JP2013137273A - 蛍光x線分光装置及び蛍光x線分析装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 X線源からの一次X線2を測定試料に照射させて、測定試料1中の元素を励起し、測定試料1から蛍光X線3と散乱X線4を発生させる。分光系20は、第1の分光手段22と第2の分光手段23と1つのX線検出器24を最適化された光学系となるように配置する。第1の分光手段22は蛍光X線3を分光してX線検出器24に集光させ、第2の分光手段23は散乱X線4を分光してX線検出器24に集光させる。これによって、分光系20は、1つのX線検出器24によって蛍光X線3の強度と散乱X線4の強度を検出し得る態様に、分光する。一方、蛍光X線分析装置30は、蛍光X線3の強度と散乱X線4の強度の比に基づき、検量線を参照して微量の元素を高精度に分析する。
【選択図】 図3
Description
後者は、大容量のX線管を用いるので、分析精度が高い反面、液体窒素冷却が必要で、装置が大型化し高価となる。後者の装置には、特許文献1および特許文献2が知られている。
特許文献1は、元素の化学結合状態や電子構造を解析するために、蛍光X線を2つの分光結晶5A,5Bを用いて2段階で単色化するものである。特許文献2は、測定対象が超軽元素である窒素を分析するために、特性X線を分光素子7で分光し、バックグラウンドを分光素子8で分光し、特性X線の強度からバックグラウンドの強度を差し引くものである。
しかし、特許文献1および特許文献2のような従来の蛍光X線分析装置は、微量元素の分析の場合、一次X線を測定試料に照射して当該試料中の元素を励起しても、バックグラウンドの中に特性X線のピークが埋もれてしまうことがあるので、微量元素(例えば軽元素であるイオウや塩素等)を高精度に分析することが困難である。また、特許文献2は、超軽元素である窒素を分析するものであり、軽元素であるイオウや塩素等の分析には適さない。
しかし、大容量のX線管や大面積のX線検出器を使用すると、大電力,冷却水,液体窒素等のユーティリティが必要となり、装置が大型化し、装置のコストが大幅に高くなる。また、設置面積が大きくなり、広い場所を必要とし、メンテナンスも頻繁に必要となり、装置の維持管理のコストが大幅に増加する。
X線源は、一次X線を発生して測定試料に対して照射する。第1の分光手段は、測定試料から発生された蛍光X線を分光する。第2の分光手段は、測定試料から散乱された散乱X線を分光する。1つのX線検出器は、第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する。
また、測定試料から発生した蛍光X線と散乱X線を、第1の分光手段,第2の分光手段で分光し、単色化ビームにすることにより、さらにP/B比の良いスペクトルを得ることが出来る。さらに、オイル中の微量元素の検出下限値を0.5ppm以下にすることができ、分析時間を大幅に短縮できる。
X線源は、一次X線を発生する。分光結晶は、X線源からの一次X線を単色化し、単色化された一次X線を測定試料に照射する。第1の分光手段は、一次X線を受けた測定試料から発生された蛍光X線を分光する。第2の分光手段は、測定試料から散乱された散乱X線を分光する。1つのX線検出器は、第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する。
第2の発明によれば、第1の発明よりも、バックグラウンドを低減できるので、蛍光X線のピークを出現させることができ、高精度に検出可能となる。すなわち、一次X線を単色化した励起源にすることにより、測定試料から発生するバックグラウンドのX線強度を最小限に抑えることができ、P/B比の良いスペクトルを得られる。
第3の発明によれば、分光手段のX線光学系の最適化を図り、1本の検出器によって蛍光X線と散乱X線を同時に検出できるので、蛍光X線の検出精度を一層高めることができる。
第4の発明によれば、X線検出器の効率を高めて、検出精度をさらに高めることができる。
第5の発明によれば、測定試料がオイルや水等の液体中の微量元素である場合に、気泡に起因する検出誤差を低減できる。また、半導体X線検出器を用いることにより、大出力(数kW以上)のX線管を用いる場合に比べ、低出力(数十W)のX線管で済むから、コストの低減を実現できる。
