JP2020003331A - バックグラウンド除去方法及び蛍光x線分析装置 - Google Patents

バックグラウンド除去方法及び蛍光x線分析装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ピーク近傍のバックグラウンド形状が曲線状になっているときでも、正確なバックグラウンド強度を推定し、正確な微量分析を行う。【解決手段】予備試料から発生する2次X線について、分析元素に対応するピーク角度と第1及び第2バックグラウンド角度における3個の予備強度を取得し、バックグラウンドプロファイルの形状が、試料間で相似形である要素と、角度で強度が一定である要素と、の2個のバックグラウンド要素から構成されるとの仮定に従って、3個の予備強度に基づいて、バックグラウンド除去係数を2種算出し、分析試料に1次X線を照射し、2次X線について、ピーク角度と第1及び第2バックグラウンド角度における3個の分析強度を取得し、2種のバックグラウンド除去係数と、第1及び第2バックグラウンド角度における分析強度と、から算出したピーク角度におけるバックグラウンド強度を、ピーク角度における分析強度から差し引く。【選択図】図3

Description

本発明は、バックグラウンド除去方法及び蛍光X線分析装置に関する。
蛍光X線分析装置を用いて元素を分析する際に、グロス強度からバックグラウンド強度を差し引いたネット強度を使用することにより、分析の正確さを向上させることができる。従来、バックグラウンド強度を算出する方法として、一般的にはバックグラウンド強度を直線近似する方法が用いられるが、曲線近似する方法も用いられていた。
直線近似する方法は、図7に示すように、ピーク前後の2点のバックグラウンド測定角度の強度を直線で結び、当該直線のピーク角度(2θP)における強度をバックグラウンド強度であると近似する方法である。例えば、数1を用いてバックグラウンド強度の近似が行われる。
Figure 2020003331
なお、数1において、IBはピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度である。IB1及びIB2は、ピーク前後の2個のバックグラウンド測定用角度(以下、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)とも称する)におけるバックグラウンド強度である。また、k1及びk2は、バックグラウンド除去係数である。通常、ピーク前後の2個のバックグラウンド測定用角度として、ピークの影響のない角度が使用される。
しかしながら、直線近似は、ピーク前後のバックグラウンドの形状が直線から大きくずれている場合、近似の誤差が増大する。また、ピークの近傍に多くの妨害線がある場合、妨害線の影響を避けるためにピーク角度(2θP)から離れた角度の強度を用いて近似する必要がある。この場合も、算出されるバックグラウンド強度の誤差は大きい(下記特許文献1参照)。
上記のように、近似の誤差が増大すると、得られたネット強度の測定誤差が増大する。実際、ピーク角度(2θP)近傍のバックグラウンド強度を直線近似によって算出した場合、誤差が無視できないほど大きい場合がある。このような場合には、異なる試料の測定結果に含まれるバックグラウンド強度が相似形であれば、数2を用いてバックグラウンド強度の近似が行われることもある。
Figure 2020003331
ここで、数2において、IBはピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度である。IB は、バックグラウンド測定用角度(第1角度(2θB1)又は第2角度(2θB2)のいずれか1個の角度)におけるバックグラウンド強度である。また、k1は、バックグラウンド除去係数である。バックグラウンド除去係数は、ブランク試料の測定結果におけるピーク角度(2θP)の強度と、バックグラウンド測定用角度の強度と、の比である。
一方、曲線近似する方法は、バックグラウンド形状が曲線である場合に、ピーク前後のバックグラウンド領域の多点のデータを用いて、多項式、ローレンツ関数、または、双曲線関数で近似する方法である。この方法は、ブランク試料が入手できない場合に、分析対象元素を含む試料でも適用できる(下記特許文献2及び3並びに非特許文献1参照)。
国際公開第2017/038702号 特開平03−285153号公報 特開平11−316199号公報
ヨシユキカタオカ著、"アナリティカルサイエンス"、Vol.7、1991年、513-516ページ
分析元素が分析試料に微量しか含まれていない場合、蛍光X線のピークは小さい。また、ピーク角度近傍のバックグラウンド形状が曲線状である場合がある。このような場合に直線近似を行うと、ピーク角度(2θP)のバックグラウンド強度の推定値の誤差は相対的に大きい。従って当該条件の下では、得られるネット強度の誤差が大きくなる。例えば、図8に示すプロファイルが得られた場合、ネット強度が負となる場合もある。
また、ピーク角度前後のいずれか1個の角度におけるバックグラウンド強度を用いて近似を行う方法は、異なる試料の測定結果に含まれるバックグラウンド強度が相似形でない場合、正確なバックグラウンド強度を推定することができない。
曲線近似を行う方法は、バックグラウンドの測定点が多いため、測定時間が長い。また、曲線近似を行う方法は、ピーク角度前後の少しのバックグラウンド形状の変化により、算出されるバックグラウンド強度が大きく変化してしまう。
上記のように、バックグラウンド強度をグロス強度から差し引いてネット強度を計算する際に、ピーク角度近傍のバックグラウンド形状が曲線状であると分析誤差が増大する。特に、高い濃度の分析元素を含む標準試料を用いて検量線を作成し、分析元素の濃度が微量である分析試料の分析をする場合や、標準添加法の場合に、分析誤差が大きくなる。標準添加法は、未知試料に段階的に既値量の分析元素を添加して、ピーク角度におけるネット強度の増加の度合いから未知試料のネット強度に対応する定量値を求める方法である。
