JP2011257718A - トナーおよびトナーの製造方法 - Google Patents

トナーおよびトナーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 バイオマスであるロジンの含有量が高く、高湿、低湿などの環境条件においても帯電量が安定で、粉体流動性、定着性、および耐ホットオフセット性に優れたトナーを提供する。
【解決手段】 トナーは、出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂と、前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、着色剤とを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、トナーおよびトナーの製造方法に関する。
潜像を顕像化するトナーは、種々の画像形成プロセスに用いられており、たとえば電子写真方式の画像形成プロセスに用いられる。
電子写真方式の画像形成プロセスを利用する画像形成装置においては、一般的に、潜像担持体である感光体ドラム表面の感光層を均一に帯電させる帯電工程、帯電状態にある感光体ドラム表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム表面の静電潜像に電子写真用トナーを供給して顕像化する現像工程、感光体ドラム表面のトナー像を紙やOHPシートなどの記録媒体に転写する転写工程、トナー像を加熱、加圧などにより記録媒体上に定着させる定着工程、およびトナー像転写後の感光体ドラム表面に残留するトナーなどをクリーニングブレードにより除去して清浄化するクリーニング工程を実行して記録媒体上に所望の画像を形成する。記録媒体へのトナー像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
このような画像形成に使用される電子写真用トナーは、たとえば混練粉砕法、懸濁重合法および乳化重合凝集法などに代表される重合法などによって製造される。このうち混練粉砕法では、結着樹脂および着色剤を主成分とし、必要に応じて離型剤、帯電制御剤などを添加して混合したトナー原料を溶融混練し、冷却して固化させた後、粉砕分級することでトナーを製造する。
従来、トナーに用いられている樹脂材料としては、たとえば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられ、トナーの用途に応じた設計が行われている。特に、加熱ローラ定着用のトナー樹脂は、記録媒体への定着性および耐オフセット性の向上が要求されており、これまで主として高分子量熱可塑性樹脂または部分的に架橋した熱可塑性樹脂が用いられてきた。このような樹脂を用いた場合、トナーを溶融し定着させる温度(定着温度)を高く設定する必要があり、省エネルギ−化の観点からは、好ましいとはいえない。
近年、地球環境保全の観点から、様々な技術分野において多くの取り組みがなされている。現在、多くの製品の材料が石油から製造されているが、これらの材料の製造時や焼却時には、エネルギーが必要であり、また、二酸化炭素が発生する。このようなエネルギーや二酸化炭素などを削減する取り組みは、地球温暖化対策として非常に重要である。
地球温暖化対策としての二酸化炭素削減の新たな取り組みとして、バイオマスとよばれる植物由来の資源の利用が大いに注目されている。バイオマスを燃焼させる際に発生する二酸化炭素は、もともと植物が光合成により取り込んだ大気中の二酸化炭素であるため、大気中の二酸化炭素の収支はゼロである。このように、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない性質はカーボンニュートラルと呼ばれており、カーボンニュートラルであるバイオマスの利用は、大気中の二酸化炭素量を増加させないと考えられている。このようなバイオマスから製造されるバイオマス材料は、バイオマスポリマー、バイオマスプラスチック、非石油系高分子材料などの名称でよばれており、このようなバイオマス材料は、バイオマスモノマーとよばれるモノマーを原料とする。
電子写真の分野においても、環境安全性に優れ、二酸化炭素の増加の抑制に有効な資源であるバイオマスを利用する取り組みがなされている。
たとえば、特許文献1には、酸価が2以下のロジンエステルを含有する着色粒子と外添剤とからなる静電荷像現像用トナーが開示されている。
また、特許文献2には、ロジンを必須成分として得られる軟化点80〜120℃のポリエステル樹脂と、多価エポキシ化合物を必須成分として得られる軟化点160℃以上のポリエステル樹脂とを含有し、低温定着性、耐ホットオフセット性、現像耐久性を兼ね備える電子写真トナーを得ることができる、電子写真トナー用樹脂組成物が開示されている。
特開2003−322997号公報 特開2008−122509号公報
しかしながら、特許文献1に開示されているトナーでは、定着温度を135℃程度に設定する必要があり、低温定着性が十分とはいえない。また、特許文献2に開示の方法で製造されるトナーでは、バイオマスの利用率を高めるために、樹脂組成物中のロジン含有量を多くすると、トナーが脆弱になる。このようなトナーを現像剤として使用した場合、現像槽内での攪拌などによるストレスにより、トナーが破砕されて、微粉が発生し、帯電量が不安定になることや、トナーの弾性が低下してホットオフセットが発生しやすくなることが問題となる。
これらのトナー以外にも、ロジンを樹脂原料として利用した従来のトナーでは、ロジンが従来公知の樹脂と混ざりにくいことを考慮していないため、樹脂中のロジン含有量が低く、ロジンを大量に使用した場合は、分散不良に伴う帯電不良などにより画像に不具合を生じる。さらに、ロジンは粘着性を有するため、直接トナー用途に用いた場合、トナーの保存安定性および流動性が低下することが問題となる。
本発明の目的は、バイオマスであるロジンの含有量が高く、高湿、低湿などの環境条件においても帯電量が安定で、粉体流動性、定着性、および耐ホットオフセット性に優れたトナーを提供することである。
本発明は、出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂と、
前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、
着色剤とを含むことを特徴とするトナーである。
また本発明は、前記分散助剤は、
ポリオレフィンにポリアクリルをグラフト重合させた樹脂であり、
前記ポリエステル樹脂A100重量部に対して3重量部以上15重量部以下添加されることを特徴とする。
また本発明は、120℃におけるトナーの粘弾性の周波数走査測定結果から導き出される、粘度η(Pa・s)と周波数X(Hz)との相関性を示す下記累積近似式(1)のα値が−0.7以上−0.3以下であり、かつβ値が4000以上5500以下であることを特徴とする。
η=β×Xα …(1)
また本発明は、出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを原料として縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂と、前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、着色剤とを混合して混合物を作製する混合工程と、
前記混合物を溶融混練して、混練物を作製する溶融混練工程と、
前記混練物を冷却固化し、粉砕して粉砕物を作製する冷却粉砕工程と、
前記粉砕物を分級する分級工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
本発明によれば、出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを原料として縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として実質的にロジンを含まない芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂とを用いることで、バイオマスであるロジンの含有量が高いトナーが得られる。また、前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、着色剤を用いることで、前記ポリエステル樹脂Aと前記ポリエステル樹脂Bとが均一に分散され、高湿、低湿環境条件においても帯電量が安定で、粉体流動性、定着性、および耐ホットオフセット性に優れたトナーとすることができる。
また本発明によれば、前記分散助剤は、ポリオレフィンにポリアクリルをグラフト重合させた樹脂であり、前記ポリエステル樹脂A100重量部に対して3重量部以上15重量部以下添加されるので、均一で、帯電安定性および粉体流動性に優れたトナーとすることができる。
