JP2001091481A - 蛍光x線分析装置のバックグラウンド補正方法 - Google Patents
蛍光x線分析装置のバックグラウンド補正方法Info
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Abstract
響が小さく、低濃度の試料も正確に定量分析できる蛍光
X線分析装置のバックグラウンド補正方法を提供する。 【解決手段】 試料3に対してX線2を照射したときに
X線検出器5にて測定した蛍光X線強度Sと散乱X線強
度BとのX線強度比と、標準試料を用いて得られる検量
線とを用いて、試料中の測定対象成分の濃度を得るよう
にした蛍光X線分析装置において、前記X線強度比Rを
計算するのに蛍光X線強度の測定値Sから試料以外の装
置要因によるバックグラウンドbを減算した値S−bを
蛍光X線強度として用い、このX線強度比R=(S−
b)/Bを用いて前記検量線Cを求め、試料3中の測定
対象成分の濃度を得る。
Description
のバックグラウンド補正方法に関するものであり、より
詳細には、X線照射範囲中の空気による散乱など試料以
外の装置原因によるバックグラウンドを導出し、それを
考慮に入れた演算によって正確な定量を実現する蛍光X
線分析装置のバックグラウンド補正方法に関する。
まれる硫黄分などの測定対象成分の濃度を測定する方法
として、励起法によるものがある。この分析方法を図4
を用いて簡単に説明すると、図4において、1はX線管
で、このX線管1において発生したX線(一次X線)2
を、適宜の容器に収容された試料(例えば原油)3に照
射すると、二次X線が発生する。すなわち、一次X線2
の一部は試料3中の原子を励起して蛍光X線を発生させ
るが、残りの一次X線2の大部分は試料3で散乱され
る。図中の符号4は、これら蛍光X線と散乱X線からな
る二次X線を表わしている。
ネルギーを持っており、チタンターゲットのX線管を用
いている場合においては、その大部分が4.5keVの
チタン特性X線である。そして、一次X線2の強度が同
じであるとすれば、発生する硫黄の蛍光X線(エネルギ
ー2.3keV)の量は、試料3に含まれている硫黄の
量にほぼ比例する。
により試料3から発生した散乱X線と蛍光X線は、空気
中のアルゴンによるX線を除去するための例えばニオブ
によって形成されたフィルタFを介して、比例係数管か
らなるX線検出器5に入射して、電気信号に変えられ、
その後、アンプ6を経て波高分析器(シングルチャンン
ネルアナライザまたはマルチチャンネルアナライザ)7
に入り、エネルギースペクトルが得られる。さらに、得
られたエネルギースペクトルはCPU8によって処理さ
れて測定対象の濃度が求められる。
ネルギースペクトルを模式的に示すものであり、CPU
8はこのスペクトルにおける硫黄の蛍光X線に相当する
領域(符号Sで示す)と散乱X線に相当する領域(符号
Bで示す)との比、すなわち、蛍光X線と散乱X線との
X線強度比から、前記試料3中の硫黄濃度を得ることが
できる。
と硫黄濃度との関係を表わす検量線を示す図であり、硫
黄濃度が既知の標準試料を用いて求めたものである。す
なわち、この濃度測定方法は、蛍光X線と散乱X線が共
に同じように共存元素による吸収影響を受けることを利
用したものであり、このように演算することにより、共
存元素影響を少なくすることができる。
汚染物質の規制水準が極めて高くなっており、はるかに
低濃度の測定対象成分を分析する必要が生じている。そ
して、測定対象となる元素濃度が低いとき、蛍光X線強
度は小さくなり、これに伴ってX線照射範囲中の空気に
よる散乱など、試料以外の装置原因によるバックグラウ
ンドbが無視できない大きさになっていた。
管で測定した場合のエネルギースペクトルを模式的に示
している。このスペクトルにおいて硫黄の蛍光X線に相
当する領域Sは試料3に含まれる硫黄が励起されること
によって生じた要素Ssと、試料3によって散乱した散
乱X線がフィルタFを励起して生じたバックグラウンド
aと、空気等の装置原因によるバックグラウンドbとを
