JP2010074068A - 半導体素子 - Google Patents

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明 大友
Atsushi Tsukasaki
敦 塚崎
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Abstract

【課題】アクセプタドープ層を含む積層体を形成する場合に、アクセプタドープ層におけるアクセプタ濃度の増大を図らなくても、ホール濃度を十分な濃度とし、p型化を容易に実現できる半導体素子を提供する。
【解決手段】ZnO基板1上に、アンドープZnO層2、共ドープMgZnO層3、透明導電膜4が順に積層されている。ここで、共ドープMgZnO層3は、アクセプタ元素とドナー元素とが共に含まれている共ドープ層である。共ドープMgZnO層3のバンドギャップは、共ドープ層以外の半導体層中で最も小さいバンドギャップとなるアンドープZnO層2のバンドギャップよりも大きくなるように形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アクセプタドープ層を積層構造に含む半導体素子に関する。
ワイドギャップ半導体では、p型とn型を同時に実現することが困難となる場合が多い。例えばGaN化合物をp型化することは従来困難であるとされてきたが、現在では、加熱処理によりp型化できることが知られている。一方、ワイドギャップ半導体の中でも、ZnO系半導体は、アクセプタドーピングが困難で、p型ZnOを得ることができないと言われてきた。
しかし、近年、非特許文献1や非特許文献2に見られるように、技術の進歩により、p型ZnOを得ることができるようになり、発光も確認されるようになってきた。ただし、これらの成果は、ScAlMgO(SCAM)という複合酸化物絶縁基板を用いている。SCAM基板は研究所レベルでしか作製されていない特殊な絶縁性基板であること、雲母のように薄膜が積み重なったような構造をしているため、チップ化の際のダイシングが困難なこと等の難点があり、このままでは産業に適した形態ではない。
そこで、発明者らは、産業に適した形態でのZnO系半導体で構成されたLED等のデバイスの形成を目指し、ZnO基板を使っての研究、開発を進めた。その成果の一部はすでに、特許文献1や、既出願の特願2007−27182号等に開示している。
特願2007−27182号にも示したように、平坦なZnO系薄膜を積層するためには、750℃以上の成長温度が必要であり、MgZnOになると、更に高温でなければ平坦な膜を形成することができない。薄膜の平坦性は重要で、薄膜の平坦性が良くないとキャリアが薄膜中を移動するときの抵抗になったり、積層構造の上層になるほど、表面荒れが大きくなり、その表面荒れのためにエッチング深さの均一性が取れなかったりする。また、表面荒れによる異方的な結晶面の成長が起こる、といった問題が発生しやすく、半導体デバイスとしての所望の機能を発揮させるのが困難になりやすい。さらには、表面荒れによって意図しない不純物汚染が発生するといった別の問題も発生する。そのため、通常は薄膜表面はできるだけ平坦なことが望まれる。ところが、p型化を行うための窒素のドーピング効率は成長温度に強く依存し、高濃度の窒素ドーピングを行うためには基板温度を下げる必要がある。
A.Tsukazaki et al.,JJAP 44(2005)L643 A.Tsukazaki et al Nture Material 4(2005)42 特開2007−329353
上記のように、ZnO系半導体では、表面平坦性を考慮し、成長温度を上昇させた場合、アクセプタ元素のドープ濃度を高めることが困難であった。これは、酸化物半導体であるZnO系半導体のアクセプタドープ層を成長させた場合、アクセプタドープすると同時に結晶欠陥が生成されて、ホール濃度の減少に繋がっていると考えられている。
以上のように、ホール濃度を高めるための手段として、アクセプタ濃度が高くなるようにアクセプタドープ層を作製することは、非常に難しい。また、酸化物半導体であるZnO系半導体に限らず、他の化合物材料の半導体でも、アクセプタ濃度を高めることが困難な場合がある。アクセプタ濃度が高められないと、ホール濃度が十分高くできず、発光素子の輝度に影響を与えたり、電子デバイスでは漏れ電流が増大したりする。
