JP2013203320A - 車体前部構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車体前部構造を、車体前部においてパワーユニット10,20を車幅方向に挟んで配置され、前後方向にほぼ沿って伸びたフロントサイドフレーム40と、フロントサイドフレームの前端部近傍における車幅方向外側に配置され、後端部102がフロントサイドフレームの車幅方向外側の側部におけるパワーユニットの前後方向中央部よりも車両前方側となる箇所に固定され、前端部101が後端部に対して車両前方側かつ車幅方向外側に配置された荷重伝達部材100とを備え、荷重伝達部材の前端部に対する車両後方側への荷重入力により、フロントサイドフレームにおける後端部との固定箇所近傍の領域を、パワーユニットに近接する方向へ変位させる構成とする。
【選択図】図6
Description
特に、近年ではオフセット衝突のうち、車両の車幅方向における端部にのみ障害物が衝突するいわゆるスモールオーバーラップの衝突に対する性能向上が求められている。
しかし、フロントサイドフレームの外側のみに障害物が衝突するようなスモールオーバーラップオフセット衝突の場合には、フロントサイドフレームの前端部に依存することなくエネルギの吸収及び伝達が可能な構造が必要となる。
本発明の課題は、簡素かつ軽量な構成によってスモールオーバーラップオフセット衝突に対する性能を向上した車体前部構造を提供することである。
請求項1に係る発明は、車体前部においてパワーユニットを車幅方向に挟んで配置され、前後方向にほぼ沿って伸びたフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの前端部近傍における車幅方向外側に配置され、後端部が前記フロントサイドフレームの車幅方向外側の側部における前記パワーユニットの前後方向中央部よりも車両前方側となる箇所に固定され、前端部が前記後端部に対して車両前方側かつ車幅方向外側に配置された荷重伝達部材とを備え、前記荷重伝達部材の前記前端部に対する車両後方側への荷重入力により、前記フロントサイドフレームにおける前記後端部との固定箇所近傍の領域を、前記パワーユニットに近接する方向へ変位させることを特徴とする車体前部構造である。
これによれば、スモールオーバーラップ衝突時に、荷重伝達部材の前端部に荷重が入力されることにより、フロントサイドフレームを屈曲変形させて内側面部によってエンジン等のパワーユニットを車幅方向における反対側に押すことができる。
車両は、重量物であるパワーユニットが衝突対象物とは反対側へ押されることによって、衝突対象物を回避する方向に進行方向を変える。
このような車両の挙動によって、乗員が搭乗するキャビンへの入力低減を図ることができる。
また、フロントサイドフレームを屈曲変形させることによって、エネルギ吸収効果を
得ることができる。
これによって、スモールオーバーラップオフセット衝突時に、フロントサイドフレームを所定の変形モードに従って屈曲させ、上述した効果を確実に得ることができる。
このような剛性変化部として、例えば、フロントサイドフレームの側面部を凹ませて形成され、上下方向にほぼ沿って延在するビード状の溝部等を用いることができる。
これによれば、フロントサイドフレームの屈曲によってマウント部を車幅方向内側に押すことによって、上述した効果を確実に得ることができる。
これによれば、荷重伝達部材からパワーユニットへ荷重を伝達する箇所のフロントサイドフレームの断面形状拘束を強化し、剛性を高めて、上述した効果を促進することができる。
これによれば、車両が微低速で衝突する軽衝突時に、荷重伝達部材に荷重が入力されてフロントサイドフレーム等にダメージを与えることがなく、修理の容易化及び修理コスト低減を図ることができる。
これによれば、上述したフロントサイドフレームの屈曲変形等がフロントサブフレームによって阻害されることを防止し、上述した効果を確保することができる。
実施例1の車体前部構造は、例えば、車両前部に例えばエンジン等のパワートレーンが搭載される乗用車等の車体に設けられるものである。
図1は、実施例1の車体前部構造を車両上方から見た模式的平面図である。
図2は、実施例1の車体前部構造を車幅方向外側の斜め上方かつ斜め後方から見た斜視図である。
エンジン10は、クランクシャフトを挟んで左右に配置されたシリンダブロックの端部(エンジン10の側端部)に設けられたシリンダヘッドを備えている。
キャビン30は、フロアパネル31、トーボード32、フロアトンネル33、Aピラー34、サイドシル35等を有して構成されている。
トーボード32は、フロアパネル31の前端部から上方へ立ち上げて配置された面部であって、キャビン30の前面部(キャビン30とエンジンルームとの隔壁部)を構成する部分である。