含んでいる。
うに、X線の照射範囲内の空気Aによって散乱したX線
2’が前記ニオブフィルターFに当たることでニオブを
励起させることによって生じたX線2fを含んでおり、
このニオブの励起によって生じたX線2fは測定対象と
なっている硫黄とほぼ同じX線エネルギー特性を持って
いる。また、このバックグラウンドbには、その他にも
様々な装置要因で発生するX線が含まれる。
クグラウンドaとは異なり試料3の共存元素に影響され
ない部分であるため、共存元素による影響がX線の測定
値に対してバックグランドbが占める割合になって現れ
ることになり、前述の単純なX線強度比(S/B)では
補正が不十分となっていた。つまり、試料3に含まれる
共存元素による吸収が大きくなり散乱光が小さくなれば
なるほど、バックグラウンドbの影響が大きくなってい
た。このために、従来は測定対象となる試料3の種類が
変わるたびに、標準試料を用いて検量線の校正をする必
要があった。
れたものであって、その目的とするところは、蛍光X線
分析装置において、共存元素影響が小さく、低濃度の試
料も正確に定量分析できる蛍光X線分析装置のバックグ
ラウンド補正方法を提供することにある。
に、本発明の蛍光X線分析装置のバックグラウンド補正
方法は、試料に対してX線を照射したときにX線検出器
にて測定した蛍光X線強度と散乱X線強度とのX線強度
比と、標準試料を用いて得られる検量線とを用いて、試
料中の測定対象成分の濃度を得るようにした蛍光X線分
析装置において、前記X線強度比を計算するのに少なく
とも蛍光X線強度の測定値から試料以外の装置要因によ
るバックグラウンドを減算した値を蛍光X線強度として
用い、このX線強度比を用いて前記検量線を求め、試料
中の測定対象成分の濃度を得ることを特徴としている。
り、バックグラウンドによる影響をほぼ確実に取り除く
ことができるので、極めて低濃度の試料であっても正確
に定量分析することができる。また、試料に含まれる共
存元素の量に影響されることなくバックグラウンドを除
去できるので、共存元素の量に関係なく重油・軽油・灯
油・ガソリン・アルコール入りガソリンなど油種による
影響の少ない、正確な定量分析を行なうことができると
ともに、油種毎に検量線を作成する必要もなくなる。
測定値からバックグラウンドを減算した値と散乱X線強
度の測定値との比として計算する場合には、より簡潔な
計算でほぼ正確な演算を行なうことができる。
の蛍光X線強度および散乱X線強度をそれぞれ測定し、
各定濃度試料によるX線強度比が等しくなることを用い
て、前記バックグラウンドの大きさを求める場合には、
バックグラウンドを簡単かつ確実に求めることができ
る。
り、図4において既に詳述した蛍光X線分析装置の部分
拡大図である。なお、以下の説明において、図1,2に
開示するエネルギースペクトルは説明を簡単にするため
の模式図であり、実際の測定結果ではない。
X線2は例えば4.5keVにピークを持つエネルギー
特性を有している。このX線2は測定対象試料3に例え
ば25mmφの直径で照射されて、試料3内の硫黄を励
起する。試料3による散乱X線4bおよび蛍光X線4s
からなるX線4はニオブフィルタFを介してX線検出器
5に入射して、これが電気信号に変換される。前記散乱
X線4bはチタン特性X線を散乱させるものであるから
4.5keV付近にピークを持つエネルギー特性を有し
ており、蛍光X線4sは硫黄のエネルギー2.3keV
にピークを持つエネルギー特性を有する。
る空気A(図1には1点のみ図示しているが実際はあら
ゆる位置から散乱する)によって散乱して散乱光2’を
生じさせ、その散乱光2’がニオブフィルタFを励起す
る。ニオブフィルタFが励起されて生じたX線2fは硫
黄とほゞ同じエネルギー2.3keV付近にピークを持
つエネルギー特性を有している。
特性はX線2と同じ4.5keVにピークを持ってお
り、これらの試料3以外の様々な装置要因によるバック
グラウンドbがX線検出器5に入力される。一方、散乱
X線4bは試料3によるバックグラウンドaを生じさせ