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、アクセプタドープ層を含む積層体を形成する場合に、アクセプタドープ層におけるアクセプタ濃度の増大を図らなくても、ホール濃度を十分な濃度とし、p型化を容易に実現できる半導体素子を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、アクセプタ元素とドナー元素を共に含む共ドープ層を少なくとも1層と、該共ドープ層以外の半導体層とが積層され、前記共ドープ層の中で最も小さいバンドギャップとなる第1バンドギャップが、前記共ドープ層以外の半導体層中で最も小さいバンドギャップとなる第2バンドギャップよりも大きいことを特徴とする半導体素子である。
また、請求項2記載の発明は、前記共ドープ層においては、アクセプタ濃度はドナー濃度以上の濃度であることを特徴とする請求項1記載の半導体素子である。
また、請求項3記載の発明は、前記共ドープ層のドナー濃度は、アクセプタ濃度よりも1桁以上低いことを特徴とする請求項2記載の半導体素子である。
また、請求項4記載の発明は、前記アクセプタ濃度が5×1018cm−3以上、ドナー濃度が1×1015cm−3〜1×1018cm−3の範囲であることを特徴とする請求項3記載の半導体素子である。
また、請求項5記載の発明は、前記共ドープ層が積層体で構成されており、前記アクセプタ濃度及びドナー濃度は該積層体の平均アクセプタ濃度及び平均ドナー濃度であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子である。
また、請求項6記載の発明は、前記第2バンドギャップを有する半導体層が発光層であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
また、請求項7記載の発明は、前記第1バンドギャップと第2バンドギャップとの差は0.2eV以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体素子である。
また、請求項8記載の発明は、前記半導体素子が酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体素子である。
また、請求項9記載の発明は、前記酸化物はZnO化合物であり、前記共ドープ層はMgZn1−XO(0<X≦1)であることを特徴とする請求項8記載の半導体素子である。
また、請求項10記載の発明は、前記MgZn1−XOの組成Xが0.1〜0.45の範囲で構成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体素子である。
また、請求項11記載の発明は、ドナー元素はIII族、アクセプタ元素はV族又はI族で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の半導体素子である。
また、請求項12記載の発明は、前記アクセプタ元素は窒素であり、前記ドナー元素はガリウムであることを特徴とする請求項11記載の半導体素子である。
また、請求項13記載の発明は、前記共ドープ層のうちいずれか1層が外部電極と接触していることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の半導体素子である。
本発明によれば、アクセプタドープ層を含む積層体を形成する場合に、アクセプタドープ層は、アクセプタ元素とともにドナー元素も含む共ドープ層としている。これにより、アクセプタ元素のドープ時に生成される結晶欠陥が抑制されると考えられ、アクセプタ元素濃度を従来よりも高めることなく、ホール濃度を向上させることができ、p型化を容易に実現できる。また、共ドープ層の中で最小のバンドギャップが、共ドープ層以外の半導体層中で最も小さいバンドギャップよりも大きくなるように構成されているので、上記構成を発光素子に適用した場合には、発光輝度を向上させることができる。一方、トランジスタ等の電子デバイスに用いた場合には、デバイスの漏れ電流を小さくすることができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の半導体素子の積層構造の一例を示す。
