JP2009224136A - 発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ドナー・アクセプター対発光による面発光を直流駆動によって十分に得ることができるとともに、発光輝度が低下しにくい発光素子を提供すること。
【解決手段】 発光素子31は、一対の電極2,6と、電極2,6間に配置された、ドナー・アクセプター対発光機能を有する発光層4と、電極2と発光層4との間に配置された、p型半導体酸化物層3と、を備え、p型半導体酸化物層3は、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を一種以上含んでなる酸化物層、又は、MOx(ただし、MはNi、Ga、Moのうちの一種類の金属を示し、xは金属原子と酸素原子との個数比を示す。)で表される化合物を一種以上含んでなる酸化物層を有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、発光素子に関するものである。
従来より、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)は、発光効率が高く低電力で駆動することができ長寿命であることから、直流低電圧駆動型発光素子として広く普及している。しかし、一般的なLEDは、単結晶基板上に化合物半導体をエピタキシャル成長させて作製されるものであり、製造コストが高く、大面積の照明用途としては不向きであった。
他方、II−VI族化合物半導体のドナー・アクセプター対(D−Aペア)発光を利用した蛍光体が古くから知られている。これは、ドナーに捕らえられた電子と、アクセプタに捕らえられた正孔との波動関数が重なり合うようになると、電子と正孔とが再結合することで発光が得られることを利用した多結晶蛍光体材料である。このようなII−VI族化合物半導体のD−Aペア発光をエレクトロルミネセンス素子に応用する検討はなされており、例えば、ドナー準位、アクセプタ準位を形成する不純物をそれぞれ添加した多結晶ZnS蛍光体粉末を用いて作製した発光層を備える素子が知られている。この素子は単結晶基板上に形成する必要がないため、発光素子の大面積化、低コスト化が容易となる。しかし、従来のものは、交流高電圧駆動を必要とし、輝度や発光効率の点でも不十分であった。
このような状況の下、直流低電圧駆動による面発光が可能であり、低コストで簡便に作製できる発光素子の実現を目指して、種々の研究・開発が行われている。
例えば、下記特許文献1には、ドナー・アクセプター対(D−Aペア)発光を利用した直流駆動型発光素子が提案されており、より具体的には、カルコパイライト化合物半導体で構成される層と、ドナーアクセプターの付与される化合物半導体が発光する発光層が隣接して積層された発光素子が開示されている。
特開2007−281438号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記特許文献1に記載の発光素子は、長期間駆動させると発光輝度が低下しやすく、寿命特性の点で更なる改善の余地があることが判明している。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ドナー・アクセプター対発光による面発光を直流駆動によって十分に得ることができるとともに、発光輝度が低下しにくい発光素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の発光素子は、一対の電極間と、電極間に配置された、ドナー・アクセプター対発光機能を有する発光層と、電極の一方と発光層との間に配置された、p型半導体酸化物層と、を備え、p型半導体酸化物層は、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を一種以上含んでなる酸化物層、又は、MOx(ただし、MはGa、Ni、Moのうちの一種類の金属を示し、xは金属原子と酸素原子との個数比を示す。)で表される化合物を一種以上含んでなる酸化物層を有することを特徴とする。
なお、上記「ドナー・アクセプター対発光機能を有する発光層」とは、半導体中にドナー準位、アクセプタ準位をそれぞれ形成する不純物を共添加することで形成される発光層を意味する。
本発明の発光素子によれば、上記構成を有することにより、直流駆動によって十分な面発光が得られるとともに、十分な輝度の発光を長期間に亘って得ることができる。また、本発明の発光素子は、上記発光層およびp型半導体酸化物層が多結晶構造を有するものであっても上記効果を十分奏することができる。よって、本発明によれば、大面積化が可能であるとともに低コストで簡便に作製できる発光素子を有効に実現することができる。
