JP2009086284A - 平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、(A)一般式(I)で表される構造単位を有するポリマー、(B)一般式(II)で表される構造単位を有するポリマー、及び(C)光を吸収して熱を発生する化合物を含有してなり、露光又は加熱によりアルカリ現像液に対する溶解性が向上するポジ型記録層を有することを特徴とする。(一般式(I)中、R1〜R3は水素原子又はアルキル基を表し、R4及びR5はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基などを表す。一般式(II)中、RIIは水素原子又はアルキル基を表し、Qは芳香環構造を含む一価の置換基を表す。)
【選択図】なし
Description
しかし、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料においては、UV露光により製版するポジ型平版印刷版材料と比べ、バインダー樹脂として、アルカリ現像液等の溶剤に対する溶解性の高い樹脂にせざるを得ないため、印刷中にインクの付きが悪くなった時に用いるプレートクリーナーなどの薬品に対する耐性が低く、該クリーナーで版面を拭いた時に感光性組成物が溶出してしまう問題があった。
即ち、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(A)下記一般式(I)で表される構造単位を有するポリマー(以下、適宜、(A)特定ポリマーと称する。)、(B)下記一般式(II)で表される構造単位を有するポリマー(以下、適宜、(B)特定ポリマーと称する。)、及び(C)光を吸収して熱を発生する化合物を含有してなり、露光又は加熱によりアルカリ現像液に対する溶解性が向上するポジ型記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
即ち、本発明の平版印刷版原版は、前記一般式(I)で表される構造単位を含む重合体である(A)特定ポリマーと前記一般式(II)で表される構造単位を含む重合体である(B)特定ポリマーと(C)光を吸収して熱を発生する化合物とを含有するポジ型記録層を有することを特徴とするものである。
また、本発明においては、(B)前記一般式(II)で表される構造単位におけるQが下記一般式(II−1)で表される構造を有する置換基であることが好ましい態様である。
R7及びR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基を表す。
式中、R6、R9〜R11から選ばれる少なくとも2個の基、R7及びR8は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
本発明の平版印刷版原版においては、そのポジ型記録層に含まれる(A)特定ポリマーは、一般式(I)で表される構造単位を含むことで、耐溶剤性や、耐アルカリ現像性に優れた皮膜を形成しうるが、露光により(例えば、赤外線の照射)ポジ型記録層が高温に達した時、(C)光を吸収して熱を発生する化合物などの低分子化合物の飛散(アブレーション)を押さえ込めるほどの皮膜性を形成しうる特性を有していない。一方、(B)特定ポリマーも、耐溶剤性、耐アルカリ性を得るために有効であり、ノボラック樹脂の骨格を有し、且つ、側鎖にアルカリ可溶性に優れた置換基を有するために、現像性に優れるものではあるが、アブレーションの抑制の点では、(A)特定ポリマーと同様に不十分であった。
本発明者が鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、(A)特定ポリマーと(B)特定ポリマーとの両方を使用することにより、アブレーションの抑制効果が飛躍的に向上することが判明した。この理由は定かでないが、両ポリマー間で何らかの相互作用が形成され、各々を単独で使用した場合よりも非常に緻密な皮膜を形成することが可能となり、赤外線レーザ露光により局所的な発熱が生じ、記録層が高温に達した際においてもその優れた膜性により、(C)光を吸収して熱を発生する化合物などの低分子化合物の飛散、即ち、アブレーションの発生が効果的に抑制されるものと考えられる。
このため、このようなポジ型記録層を有する平版印刷版原版は、未露光部は、耐アルカリ現像液性、耐薬品性に優れた強固な皮膜を維持するとともに、例えば、赤外線レーザ露光部においては、アブレーションの発生が抑制され、更に、付加的な効果として、相互作用が解除すると、(B)特定ポリマーが有するアルカリ可溶性が発現されて露光部の感光層が速やかに除去され、優れた画像形成性をも有するものと考えられる。
つまり、本発明によれば、耐刷性、耐薬品性に優れ、露光におけるアブレーションの発生が抑制される平版印刷版用原版を提供することができる。
以下、本発明の平版印刷版原版のポジ型記録層(以下、単に「記録層」と称する場合がある。)に含まれる各成分について順次説明する。
なお、R4及びR5により形成される環構造としては、少なくとも炭素原子数5の環構造が好ましい。
(A)特定ポリマーにおける一般式(I)で表される構造単位の含有量は、3〜75モル%が好ましく、4〜60モル%がより好ましく、5〜50モル%が更に好ましい。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準サンプルとして、ゲルパーメーションクロマトグラフィーを使用する方法で測定することができる。