成長用基板としてのZnO基板1上に、アンドープZnO層2、共ドープMgZnO層3、透明導電膜4が順に積層されている。ここで、共ドープMgZnO層3は、アクセプタ元素とドナー元素とが共に含まれている共ドープ層である。共ドープ層に添加される不純物のうち、アクセプタ元素としては、V族又はI族の元素から選択することができ、N(窒素)、P(燐)、As(砒素)、Li(リチウム)、Cu(銅)等を用いることができる。一方、共ドープ層に添加される不純物のうち、ドナー元素は、III族元素から選択することができ、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)等を用いることができる。
なお、以下、ZnO系半導体又はZnO系薄膜という場合は、ZnO又はZnOを含む化合物から構成されるものであり、具体例としては、ZnOの他、IIA族元素とZn、IIB族元素とZn、またはIIA族元素およびIIB族元素とZnのそれぞれの酸化物を含むものを意味する。
透明導電膜4は、例えば、Ni/Auの金属膜が用いられ、これをアニールすることにより透明化する。また、透明導電膜4には、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)といったp型有機導電膜を用いても良い。透明導電膜4上にp電極5が、ZnO基板1の裏面にn電極6が形成されている。p電極5は、例えば透明導電膜4側からTi/Auの金属多層膜、n電極6は、例えばZnO基板1側からTi/Alの金属多層膜で構成される。
アンドープZnO層2は、発光層又は活性層に相当するもので、アンドープZnOの替わりにMQW活性層としても良い。MQW活性層とする場合は、例えば、障壁層MgZnOと井戸層ZnOを交互に積層した多重量子井戸構造に形成する。また、アンドープZnO層2とZnO基板1との間にn型MgZnO層、又はアンドープMgZnO層上にn型MgZnO層を積層した積層体を挿入しても良い。n型MgZnO層のドナー不純物としてはGa(ガリウム)等が用いられる。
共ドープ層である共ドープMgZnO層3は、単層でも良いが、複数のMgZnO膜等を積層した積層体であっても良い。図2に、アンドープZnO層2上に多層膜構造の共ドープ積層体31が形成されている場合を示す。本実施例では、共ドープ積層体31は、複数のMgZnO膜が積層された多層膜構造となっている。図2に示されるように、第1MgZnO膜31bと第2MgZnO膜31aとが交互に繰り返し積層されている。また、共ドープするアクセプタ元素には、例えば窒素を、ドナー元素には、例えばガリウムを用いた場合を示している。ここで、第1MgZnO膜31bのMg含有比率と第2MgZnO膜31aのMg含有比率とは同じであっても良いし、異なる比率であっても良い。さらに、最下層の31bから最上層の31bまですべてMgの含有比率が異なっていても良いし、同じであっても良い。
第1MgZnO膜31bと第2MgZnO膜31aには、図2の右側に示すように、アクセプタ不純物となる窒素ドープ量は、共ドープ積層体31を構成する全ての膜で一定になるように形成されている。このように窒素ドープ量を一定にすることは、必ずしも必要でないが、製造上、最も管理しやすい。アクセプタ不純物を変える場合は、別層として成長させることが望ましい。一方、ドナー不純物となるGaは、高濃度にドープされた第2MgZnO膜31aと低濃度にドープされた第1MgZnO膜31bとが交互に繰り返されている。すなわち、ドナー不純物濃度だけが変調された膜が積層方向に形成されている。
ドナー不純物濃度の変調で、最も簡単な方法としては、第2MgZnO膜31aをGaのドープ層、第1MgZnO膜31bをGaのアンドープ層とすることである。この場合には、共ドープ膜は第2MgZnO膜31aのみとなる。また、Gaのドープ層とアンドープ層の組み合わせではなく、ドープ層同士の組み合わせとし、例えば、ドナー不純物が高濃度にドープされた膜を31aとし、低濃度にドープされた膜を31bとしても良い。
図2の共ドープ積層体31を、Gaのドープ層である第2MgZnO膜31aと、Gaのアンドープ層である第1MgZnO膜31bとの繰り返しとした場合、共ドープ積層体31におけるガリウム不純物平均濃度MNは以下のように表わされる。第2MgZnO膜31aの膜厚をd1、第1MgZnO膜31bの膜厚をd2、第2MgZnO膜31aにおけるGaドープ濃度をN(cm−3)、第2MgZnO膜31aと第1MgZnO膜31bの繰り返し回数をnとすると、MN=(N×d1×n)/((d1+d2)×n)で表わせる。以上のように、共ドープ積層体31内でドナー不純物濃度のみを変調させることにより、共ドープ積層体31におけるアクセプタ不純物濃度をドナー不純物濃度以上に容易に構成することができる。
