JP4189569B2 - 炭素フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミドフィルムを高温で炭素化することにより得られる、不溶不融で高剛性と高熱伝導率を有する炭素フィルムの製造法に関する。
【0002】
この炭素フィルムは電極、発熱体、構造体、ガスケット、断熱体、耐食性シール材、電機用ブラシ、X線または中性子線モノクロメータ、原子炉用減速材、電池用セパレータなどに好ましく用いられる。
【0003】
【従来の技術】
放熱板に使用される金属板は高比重で、熱伝導率が十分でなく、屈曲性も不足していた。
【0004】
例えば、アルミニウムは比重が約2.7、熱伝導率が200[Wm-1-1]であり、更に屈曲により破れが生じ易かった。そこで、高分子を高温で焼成し炭素化することが、特公昭64−12305号公報、特開平1−105199号公報、特開平4−310569号公報、特開平4−21508号公報、特開平3−75211号公報、特開昭62−91414号公報、特開昭53−139676号公報、特開昭60−11215号公報など提案されている。また、ビニレン基系高分子フィルムを延伸させた後に炭素化処理を行う方法が特公平1−48204号公報に開示されている。これらに用いられている高分子フィルムの焼成では、炭素収率が低いため収縮が激しく平面性、強度などに問題があった。
【0005】
炭素収率が高い芳香族ポリイミドフィルムを用い、これを高温加熱処理により熱分解させて炭素フィルムを得る方法が、特開平5−43213号公報、特公昭64−12305号公報などに開示されている。特開平4−149012、特開平4−149013では、焼成後の脆さを改良するため、バインダーを含浸させたり、圧延し強度を向上させたりしている。これらの方法では手間がかかるり、又熱伝導率が十分でない問題があった。上記で具体的に示されているのは熱閉環法によるものである。例えば、具体的には特許3152316号公報では多価アミンを利用し熱閉環法によるポリイミドフィルムを出発物質とした炭素フィルムが開示されている。これらの問題として、多価アミンが毒性が強く取り扱い性が難しいこともある。
【0006】
一方、ポリイミドフィルムを製造する方法で、イミド化触媒を用いて閉環する化学閉環法と、イミド化触媒を用いない熱にのみで閉環する熱閉環法とがある。これらの課題を解決するため、本発明者は驚くべき事に化学閉環法で作成した2軸延伸ポリイミドフィルムの面配向および面方向熱膨張係数の関係が、高熱伝導性、高剛性の炭素フィルムとして好適となることが本発明者によって明らかにされた。
【0007】
また熱拡散板として従来アルミニウム(Al)または銅(Cu)などが用いられてきた。それぞれの熱伝導率は約200[W/(m/K)]または約350[W/(m/K)]である。
またそれぞれの比重は2.7または8.9である。近年の携帯型コンピューターに好適な、軽量で高熱伝導率の特徴を有する材料は無かった。
【0008】
このため化学閉環法でかつ延伸により配向させ面方向の熱膨張係数との関係を最適化したポリイミドフィルムを作成し、その後特別な条件で焼成し炭素するということにより、好適な炭素フィルムを得るという発明に至った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたもので、3つの工程を経ることにより好適な炭素フィルムを得る。即ち、(1)化学閉環法によりポリイミドフィルムを製造する工程、(2)低温で延伸することによりヤング率、平面性および等方性が改良された、厚み方向の熱膨張係数および平面方向の熱膨張係数との比が4以上である延伸フィルムを提供する工程、(3)更に高温で非酸化性雰囲気下で炭素化する工程、を経ることにより高剛性、軽量かつ高熱伝導率性に優れた炭素フィルムを製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の炭素フィルムの製造方法は、少なくとも次の3つの工程を経る。
(1)化学閉環法によりイミド化しポリイミドフィルムを製造する工程。
(2)少なくとも一部がイミド化したフィルムを2軸延伸する工程。
(3)前記(1)および(2)の工程を経て、厚み方向熱膨張係数(CTEz)と面方向の熱膨張係数(CTEave)との比(CTEz/CTEave)が4以上であるポリイミドフィルムを温度500℃以上で不活性ガス又は真空中で炭素化して、比重が2.0以下、熱伝導率が400[Wm−1K−1]以上の炭素フィルムを形成する工程。
【0011】
経由するポリイミドフィルムは芳香族テトラカルボン酸無水物として、ピロメリット酸二無水物類、ビフェニルテトラカルボン酸類、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類のうち1種以上含むポリイミドが好ましい。
【0012】
また経由するポリイミドフィルムは芳香族ジアミン成分として、パラフェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンのうち少なくとも1種以上含むポリイミドであることも好ましい。
【0013】
更に、ポリアミド酸溶液から膜を形成し、次いで00℃以下の温度で、面積倍率1.1〜4倍に延伸される2延伸工程も好ましい。
【0014】
また2軸延伸工程は、以下の(A)〜(E)の工程を経ることも好ましい。
【0015】
(A)芳香族テトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミン成分を、不活性な溶剤中で反応させポリアミド酸を形成する工程、
(B)前記工程(A)からのポリアミド酸溶液に、ポリアミド酸をポリイミドに転化することのできる転化用薬剤を混合する工程、
(C)前記工程(B)からの混合物を平滑面上にキャストまたは押出して、ポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成する工程、および
(D)前記工程(C)からのゲルフィルムを、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に1.1〜2倍延伸し、この延伸されたゲルフィルムの端部をテンタクリップにより把持し、このゲルフィルムを幅方向に走行方向の延伸倍率の0.8〜1.3倍の倍率で延伸する工程。この工程での延伸操作は異なる温度で少なくとも2回に分割されて延伸される。
【0016】
(E)500℃以下の温度で加熱してポリアミド酸をポリイミドに変換する工程。
【0017】
またこの(3)の炭素化工程において、予め、ポリイミドフィルムを不活性ガス又は真空中で500〜800℃の温度で不融化処理し、次いで、不活性ガス又は真空中で800〜3500℃以上の温度で加熱することも好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成及び効果について詳述する。
【0020】
本発明の炭素フィルムの製造方法およびそれから得られる炭素フィルムは、
少なくとも次の3つの工程を経る。
(1)化学閉環法によりイミド化しポリイミドフィルムを製造する工程。
(2)少なくとも一部がイミド化したフィルムを2軸延伸する工程。
(3)前記(1)および(2)の工程を経て、厚み方向熱膨張係数(CTEz)と面方向の熱膨張係数(CTEave)との比(CTEz/CTEave)が4以上であるポリイミドフィルムを温度500℃以上で不活性ガス又は真空中で炭素化して、比重が2.0以下、熱伝導率が400[Wm-1-1]以上の炭素フィルムを形成する工程
を含むことを特徴とする炭素フィルムの製造方法。
【0021】
ポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミン成分からポリアミド酸を経由して製造される。
【0022】