なお、本発明の発光素子が輝度劣化しにくいことの理由は必ずしも明確にはなっていないが本発明者らは以下のとおり推察する。すなわち、本発明に係るp型半導体酸化物層は、熱および大気中に存在する酸素、水分に対して非常に安定であるため、駆動中のそれ自身の組成変動、および発光層への不純物拡散が起こりにくいと考えられる。これにより、発光素子の輝度の劣化が十分に抑制されたと本発明者らは推察する。
本発明の発光素子において、高キャリア密度化を実現する観点から、p型半導体酸化物層がO−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を含むことが好ましい。
発光層とp型半導体酸化物層とのバンドオフセットを小さくする観点から、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物はデラフォサイト型化合物であることが好ましい。
本発明の発光素子において、p型半導体酸化物層は、MgCu、CaCu、SrCu、及びBaCuのうちのいずれか一種類以上の化合物を含むことが好ましい。この場合、上記の化合物が外部環境の変化に強く、駆動時の組成変動が少ない安定な材料であるので、輝度劣化が十分抑制され寿命特性に優れた発光素子がより有効に実現可能となる。また、p型半導体酸化物層が上記の化合物を含むことにより、発光層に対するバンドオフセットをより小さくすることができる。これにより、ホール注入性を高めることができ、発光効率を更に向上させることが可能となる。
本発明の発光素子において、p型半導体酸化物層は、NiO、Ga、及びMoOのうちのいずれか一種類以上の化合物を含むことが好ましい。この場合、輝度劣化が十分抑制され寿命特性に優れた発光素子がより有効に実現可能となる。この効果は、上記の化合物が熱および大気中に存在する酸素、水分に対して非常に安定であるため、駆動中におけるこれらの化合物の組成変動、および発光層への不純物拡散が起こりにくくなることに起因して得られたと本発明者らは考えている。また、p型半導体酸化物層が上記の化合物を含むことにより、発光層に対するバンドオフセットをより小さくすることができる。これにより、ホール注入性を高めることができ、発光効率を更に向上させることが可能となる。
本発明によれば、ドナー・アクセプター対発光による面発光を直流駆動によって十分に得ることができるとともに、発光輝度が低下しにくい発光素子を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る発光素子の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面の寸法比率は、必ずしも実際の寸法比率とは一致していない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光素子の構成を示す断面図である。図1に示された発光素子31は、基板1と、基板1上に設けられた陽極2と、陽極2上に設けられたp型半導体酸化物層3と、p型半導体酸化物層3上に設けられ、ドナー・アクセプター対発光機能を有する発光層4と、発光層4上に設けられたn型半導体層5と、n型半導体層5上に設けられた陰極6とを備える。なお、本実施形態において、一対の電極である陽極2及び陰極6はそれぞれ外部の直流電源に接続されている。
基板1としては、発光素子31の支持体として用いられるものであれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。発光層3から発せられた光を基板側から取り出す場合、例えば、石英基板、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板等の透光性基板を用いることができる。また、発光層3から発せられた光を陰極側から取り出す場合、基板1は透明である必要はなく、例えば、アルミナ基板、シリコンウエハなどの不透光性基板とすることができる。この他にも、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどの絶縁性基板を用いることができる。
基板1の大きさについては、特に制限されないが、液晶ディスプレイのバックライトや照明などの用途の場合、例えば、縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚み0.7〜5.0mm程度とすることができる。
陽極2の構成材料としては、仕事関数の大きい(好ましくは4.0eV以上の)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、例えば、ITO(酸化インジウム−酸化スズ)、Au、Pt、Ni、W、Cr、Mo、Fe、Co、Cu、Ag及びPdなどが挙げられる。