以下に、バックグラウンド形状が曲線であることが特に問題となる2つの具体的なケースを説明する。なお、下記ケース1及び2は、あくまで例示である。
(ケース1)一般的に、連続X線のX線強度は、X線管の励起電圧に対応する最短波長の約2倍の波長で最大となる。さらに、当該最短波長の約3倍の波長よりも長波長側では、バックグラウンドは下に凸の形状となる。また、連続X線に由来するバックグラウンドは、X線管から試料に入射した連続X線が試料中でトムソン散乱及びコンプトン散乱することにより発生する。ここで、トムソン散乱による散乱線の強度と、コンプトン散乱による散乱線の強度とは、エネルギー特性と試料中の原子番号依存性が異なる。従って、異なる組成の試料に対する2つのプロファイルに含まれる下に凸形状のバックグラウンド形状は、正確には相似ではない。
バックグラウンド形状が相似ではないことによる影響は、ピーク角度(2θP)と第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)が近い場合は小さい。しかし、分析試料が、ストロンチウム(Sr)、ルビジウム(Rb)、ジルコニウム(Zr)、鉛(Pb)など多くの微量元素を含む天然鉱物等の場合、ピーク角度(2θP)の近傍に現れるピーク(近接線と呼ぶ)が多いため、当該影響は大きくなる。近接線の影響を受けないように設定された第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)は、ピーク角度(2θP)から大きく離れる場合が多い。そのため、バックグラウンド形状が相似ではないことによって分析誤差が大きくなる。
(ケース2)ピーク角度(2θP)が、ピーク角度(2θP)から離れた非常に大きなピークの裾に位置する場合、プロファイルは、図9に示すような形状となる。具体的には、バックグラウンドは、ほぼ一定の強度のバックグラウンドと、大きなピークの強度に比例した相似形のバックグラウンドと、を合わせた形状となる。ピーク角度(2θP)から離れた非常に大きなピークは、X線管のターゲット元素に由来する特性X線である場合もある。このような場合、上記直線近似する方法は、特に分析誤差が大きい。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ピーク近傍のバックグラウンド形状が曲線状になっているときでも、正確なバックグラウンド強度を推定し、正確な微量分析が行えるバックグラウンド除去方法及び蛍光X線分析装置を提供することである。
請求項1に記載のバックグラウンド除去方法は、蛍光X線分析装置による定量分析において、バックグラウンド強度を除去するバックグラウンド除去方法であって、予備試料に1次X線を照射し、前記予備試料から発生する2次X線について、分析元素に対応するピーク角度またはピークエネルギーと、前記ピーク角度より小さい第1角度または前記ピークエネルギーより小さい第1エネルギーと、前記ピーク角度より大きい第2角度または前記ピークエネルギーより大きい第2エネルギーと、における3個の予備強度を取得する工程と、バックグラウンドプロファイルの形状が、試料間で相似形である要素と、前記3個の予備強度が取得された3個の角度またはエネルギーで強度が一定である要素と、の2個のバックグラウンド要素から構成されるとの仮定に従って、前記3個の予備強度に基づいて、バックグラウンド除去係数を2種算出する工程と、分析試料に1次X線を照射し、前記分析試料から発生する2次X線について、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、における3個の分析強度を取得する工程と、前記2種のバックグラウンド除去係数と、前記第1角度または前記第1エネルギーにおける前記分析強度と、前記第2角度または前記第2エネルギーにおける前記分析強度と、から算出した前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおけるバックグラウンド強度を、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおける前記分析強度から差し引く工程と、を有することを特徴とする。なお、前記、予備強度と分析強度とは、それぞれ予備試料と分析試料を測定して得るピーク及びバックグラウンドの強度である。
請求項2に記載のバックグラウンド除去方法は、請求項1に記載のバックグラウンド除去方法において、前記予備試料は、前記分析元素を含まないブランク試料であることを特徴とする。
請求項3に記載のバックグラウンド除去方法は、請求項1または2に記載のバックグラウンド除去方法において、前記バックグラウンド除去係数を2種算出する工程は、前記予備試料に1次X線を照射し、発生した2次X線に基づいて、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、を少なくとも含むプロファイルを取得する工程を含み、前記プロファイルに含まれる前記ピーク角度または前記ピークエネルギー前後のバックグラウンドに近似した関数を取得する工程と、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、における予備強度を、前記関数を用いて算出する工程と、前記算出した予備強度に基づいて、前記バックグラウンド除去係数を2種算出する工程と、を含むことを特徴とする。
請求項4に記載のバックグラウンド除去方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載のバックグラウンド除去方法において、前記2種のバックグラウンド除去係数は、前記第2角度または前記第2エネルギーと前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおける強度差と、前記第2角度または前記第2エネルギーと前記第1角度または前記第1エネルギーにおける強度差と、の比と、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと前記第1角度または前記第1エネルギーにおける強度差と、前記第2角度または前記第2エネルギーと前記第1角度または前記第1エネルギーにおける強度差と、の比、であることを特徴とする。
