JP2010182490A - 発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】低電圧で駆動可能であり、且つ、製造安定性に優れた発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子は、I−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層と、が隣接して積層された構成を有する。上記発光体層は、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いことを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】発光素子は、I−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層と、が隣接して積層された構成を有する。上記発光体層は、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、自発光型の発光素子に関する。
近年、自発光型の発光素子の研究が行われている。自発光型の発光素子としては、例えば、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)素子、発光ダイオード(LED)素子,有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等が挙げられる。
無機EL素子は、例えば、絶縁体層、発光体層、及び絶縁体層が積層され、これらが2つの電極で挟まれた構成を有する。発光体層は、例えば、ZnSを発光材料として、発光色の決定要因となる副成分(例えば黄色発光を行う場合はマンガン(Mn))を発光材料に対して0.1〜1モル%添加したものが用いられている。そして、無機EL素子では、交流の高電圧を印加することにより、発光体層に流れる電流を利用して発光を行う。
発光ダイオード素子は、例えば、p型半導体、真性半導体、及びn型半導体が積層され、これらが陽極及び陰極で挟まれた構成を有する。これらの半導体は、例えば、GaN等の高品質結晶からなる直接遷移型半導体である。
有機EL素子は、有機発光層が陽極及び陰極で挟まれた構成を有する。
発光ダイオード素子、有機EL素子共に、陽極側から注入された正孔と陰極側から注入された電子とが発光層で再結合して発光を行う。
また、特許文献1には、基板上に陽極、カルコパイライト層、ドナーアクセプター対発光体層、及び陰極が順に積層された構成を有し直流駆動を行う発光素子が開示されている。
ところで、発光素子の駆動方法は、低電圧での直流駆動が好ましく、これにより、駆動部品のコストを抑制することができる。
また、発光素子は、無機化合物などの安定性に優れる材料で構成可能であることが好ましく、特に、多結晶や非晶質の材料であることが好ましい。無機化合物などの安定性に優れる材料で発光素子を構成することにより、製造コストを抑制することができる。また、多結晶や非晶質の材料で発光素子を構成することにより、大面積のディスプレイの製造を容易にすることができる。
本発明の目的は、低電圧で駆動可能であり、製造安定性に優れた発光素子を提供することである。
本発明の発光素子は、I−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層と、が隣接して積層された構成を有する発光素子であって、
上記発光体層は、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いことを特徴とする。
上記発光体層は、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いことを特徴とする。
上記の構成によれば、発光素子が、I−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層と、が隣接して積層された構成を有するので、無機化合物で構成されることとなり、優れた安定性を得ることができる。また、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いので、発光体層全体としての抵抗を小さく構成することができ、発光素子を低電圧で駆動することが可能となる。
上記発光体層におけるドナーのモル濃度のアクセプターのモル濃度に対する比が2〜5であることが好ましい。
また、上記発光体層は、ドナー及びアクセプターの濃度の和が発光材料の濃度に対して1モル%以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、ドナー及びアクセプターの濃度の和が発光材料の濃度に対して1モル%以下であるので、ドナー及びアクセプターの存在によって濃度消光が起こって発光材料の結晶性が低下するのを防ぐことができる。