陽極2は、例えば、上記の材料をスパッタリング、電子ビーム蒸着、スクリーン印刷などの方法により基板1上に成膜した後、必要に応じて、フォトリソグラフィー法、リアクティブイオンエッチング(RIE)、メカニカルスクライブ、レーザスクライブ法などの方法によりパターンニングすることで形成することができる。また、あらかじめ成膜時にマスキングすることでも、パターニングは可能である。陽極2の厚さは、例えば、20〜2000nmとすることができる。シート抵抗、密着性、透光性(陽極側から発光を取り出す場合)の観点から、陽極2の厚さは50〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
p型半導体酸化物層3は、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を一種以上含んで構成される、又は、MOx(ただし、MはGa、Ni、Moのうちの一種類の金属を示し、xは金属原子と酸素原子との個数比を示す。)で表される化合物を一種以上含んで構成される。また、p型半導体酸化物層3は、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を一種以上含んでなる酸化物層及びMOxで表される化合物を一種以上含んでなる酸化物層のうちの複数が積層されたものであってもよい。この場合、各層が同じ組成を有してもよく、各層が異なる組成を有してもよい。p型半導体酸化物層3は、キャリア密度を制御し適切なキャリア注入量を設定する観点から、K、Li、Naなどの不純物元素を更に含むことが好ましい。ドナー準位やアクセプタ準位を形成するため、このような不純物元素のドープ量としては、0.01原子%〜5原子%であることが好ましく、0.05原子%〜3原子%であることがより好ましく、0.1原子%〜1原子%であることがさらにより好ましい。
O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物としては、例えば、CuAlO、CuInO、CuGaO、MgCu、CaCu、SrCu、及びBaCuなどが挙げられる。これらのうち、バンドギャップの大きさ、高キャリア密度化の観点から、SrCuが好ましい。O−Cu−Oのダンベル構造を具体的に示す例として、図3にSrCuの結晶構造を示す。図3に示すように、SrCuの結晶には、O−Cu−Oのダンベル構造が含まれている。このダンベル単位構造は、ジグザグに結びつき、[100]方向及び[010]方向に1次元のチェーンを形成している。[100]方向のチェーンと[010]方向のチェーンとは、96.25°の角度をなしている。CuOはバンドギャップ2.1eVのp型導電体として知られているが、SrCu結晶中のダンベル構造のCuと酸素の結合長は、184pmでCuOのCuと酸素の結合長に近似している。そのため、SrCu結晶はp型の導電性を得やすい構造を有している。また、ダンベルチェーンの1次元的構造内でのCuとその隣接Cuの電子的相互作用は、3次元的構造であるCuOのそれに較べ小さい。すなわち、CuOに較べ、O−Cu−Oダンベルの1次元的構造では、バンドギャップが広くなる。したがって、SrCuのバンドギャップは、CuOの2.1eVより大きくなり、3.2eV程度に広がる。
このように、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物は、p型の導電性を得やすく、より広いバンドギャップを有することが可能となる。
MOx(ただし、MはNi、Ga、Moのうちの一種類の金属を示し、xは金属原子と酸素原子との個数比を示す。)で表される化合物としては、例えば、NiO、Ga、MoO、などが挙げられる。これらのうち、キャリア密度の制御性の観点から、NiOが好ましい。この場合、Li等のアルカリ金属の添加により、キャリア密度を増加させることが可能である。
上記MOxで表される化合物も、広いバンドギャップを有し、比較的容易にp型の導電性を得ることができる材料である。
p型半導体酸化物層3が上記のO−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物やMOxで表される化合物から構成されることにより、ドナー・アクセプター対発光機能を有する発光層4とp型半導体酸化物層3とのバンドオフセットをより小さくすることができ、特に、本実施形態の発光素子のように発光層4がp型半導体酸化物層3に積層して設けられている場合には、発光層4へホール注入しやすい素子構造を形成することができる。