請求項5に記載の蛍光X線分析装置は、1次X線を予備試料及び分析試料に照射するX線源と、前記予備試料及び前記分析試料から発生する2次X線の強度を、分析元素に対応するピークが観測されるピーク角度を含む角度範囲、または、前記分析元素に対応するピークが観測されるピークエネルギーを含むエネルギー範囲で測定する検出器と、前記検出器の測定結果に含まれるバックグラウンド強度を除去する演算を行う演算部と、を有する蛍光X線分析装置であって、前記演算部は、前記予備試料から発生する2次X線について、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記ピーク角度より小さい第1角度または前記ピークエネルギーより小さい第1エネルギーと、前記ピーク角度より大きい第2角度または前記ピークエネルギーより大きい第2エネルギーと、における3個の予備強度を取得し、バックグラウンドプロファイルの形状が、試料間で相似形である要素と、前記3個の予備強度が取得された3個の角度またはエネルギーで強度が一定である要素と、の2個のバックグラウンド要素から構成されるとの仮定に従って、前記3個の予備強度に基づいて、バックグラウンド除去係数を2種算出し、前記分析試料から発生する2次X線について、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、における3個の分析強度を取得し、前記2種のバックグラウンド除去係数と、前記第1角度または前記第1エネルギーにおける前記分析強度と、前記第2角度または前記第2エネルギーにおける前記分析強度と、から算出した前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおけるバックグラウンド強度を、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおける前記分析強度から差し引く演算を行う、ことを特徴とする。
請求項1乃至5に記載の発明によれば、ピーク近傍のバックグラウンド形状が曲線状になっているときでも、正確なバックグラウンド強度を推定し、正確な微量分析が行える。
本発明の実施形態に係る蛍光X線分析装置を概略的に示す図である。 第1実施形態に係るバックグラウンド除去方法を示すフローチャートである。 測定結果の一例を示す図である。 第2実施形態に係るバックグラウンド除去方法を示すフローチャートである。 プロファイルの一例を示す図である。 検証のための実験結果を示す図である。 直線近似を示す図である。 ピークが小さいプロファイルに対して、直線近似を行った場合を示す図である。 ピーク角度がピーク角度から離れた非常に大きなピークの裾となる場合を説明する為の図である。
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。また、本実施形態(第1実施形態及び第2実施形態を含む)は、主な例として、蛍光X線分析装置100が波長分散型蛍光X線分析装置である場合を想定し、角度(2θ)を用いて説明している。しかし、蛍光X線分析装置100は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置であってもよい。この場合、角度の代わりにエネルギーが用いられる。
図1は、本発明の実施形態に係る蛍光X線分析装置100の概略を示す図である。図1に示すように、蛍光X線分析装置100は、X線源102と、試料台104と、分光素子106と、検出器108と、計数器110と、走査機構112と、演算部114と、を含んで構成されている。
X線源102は、1次X線120を試料に照射する。具体的には、例えば、X線源102は、1次X線120を生成し、分析試料118(例えば、分析元素とする鉛:Pbを含む試料)に対して照射する。また、X線源102は、1次X線120を生成し、分析試料118以外の試料である予備試料116(例えば、分析元素を含まないブランク試料)に対して照射する。なお、以下において、単に試料と記載した場合、試料は、予備試料116または分析試料118を表すものとする。
試料台104は、試料が配置される。具体的には、例えば、試料台104は、X線源102から1次X線120が照射される面に対して、試料が配置される。
分光素子106は、2次X線122を分光する。具体的には、例えば、分光素子106は、試料から発生した複数の波長の2次X線122のうち、ブラッグの条件式を満たす特定の波長のX線のみを分光する。図1に示すように、試料から発生した2次X線122の進む方向と分光素子106表面との成す入射角度をθとする。
検出器108は、予備試料116及び分析試料118から発生する2次X線122の強度を、分析元素に対応するピークが観測されるピーク角度(2θP)を含む角度範囲で測定する。試料から発生する2次X線122の強度を、分析元素に対応する蛍光X線ピークが観測されるピーク角度(2θP)を含む角度範囲で測定する。具体的には、例えば、検出器108は、試料から発生する2次X線122の強度を、測定対象である鉛(Pb)のLβ1線に対応するピークが観測されるピーク角度(2θP)を含む角度範囲で測定する。検出器108は、例えば、従来から知られている比例計数管や、シンチレーション計数管等である。
ここで、角度範囲は、少なくとも第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)の2個の角度を含む。また、第1角度(2θB1)は、ピーク角度(2θP)より小さい角度である。第2角度(2θB2)は、ピーク角度(2θP)より大きい角度である。第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)は、それぞれ上記ピークの影響がない位置に設定される。