フロアトンネル33は、フロアパネル31の車幅方向における中央部を上方(車室内側)に張り出させて形成され、内部にトランスミッションの後部、プロペラシャフト、排気管などが収容されるものである。
Aピラー34は、フロアパネル31の左右側端部における前端部から上方へ突き出して配置された柱状の構造部材である。
サイドシル35は、Aピラー34の下端部から車両後方側へ延び、フロアパネル31の側端部に沿って配置された梁状の構造部材である。
フロントサイドフレーム40は、エンジン10の左右に1対が設けられるとともに、車幅方向内側の面部は、エンジン10の側面部(水平対向エンジンの場合は、シリンダヘッドのタペットカバー)と間隔を隔てて対向して配置されている。
フロントサイドフレーム40は、車両前後方向から見た断面形状が実質的に矩形の閉断面となっている。
ラジエータパネル50の側端部は、フロントサイドフレーム40の前端部近傍に固定されている。
バンパビーム60は、車両の前面衝突時に、荷重を受け車体後方側に伝達するものである。
バンパビーム60は、バンパフェイスの造形に合わせて、前方側が凸となる弧状に湾曲して形成されている。
バンパビーム60は、その後面部から突き出して形成された基部61を有し、基部61の後端部は、フロントサイドフレーム40の前端部に固定されている。
フロントサブフレーム70は、例えば、矩形の枠状に形成されるとともに、前端部に設けられた取付箇所71(図2参照)、及び、後端部に設けられた図示しない取付箇所を、上下方向に配置される図示しないボルトによってフロントサイドフレーム40等に締結することによって車体に取り付けられている。
フロントホイール80は、図示しないハブベアリングハウジングによって回転可能に支持されるとともに、車軸よりも前方に配置されたタイロッドTを押し引きすることによって、操向(転舵)可能となっている。タイロッドTは、ステアリングシャフトを介してステアリングホイールに接続されたステアリングギヤボックスに連結され、ドライバのステアリング操作に応じて、車幅方向にほぼ沿って駆動される。
なお、図1、図2においては、タイヤは図示を省略し、図3乃至図6においては、リムは図示を省略している。
フロントサスペンション90は、例えば、マクファーソンストラット式のものであり、ストラット91、ロワアーム92等を有して構成されている。
ストラット91(図2参照)は、車体のエンジンルーム上部側方に設けられたストラットアッパマウント93と、ハブベアリングハウジングの上部に設けられた図示しないブラケットとの間に設けられている。
ストラット91は、ショックアブソーバ(ダンパ)及びスプリングをユニット化したものである。
ロワアーム92(図1等参照)は、フロントサブフレーム70とハブベアリングハウジングの下部との間に設けられ、これらに対して相互に回動可能となっている。
荷重伝達ガセット100は、フロントサイドフレーム40の前端部近傍における車幅方向外側の領域に配置されている。
荷重伝達ガセット100は、閉断面を有する梁状に形成されるとともに、前端部101が後端部102に対して車幅方向外側となるように、車両前後方向に対して前開きに傾斜して配置されている。
この前端部101は、フロントサイドフレーム40から車幅方向外側へ突き出したステー103(図1参照)によって支持されている。
荷重伝達ガセット100の後端部102は、フロントサイドフレーム40の車幅方向外側の側面部に、例えば車幅方向外側から挿入されるボルトによって締結され、固定されている。
この後端部102の車両前後方向における位置は、エンジン10の前後方向中央よりも車両前方側に配置される。
ビード42は、フロントサイドフレーム40の側面部を凹ませて上下方向に延在する溝状に形成されている。
ビード42は、前後方向に離間して例えば2本が設けられている。
このビード42は、フロントサイドフレーム40の剛性を局所的に低下させて、スモールオーバーオールオフセット衝突時にフロントサイドフレーム40を屈曲させる起点となり、フロントサイドフレーム40の屈曲を促進するものである。
このフロントサイドフレーム40の屈曲については、後に詳しく説明する。
図3乃至図6は、フロントサイドフレーム40に対して車幅方向外側に障害物Bが衝突した場合の車体各部の挙動を時系列で示すものである。
この障害物は、例えば、電柱や信号機等のポールを模した円筒状のものである。
図4に示すように、障害物Bがバンパビーム60の側部に衝突すると、バンパビーム60は基部61を介して、フロントサイドフレーム40に対して軸方向の圧縮荷重を伝達する。
また、バンパビーム60は、基部61よりも外側の領域において、側端部が後退する方向に曲げ変形する。