る。
エネルギー2.3keVを有する蛍光X線強度Sとエネ
ルギー4.5keVを有する蛍光X線強度Bに分離され
てそれぞれ測定されて、処理される。
ンド補正方法は、前記CPU8によって前記試料3以外
の装置原因によるバックグラウンドbを導出することに
より、より正確な濃度を計算するものである。すなわ
ち、従来のような蛍光X線強度Sと散乱X線強度Bによ
る単純なX線強度比(S/B)ではなく、以下の式
(1)に示すように、蛍光X線強度Sからこのバックグ
ラウンドbを減算したものに対して散乱X線強度Bを分
母としたX線強度比Rを計算するものである。
ら試料以外の装置要因によるバックグラウンドbを減算
してX線強度比Rを求めている。なお、上述の式(1)
では、4.5keVのエネルギー特性を有する散乱X線
強度Bの測定値に影響を与えているバックグラウンドの
大きさを無視できるものとして計算しており、以下の説
明においても、前記式(1)を基本として説明している
が、本発明はこの点を限定するものではない。
ラウンドbの大きさを蛍光X線強度Sに影響を与えるバ
ックグラウンドb1 と、散乱X線強度Bに影響を与える
バックグラウンドb2 とに分けて、前記X線強度比をR
=(S−b1 )/(B−b2)として計算することも可
能である。
bの導出方法を説明する。バックグラウンドの導出は、
測定対象の元素濃度が0(濃度が等しい例)であり、共
存元素の大きく異なる2つの定濃度試料3d,3m(本
例では、一例としてデカリン3dと、メタノール3mで
ある)を用いて行う。なお、前述のより厳密な計算を行
う場合は3つの定濃度試料を用いてバックグランド
b1 ,b2 を求めることができる。
に示した測定対象試料3として蛍光X線分析装置に搭載
し、それぞれの場合の散乱X線強度Bd,Bmと蛍光X
線強度Sd,Smの測定値を求める。両定濃度試料3
d,3mを測定対象試料3として測定したX線強度S
d,Bd,Sm,Bmの測定値は以下に示すそれぞれの
要素を含んでいる。
カリン中蛍光X線強度Sd,メタノール中蛍光X線強度
Sm)の測定値は、試料3d,3mの蛍光による蛍光X
線強度およびチタン特性X線を照射するX線管1からわ
ずかに出射しており試料3d,3mによって散乱したエ
ネルギー2.3keV(硫黄特性)のX線を含む試料3
に起因するバックグラウンドaと、空気の散乱やニオブ
フィルタFの励起などの様々な装置要因によって生じる
バックグラウンドb1 (以下、バックグランドbと表わ
す)の和となる。ここで今、両定濃度試料3d,3mは
何れも測定対象成分を全く含んでいないので、前記試料
3d,3mの蛍光による蛍光X線強度は0とすることが
できる。
リン中散乱X線強度Bd,メタノール中散乱X線強度B
m)の測定値は、試料3d,3mによって散乱したエネ
ルギー4.5keVのX線と、空気の散乱などの様々な
装置要因によって生じるバックグラウンドb2 の和とな
る。なお、バックグラウンドb2 の大きさは試料3d,
3mによって散乱したエネルギー4.5keVのX線に
比べて十分に小さいので、これを無視することができ
る。
m,Bmの測定値とバックグラウンドbとの関係は、以
下の式(2)によって表すことができる。なお、前記バ
ックグラウンドaについては、試料3d,3mの共存元
素影響を受けるものであるから、式(2)において減算
する必要はない。
d,3mを用いて測定された二次X線強度Sd,Bd,
Sm,Bmの測定値を代入して計算することにより、試
料3に依存しない装置要因によるバックグラウンドbの
大きさを求めることができる。また、このようにして求
めたバックグラウンドbを前記式(1)に代入して、未
知濃度の試料3におけるX線強度比Rを求めることによ
り、このX線強度比Rは試料3に含まれる共存元素の量
に関係なく正確に求めることができる。
気Aによって散乱するX線2’の影響によるものだけで
なく、ニオブフィルタFの励起など装置に起因するシス
テムピークや、検出器の分解能の限界によって分離でき
なかった測定対象ではないエネルギーなども含まれてい