なお、蛍光X線分析装置100がエネルギー分散型蛍光分析装置である場合、検出器108は、分析元素に対応するピークが観測されるピークエネルギーを含むエネルギー範囲で測定する。この場合、エネルギー範囲は、少なくとも第1エネルギー及び第2エネルギーの2個のエネルギーを含む。また、第1エネルギーは、ピークエネルギーより小さいエネルギーである。第2エネルギーは、ピークエネルギーより大きいエネルギーである。第1エネルギー及び第2エネルギーは、それぞれ上記ピークの影響がない位置に設定される。
計数器110は、検出器108の測定強度として出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数して演算部114に出力する。走査機構112は、2次X線122が分光素子106に入射する入射角度を変更するとともに、分光された2次X線122が出射された方向に検出器108の位置を走査する。具体的には、例えば、走査機構112は、分光素子106が固定された分光素子固定台(図示なし)を回転させる。分光された2次X線122が進む方向と分光素子106の表面との成す出射角度は入射角度と等しくなる。走査機構112は、上記分光素子固定台の回転と連動して、分光された2次X線122が入射する位置に検出器108を走査する。
換言すると、走査機構112は、試料から発生した2次X線122の進む方向と分光素子106によって分光された2次X線122の進む方向との成す角度が2θとなる関係を満たすように、分光素子固定台を回転させるとともに、検出器108を走査する。
走査機構112の動作によって、2次X線122が分光素子106に入射する入射角度が変更される。入射角度は分光される2次X線122の波長に対応することから、走査機構112を備えた検出器108は、様々な波長の2次X線122の強度を測定することができる。
演算部114は、検出器108の測定結果に含まれるバックグラウンド強度を除去する演算を行う。演算部114の動作の詳細な説明は、以下のバックグラウンド除去方法の説明とともに行う。なお、バックグラウンド除去方法の具体例として、第1実施形態及び第2実施形態について説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態では、予備試料116としてブランク試料が存在する場合に行われるバックグラウンド除去方法について説明する。図2は、第1実施形態におけるバックグラウンド除去方法を表すフローチャートである。
まず、ブランク試料である予備試料116に1次X線120を照射し、予備試料116から発生する2次X線122について、分析元素に対応するピーク角度(2θP)と、ピーク角度より小さい第1角度(2θB1)と、ピーク角度より大きい第2角度(2θB2)と、における3個の予備強度を取得する(S202)。
なお、蛍光X線分装置100がエネルギー分散型蛍光X線分装置である場合には、予備試料116に1次X線120を照射し、予備試料116から発生する2次X線122について、分析元素に対応するピークエネルギーと、ピークエネルギーより小さい第1エネルギーと、ピークエネルギーより大きい第2エネルギーと、における3個の予備強度を取得する。
具体的には、X線源102は、試料台104に配置されたブランク試料である予備試料116に1次X線120を照射する。検出器108は、予備試料116から発生する2次X線122の強度を、分析元素に対応するピークが観測されるピーク角度(2θP)、ピーク角度(2θP)より小さい第1角度(2θB1)及びピーク角度(2θP)より大きい第2角度(2θB2)の3個の角度で測定する。計数器110は、検出器108の測定強度として出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数して演算部114に出力する。
また、演算部114は、計数器110の出力に基づいて、2次X線122の強度と、測定角度(2θ)の関係を表すプロファイルを取得してもよい。ここで、測定角度(2θ)は、2次X線122が分光素子106に入射する入射角度(θ)と分光素子106から反射されたX線が検出器108に入射する角度(θ)との間で決定される角度である。
図3は、予備試料116に対する測定結果の一例を示す図である。なお、図3には分析試料118に対する測定結果も含まれる。予備試料116は、分析元素(例えば鉛:Pb)を含まないブランク試料であるため、図3に示すように、予備試料116に対する測定結果は、ピーク角度(2θP)において、ピークを有しないプロファイルである。予備試料116に対する測定結果のピーク角度(2θP)、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)における強度をそれぞれIB b、IB1 b及びIB2 bとする。
次に、演算部114は、バックグラウンド除去係数を2種算出する(S204)。ここで、バックグラウンド除去係数は、予備試料116に対する測定結果に含まれる、ピーク角度(2θP)、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)の3個の強度に基づいて、算出される。具体的には、例えば、2種のバックグラウンド除去係数をk1及びk2とする。以下、k1及びk2の算出方法について説明する。
本発明では、バックグラウンドプロファイルの形状が、試料間で相似形である要素と、3個の予備強度が取得された3個の角度またはエネルギーで強度が一定である要素と、の2個のバックグラウンド要素から構成されるとの仮定に従って、3個の予備強度に基づいて、バックグラウンド除去係数が2種算出される。
具体的には、予備試料116のバックグラウンド強度は、測定角度(2θ)に依存する強度(IBV b αIBV b βIBV b)と、測定角度(2θ)に依存しない強度(IBC)が含まれるとの仮定に従って、2種のバックグラウンド除去係数が算出される。