これによって、バンパビーム60の後面部は荷重伝達ガセット100の前端部101と当接し、荷重伝達ガセット100に対して軸方向の圧縮荷重を伝達する。
荷重伝達ガセット100からの荷重は、後端部102を経由してフロントサイドフレーム40の側面部に対して、車幅方向内側に押し込むように作用する。
この押し込み荷重によって、フロントサイドフレーム40は、ビード42の周辺を折れの起点として、これよりも前方側が車幅方向内側に変位する方向の屈曲変形を開始する。
そして、変形量が所定以上となると、エンジン10におけるフロントサイドフレーム40と対向する箇所であるシリンダヘッド(タペットカバー)と当接する。
このとき、フロントサイドフレーム40の前端部における未圧壊領域は、その軸方向力によってエンジン10の車幅方向外側への押し出しを促進する。
このように、車両のなかでも重量物であるエンジン10が車幅方向反対側へ押されることによって、車両は、障害物Bを回避する方向へ向きを変え、キャビン30のAピラー34、サイドシル35等への伝達荷重が軽減される。
また、フロントサイドフレーム40は、上述した屈曲変形によって、それ自体がエネルギを吸収する機能を発揮する。
(1)スモールオーバーラップオフセット衝突時に、荷重伝達ガセット100からフロントサイドフレーム40に伝達される荷重によって、フロントサイドフレーム40を屈曲変形させ、フロントサイドフレーム40によってエンジン10を反対側のフロントサイドフレーム40側へ押すことができる。
車両は、重量物であるエンジン10が押されることによって、障害物Bから逃げる方向に進行方向を変え、これによってキャビン30への入力荷重は軽減される。
例えば、発明者が実施したCAE解析結果においては、サイドシルへの伝達荷重が約半分となることが確認された。
さらに、キャビンの補強によって耐スモールオーバーラップオフセット衝突性能の向上を図った従来技術に対して、仮に同等の性能を得るものとすると、既存車体に対する重量増加を例えば約1/3とすることができ、走行性能、燃費性能、コスト等の面で有利である。
(2)フロントサイドフレーム40の屈曲変形時に、フロントサイドフレーム40がエネルギを吸収することによって、車体の他部に伝達されるエネルギ量の低減を図ることができる。
(3)フロントサイドフレーム40にビード42を形成したことによって、上述したフロントサイドフレーム40の屈曲変形の再現性を向上し、上述した効果を確実に得ることができる。
(4)フロントサイドフレーム40にセパレータ41を設けたことによって、荷重伝達ガセット100からフロントサイドフレーム40を介してエンジン10に伝達される荷重のロスを少なくし、エンジン10を確実に押すことができる。
(5)荷重伝達ガセット100の前端部101とバンパビーム60の後面部との間に隙間を設けたことによって、車両の軽衝突時に荷重伝達ガセット100からフロントサイドフレーム40に荷重が伝達されてダメージが発生することを防止し、軽衝突時の修理の容易化、修理コストの低下を図ることができる。
なお、以下説明する実施例において、従前の実施例と実質的に同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図7は、実施例2の車体前部構造の構成を示す模式図である。
実施例2においては、エンジン10は、例えば横置き搭載される直列又はV型のエンジンであって、車幅方向における端部を、フロントサイドフレーム40から車幅方向内側に突き出して配置されたエンジンマウントMによって支持されている。
以上説明した実施例2においても、スモールオーバーラップオフセット衝突時にフロントサイドフレーム40を屈曲変形させ、エンジンマウントMを介してエンジン10を車幅方向反対側に押すことによって、上述した実施例1の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
図8は、実施例3の車体前部構造の構成を示す模式図である。
実施例3においては、エンジン10は、縦置き搭載される直列又はV型のエンジンであって、フロントサイドフレーム40以外の箇所に設けられたエンジンマウントによって支持されている。
実施例3においては、荷重伝達ガセット100の後端部102とフロントサイドフレーム40との固定箇所を、エンジン10の前後方向中央CLに対して車両前方側に配置している。
以上説明した実施例3においても、スモールオーバーラップオフセット衝突時に、フロントフレーム40を屈曲させてエンジン10を車幅方向における反対側に押すことによって、上述した実施例1の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
