しかしながら、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載された技術においては、上述した成分に加えてガラス繊維、更にはパルプが配合されているが、ガラス繊維及びパルプの最適な配合率が明確にされていなかったため、より優れた防炎性・不燃性を確実に得ることができなかった。また、ガラス繊維の最適な長さ範囲が明確にされていなかったため、表面が平滑でなく凹凸があって文字・模様等の印刷が困難であり、更に硬くて柔軟性がないため折れ易いという問題点があった。
また、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載された技術においては、セピオライトの粒度と含有量、ガラス繊維の長さと含有量のバランスが取れていないため分散にムラがあり、平滑性・均一性に欠けていたため、ウレタン樹脂やアクリル樹脂を含浸させた場合に含浸ムラが生じて、強度・外観にバラつきがあり、更に表面に凹凸が生じて、化粧板の化粧性を向上させることができなかった。
更に、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載された不燃紙や水酸化アルミニウム紙、炭酸カルシウム紙等の他の不燃紙においては、JISに規格された難燃性試験の防炎1級をクリアするのが精一杯であり、不燃材料の発熱性試験においては20分の加熱により600℃近くになるため、結晶水が飛んで紙としての形状を留めることができず、不燃材料の発熱性試験に合格するものは得ることができなかった。
そこで、本発明は、セピオライトの粒度と含有量、ガラス繊維及びパルプの最適な配合率を明確にすることによって、不燃材料の発熱性試験に合格できるより優れた不燃性及び防炎性が得られる不燃紙、含浸紙及び複合紙を提供することを課題とする。また、本発明は、更にガラス繊維の最適な長さ範囲を明確にすることによって、表面が平滑であって文字・模様等の印刷が容易であるとともに、柔軟性があって折れ難い不燃紙、含浸紙及び複合紙を提供することをも課題とする。
請求項1の発明に係る不燃紙は、含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%、パルプ7重量%〜12重量%、ガラス繊維2重量%〜10重量%、及びバインダー3重量%〜8重量%を含有するものである。
ここで、「含水ケイ酸マグネシウム化合物」としては、天然鉱物であるセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、アタパルジャイト(含水ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、タルク(滑石、含水ケイ酸マグネシウム)等があり、またこれらの含水ケイ酸マグネシウム化合物の合成物をも含むものとする。また、「バインダー」とは、有機系バインダー、無機系バインダー、これらの混合物、及び有機無機複合バインダーを含むものとする。
請求項2の発明に係る不燃紙は、請求項1の構成において、前記含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径は10μm〜25μmの範囲内であるものである。
請求項3の発明に係る不燃紙は、請求項1または請求項2の構成において、前記含水ケイ酸マグネシウム化合物は、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)であるものである。
請求項4の発明に係る不燃紙は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記ガラス繊維の長さが1mm〜3mmの範囲内であり、含有量が2重量%〜5重量%の範囲内であるものである。
請求項5の発明に係る含浸紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機バインダーまたは有機無機複合バインダーを含浸した含浸紙であって、前記含浸紙全体において前記熱可塑性樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記無機バインダーまたは前記有機無機複合バインダーを5重量%〜80重量%の範囲内となるように含浸したものである。
ここで、「熱可塑性樹脂」としては、アクリル樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレンを始めとするポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、等を用いることができる。また、「熱硬化性樹脂」としては、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、等を用いることができる。更に、無機バインダーとしては、コロイダルシリカ、アルカリケイ酸塩、等を用いることができる。
請求項6の発明に係る含浸紙は、請求項5に記載の構成において、前記熱可塑性樹脂または前記熱硬化性樹脂はウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂のいずれかであるものである。
請求項7の発明に係る複合紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙に、坪量が20g/m2 〜200g/m2 の範囲内の化粧シートを貼り合わせたものである。ここで、「化粧シート」とは、一般に「ツキ板」と呼ばれる天然の木の薄皮、或いは木目模様の入った化粧板の薄いもの、更にはポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等に木目等を印刷したもの、紙に木目等を印刷したものをいう。