また本実施形態において、発光層4とp型半導体酸化物層3とのバンドオフセットを小さくする観点から、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物がデラフォサイト型化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、CuAlO、CuGaO、CuInOなどが挙げられる。デラフォサイト型の結晶構造とは、CuFeO構造とも呼ばれ、O−Cu−Oのダンベル構造を有するCuO層と稜共有により連結したD3+(Dは3価の金属を示す。)の八面体層が交互に繰り返された構造である。図4は、Cuのデラフォサイト型(CuDO:Dは3価の金属である。)の結晶構造を示す図である。図4中、AはCuを示し、Bは上記Dを示す。Cuのデラフォサイト型の結晶とは、Cu及びDO2−が成す層が交互にc軸に垂直な平面を形成している2次元性結晶である。また、Cuは酸素2配位であり、且つ面内のCuとCuとの距離は、DとOとの結合距離、すなわちD3+の大きさで規定されている。酸素の配位構造は、1個のCuおよび3個のD3+によって構成された正四面体である。
p型半導体酸化物層3の形成方法としては、例えば、スパッタ、電子ビーム蒸着、レーザアブレーション法、CVD(chemical vapor deposition)法、MBE(molecular beam epitaxy)法による方法が挙げられる。
p型半導体酸化物層3の形態としては、多結晶膜、エピタキシャル膜、単結晶膜が挙げられる。これらのうち、多結晶膜が好ましい。多結晶膜は大面積に形成可能で且つ単結晶基板を用いずとも形成が可能であるため、発光素子の低コスト化、大面積化が容易となる。多結晶膜のp型半導体酸化物層3を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、レーザアブレーション法、イオンプレーティング法が挙げられる。
ところで、p型層には、CuS等の硫化物から構成されるものがある。このような含硫黄p型層は、その成膜後、試料の移動や材料交換のために大気開放されると、大気中の水分や酸素によって表面が酸化されやすい。発光素子においてp型層の表面はn層又は発光層との界面になる部分であり、そこに酸化などにより欠陥準位が形成されてしまうとキャリア注入効率が大きく低下して発光に支障をきたす場合がある。そのため、含硫黄p型層の作製には、ロードロック式の成膜装置や、複数の成膜材料を同時に設置可能な成膜装置等を使用する必要があり、製造コストが増加する傾向にある。これに対して、本発明に係るp型半導体酸化物層は、大気中においても安定な材料から構成されているため、簡単な構造の製造装置を用いて成膜しても大気開放によるキャリア注入性の低下などの特性劣化が発生しにくい。したがって、本発明に係るp型半導体酸化物層を備える本発明の発光素子は、発光特性のみならず製造コストの点からも優れたものであるといえる。
p型半導体酸化物層3の厚さとしては、20〜500nmが好ましい。p型半導体酸化物層3の厚みが20nmを下回ると、寿命特性の低下、発光効率の低下の傾向にあり、500nmを超えると、駆動電圧増加の傾向にある。
発光層4としては、ドナー・アクセプター対発光機能を有するものあればよく、例えば、II−VI族半導体化合物などの母体材料と、アクセプタ原子及びドナー原子とを含有するものが挙げられる。II−VI族半導体化合物としては、ZnSが挙げられる。また、アクセプタ原子としては、Cu、Au及びAgが挙げられ、ドナー原子としては、F、Cl、Br、I、Al、Ga、及びInなどが挙げられる。更に、ドナー原子としては、発光効率の観点から、Clが好ましい。
発光層4の形成方法としては、例えば、母体材料と、D−Aペア発光の起源となる不純物元素を含む化合物との混合物を焼成したものを原料とし、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法を用いてp型半導体酸化物層3上に成膜し、更に熱処理することにより形成することができる。なお、熱処理は、母体材料のII族サイトをアクセプタ原子、VI族サイトをドナー原子にそれぞれ置換し、母体材料中にドナー準位及びアクセプタ準位をそれぞれ形成して発光層の発光効率を高めるために行われる。具体的な条件としては、真空中、400〜800℃、0.05〜1時間程度が例示される。
D−Aペア発光の起源となる不純物元素を含む化合物としては、例えば、CuS、AgSなどの硫黄化合物、NaCl、KClなどの塩化物、Ga、Al、Inなどの他のIII族硫黄化合物、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnIなどが挙げられる。
本実施形態において発光層4が、母体材料としてZnSと、アクセプタ原子としてCuまたはAg等の不純物を含む場合、CuまたはAgの濃度は、発光効率の観点から、0.01原子%〜5原子%であることが好ましく、0.05原子%〜3原子%であることがより好ましく、0.1原子%〜1原子%であることがさらにより好ましい。
