JP2005140719A - 蛍光x線分析装置およびそれに用いられるx線分光装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 蛍光X線のスペクトルの分解能が十分で、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができるX線分光装置などを提供する。
【解決手段】 放射光を1次X線1Aとして試料2に照射する蛍光X線分析装置に用いられ、試料2から発生した蛍光X線4を分光する(+,+)配置の2つの分光結晶5A,5Bと、その分光結晶5A,5Bで分光された蛍光X線4cの強度を測定する検出器6と、分光結晶5A,5Bで分光される蛍光X線4cの波長を変えながら、その分光された蛍光X線4cが検出器6に入射するように、分光結晶5A,5Bと検出器6を連動させる連動手段7とを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置およびそれに用いられるX線分光装置に関する。
元素の化学結合状態または電子構造を解析するための装置として、X線光電子分光装置(XPS)が普及しているが、試料が超高真空雰囲気に曝露できてしかも電気的に導通があるものに限定されるなどの難点がある。これに対し、放射光を単色化して1次X線として試料に照射し、試料から発生した蛍光X線のスペクトルを湾曲分光結晶と位置敏感型検出器で測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置がある(特許文献1参照)。この蛍光X線分析装置では、前記難点は解決されている。
特開2002−214165号公報
しかし、この装置では、1つの湾曲分光結晶を用いて蛍光X線を1回しか分光しないので、蛍光X線のスペクトルの分解能が十分ではなく、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、蛍光X線のスペクトルの分解能が十分で、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができる蛍光X線分析装置およびそれに用いられるX線分光装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の第1構成にかかるX線分光装置は、放射光を1次X線として試料に照射することにより発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置に用いられ、前記試料から発生した蛍光X線を分光する(+,+)配置の2つの分光結晶と、その分光結晶で分光された蛍光X線の強度を測定する検出器と、前記分光結晶で分光される蛍光X線の波長を変えながら、その分光された蛍光X線が前記検出器に入射するように、前記分光結晶と検出器を連動させる連動手段とを備えている。
第1構成のX線分光装置によれば、(+,+)配置の2つの分光結晶を用いて蛍光X線を2回分光するので、蛍光X線のスペクトルの分解能が十分で、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができる。
本発明の第2構成にかかるX線分光装置は、放射光を1次X線として試料に照射することにより発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置に用いられ、前記試料から発生した蛍光X線を分光する(+,−,−,+)配置の4つの分光結晶と、その分光結晶で分光された蛍光X線の強度を測定する検出器と、前記分光結晶で分光される蛍光X線の波長を変えながら、その分光された蛍光X線が前記検出器に入射するように、前記分光結晶を連動させる連動手段とを備え、前記4つの分光結晶が2つのチャンネルカット結晶からなり、各チャンネルカット結晶が平行配置の2つの分光結晶を有する。
第2構成のX線分光装置によれば、(+,−,−,+)配置の4つの分光結晶を用いて蛍光X線を4回分光するので、蛍光X線のスペクトルの分解能が十分で、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができる。
第1、第2構成のX線分光装置においては、前記1次X線が放射光を単色化したものであることが好ましく、また、調整用のX線源としてX線管を備えることが好ましい。
本発明の第3構成にかかる蛍光X線分析装置は、放射光を1次X線として試料に照射するX線源と、前記第1または第2構成のX線分光装置とを備え、試料から発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する。