また、上記カルコパイライト層におけるカルコパイライト化合物は、I族元素のIII族元素に対する組成比が1.1〜2であることが好ましい。
上記の構成によれば、カルコパイライト化合物のI族元素のIII族元素に対する組成比が1.1〜2であるので、カルコパイライト化合物にp型半導体としての導電性が付与され、その結果、陽極から発光体層への正孔注入効率が高められる。
上記カルコパイライト層はCuAlS2、CuGaS2及びCuAlO2のいずれかを含んでいてもよい。
上記発光材料はZnSであってもよい。
上記ドナーはAu,Ag,Cu及びNのいずれかを含んでいてもよい。
上記アクセプターはAl,Ga,F及びClのいずれかを含んでいてもよい。
本発明の発光素子によれば、I−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層と、が隣接して積層された構成を有するので、発光素子が無機化合物で構成されることとなり、優れた安定性を得ることができ、製造コストを抑制することができる。また、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いので、発光体層全体としての抵抗を小さく構成することができ、発光素子を低電圧で駆動することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
<発光素子>
図1は、実施形態1にかかる発光素子10を示す。この発光素子10は、例えば、テレビや携帯電話、カーナビ等のディスプレイに用いられるものである。
図1は、実施形態1にかかる発光素子10を示す。この発光素子10は、例えば、テレビや携帯電話、カーナビ等のディスプレイに用いられるものである。
発光素子10は、TFT基板11上に陽極12が設けられ、陽極12上にカルコパイライト層13及び発光体層14が順に積層され、さらに発光体層14上に陰極15が設けられた構成を有する。
TFT基板11は、ガラス基板又はプラスチック基板上にTFTが設けられ、そのTFTを覆うようにさらに平坦化膜が成膜されて構成されている。TFT基板11は、例えば厚さが5〜10μmである。
陽極12は、発光体層14に正孔を注入する機能を有する。陽極12を構成している材料としては、カルコパイライト化合物の荷電子帯に近い、仕事関数の大きな材料であることが好ましく、例えば、ITO、Pt,Ni,Au,Cu,Pd等が挙げられる。陽極12は、例えば厚さが30〜200nm、及び単位面積あたりの抵抗が20Ω/m2以下である。
カルコパイライト層13は、陽極12から発光体層14に正孔が注入される正孔注入効率を高める機能を有する。カルコパイライト層13は、少なくともI−III−VI2化合物を含んだ多結晶質又は非晶質の材料で形成されている。
I−III−VI2化合物を構成するI族元素としては、例えば、Cu,Ag,Au等のI族遷移金属元素が挙げられる。
I−III−VI2化合物を構成するIII族元素としては、例えば、Al、Ga、In等の金属元素が挙げられる。
I−III−VI2化合物を構成するVI族元素としては、例えば、S、O、Se、Te等が挙げられる。
そして、I−III−VI2化合物としては、例えばCuAlS2、CuGaS2、CuAlO2等が挙げられる。
I−III−VI2化合物は、I族元素のIII族元素に対する組成比が1.1〜2であることが好ましく、1.2〜1.5であることがより好ましく、1.2〜1.3であることがさらに好ましい。これにより、I−III−VI2化合物がp型半導体としての導電性を有することとなり、結果として、陽極12からの発光体層14への正孔注入効率が高められる。
なお、I−III−VI2化合物のバンドギャップエネルギーにより放出される光の波長が決定される。すなわち、I−III−VI2化合物の種類によって発光色が決まる。例えば、I−III−VI2化合物がCuAlS2である場合、バンドギャップエネルギーは約20℃において3.5eVであり、放出する光の波長は354nmである。また、I−III−VI2化合物がCuGaS2である場合、バンドギャップエネルギーは約20℃において2.4eVであり、放出する光の波長は516nmである。
発光体層14は、陽極12から注入された正孔と陰極15から注入された電子とが再結合する場であり、再結合のエネルギーを光のエネルギーに変換する機能を有する。発光体層14は、発光材料にドナー及びアクセプターが付与された多結晶質又は非晶質の材料で形成されている。
発光材料は、II−VI型の化合物である。II−VI型の化合物としては、例えば、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、ZnO、CdO等が挙げられる。これらのうち、バンドギャップが大きく可視光の発光を容易に得ることができる観点から、ZnSを発光材料とすることが好ましい。ZnSのバンドギャップエネルギーは3.7eVである。