経由するポリイミドフィルムは芳香族テトラカルボン酸無水物として、ピロメリット酸二無水物類、ビフェニルテトラカルボン酸類、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類のうち1種以上含むポリイミドが好ましい。更には、ピロメリット酸二無水物類、ビフェニルテトラカルボン酸類のうち1種以上含むポリイミドが好ましい。最も好ましくは、ピロメリット酸二無水物類である。
【0023】
また経由するポリイミドフィルムは芳香族ジアミン成分として、パラフェニレンジアミンの他に、ベンゼン環を二つ以上有するジアミン類が好ましい。例えばオキシジアニリン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシビフェニル、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。特にパラフェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンのうち少なくとも1種以上含むポリイミドであることも好ましい。
【0024】
無機粒子を添加する場合は少量添加が好ましいが、特に焼結工程中に黒鉛結晶核剤となりうる粒子の添加が好ましい。例えば黒鉛粉砕粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどのグラファイト構造およびグラファイト異種形状を有する微粒子がある。扁平または繊維状の粒子は延伸時に面内方向に長軸が配向するので、平均短軸径が1μm以下の微細な扁平粒子または繊維状粒子が好ましい。好ましい添加量は20重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0025】
また黒鉛結晶核剤能のない粒子の添加量は1重量%以下が好ましい。
【0026】
添加はポリマー重合前後、配管中の移液中または押出キャスト直前にポリマー溶液に混合し行うことが出来る。
【0027】
このポリアミド酸溶液から膜を形成し、次いで500℃以下の温度で、好ましくは50〜450℃の温度で、互いに直交する2軸方向に面積倍率1.1〜4倍に延伸される。延伸ポリイミドフィルムの好ましいヤング率は4[GPa]以上である。
【0028】
ポリアミド酸のイミド転化の方法は、イミド転化薬剤を混合したポリアミド酸を加熱処理したり、またはポリアミド酸をイミド転化薬剤の浴に浸漬する化学転化法のいずれも採用することができる。本発明においては、化学転化法が熱転化法に比べて、可撓性の炭素フィルムが、高弾性率、平面性および製膜性を均衡して高度に実現するのに好適である。
【0029】
化学転化法によってポリアミド酸にイミド転化薬剤を混合し、フィルム状に成形後加熱処理する方法は、イミド転化に要する時間が短く、均一にイミド転化が行える等の利点に加え、支持体からの剥離が容易であり、さらには、臭気が強く、隔離を必要とするイミド転化用薬剤を密閉系で取り扱える等の利点を有することから、ポリアミド酸フィルム成形後に転化用薬剤や脱水剤の浴に浸漬する方法に比べて好ましく採用される。
【0030】
本発明においては、イミド転化用薬剤として、イミド転化を促進する3級アミン類と、イミド転化で生成する水分を吸収する脱水剤とを併用する。3級アミン類は、ポリアミド酸とほぼ等モルないしやや過剰に添加混合され、脱水剤は、ポリアミド酸の約2倍モル量ないしやや過剰に添加されるが、支持体からの剥離点を調整するために適当に調整される。
【0031】
後述するが、イミド転化用薬剤は、ポリアミド酸を重合完了した時点から、ポリアミド酸溶液がフィルム成形用口金やコーチングヘッドに達するいかなる時点で添加してもよいが、送液途中におけるイミド転化を防止する意味では、フィルム成形用口金またはコーチングヘッドに到達する少し前に添加し、混合機で混合するのが好ましい。
【0032】
3級アミンとしては、ピリジンまたはβ−ピコリンが好適であるが、α−ピコリン、4−メチルピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン等も使用することができる。使用量は、それぞれの活性によって調整する。
【0033】
脱水剤としては、無水酢酸が最も一般的に使用されるが、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、安息香酸、蟻酸無水物等も使用することができる。
【0034】
イミド転化薬剤を含有するポリアミド酸フィルムは、支持体上で支持体および反対面空間から受ける熱により、イミド転化が進み、一部イミド転化したポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムとなり、支持体から剥離される。
【0035】
重合に用いられる有機溶剤としては、それぞれの成分および重合生成物であるポリアミド酸と非反応性であり、成分の1つから全てを溶解でき、ポリアミド酸を溶解するものから選択するのが好ましい。
【0036】
望ましい有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、これらは単独でまたは混合使用することができ、場合によってはベンゼン等の貧溶媒と併用することも可能である。
【0037】
熱閉環では高温での焼成時に配向緩和が生じる結果、厚み方向の熱膨張係数(CTEz)および平面方向の熱膨張係数(CTEave)との比(CTEz/CTEave)が4未満となり、炭素フィルムの弾性率が低下したり熱伝導率が十分高くならない。
【0038】
炭素化前に延伸し、配向させることにより炭素化フィルムの結晶構造、特に黒鉛結晶構造の配向が加速され緻密な構造となり、剛性・強度が向上する傾向がある。この場合、ポリイミドフィルムの剛性が高ければ炭素フィルムの剛性が高くなるとは一概にはいえないが、CTEz/CTEaveおよび後述する前焼成工程条件との相対関係とに関係するが、それぞれの特性値をバランスするために、化学閉環法で製造することが必要である。
【0039】
本発明のポリアミド酸は、175℃以下、好ましくは90℃以下の温度で、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を、モル比を約0.90から1.10、好ましくは0.95から1.05、更に好ましくは0.98から1.02とし、それぞれの成分と非反応性の有機溶剤中で反応させることにより製造される。後述するブロック重合または混交ポリマー重合方法が好ましい。
【0040】
上記それぞれの成分は、単独で順次有機溶剤中に供給してもよいし、同時に供給してもよく、また混合した成分に有機溶剤を供給してもよいが、均一な反応を行わせるためには、有機溶剤中に各成分を順次添加することが好ましい。
【0041】
それぞれの成分を順次供給する場合の供給順序は、ブロック成分または混交ポリマー成分となるジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを優先して供給することが好ましい。すなわち、ブロック成分または混交ポリマー成分を含有するポリアミド酸を製造するために、その反応を少なくとも2回に分割して実行させ、まずブロック成分または混交ポリマー成分を含有するポリアミド酸を得てから、これをイミド転化することにより、得られるポリイミドにブロック成分または混交ポリマー成分を組み込ませるのである。
【0042】
また炭素フィルムは、ポリイミドフィルムを製造する工程で、更に工程(A)〜(E)を順次行うブロック成分または混交ポリマー成分を有する延伸ポリイミドフィルムの製造する工程を含むことも好ましい。
【0043】
(A)芳香族テトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミンを、不活性な溶剤中でで反応させポリアミド酸を形成する工程、
(B)前記工程(A)からのポリアミド酸溶液に、ポリアミド酸をポリイミドに転化することのできる転化用薬剤を混合する工程、
(C)前記工程(B)からの混合物を平滑面上にキャストまたは押出して、ポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成する工程、および