請求項8の発明に係る複合紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙に、厚さが10μm〜100μmの範囲内の金属箔を貼り合わせたものである。ここで、「金属箔」としては、アルミ箔、ステンレス箔、チタン箔、金箔、銀箔、白金箔、銅箔、真鍮箔、錫箔、ニッケル箔等、種々の金属の箔を用いることができる。
請求項9の発明に係る複合紙は、厚さが10μm〜100μmの範囲内の金属箔の片面に請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙を貼り合わせ、前記金属箔の反対側の面に請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙または普通紙を貼り合わせたものである。
請求項10の発明に係る複合紙は、請求項8または請求項9の構成において、前記金属箔はアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔のいずれかであるものである。
請求項11の発明に係る複合紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙または請求項7乃至請求項10のいずれか1つに記載の複合紙の片面または両面に無機フィルム剤を塗布したものである。
請求項12の発明に係る複合紙は、請求項11の構成において、前記無機フィルム剤は固形分が10重量%〜20重量%の範囲内であり、塗布量が50g/m2 〜250g/m2 の範囲内であるものである。
請求項13の発明に係る複合紙は、請求項11または請求項12の構成において、前記無機フィルム剤は含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)を60重量%〜100重量%の範囲内、ポリエーテル樹脂またはポリエステル樹脂を0重量%〜40重量%の範囲内で含有してなるものである。
請求項1の発明に係る不燃紙は、含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%、パルプ7重量%〜12重量%、ガラス繊維2重量%〜10重量%、及びバインダー3重量%〜8重量%を含有する。
ここで、「含水ケイ酸マグネシウム化合物」としては、天然鉱物であるセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、アタパルジャイト(含水ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、タルク(滑石、含水ケイ酸マグネシウム)等があり、またこれらの含水ケイ酸マグネシウム化合物の合成物をも含む。また、「バインダー」とは、有機系バインダー、無機系バインダー、これらの混合物、及び有機無機複合バインダーを含む。
本発明者らは、鋭意実験研究の結果、不燃紙として含水ケイ酸マグネシウム化合物75重量%〜85重量%、パルプ7重量%〜12重量%、ガラス繊維2重量%〜10重量%、及びバインダー3重量%〜8重量%を含有するものが、より不燃性及び防炎性に優れていることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、上記組成からなる不燃紙は、不燃材料の発熱性試験において20分の加熱により600℃近くになっても、発熱量は僅かに0.8MJ(発熱量の合格値は8.0MJ以下)であり、しかも僅か0.25mmの厚さで亀裂もなく形状を保持し、不燃材料として合格したものである。
このようにして、セピオライトを始めとする含水ケイ酸マグネシウム化合物の含有量、ガラス繊維及びパルプの最適な配合率を明確にすることによって、不燃材料の発熱性試験に合格できるより優れた不燃性及び防炎性が得られる不燃紙となる。
請求項2の発明に係る不燃紙においては、セピオライトを始めとする含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が10μm〜25μmの範囲内、より好ましくは平均粒径が12μm〜18μmの範囲内である。なお、ここで、「平均粒径」は、ベックマンコルター社製レーザー粒度測定器LS13−320型を用いてエタノール分散で測定した値である。本発明者らは、鋭意実験研究の結果、含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が10μm〜25μmの範囲内である場合に、不燃紙がより不燃性及び防炎性に優れていることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
更に、本発明者らは、鋭意実験研究の結果、含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径が12μm〜18μmの範囲内である場合に、不燃紙がより不燃性及び防炎性に優れているとともに、含水ケイ酸マグネシウム化合物を含むスラリーの粘度が適切な値となり、抄紙がよりスムーズに行えるため、より好ましいことを見出した。したがって、含水ケイ酸マグネシウム化合物の平均粒径は10μm〜25μmの範囲内であることが好ましく、12μm〜18μmの範囲内であることが、より好ましい。
このようにして、セピオライトを始めとする含水ケイ酸マグネシウム化合物の粒度と含有量、ガラス繊維の長さと含有量及びパルプの最適な配合率を明確にすることによって、不燃材料の発熱性試験に合格できるより優れた不燃性及び防炎性が得られる不燃紙となる。
請求項3の発明に係る不燃紙においては、含水ケイ酸マグネシウム化合物が、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)である。セピオライトは、含水ケイ酸マグネシウム化合物の中でも、吸着性・揺変性・固結性を有し、不燃性と耐水性を兼ね備えた不燃紙を抄造することができる無機化合物である。そこで、請求項1の配合において、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてセピオライトを用いることによって、より優れた不燃性と耐水性を得ることができる。