本発明における(A)特定ポリマーの含有量は、現像性とアブレーションの発生抑制の観点から、ポジ型記録層を構成する組成物の全固形分に対して、5〜80質量%の範囲であることが好ましく、20〜70質量%の範囲であることがより好ましい。
(B)特定ポリマーは、下記一般式(II)で表される構造単位を有するポリマーである。
ここで、RIIは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは、水素原子、メチル基、又は、エチル基であり、水素原子であることがさらに好ましい。
RIIがアルキル基を表す場合の置換位置は、特に制限はないが、好ましくは、3位又は4位の位置である。
(B)特定ポリマーにおける上記構造により、未露光部では、嵩高い有機置換基の導入により、耐アルカリ現像性、耐クリーナー性の向上が達成され、且つ、露光部において、耐アルカリ現像性を発現させていた相互作用が解除されると、ノボラック樹脂におけるフェノール性水酸基などのアルカリ可溶性基の機能が速やかに発現され、アルカリ現像液に対する優れた溶解性を発現するため、高感度で画像を形成することができる。
芳香環は、単環構造でも、複環構造でも、縮合環構造でもよく、さらには、環構造内に窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含む複素芳香環であってもよい。これらのうち、好ましくは、複素芳香環、単環構造である。
Qとして導入可能な芳香環としては、具体的には、ベンゼン環、ピリジン環などが挙げられ、ベンゼン環などが好ましい。
なかでも、Qとしては、下記一般式(II−1)で表される構造を有する置換基であることが好ましい。
R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、−SO2−NH−R9、−NH−SO2−R11、−CO−NR9−R10、−NR9−CO−R11、−O−CO−R11、−CO−O−R9、−CO−R9、−SO3−R9、−SO2−R9、−SO−R11、−P(=O)(−O−R9)(−O−R10)、−NR9−R10、−O−R9、−S−R9、−CN、−NO2、ハロゲン原子、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル、又は、−M−R9を表し、ここで、Mは1〜8個の炭素原子を含有する2価の連結基を示し、R9、及びR10はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基を表し、R11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基を表す。ここで複数存在するR6は、互いに同じでも、異なっていてもよく、互いに連結して環構造を形成していてもよい。
なお、上記R6〜R11が水素原子以外の置換基を表す場合、これらの置換基はさらに置換基を有するものであってもよい。例えば、アルキル基では、無置換のアルキル基であっても、置換基有するアルキル基であってもよい。これらに導入可能な置換基としては、例えば、メトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、等が挙げられる。
式中、R6、R9〜R11から選ばれる少なくとも2個の基、R7及びR8は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
数平均分子量、及び、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準サンプルとして、ゲルパーメーションクロマトグラフィーを使用する方法で、それぞれ測定することができる。
本発明における(B)特定ポリマーの含有量は、アブレーションの発生抑制と現像性の観点から、ポジ型記録層を構成する組成物の全固形分に対して、5〜80質量%の範囲であることが好ましく、20〜60質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明に係る記録層には、上記(A)特定ポリマー、及び、(B)特定ポリマーに加え、(C)光を吸収して熱を発生する化合物(以下、適宜、光熱変換剤と称する。)を含有することを要する。
本発明に用いうる光熱変換剤は、画像形成に用いる光源の露光により発熱する化合物であればいずれも用いることができるが、本発明の平版印刷版原版が赤外線レーザ露光により画像形成されることから、700nm以上、好ましくは750〜1200nmの赤外域に光吸収域を有し、この範囲の波長域の光により、光/熱変換能を発現する赤外線吸収剤を用いることが好ましく、具体的には、上記波長域の光を吸収し熱を発生する種々の染料又は顔料を用いることができる。
本発明の平版印刷版原版の記録層中には、前記必須成分(A)特定ポリマー、(B)特定ポリマー及び(C)光熱変換剤に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の化合物を併用することができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等の、先に挙げたノボラック樹脂に包含されるものが挙げられ、また、ピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。更に、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩及び4級アンモニウム塩が特に好ましい。特に、ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。また4級アンモニウム塩としては、特開2002−229186号公報における〔化5〕、〔化6〕中に(1)〜(10)として記載される4級アンモニウム塩が好ましい。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、及びカルボン酸類などが挙げられる。