また本発明によれば、120℃におけるトナーの粘弾性の周波数走査測定結果から導き出される、粘度η(Pa・s)と周波数X(Hz)との相関性を示す上記累積近似式(1)のα値が−0.7以上−0.3以下であり、かつβ値が4000以上5500以下であるので、均一で、帯電安定性に優れたトナーすることができ、良好な画像を得ることができる。
また本発明によれば、出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として実質的にロジンを含まない芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂と、前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、着色剤とを混合して混合物を作製する混合工程と、前記混合物を溶融混練して、混練物を作製する溶融混練工程と、前記混練物を冷却固化し、粉砕して粉砕物を作製する冷却粉砕工程と、前記粉砕物を分級する分級工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法である。これにより、帯電安定性、粉体流動性、および定着性に優れたトナーを得ることができる。
本発明のトナーの製造方法の手順の一例を示す工程図である。
1、トナーの製造方法
図1は、本発明のトナーの製造方法の手順の一例を示す工程図である。本発明のトナーは、結着樹脂および着色剤を主成分とし、本発明に係るトナーの製造方法によって製造される。本発明に係るトナーの製造方法は、乾式法による粒子形成方法であり、混合工程S1と、溶融混練工程S2と、冷却粉砕工程S3と、分級工程S4と、外添工程S5とを含む。
(1)混合工程S1
混合工程S1では、結着樹脂、後述する分散助剤、および着色剤を、混合機によって乾式混合して混合物を作製する。この際、必要に応じて添加剤を加える。添加剤としては、磁性粉、離型剤、電荷制御剤などが挙げられる。
本発明のトナーは、結着樹脂として、2種類のポリエステル樹脂A、Bを含有する。ポリエステル樹脂は、透明性に優れ、トナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の原料として好適である。ポリエステルは、多塩基酸などの酸成分と多価アルコールとの重縮合によって得られる。
本発明のポリエステル樹脂A、Bは、公知の縮重合反応方法によって製造される。反応方法としては、エステル交換反応または直接エステル化反応が適用できる。また、加圧により反応温度を上昇させること、減圧または常圧下で不活性ガスを流すこと、などによって縮重合を促進することもできる。上記反応においては、アンチモン、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、およびマンガンのうち、少なくとも1種の金属化合物等、公知慣用の反応触媒を用い、反応を促進してもよい。これら反応触媒の添加量は、酸成分および多価アルコールの総量100重量部に対して、0.01重量部以上1.0重量部以下が好ましい。
ポリエステル樹脂Aの作製においては、酸成分として、芳香族ジカルボン酸およびロジンを用い、多価アルコールとして、3価以上のアルコールを用いる。芳香族ジカルボン酸と3価以上のアルコールとの反応によって、適度な分岐を有するポリオール構造が形成される。ポリエステル樹脂が適度な分岐構造を含むことにより、樹脂の軟化温度を極端に大きくすることなくトナーの低温定着性を維持するとともに、樹脂の分子量分布を広くすることができ、高分子量側の分布が広い樹脂を得ることができるので、トナーの耐オフセット性が良好になる。
ポリエステル樹脂Aに用いられる芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5−tert−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸等が挙げられる。また、ポリエステル樹脂Aの酸成分として、上記の芳香族ジカルボン酸の代わりに、芳香族ジカルボン酸無水物、または低級アルキルエステル等のような芳香族ジカルボン酸誘導体を用いてもよい。上記の芳香族ジカルボン酸化合物のうち、テレフタル酸、イソフタル酸、および、それらの低級アルキルエステルの少なくとも1種を用いることが好ましい。テレフタル酸およびイソフタル酸は、芳香環骨格による電子の共鳴安定化効果が高く、帯電安定性に優れ、適度な強度を有する樹脂を得ることができる。テレフタル酸およびイソフタル酸の低級アルキルエステルとしては、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジブチル等が挙げられる。このうち、コストおよび取り扱いの観点から、テレフタル酸ジメチルまたはイソフタル酸ジメチルを用いることが好ましい。
これらの芳香族ジカルボン酸化合物は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
ポリエステル樹脂Aに用いられる3価以上のアルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、およびペンタエリスリトール等が挙げられ、これらの多価アルコールのうち、少なくとも1種を使用できる。これらのうち、グリセリンは、植物由来の原料から製造する手法が工業的に確立されており、入手が容易であり、バイオマスの利用を促進する効果が得られるのでより好ましい。
ポリエステル樹脂Aにおいて、芳香族ジカルボン酸化合物に対する3価以上のアルコールのモル比は、1.05以上1.65以下であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物に対する3価以上のアルコールのモル比が1.05未満の場合、樹脂の高分子量側の分子量分布が広くなり、Tmが高くなることによってトナーの低温定着性が低下し、また、分子量分布の広がりを制御できなくなる結果、トナーのゲル化が起こる。モル比が1.65を超える場合、ポリエステル樹脂が含む分岐構造が少ないので、軟化温度およびガラス転移温度が低下し、その結果、トナーの保存安定性が低下する。
ポリエステル樹脂Aに用いられるロジンとしては、不均化ロジンが好ましい。不均化ロジンは、松類から得られる天然樹脂であるロジンを、不均斉化反応により安定化したものである。ロジンは、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸等の樹脂酸およびこれらの混合物を主成分とし、パルプの製造工程における副産物である粗トール油から得られるトールロジン、生松ヤニから得られるガムロジン、松の切株から得られるウッドロジン等に分類される。これらのロジンは、従来知られた製法によって得られる。
不均化ロジンは、ロジンを貴金属触媒またはハロゲン触媒の存在下で高温加熱することによって得られ、分子内の不安定な共役二重結合が消失した多縮合環状モノカルボン酸であり、共役二重結合を有するロジンに比べて材料が変質しにくいといった特徴がある。不均化ロジンの主成分は、デヒドロアビエチン酸およびジヒドロアビエチン酸の混合物である。不均化ロジンは、ヒドロフェナンスレン環の嵩高で剛直な骨格を含むので、不均化ロジンをポリエステルの構成成分として導入することにより、トナー製造時の粉砕性が向上し、ガラス転移温度がほとんど低下せず、保存安定性の良好なトナーを得ることができる。
上記のように、ポリエステル樹脂Aは、原料として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを含む。本発明は、環境安全性に優れたトナーを得るために、ポリエステル樹脂Aの前提となる構成として、出発物質中のロジンの含有量を60重量%以上としている。
ポリエステル樹脂Aは、酸成分として、上記の芳香族ジカルボン酸化合物およびロジン以外に、脂肪族ポリカルボン酸または3価以上の芳香族ポリカルボン酸をさらに用いることができる。
脂肪族ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類、炭素数16〜18のアルキル基で置換されたコハク酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類、ダイマー酸等が挙げられる。
ポリエステル樹脂A中の脂肪族ポリカルボン酸の含有量は、芳香族ジカルボン酸化合物100モルに対し、0.5モル以上15モル以下であることが好ましく、1モル以上13モル以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂A中の脂肪族ポリカルボン酸の含有量が上記の範囲であることで、トナーの低温定着性が向上する。