図1の半導体素子は、発光素子の一例であるが、共ドープMgZnO層3のように、共ドープ層をMgZn1−XOの単層とし、アクセプタ元素に窒素を、ドナー元素にガリウムを用いた場合の図1の半導体素子のエレクトロルミネッセンス測定結果を図4に示す。図4は、分光器とフォトマルチメータとを用いたエレクトロルミネッセンス測定結果である。縦軸は、通常用いられるように任意単位で表わされた発光強度を示し、横軸は波長(nm)を示す。
図4では、共ドープMgZnOのMgの含有率が26%の場合について、ガリウム濃度が0の場合(破線の曲線)と、ガリウム濃度が6×1015cm−3の場合(実線の曲線)が示されている。また、共ドープMgZnOのMgの含有率が36%で、ガリウム濃度が6×1015cm−3の場合(白丸による曲線)が示されている。上記いずれの場合も、窒素濃度は1×1019cm−3とした。
いずれの曲線も385nm付近にピークを持ち、ZnOのバンド端で発光していることがわかる。しかしながら、ガリウムを窒素に加えて共ドープした場合は、Mgの含有率にかかわらず、発光強度分布はほぼ同じものとなっているが、ガリウムをドープせずに、窒素のみをドープした場合には、Mgの含有率が同じであっても、発光強度のピークが小さくなり、発光強度は全体的にかなり低下している。このように、アクセプタ濃度が同じでも、ドナー元素も共にドープした方が輝度が向上していることがわかる。
図3は、共ドープの場合と、窒素単独ドープの場合とで、エレクトロルミネッセンス効率(EL効率)を比較したものである。共ドープの場合は、図1の構成を用い、窒素単独ドープの場合は、図1の構成で、共ドープMgZnO層3のガリウム濃度を0にして用いた。共ドープの場合は、ガリウム濃度は1×1016cm−3、窒素濃度は1×1019cm−3である。窒素単独ドープの場合の窒素濃度は、1×1019cm−3である。
いくつかの半導体素子を窒素単独ドープ場合、共ドープの場合に分けて作製したものをEL効率を測定した結果である。測定時の素子電流Iは20mAとした。また、縦軸のEL効率の単位は10/W、横軸は素子への印加電圧V(V)を示す。実線で囲まれた領域に存在するのが、共ドープされた半導体素子、破線で囲まれた領域に存在するのが窒素単独ドープされた半導体素子である。全体の傾向からもはっきりわかるが、アクセプタ濃度が同じであっても、共ドープした半導体素子のグループの方が、EL効率は良くなっている。以上の結果より、アクセプタ濃度を特に高めることなく、ホール濃度を向上させることができた。これは、ドナー元素とアクセプタ元素を共ドープすることで、アクセプタ元素のドープ時に生成される結晶欠陥が抑制されると考えられ、p型化を容易に実現できると考えられる。
図5は、共ドープの場合に、ガリウム濃度とEL強度との関係を示すものである。測定時の素子電流Iは20mAである。図1の構成で、共ドープには、窒素とガリウムを用い、窒素濃度は8×1018cm−3で固定した。ガリウム濃度によって、EL強度は変化しているが、5×1018cm−3を越えたあたりで、図のようにEL強度が0(測定できない状態)となった。しかしながら、5×1018cm−3以下のガリウムを窒素と共にドープすることで、EL強度が上昇していることがわかる。このように、共ドープ層におけるガリウム濃度を5×1018cm−3以下にすることで、半導体発光素子の場合には、発光強度を高めることができる。
図6は、窒素ドープMgZn1−XOのMg組成XとEL強度との関係を示したものである。グラフに描かれた黒丸(●)は、いくつかの測定値の平均を示し、黒丸の上下に伸ばしたバーの上限と下限は、測定値の最大と最小を示す。図6からわかるように、Mg組成を高くしていくと、EL強度は段々と上昇していくが、MgOが析出する限界、通常0.5程度(Z1の地点)までMg組成が増加すると、EL強度は低下する。したがって、MgOが析出しない程度にMg組成を高くすると、MgZnOでは輝度が上昇する。そのMg組成の限界は、図より0.45(図の破線位置)と考えられる。また、図より、EL強度がMgOの析出限界であるZ1よりも大きくなるためには、Mg組成Xが0.1以上となることが必要である。これにより、輝度を上昇させるためには、0.1≦X≦0.45の範囲が望ましい。