る。したがって、本発明はX線強度の測定値から試料3
以外のすべての装置要因によるこれらのバックグラウン
ドbを減算したものを用いてX線強度比Rを求めること
により、さまざまな装置要因によるバックグラウンドb
の影響を一切なくすることができる。つまり、バックグ
ラウンドbが1個の試料3を測定するだけでは決定でき
ないときにもその影響をほぼ完全に除去できる。
検量線Cの一例を示し、以下にこの検量線Cの求め方を
説明する。すなわち、図3に示す検量線Cは既知濃度の
標準試料3sの蛍光X線強度Sおよび散乱X線強度Bを
測定し、各X線強度の測定値S,Bを既に求めたバック
グラウンドbと共に前記式(1)に代入することによ
り、前記X線強度比Rを用いて作成することができる。
すると、以下の式(3)のようになる。
ているので、標準試料3sとして異なる既知濃度C1 ,
C2 ,C3 を有する3個以上の標準試料3S1〜3S3を用
いてそのときのX線強度比R1 ,R2 ,R3 を測定し、
これらから各係数α,β,γを求めることができる。ま
た、この標準試料3sの数は前記検量線Cが1次式の場
合には2個以上、検量線Cが3次式以上である場合は4
個以上、つまり、その次数より一つ多い数の標準試料3
sを用いてその係数を求めることができる。
ることにより、未知濃度の試料3xについてその濃度C
xを算出することができる。なお、既に詳述したよう
に、前記検量線Cは試料3に含まれる共存元素の量に関
係なく同じものを用いることができるので、試料3の種
類が変わる毎に作成しなおす必要はないが、装置要因に
よって生じるバックグラウンドbの大きさが経時変化す
ることを考えて上述の方法で定濃度試料3d,3mや標
準試料3sを用いて校正することができる。
て濃度を算出することにより、容易かつ正確に濃度を測
定することができるが、本発明は検量線Cを用いて濃度
を算出することを限定するものではない。すなわち、例
えば、X線強度の測定値から試料以外の装置要因による
これらのバックグラウンドbを減算したものを用いて基
礎パラメータ法により濃度を算出するものであってもよ
い。
バックグラウンドによる影響を共存元素の量や試料の種
類に関係なくほぼ確実に取り除くことができるので、極
めて低濃度の試料であっても正確に定量分析することが
できると共に、共存元素の量の異なる重油・軽油・灯油
・ガソリン・アルコール入りガソリンなど油種を変えて
も、正確な定量分析を行なうことができる。また、油種
毎に検量線を作成する必要もなくなる。
である。
ある。
X線の測定値を示す図である。
線の測定値を示す図である。
器、R…X線強度比、b…バックグラウンド、B…散乱
X線強度、C…検量線、S…蛍光X線強度。
Claims (3)
- 【請求項1】 試料に対してX線を照射したときにX線
検出器にて測定した蛍光X線強度と散乱X線強度とのX
線強度比と、標準試料を用いて得られる検量線とを用い
て、試料中の測定対象成分の濃度を得るようにした蛍光
X線分析装置において、前記X線強度比を計算するのに
少なくとも蛍光X線強度の測定値から試料以外の装置要
因によるバックグラウンドを減算した値を蛍光X線強度
として用い、このX線強度比を用いて前記検量線を求
め、試料中の測定対象成分の濃度を得ることを特徴とす
る蛍光X線分析装置のバックグラウンド補正方法。 - 【請求項2】 前記X線強度比を、蛍光X線強度の測定
値からバックグラウンドを減算した値と散乱X線強度の
測定値との比として計算する請求項1に記載の蛍光X線
分析装置のバックグラウンド補正方法。 - 【請求項3】 測定対象成分濃度が等しく、かつ共存元
素の大きく異なる複数の定濃度試料の蛍光X線強度およ
び散乱X線強度をそれぞれ測定し、各定濃度試料による
X線強度比が等しくなることを用いて、前記バックグラ
ウンドの大きさを求める請求項1または2に記載の蛍光
X線分析装置のバックグラウンド補正方法。
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