方加圧の装置で加熱するのが好ましい。等方加圧処理すると、結晶化に伴う収縮に対し等方的に圧力が追従する為に、初期形状を略保持しながら等方的に試料全体が収縮するので、前駆体フィルムの形状、構造のグラファイト層状物を作製したい場合には、特に好ましい。
【0030】
また、フィルム面に圧力を加える方法としては、加熱しながら、耐熱性の多孔板、またはフィルムシ−トに挟み込み、炭化及び黒鉛膜の形状に整えるのに好適である。例えば、炭素板、炭素フィルムに挟むのがよい。
【0031】
この発明のグラファイト層状物は、結晶子サイズが大きく、好適には(002)面方向についての結晶子サイズが90Å(オングストロ−ム)以上、特に100〜1000Åであり、特にC軸格子定数が6.80Å以下、特に6.70Å以下である。
【0032】
この発明のグラファイト層状物は、好適には結晶化度が75%以上、好適には90%以上、特に95%以上あり、しなやかで強くしかも柔軟性を有する層構造であるため、横方向への電気伝導性および熱伝導性に優れ、電気伝導体としてあるいは熱伝導体として好適である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の各例において、フィルムの厚み、線膨張係数、引張弾性率、格子定数、結晶化度、結晶子サイズは以下によって求めたものである。
【0034】
▲1▼フィルムの厚み
フィルム厚みは、市販の接触式マイクロメ−タ−及び走査型電子顕微鏡による断面観察によって測定した。
▲2▼線膨張係数
ポリイミドフィルムの線膨張係数(20〜200℃):300℃で30分加熱して応力緩和したサンプルをTMA装置(引張りモ−ド、2g荷重、試料長10mm、20℃/分)で測定した。
▲3▼引張弾性率:ASTM D882に従って測定(MD)
【0035】
▲4▼格子定数
(002)面、(101)面の面間隔より、グラファイト結晶の格子定数を求めた。
▲5▼結晶化度
グラファイト膜の結晶化度は、グラファイト膜を粉にして、X線回折を測定し、Ruland法により測定した。
▲6▼結晶子サイズ
(002)面、(101)面のピ−クの半値幅より、Shellerの式に従って求めた。
【0036】
実施例1〜5
1)ポリイミドフィルムの作成
酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(ODA)、もしくはPDAとODAの両方を所定の比で混合したものを用い、s−BPDAに対するジアミン成分のモル比が0.994で且つ該モノマ−成分の合計重量が16重量%になるように1−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、温度40℃、10時間重合を行ってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は6000ポイズであった。
得られたポリイミド前駆体溶液を、ガラス基板上に厚みが約15〜180μmになるように流延し、大気中で80℃から180℃までの熱処理を行いゲル化を行った。その後ゲル化したフィルムをピンテンタ−に張り直し固定した状態で、大気中にて120℃から400℃までの熱処理を行うことにより、フィルムの膜厚み、面配向性の異なるフィルムを数種類作成した。
【0037】
2)イミド化触媒添加ポリイミドフィルムの作成
酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミン成分としてPDAを用い、s−BPDAに対するジアミン成分のモル比が0.994で且つ該モノマ−成分の合計重量が16重量%になるようにNMPに溶解し、さらにイミド化触媒として1,2−ジメチルイミダゾ−ルを固形分成分に対して2重量%になるように溶液に添加した。この溶液を温度40℃、10時間攪拌することにより重合反応を行ってポリイミド前駆体溶液を得た。ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は6800ポイズであった。
得られたポリイミド前駆体溶液を、ガラス基板上に厚みが約40〜100μmになるように流延し、大気中で80℃から180℃までの熱処理を行いゲル化を行った。その後ゲル化したフィルムをピンテンタ−に張り直し固定した状態で、大気中にて120℃から400℃までの熱処理を行うことにより、フィルムの膜厚み、分子の面配向性、の異なるフィルムを数種類作成した。
いずれのポリイミドフィルムも、700kg/mm2以上の引張弾性率(MD)を有していた。
【0038】
3)炭化フィルムの作成
前記の1)および2)で得られたポリイミドフィルムを、窒素ガス気流中で、通気性の炭素シ−トで両面を挟んで、10℃/分の速度で20℃から1400℃まで昇温し、1400℃で120分保持した。得られたフィルムは光沢を呈しており、また外観形状は破損も無くフラットで炭素化前の状態を保持していた。X線回折により得られた結果では、炭化膜(フィルム)はわずかに結晶の様相を示し、ル−ランド(Ruland)法により求めた結晶化度は15〜40%であった。
【0039】
4)グラファイトフィルムの作成
前記の3)で得られた炭化フィルムに、熱間等方圧プレス装置(HIP)で黒鉛化熱処理を施した。炭素フィルムを通気性の炭素シ−トで一枚一枚挟んでHIPチャンバ−内にセットした。アルゴンガスで加圧しながら10〜20℃/分の速度で昇温し、2600度で2000気圧の条件で1時間保持し、その後は徐々に減圧しながら炉冷して、グラファイトフィルム(シ−ト)を得た。得られたフィルムの外観はHIP処理前と変わらず形状を保持しており、灰色がかった光沢を呈していた。