第3構成の蛍光X線分析装置によれば、前記第1または第2構成のX線分光装置と同様の作用効果が得られる。
第3構成の蛍光X線分析装置においては、前記1次X線が放射光を単色化したものであることが好ましく、その波長が可変であることがさらに好ましい。
以下、本発明の第1実施形態のX線分光装置を図面にしたがって説明する。図1の斜視図に示すように、放射光を単色化して1次X線1Aとして試料2に照射し、試料2から発生した蛍光X線4のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置があるが、第1実施形態のX線分光装置10は、この蛍光X線分析装置の一部として用いられている。そして、試料2から発生した蛍光X線4を分光する(+,+)配置の2つの平板分光結晶5A,5Bと、その分光結晶5A,5Bで分光された蛍光X線4cの強度を測定する比例計数管などの検出器6と、分光結晶5A,5Bで分光される蛍光X線4cの波長を変えながら、その分光された蛍光X線4cが検出器6に入射するように、分光結晶5A,5Bと検出器6を連動させる連動手段7とを備えている。
また、試料2を載置するための試料台3と、試料2から発生した蛍光X線4を平行化するソーラースリット9と、光学系9,5A,5B,6の配置などを調整する際に1次X線1Bを照射するX線源としてのX線管8とを備えている。このようなX線管8を備えることにより、放射光光源がなくても、X線分光装置10単独で、光学系9,5A,5B,6の配置などの調整ができる。なお、本発明では、ソーラースリットやX線管は備えなくてもよい。
分光結晶5A,5Bは、格子面と結晶表面が平行でなく非対称反射を利用するものであってもよい。(+,+)配置というのは、第1の分光結晶5Aによる第1の反射の折れ曲がり方向(ここでは上から見て右向き)を+として、第2の分光結晶5Bによる第2の反射の折れ曲がり方向が同じ向きであるような配置をいう。第2の反射の折れ曲がり方向が第1の反射の折れ曲がり方向と逆の向きであるような配置は、(+,−)配置という。第3以降の反射がある場合にも、第1の反射の折れ曲がり方向と対比して、同様に(+,+,+)配置、(+,+,−)配置などと表記する。
このX線分光装置10は、波長分散型でかつ走査型であり、連動手段7は、第1の分光結晶5Aと第2の分光結晶5Bが同一波長の蛍光X線4b,4cを逐次的に分光しながらその波長が少しずつ変化し、しかも、両分光結晶5A,5Bで分光された蛍光X線4cが検出器6に入射するように、分光結晶5A,5Bと検出器6を連動させる。
この連動のためのメカニズムの一例を、光学系9,5A,5B,6の平面図である図2にしたがって説明する。装置(空間)に対して固定された太陽歯車A(中心O、歯数2x)、それに噛み合う遊星歯車B1(中心O、歯数x)、それと同心の太陽歯車B2(図では遊星歯車B1に重なっており、中心O、歯数x)、それに噛み合う遊星歯車C(中心O、歯数2x)がある。太陽歯車Aの中心Oと遊星歯車B1および太陽歯車B2の中心Oは、太陽歯車Aの中心Oのまわりに回動自在なアームDで連結され、遊星歯車B1はアームDに回動自在であるが、太陽歯車B2はアームDに固着されている。また、遊星歯車B1および太陽歯車B2の中心Oと遊星歯車Cの中心OはアームEで連結され、遊星歯車B1はアームEに固着されているが、太陽歯車B2と遊星歯車CはアームEに回動自在である。
そして、太陽歯車Aの中心Oがソーラースリット9で平行化された蛍光X線4aの入射点になるように第1の分光結晶5AがアームDに固着されている。また、遊星歯車Cの中心Oが第1の分光結晶5Aで分光された蛍光X線4bの入射点になるように第2の分光結晶5BがアームEに固着されている。さらに、両分光結晶5A,5Bで分光された蛍光X線4cが入射するように検出器6が遊星歯車Cに固着されている。図2において、分光角2θ=90°(反射角θ=45°)を実現する位置にある第1の分光結晶5A、第2の分光結晶5Bおよび検出器6を実線で示している。
この状態から、第1の分光結晶5Aが固着されたアームDを右回りに角度αだけ回転させると、遊星歯車B1は同方向(右回り)に角度2αで自転しつつ角度αで公転し、遊星歯車B1に固着されたアームEは一端部Oを中心としてアームDに対し同方向に角度2αで回転する。その結果、アームEの他端部Oに固着された第2の分光結晶5Bが中心Oのまわりに同方向に角度2αで公転して、第1の分光結晶5Aで分光された蛍光X線4bが入射するとともに、蛍光X線4cの反射角がα増加してθになる(図2の左側に二点鎖線で示す)。同時に、遊星歯車Cは太陽歯車B2に対して同方向に角度2αで公転しつつ角度αで自転するので、遊星歯車Cに固着された検出器6は、第2の分光結晶5Bに対して同方向に角度αで回転し、両分光結晶5A,5Bで分光された反射角θの蛍光X線4cが入射する。このようにして、分光角2θ=2θ+2α(反射角θ=θ+α)が実現される。図では、α=28°、分光角2θ=146°で、アームDとアームEが一直線になる場合を例示している。