上記の環状酸無水物、フェノール類、及び有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
(塗布溶剤及び塗布方法)
本発明の平版印刷版原版は、前記した記録層の構成成分を溶媒に溶かし、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。また、平版印刷版原版に目的に応じて設けられる、後述する保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する塗布溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の平版印刷版原版のポジ型記録層は単層構造、相分離構造、及び重層構造のいずれでも用いることができる。
単層型記録層としては、例えば特開平7−285275号公報、国際公開97/39894号パンフレット記載の感光層、相分離型記録層としては、例えば特開平11−44956号公報記載の感光層、重層型記録層としては、例えば特開平11−218914号公報、米国特許第6352812B1号、米国特許第6352811B1号、米国特許第6358669B1号、米国特許第6534238B1号、欧州特許第864420B1号明細書記載の感光層として用いることができるが、これらに限定されない。
また、重層構造の場合、本発明の必須成分である(A)及び(B)成分については、下層、及び最上層に限定されず、いずれの層に含まれていてもよいが、効果の観点からは、上層に(A)及び(B)成分を含む態様であることが好ましい。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般に、乾燥後の塗膜量(重層の場合はその総量)が0.5〜5.0g/m2となる量が好ましく、0.6〜2.0g/m2となる量がより好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、必要な強度、可撓性などの物性を満たすものであれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフイルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフイルム等が挙げられる。
本発明に適用し得る支持体としては、ポリエステルフイルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフイルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に前記記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と記録層(下層)との間に下塗層を設けることができる。この下塗層を設けることで、支持体と記録層との間の下塗層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る記録層は、この下塗層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が下塗層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、更には、支持体に隣接して存在するこの下塗層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この下塗層は有用であると考えられる。
下塗層の被覆量は、2mg/m2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5mg/m2〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明に係る印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組合せて用いることができる。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
本発明の平版印刷版原版はこのような処理によって平版印刷版となる。この平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。本発明の平版印刷版原版は、画像部の耐薬品性、耐刷性に優れ、現像ラチチュードが広く、画像再現性に優れるという利点を有する。
<(A)特定ポリマー1の合成>
(A)特定ポリマー1を以下に示す方法により合成した。(A)特定ポリマー1は、N−ビニルカプロラクタム、下記構造を有するモノマー1、及びメタクリル酸の共重合体である。なお、共重合モル比は、N−ビニルカプロラクタム/モノマー1/メタクリル酸=33/57/10である。
1.52gのジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(商品名:V601、和光純薬工業(株)製より入手可能なアゾ開始剤)を28.9gのγ−ブチロラクトンに溶解した。得られた溶液を、上記にて得られた反応混合物に30分間滴下した。その後、反応を90℃で更に7時間続けた。反応完了後、温度を室温に調整した。得られたポリマー溶液は、約20%の濃度であった。
<(A)特定ポリマー2の合成>