このようにして、セピオライトの粒度と含有量、ガラス繊維の長さと含有量及びパルプの最適な配合率を明確にすることによって、不燃材料の発熱性試験に合格できるより優れた不燃性及び防炎性が得られる不燃紙となる。
請求項4の発明に係る不燃紙においては、ガラス繊維の長さが1mm〜3mmの範囲内であり、含有量が2重量%〜5重量%の範囲内である。
このように、配合するガラス繊維の長さを1mm〜3mmの範囲内とすることによって、不燃紙の密度が極めて高くなり、その結果不燃紙の表面が平滑となって、文字や模様等の印刷が容易に美しくできるようになる。また、短いガラス繊維を配合することによって、柔軟性に富んだ不燃紙となり、曲げても折れてしまうようなことがない。
但し、ガラス繊維の長さを3mm以下と短くした場合には、凝縮し易くなるため、含有量を5重量%以下とする必要がある。一方、含有量を2重量%未満とした場合には、ガラス繊維による補強の効果が殆ど得られなくなるため、長さが1mm〜3mmの範囲内のガラス繊維の含有量は、2重量%〜5重量%の範囲内とすることが好ましい。
このようにして、セピオライトを始めとする含水ケイ酸マグネシウム化合物の粒度と含有量、ガラス繊維の長さと含有量及びパルプの最適な配合率を明確にすることによって、不燃材料の発熱性試験に合格できるより優れた不燃性及び防炎性が得られるとともに、表面が平滑であって文字・模様等の印刷が容易であり、柔軟性があって折れ難い不燃紙となる。
請求項5の発明に係る含浸紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機バインダーまたは有機無機複合バインダーを含浸した含浸紙であって、含浸紙全体において熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機バインダーまたは有機無機複合バインダーを5重量%〜80重量%の範囲内、より好ましくは30重量%〜50重量%の範囲内となるように含浸したものである。
請求項1乃至請求項4の発明に係る不燃紙は、組織が均一であり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機バインダー及び有機無機複合バインダーを容易にかつ均一に含浸することができる。そして、含浸紙とすることによって、表面硬度が高くなり、また不燃紙のままでは切断したときに切断面にササクレが生じていたものが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機バインダーまたは有機無機複合バインダーが内部に充填されることによってササクレが生じなくなり、見栄え良く切断することができる。
また、含浸量を5重量%〜80重量%の範囲内、より好ましくは30重量%〜50重量%の範囲内とすることによって、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含浸した場合でも不燃性を保つことができ(含浸量が50重量%の場合、不燃材料の発熱性試験における発熱量は5MJ以下であり、8MJ以下という不燃性の基準をクリアしている)、壁装材・耐熱化粧板シート等として、安心して用いることができる。含浸量を5重量%未満とすると、含浸の効果を殆ど得ることができず、一方、含浸量が80重量%を超えると、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含浸したものを更に木材等の可燃物に貼り付けた場合、不燃性の基準を満たさなくなる恐れがある。
このようにして、請求項1乃至請求項4の発明に係る不燃紙に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機バインダーまたは有機無機複合バインダーを含浸することによって、表面が平滑であり文字・模様等の印刷が容易であるとともに、柔軟性があって折れ難く、不燃性の基準を満たすことができる含浸紙となる。
請求項6の発明に係る含浸紙においては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂がウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂のいずれかである。ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂は、いずれも含浸材料として優れており、不燃紙に均一に含浸し易い材料である。
このようにして、請求項1乃至請求項4の発明に係る不燃紙にウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂のいずれかを含浸することによって、表面が平滑であり文字・模様等の印刷が容易であるとともに、柔軟性があって折れ難く、不燃性の基準を満たすことができる含浸紙となる。
請求項7の発明に係る複合紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙に、坪量が20g/m2 〜200g/m2 の範囲内の、より好ましくは50g/m2 〜100g/m2 の範囲内の化粧シートを貼り合わせたものである。ここで、「化粧シート」とは、一般に「ツキ板」と呼ばれる天然の木の薄板、或いは木目模様の入った化粧板の薄いもの、更にはポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等に木目等を印刷したもの、紙に木目等を印刷したものをいう。
請求項1乃至請求項4の発明に係る不燃紙または請求項5若しくは請求項6の発明に係る含浸紙は、上述の如く、含浸紙の含浸量が50重量%の場合でも不燃材料の発熱性試験における発熱量は5MJ以下であり、8MJ以下という不燃性の基準をクリアしており、これに坪量が20g/m2 〜200g/m2 の範囲内、より好ましくは50g/m2 〜100g/m2 の範囲内という薄い化粧シートを貼り合わせることによって、不燃性の化粧シートを得ることができ、壁装材・耐熱化粧板シート等として用いることができる。