X線源は、一次X線を発生して測定試料に対して照射する。第1の分光手段は、測定試料から発生された蛍光X線を分光する。第2の分光手段は、測定試料から散乱された散乱X線を分光する。1つのX線検出器は、第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する。演算手段は、X線検出器によって検出された蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求め、当該求めた比と検量線に基づいて測定試料に含まれる微量元素の含有量を算出する。
X線源は、一次X線を発生して測定試料に対して照射する。分光結晶は、X線源からの一次X線を単色化し、単色化された一次X線を測定試料に照射する。第1の分光手段は、測定試料から発生された蛍光X線を分光する。第2の分光手段は、測定試料から散乱された散乱X線を分光する。1つのX線検出器は、第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する。演算手段は、X線検出器によって検出された蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求め、当該求めた比と検量線に基づいて測定試料に含まれる微量元素の含有量を算出する。
第7の発明によれば、第6の発明よりも、バックグラウンドを一層低減した蛍光X線を検出できるので、微量元素をさらに高精度に分析できる。
検量線テーブルは、微量元素の含有量が既知の複数の測定試料であって異なる含有量別に、当該各測定試料の蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求めて、検量線として予め登録しておく。比算出手段は、X線検出器によって検出された、含有量が未知の元素を含む測定試料の蛍光X線の強度と散乱X線の強度との比を求める。含有量算出手段は、比算出手段によって算出された強度比に基づき、検量線テーブルを参照して未知の測定試料に含まれる微量元素の含有量を算出する。
第8の発明によれば、既知の含有量に基づいて蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求めた検量線をテーブルに登録しているので、蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比に基づき含有量を分析でき、正確度を一層向上できる。
第9の発明によれば、分光系の最適化を図り、1本の検出器によって蛍光X線と散乱X線を同時に検出できるので、検出精度を一層高めることができる。
この実施形態では、オイル中に含まれる人体に有害な元素、例えばイオウ(16S)や塩素(17Cl)等を分析して、精製したオイル中のイオウ等の含有量が所定の基準値の範囲内か否かの判定を行う場合の蛍光X線分光装置を例にとって説明する。
図1において、本発明の一実施例の蛍光X線分光装置10は、本体ハウジング11と、その内部に収納される分光系20(図2参照)を含む。本体ハウジング11には、その上部に蓋部材12が上方向へ開閉自在に装着される。本体ハウジング11の内部は、蓋部材12を開いたときに露出し、測定試料(以下、「試料」と略称することもある)1を保持するための載置部(又は保持台)13が設けられる。好ましくは、試料1に対して均一にX線を照射するために、載置部13の一部が回転テーブルで構成され、回転自在に支持される。載置部13の中央には、X線を照射するための窓14(図1に図示していないが、図2参照)が形成される。また、載置部13が本体ハウジング11内を上下に分離することにより、上部の測定室15と、分光系20の各種部材を収納するための下部の収納室16に分けられる。
収納室16の内部は、一次X線2及び蛍光X線3の光学パスが数10パスカル程度の真空あるいはヘリウム置換を行い、X線の空気による減衰を抑える方が望ましい。
具体的には、試料1の下方の一方側(図示の左側、「一次側」ともいう)には、X線管21が試料1の下面の水平面に対して、所定の角度で一次X線(Pd−Lα線)2を直接照射するように、上方(又は斜め上方)に向けて配設される。試料1の水平面に対するX線管21の角度は、X線管21から発生される一次X線が最大強度となるように、一次X線のビーム中心の試料1への入射角が例えば45度又は90度に選ばれる。
そして、反射角φ1で発生された蛍光X線3は、試料1の近傍に設けられたスリット25によって分光結晶22の湾曲面に集光される。反射角φ2で発生された散乱X線4は、試料1の近傍に設けられたスリット26によって分光結晶23の湾曲面に集光される。
これらの分光結晶22,23の湾曲面の形状およびスリット25,26との距離ℓ1,ℓ2の選定条件については後述する。
換言すれば、X線検出器24は、分光結晶22によって集光された単色化ビーム5と分光結晶23によって集光された単色化ビーム6との交点の位置に配設される。