ここで、組成の異なる試料の測定結果にそれぞれ含まれる測定角度(2θ)に依存する強度は、相似であると仮定する。第1角度(2θB1)における測定角度に依存する強度の、ピーク角度(2θP)における測定角度に依存する強度に対する比をαとする。また、第2角度(2θB2)における測定角度に依存する強度の、ピーク角度(2θP)における測定角度に依存する強度に対する比をβとする。さらに、分析試料118に対する測定結果について、ピーク角度(2θP)、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)におけるバックグラウンド強度をそれぞれIB、IB1及びIB2と仮定する。
上記仮定の下では、IB、IB1及びIB2は、それぞれ数3乃至数5で表される。
Figure 2020003331
Figure 2020003331
Figure 2020003331
数3乃至数5から、ピーク角度(2θP)と第1角度(2θB1)との強度差と、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)における強度差と、の比は数6で表される。
Figure 2020003331
数6から、ピーク角度(2θP)及び第1角度(2θB1)における強度差と、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)における強度差と、の比は、IBCに依存せず、αとβのみに依存することが分かる。
ここで、IBCは、バックグラウンドのグロス強度と、測定角度と、に依存しない固定値である。また、αとβは、試料に依存しない固定値である。従って、予備試料116に対する測定結果から算出した上記比率と、分析試料118に対する測定結果から算出した上記比率とは等しい。そこで、予備試料116に対する測定結果から得られた上記比率を数7で表す。なお、添え字のbは、予備試料116に対する測定結果から得られたことを表す。
Figure 2020003331
予備試料116とは組成の異なる分析試料118に対する測定結果に基づいて、ピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度IBは、数8で得られる。
Figure 2020003331
数8を予備試料116に対する測定結果から得られるIB b、IB1 b及びIB2 bを用いて変形すると数9が得られる。
Figure 2020003331
さらに、数9を整理すると数10が得られる。
Figure 2020003331
一方、ネット強度(INet)は、グロス強度(Igross)からバックグラウンド強度(IB)を差し引いた値である。従って、ネット強度(INet)は、数11で表される。
Figure 2020003331
また、上記仮定から、分析試料118のピーク角度(2θP)における強度は、数12で表される。
Figure 2020003331
数10と数12からk1及びk2は、数13及び数14で表される。
Figure 2020003331
Figure 2020003331
なお、数13と数14からわかるように、k1+k2=1.0である。従って、数13に基づいてk1を計算し、k2=1.0-k1の式から、k2を求めても良い。また、数14に基づいてk2を計算し、k1=1.0-k2の式から、k1を求めても良い。
従って、k1は、ブランク試料である予備試料116の第2角度(2θB2)とピーク角度(2θP)における強度差と、第2角度(2θB2)と第1角度(2θ B1)における強度差と、の比で表される。また、k2は、ブランク試料である予備試料116のピーク角度(2θP)と第1角度(2θP)における強度差と、第2角度(2θB2)と第1角度(2θB1)における強度差と、の比で表される。
なお、蛍光X線分装置100がエネルギー分散型蛍光X線分装置である場合には、k1は、ブランク試料である予備試料116の第2エネルギーとピークエネルギーにおける強度の差と、第2エネルギーと第1エネルギーにおける強度差と、の比で表される。また、k2は、ブランク試料である予備試料116のピークエネルギーと第1エネルギーにおける強度差と、第2エネルギーと第1エネルギーにおける強度差と、の比で表される。
演算部114は、予備試料116に対する測定結果から得られたIB b、IB1 b及びIB2 bと、数13及び数14に基づいて、k1及びk2を算出する。k1及びk2の具体的な算出例は、後述する。
次に、分析試料118に1次X線120を照射し、分析試料118から発生する2次X線122について、ピーク角度(2θP)と、第1角度(2θB1)と、第2角度(2θB2)と、における3個の分析強度を取得する(S206)。
なお、蛍光X線分装置100がエネルギー分散型蛍光X線分装置である場合には、分析試料118に1次X線120を照射し、分析試料118から発生する2次X線122について、ピークエネルギーと、第1エネルギーと、第2エネルギーと、における3個の分析強度を取得する。
具体的には、X線源102は、試料台104に配置された分析試料118に1次X線120を照射する。検出器108は、分析試料118から発生する2次X線122の強度を、分析元素に対応するピークが観測されるピーク角度(2θP)、2θB1及び2θB2の3個の角度で測定する。計数器110は、検出器108の測定強度として出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数して演算部114に出力する。演算部114は、計数器110の出力に基づいて、2次X線122の強度と、測定角度(2θ)と、の関係を表す測定結果を取得する。
次に、演算部114は、2種のバックグラウンド除去係数と、第1角度(2θB1)における分析強度と、第2角度(2θB2)における分析強度と、から算出したピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度を、ピーク角度(2θP)における分析強度から差し引く演算を行う(S208)。