3価以上の芳香族ポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられる。これらの芳香族ポリカルボン酸は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用してもよい。これらの芳香族ポリカルボン酸のうち、反応性の観点から、無水トリメリット酸を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂A中の3価以上の芳香族ポリカルボン酸の含有量は、芳香族ジカルボン酸化合物100モルに対し、0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、0.5モル以上3モル以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂A中の3価以上の芳香族ポリカルボン酸の含有量が0.1モル未満であると、ポリエステル樹脂中に含まれる分岐構造が十分でなく、高分子量側の分子量分布の広い樹脂を得ることができないため、トナーの耐オフセット性が低下する。また、5モルを超えると、樹脂の軟化温度が高くなるため、トナーの低温定着性が低下する。
またポリエステル樹脂Aは、多価アルコールとして、3価以上のアルコール以外に、脂肪族ジオールおよびエーテル化ジフェノールの少なくとも1種をさらに用いることができる。
脂肪族ジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、2−メチルー1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチルー2−メチルプロパンー1,3−ジオール、2−ブチルー2−エチルプロパンー1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジメチルー1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルー1,3−ペンタンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−ヒドロキシー2,2−ジメチルプロピルー3−ヒドロキシー2,2−ジメチルプロパノエート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらの脂肪族ジオールのうち、酸との反応性および樹脂のガラス転移温度の観点から、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、またはネオペンチルグリコールを用いることが好ましい。これら脂肪族ジオールは1種を単独で使用でき、または2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂A中の脂肪族ジオールの含有量は、一般的に、芳香族ジカルボン酸化合物100モルに対し、5モル以上20モル以下であることが好ましい。
エーテル化ジフェノールは、ビスフェノールAとアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるジオールである。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドが挙げられ、ビスフェノールA1モルに対して、平均付加モル数が2モル以上16モル以下となるよう付加されることが好ましい。
ポリエステル樹脂A中のエーテル化ジフェノールの含有量は、一般的に、芳香族ジカルボン酸化合物100モルに対し、5モル以上35モル以下であることが好ましい。
本発明のトナーにおいて、ポリエステル樹脂Aの含有量は、トナー100重量部に対して20重量部以上60重量部以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂Aの含有量が20重量部未満であると、トナーの粘度が高くなり、低温定着性が損なわれる。また、ポリエステル樹脂Aの含有量が60重量部を超えると、ロジンの含有量が高くなるため、トナーの機械的強度の低下や粉体流動性の低下が生じる。
ポリエステル樹脂Bは、実質的にロジンを含まないポリエステル樹脂であり、トナーに高温オフセット耐性を付与するため、高分子量かつ高粘度を有することが好ましい。
ポリエステル樹脂Bの酸成分としては、ポリエステル樹脂Aと同様の芳香族ジカルボン酸化合物を用いることができる。ポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bが含む芳香族ジカルボン酸化合物は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。またポリエステル樹脂Bは、酸成分として、上記の芳香族ジカルボン酸化合物以外に、ポリエステル樹脂Aと同様の脂肪族ポリカルボン酸または3価以上の芳香族ポリカルボン酸をさらに用いることができる。これらの酸成分は、ポリエステル樹脂AおよびBで同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
また、ポリエステル樹脂Bの酸成分として、飽和多塩基酸および不飽和多塩基酸等の多塩基酸、それらの酸無水物、およびそれらの低級アルキルエステルを用いることができる。
飽和多塩基酸、飽和多塩基酸無水物、およびそれらの低級アルキルエステルとしては、たとえば、アジピン酸、セバシン酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、無水コハク酸、炭素数8〜18個のアルキルコハク酸、アルキル無水コハク酸、アルケニルコハク酸、アルケニル無水コハク酸等の二塩基酸類;トリメリット酸、無水トリメリット酸、シアヌール酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
不飽和多塩基酸としては、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。
飽和多塩基酸および不飽和多塩基酸等の多塩基酸、それらの酸無水物、およびそれらの低級アルキルエステルは、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用してもよい。また、必要に応じ、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸を用いてもよい。
ポリエステル樹脂Bの多価アルコールとしては、ポリエステル樹脂Aと同様に、3価以上のアルコール、脂肪族ジオールおよびエーテル化ジフェノールを用いることができ、ポリエステル樹脂Aと同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。また、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類を用いてもよい。多価アルコールは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。さらに、必要に応じてステアリルアルコール等のモノアルコール類を、本発明の効果を損なわない範囲内で用いてもよい。
本発明に用いられるポリエステル樹脂A、Bのガラス転移温度は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、得られるトナーの保存安定性および低温定着性などを考慮すると、45℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂A、Bのガラス転移温度が45℃未満であると、保存安定性が不十分になるため画像形成装置内部でトナーが熱凝集しやすくなり、現像不良が発生する。またホットオフセットが発生し始める温度(以後、「ホットオフセット開始温度」と記す)が低下する。「ホットオフセット」とは、定着部材によりトナーを加熱および加圧して記録媒体に定着させる際に、加熱されたトナー粒子の凝集力が、トナーと定着部材との接着力を下回ることによってトナー層が分断され、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。またポリエステル樹脂A、Bのガラス転移温度が80℃を超えると、トナーの低温定着性が低下し、定着不良が発生する。
本発明のトナーの結着樹脂には、本発明の目的を達成することができる範囲で、ポリスチレン系重合体、スチレン−アクリル系樹脂等のポリスチレン系共重合体、上記ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂等、従来トナー用結着樹脂として使用されている樹脂が上記ポリエステル樹脂とともに用いられてもよい。