なお、発光材料として、II−VI型の化合物以外に、例えばGaN、InN等のIII−V族化合物等が含まれていてもよい。
発光体層14に含まれるドナーとしては、例えば、F、Cl,Br,I等のハロゲン元素やAl、Ga、In等の金属元素が挙げられる。
発光体層14に含まれるアクセプターとしては、例えば、Cu,Ag,Au等のI族遷移金属元素やN,P,As等のIII族元素等が挙げられる。
発光体層14のドナー及びアクセプターとしては、カルコパイライト層13を形成するカルコパイライト化合物の構成元素と共通する材料を選択することが好ましい。これにより、発光素子10の製造工程において、カルコパイライト化合物を熱処理する際に物質拡散することによってドナー及びアクセプターを発光体層14にドープすることが可能となる。
発光体層14の副成分(ドナー及びアクセプター)の濃度は発光材料の濃度に対して0.0001〜1モル%であることが好ましく、0.001〜0.01モル%であることがより好ましい。副成分の濃度が0.0001モル%未満の場合には、副成分の効果が十分に表れない虞がある。一方、副成分の濃度が1モル%よりも多い場合には、濃度消光が起こって発光材料の結晶性が低下してしまう虞がある。
発光体層14におけるドナーのモル濃度は、アクセプターのモル濃度よりも高い。ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いので、発光体層14がn型半導体としての導電性を有することとなる。また、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いので、発光体層14全体としての抵抗を小さくすることができ、これにより、20V程度の低い電圧で発光素子10を駆動することが可能となる。
発光体層14におけるドナーのモル濃度のアクセプターのモル濃度に対する比は、2〜5であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。比の値が2未満の場合には、発光体層14が高抵抗になって導電性が得られなくなる虞がある。一方、比の値が5よりも大きい場合には、結晶性を低下させる原因となる。
カルコパイライト層13と発光体層14とは、高輝度の発光を得る観点から、結晶構造の格子定数が近い値の組合せとなるように選択されることが好ましい。例えば、発光体層14の発光材料がZnS(格子定数0.541nm)のとき、カルコパイライト層13を構成するカルコパイライト化合物としては、例えば、CuAlS2(格子定数0.531nm)、CuAlSe2(格子定数0.560nm)、CuGaS2(格子定数0.535nm)がある。また、AgAlS2(格子定数0.570nm)、AgAlSe2(格子定数0.596nm)、AgAlTe2(格子定数0.630nm)、AgGaS2(格子定数0.574nm)等が挙げられる。
陰極15は、発光体層14に電子を注入する機能を有する。陰極15を構成する材料としては、仕事関数の小さい材料であることが好ましく、例えば、厚さ100nm程度のCu−Al合金と厚さ500nm程度のAl電極との積層体等が挙げられる。
陰極15表面上には、埃等が混入することにより発光特性が低下するのを防止するために保護膜(図示せず)が設けられていてもよい。
封止部材は、埃等が混入することにより発光特性が低下するのを防止するために、電極や発光層等を覆ってTFT基板11を封止するように設けられていてもよい。
以上の構成の発光素子10は、両電極間に直流電圧を印加すると、陽極12から正孔(ホール)がカルコパイライト層13を経て発光体層14に注入されると共に、陰極15から電子が発光体層14に注入され、正孔と電子が発光体層14で再結合する。このとき、半導体のバンドギャップのエネルギーに対応した波長の発光が得られる。この発光が外部に出射され、画素全体として所定の画像を表示することとなる。
なお、ここでは、TFT基板11側(図1における矢印の方向)から発光を取り出すボトムエミッション型の発光素子であるとしたが、例えば、発光層の基板側を光反射性の材料で構成すると共に発光層の陰極側を光透過性又は光半透過性の材料で構成して陰極側から発光を取り出す構造の発光素子であってもよい。
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子10の製造方法について説明する。
次に、発光素子10の製造方法について説明する。
まず、TFT基板11上に公知の方法によって陽極12を形成する。例えば、TFT基板11上にスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾル−ゲル法等を用いてITO膜を成膜し、陽極12とする。