本実施形態においては、発光層の母体材料のII族元素組成比、VI族元素組成比やD−Aペア発光の起源となる不純物元素の種類を適宜選択することにより、所望の発光色を得ることができる。また、本実施形態の発光層は、電界集中、局在型発光中心を用いたものに比べて、pn接合を介したキャリア注入型発光であるため、低電圧で駆動できる点で優れている。
発光層4の厚さとしては、50〜1000nmが好ましい。発光層4の厚みが50nmを下回ると、発光効率が低下する傾向にあり、1000nmを超えると、駆動電圧が増加する傾向にある。
発光層4の形態としては、多結晶膜、エピタキシャル膜が挙げられる。これらのうち、多結晶膜が好ましい。多結晶膜は大面積に形成可能で且つ単結晶基板上への形成が不要であるため、発光素子の低コスト化、大面積化が容易となる。
n型半導体層5は、n型の導電性を有する半導体層であり、本実施形態の発光素子においては電子注入層として機能するものである。n型半導体層5としては、例えば、母体材料と、n型の導電性を付与する不純物元素とを含有するものが挙げられる。n型半導体層5の母体材料としては、例えば、ZnSが挙げられる。また、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、Al、Ga、In、B、Tl、F、Cl、Br、及びI等が挙げられる。これらのうち、キャリア密度向上の観点から、Alが好ましい。
n型半導体層5の形成方法としては、例えば、母体材料と、n型の導電性を付与する不純物元素を含む化合物との混合物を焼成したものを原料とし、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法を用いて発光層4上に成膜することにより形成することができる。また、母体材料とn型導電性を付与する不純物元素材料をそれぞれ分けて設置し、電子ビーム蒸着などの方法により同時に蒸発させて成膜することによっても形成可能である。
n型の導電性を付与する不純物元素を含む化合物としては、例えば、Al、Ga、Al、In、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnIが挙げられる。
本実施形態において、n型半導体層5は、母体材料としてZnSと、n型の導電性を付与する不純物元素としてAlとを含んで構成されることが好ましい。また、n型半導体層におけるAl濃度は、キャリア密度制御の観点から、0.01原子%〜5原子%であることが好ましく、0.05原子%〜3原子%であることがより好ましく、0.1原子%〜1原子%であることがさらにより好ましい。
n型半導体層5の厚さとしては、20〜500nmが好ましい。発光層4の厚みが20nmを下回ると、発光効率が低下する傾向にあり、500nmを超えると、駆動電圧が増加する傾向にある。
n型半導体層5の形態としては、多結晶膜、エピタキシャル膜が挙げられる。これらのうち、多結晶膜が好ましい。多結晶膜は、大面積に形成可能で且つ単結晶基板上への成膜が不要であるため、発光素子の低コスト化、大面積化が容易となる。
ところで、発光層にn型の機能を持たせるための不純物を添加した発光素子もあるが、この場合、発光層内に不純物準位ができ、その不純物準位にキャリアがトラップされることで、発光特性が低下しやすくなる傾向にある。これに対して、n型半導体層5と発光層4とが個別に設けられている本実施形態の発光素子31によれば、発光層内における発光を阻害するキャリアトラップを有効に防止でき、電子注入層及び発光層のそれぞれの特性を高水準で満足させることができ、n型導電性を持つ発光層を備える発光素子に比べて高い発光効率を得ることができる。
陰極6の構成材料としては、仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下の)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、例えば、LiやCsなどのアルカリ金属や、Mg、Ca、及びSrなどのアルカリ土類金属などが挙げられる。また、陰極6は、安定性を確保するため、MgAgやAlLiなどの、仕事関数が低く電子注入障壁の低い金属と比較的仕事関数が大きく安定な金属との合金を用いて形成されてもよい。
陰極6は、例えば、上記の材料をスパッタリング、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着などの方法によりn型半導体層5上に成膜した後、必要に応じて、フォトリソグラフィー法、リアクティブイオンエッチング(RIE)、メカニカルスクライブ法などの方法によりパターンニングすることで形成することができる。また、成膜時のマスキングによりあらかじめパターンニングすることで陰極6が形成されてもよい。シート抵抗、密着性の観点から、陰極6の厚さは50〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