同様に、アームDを左回りに角度βだけ回転させることにより、90°よりも小さい分光角2θ=2θ−2β(反射角θ=θ−β)が実現される(図2の右側に二点鎖線で示す)。図では、β=27.5°、分光角2θ=35°の場合を例示している。なお、このメカニズムは一例であって、目的とする連動には多重軸や遊星歯車などの組合せによって多種多様に対応できる。
図1に示すように、この第1実施形態のX線分光装置10に加えて、放射光を単色化して1次X線1Aとして試料2に照射するX線源(放射光光源)18を備えたものが、本発明の第2実施形態で、試料2から発生した蛍光X線4のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置である。この第2実施形態の蛍光X線分析装置では、X線源18が照射する1次X線1Aの波長が可変であり、いわゆる選択励起法を採用できるので、元素の化学結合状態または電子構造について、より詳細な情報が得られる。具体的には、X線源18として、第3世代の放射光施設、つまり、専用の加速器にアンジュレータ主体の挿入光源を多数設置可能な施設が好ましい。第3世代の放射光施設は、特定の波長において輝度の高い単色放射光1Aを発生するので、それを照射された試料2から発生する蛍光X線4の強度も高く、複数回の分光による減衰を経てもスペクトル測定に十分な強度の蛍光X線4cを検出器6に入射させることができる。なお、放射光は時間とともに強度が減少していくため、イオンチャンバー11で常に強度をモニターしている。
第2実施形態の蛍光X線分析装置を用いて、Cr化合物であるCrおよびKCrOのCr−Kαスペクトルを測定した結果を図3Aおよび図3Bに、Cr−Kβスペクトルを測定した結果を図4Aおよび図4Bに示す。CrのCrは6配位で、KCrOのCrは4配位であるが、この配位環境の違いが、図3Aと図3Bのスペクトルの違い、図4Aと図4Bのスペクトルの違いに反映していることが見て取れる。従来の蛍光X線分析装置の分解能では、蛍光X線のスペクトルについてこれほど詳細な情報は得られない。なお、これらの図におけるResidueとは、測定されたピーク形状を関数でフィッティングしたときの、測定値と関数値の差(残渣)である。
このように、第1実施形態のX線分光装置10または第2実施形態の蛍光X線分析装置によれば、(+,+)配置の2つの分光結晶5A,5Bを用いて、試料2から発生した蛍光X線4を2回分光するので、蛍光X線4cのスペクトルの分解能が十分で、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができる。
次に、本発明の第3実施形態のX線分光装置および第4実施形態の蛍光X線分析装置について説明する。これらの装置は、前記第1実施形態のX線分光装置および第2実施形態の蛍光X線分析装置とそれぞれ比較すると、光学系および連動手段が異なるのみであるので、その異なる部分について図5の平面図を用いて説明する。第3実施形態のX線分光装置20および第4実施形態の蛍光X線分析装置において、試料2(図1)から発生した蛍光X線4を分光する分光結晶5は、(+,−,−,+)配置の4つの平板分光結晶5C〜5Fであり、連動手段17は、分光結晶5C〜5Fで分光される蛍光X線4gの波長を変えながら、その分光された蛍光X線4gが検出器6に入射するように、分光結晶5C〜5Fを連動させる。なお、ソーラースリットは備えていないが備えてもよい。
ここで、4つの分光結晶5C〜5Fは、2つのチャンネルカット結晶15A,15Bからなり、各チャンネルカット結晶15A,15Bが平行配置の2つの分光結晶5C,5Dまたは5E,5Fを有する。チャンネルカット結晶とは単一の結晶ブロックに溝を切り、その平行な両側の壁(この実施形態でいえば、分光結晶5C,5Dまたは5E,5F)を反射に利用するものである。
連動手段17は、第1〜第4の分光結晶5C〜5Fが同一波長の蛍光X線4d〜4gを逐次的に分光しながらその波長が少しずつ変化し、しかも、4つの分光結晶5C〜5Fで分光された蛍光X線4gが検出器6に入射するように、分光結晶5C〜5Fを連動させる。第1の分光結晶5Cと第2の分光結晶5D、第3の分光結晶5Eと第4の分光結晶5Fは、それぞれチャンネルカット結晶15A,15Bとして一体化されているので、第1のチャンネルカット結晶15Aを、第1の分光結晶5Cへの蛍光X線4の入射点を通る紙面に垂直な軸R1を中心に回転させ、それと同じ角度だけ逆向きに第2のチャンネルカット結晶15Bを、第4の分光結晶5Fへの蛍光X線4fの入射点を通る紙面に垂直な軸R2を中心に回転させれば、第4の分光結晶5Fから検出器6へ向かう蛍光X線4gの光路は不変となり、検出器6は固定したままで、上述した連動が実現される。