次に、例えば抵抗加熱蒸着や電子ビーム蒸着(EB蒸着)等の真空蒸着法、スパッタリング法等を用いてカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層13を形成する。
ここで、カルコパイライト化合物は、例えば、固相法や液相法(共沈法)、噴霧熱分解法、複分解法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法、凍結乾燥法等の公知の方法によって調製することができる。
具体的には、例えばカルコパイライト化合物のI族元素がCuであってIII族元素がAlである場合、CuSとGa2S3とをそれぞれ独立した放電出力でスパッタリングを行い、CuSとGa2S3との混合膜を形成する。そして、この混合膜を、例えば400〜600℃及び3×10−4〜3×10−1Paの条件の下で0.5〜3時間真空アニールすることにより、カルコパイライト型構造を有するカルコパイライト化合物を得ることができる。
このカルコパイライト化合物は、好ましくは、I族元素のIII族元素に対する組成比が1.1〜2である。例えば、I族元素がCuであってIII族元素がAlである場合、CuSとGa2S3とのスパッタリングのスパッタ速度の比を制御することによって、I族元素とIII族元素との組成比を調節することができる。例えば、CuSとGa2S3のスパッタ速度の比を2:1程度にすると、I族元素のIII族元素に対する組成比を1:1とすることができる。
なお、カルコパイライト化合物を構成するVI族元素をS原子とした場合には、還元雰囲気又は硫化水素雰囲気の下でカルコパイライト層13を作製する必要があるが、VI族元素をO原子とした場合には、大気雰囲気下でカルコパイライト層13を作製することができるので、製造工程が容易になる。
次いで、例えば抵抗加熱蒸着又は電子ビーム蒸着(EB蒸着)等の真空蒸着法、スパッタリング法等を用いて発光体層14を形成する。例えば、発光材料をZnS、ドナーをCl,及びアクセプターをCuとして発光体層14を形成する場合、CuCl2とZnSとの二元同時蒸着を行う。
この発光体層14は、発光材料の濃度に対する副成分(ドナー及びアクセプター)の濃度が1モル%以下である。また、この発光体層14に添加されている副成分は、ドナーのモル濃度のアクセプターのモル濃度に対する比が、2〜5である。
例えば、発光材料をZnS、ドナーをCl,及びアクセプターをCuとして発光体層14を形成する場合、CuCl2の蒸着源の加熱温度を調整することによって、Cu及びClのそれぞれのモル濃度を制御することができる。例えば、CuCl2の蒸着源の加熱温度を250℃程度にした場合、Cu及びClのそれぞれの濃度は、約0.05モル%及び約0.1モル%となる。
次に、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等によって陰極15を形成する。
最後に、陽極12、カルコパイライト層13、発光体層14、及び陰極15がが形成されたTFT基板11を、接着剤を用いて封止材料で封止する。こうして発光素子10が完成する。
<本実施形態の効果>
本実施形態の発光素子10は、発光素子10がI−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層13と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層14と、が隣接して積層された構成を有するので、優れた安定性を得ることができる。しかも、発光素子10が多結晶や非晶質の材料で構成されているので、大画面のディスプレイを容易に製造することができる。
本実施形態の発光素子10は、発光素子10がI−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層13と、II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層14と、が隣接して積層された構成を有するので、優れた安定性を得ることができる。しかも、発光素子10が多結晶や非晶質の材料で構成されているので、大画面のディスプレイを容易に製造することができる。
また、発光材料に添加されたドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いので、発光体層14全体としての抵抗を小さく構成することができ、発光素子10を低電圧で駆動することが可能となる。ドナー及びアクセプターの濃度の和が発光材料の濃度に対して1モル%以下であるので、ドナー及びアクセプターの存在によって濃度消光が起こって発光材料の結晶性が低下するのを防ぐことができる。