(D)前記工程(C)からのゲルフィルムを、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に1.1〜2倍延伸し、この延伸されたゲルフィルムの端部をテンタクリップにより把持し、このゲルフィルムを幅方向に走行方向の延伸倍率の0.8〜1.3倍の倍率で延伸する工程。
【0044】
(E)500℃以下の温度で加熱してポリアミド酸をポリイミドに変換する工程。
【0045】
(C)〜(E)の工程でイミド化が順次行われ、(F)の工程でイミド化工程を終了することが出来る。このイミド化により縮合水が順次放出される。
【0046】
そして、延伸操作および/またはポリイミドポリマにさらにブロック成分または混交ポリマー成分を組み込むことにより、上記各特性をより好ましい範囲にすることができる。
【0047】
ポリアミド酸のブロック成分または混交ポリマー成分を生成するために必要な時間は、反応温度とブロック成分または混交ポリマー成分のポリアミド酸中における比率で決定すればよいが、経験的には約1分から約20時間程度が適当である。
【0048】
このとき後述するようにブロック成分を含有するポリマーを形成するためには(A)反応工程中で反応させるジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とは実質的に非等モルである。
【0049】
また混交ポリマー成分を形成させるためには(A)反応工程中でのジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とは実質的に等モルであること、またはジアミン過剰の反応工程を経る場合はジカルボン酸無水物で末端を封鎖することが好ましい。ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とが実質的に等モルであること、またはジアミン過剰の反応工程でジカルボン酸無水物で末端を封鎖することは、これらの反応工程で形成された混交ポリマー成分が化学的に不活性で後工程の反応で形成されるポリイミドポリマーの末端に組み込まれないことを意味する。しかるに混交ポリマー成分の反応とその後のポリイミドを形成する反応とが同一反応槽で行われることにより、モレキューラーコンポジット(異なる分子同士の複合体)が形成され易くなり混交ポリマー成分の特徴がより発現できるのである。
【0050】
前述したようにイミド化には閉環触媒を用い更に加熱を行う化学閉環法、及び閉環触媒を用いないで加熱のみで閉環する熱閉環法とがある。これらの内、化学閉環から得られるポリアミド酸から製造されるゲルフィルムは、二軸延伸する際の延伸性が良く、従って安定して高倍率での二軸延伸ができるので、本発明の炭素フィルムは化学閉環法で製造されたポリイミドフィルムを経由して製造される。該ゲルフィルムはスリット付口金から加熱された支持体上に流延されてフィルム上に成型され、ポリアミド酸は支持体上で閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。支持体は金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであって良く、その温度は熱媒、または電気ヒータ等の輻射熱により制御される。
【0051】
従来のポリイミドフィルムの製造時には、溶媒乾燥時の自己収縮による延伸操作が主であったが、本発明では2軸延伸される。
【0052】
好ましくは面積延伸倍率が1.1倍以上で延伸される。面積倍率で1.1倍以上とすることにより炭素化フィルムの剛性・強度および可とう性が改良できる。延伸される状態はポリアミド酸ゲルフィルム、ポリアミド酸/ポリイミド共存ゲルフィルムまたはポリイミドフィルムのいずれかまたは2段階以上の工程を組み合わせて延伸しても良い。ゲルフィルムは好ましくは500℃以下の温度で、延伸される。
【0053】
イミド化率が高いほど、または溶媒含有量が少ないほど、延伸による配向効果は高くなるが、逆にフィルム破断が起こりやすくなるのでイミド化率または溶媒含有量が異なる工程で2段階以上に分割されて延伸操作が施されることが好ましい。もちろん、ポリアミド酸ゲルフィルム、ポリアミド酸/ポリイミド共存ゲルフィルムまたはポリイミドフィルムの状態で、特にポリイミドフィルムの状態で同時2軸で延伸されることも他の工程と組み合わせて好ましく行われる。
【0054】
2段階以上の工程を組み合わせて延伸される場合は、互いに直交する2軸方向に延伸されるが、異なる温度で延伸されることも好ましく用いられる。
【0055】
ゲルフィルムは支持体からの受熱または外側の熱風や電気ヒータ等の熱源からの受熱により30℃から200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応が進行し、有機溶媒などの揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。閉環反応の進んでいないポリアミド酸のフィルムを急激に加熱すると平滑な表面のゲルフィルムを得られないため加熱温度は適宜管理する必要がある。
【0056】
好ましい方法として、支持体から剥離されたゲルフィルムは回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向(MD)に延伸される。延伸は50〜200℃の温度で1.1〜2倍、好ましくは1.1〜1.6倍の倍率で実施される。回転ロールはゲルフィルムの走行速度を規制する必要な把持力が必要であり、金属ロールとゴムロールを組み合わせて成るニップロールまたは減圧吸引方式のサクションロールを使用する。ゲルフィルムのMD方向への延伸倍率が1.1倍未満では延伸効果が小さく、高強度化が不十分な場合がある。延伸倍率が大きくなると、MD方向の力学的性質や寸法安定性の改善効果は大きくなるが、ゲルフィルムが破断しやすくなるため後続する幅方向の選定範囲が狭くなる。このため、MD延伸倍率は1.1〜1.9倍、好ましくは1.1〜1.6倍の範囲である。
【0057】
走行方向に延伸されたゲルフィルムはテンタ装置に導入され、テンタクリップに幅方向両端部を把持されて、テンタクリップに幅方向両端部を把持されて、テンタクリップと共に走行しながら幅方向(TD)へ延伸され、有機溶媒等の揮発分成分を乾燥された後熱処理されて二軸配向ポリイミドフィルムとなる。幅方向への延伸は200〜500℃、好ましくは450℃以下の温度で次の式(i)で定義される延伸倍率比が0.9〜1.3、好ましくは1.0〜1.3となる幅方向の延伸倍率で実施される。
【0058】
(TD方向の延伸倍率)/(MD方向の延伸倍率)=延伸倍率比・・・(i)
延伸倍率比は本発明の目的の一つである高剛性および面内等方性の改善のため重要である。延伸倍率比が0.9未満ではMD方向への配向効果が強くなり、1.3倍を超えるTD方向への配向効果が強くなるため、平面性または面内等方性が好適な範囲を外れてしまう場合がある。またゲルフィルムが乾燥オーブンに導入される前に幅方向の延伸はその延伸倍率の50%以上を実施するのが好ましい。このゲルフィルムのMD方向およびTD方向の延伸はこの順序か、逆の順序で逐次的に行っても、また同時に行っても良い。
【0059】
ゲルフィルムの延伸性はその固形分濃度に影響され、ゲルフィルムの乾燥が進んで固形分濃度が60重量%になると延伸が困難になり、高速の延伸時にゲルフィルムの破断が生じる場合がある。そのため、成型されて支持体から剥離されたゲルフィルムの固形分濃度は50重量%以下が好ましい。またゲルフィルムの自己支持性を保持するためには固形分濃度は5重量%以上である。
【0060】
テンタオーブンにおけるゲルフィルムの乾燥および熱処理は熱風または電気ヒータ等による輻射熱を使用して実施され、乾燥温度は200〜400℃、熱処理温度は350〜500℃であるが、急激に加熱するとゲルフィルムに含有される揮発分成分の発泡により空隙が発生するため加熱方法を制御する方法がある。