本実施形態の発光素子31においては、p型半導体酸化物層3、発光層4及びn型半導体層5はすべて多結晶膜であることが好ましい。この場合の発光素子31は、低コストで作成することができ、大面積化の要求と高効率発光の要求とを満たすものになり得る。
また、本実施形態の発光素子31において、p型半導体酸化物層3、発光層4及びn型半導体層5は、下記表1に示される材料から選択される組み合わせが好ましい。
Figure 2009224136

上記の組み合せによる発光素子によれば、上記以外の材料の組み合わせに比べて、発光層へのキャリア注入性が高く、効率的に高輝度青色発光および青緑色発光が得られるという効果を更に効果的に得ることができる。
発光素子31は、基板1上に、陽極2、p型半導体酸化物層3、発光層4、n型半導体層5及び陰極6をこの順に備えるものであるが、各層を逆の順序にすることができる。すなわち、基板1上に、陰極6、n型半導体層5、発光層4、p型半導体酸化物層3及び陽極2をこの順に設けてもよい。
図2は、本発明の第2実施形態に係る発光素子の構成を示す断面図である。図2に示す発光素子32は、発光層4及びn型半導体層5に代えてn型発光層7が設けられていること以外は図1に示す発光素子31と同様の構成を有している。
n型発光層7としては、例えば、II−VI族半導体化合物などの母体材料と、アクセプタ原子及びドナー原子とを含有するものが挙げられる。II−VI族半導体化合物としては、ZnSが挙げられる。また、アクセプタ原子としては、Cu及びAgが挙げられ、ドナー原子としては、F、Cl、Br、I、Al、Ga、及びInなどが挙げられる。また、ZnS:Cu、Cl、FやZnS:Cu、Al、Fなどのようにドナー原子を2種含むものであってもよい。
n型発光層7の形成方法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法、イオンプレーティング法により形成することができる。n型発光層7として機能させるため、キャリア密度は1×1017cm−3以上、1×1020cm−3以下であることが好ましい。また、キャリア注入性の観点から、キャリア密度は5×1017cm−3以上であることがより好ましく、縮退による素子短絡の防止のため、キャリア密度は5×1019cm−3以下であることがより好ましい。
n型発光層7の形態としては、多結晶膜、エピタキシャル膜が挙げられる。これらのうち、多結晶膜が好ましい。多結晶膜は大面積に形成可能で且つ単結晶基板上への形成を必要としないため、発光素子の低コスト化、大面積化が容易となる。
また、本実施形態の発光素子32においても、p型半導体酸化物層3及びn型発光層7が多結晶膜であることが好ましい。この場合の発光素子32は、低コストで作成することができ、大面積化の要求と高効率発光の要求とを満たしたものになり得る。
図2に示す発光素子32においても、図1に示した発光素子31と同様に、ドナー・アクセプター対発光による面発光を直流駆動によって十分に得ることができるとともに、十分な輝度の発光を長期間に亘って得ることができる。
発光素子32は、基板1上に、陽極2、p型半導体酸化物層3、n型発光層7及び陰極6をこの順に備えるものであるが、各層を逆の順序にすることができる。すなわち、基板1上に、陰極6、n型発光層7、p型半導体酸化物層3及び陽極2をこの順に設けてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<発光素子の作製>
(実施例1)
先ず、基板として無アルカリガラス基板(コーニング#1737、100mm×100mm、厚み0.7mm)を用意し、この表面を洗浄装置により洗浄した後、乾燥装置を用いて乾燥した。
次に、洗浄した基板上に、厚み200nmのITOの膜をスパッタリング法により成膜した。続いて、この膜を、通常のフォトリソグラフィーによりパターンニングして、櫛形の形状を有する透明電極を形成した。
一方で、SrCo、CuOおよびKCoの粉末を混合してペレット化し、焼成を繰り返すことで、スパッタリングターゲットとなる焼結体Aを完成させた。
次に、透明電極を形成した基板をRFマグネトロンスパッタリング装置の成膜用基板ホルダーに設置し、スパッタリング装置の成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気し、上記で得た焼結体Aをスパッタリングターゲットとして用い成膜を行った。これにより、透明電極上に厚み200nmのp型半導体酸化物層を形成した。