さらに、カルコパイライト層13におけるカルコパイライト化合物は、I族元素のIII族元素に対する組成比が1.1〜2であるので、カルコパイライト化合物にp型半導体としての導電性が付与され、その結果、陽極12から発光体層14への正孔注入効率が高められる。
以下の実施例、比較例及び作製例1〜9を作製した。
<実施例>
本実施形態に従って発光素子を作製し、これを実施例とした。
本実施形態に従って発光素子を作製し、これを実施例とした。
まず、ガラス基板上にITO膜からなる陽極を形成した。
次に、陽極上にCuSとAl2S3の2つのターゲットをそれぞれ独立した放電出力でスパッタリングして、CuSとAl2S3との混合膜を作製した。この混合膜を、600℃の下で真空アニール処理し、CuAlS2のカルコパイライト型構造のものとした。このとき、各ターゲットのスパッタ速度の比は、CuS/Al2S3=1/2であり、アニールにより得られたカルコパイライト化合物中のCuとAlのモル濃度の比はCu/Al=1.1であった。また、カルコパイライト層は、電気抵抗率が7Ωcmであった。
そして、カルコパイライト層上に発光体層を形成した。発光体層として、発光材料をZnS、添加物をCu及びClとする層をEB蒸着法を用いて形成した。このとき、CuCl2とZnSとを2元同時蒸着で蒸着することによって添加物であるCuとClの濃度を調整した。具体的には、CuCl2の蒸着源の加熱温度を約250℃に制御し、ZnSに対して0.01〜0.5モル%の濃度が蒸着されるようにした。また、蒸着源の温度を変更することによって、発光体層がClのモル濃度のCuのモル濃度に対する比が2となるように制御を行った。
さらに、発光体層を覆うようにCu−Al合金からなる膜及びAl膜を積層して陰極とした。
実施例にかかる発光素子は、10V及び5mAの直流電圧を印加すると、0.5mm平方の面積において、5cd/m2の発光を示した。
<比較例>
比較例として、基板上に、インジウム電極、n型半導体であるGaP膜、ClやAl等を添加してn型半導体としたZnS膜、ZnS膜、及びAu電極を積層し、p型を含まない発光素子を作製した。
比較例として、基板上に、インジウム電極、n型半導体であるGaP膜、ClやAl等を添加してn型半導体としたZnS膜、ZnS膜、及びAu電極を積層し、p型を含まない発光素子を作製した。
比較例にかかる発光素子は、30V及び0.2mAの直流電圧を印加すると、0.5mm平方の面積において、1cd/m2の発光を示した。
(実施例・比較例の考察)
以上の実施例及び比較例の結果によれば、本実施形態の構成を有する実施例では、p型半導体であるカルコパイライト層を含まない比較例と比較して、低電圧でも高い発光を取り出すことが可能であると分かる。
以上の実施例及び比較例の結果によれば、本実施形態の構成を有する実施例では、p型半導体であるカルコパイライト層を含まない比較例と比較して、低電圧でも高い発光を取り出すことが可能であると分かる。
<作製例1・2>
作製例1・2として、次のZnS膜を作製した。まず、ガラス基板上にITO電極を成膜し、ITO電極上に、n型半導体であるZnS膜を成膜した。このZnS膜には、EB蒸着法を用いてCuCl2とZnSとを二元同時蒸着することによって、Cu及びClを副成分として添加した。そして、ZnS膜上にAl膜電極を成膜した。
作製例1・2として、次のZnS膜を作製した。まず、ガラス基板上にITO電極を成膜し、ITO電極上に、n型半導体であるZnS膜を成膜した。このZnS膜には、EB蒸着法を用いてCuCl2とZnSとを二元同時蒸着することによって、Cu及びClを副成分として添加した。そして、ZnS膜上にAl膜電極を成膜した。
これらのうち、蒸着源を250℃に加熱して成膜速度の比を調整し、Clのモル濃度のCuのモル濃度に対する比が2となるようにしたものを作製例1とした。また、蒸着源を280℃に加熱して成膜速度の比を調整し、Clのモル濃度のCuのモル濃度に対する比が1となるようにしたものを作製例2とした。
(I−V特性の測定)
作製例1及び2について、両電極間に電圧を印加してそのときに電極間に流れる電流を測定した。
作製例1及び2について、両電極間に電圧を印加してそのときに電極間に流れる電流を測定した。
図2は、印加する電圧を変化させたときの電流の変化を表すグラフである。図2より、CuとClのモル濃度が等しい作製例2は電圧を印加しても絶縁体のように高い抵抗値を示す。一方、Clのモル濃度がCuよりも高い作製例1によれば、20Vより小さい電圧を掛けることにより抵抗が小さくなり、ダイオード性を示すことが分かる。
<作製例3・4>
ガラス基板上にAlを添加したZnS膜を形成し、これを作製例3とした。このZnS膜は、厚さが900nmであった。
ガラス基板上にAlを添加したZnS膜を形成し、これを作製例3とした。このZnS膜は、厚さが900nmであった。