本発明のトナーの製造方法では、ポリエステル樹脂Bにポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤を添加する。前記のように、ポリエステル樹脂Aは、嵩高い骨格構造を有し、それに対し、ポリエステル樹脂Bは直鎖構造を有するため、これらの樹脂を均一に混合することは困難である。分散助剤を添加することによって、これら2種類の樹脂が均一に混合された混合物を作製することができる。
分散助剤としては、従来公知の樹脂を使用できるが、グラフト構造やブロック構造を有する樹脂であることが好ましく、側鎖の分岐状態、およびより細かな分散を行えるという観点から、グラフト構造を有するものがより好ましい。
グラフト構造を有する樹脂としては、ポリオレフィン主鎖にビニル系ポリマーを側鎖としてグラフトしたもの、ポリカーボネイト主鎖にポリスチレンを側鎖としてグラフトしたもの等のグラフトコポリマーが挙げられる。グラフトコポリマーにおいて、主鎖に対する側鎖の長さの比は、側鎖/主鎖=0.2〜0.8であることが好ましい。グラフトコポリマーにおける、主鎖に対する側鎖の長さの比が上記の範囲であることで、ポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂Bに分散させる効果が好適に得られる。
分散助剤の添加量は、少ないほど好ましいが、ポリエステル樹脂A100重量部に対して3重量部以上15重量部以下であることが好ましい。分散助剤の添加量が、上記の範囲であることで、トナーの帯電安定性、流動性等を確保することができる。分散助剤の添加量がポリエステル樹脂A100重量部に対して3重量部未満であると、分散助剤を緻密かつ均一に分散させるために、混練などによるストレスを大きくする必要があり、その結果、樹脂粒子が破断され、熱特性などの性能が低下する。また、分散助剤の添加量が15重量部を超えると、ポリエステル樹脂AおよびBの分散性が過剰となり、その他の添加物、たとえばワックス、帯電調整剤などの分散径が細かくなる結果、トナーとしての性能が劣化する。
本発明のトナーに含まれる着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。染料および顔料のうち、顔料を用いることが好ましい。顔料は染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。
黄色の着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、および、C.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、および、C.I.ダイレクトブルー86、KET.BLUE111などが挙げられる。
黒色の着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
上記の着色剤以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用できる。着色剤は1種を単独で使用でき、また2種以上を併用することができる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
着色剤はポリエステル樹脂中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して使用されることが好ましい。本発明において、マスターバッチは、たとえば、ポリエステル樹脂Aおよび着色剤とを混合機で乾式混合し、得られる粉体混合物を混練機で混練することによって製造できる。混練温度は、ポリエステル樹脂Aの軟化温度によるが、通常は50〜150℃程度、好ましくは50〜120℃程度である。マスターバッチには、後述する電荷制御剤が含まれてもよい。
マスターバッチ材料を乾式混合する混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。溶融混練は、複数の混練機を用いて行っても構わない。
得られたマスターバッチは、たとえば、粒子径2mm〜3mm程度に粉砕されて用いられる。
トナー中の着色剤濃度は、カーボンブラックなどの黒色の着色剤の場合、5重量%以上12重量%以下が好ましく、6重量%以上8重量%以下がより好ましい。黒色以外の着色剤濃度は、3重量%以上8重量%以下が好ましく、4重量%以上6重量%以下がより好ましい。マスターバッチを用いる場合には、トナー中の着色剤濃度が上記範囲内になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤濃度が上記範囲内であることにより、着色剤の添加によるフィラー効果を抑え、かつ、高い着色力を有するトナーを得ることができ、また、充分な画像濃度を有し、発色性が高く、画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
本発明のトナーに含まれる磁性粉としては、マグネタイト、γ−ヘマタイト、および各種フェライトなどが挙げられる。
本発明のトナーに含まれる離型剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ワックスなどが挙げられる。ワックスとしては、パラフィンワックス.カルナバワックス、およびライスワックスなどの天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、およびフィッシャートロプッシュワックスなどの合成ワックス、モンタンワックスなどの石炭系ワックスなどの石油系ワックス、アルコール系ワックス、ならびにエステル系ワックスなどが挙げられる。
離型剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。離型剤の添加量は特に制限されず、結着樹脂、着色剤などの他の成分の種類および含有量、作製しようとするトナーに要求される特性などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるが、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して、3重量部以上10重量部以下である。離型剤の添加量が3重量部未満であると、低温定着性および耐ホットオフセット性が充分に向上しない。離型剤の添加量が10重量部を超えると、混練物中における離型剤の分散性が低下し、一定の性能を有するトナーを安定して得ることができない。またトナーが感光体などの像担持体の表面に皮膜(フィルム)状に融着するフィルミングと呼ばれる現象が発生する。
離型剤の融点は、50℃以上180℃以下であることが好ましい。融点が50℃未満であると、現像装置内において離型剤が溶融し、トナー粒子同士が凝集したり、感光体表面へのフィルミングなどが発生する。融点が180℃を超えると、トナーを記録媒体に定着する際に離型剤が充分に溶出することができず、耐ホットオフセット性が充分に向上しない。
本発明のトナーに含まれる電荷制御剤としては、この分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の電荷制御剤を使用できる。
正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸ならびにその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸が挙げられる。電荷制御剤は1種を単独で使用でき、または必要に応じて2種以上を併用できる。電荷制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、トナー母粒子100重量部に対して0.01重量部以上5重量部以下である。
混合工程で用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、マスターバッチの作製に用いられる前記の混合機と同様のものを使用できる。
(2)溶融混練工程S2
溶融混練工程S2では、前記混合工程S1で作製された混合物を、混練機によって溶融混練して、結着樹脂中に着色剤および必要に応じて添加された添加剤が分散した溶融混練物を作製する。
溶融混練工程S2で用いられる混練機としては、公知のものを使用でき、マスターバッチの作製で用いられる上記の混練機と同様のものを使用できる。複数の混練機を用いて溶融混練を行ってもよい。
溶融混練の温度は、使用する混練機によるが、80℃以上200℃以下であることが好ましい。このような範囲の温度下で溶融混練を行うことで、結着樹脂中に、着色剤および必要に応じて添加された添加剤を均一に分散させることができる。
(3)冷却粉砕工程S3
冷却粉砕工程S3では、前記溶融混練工程S2で得られた溶融混練物を冷却固化し、粉砕して、粉砕物を得る。