このようにして製造された二軸延伸ポリイミドフィルムは、分子鎖がフィルム面方向に配向され、分子鎖の面方向への配向の程度を示す次の式(ii)で定義される面配向係数が0.11以上となり、寸法安定性の代表値である平均面内熱膨張係数(CTEave)が未延伸フィルムよりも次の式(iii)で計算して少なくとも10%小さくなり、更に面内等方性を示す次の式(iv)で定義される面内異方性指数が20以下である力学的性質を有し、面内等方性に優れており、更に改良された寸法安定性をも有する二軸延伸ポリイミドフィルムとすることが好ましい。
【0061】
(面内最大屈折率+面内最小屈折率)/2−厚さ方向屈折率=面配向係数・・・(ii)
(α−β)×100/α ・・・・・・・・・・・・・(iii)
但し、α・・・未延伸フィルムのCTEave
β・・・二軸延伸フィルムのCTEave
(γ2−δ2)/(γ2+δ2)×200=面内異方性指数(AI値)・・・(iv)
但し、γ・・・最大配向角方向の音波伝播速度
δ・・・最小配向角方向の音波伝播速度
以上のように製造された延伸ポリイミドフィルムまたは炭素化前のポリイミドフィルムの厚み方向の熱膨張係数(CTEz)および面方向の熱膨張係数(CTEave)の比(CTEz/CTEave)は4以上である。好ましくは5以上、更に好ましくは6以上である。CTEz/CTEaveが4未満では、面内の配向が十分でない。分子構造論的にはポリイミドの芳香環が面に平行方向に揃うことで、炭素化時の面内収縮の応力が絶対長さの短い厚み方向に逃げるため、絶対長さの大きい面内の割れが防止できるのである。以上の理由により前述したとおりCTEz/CTEave)は4以上であり、好ましくは面配向係数が0.11以上である。
【0062】
このポリイミドフィルムを500℃以上で不活性ガス又は真空中で炭素化する。
【0063】
一旦500〜800℃の間で前処理焼成を行い、800℃以上で後処理焼成を行う方法が好ましい。
【0064】
500〜800℃の前処理工程で脱水反応が進行する。この脱水反応は500℃以下で行われるイミド化による脱水とは異なり、解重合に起因する脱水素反応に伴う脱水である。従ってこの工程は解重合が伴うためボイド生成を抑制するように管理することが重要である。この前工程では好ましくは比重を1.1以上、更に好ましくは1.3以上、最も好ましくは1.5以上に保つように管理することである。この工程で比重が1.1未満のフィルムは、後述する後焼成工程で脆くなりフィルム割れなどが生じ好ましくない。
【0065】
炭素フィルム強度を向上させるため、前焼成処理工程の後または後焼成工程の後にプレスまたはロールなどで圧延し中に含まれるボイドまたは空隙を除くことも好ましい。
【0066】
前処理工程のみでは焼成時間が十分でない場合グラファイト構造が十分成長化されないため、柔軟性が乏しく脆くなる。後処理焼成温度の好ましい範囲は1000℃以上3500℃以下、更に好ましくは2000℃以上3400℃以下である。後処理焼成の温度にて長時間保持し黒鉛結晶構造を再配列成長させることも好ましい。3500℃を超えると炭素の昇華が起こり炭素収率が低くなるので好ましくない。
【0067】
以上の工程を経て得られた炭素フィルムは、比重が2.0以下、熱伝導率が400[Wm-1-1]以上である。
【0068】
比重は低い程良いが、具体的な好ましい比重は1.8以下、更には1.75以下、最も好ましくは1.7以下である。
【0069】
比重が2.0を超えると、放熱シートとして組み込まれた場合、軽量化と高性能化が両立しにくい。
【0070】
好ましい引張り弾性率は20[GPa]以上である。更に好ましい弾性率は30[GPa]以上、最も好ましくは40[GPa]以上である。弾性率が20[GPa]未満では、炭素分子の配向が不十分であるか、炭素からなる結晶が十分に成長していない為、強靱性が劣る物となる。
【0071】
好ましい熱伝導率は600[Wm-1-1]以上、更には900[Wm-1-1]以上である。熱伝導率が400[Wm-1-1]未満では携帯型電子機器の放熱シートとして性能が不十分である。
【0072】
本発明の炭素フィルムにより、可撓性の熱放熱シートを実現することができる。
【0073】
具体的に、テトラカルボン酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)、ジアミン成分として、3,4’−オキシジアニリン(34’ODA)と4,4’−オキシジアニリン(44’ODA)を使用し、PMDAと34’ODAとからなるブロック成分または混交ポリマー成分を含有するポリイミドフィルムを経由した炭素フィルムの製造例を以下に説明する。
【0074】
まず、有機溶剤としてのジメチルアセトアミド(DMAc)に、34’ODAを溶解し、PMDAを加え、第一段目のブロック成分または混交ポリマー成分の反応を完了させる。
【0075】
次いで、溶液に44’ODAを加え溶解した後、溶液にPMDAを加えて反応させることにより、34’ODAとPMDAとのブロック成分または混交ポリマー成分を含有するポリアミド酸溶液が得られる。
【0076】
この場合に、最初に供給するPMDAに微量の44’ODAを添加したり、最初に反応させる34’ODAとPMDAとのモル比を非等量にし、過剰量のジアミン成分と十分に反応させる量の末端封止剤を添加することにより、混交ポリマー成分の大きさを制御することも可能である。この様に混交ポリマー成分の効果を有効にするためには、34’ODAとPMDAとのモル比を実質的に等量とするまたは酸無水物/ジアミンのモル比を非等量にし、過剰量のジアミン成分と十分に反応させる量の末端封止剤で末端封鎖された混交ポリマーとすることが好ましい。
【0077】
この時用いる末端封止剤は無水ジカルボン酸、シリル化剤などの末端封止剤を固形分(ポリマー濃度)に対して0.001〜2%の範囲で添加することも好ましい。この無水ジカルボン酸として無水酢酸または無水フタル酸、シリル化剤として非ハロゲン系であるヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアが特に好ましく用いられる。
【0078】
ポリアミド酸の製造は、その溶液のポリアミド酸濃度と溶液の粘度とでその終了点を決定される。終了点の溶液の粘度を精度良く決定するためには、最後に供給する成分の一部を、反応に使用する有機溶剤の溶液として添加することは有効であるが、ポリアミド酸濃度をあまり低下させないような調節が必要である。
【0079】
溶液中のポリアミド酸濃度は、5ないし40重量%、好ましくは10ないし30重量%である。
【0080】
上記有機溶剤としては、それぞれの成分および重合生成物であるポリアミド酸と非反応性であり、成分の1つから全てを溶解でき、ポリアミド酸を溶解するものから選択するのが好ましい。
【0081】
望ましい有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、これらは単独でまたは混合使用することができ、場合によってはベンゼン等の貧溶媒と併用することも可能である。
【0082】
本発明の炭素フィルムの前駆体であるポリイミドフィルムを製造するに際しては、かくして得られたポリアミド酸溶液を押出機やギヤポンプで加圧して、ポリアミド酸フィルムの製造工程に送液する。
【0083】
ポリアミド酸溶液は、原料に混入していたり、重合工程で生成した異物、固形物及び高粘度の不純物等を除去するためにフィルターされ、フィルム成形用の口金やコーチングヘッドを通してフィルム状に成形され、回転または移動する支持体上に押出され、支持体から加熱されて、ポリアミド酸が一部イミド転化したポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムが生成され、このゲルフィルムが自己支持性となり、支持体から剥離可能となった時に支持体から剥離され、乾燥機に導入され、乾燥機で加熱されて、溶剤を乾燥し、イミド転化を完了することにより、ポリイミドフィルムが製造される。