(A)特定ポリマー2を以下に示す方法により合成した。(A)特定ポリマー2は、前記構造を有するモノマー1、及び下記構造を有するモノマー2の共重合体である。なお、共重合モル比は、モノマー1/モノマー2=57/43である。
1.37gのジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(商品名:V601、和光純薬工業(株)製より入手可能なアゾ開始剤)を26.1gのγ−ブチロラクトンに溶解した。得られた溶液を、上記にて得られた反応混合物に30分間滴下した。その後、反応を90℃で更に7時間続けた。反応完了後、温度を室温に調整した。得られたポリマー溶液は、約20%の濃度であった。
<(A)特定ポリマー3の合成>
(A)特定ポリマー3を以下に示す方法により合成した。(A)特定ポリマー3は、N−ビニルカプロラクタム、前記構造を有するモノマー1、前記構造を有するモノマー1、及びメタクリル酸の共重合体である。なお、共重合モル比は、N−ビニルカプロラクタム/モノマー1/モノマー2/メタクリル酸=9/57/19/15である。
1.9gのジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(商品名:V601、和光純薬工業(株)製より入手可能なアゾ開始剤)を36.1gのγ−ブチロラクトンに溶解した。得られた溶液を、上記にて得られた反応混合物に30分間滴下した。その後、反応を90℃で更に7時間続けた。反応完了後、温度を室温に調整した。得られたポリマー溶液は、約20%の濃度であった。
<(B)特定ポリマー1の合成>
(B)特定ポリマー1を以下のように合成した。
(ジアゾニウム溶液の調製)
下記構造の化合物AM−10 2.6g、酢酸25ml及び水37.5mlの混合物を攪拌、混合し、15℃に冷却した。次いで、濃HCl 2.5mlを加え、混合物をさらに0℃に冷却した。その後、3mlの水に、NaNO21.1gを溶解させた溶液を滴下し、0℃でさらに30分間攪拌を続け、ジアゾニウム溶液を得た。
ALNOVOL SPN452(商品名:Clariant GmbH社製、ノボラック樹脂40重量%、Dowanol PM(溶剤)溶液)45.9gと、NaOAc.3H2O16.3gと、1−メトキシ−2−プロパノール200mlとの混合物を攪拌し、10℃に冷却した。
前記の如くして得られたジアゾニウム溶液全量を、前記10℃に冷却したフェノール性ポリマー混合液に、30分間かけて滴下し、その後、温度を15℃に維持して120分間攪拌を続けた。得られた混合物を2リットルの氷水に、継続的に攪拌しながら30分間かけて加えた。ポリマーを水性媒体から沈殿させ、濾過により単離した。水で洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、(B)特定ポリマー1を得た(収量95%)。また、(B)特定ポリマー1の重量平均分子量は8000であり、数平均分子量は3000であった。
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、400C/dm2の電気量で電化化学的な粗面化処理を行い、水洗した。次に、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い、水洗した。更に、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dm2の条件下で、陽極酸化皮膜両が2.5g/m2相当となるように陽極酸化処理し、水洗、乾燥した。その後、ケイ酸ナトリウム1.0質量%水溶液で30℃において10秒間処理し、親水性処理した支持体(a)を作製した。
この支持体(a)の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.48μmであった。
このようにして得られた支持体(a)に、下記下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥して下塗り層を設けた。下塗り層の乾燥塗布量は17mg/m2であった。
・下記化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
前記のようにして得られた下塗り層を有する支持体に、以下のポジ型記録層塗布液を塗布し、150℃のオーブンで1分間乾燥後、乾燥塗布量が1.5g/m2のポジ型記録層を有する平版印刷版原版を得た。
・(A)特定ポリマー(表1記載の化合物) 0.5g
・(B)特定ポリマー 0.35g
(合成例4で得られた(B)特定ポリマー1)
・ノボラック樹脂A(m/p−クレゾール(6/4)、重量平均分子量;
7,000、未反応クレゾール;0.3重量%) 0.1g
・シアニン染料A((B)光熱変換剤:下記構造) 0.07g
・無水フタル酸 0.04g
・エチルバイオレット 0.02g
・フッ素系ポリマー 0.015g
(ディフェンサF−780F(固形分30%)、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 5g
・γ−ブチロラクトン 8g
前記実施例1で用いられたポジ型記録層塗布液1において、(B)特定ポリマー0.35gに代えて、(A)特定ポリマー1を0.35g用いた他は、実施例1と同様にして比較例1の平版印刷版原版を得た。
前記実施例2で用いられたポジ型記録層塗布液1において、(B)特定ポリマー0.35gに代えて、(A)特定ポリマー2を0.35g用いた他は、同様にして比較例2の平版印刷版原版を得た。