冷却固化された溶融混練物は、ハンマーミルまたはカッティングミルなどによって、体積平均粒子径100μm以上5mm以下程度の粗粉砕物に粗粉砕され、得られた粗粉砕物は、たとえば、体積平均粒子径15μm以下にまで、さらに微粉砕される。粗粉砕物の微粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。
(4)分級工程S4
分級工程S4では、前記冷却粉砕工程S3で得られた粉砕物を分級機によって分級し、過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去し、未外添トナーを得る。過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子は、回収して他のトナーの製造に再利用することができる。
分級には、遠心力および風力による分級により過粉砕トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用でき、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
分級後に得られる未外添トナーの体積平均粒子径は、3μm以上15μm以下であることが好ましい。高画質画像を得るためには、未外添トナーの体積平均粒子径が3μm以上9μm以下であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがより好ましい。未外添トナーの体積平均粒子径が3μm未満であると、トナーの粒子径が小さいため、高帯電化および低流動化が起こる。トナーの高帯電化および低流動化によって、トナーが感光体に安定して供給されず、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生する。未外添トナーの体積平均粒子径が15μmを超えると、トナーの粒子径が大きいため、高精細な画像を得られない。また、粒子径が大きくなることでトナーの比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。その結果、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生する。
(5)外添工程S5
外添工程S5では、前記分級工程S4で得られた未外添トナーと外添剤とを混合してトナーを得る。外添剤の添加によって、トナーの流動性および感光体表面における残留トナーのクリーニング性が向上し、感光体へのフィルミングが防止できる。外添剤が外添されていない未外添トナーを、トナーとして用いることもできる。
外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、および酸化亜鉛などの無機酸化物、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、およびスチレンなどの化合物、またはこれら化合物の共重合体樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、およびステアリン酸などの高級脂肪酸、またはこれらの高級脂肪酸の金属塩、カーボンブラック、フッ化黒鉛、炭化珪素、窒化ホウ素などが挙げられる。
外添剤は、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。また、外添剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
外添剤の1次粒子の個数平均粒子径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。外添剤の1次粒子の個数平均粒子径がこのような範囲であることによって、トナーの流動性がより向上する。
外添剤のBET比表面積は、20m/g以上200m/g以下であることが好ましい。外添剤のBET比表面積がこのような範囲であることによって、トナーに適度な流動性および帯電性が付与できる。
2、トナー
本発明のトナーは、上記の実施形態であるトナーの製造方法で製造される。上記のトナーの製造方法によって得られるトナーは、120℃におけるトナーの粘弾性の周波数走査測定結果から導き出される、粘度η(Pa・s)と周波数X(Hz)との相関性を示す下記累積近似式(1)のα値が−0.7以上−0.3以下であり、かつβ値が4000以上5500以下であることが好ましい。
η=β×Xα …(1)
従来のトナーにおいては、トナー中の各成分の分散状態を確認する方法として、トナーをミクロトームにより切断し、その断面を染色した後、電子顕微鏡によりワックスや着色剤の分散状態を観察することが通常行われている。しかしながらこの方法を、嵩高い骨格構造を有するポリエステル樹脂Aおよび直鎖構造を有するポリエステル樹脂Bを併用したトナーに用いた場合、ポリエステル樹脂Aとポリエステル樹脂Bとが同様に染色されてしまうため、これらの2種類の樹脂の分散状態を確認することができない。このことより、本発明においては、トナー中のポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bの分散状態の指標として、上記累積近似式(1)のα値およびβ値を用いた。
β値が4000未満の場合、ポリエステル樹脂AおよびBの混合状態が不均一であり、その結果、トナーの帯電安定性が低下し、画像劣化を生じる。また、β値が5500を超える場合、ポリエステル樹脂AおよびBの混合状態は均一であるが、ワックスや着色剤の分散性が過剰となり、これらの成分の分散粒子径が細かくなる結果、トナーの帯電量が最適な範囲に収束せず、画像劣化や高温オフセットが発生し、定着温度域が狭まる。
上記のトナーの製造方法によって得られるトナーは、機械的強度が十分で、帯電安定性、粉体流動性、および定着性に優れる。
3、現像剤
本発明に係るトナーは、トナーのみからなる一成分現像剤として用いることができ、また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることもできる。
キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。
被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としては特に制限されないが、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれも、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの粒子径は特に制限されないが、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。キャリアの粒子径が50μm以下であることにより、トナーとキャリアの接触機会が増え、個々のトナー粒子を適正に帯電制御でき、非画像部カブリが発生せず、かつ高画質な画像を形成することができる。
さらにキャリアの体積抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの体積抵抗率は、キャリア粒子を断面積0.50cm2の容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値から得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアが帯電し、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、より好ましくは15〜40emu/gである。一般的な現像ローラの磁束密度条件下では、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となる。また磁化強さが60emu/gを超えると、非接触現像ではキャリアの穂立ちが高くなり過ぎ、像担持体とトナーの非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れやすくなる。
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できる。また、トナーによるキャリアの被覆率は、40%以上80%以下であることが好ましい。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
実施例および比較例における、ポリエステル樹脂のガラス転移温度、軟化温度、重量平均分子量、数平均分子量、およびTHF不溶解分、ならびにポリエステル樹脂および不均化ロジンの酸価、ならびに樹脂の加熱残分および水酸基価、ならびに離型剤の融点、トナーの体積平均粒子径および変動係数、ならびにトナーの粘弾性の周波数走査測定は、以下のようにして測定した。