次に、図7に、MgZn1−XOのバンドギャップエネルギーとMg組成Xとの関係を示す。横軸がMgZn1−XOのX値を、縦軸がMgZn1−XOのバンドギャップエネルギーを示す。ところで、図1の構成では、活性層にアンドープZnO層2を用いている。一方、図6から導き出された望ましいMg組成Xの範囲は、0.1≦X≦0.45であるため、最小のX=0.1を取った場合を考える。半導体発光素子等では、バンドギャップの小さい半導体をバンドギャップの大きい半導体で挟むという構造が一般的である。
アンドープZnOは、図7ではMg組成X=0に相当し、図に示すようにZnOのバンドギャップ3.3eVに該当する。これに対してp型層となる共ドープMgZnO層3のMg組成を0.1にすると、Mg0.1ZnOのバンドギャップは、図7から約3.5eVとなる。したがって、アンドープZnO層2と共ドープMgZnO層3とのバンドギャップ差は、最低0.2eV開けておくことが望ましいことがわかる。
また、上限は、Mg組成X=0.45であるので、Mg0.45ZnOのバンドギャップは、約4.3eVである。このときのアンドープZnOと、Mg0.45ZnOとのバンドギャップ差は1eV程度になることがわかる。以上より、活性層の井戸層、すなわち、共ドープ層を除いた層のうち最も低いバンドギャップとなる第2バンドギャップよりも共ドープ層の中で最も小さなバンドギャップである第1バンドギャップの方が大きくすることが必要で、そのバンドギャップ差は0.2eV以上とすることが好ましい。この場合、図7を参照すると、例えば、2つの層のMg組成Xの差ΔXを0.1以上とすれば、バンドギャップ差を0.2eV以上にすることができる。
次に、活性層又は発光層と共ドープ層とのバンドギャップエネルギー構造例を図8に示す。図8において、LEは、共ドープ層以外の半導体層のうち最も小さいバンドギャップ(第2バンドギャップ)を構成する層、すなわち図1では、発光層又は活性層に相当するアンドープZnO層2が該当する。また、Pは、図1の共ドープMgZnO層3のように単層で構成されている構造を示し、P11〜P13、P21〜P22、P31〜P35は、図2の共ドープ積層体31のように多層構造を示す。バンドギャップ構造は、便宜のために、伝導帯におけるバンドギャップのみを示している。また、共ドープ層が、MgZn1−XOの多層で構成される場合には、図7に示すようにMgの組成Xを変化させることで、バンドギャップを変えることができる。
ここで、図8(a)は、共ドープ層が単層の場合であり、共ドープ層Pのバンドギャップが、共ドープ層の中で最も小さいバンドギャップ(第1バンドギャップ)となる。図8(b)は、共ドープ層がP11層、P12層、P13層の多層構造で構成されており、ここでは、P11層とP13層のバンドギャップが第1バンドギャップに相当する。図8(c)は、共ドープ層がP21層、P22層の多層構造で構成されており、ここでは、P21層のバンドギャップが第1バンドギャップに相当する。図8(d)は、共ドープ層がP31層、P32層、p33層、P34層、P35層の多層構造で構成されており、ここでは、P31層、P35層のバンドギャップが第1バンドギャップに相当する。
以上のように、共ドープ層は、様々に構成することができるが、第1バンドギャップが第2バンドギャップよりも大きくすることが必要であり、第1バンドギャップと第2バンドギャップとの差は0.2eV以上となることが望ましい。
次に、図1の構造の半導体素子の製造方法を説明する。成長用基板となるZnO基板1をロードロック室に入れ、水分除去のために、1×10−5〜1×10−6Torr程度の真空環境で200℃、30分間加熱する。1×10−9Torr程度の真空を持つ搬送チャンバーを経由して、液体窒素で冷やされた壁面を持つ成長室に基板を導入し、MBE法(分子線エピタキシー法)を用いてZnO系薄膜を成長させる。
Znは7Nの高純度ZnをPBN製の坩堝に入れたクヌーセンセルを用い、260〜280℃程度に加熱して昇華させることにより、Zn分子線として供給する。ワイドギャップ材料として必要なMgZnOを作製するためのMgは、6Nの高純度Mgを用い、同様の構造のセルから300〜400℃に加熱して昇華させ、Mg分子線として供給する。また、ドナー元素となるGaは、7Nの高純度Gaを用い、上記同様の構造のセルから400℃〜700℃に加熱して昇華させることにより、Ga分子線として供給する。
酸素は6NのOガスを用い、電解研磨内面を持つSUS管を通じて円筒の一部に小さいオリフィスを開けた放電管を備えたRFラジカルセルに0.1sccm〜5sccm程度で供給、100〜500W程度のRF高周波を印加してプラズマを発生させ、反応活性を上げた酸素ラジカルの状態にして酸素源として供給する。プラズマは重要で、O生ガスを入れてもZnO系薄膜は形成されない。