【0084】
このとき、金属焼結フィルターを用いることは、途中で生成されたゲル物の除去に効果的である。好ましくは金属繊維焼結フィルターである。具体的には20μmカットの金属焼結フィルターであり、更に好ましくは10μmカットの金属焼結フィルターであり、最も好ましくは5μmカットの金属焼結フィルターである。
【0085】
ポリアミド酸のイミド転化の方法は、加熱のみによる熱転化法と、イミド転化薬剤を混合したポリアミド酸を加熱処理したり、またはポリアミド酸をイミド転化薬剤の浴に浸漬する化学転化法があるが、本発明においては、化学転化法でイミド化される。
【0086】
化学転化法によってポリアミド酸にイミド転化薬剤を混合し、フィルム状に成形後加熱処理する方法は、イミド転化に要する時間が短く、均一にイミド転化が行える等の利点に加え、支持体からの剥離が容易であり、さらには、臭気が強く、隔離を必要とするイミド転化用薬剤を密閉系で取り扱える等の利点を有することから、ポリアミド酸フィルム成形後に転化用薬剤や脱水剤の浴に浸漬する方法に比べて好ましく採用される。
【0087】
本発明においては、イミド転化用薬剤として、イミド転化を促進する3級アミン類と、イミド転化で生成する水分を吸収する脱水剤とを併用する。3級アミン類は、ポリアミド酸とほぼ等モルないしやや過剰に添加混合され、脱水剤は、ポリアミド酸の約2倍モル量ないしやや過剰に添加されるが、支持体からの剥離点を調整するために適当に調整される。
【0088】
そして、イミド転化用薬剤は、ポリアミド酸を重合完了した時点から、ポリアミド酸溶液がフィルム成形用口金やコーチングヘッドに達するいかなる時点で添加してもよいが、送液途中におけるイミド転化を防止する意味では、フィルム成形用口金またはコーチングヘッドに到達する少し前に添加し、混合機で混合するのが好ましい。
【0089】
3級アミンとしては、ピリジンまたはβ−ピコリンが好適であるが、α−ピコリン、4−メチルピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン等も使用することができる。使用量は、それぞれの活性によって調整する。
【0090】
脱水剤としては、無水酢酸が最も一般的に使用されるが、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、安息香酸、蟻酸無水物等も使用することができる。
【0091】
イミド転化薬剤を含有するポリアミド酸フィルムは、支持体上で支持体および反対面空間から受ける熱により、イミド転化が進み、一部イミド転化したポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムとなり、支持体から剥離される。
【0092】
この場合に、支持体および反対面空間から与える熱量は多いほどイミド転化が促進されて、速く剥離するが、熱量が多すぎると支持体とゲルフィルムの間の有機溶剤のガスがゲルフィルムを変形させ、フィルムの欠点となるので、剥離点の位置とフィルム欠点を勘案して、熱量を決定することが望ましい。
【0093】
支持体から剥離されたゲルフィルムは、乾燥機に導入され、溶剤の乾燥およびイミド転化の完了がなされる。
【0094】
このゲルフィルムは、多量の有機溶剤を含有しており、その乾燥過程において体積が大幅に減少する。したがって、この体積減少による寸法収縮を厚さ方向に集中させるために、ゲルフィルムの両端をテンタークリップで把持し、このテンタークリップの移動によりゲルフィルムを乾燥機(テンター)に導入し、テンター内で加熱して、溶剤の乾燥とイミド転化とを一貫して実施するのが一般的である。このゲルフィルムを、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に1.1〜2倍延伸し、この延伸されたゲルフィルムの端部をテンタクリップにより把持し、このゲルフィルムを幅方向に走行方向の延伸倍率の0.8〜1.3倍の倍率で延伸する。なお、テンター内において、フィルム両端のテンタークリップの距離を拡大または縮小して、延伸またはリラックスをおこなうことができる。
特に幅方向の延伸操作においてイミド化率、雰囲気温度または溶媒含有量が異なる状態で2段階以上に分割されて延伸操作が施されることは、フィルム破断を生じさせずに高延伸倍率が得られるので好ましい。
【0095】
熱収縮率を低くするためには、高温領域での冷却は低張力で徐冷することが好ましい。徐冷条件は50〜300℃の温度範囲の冷却速度が500℃/分以下、好ましくは100℃/分以下で冷却することが好ましい。
【0096】
この乾燥及びイミド転化は、50ないし500℃の温度で行われる。乾燥温度とイミド転化温度は同一温度でもよいし、異なる温度でもよいが、溶剤を大量に乾燥する段階では、低めの温度、具体的には50〜200℃で、として溶剤の突沸を防ぎ、溶剤の突沸のおそれがなくなったら、高温にして、具体的には200〜500℃で、イミド転化を促進するように、段階的に高温にすることが好ましい。
【0097】
好ましくはブロック成分または混交ポリマー成分を含有し、化学転化法によりイミド転化して得られるカットシート状のポリイミドフィルムは、上記のように製造した連続したフィルムから切り取って製造することができるが、少量のフィルムを製造するには、後述の実施例で示しているように、樹脂製やガラス製のフラスコ内で、好ましくはブロック成分または混交ポリマー成分を含有するポリアミド酸を製造し、このポリアミド酸溶液に化学転化薬剤を混合して得られる混合溶液を、ガラス板等の支持体上にキャストし、加熱して、一部イミド転化した自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムとして、支持体から剥離し、金属製の固定枠等に固定して寸法変化を防止しながら加熱して、溶剤の乾燥およびイミド転化する方法により製造することができる。
【0098】
このようにして、化学転化法によりイミド転化して得られる本発明のポリイミドフィルムは、熱転化法により得られるポリイミドフィルムに比しても、炭素フィルム用の原料に適用した場合に、高弾性率かつ熱伝導率に優れた炭素素材を提供できる。
【0099】
以上のような方法で得られた延伸ポリイミドフィルムは、厚み方向熱膨張係数(CTEz)と面方向の熱膨張係数(CTEave)との比(CTEz/CTEave)が4以上である。
【0100】
引き続き、炭素化工程を行う。上記で得られたポリイミドフィルムを黒鉛板に挟み、窒素ガス雰囲気中、1〜50℃/分の昇温速度で500〜800℃まで昇温し前焼成を行う(前焼成工程)。このときフィルムの比重は1.1以上に管理することが好ましい。一旦室温まで冷却し、前焼成したフィルムを炭素繊維織布に挟み、アルゴンガス雰囲気中で室温から10〜500℃/分の昇温速度で800〜3500℃まで昇温する(後焼成工程)。この焼成工程において、積層炭素フィルムを得るため、ポリイミドフィルムを重ね合わせて行っても良い。または前焼成工程で得られたフィルムを重ね合わせ後焼成工程を行っても良い。
【0101】
以上の製造方法により、本発明の比重が2.0以下、熱伝導率が400[Wm-1-1]以上の炭素フィルムを得ることが出来る。 更にこの炭素フィルムはこの優れた特性により、電極、発熱体、構造体、ガスケット、断熱体、耐食性シール材、電機用ブラシ、X線または中性子線モノクロメータ、原子炉用減速材、電池用セパレータなどに用いられる。特に、携帯型コンピューターなどの電気回路に起因する発熱を放熱するための軽量でかつ高性能の放熱シートが得られる。
【0102】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお各フィルム特性値は、下記の方法で測定したものである。
【0103】
また、下記の実施例中で、略号DMAcはジメチルアセトアミドを、PMDAはピロメリット酸二無水物を、34’ODAは3,4’−オキシジアニリンを、また、44’ODAは4,4’−オキシジアニリンを示す略記である。