〔ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、パーキンエルマージャパン株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料0.01gを昇温速度毎分10℃(10℃/分)で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、吸熱ピークの低温側の曲線に対して勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
〔ポリエステル樹脂の軟化温度(Tm)〕
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−500C、株式会社島津製作所製)を用い試料1gを昇温速度毎分6℃で加熱し、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えてダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
〔ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)〕
試料を0.25重量%となるようテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、試料200μLをGPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)に注入し、温度40℃において分子量分布曲線を求めた。得られた分子量分布曲線から、重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを求め、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である分子量分布指数(Mw/Mn;以後、単に「Mw/Mn」とも表記する)を求めた。なお、分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
〔ポリエステル樹脂およびロジンの酸価〕
中和滴定法によって測定した。テトラヒドロフラン(THF)50mLに試料5gを溶解し、指示薬としてフェノールフタレインのエタノール溶液を数滴加えた後、0.1モル/Lの水酸化カリウム(KOH)水溶液で滴定を行なった。試料溶液の色が無色から紫色に変化した点を終点とし、終点に達するまでに要した水酸化カリウム水溶液の量と滴定に供した試料の重量とから、酸価(mgKOH/g)を算出した。
〔ポリエステル樹脂のTHF不溶分〕
試料1gを円筒濾紙に投入し、ソックスレー抽出器にかけた。テトラヒドロフラン(THF)100mLを抽出溶媒として用い、6時間加熱還流して、試料からTHF可溶画分を抽出した。THF可溶画分を含む抽出液から溶媒を除去した後、THF可溶画分を100℃で24時間乾燥し、得られたTHF可溶画分を秤量し、重量W(g)を求めた。THF可溶画分重量W(g)と、測定に用いた試料の重量(1g)とから、下記式に基づいて、試料中のTHF不溶画分の割合P(重量%)を算出した。以下、この割合PをTHF不溶解分と称する。
P(重量%)={1(g)−W(g)}/1(g)×100
〔樹脂の水酸基価〕
逆滴定法によって測定した。アセチル化試薬5mLに、試料2gを加えて溶解し、得られた試料溶液を、液温を100℃に保って1時間静置した。アセチル化試薬は、ピリジン500mL、フタル酸70gおよびイミダゾール10gを混合して調製した。次いで、試料溶液に水1mL、THF70mLおよびフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加え、0.4モル/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で滴定を行なった。試料溶液の色が無色から紫色に変化した点を終点とし、終点に達するまでに要した水酸化ナトリウム水溶液の量と滴定に供した試料の重量とから、水酸基価(KOHmg/g)を算出した。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、パーキンエルマージャパン株式会社製)を用い、試料0.01gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで加熱し、次いで200℃から20℃に急冷する操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定したDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度を離型剤の融点とした。
〔トナーの体積平均粒子径および変動係数〕
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学株式会社製)1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)を用い周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料とした。
この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下で測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径を求めた。またトナーの変動係数を、体積平均粒子径およびその標準偏差に基づいて、下記式より算出した。
変動係数CV(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒子径)×100
〔トナーの粘弾性の周波数走査測定〕
粘弾性測定装置DAR−50レオロジカ インスツルメンツ製を用い、サンプルディスク厚1mm、温度120℃、周波数(X)0.1Hz〜35.0Hzでの周波数走査による粘度測定を行った。得られた結果を累積近似曲線で表し、下記近似式(1)よりα値およびβ値を求めた。
η=β×Xα …(1)
(実施例1)
〔ポリエステル樹脂A1の作製〕
撹拌装置、加熱装置、温度計、冷却管、分留装置、および窒素導入管を備えた反応容器中に、酸成分として、テレフタル酸305g、イソフタル酸55g、および不均化ロジン(酸価157.2mgKOH/g)1400g、および無水トリメリット酸30g、アルコール成分として、グリセリン300g、および1,3−プロパンジオール150g、反応触媒としてテトラーn−ブチルチタネート1.79g(酸成分およびアルコール成分の総量100重量部に対し、0.080重量部相当)を投入した。これらの原料を、窒素雰囲気下で撹拌し、生成する水を留去しながら、250℃で10時間重縮合反応させ、フローテスターにより所定の軟化温度に達したことを確認して、反応を終了し、ポリエステル樹脂A1(ガラス転移温度60℃、軟化温度112℃、重量平均分子量2800、Mw/Mn=2.3、酸価24mgKOH/g、THF不溶分0%)を得た。
〔ポリエステル樹脂B1の作製〕
撹拌装置、加熱装置、温度計、冷却管、分留装置、および窒素導入管を備えた反応容器中に、酸成分として、テレフタル酸350g、イソフタル酸400g、および無水トリメリット酸50g、アルコール成分として、グリセリン125g、ビスフェノールAのPO2モル付加物350g、およびビスフェノールAのPO3モル付加物450g、反応触媒として、テトラーn−ブチルチタネート1.38gを投入した。これらの原料を、窒素雰囲気下で撹拌し、生成する水を留去しながら、220℃で10時間重縮合反応させ、次いで、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、フローテスターにより所定の軟化温度に達したことを確認して、反応を終了し、ポリエステル樹脂B1(ガラス転移温度61℃、軟化温度147℃、重量平均分子量29500、Mw/Mn=10.8、酸価22mmHg、THF不溶分40%)を得た。
〔分散助剤の作製〕
分散助剤として、ポリプロピレンにポリアクリルをグラフト重合させた樹脂(PGA)を作製した。撹拌機、冷却機、および温度計を備えたフラスコ中に、トルエン694重量部、塩素化ポリプロピレン(商品名:ハードレンBS−40、塩素含有率40重量%、加熱残分50重量%、東洋化成工業株式会社製)600重量部を投入し、撹拌しながら100℃に加温し均一に混合する。この混合物に、イソボルニルアクリレート300重量部、メチルメタクリレート104重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート148重量部、ブチルアクリレート45重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート103重量部、およびベンゾイルペルオキシド5重量部の混合液を、2時間かけて滴下し、さらに1時間100℃で撹拌を続け、その後80℃に冷却してアゾビスイソブチロニトリル1重量部を加えて5時間撹拌を続け、ポリアクリルをグラフト重合させたポリプロピレン樹脂PGA1(水酸基価355KOHmg/g)を得た。