アクセプタ元素として、窒素を用いる場合は、酸素と同様の構造のRFラジカルセルを用い、NOガスを0.1sccm〜1sccm程度で供給、100〜500W程度のRF高周波を印加してプラズマを発生させる。しかし、チャンバーの大きさ、RFラジカルセルの大きさで条件は変わるので、必ずしも上記条件が適切であるわけではない。NOガスを用いる場合は、NOガスだけ供給しても窒素ドープMgZnOを作製することが可能である。
基板は一般的な抵抗加熱であればSiCコートしたカーボンヒータを使う。Wなどでできた金属系ヒータは酸化してしまい使えない。他にもランプ加熱、レーザー加熱などで温める方法もあるが、酸化に強ければどの方法でもかまわない。
750℃以上に加熱し、約30分、1×10−9Torr程度の真空中で加熱した後、酸素ラジカルセルとZnセルのシャッターを開けてZnO薄膜成長を開始し、アンドープZnO層2を結晶成長させる。このとき、平坦なZnO系薄膜を作製するためには、既出願の特願2007−27182にも示したように、750℃以上が必要である。
また、共ドープMgZnO層3の場合は、Mgセルのシャッターも開け、さらに、Gaセルのシャッター及び窒素ラジカルセルのシャッターも開けて薄膜成長を行う。Gaドープ量を変化させる場合はGaセル温度により制御する。
Mgの組成比率を変えるためには、Mgセル温度を変化させてMg供給量を制御する。Mg組成は、元々の亜鉛供給量/酸素供給量の供給比に依存するため、成長条件によって同じ組成を得るためのMg供給量は異なる。本実施例では、Mgセルの温度を250℃〜400℃、Mg供給量1×10−9〜1×10−7Torrの範囲で、Mg組成比率を0〜50%の範囲で変調させることができた。
次に、Ni、Auの金属膜を積層し、アニール処理を行って透明導電膜4を形成する。p電極5、n電極6を蒸着又はスパッタにより形成する。
図9に、共ドープ層を用いたHEMT(高電子移動度トランジスタ)の構造例を示す。11はMgZnO(0≦Z<1)基板、12はMgZnO(0≦X<1)層、13はMgZnO(0<Y<1)層を示す。ここで、X<Yと、上側のMgZnOの方がMg組成比率を高くして、自発分極の作用で、2次元電子ガスの発生が行われるようにしている。また、後述するように、MgZnO層13の一部を共ドープ部13aとしているために、Mg組成のX<Yの関係より、共ドープ部13aのバンドギャップがMgZnO層12よりも高くなるように形成される。
14は有機物電極であり、PEDOT:PSSで構成され、ゲート電極として作用する。また、16はソース電極、17はドレイン電極であり、いずれもInZn/Ti/Auの金属多層膜で形成される。その他の金属多層膜として、Ti/Pt/Au、Cr/Au、Cr/Pd/Au等を用いることができる。15は金属層であり、Au等で構成される。その他の金属として、Al、金属多層膜としてTi/Au、Ti/Al等を用いることができる。18は層間絶縁膜であり、SiOで構成される。その他の絶縁膜材料として、SiON、Al等を用いることができる。
また、MgZnO層13の一部はアクセプタ元素とドナー元素とが共にドープされた共ドープ部13aを構成している。共ドープ部13aは、MgZnO層13の一部に、例えば、アクセプタ元素として窒素を、ドナー元素としてガリウムをドープして形成される。2DEGは、2次元電子ガス領域(電子蓄積層)を示し、MgZnO層12とMgZnO層13の界面と図の点線で挟まれた領域を示している。ここで、ソース電極16と直下の共ドープ部13aとでソース電極部を、ドレイン電極17と直下の共ドープ部13aとでドレイン電極部を、有機物電極14と金属層15とでゲート電極部を構成している。
図10は、ゲート電極となる有機物電極14直下のMgZnO層の膜厚を薄くしたリセスゲート構造を示す。この構造では有機物電極14直下部分の2次元電子ガスのキャリア濃度を薄くし、一方、抵抗を小さくすることが必要なソース電極部直下及びドレイン電極部直下の2次元電子ガスのキャリア濃度を濃くすることができ、電極の目的に応じた設計ができる。
図11は、図9、10に示されるMgZnO層12を形成せずに、MgZnO基板11上に直接MgZnO層13を形成し、かつMgZnO基板11上の中央部にゲート電極部が直接形成された構造となっている。この構造では、有機物電極14直下部分の2次元電子ガスのキャリア濃度を0にすることができ、一方、ソース電極部直下及びドレイン電極部直下の2次元電子ガスのキャリア濃度を濃くすることができる。このように構成すれば、ノーマリーオフを容易に実現することができる。