前記実施例3で用いられたポジ型記録層塗布液1において、(B)特定ポリマー0.35gに代えて、(A)特定ポリマー3を0.35g用いた他は、同様にして比較例3の平版印刷版原版を得た。
前記実施例1で用いられたポジ型記録層塗布液1において、(A)特定ポリマー0.5gに代えて、(B)特定ポリマー1を0.5g用いた他は、同様にして比較例4の平版印刷版原版をえた。
前記実施例1で用いられたポジ型記録層塗布液1において、(A)特定ポリマー0.5g及び(B)特定ポリマー0.35gに代えて、比較ポリマーであるノボラック樹脂A(m/p−クレゾール(6/4)、重量平均分子量;7,000、未反応クレゾール;0.3重量%)を0.85g用いた他は同様にして、比較例5の平版印刷版原版を得た。
なお、下記表1中「*」を付与したポリマーは、比較ポリマーであることを示す。
得られた感光性平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetterにてビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。得られた平版印刷版を小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を下記表2に示す。
また、印刷の途中に5000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム社製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加え、上記と同様に耐刷性を評価した。前者の耐刷性を通常耐刷性、後者の耐刷性をクリーナー耐刷性と称し、その結果を表2に示す。このクリーナー耐刷性が高いものほど、耐薬品性が良好であると評価する。
・SiO2・K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量;1,000)
・水 95.0質量%
幅600mm、縦800mmの平版印刷版原版を50枚、Creo社製Trendsetterにてビーム強度13W、ドラム回転速度150rpmで全面露光を行った。露光前と後で、フィルターの汚れの差を観察した。露光前と後でほとんど差が無かったものを○、明らかに汚れが増加していたものを×で表した。その結果を表1に示す。
一方、(B)特定ポリマーを含まない比較例1〜3は、耐刷性は良好であるが、クリーナー耐刷性には、やや劣り、(A)特定ポリマーAを含まない比較例4では、耐刷性、耐薬品性ともにやや劣り、これら比較例1〜4のいずれにおいても、レーザ露光によりアブレーションが生じることがわかる。また、(A)特定ポリマー及び(B)特定ポリマーに変えてノボラック樹脂Aを等量用いた比較例5は、アブレーションが生じるのみならず、耐薬品性にも著しく劣るものであった。
Claims (2)
- 支持体上に、(A)下記一般式(I)で表される構造単位を有するポリマー、(B)下記一般式(II)で表される構造単位を有するポリマー、及び(C)光を吸収して熱を発生する化合物を含有してなり、露光又は加熱によりアルカリ現像液に対する溶解性が向上するポジ型記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
[前記一般式(I)中、R1、R2及びR3は、各々独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表す。R4及びR5は、各々独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のアリールアルキル基を表し、R4及びR5は互いに結合して環構造を形成してもよい。]
一般式(II)中、RIIは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Qは芳香環構造を含む一価の置換基を表す。 - 前記一般式(II)におけるQが、下記一般式(II−1)で表される一価の置換基である請求項1に記載の平版印刷版原版。
[一般式(II−1)中、nは0、1、2又は3であり、R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、−SO2−NH−R9、−NH−SO2−R11、−CO−NR9−R10、−NR9−CO−R11、−O−CO−R11、−CO−O−R9、−CO−R9、−SO3−R9、−SO2−R9、−SO−R11、−P(=O)(−O−R9)(−O−R10)、−NR9−R10、−O−R9、−S−R9、−CN、−NO2、ハロゲン原子、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル、又は、−M−R9を表し、ここで、Mは1〜8個の炭素原子を含有する2価の連結基を示し、R9及びR10は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基を表し、R11は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基を表す。ここで複数存在するR6は、互いに同じでも、異なっていてもよく、互いに連結して環構造を形成していてもよい。
R7及びR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基を表す。
式中、R6、R9〜R11から選ばれる少なくとも2個の基、R7及びR8は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
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