また、分光結晶22,23とX線検出器24との間であって、X線検出器24の手前には、透孔を有する散乱防止板27が配設される。散乱防止板27は、分光結晶22,23以外から到来する散乱されたX線がX線検出器24に入るのを制限する働きをする。
このような分光系20の最適な光学配置が、図3の模式図に示される。
X線源として用いられるX線管21は、バックグラウンドの低減、特に妨害線の除去の観点から、ターゲットの材料として、好ましくはパラジウム(46Pd)が用いられる。その他にも、ロジウム(45Rh),銀(47Ag),クロム(24Cr)を用いてもよい。このX線管21は、実施例では数十Wの低容量のものが用いられる。
一方、分光結晶23は、その反射面が湾曲面であって、試料1から発生された散乱X線2の反射角φ2の延長線上の集光される位置に配置される。また、分光結晶23は、平板結晶を直径(2・R2)で円筒状に曲げ、結晶表面(反射面)の中心に接する半径R2のローランド円となるように研磨されて、湾曲面に形成される。
このように、分光結晶22の分光系は、その湾曲面の半径R1のローランド円の円周上にスリット25を配置し、湾曲面でブラッグ反射させた蛍光X線3の単色化ビーム5をローランド円の円周上で集光させる。分光結晶23の分光系は、その湾曲面の半径R2のローランド円の円周上にスリット26を配置し、湾曲面でブラッグ反射させた蛍光X線3の単色化ビーム6をローランド円の円周上で集光させる。そして、分光結晶22のローランド円(R1)と分光結晶23のローランド円(R2)との交点に、X線検出器24を配置することにより、エネルギー分解能が高く、かつ高感度な分光系20が得られる。
分光結晶22,23の湾曲面(又は曲率面)は、ローランド円の半径Rと、分光結晶への入射角θと、距離ℓとがブラッグの回析条件である(1式)および(2式)を満足するように選ばれる。
2dsinθ=nλ ・・・(1)式
上記(1)式において、dは分光結晶の格子面間隔(Bragg角)、θは入射角(又は回析角)、λは蛍光X線の波長、nは反射の次数を示す。
ℓ=2Rsinθ ・・・(2)式
上記(2)式を、分光結晶22,23のそれぞれの距離ℓ1,ℓ2との関係で表すと、(2−1)式と(2−2)式で与えられる。
ℓ1=2R1sinθ1 ・・・(2−1)式
ℓ2=2R2sinθ2 ・・・(2−2)式
ここで、(2−1)式及び(2−2)式において、R1は分光結晶22のローランド円の半径、R2は分光結晶23のローランド円の半径である。
波長λの蛍光X線が、格子面間隔dの分光結晶22に入射したとき、(1)式の関係を満足する入射角θのときのみ、干渉を起こす。言い換えると、測定試料1に含まれる微量元素(イオウ)に相関する波長λは既知のため、分光結晶22,23の結晶材料が決まれば、入射角θ(実際には分光角度2θ)を上記(1)式に基づき算定できる。
上記(2−1)式及び(2−2)式より、距離ℓ1,ℓ2を決めると、各ローランド円の半径R1,R2が決まる。また、入射角θはブラッグの回析条件の(1)式で決まる。そして、(1)式において、格子面間隔dと反射の次数nは、分光結晶の材料で決まる。
例えば、分光結晶22(S−Kα線;サルファー)は、結晶「グラファイト」(Graphite)を用いる場合、2d=6.708Åであり、Bragg角=53.215°である。また、分光結晶23(Pd−Lα線;パラジウム)は、結晶「Pentaerythritol」(略称PET)を用いる場合、「2d=8.76Å」であり、Bragg角=29.903°である。
さらに、分光結晶22及び分光結晶23は、1重湾曲よりも2重湾曲(おわん型)を用い、試料表面に集光させるのが好ましい。そして、結晶材料としては、測定試料1中の測定すべき微量元素がイオウ以外の元素の場合、元素の種類によって最適の材料が選定される。
また、X線検出器24の他の例として、ガス封入型の比例計数管やガスシンチレーション計数管を用いてもよい。
なお、他の例として、ログ・スパイラル型分光器を用いてもよい。
供給電圧が印加されると、X線管21は一次X線2(Pd−Lα線)を発生し、一次X線2を測定試料1に照射する。これに応じて、一次X線2に含まれる特性X線によって、試料1中の元素が励起されることにより、特定の角度φ1から蛍光X線3が発生する。これと同時に、特性X線が試料に衝突して、試料1の表面から散乱X線4が発生する。蛍光X線3は、分光結晶22によって分光され単色化されて単色化ビーム5となり、X線検出器24によって検出される。これと同時に、散乱X線4は、分光結晶23によって分光され単色化されて、単色化ビーム6となり、X線検出器24によって検出される。