<混合工程S1>
ポリエステル樹脂A1中にカーボンブラック(商品名:MA−77、三菱化学株式会社製)11.5重量%と電荷制御剤(商品名:LR−147、日本カーリット株式会社製)3.0重量%とを予備混練分散させたマスターバッチを作製した。
マスターバッチ 43.5重量部
ポリエステル樹脂B1 51.8重量部
PGA1 2.1重量部
離型剤(ポリエチレンワックス、商品名:Licowax PE−130 Powder、クラリアント社製、融点127℃) 2.6重量部
ここで、ポリエステル樹脂A1およびB1の添加比率は、ポリエステル樹脂A1およびB1の総量を100%とした場合、ポリエステル樹脂A1が41.8%、ポリエステル樹脂B1が58.2%である。
上記の原料をヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて10分間混合し、混合物50kgを得た。
<溶融混練工程S2>
前記混合工程S1で得た混合物を、混練機(商品名:ニ軸混練機PCM−60、株式会社池貝製)にて、溶融混練し(シリンダ設定温度80℃〜120℃、回転数250rpm、供給量5kg/h)、溶融混練物を得た。
<冷却粉砕工程S3>
前記溶融混練工程S2で得た溶融混練物を、室温まで冷却して固化した後、カッターミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した。次いで、得られた粗粉砕物を、カウンタージェットミル(商品名:AFG、ホソカワミクロン株式会社製)で微粉砕した。
<分級工程S4>
前記冷却粉砕工程S3で得た粉砕物を、ロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)で分級して、未外添トナーを得た。
<外添工程S5>
前記分級工程S4で得た未外添トナー100重量部に対して、疎水性シリカ微粉子A(シランカップリング剤およびジメチルシリコーンオイル表面処理、BET比表面積140m/g)1.2重量部、疎水性シリカ微粉子B(シランカップリング剤表面処理、BET比表面積30m/g)0.8重量部、および酸化チタン(BET比表面積130m/g)0.5重量部を添加し、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合し、実施例1のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値25%、α値−0.3、β値4850)を得た。
(実施例2)
〔ポリエステル樹脂A2の作製〕
酸成分として、テレフタル酸および無水トリメリット酸を用いず、イソフタル酸335g、および不均化ロジン酸価157.2mgKOH/g1530gを用い、アルコール成分として、グリセリン280gのみを用いたこと以外は、実施例1のポリエステル樹脂A1の作製と同様にしてポリエステル樹脂A2(ガラス転移温度55℃、軟化温度111℃、重量平均分子量2520、Mw/Mn=1.9、酸価11mgKOH/g、THF不溶分0%)を得た。
混合工程S1において、ポリエステル樹脂A1の代わりにポリエステル樹脂A2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値25%、α値−0.3、β値4690)を得た。
(実施例3)
〔ポリエステル樹脂A3の作製〕
酸成分として、無水トリメリット酸を用いず、テレフタル酸230g、イソフタル酸230g、および不均化ロジン酸価157.2mgKOH/g1350gを用い、アルコール成分として、グリセリン330g、および1,3−プロパンジオール30gを用いたこと以外は、実施例1のポリエステル樹脂A1の作製と同様にしてポリエステル樹脂A3(ガラス転移温度65℃、軟化温度124℃、重量平均分子量5850、Mw/Mn=4.3、酸価10mgKOH/g、THF不溶分0%)を得た。
混合工程S1において、ポリエステル樹脂A1の代わりにポリエステル樹脂A3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値24%、α値−0.3、β値4690)を得た。
(実施例4)
〔ポリエステル樹脂B2の作製〕
反応時間を変更したこと以外は、実施例1のポリエステル樹脂B1の作製と同様にしてポリエステル樹脂B2(ガラス転移温度63℃、軟化温度159℃、重量平均分子量48200、Mw/Mn=11.6、酸価18mmHg、THF不溶分44%)を得た。
混合工程S1において、ポリエステル樹脂B1の代わりにポリエステル樹脂B2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値25%、α値−0.3、β値5120)を得た。
(実施例5)
混合工程S1において、PGA1の添加量を1重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のトナー(体積平均粒子径6.5μm、CV値23%、α値−0.3、β値4936)を得た。
(実施例6)
混合工程S1において、PGA1の添加量を4重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6のトナー(体積平均粒子径6.5μm、CV値22%、α値−0.3、β値5001)を得た。
(実施例7)
混合工程S1において、PGA1の添加量を9.7重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7のトナー(体積平均粒子径6.6μm、CV値24%、α値−0.3、β値2160)を得た。
(実施例8)
混合工程S1において、ポリエステル樹脂A1およびB1の添加比率を、ポリエステル樹脂A1およびB1の総量を100%とした場合、ポリエステル樹脂A1:20%、ポリエステル樹脂B1:80%としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8のトナー(体積平均粒子径6.4μm、CV値25%、α値−0.3、β値6820)を得た。
(実施例9)
混合工程S1において、ポリエステル樹脂A1およびB1の添加比率を、ポリエステル樹脂A1およびB1の総量を100%とした場合、ポリエステル樹脂A1:45%、ポリエステル樹脂B1:55%としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例9のトナー(体積平均粒子径6.6μm、CV値23%、α値−0.3、β値3690)を得た。
(実施例10)
混合工程S1において、分散助剤の添加量がポリエステル樹脂A100重量部に対し、1.5重量部となるようPGA1の添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例10のトナー(体積平均粒子径6.5μm、CV値24%、α値−0.3、β値2690)を得た。
(実施例11)
分散助剤の作製において、実施例1と同様にして、ポリプロピレンにポリエチレンをグラフト重合させたポリプロピレン樹脂PGA2を得た。混合工程S1において、PGA1の代わりにPGA2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例11のトナー(体積平均粒子径6.7μm、CV値25%、α値−0.3、β値5010)を得た。
(実施例12)
分散助剤の作製において、実施例1と同様にして、ポリスチレンにポリアクリルをグラフト重合させたポリスチレン樹脂PGA3(水酸基価312KOHmg/g)を得た。混合工程S1において、PGA1の代わりにPGA3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例12のトナー(体積平均粒子径6.8μm、CV値23%、α値−0.3、β値4360)を得た。
(比較例1)
〔ポリエステル樹脂B3の作製〕
酸成分として、無水トリメリット酸を用いず、テレフタル酸85g、イソフタル酸335gを用い、アルコール成分として、グリセリン330gのみを用いたこと以外は、実施例1のポリエステル樹脂B1の作製と同様にしてポリエステル樹脂B3(ガラス転移温度58℃、軟化温度114℃、重量平均分子量2700、Mw/Mn=2.1、酸価15mmHg、THF不溶分0%)を得た。
混合工程S1において、ポリエステル樹脂A1の代わりにポリエステル樹脂B3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のトナー(体積平均粒子径6.5μm、CV値24%、α値−0.3、β値4260)を得た。
(比較例2)
混合工程S1において、PGA1を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のトナー(体積平均粒子径6.6μm、CV値25%、α値−0.3、β値965)を得た。