(1)弾性率および破断伸度
弾性率は、JISK7113に準じて、室温でORIENREC社製のテンシロン型引張試験器により、引張速度300mm/分にて得られる張力−歪み曲線の初期立ち上がり部の勾配から求めた。
【0104】
破断伸度は試料が破断するときの伸度を取った。
(2)ガラス転移温度(Tg)
装置は理学電機(株)社製 微少定荷重熱膨張計で、窒素気流中にて測定
A.ガラス転移温度(Tg)
10mm長さ×約15mm幅の切片を切り出し、これを円筒状にして10mmの長さ方向に圧縮モードで測定する。0.5gの付加荷重で行った。
【0105】
2℃/分の昇温速度で、室温から400℃までの1回目の昇温で測定した。寸法変化試料長L0とその長さの変化量ΔLから、長さ変化率ΔL/L0とする。ΔLは10℃毎に読みとり、横軸に温度、縦軸に長さ変化率ΔL/L0を取り、200〜400℃で観測される屈曲温度をTgとした。
【0106】
350℃未満のTgのものは、炭素化工程で皺が発生したり、配向緩和が生じ本発明の主用途には不適である。
(3)製膜性
用意したフィルムを研究用高分子フィルム二軸延伸装置(BIX−703、(株)岩本製作所社製)により、400℃で両軸当速度同時二軸延伸方式により延伸させフィルム破断面積を求めた。予熱時間60秒、片側延伸速度10cm/min、
◎;極めて良好 破断延伸面倍率が2倍を超える。
【0107】
○;良好 破断延伸面倍率が1.5倍〜2倍。
【0108】
△;実用上問題ない 破断延伸面倍率が1.1倍〜1.5倍。
【0109】
×;製膜困難 破断延伸面倍率が1.1倍未満。
(4)面内異方性指数
野村商事社製 Sonic Sheet Tester SST−250型を用いた。サンプルは25μmフィルムについて6枚重ねとして、MD方向250mm、TD方向170mmの大きさに正確に切断しサンプルとした。中央部は、幅方向の中央部から、端部はフィルムの端から100mmの位置を中心とする位置からサンプリングした。中央部は、幅方向の中央部から、端部はフィルムの端から100mmの位置を中心とする位置からサンプリングした。測定結果からフィルム中の音波の伝播速度が10°間隔に測定でき、測定データを2次曲線で相関させ、円周全方向にわたる配向分布を求め、最大配向角、最小配向角および最大配向角と最小配向角における音波の伝播速度を求めた。
【0110】
面内異方性指数(AI値)は、最大配向角の音波伝播速度Peak Value MAX. と最小配向角の音波伝播速度Peak Value MIN. から上述した式(iv)より計算される。
(5)面内熱膨張係数(CTEave)および厚み方向熱膨張係数(CTEz)
A.面内熱膨張係数(CTEave)
20mm長さ×約5mm幅の切片を切り出し、これを長さ方向に引っ張りモードで測定する。0.5gの付加荷重で行った。
【0111】
装置は理学電機(株)社製 微少定荷重熱膨張計で、窒素気流中にて測定
CTEは10℃/分の昇温速度、5℃/分の降温速度、最大温度250℃で2回目の昇(降)温時の50℃から200℃の間の寸法変化から求めた。
【0112】
平均面内熱膨張係数(CTEave)は面内異方性指数測定時に求めた最大配向角方向と最小配向角方向の熱膨張係数から次の式▲5▼により計算した。
【0113】
(最大配向角方向のCTE+最小配向角方向のCTE)/2・・・▲5▼
B.厚み方向熱膨張係数(CTEz)
約7mm角の切片を切り出し、これを厚み方向に圧縮モードで測定する。約17gの付加荷重で行った。
【0114】
装置は真空理工(株)製 レーザー熱膨張計LIX−1型で、ヘリウムガス雰囲気中で測定した。温度校正は、既知の融点を持つインジウム、スズ、ウッド合金で行った。装置装置の検定は試料測定前後にNIST(National Institute of Standard and Technology)の標準サンプルSRM739(溶融石英)で行った。
【0115】
CTEzは2℃/分の昇温速度、5℃/分の降温速度、最大温度250℃で2回目の昇(降)温時の50℃から200℃の間の寸法変化から求めた。
(6)面配向係数
メトリコン コーポレーション社製のメトリコンPC−2010を用い、波長0.633μmの光線により測定した。サンプルは3cm×3cmに切り取り、メトリコンPC−2010にセットされて面内最大屈折率、面内最小屈折率および厚さ方向屈折率を測定し、上述した(i)式により面配向係数を求めた。
(7)比重
フィルムより4cm×4cmの試料片を切り出し、アルキメデス法により測定した。測定温度は25℃。浸漬液は水。
【0116】
重量m(kg)の試料が、密度ρw(kg/cm3)の水に浸かったときに受ける浮力をF(kg)とすると、試料の密度ρ(kg/cm3)は次式により算出される。
ρ=(m×ρw)/F
ここで浮力Fは、細線により天秤に試料をつるし、試料を水につけ、浸漬前後の天秤の読みの差から求めることが出来る。
【0117】
測定装置:重量・・・島津製作所製 電子分析天秤 AEL−200
(8)熱伝導率
面方向の熱伝導率λ(W/mK)は、熱拡散率αおよび熱容量ρCp(J/m3K)の積として算出した。
【0118】
λ=αρCp
比熱はDSC(示差走査熱量計)法により求めた。
【0119】
熱拡散率は光交流法により求めた。測定条件は以下の通り。
【0120】
測定装置:真空理工(株)製熱定量測定装置PIT−1
測定温度:170℃
照射光 :ハロゲンランプ光
雰囲気 :真空中
(9)非融着性
ポリイミドフィルムを3枚重ね炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れる。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行う。
【0121】
炉内よりフィルムを取り出し得られた炭素フィルムの融着状態を観察する。
【0122】
△以上が一度に炭素フィルムを得ることが出来実用レベルである。
【0123】
○・・・融着していない。3枚同時に炭素フィルムが得られる。
【0124】
△・・・わずかに融着しているが手で簡単に剥がすことが出来る
×・・・融着して剥がすことが出来ない。
[実施例1]
500ccのガラス製フラスコに、気相法炭素繊維(昭和電工(株)社製、VGCF)0.3gおよびDMAc150mlを入れ、44’ODAをDMAc中に供給して溶解させ、PMDAを溶解させ、室温で、約1時間攪拌し、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論で表1に示す組成の成分からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0125】
このポリアミド酸溶液30gを、12.7mlのDMAc、3.6mlの無水酢酸及び3.6mlのβ−ピコリンと混合した混合溶液を調製し、この混合溶液をガラス板上にキャストした後150℃に加熱したホットプレート上で約4分間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0126】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の両軸可動型固定枠に固定し、縦方向1.2倍、横方向1.2倍に延伸した。この2軸延伸フィルムを更に250℃から330℃に昇温しながら30分間加熱した。さらに450℃で1分熱処理後徐冷し厚さ約18μmのポリイミドフィルムを得た。
【0127】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0128】
このポリイミドフィルムを3枚重ね炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0129】
炉内よりフィルムを取り出したところ、金属光沢の炭素フィルムが得られた。炭素フィルムは融着することなく簡単に剥がすことが出来、3枚の面状フィルムが得られた。この炭素フィルムは折り曲げても割れなくものであった。