ここで、X線検出器24は、一般にエネルギー分散型蛍光X線分析装置に採用されている半導体検出器を用いれば、当該検出器自身がエネルギー分解能を持っているので、同時に検出した蛍光X線3と散乱X線4のそれぞれの強度を分離して出力することが可能である。
微量元素の定量分析処理の詳細は、後述の図8のフローチャートを参照して説明する。
実施例1の分光系20は、X線管21から発生された一次X線2を用いて、測定試料1を直接照射する場合を説明したが、これに代えて一次側を図4に示すように構成した分光系20Aを用いてもよい。
すなわち、一次側の構成は、単色化のための分光結晶28をX線管21と試料1の間に配置し、X線管21によって発生された一次X線2´を分光結晶28で単色化し、単色化ビーム7によって試料1を照射するようにしてもよい。
その場合、分光結晶28によって単色化されかつ反射された単色化ビーム7が、試料1に対して所定の角度で入射するように、X線管21と分光結晶28の位置及び角度を最適条件となるように選ぶ必要がある。
実施例2の分光系20Aによれば、一次X線2’を単色化した単色化ビーム7によって測定試料1を照射しているので、バックグラウンドを一層低減できる利点がある。
上述の蛍光X線分光装置10(分光系20)に含まれるX線検出器24によって検出された蛍光X線3と散乱X線4の出力は、図5に示す蛍光X線分析装置30によって処理されて、測定試料1中の微量元素(例えば、オイル中の0.5ppm以下のイオウ)の含有量が算出される。
分析制御回路33は、信号処理回路32から入力される単位時間毎にサンプリングされたディジタル値を一時記憶するとともに、パソコン34から与えられる制御データに基づいてX線管制御回路31の供給電力を制御する。
インタフェ−ス334は、信号処理回路32からの入力をメモリ332に与えるとともに、制御レジスタ回路333に一時記憶されている制御データをX線管制御回路31に与えるように、入出力を制御する。インタフェ−ス335は、メモリ332に記憶されている測定時間中の蛍光X線と散乱X線のそれぞれのX線強度(ディジタル値)をパソコン34に転送し、パソコン34から与えられる制御データを制御レジスタ回路333に転送するように、入出力を制御する。
インタフェース344には、キーボードやマウス等の入力部35及び表示部36が接続される。インタフェース344は、インタフェース335,入力部35及び表示部36との入出力を制御する。
図6Aより、同じ種類のオイルは、含有量が異なれば、蛍光X線の強度が直線的に増加する一次関数となり、オイルの種類によってその傾きが異なることが分かる。換言すると、同じ含有量でもオイルの種類によってX線強度が異なり、検量線が異なる。このことは、オイルの種類別に検量線テーブルの登録が必要になることを意味する。
しかし、オイルの種類別に検量線のテーブルを登録すると、データ容量が膨大となり、高価になる。また、オイルの種類の入力(又は指定)を誤ると、分析されたイオウの含有量が異なる値となり、検出誤差の原因になる。
図6Bは、試料品種の影響を除く補正法によって検量線を一本化した特性図である。具体的には、含有量が所定数量(例えば、定量限界付近では0.1ppm、定量限界を大きく超える範囲では数ppm〜数十ppm)ずつ段階的に異なる複数の既知の試料を準備する。そして、本発明の蛍光X線分析装置30を用いて、試料毎に蛍光X線の強度と散乱X線の強度との比(レシオ強度)を求めて、横軸をイオウの含有量、縦軸を含有量別のレシオ強度で表すと、オイルの種類に影響を受けない1本の検量線が得られる。
何故ならば、試料の品種によりイオウの蛍光X線の強度と散乱X線の強度が異なるが、レシオ強度を求めることにより、オイルの種類に係わらず含有量の変化に比例してレシオ強度も変化する一次関数(オイルの種類に係わらず傾きが一定の関数)で表すことができるからである。
また、散乱X線の強度はオイル中に含まれる微量のイオウの含有量とは無関係に一定であるが、蛍光X線の強度は微量のイオウの含有量に比例して変化するので、レシオ強度を求めることにより、微量イオウの含有量とレシオ強度との相関を1本の検量線で表すことができる。
これによって、含有量が微量のイオウを検出したとき、X線強度のピーク波形がバックグラウンドより僅かに突出するか、バックグラウンドに埋もれる程度の低いレベルであっても、蛍光X線の強度と散乱X線の強度との比(レシオ強度)を求め、求めたレシオ強度と検量線に基づいて含有量を算出しているので、微量の含有量を高精度に検出できることになる。
検量線の算出及び検量線テーブルの作成に先だって、単位数量(例えば、0.1ppm)ずつ段階的に増加させた複数の既知の測定試料1が準備される。