さらに、p型半導体酸化物層を形成した基板、および発光層材料の蒸着源として予め準備したCuS、NaCl及びZnSの粉末を混合してペレット化し焼成を繰り返すことで得られた焼結体を、電子ビーム蒸着装置の所定の位置に設置し、成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気した。その後基板付近に配置された抵抗加熱装置により基板温度を200℃まで昇温した。そして電子ビーム蒸着法によりp型半導体酸化物上に厚み500nmの所望膜組成の発光層を形成した。
次に、発光層が形成された基板を200℃に加熱し、蒸着源としてZnSにAlが混合されたペレットを用いて、電子ビーム蒸着法により発光層上に厚さ200nmのn型半導体層を形成した。
さらに、n型半導体層上に、矩形状のマスクを用いてマスキングした後に厚み200nmのAlの膜をスパッタリング法により成膜し電極とした。こうして、図1に示す発光素子31と同様の構成を有する実施例1の発光素子E−1を得た。なお、得られた発光素子E−1のp型半導体酸化物層の組成とKの含有量(原子%)、発光層の組成とCu及びClの含有量、並びにn型半導体層の組成とAlの含有量を表2に示す。
Figure 2009224136

(実施例2)
先ず、実施例1と同様にして基板上に透明電極を形成した。一方で、NiO及びLiFの粉末を混合してペレット化し、焼成を繰り返すことで、スパッタリングターゲットとなる焼結体Bを完成させた。
次に、透明電極を形成した基板をRFマグネトロンスパッタリング装置の成膜用基板ホルダーに設置し、スパッタリング装置の成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気し、上記で得た焼結体Bをスパッタリングターゲットとして用い成膜を行った。これにより、透明電極上に厚み200nmのp型半導体酸化物層を形成した。
そして、実施例1と同様にして、p型半導体酸化物層上に、発光層、n型半導体層、及びAl電極を形成した。こうして、図1に示す発光素子31と同様の構成を有する実施例2の発光素子E−2を得た。なお、得られた発光素子E−2のp型半導体酸化物層の組成とLiの含有量(原子%)、発光層の組成とCu及びClの含有量、並びにn型半導体層の組成とAlの含有量を表2に示す。
(実施例3)
先ず、実施例1と同様にして基板上に透明電極を形成した。一方で、CuO及びAlの粉末を混合してペレット化し、焼成を繰り返すことで、スパッタリングターゲットとなる焼結体Cを完成させた。
次に、透明電極を形成した基板をRFマグネトロンスパッタリング装置の成膜用基板ホルダーに設置し、スパッタリング装置の成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気し、上記で得た焼結体Cをスパッタリングターゲットとして用い成膜を行った。これにより、透明電極上に厚み200nmのp型半導体酸化物層を形成した。
そして、実施例1と同様にして、p型半導体酸化物層上に、発光層、n型半導体層、及びAl電極を形成した。こうして、図1に示す発光素子31と同様の構成を有する実施例3の発光素子E−3を得た。なお、得られた発光素子E−3の発光層の組成とCu及びClの含有量(原子%)、並びにn型半導体層の組成とAlの含有量を表2に示す。
(実施例4)
先ず、実施例1と同様にして基板上に透明電極及びp型半導体酸化物層を形成した。
次に、p型半導体酸化物層を形成した基板を、電子ビーム蒸着装置の成膜用基板ホルダーに設置し、電子ビーム蒸着装置の成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気した。更に、電子ビーム蒸着装置の基板付近に配置された抵抗加熱装置により基板温度を200℃まで昇温した。そして、電子ビーム蒸着装置の真空チャンバー内に蒸着源として下記の焼結体Dを配置し、これを電子ビーム蒸着法により基板上に成膜し、p型半導体酸化物層上に厚み500nmの膜を形成した。
焼結体D:まず、CuS、NaCl、ZnF及びZnSの粉末を混合してペレット化し、焼成を繰り返すことで、得られた焼結体。
そして、実施例1と同様にして、発光層上にAl電極を形成した。こうして、図2に示す発光素子32と同様の構成を有する実施例4の発光素子E−4を得た。なお、得られた発光素子E−4の発光層の組成とCu、Cl及びFの含有量(原子%)を表2に示す。
(比較例1)
まず、実施例1と同様にして基板上に透明電極を形成した。
次に、透明電極を形成した基板をスパッタリング装置の成膜用基板ホルダーに設置し、スパッタリング装置の成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気した。更に、スパッタリング装置の基板付近に配置された抵抗加熱装置により基板温度を300℃まで昇温した。そして、スパッタリング装置の真空チャンバー内にあらかじめ設置したCuGaSターゲットを用い、成膜を行った。その結果、透明電極上に厚み200nmのp型半導体硫化物層を形成した。