【0040】
5)グラファイトフィルム(シ−ト)のキャラクタリゼ−ション
得られたグラファイトシ−トは、X線回折及び走査型電子顕微鏡(SEM)観察及び透過型電子顕微鏡(TEM)観察により評価した。いずれも層状構造を有し柔軟性および靭性を有していた。表1にポリイミドフィルムの製膜条件とグラファイトフィルムの性状を示す。いずれのフィルムも黒鉛化度は98%以上と評価された。
【0041】
【表1】
【0042】
各々のグラファイトフィルムのSEMによる断面観察図を図1〜図5に示す。グラファイト層状構造が発達している様子がよくわかる。図1〜図3を比較すると、膜厚が薄いほど一枚一枚のグラファイト層が大きく成長している傾向にある。また、イミド化触媒であるイミダゾ−ルを添加したものの方がグラファイト結晶の成長を促進する。また、線膨張係数が小さいほど、面配向性が高くグラファイト結晶が大きく成長している。
【0043】
【発明の効果】
この発明によれば、層状構造を有し柔軟性および靭性を持つ高配向グラファイト層状シ−ト物を得ることができる。
また、この発明の方法によれば、ポリイミドフィルムから任意の結晶子サイズ、厚みの高配向グラファイト層状シ−ト物を安定的かつ精密に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1のグラファイトフィルムのSEMによる断面観察図(倍率:10000倍)である。
【図2】図2は、実施例2のグラファイトフィルムのSEMによる断面観察図である。
【図3】図3は、実施例3のグラファイトフィルムのSEMによる断面観察図である。
【図4】図4は、実施例4のグラファイトフィルムのSEMによる断面観察図である。
【図5】図5は、実施例5のグラファイトフィルムのSEMによる断面観察図である。
Claims (9)
- 20〜200℃における線膨張係数が10.3ppm/℃以下であるポリイミドフィルムから得られ、SEMによる断面観察によってグラファイト層状構造を有し、厚みが1〜50μmである高配向グラファイト層状シ−ト物。
- ポリイミドフィルムは、C軸格子定数が6.67Å以下であり、結晶子サイズが150Å以上であることを特徴とする請求項1に記載の高配向グラファイト層状シ−ト物。
- 高配向グラファイト層状シ−ト物は、ポリイミドフィルムを不活性ガス雰囲気下で1000〜2000℃で炭化膜とし、これを2600〜3000℃でグラファイト化したものである請求項1又は請求項2に記載の高配向グラファイト層状シ−ト物。
- ポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミン15モル%を超えて100モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル0〜85モル%(p−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルの総和は100モル%)とのジアミン成分とから得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高配向グラファイト層状シ−ト物。
- 厚みが1〜80μmで、20〜200℃における線膨張係数が10.3ppm/℃以下であるポリイミドフィルムを不活性ガス雰囲気下で比較的低温で焼成することにより炭化膜とし、これをさらに高温でグラファイト化する高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
- ポリイミドフィルムは、C軸格子定数が6.67Å以下であり、結晶子サイズが150Å以上であることを特徴とする請求項5に記載の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
- ポリイミドフィルムは、20〜200℃における線膨張係数が5〜10.3ppm/℃であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
- ポリイミドフィルムは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸成分と、p−フェニレンジアミン15モル%を超えて100モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル0〜85モル%(p−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルの総和は100モル%)とのジアミン成分とから得られることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
- ポリイミドフィルムを不活性ガス雰囲気下で1000〜2000℃で焼成することにより炭化膜とし、これを2600〜3000℃でグラファイト化することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の高配向グラファイト層状シ−ト物の製造方法。
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