(比較例3)
混合工程S1において、ポリエステル樹脂Bを添加せず、マスターバッチを28.4重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3のトナー(体積平均粒子径6.9μm、CV値25%、α値−0.3、β値11690)を得た。
(比較例4)
混合工程S1において、ポリエステル樹脂Aの代わりにポリエステル樹脂Bを用いてマスターバッチを作製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例4のトナー(体積平均粒子径6.4μm、CV値24%、α値−0.3、β値2483)を得た。
得られた実施例1〜12および比較例1〜4のトナーについて、各トナー5重量部とフェライトコアキャリア(体積平均粒子径70μm)95重量部とを、V型混合機(商品名:V−5、株式会社徳寿工作所製)にて20分間混合して二成分現像剤を作製し、以下のようにして評価を行った。
〔機械的強度〕
各トナーを含む二成分現像剤を、カラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)に充填し、記録媒体として記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)を用い、25℃、45%RH環境にて、稼働させた。20000枚印刷後の二成分現像剤中のトナーの体積平均粒子径(D50)を測定し、初期D50(稼働前のトナーの体積平均粒子径)に対する割合を、粒子径率として下記式に基づいて算出し、下記の基準で機械的強度を評価した。トナーが脆弱であると、現像槽内での撹拌などによるストレスにより、トナーが破砕され、粒子が小さくなる。したがって、粒子径率が大きいトナーほど機械的強度が良好であることを示す。
粒子径率(%)=D50/(初期D50)×100
○(良好):粒子径率が90%以上
△(可):粒子径率が80%以上90%未満
×(不良):粒子径率が80%未満
〔帯電安定性〕
前記の強度評価と同様にして、カラー複合機を稼働させ(稼働条件:25℃、45%RH環境、15℃、15%RH環境、35℃、85%RH環境)、画像面積5%の原稿を20000枚印刷後、二成分現像剤中のトナーの帯電量比を測定した。
帯電量測定装置(商品名:210HS−2A、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて測定した。二成分現像剤を、底部に500メッシュの導電性スクリーンを備えた金属製の容器に入れ、吸引機によってトナーのみを吸引圧250mmHgで吸引し、吸引前および吸引後の二成分現像剤の重量差と、容器に接続されたコンデンサー極板間の電位差とからトナーの帯電量を求めた。下記式に基づいて、トナーの初期帯電量(稼働前のトナーの帯電量)に対する割合を、帯電量変動率として算出し、下記の基準で帯電安定性を評価した。
帯電量変動率%={トナーの帯電量(μC/g)−トナーの初期帯電量(μC/g)}/トナーの初期帯電量(μC/g)×100
○(良好):帯電量変動率が30%未満
△(可):帯電量変動率が30%以上40%未満
×(不良):帯電量変動率が40%以上
〔粉体流動性〕
上記のカラー複合機のトナーホッパーを改造した落下量試験機を用い、軸回転数180rpm条件にて各トナーの落下量を測定し、下記の基準で粉体流動性を評価した。
○(良好):落下量が13g/分以上
△(可):落下量が11g/分以上13g/分未満
×(不良):落下量が11g/分未満
〔定着性〕
前記と同様のカラー複合機を用いて、未定着画像を作製した。サンプル画像は長方形状のベタ画像部(縦20mm、横50mm)を含み、ベタ画像部における未定着状態でのトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cmとなるように調整した。作成した未定着画像を、前記カラー複合機の定着部を備えた外部定着器を用いて、100℃から200℃まで10℃刻みで定着し(プロセススピード124mm/sec)、試験紙(A4サイズ、52g/m紙)面上におけるオフセットの有無を目視で確認した。低温オフセットも高温オフセットも起こらない温度域を非オフセット域とし、低温オフセットの起こらない下限温度および高温オフセットの起こらない上限温度の温度差を温度幅として、定着性を以下の基準で評価した。
○(良好):非オフセット域の温度幅が60℃以上
△(可):非オフセット域の温度幅が40℃以上60℃未満
×(不良):非オフセット域の温度幅が40℃未満
〔耐ホットオフセット性〕
各トナーを含む二成分現像剤を、カラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)を改造したものに充填し、未定着画像を作製した。サンプル画像は、記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)上に、縦20mm、横50mmの長方形状のベタ画像部を含み、ベタ画像部におけるトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cmとなるように調整した。
作製した未定着画像を、前記カラー複合機の定着部を備えた外部定着機(プロセススピード124mm/秒)を用いて、130℃から5℃刻みで温度を上げて定着して、試験紙(A4サイズ、52g/m)紙面上におけるオフセットの有無を目視で確認した。トナーのホットオフセット開始温度より、以下の基準で耐ホットオフセット性を評価した。
○(良好):ホットオフセット開始温度が230℃以上
△(可):ホットオフセット開始温度が180℃以上230℃未満
×(不良):ホットオフセット開始温度が180℃未満
〔総合評価〕
機械的強度、帯電安定性、粉体流動性、定着性、および耐ホットオフセット性の評価結果を合わせて、以下の基準で総合評価を行った。
◎(特に良好):いずれの評価も○である
○(良好):評価結果に△が1つあるが×はない
△(可):評価結果に△が2つ以上あるが×はない
×(不良):評価結果に×がある
実施例1〜12および比較例1〜4のトナーに用いたポリエステル樹脂を表1、各トナーに用いたポリエステル樹脂、分散助剤、および各トナーのα値およびβ値、ならびに各トナーの評価結果を表2に示す。
Figure 2011257718
Figure 2011257718
表2の結果より、実施例1〜12のトナーは、比較例1〜4のトナーに比べて、機械的強度、粉体流動性、定着性、および耐ホットオフセット性に優れ、高湿、低湿環境においても帯電量が安定であることがわかる。

Claims (4)

  1. 出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂と、
    前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、
    着色剤とを含むことを特徴とするトナー。
  2. 前記分散助剤は、
    ポリオレフィンにポリアクリルをグラフト重合させた樹脂であり、
    前記ポリエステル樹脂A100重量部に対して3重量部以上15重量部以下添加されることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 120℃におけるトナーの粘弾性の周波数走査測定結果から導き出される、粘度η(Pa・s)と周波数X(Hz)との相関性を示す下記累積近似式(1)のα値が−0.7以上−0.3以下であり、かつβ値が4000以上5500以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
    η=β×Xα …(1)
  4. 出発物質として芳香族ジカルボン酸とロジンと3価以上のアルコールとを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aであって、出発物質全量における前記ロジンの含有量が60重量%以上であるポリエステル樹脂Aと、出発物質として芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとを原料として縮重合して得られるポリエステル樹脂Bとを有する結着樹脂と、前記ポリエステル樹脂Bに前記ポリエステル樹脂Aを分散させるための分散助剤と、着色剤とを混合して混合物を作製する混合工程と、
    前記混合物を溶融混練して、混練物を作製する溶融混練工程と、
    前記混練物を冷却固化し、粉砕して粉砕物を作製する冷却粉砕工程と、
    前記粉砕物を分級する分級工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法。
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