なお、蛍光X線分装置100がエネルギー分散型蛍光X線分装置である場合には、演算部114は、2種のバックグラウンド除去係数と、第1エネルギーにおける分析強度と、第2エネルギーにおける分析強度と、から算出したピークエネルギーにおけるバックグラウンド強度を、ピークエネルギーにおける分析強度から差し引く演算を行う。
具体的には、IB1及びIB2は、それぞれS206で取得した測定結果の第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)における強度である。
演算部114は、当該IB1及びIB2と、S204で取得したk1及びk2と、を数12に代入することによって、ピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度(IB)を算出する。さらに、演算部114は、数11に示すように、S206で取得した測定結果のピーク角度(2θP)におけるグロス強度(Igross)から、算出したバックグラウンド強度(IB)を差し引く。これにより、ピーク角度(2θP)におけるネット強度を算出する。
[第2実施形態]
続いて第2実施形態について説明する。第2実施形態では、予備試料116としてブランク試料を用いない場合に行われるバックグラウンド除去方法について説明する。第2実施形態における予備試料116は、例えば、検量線作成に用いる標準試料等の分析元素を含む試料である。図4は、第2実施形態におけるバックグラウンド除去方法を表すフローチャートである。
まず、予備試料116に1次X線120を照射し、発生した2次X線122に基づいて、ピーク角度(2θP)と、第1角度(2θB1)と、第2角度(2θB2)と、における予備強度を少なくとも含むプロファイルを演算部114は取得する(S402)。
なお、蛍光X線分装置100がエネルギー分散型蛍光X線分装置である場合には、予備試料116に1次X線120を照射し、発生した2次X線122に基づいて、ピークエネルギーと、第1エネルギーと、第2エネルギーと、における予備強度を少なくとも含むプロファイルを演算部114は取得する。
具体的には、X線源102は、試料台104に配置された分析元素を含む予備試料116に1次X線120を照射する。検出器108は、当該試料から発生する2次X線122の強度を、少なくとも2θB1乃至2θB2を含む角度範囲で測定する。第2実施形態は、2θB1乃至2θB2を含む角度範囲に含まれる、プロファイル作成に必要な複数の角度で2次X線122の強度が測定される点で第1実施形態と異なる。
計数器110は、検出器108の測定強度として出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数して演算部114に出力する。演算部114は、計数器110の出力に基づいて、図5に示すような、2次X線122の強度と、測定角度(2θ)と、の関係を表すプロファイルを取得する。
次に、演算部114は、プロファイルに含まれるピーク角度(2θP)前後のバックグラウンドに近似した関数を取得する(S404)。具体的には、演算部114は、図5に示すピーク角度(2θP)の前後で、ピークの影響のない領域(例えば、×で示した2θ角度)のX線強度に対して所定の関数に近似する。所定の関数は、例えば、双曲線やローレンツ曲線等の関数である。
次に、演算部114は、前記で得られた関数に基づいて、分析元素に対応するピークが観測されるピーク角度(2θP)、ピーク角度(2θP)より小さい第1角度(2θB1)及びピーク角度(2θP)より大きい第2角度(2θB2)の3個の角度のX線強度を予備強度として算出する(S405)。
次に、演算部114は、バックグラウンド除去係数を2種算出する(S406)。バックグラウンド除去係数の算出方法は、S204で説明した方法と同様である。また、蛍光X線分装置100がエネルギー分散型蛍光X線分装置である場合には、例えば、図5の実線で示すプロファイルに含まれるピークエネルギー前後のバックグラウンドに近似した関数に基づいて、バックグラウンド除去係数を2種算出する。
次に、分析試料118に1次X線120を照射し、分析試料118から発生する2次X線122について、ピーク角度(2θP)と、第1角度(2θB1)と、第2角度(2θB2)と、における3個の分析強度を取得する(S408)。S408は、S206と同様の工程である。上記のように、S408における試料は、分析元素を含むが、S402において用いた試料とは異なる試料である。
次に、演算部114は、2種のバックグラウンド除去係数と、第1角度(2θB1)における分析強度と、第2角度(2θB2)における分析強度と、から算出したピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度を、ピーク角度(2θP)における分析強度から差し引く演算を行う(S410)。S410は、S208と同様である。以上のように、第2実施形態では、ブランク試料116が入手しにくい場合であっても、バックグラウンド除去係数を算出し、分析精度を向上できる。
続いて、S204において説明したバックグラウンド除去係数の具体的な計算例を説明する。図3に示す測定結果及び下記条件を用いて説明する。
表1は、予備試料116及び分析試料118に対する測定結果に含まれる各値を示す表である。測定角度(2θ)に依存しないバックグラウンド強度(IBC)は、2.0であるとする。ピーク角度(2θP)と第1角度(2θB1)における測定角度(2θ)に依存する強度の比(α)は、3.0であるとする。ピーク角度(2θP)と第2角度(2θB2)における測定角度(2θ)に依存する強度の比(β)は、0.5であるとする。ブランク試料である予備試料116のピーク角度(2θP)における測定角度(2θ)に依存する強度(IBV b)は、2.0であるとする。分析試料118のピーク角度(2θP)における測定角度(2θ)に依存するバックグラウンド強度(IBV)は、ブランク試料116の2倍の4.0であるとする。なお、表1に示すように、分析試料118のピーク角度(2θP)におけるバックグラウンド強度は、未知である。