そして、測定者がキーボード等の入力部35を操作して、作成スタートを指示すると、CPU341はメモリ342に記憶されているプログラムに基づいて、図7のフローチャートの処理を開始する。
ステップ3において、既知の含有量を有する1番目の試料1(微量のイオウの入ったオイル)が、試料ホルダ(図示せず)に入れられた状態で、測定室15の載置部13に載せられて、蓋部材12が閉じられる。また、入力部35を操作して1番目の試料1の含有量(例えば、0.1ppm)が入力される。これに応じて、1番目の試料1の含有量が、W−RAM343aの検量線データ一時記憶領域(検量線テーブル343bに一括して設定登録する前段階のデータを記憶する領域)の最初の番地に書き込まれる。
これに応じて、X線管21が励起されて一次X線(Pd−Lα線)2を発生し、一次X線2が測定試料1を照射する。試料1からは、当該試料に含まれる元素の種類(イオウ)に固有の波長の蛍光X線3(S−Kα線)が励起される。この蛍光X線3が分光結晶22によって分光されて単色化ビーム7となって、X線検出器24によって受光される。
これと同時に、一次X線2が試料1に反射して、試料1から散乱X線4が発生する。この散乱X線4が分光結晶23によって分光されて、単色化ビーム8となってX線検出器24によって受光される。散乱X線4は、試料1に含まれる微量元素(イオウ)の含有量に無関係であって、X線管21のターゲットの材料(パラジウム)に依存するので、「Pd−Lα線」の特性X線である。
ステップ10において、予め定められた測定時間が経過したか否かが判断される。測定時間が経過してなければ、ステップ7へ戻り、ステップ8における蛍光X線の強度の測定と、ステップ9における散乱X線の強度の測定が繰り返される。
そして、ステップ10において、所定の測定時間(例えば5分)が経過したことが判断されると、ステップ11において、X線管21への電力供給が停止される。
これによって、蛍光X線の強度の累積値と散乱X線の強度の累積値がメモリ332の対応するエリアに記憶されることになる。
このようにして、1番目の試料1のレシオ強度が既知の含有量とともに、W−RAM343aの対応する番地に書き込まれる。
その後、ステップ15において、サンプル数レジスタR1の値が「0」か否かが判断される。これは、ステップ1において入力されたサンプル数の全て(n)について、レシオ強度の算定が終了したか否かを判断するためである。そして、サンプル数レジスタR1の値が「0」でなければ、上述のステップ3へ戻る。
以下同様にして、3番目〜n番目の試料1について、そのレシオ強度が順次算定され、その含有量とそのレシオ強度がW−RAM343aの対応する番地に書き込まれる。
その結果、1番目〜n番目の各試料1の含有量と算出されたレシオ強度が、W−RAM343aの対応する番地に順次書き込まれる。
このようにして、定量分析できる範囲は、例えば0ppm〜400ppmである。
なお、ステップ16において、1番目〜n番目の試料1が微量元素の含有量の小さな順(昇順、又はその逆の大きい順の降順でも可)に測定されていない場合でも、検量線テーブル343bに含有量の昇順(又は降順)に登録するために、含有量を昇順(又は降順)にソートした後に、検量線テーブル343bに登録してもよい。
その後、ステップ17において、蓋部材12のロックが解除されて、一連の処理を終了する。
この場合、異なる既知の含有量別に、蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を算出して、レシオ強度として登録しているので、オイルの種類が相違しても1本の検量線によって表すことができ、試料品種の影響を除く補正法によって算出したレシオ強度を登録したのと同じ結果になる。
ユーザ(測定者)は、蛍光X線分析装置30を最初に使用するのに先だって、プログラムデータと検量線テーブルのデータをユーザのパソコン(測定用パソコン34)にインストールした上で、測定又は分析を実行することになる。インストールされた検量線テーブルのデータは、RAM343の検量線テーブル343bへ設定登録されて、後述の未知の試料1の含有量を分析処理する際に参照される。
先ず、測定者は、含有量を測定しようとする試料1を試料ホルダに入れて、載置部13に載せ、蓋部材12を閉じた後、測定開始のボタン又はスイッチを押す。これに応じて、CPU341は、メモリ342に記憶されているプログラムに基づいて図8のフローチャートの処理を開始する。