なお、図8に破線で示すような、フロントサイドフレーム40にエンジンマウントMを持たない横置き搭載エンジン車の場合であっても、エンジンの前後方向中央に対して車両前方側に荷重伝達ガセット100の後端部102を配置することによって、実質的に同様の効果を得ることができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
車体前部構造を構成する各部材の形状、構造、材質、配置等は上述した各実施例の構成に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、各実施例においては、パワーユニットとしてエンジンをフロントサイドフレームによって押す構造としているが、例えばエンジンが横置き搭載されるパワートレーンの場合には、フロントサイドフレームに隣接するトランスミッションを押すようにしてもよい。
また、パワーユニットは、エンジン、トランスミッションに限らず、例えば駆動用電動モータや、コントロールユニットケース等であってもよい。
また、荷重伝達部材は、上述したような板金製のガセットに限らず、例えばパイプ材によって形成したり、アルミニウム合金等の鋳造品、鍛造品、コンポジット材等、いかなる材質、製法のものであってもよい。
また、各実施例では軽衝突を考慮してバンパビームと荷重伝達部材との間に隙間を設けているが、これらを直接結合してもよい。
また、荷重伝達部材の前端部をバンパフェイスの直後に配置し、バンパビームを介さずに荷重伝達を行うようにしてもよい。
30 キャビン 31 フロアパネル
32 トーボード 33 フロアトンネル
34 Aピラー 35 サイドシル
40 フロントサイドフレーム 41 セパレータ
42 ビード 50 ラジエータパネル
C ラジエータコア 60 バンパビーム
61 基部 70 フロントサブフレーム
71 取付箇所 80 フロントホイール
90 フロントサスペンション 91 ストラット
92 ロワアーム 93 ストラットアッパマウント
T タイロッド
100 荷重伝達ガセット 101 前端部
102 後端部 103 ステー
B 障害物 M エンジンマウント
Claims (6)
- 車体前部においてパワーユニットを車幅方向に挟んで配置され、前後方向にほぼ沿って伸びたフロントサイドフレームと、
前記フロントサイドフレームの前端部近傍における車幅方向外側に配置され、後端部が前記フロントサイドフレームの車幅方向外側の側部における前記パワーユニットの前後方向中央部よりも車両前方側となる箇所に固定され、前端部が前記後端部に対して車両前方側かつ車幅方向外側に配置された荷重伝達部材とを備え、
前記荷重伝達部材の前記前端部に対する車両後方側への荷重入力により、前記フロントサイドフレームにおける前記後端部との固定箇所近傍の領域を、前記パワーユニットに近接する方向へ変位させること
を特徴とする車体前部構造。 - 前記フロントサイドフレームの車幅方向外側の側部における前記荷重伝達部材の前記後端部との固定箇所に対して後方側に隣接して配置され、前記フロントサイドフレームの屈曲を促進する剛性変化部を形成したこと
を特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。 - 前記パワーユニットと前記フロントサイドフレームとの間にわたして設けられ前記パワーユニットを支持するマウント部を備え、
前記荷重伝達部材の前記後端部と前記マウント部との車両前後方向における位置を実質的に一致させたこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体前部構造。 - 前記フロントサイドフレームにおける前記荷重伝達部材の前記後端部との固定箇所と隣接する箇所に、前記フロントサイドフレームの内部を実質的に閉塞するセパレータを設けたこと
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車体前部構造。 - 前記荷重伝達部材の前記前端部は、フロントバンパビームの後面部に対して間隔をおいて対向して配置されること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車体前部構造。 - 前記フロントサイドフレームの下方側に固定されるフロントサブフレームを有し、
前記フロントサブフレームの車両前方側における前記フロントサイドフレームとの固定箇所に対して、前記フロントサイドフレームと前記荷重伝達部材の前記後端部との固定箇所を車両後方側に配置したこと
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車体前部構造。
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