Figure 2020003331
数13及び数14に対して、上記IB b、IB1 b及びIB2 bの各値を代入して、k1及びk2をそれぞれ算出すると、k1は、0.20であって、k2は、0.80となる。さらに、数12に対して、表1のIB1とIB2、及び、算出したk1及びk2を代入すると、IBは6.0となる。6.0という強度は、入射角度に依存しないバックグラウンド強度(IBC)の2.0という値と、分析試料118における測定角度に対して依存する強度(IBV)の4.0という値と、の合計値である6.0と一致している。従って、得られたk1及びK2を使用すれば、正しいバックグラウンド強度が得られることが分かる。
続いて、本発明の第1実施形態を実際の測定結果に適用した場合について説明する。発明者は、下記の条件で実験を行った。ブランク試料である予備試料116は、SiO2が100mass%の試料である。分析試料118は、SiO2が60mass%であり、Fe2O3が40mass%の試料である。測定元素は鉛(Pb)であって、測定対象であるピークは、鉛(Pb)のLβ線に対応するピークであるとして説明する。
図6は、S202及びS206の工程において取得された、測定結果である。図6は、ブランク試料である予備試料116及び分析試料118に対して、それぞれ鉛(Pb)のLβ線(2θ=28.26°)近傍で測定された結果を示す図である。なお、分光結晶は、LiF(200)である。いずれの試料も鉛(Pb)は含まれていないため、図6にはピークが観測されていない。
なお、図6では、分析試料118のバックグラウンド強度は、予備試料116のバックグラウンド強度の半分以下となっている。これは、分析試料118がFe2O3を多量に含んでいるため、鉛(Pb)のLβ線近傍のX線の吸収が大きくなるためである。また、図6に示すように、予備試料116と分析試料118のバックグラウンド形状は若干異なっている。
表2は、予備試料116と分析試料118のピーク角度(2θP)とピーク角度(2θP)から1°、2°及び3°離れた角度のX線強度を示す表である。
Figure 2020003331
発明者は、上記測定結果から、本発明を適用してバックグラウンド除去係数を算出した。また、発明者は、比較として従来技術を用いてバックグラウンド除去係数を算出した。なお、従来技術は、従来技術1と従来技術2である。従来技術1は、第1角度(2θB1)と第2角度(2θB2)の2点間で直線近似することでバックグラウンド除去係数を求める方法である。従来技術2は、バックグランド形状が相似であって、ピーク角度(2θP)とピーク近傍の1つの角度のバックグラウンド強度が比例すると仮定して、バックグラウンド除去係数を求める方法である。
表3は、上記の3つの方法を用いて、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)がピーク角度(2θP)の前後3°、2°、1°の3通りである場合において、算出されたバックグラウンド強度等の結果を示す表である。また、表3は、算出されたバックグラウンド強度の誤差と、当該誤差に相当する鉛(Pb)の定量値の誤差も示す。
Figure 2020003331
表3のように、上記の3つの方法において、従来技術1の誤差が最も大きい。また、図6に示す実際のバックグラウンド強度の形状は相似ではない。従って、従来技術2による算出結果は、従来技術1による算出結果よりも誤差が小さいものの、無視できない誤差が含まれる。本発明による方法が、最も正確にバックグラウンド強度を算出できることが分かる。
また、第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)がピーク角度(2θP)に近いほど誤差は少ない。しかし、分析線の近傍に近接線が現れる場合が多くある。この場合、ピーク角度(2θP)から離れた角度を第1角度(2θB1)及び第2角度(2θB2)とせざるを得ない場合ある。本発明の方法によれば、このような場合でも、正確なネット強度と分析値を得ることができる。
なお、上記結果は、予備試料116としてブランク試料が存在する場合における検証結果であるが、本発明は、ケース2の場合であっても正確なネット強度を得ることができる。
具体的には、例えば、X線源102から発生する特性X線に由来する2次X線122のピークの裾が分析線に影響する場合がある。また、分析試料118に含まれる元素から発生する2次X線122の大きなピークの裾が分析線に影響する場合がある。
ピーク角度(2θP)のバックグラウンド強度が、大きなピークの裾と、本来のバックグラウンドと、で構成されている場合、表3に示す例と同様に、正確なバックグラウンド強度を推定することが可能である。具体的には、例えば、ロジウム(Rh)管球を使用して、塩素(Cl)のKα線を分析線とする場合、当該Kα線のバックグラウンド強度は、ロジウム(Rh)Lα線の裾によるバックグラウンド強度が含まれる。本発明は、このような場合であっても、正確なバックグラウンド強度を算出できる。
以上のように、本発明によれば、ピーク角度(2θP)近傍のバックグラウンドの形状が曲線状である場合でも、正確なバックグラウンド強度が推定できるバックグラウンド除去係数を計算することができる。これにより、正確な元素分析を行うことができる。
上記では、蛍光X線分析装置として、分光結晶を使用して分光する波長分散型装置を例として説明をした。しかし、蛍光X線分析装置100は、試料から発生した2次X線122を分光結晶で分光せず、直接、SDDなど高分解能検出器で検出し、スペクトルを得るエネルギー分散型蛍光X線分装置であってもよい。この場合、ピーク及びバックグラウンド強度を測定する測定角度(2θ)をエネルギーに置き換えるだけで、上記本発明をそのまま適用できる。