【0130】
得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0131】
[実施例2]
500ccのガラス製フラスコに、人造黒鉛微粉末(昭和電工(株)社製、UFG−5)0.3gおよびDMAc150mlを入れ、44’ODAをDMAc中に供給して溶解させ、PMDAを溶解させ、室温で、約1時間攪拌し、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論で表1に示す組成の成分からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0132】
この溶液をガラス板上にキャストした後、DMAc/無水酢酸(=1/1)混合溶液中に30分浸漬させ、ポリイミドフィルムを得た。
【0133】
このゲルフィルムを150℃1時間加熱し乾燥した後、多数のピンを備えた金属製の両軸可動型固定枠に固定し、縦方向1.2倍、横方向1.2倍に延伸した。この2軸延伸フィルムを更に250℃から330℃に昇温しながら30分間加熱した。さらに450℃で1分熱処理後徐冷し厚さ約17μmのポリイミドフィルムを得た。
【0134】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0135】
このポリイミドフィルムを3枚重ね炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0136】
炉内よりフィルムを取り出したところ、金属光沢の炭素フィルムが得られた。炭素フィルムは融着することなく簡単に剥がすことが出来、3枚の面状フィルムが得られた。この炭素フィルムは折り曲げても割れなくものであった。
【0137】
得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0138】
[比較例1]
500ccのガラス製フラスコに、DMAc150mlを入れ、44’ODAをDMAc中に供給して溶解させ、PMDAを溶解させ、室温で、約1時間攪拌し、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論で表2に示す組成の成分からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0139】
このポリアミド酸溶液をガラス板上にキャストした後、150℃に加熱したホットプレート上で約1時間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0140】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の固定枠に固定した。このフィルムを更に250℃〜330℃に昇温しながら30分加熱した。さらに450℃で1分熱処理後徐冷し厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0141】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表2に示した。
【0142】
これらのポリイミドフィルムを3枚重ね炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0143】
炉内よりフィルムを取り出したところ、実施例1のフィルムは金属光沢の炭素フィルムが得られた。炭素フィルムはわずかに融着していたが簡単に剥がすことが出来、3枚の面状フィルムが得られた。この炭素フィルムは折り曲げても割れなくものであった。比較例1のフィルムはややくすんだ金属光沢の炭素フィルムが得られ、若干波打ったフィルムが得られた。得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表2に示した。
[比較例2,実施例3]混交ポリイミド
乾燥窒素で常時パージされる容器に、DMAc190.6kgを入れ、34’ODA(49.8モル%)をDMAc中に供給し、溶解させ、続いてPMDA(50モル%)を供給し、室温で、約1時間攪拌した。引き続きジアミン成分に対して0.5モル%の無水酢酸を添加し更に約1時間攪拌し、このポリアミド酸溶液に44’ODA(50モル%)を供給し、完全に溶解させた後、PMDA(50モル%)を供給し、室温で約1時間攪拌し、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論で表1に示す組成の成分からなるポリアミド酸濃度23重量%の溶液を調製した。この溶液は20℃で4000ポイズの粘度であった。
(比較例2)
比較例2用のポリイミドフィルムとして、このポリアミド酸溶液を用いて、比較例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た以外は、比較例1と同様の方法で炭素フィルムを得た。得られたフィルムは表2に示した。
【0144】
炉内よりフィルムを取り出したところ、比較例2のフィルムはややくすみ、若干波打った金属光沢の炭素フィルムが得られた。炭素フィルムはわずかに融着していたが簡単に剥がすことが出来、3枚の面状フィルムが得られた。得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表2に示した。
(実施例3)
比較例1で用いたポリアミド酸溶液に、無水酢酸をポリアミド酸単位に対して2.5モル、ピリジンをポリアミド酸単位に対して2.0モルを冷却しながら混合し、ポリアミド酸の有機溶媒溶液を得た。このポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付金属に定量供給し、90℃の金属ドラム上に流延し、自己支持性のあるゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムの固形分は18重量%であった。
【0145】
このゲルフィルムを金属ドラムから剥離し、金属ロールとシリコーンゴムロールからなる2組のニップロールで温度63℃で走行方向(MD)に延伸し次いでテンタに導入した。走行方向の延伸倍率、すなわち金属ドラムと各ニップロールおよびテンタとの速度比は、1.1、2組目のニップロールのそれは1.3、テンタのそれは1.3に調整した。テンタで200℃の温度で幅方向(TD)に1.4倍延伸し、次いで400℃で1.1倍延伸し、引き続き450℃で1分間熱処理し、徐冷却ゾーンで約5%幅方向リラックスさせながら30秒間冷却し、フィルムをエッジカットし、幅2m、厚さ25μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの面配向係数は0.15であった。またその面内異方性指数の平均値は10であった。その他の特性値評価結果は表1に示した。
【0146】
炭素化処理は実施例1と同様に行った。得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表1に示した。
[比較例3,実施例4]
500ccのガラス製フラスコに、DMAc150mlを入れ、34’ODAをDMAc中に供給して溶解させ、続いてPMDAを供給し、室温で約1時間攪拌した。テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論で表1に示す組成の成分からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
(比較例3)
このポリアミド酸溶液をガラス板上にキャストした後、150℃に加熱したホットプレート上で約1時間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0147】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の両軸可動型固定枠に固定し、縦方向1.4倍、横方向1.4倍に延伸した。この2軸延伸フィルムを更に150℃1時間加熱した後、250℃から330℃に昇温しながら30分間加熱した。