なお、PEDOT:PSSの形成はオゾン処理して基板表面を親水化した後、スピンコートして窒素雰囲気化100〜200℃で乾燥させ、その後、有機溶剤でレジストを溶かす。このとき、PEDOT:PSSは溶剤に溶けずに残る。他の方法として、オゾン処理後に真空中で蒸着させるか、又は水に分散させたPEDOT:PSSを超音波でミスト上にして供給し、薄膜状に形成することもできる。
本発明の半導体素子の積層構造の一例を示す図である。 共ドープ層が多層構造となっている場合の構成例を示す図である。 共ドープ層を用いた場合と窒素単独ドープ層を用いた場合とのEL効率の対比を示す図である。 共ドープの場合と窒素単独ドープの場合との発光強度特性の相違を示す図である。 共ドープにおけるガリウム濃度とEL強度との関係を示す図である。 共ドープMgZnO層のMg組成とEL強度との関係を示す図である。 MgZnOのMg組成とバンドギャップエネルギーとの関係を示す図である。 活性層又は発光層と共ドープ層との間の伝導帯におけるバンドギャップ構造例を示す図である。 共ドープ層を用いたHEMTの一構成例を示す図である。 共ドープ層を用いたHEMTの一構成例を示す図である。 共ドープ層を用いたHEMTの一構成例を示す図である。
符号の説明
1 ZnO基板
2 アンドープZnO層
3 共ドープMgZnO層
4 透明導電膜
5 p電極
6 n電極

Claims (13)

  1. アクセプタ元素とドナー元素を共に含む共ドープ層を少なくとも1層と、該共ドープ層以外の半導体層とが積層され、前記共ドープ層の中で最も小さいバンドギャップとなる第1バンドギャップが、前記共ドープ層以外の半導体層中で最も小さいバンドギャップとなる第2バンドギャップよりも大きいことを特徴とする半導体素子。
  2. 前記共ドープ層においては、アクセプタ濃度はドナー濃度以上の濃度であることを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
  3. 前記共ドープ層のドナー濃度は、アクセプタ濃度よりも1桁以上低いことを特徴とする請求項2記載の半導体素子。
  4. 前記アクセプタ濃度が5×1018cm−3以上、ドナー濃度が1×1015cm−3〜1×1018cm−3の範囲であることを特徴とする請求項3記載の半導体素子。
  5. 前記共ドープ層が積層体で構成されており、前記アクセプタ濃度及びドナー濃度は該積層体の平均アクセプタ濃度及び平均ドナー濃度であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子。
  6. 前記第2バンドギャップを有する半導体層が発光層であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
  7. 前記第1バンドギャップと第2バンドギャップとの差は0.2eV以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体素子。
  8. 前記半導体素子が酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体素子。
  9. 前記酸化物はZnO化合物であり、前記共ドープ層はMgZn1−XO(0<X≦1)であることを特徴とする請求項8記載の半導体素子。
  10. 前記MgZn1−XOの組成Xが0.1〜0.45の範囲で構成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体素子。
  11. ドナー元素はIII族、アクセプタ元素はV族又はI族で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の半導体素子。
  12. 前記アクセプタ元素は窒素であり、前記ドナー元素はガリウムであることを特徴とする請求項11記載の半導体素子。
  13. 前記共ドープ層のうちいずれか1層が外部電極と接触していることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の半導体素子。
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