次に、p型半導体硫化物層上に、発光層、n型半導体層、及びAl電極をこの順で実施例1と同様にして形成し、比較例1の発光素子CE−1を得た。なお、得られた発光素子CE−1の発光層の組成とCu及びClの含有量(原子%)、並びにn型半導体層の組成とAlの含有量を表2に示す。
(比較例2)
まず、実施例1と同様にして基板上に透明電極を形成した。次に、透明電極を形成した基板をスパッタリング装置の成膜用基板ホルダーに設置し、スパッタリング装置の成膜室内の圧力が1×10−4Paとなるまで真空排気した。更に、スパッタリング装置の基板付近に配置された抵抗加熱装置により基板温度を300℃まで昇温した。そして、スパッタリング装置の真空チャンバー内にあらかじめ設置したCuGaSターゲットを用い成膜を行い、透明電極上に厚み200nmのp型半導体硫化物層を形成した。
次に、p型半導体硫化物層上に、発光層、及びAl電極をこの順で実施例4と同様にして形成し、比較例2の発光素子CE−2を得た。なお、得られた発光素子CE−2の発光層の組成とCu、Cl及びFの含有量(原子%)を表2に示す。
<発光素子の寿命特性の評価>
上記で得られた発光素子について、以下に示す連続点灯試験により寿命特性を評価した。得られた結果を図5及び図6に示す。図5及び図6は、発光素子の駆動時間(h)に対する輝度の変動率(%)を示すグラフである。図5中の折れ線E−1、E−2、E−3は実施例1〜3の発光素子E−1、E−2、E−3の輝度変動を示し、折れ線CE−1は比較例1の発光素子CE−1の輝度変動を示す。図6中の折れ線E−4は実施例4の発光素子E−4の輝度変動を示し、折れ線CE−2は比較例2の発光素子CE−2の輝度変動を示す。また、破線Hは輝度半減値を示す。また、発光素子の初期発光輝度及び輝度半減寿命を表2に示す。
[連続点灯試験]
アルミニウム製の金属放熱板に発光素子を設置し、十分な放熱対策を施した状態で、発光素子の電極間に直流電圧を印加し、電流密度25mA/cmの定電流駆動を行った。そして、初期発光輝度及び所定の時間毎に発光輝度を測定した。
図5に示されるように、発光素子E−1では初期発光輝度760(cd/m)、発光素子E−2では初期発光輝度850(cd/m)、発光素子E−3では初期発光輝度642(cd/m)の十分な面発光が得られ、いずれも輝度半減寿命が発光素子CE−1に比べて極めて長いことが確認された。
また、図6に示されるように、発光素子E−4では初期発光輝度622(cd/m)の十分な面発光が得られ、且つ、輝度半減寿命が発光素子CE−2に比べて極めて長いことが確認された。
本発明に係る第1実施形態の発光素子の構成を示す模式断面図である。 本発明に係る第2実施形態の発光素子の構成を示す模式断面図である SrCuの結晶構造を示す図である。 デラフォサイト型の結晶構造を示す図である。 発光素子の駆動時間に対する輝度の変動を示すグラフである。 発光素子の駆動時間に対する輝度の変動を示すグラフである。
符号の説明
1…基板、2…陽極、3…p型半導体酸化物層、4…発光層、5…n型半導体層、6…陰極、7…n型発光層、31,32…発光素子。

Claims (5)

  1. 一対の電極間と、
    前記電極間に配置された、ドナー・アクセプター対発光機能を有する発光層と、
    前記電極の一方と前記発光層との間に配置された、p型半導体酸化物層と、を備え、
    前記p型半導体酸化物層は、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を一種以上含んでなる酸化物層、又は、MOx(ただし、MはGa、Ni、Moのうちの一種類の金属を示し、xは金属原子と酸素原子との個数比を示す。)で表される化合物を一種以上含んでなる酸化物層を有する、発光素子。
  2. 前記p型半導体酸化物層は、O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物を含む、請求項1に記載の発光素子。
  3. 前記O−Cu−Oのダンベル構造を有する化合物が、デラフォサイト型化合物である、請求項2に記載の発光素子。
  4. 前記p型半導体酸化物層は、MgCu、CaCu、SrCu、及びBaCuのうちのいずれか一種類以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
  5. 前記p型半導体酸化物層は、NiO、Ga、及びMoOのうちのいずれか一種類以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
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