また、ガラス基板上にN及びAlを添加したZnSを形成し、これを作製例4とした。このZnS膜は、厚さが500nmであった。なお、作製例4のZnS膜については、本実施形態の発光体層に準ずる組成のものである。
(二次イオン質量分析計による測定)
上記作製した作製例3・4について、二次イオン質量分析計(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer:以下、「SIMS」という)を用いて組成物の分析を行った。
上記作製した作製例3・4について、二次イオン質量分析計(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer:以下、「SIMS」という)を用いて組成物の分析を行った。
ここで、SIMSは、試料を構成する原子の組成比を知ることが可能な測定装置である。SIMSでは、図3に示すように、まず試料に一次イオンビーム(図3ではCsイオン)を照射し、そのエネルギーを受け取った試料内の原子の一部が二次イオンとして飛び出す。この二次イオンを電流として測定することにより、イオン数を知ることができる。
作製例3の測定結果を図4に、作製例4の測定結果を図5に示す。
図4によれば、Znイオン及びSイオンはそれぞれカウント数が70000〜80000カウント/秒(cps)程度及び5000カウント/秒程度で測定されており、一方、Alイオンは、10カウント/秒程度で測定されていることが分かる。なお、測定法上の問題により、Sイオンは実際よりも少なく検出されることが知られており、ここでの試料がZnSであることから、ZnイオンもSイオンも共に、70000〜80000カウント/秒で検出されるとみなすことができる。
これらのカウント数より、副成分としてのAlは、主成分のZnSに対して1/8000〜1/7000のモル比で添加されていることが分かる。つまり、ここでの副成分のモル濃度は0.014モル%である。
図5によれば、副成分としてAl及びNを添加した場合には、Alイオン及びNイオンのカウント数が共に0.01カウント/秒程度であり、副成分としてAlのみを添加した作製例3と比較して非常に小さい値であることが分かる。
<作製例5〜9>
作製例5〜9として、次のCuGaS2膜を作製した。まず、ガラス基板上にITO電極を成膜し、そして、ITO電極上に、厚さ500nmのCuGaS2膜を成膜した。このCuGaS2膜には、CuSとGa2S3とを独立した放電出力でスパッタリングすることによって、CuS及びGa2S3の混合膜を形成した。そして、これを600℃で2時間真空アニールし、カルコパイライト構造のCuGaS2膜とした。さらに、CuGaS2膜上にAl膜電極を成膜した。
作製例5〜9として、次のCuGaS2膜を作製した。まず、ガラス基板上にITO電極を成膜し、そして、ITO電極上に、厚さ500nmのCuGaS2膜を成膜した。このCuGaS2膜には、CuSとGa2S3とを独立した放電出力でスパッタリングすることによって、CuS及びGa2S3の混合膜を形成した。そして、これを600℃で2時間真空アニールし、カルコパイライト構造のCuGaS2膜とした。さらに、CuGaS2膜上にAl膜電極を成膜した。
なお、CuS及びGa2S3のスパッタリングは、真空装置に硫化水素ガスを流した雰囲気の下で行った。これらのうち、CuSとGa2S3とのスパッタ速度の比を1:2として行ったものを作製例5、1:1として行ったものを作製例6、2:1として行ったものを作製例7、及び3:1として行ったものを作製例8とした。なお、作製例7のCuSとGa2S3とのスパッタ速度の比を2:1とした場合、形成されるカルコパイライト構造のCuGaS2膜のCuとGaとの組成比が約1:1であるとみなすことができる。
さらに、CuGaS2膜の代わりにCuAl2O4膜を設けたことを除いて作製例6と同一の構成のCuAl2O4膜を作製し、これを作製例9とした。
なお、Cu2O及びAl2O3のスパッタリングは、大気雰囲気の下で行った。このときのCu2OとAl2O3とのスパッタ速度の比は、1:1であった。
(I−V特性の測定)
上記作製した作製例5〜8について、それぞれの両電極に電圧を印加してそのときの電圧を変量し、流れる電流の測定を行った。これらの結果を図6に示す。
上記作製した作製例5〜8について、それぞれの両電極に電圧を印加してそのときの電圧を変量し、流れる電流の測定を行った。これらの結果を図6に示す。
図6によれば、CuGaS2膜のCuのGaに対する組成比が1より小さい作製例5及び6では、CuGaS2膜のCuのGaに対する組成比が1以上である作製例7及び8と比較して流れる電流の値が小さい、すなわち、抵抗値が大きいことが分かる。
(X線回折(XRD)装置による測定)