さらに450℃で1分熱処理後徐冷し厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0148】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表2に示した。
【0149】
これらのポリイミドフィルムを3枚重ね炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0150】
炉内よりフィルムを取り出したところ、フィルムはくすんだ黒色の炭素フィルムが得られた。炭素フィルムは融着していた。
【0151】
再度、ポリイミドフィルムを1枚を炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0152】
炉内よりフィルムを取り出したところ、若干波打ったくすんだ黒色の面状フィルムが得られた。得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表2に示した。
(実施例4)
比較例3で用いたポリアミド酸溶液30gを、12.7mlのDMAc、3.6mlの無水酢酸及び3.6mlのβ−ピコリンと混合した混合溶液を調製し、この混合溶液をガラス板上にキャストした後150℃に加熱したホットプレート上で約4分間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0153】
このゲルフィルムを更に250℃から330℃に昇温しながら30分間加熱した。さらに450℃で1分熱処理後徐冷し厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0154】
この得られたフィルムを研究用高分子フィルム二軸延伸装置(BIX−703、(株)岩本製作所社製)により、400℃で両軸当速度同時二軸延伸方式により延伸させフィルム破断面積を求めた。破断面倍率は約2.5倍であった。予熱時間60秒、片側延伸速度10cm/min。
【0155】
同様の条件で、MDおよびTD方向に同時2軸に1.4倍ずつ延伸した。更にこのフィルムを450℃で両軸共に5%リラックスを掛けて1分熱処理し徐冷を行った。
【0156】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0157】
このポリイミドフィルムを3枚重ね炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0158】
炉内よりフィルムを取り出したところ、フィルムはくすんだ金属光沢の炭素フィルムが得られた。炭素フィルムは融着していた。
【0159】
再度、ポリイミドフィルムを1枚を炭素繊維織布に挟み、加熱炉内に入れた。窒素雰囲気にした後、室温より800℃まで5℃/分で昇温し、引き続き1200℃まで10℃/分で昇温し1時間保持した。冷却は室温まで5℃/分で行った。
【0160】
炉内よりフィルムを取り出したところ、若干波打ったくすんだ金属光沢の面状フィルムが得られた。得られた炭素フィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0161】
表1〜表2に記載された結果から明らかなように、化学転化法で得られた本発明のランダムポリイミドフィルムおよびブロックポリイミドフィルム、または混交ポリマーより製造されたポリイミドフィルムを前駆体として用いて製造された炭素フィルムは、従来の炭素フィルムに比較して、高熱伝導率、高弾性率および可とう性を同時に満足しており、携帯型コンピューターの放熱拡散シートとしての好適な性能を有するものである。
【0162】
【表1】
Figure 0004189569
【0163】
【表2】
Figure 0004189569
【0164】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法により得られる炭素フィルムは、熱閉環により得られるポリイミドフィルムを経由した物に比しても、可撓性を有し、高弾性率および優れた平面性、製膜性を有するものである。
【0165】
したがって、本発明の炭素フィルムを用い、高熱伝導率、高弾性率および可とう性を同時に満足しており、携帯型コンピューターの放熱拡散シートとしての好適な性能を有するものである。

Claims (6)

  1. (1)化学閉環法によりイミド化しポリイミドフィルムを製造する工程、
    (2)少なくとも1部がイミド化されたフィルムを2軸延伸する工程、
    (3)前記(1)および(2)の工程を経て、厚み方向熱膨張係数(CTEz)と面方向の熱膨張係数(CTEave)との比(CTEz/CTEave)が4以上であるポリイミドフィルムを温度500℃以上で不活性ガス又は真空中で炭素化して、比重が2.0以下、熱伝導率が400[Wm−1K−1]以上の炭素フィルムを形成する工程
    を含むことを特徴とする炭素フィルムの製造方法。
  2. ポリイミドフィルムが、ピロメリット酸二無水物類、ビフェニルテトラカルボン酸類の二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類の二無水物のうち少なくとも1種以上の芳香族テトラカルボン酸無水物に由来する残基を含むことを特徴とする請求項1記載の炭素フィルムの製造方法。
  3. ポリイミドフィルムが、パラフェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンのうち少なくとも1種以上の芳香族ジアミンに由来する残基を含むことを特徴とする請求項1または2記載の炭素フィルムの製造方法。
  4. 上記(1)の工程でポリアミド酸溶液から膜を形成し、(2)の工程で500℃以下の温度で、面積倍率1.1〜4倍に延伸することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の炭素フィルムの製造方法。
  5. 前記(1)及び(2)の工程で、工程(A)〜(E)を順次行うことにより、異なる温度で少なくとも2回に分割されて延伸されたポリイミドフィルム製造する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の炭素フィルムの製造方法。
    (A)芳香族テトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミンを、不活性な溶剤中反応させポリアミド酸を形成する工程、
    (B)前記工程(A)からのポリアミド酸溶液に、ポリアミド酸をポリイミドに転化することのできる転化用薬剤を混合する工程、
    (C)前記工程(B)からの混合物を平滑面上にキャストまたは押出して、ポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成する工程、および
    (D)前記工程(C)からのゲルフィルムを、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に1.1〜2倍延伸し、この延伸されたゲルフィルムの端部をテンタクリップにより把持し、このゲルフィルムを幅方向に走行方向の延伸倍率の0.8〜1.3倍の倍率で延伸する工程、
    (E)500℃以下の温度で加熱してポリアミド酸をポリイミドに変換する工程。
  6. 前記(3)の炭素化工程において、予め、ポリイミドフィルムを不活性ガス又は真空中で500〜800℃の温度で不融化処理し、次いで、不活性ガス又は真空中において800〜3500℃の温度で加熱することにより炭素化することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の炭素フィルムの製造方法。
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