一次X線(Pd−Lα線)2は、蛍光X線分光装置20の場合であれば直接、蛍光X線分光装置20Aの場合であれば分光結晶28によって単色ビーム化されて、測定試料1を照射する。試料1からは、当該試料に含まれる元素の種類(イオウ)に固有の波長の蛍光X線3が励起(発生)される。この蛍光X線3が分光結晶22によって分光されて単色化ビーム5となって、X線検出器24によって受光される。これと同時に、一次X線2(又は単色化ビーム7)が試料1に反射して、試料1から散乱X線4が発生する。この散乱X線4が分光結晶23によって分光されて、単色化ビーム6となってX線検出器24によって受光される。
ステップ25において、X線検出器24は、蛍光X線3と散乱X線4を検出し、それぞれのアナログ値として出力する。これらの蛍光X線3および散乱X線4のアナログ値が信号処理回路32によってディジタル値に変換され、メモリ332に書き込まれて、累積的に記憶される。
このようにして、比較的短い時間(サンプリング周期)毎に検出された蛍光X線3と散乱X線4のそれぞれの強度のアナログ値がディジタル値に変換され、両ディジタル値が測定時間中にメモリ332に累積的に記憶される。そして、ステップ26において、所定の測定時間だけ経過したことが判断されると、ステップ27において、X線管21への電力供給が停止される。
ステップ29において、W−RAM343aに一時記憶されている蛍光X線強度の累積値に基づいて、蛍光X線の強度が算出(又は決定)される。ステップ30において、W−RAM343aに記憶されている散乱X線強度の累積値に基づいて、散乱X線の強度が算出(又は決定)される。
一方、蛍光X線のエネルギー(keV)のスペクトルは、イオウがオイル中に定量限界(0.5ppm)付近の微量に含まれている場合に、そのピーク値が元素(イオウ)固有の波長付近のバックグラウンドよりも若干突出して見える程度の小さな山型のピーク波形であるか、バックグラウンドに埋もれて、そのピークが分かり難い程に小さな波形である。
そこで、後述のステップ32および33の処理が行われることになる。
ステップ34において、算出されたイオウの含有量が表示部36に表示される。その後、ステップ35において、蓋部材12のロックが解除されて、一連の処理を終了する。
例えば、オイル中の微量元素として、イオウに加えて、塩素の含有量も測定したい場合は、第3の分光結晶(又は分光手段)を上述の最適化の条件を考慮して、その配置位置,湾曲面,距離,結晶材料等を選定する。そして、イオウの蛍光X線(S−Kα線)を第1の分光結晶22で分光し、塩素の蛍光X線(Cl−Kα線)を第3の分光結晶で分光し、両分光結晶によって分光されかつ集光された単色化ビームを1つのX線検出器24で検出すればよい。
この場合、塩素の検量線データは、図7のフローチャートを参照して説明した微量のイオウの含有量とレシオ強度の関係として求められた検量線と同様にして、予め算出され、パソコン34の検量線テーブル343bにテーブルデータとして登録される。
2:一次X線
3:蛍光X線
4:散乱X線
5:単色化ビーム
6:単色化ビーム
10:蛍光X線分光装置
11:本体ハウジング
12:蓋部材
13:載置部
14:窓
15:測定室
16:収納室
20:分光系
21:X線管
22:第1の分光手段(分光結晶又は湾曲モノクロメータ)
23:第2の分光手段(分光結晶又は湾曲モノクロメータ)
24:X線検出器
25:スリット(蛍光X線用)
26:スリット(散乱X線用)
27:散乱防止板
28:一次側分光結晶
30:蛍光X線分析装置
31:X線管制御回路
32:信号処理回路
33:分析制御回路
34:測定用パソコン(コンピュータ)
341:CPU
342:プログラムメモリ
343:RAM
343a:W−RAM
343b:検量線テーブル
344:入出力制御部
35:入力部(キーボード,マウス等)
36:表示部(ディスプレイ)
Claims (9)
- 一次X線を発生して測定試料に照射するX線源、
前記測定試料から発生された蛍光X線を分光する第1の分光手段、
前記測定試料から散乱された散乱X線を分光する第2の分光手段、および
前記第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、前記第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する1つのX線検出器を備えた、蛍光X線分光装置。 - 一次X線を発生するX線源、
前記X線源からの一次X線を単色化し、単色化された一次X線を測定試料に照射する分光結晶、
前記一次X線を受けた測定試料から発生された蛍光X線を分光する第1の分光手段、
前記測定試料から散乱された散乱X線を分光する第2の分光手段、および