上記作製した作製例7〜9について、X線回折(X-ray Diffraction;XRD)装置を用いて結晶構造の解析を行った。
上記作製した作製例7〜9について、X線回折(X-ray Diffraction;XRD)装置を用いて結晶構造の解析を行った。
CuSとGa2S3とのスパッタ速度の比を2:1とした作製例7について、CuGaS2カルコパイライト化合物についてXRD装置を用いて結晶構造の解析を行った。このときのXRDスペクトルを図7に示す。
また、CuSとGa2S3とのスパッタ速度の比を3:1とした作製例8について、CuSとGa2S3との混合膜の成膜直後と、その混合膜を真空アニールした後のCuGaS2カルコパイライト化合物の膜のそれぞれについて、XRD装置を用いて結晶構造の解析を行った。このときのXRDスペクトルを図8に示す。なお、図8上方のスペクトルがアニール前の混合膜を、下方のスペクトルがアニール後のカルコパイライト膜を示す。
さらに、酸化物であるCuGaO2薄膜を作製した作製例9について、XRD装置を用いて結晶構造の解析を行った。このときのXRDスペクトルを図9に示す。
図7によれば、回折角30°近傍にCuGaS2の(112)面のスペクトルが観察される。
図8によれば、アニール前のスペクトルによれば回折角33°近傍にCu2Sによるピークが見られる。一方、アニール後のスペクトルによれば回折角33°近傍のピークは見られず、回折角28°の近傍にピークが現れている。これは、硫化水素雰囲気下でスパッタリングを行ったことにより生じたCuS2によるピークであると考えられる。
図9によれば、回折角36°近傍にCuAl2O4の(101)面によるピークが検出されている。これにより、大気雰囲気の下で容易にカルコパイライト化合物膜を成膜することが可能であることが分かる。また、大気雰囲気下でカルコパイライト化合物膜を成膜することにより、図8で観測されたようにCuS2等の不純物が生成されることがない点では、酸化物のカルコパイライト化合物膜の成膜が好ましいことが分かる。
本発明は、自発光型の発光素子について有用である。
10 発光素子
13 カルコパイライト層
14 発光体層
13 カルコパイライト層
14 発光体層
Claims (8)
- I−III−VI2型のカルコパイライト化合物からなるカルコパイライト層と、
II−VI型の発光材料にドナー及びアクセプターが付与された発光体層と、
が隣接して積層された構成を有する発光素子であって、
上記発光体層は、ドナーのモル濃度がアクセプターのモル濃度よりも高いことを特徴とする発光素子。 - 請求項1に記載された発光素子において、
上記発光体層におけるドナーの濃度のアクセプターの濃度に対する比が2〜5であることを特徴とする発光素子。 - 請求項1又は2に記載された発光素子において、
上記発光体層は、ドナー及びアクセプターの濃度の和が発光材料の濃度に対して1モル%以下であることを特徴とする発光素子。 - 請求項1〜3のいずれかに記載された発光素子において、
上記カルコパイライト層におけるカルコパイライト化合物は、I族元素のIII族元素に対する組成比が1.1〜2であることを特徴とする発光素子。 - 請求項1〜4のいずれかに記載された発光素子において、
上記カルコパイライト層が、CuAlS2、CuGaS2及びCuAlO2のいずれかを含んでいることを特徴とする発光素子。 - 請求項1〜5のいずれかに記載された発光素子において、
上記発光材料が、ZnSであることを特徴とする発光素子。 - 請求項1〜6のいずれかに記載された発光素子において、
上記アクセプターが、Au,Ag,Cu及びNのいずれかを含んでいることを特徴とする発光素子。 - 請求項1〜7のいずれかに記載された発光素子において、
上記ドナーが、Al,Ga,F及びClのいずれかを含んでいることを特徴とする発光素子。
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JP2009023689A JP2010182490A (ja) | 2009-02-04 | 2009-02-04 | 発光素子 |
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WO2014002904A1 (ja) * | 2012-06-28 | 2014-01-03 | シャープ株式会社 | 金属酸化物、金属酸化物半導体膜、エレクトロルミネセンス素子および表示装置 |
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2009
- 2009-02-04 JP JP2009023689A patent/JP2010182490A/ja active Pending
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