100 蛍光X線分析装置、102 X線源、104 試料台、106 分光素子、108 検出器、110 計数器、112 走査機構、114 演算部、116 予備試料、118 分析試料、120 1次X線、 122 2次X線。

Claims (5)

  1. 蛍光X線分析装置による定量分析において、バックグラウンド強度を除去するバックグラウンド除去方法であって、
    予備試料に1次X線を照射し、前記予備試料から発生する2次X線について、分析元素に対応するピーク角度またはピークエネルギーと、前記ピーク角度より小さい第1角度または前記ピークエネルギーより小さい第1エネルギーと、前記ピーク角度より大きい第2角度または前記ピークエネルギーより大きい第2エネルギーと、における3個の予備強度を取得する工程と、
    バックグラウンドプロファイルの形状が、試料間で相似形である要素と、前記3個の予備強度が取得された3個の角度またはエネルギーで強度が一定である要素と、の2個のバックグラウンド要素から構成されるとの仮定に従って、前記3個の予備強度に基づいて、バックグラウンド除去係数を2種算出する工程と、
    分析試料に1次X線を照射し、前記分析試料から発生する2次X線について、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、における3個の分析強度を取得する工程と、
    前記2種のバックグラウンド除去係数と、前記第1角度または前記第1エネルギーにおける前記分析強度と、前記第2角度または前記第2エネルギーにおける前記分析強度と、から算出した前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおけるバックグラウンド強度を、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおける前記分析強度から差し引く工程と、
    を有することを特徴とするバックグラウンド除去方法。
  2. 前記予備試料は、前記分析元素を含まないブランク試料であることを特徴とする請求項1に記載のバックグラウンド除去方法。
  3. 前記バックグラウンド除去係数を2種算出する工程は、
    前記予備試料に1次X線を照射し、発生した2次X線に基づいて、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、を少なくとも含むプロファイルを取得する工程を含み、
    前記プロファイルに含まれる前記ピーク角度または前記ピークエネルギー前後のバックグラウンドに近似した関数を取得する工程と、
    前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、における予備強度を、前記関数を用いて算出する工程と、
    前記算出した予備強度に基づいて、前記バックグラウンド除去係数を2種算出する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のバックグラウンド除去方法。
  4. 前記2種のバックグラウンド除去係数は、
    前記第2角度または前記第2エネルギーと前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおける強度差と、前記第2角度または前記第2エネルギーと前記第1角度または前記第1エネルギーにおける強度差と、の比と、
    前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと前記第1角度または前記第1エネルギーにおける強度差と、前記第2角度または前記第2エネルギーと前記第1角度または前記第1エネルギーにおける強度差と、の比、
    であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバックグラウンド除去方法。
  5. 1次X線を予備試料及び分析試料に照射するX線源と、
    前記予備試料及び前記分析試料から発生する2次X線の強度を、分析元素に対応するピークが観測されるピーク角度を含む角度範囲、または、前記分析元素に対応するピークが観測されるピークエネルギーを含むエネルギー範囲で測定する検出器と、
    前記検出器の測定結果に含まれるバックグラウンド強度を除去する演算を行う演算部と、
    を有する蛍光X線分析装置であって、
    前記演算部は、
    前記予備試料から発生する2次X線について、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記ピーク角度より小さい第1角度または前記ピークエネルギーより小さい第1エネルギーと、前記ピーク角度より大きい第2角度または前記ピークエネルギーより大きい第2エネルギーと、における3個の予備強度を取得し、
    バックグラウンドプロファイルの形状が、試料間で相似形である要素と、前記3個の予備強度が取得された3個の角度またはエネルギーで強度が一定である要素と、の2個のバックグラウンド要素から構成されるとの仮定に従って、前記3個の予備強度に基づいて、バックグラウンド除去係数を2種算出し、
    前記分析試料から発生する2次X線について、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーと、前記第1角度または前記第1エネルギーと、前記第2角度または前記第2エネルギーと、における3個の分析強度を取得し、
    前記2種のバックグラウンド除去係数と、前記第1角度または前記第1エネルギーにおける前記分析強度と、前記第2角度または前記第2エネルギーにおける前記分析強度と、から算出した前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおけるバックグラウンド強度を、前記ピーク角度または前記ピークエネルギーにおける前記分析強度から差し引く演算を行う、
    ことを特徴とする蛍光X線分析装置。
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