前記第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、前記第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する1つのX線検出器を備えた、蛍光X線分光装置。 - 前記第1の分光手段は、湾曲面に形成されかつ蛍光X線を前記X線検出器へ集光し得る位置に配置され、
前記第2の分光手段は、湾曲面に形成されかつ散乱X線を前記X線検出器へ集光し得る位置に配置され、
それによって、前記第1の分光手段と前記第2の分光手段と前記1つのX線検出器とが最適な光学的配置となるように選定され、
前記X線検出器は、集光された蛍光X線と散乱X線を検出する、請求項1又は請求項2に記載の蛍光X線分光装置。 - 前記第1の分光手段は、第1の分光結晶であり、
前記第2の分光手段は、第2の分光結晶であり、
前記第1の分光結晶は、測定試料に含まれる測定対象となる元素の波長と結晶材料の格子面間隔との関係がブラッグ回析条件を満たすように選定され、その湾曲面の形状がローランド円に接するように選定され、
前記第2の分光結晶は、X線源のターゲット材料の波長と結晶材料の格子面間隔との関係がブラッグ回析条件を満たすように選定され、その湾曲面の形状がローランド円に接するように選定され、
前記X線検出器は、前記第1の分光結晶のローランド円と前記第2の分光結晶のローランド円との交点に配置される、請求項1または請求項2に記載の蛍光X線分光装置。 - 前記X線源は、測定試料の下面から照射するように配置され、
前記第1の分光手段と前記第2の分光手段と前記X線検出器は、測定試料の下側に配置され、
前記X線検出器は、半導体X線検出器である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の蛍光X線分光装置。 - 一次X線を発生して測定試料に照射するX線源、
前記測定試料から発生された蛍光X線を分光する第1の分光手段、
前記測定試料から散乱された散乱X線を分光する第2の分光手段、
前記第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、前記第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する1つのX線検出器、および
前記X線検出器によって検出された蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求め、当該求めた比と検量線に基づいて前記測定試料に含まれる微量元素の含有量を算出する演算手段を備えた、蛍光X線分析装置。 - 一次X線を発生するX線源、
前記X線源からの一次X線を単色化し、単色化された一次X線を測定試料に照射する分光結晶、
前記一次X線を受けた測定試料から発生された蛍光X線を分光する第1の分光手段、
前記測定試料から散乱された散乱X線を分光する第2の分光手段、
前記第1の分光手段によって分光された蛍光X線と、前記第2の分光手段によって分光された散乱X線を受光し得る位置に配置され、蛍光X線と散乱X線を受光する1つのX線検出器、および
前記X線検出器によって検出された蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求め、当該求めた強度の比と検量線を参照して測定試料に含まれる微量元素の含有量を算出する演算手段を備えた、蛍光X線分析装置。 - 前記演算手段は、
微量元素の含有量が既知の複数の測定試料であって異なる含有量別に、当該各測定試料の蛍光X線の強度と散乱X線の強度の比を求めた結果を予め登録した検量線テーブルと、
前記X線検出器によって検出された含有量が未知の元素を含む測定試料の蛍光X線の強度と散乱X線の強度との比を求める比算出手段と、
前記比算出手段によって算出された強度比に基づき、前記検量線テーブルを参照して未知の測定試料に含まれる微量元素の含有量を算出する含有量算出手段を含む、請求項6または請求項7に記載の蛍光X線分析装置。 - 前記第1の分光手段は、湾曲面に形成されかつ蛍光X線を前記X線検出器へ集光し得る位置に配置され、
前記第2の分光手段は、湾曲面に形成されかつ散乱X線を前記X線検出器へ集光し得る位置に配置され、
それによって、前記第1の分光手段と前記第2の分光手段と前記1つのX線検出器とが最適な光学的配置となるように選定され、
前記X線検出器は、集光された蛍光X線と散乱X線を検出する、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
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