第3実施形態のX線分光装置20または第4実施形態の蛍光X線分析装置によれば、(+,−,−,+)配置の4つの分光結晶5C〜5Fを用いて、試料2(図1)から発生した蛍光X線4を4回分光するので、蛍光X線4gのスペクトルの分解能が十分で、したがって、元素の化学結合状態または電子構造を十分詳細に解析することができる。
以上の実施形態では、1次X線は放射光を単色化したものであったが、本発明ではそのように限定されない。例えば、試料に含まれる分析対象元素の濃度が低いためまたは試料の量が少ないために、単色化により強度が減衰した1次X線では試料から発生する蛍光X線の強度も小さく、正確なスペクトルを得ることが困難な場合がある。このような場合には、白色放射光またはアンジュレータ光のような準単色放射光を単色化せずにそのまま1次X線として試料に照射し、より強度の大きい蛍光X線を発生させて正確なスペクトルを得ることができる。
本発明の第1実施形態のX線分光装置および第2実施形態の蛍光X線分析装置を示す斜視図である。 それらの装置の光学系の平面図である。 第2実施形態の蛍光X線分析装置を用いて、CrからのCr−Kαスペクトルを測定した結果を示す図である。 第2実施形態の蛍光X線分析装置を用いて、KCrOからのCr−Kαスペクトルを測定した結果を示す図である。 第2実施形態の蛍光X線分析装置を用いて、CrからのCr−Kβスペクトルを測定した結果を示す図である。 第2実施形態の蛍光X線分析装置を用いて、KCrOからのCr−Kβスペクトルを測定した結果を示す図である。 本発明の第3実施形態のX線分光装置および第4実施形態の蛍光X線分析装置の要部を示す平面図である。
符号の説明
1A 放射光を単色化した1次X線
2 試料
4 試料から発生した蛍光X線
4c,4g 分光結晶で分光された蛍光X線
5 分光結晶
6 検出器
7,17 連動手段
8 X線管
10,20 X線分光装置
15 チャンネルカット結晶
18 X線源

Claims (7)

  1. 放射光を1次X線として試料に照射し、試料から発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置に用いられるX線分光装置であって、
    前記試料から発生した蛍光X線を分光する(+,+)配置の2つの分光結晶と、
    その分光結晶で分光された蛍光X線の強度を測定する検出器と、
    前記分光結晶で分光される蛍光X線の波長を変えながら、その分光された蛍光X線が前記検出器に入射するように、前記分光結晶と検出器を連動させる連動手段とを備えたX線分光装置。
  2. 放射光を1次X線として試料に照射し、試料から発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置に用いられるX線分光装置であって、
    前記試料から発生した蛍光X線を分光する(+,−,−,+)配置の4つの分光結晶と、
    その分光結晶で分光された蛍光X線の強度を測定する検出器と、
    前記分光結晶で分光される蛍光X線の波長を変えながら、その分光された蛍光X線が前記検出器に入射するように、前記分光結晶を連動させる連動手段とを備え、
    前記4つの分光結晶が2つのチャンネルカット結晶からなり、各チャンネルカット結晶が平行配置の2つの分光結晶を有するX線分光装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記1次X線が放射光を単色化したものであるX線分光装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    調整用のX線源としてX線管を備えるX線分光装置。
  5. 放射光を1次X線として試料に照射するX線源と、
    請求項1ないし4のいずれに記載のX線分光装置とを備え、
    試料から発生した蛍光X線のスペクトルを測定して元素の化学結合状態または電子構造を解析する蛍光X線分析装置。
  6. 請求項5において、
    前記1次X線が放射光を単色化したものである蛍光X線分析装置。
  7. 請求項6において、
    前記1次X線の波長が可変である蛍光X線分析装置。
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