請求項8の発明に係る複合紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙に、厚さが10μm〜100μmの範囲内の金属箔を貼り合わせたものである。ここで、「金属箔」としては、アルミ箔、ステンレス箔、チタン箔、金箔、銀箔、白金箔、銅箔、真鍮箔、錫箔、ニッケル箔等、種々の金属の箔を用いることができる。
不燃紙または含浸紙に金属箔を貼り合わせることによって、金属箔はガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが不燃紙または含浸紙を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、金属箔は熱伝導率が高いため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱を金属箔全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
このようにして、不燃紙または含浸紙に金属箔を貼り合わせることによって、更に不燃性に優れ、壁装材・耐熱化粧板シート等として用いることができる複合紙となる。
請求項9の発明に係る複合紙は、厚さが10μm〜100μmの範囲内の金属箔の片面に請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙を貼り合わせ、金属箔の反対側の面に請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙または普通紙を貼り合わせたものである。ここで、「普通紙」は坪量が10g/m2 〜50g/m2 の範囲内であることが好ましい。
これによって、金属箔の両面が不燃紙または含浸紙と不燃紙または含浸紙または普通紙とで挟まれて、金属箔が表に出ないために、建材として用いた場合に水分に強い複合紙となる。近年は、シックハウス症候群対策及びホルムアルデヒドフリーの要請から、内装材においては水性塗料・水性接着剤が主流となっている。そのため、金属表面に対しては水性塗料・水性接着剤は馴染みが悪く、また膨れが発生するという問題があるが、本発明に係る複合紙においては金属表面が露出していないため、そのような問題は生じない。
このようにして、金属箔の片面に不燃紙または含浸紙を、反対側の面に不燃紙または含浸紙または普通紙を貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなるとともに、水分にも強く、建材としてより使い勝手の良い複合紙となる。
請求項10の発明に係る複合紙においては、金属箔がアルミ(アルミニウム,Al)箔、ステンレス箔、チタン(Ti)箔のいずれかである。これらのアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔のうち、アルミ箔は汎用品であり入手が容易で、またステンレス箔、チタン箔はいずれも錆び難いため、建材として用いた場合により水分に強い複合紙となる。
このようにして、不燃紙または含浸紙にアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔のいずれかを貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなり、しかも水分に強く、壁装材・耐熱化粧板シート等としてより使い勝手の良い複合紙となる。
請求項11の発明に係る複合紙は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の不燃紙または請求項5若しくは請求項6に記載の含浸紙または請求項7乃至請求項10のいずれか1つに記載の複合紙の片面または両面に無機フィルム剤を塗布したものである。
ここで、無機フィルム剤として具体的には、例えば含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)を主成分とする無機系塗布剤等があり、バーミキュライトはアスペクト比が高い鱗片状結晶であるため、塗布することによって隙間なく表面または裏面を覆う。したがって、ガスをも透過させないため、金属箔を使用できない場合においては、無機フィルム剤を使用することによって、火災時に可燃性ガスが不燃紙、含浸紙または複合紙を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。更に、無機フィルム剤は適度な柔軟性を有するため、不燃紙、含浸紙または複合紙の耐熱保形性と相俟って、高温時における変形及び表面の亀裂の発生を抑えることができる。
このようにして、不燃紙、含浸紙または複合紙の片面または両面に無機フィルム剤を塗布することによって、無機フィルム剤がガスバリアとしての役目を果たし、可燃性ガスが不燃紙、含浸紙または複合紙を透過して発火・着火することがなく、不燃性がより向上した複合紙となる。
請求項12の発明に係る複合紙においては、無機フィルム剤は固形分が10重量%〜20重量%の範囲内であり、塗布量が50g/m2 〜250g/m2 の範囲内、より好ましくは100g/m2 〜150g/m2 の範囲内である。無機フィルム剤の固形分が10重量%〜20重量%の範囲内であることによって、無機フィルム剤の粘度が塗料として適切な粘度範囲となり、容易に均一に塗布することができる。また、塗布量が50g/m2 〜250g/m2 の範囲内、より好ましくは100g/m2 〜150g/m2 の範囲内であることによって、塗布された無機フィルム剤が十分にガスバリアとしての役目を果たし、また厚過ぎない適切な範囲内の厚さとなる。更に、無機フィルム剤は適度な柔軟性を有するため、不燃紙、含浸紙または複合紙の耐熱保形性と相俟って、高温時における変形及び表面の亀裂の発生を抑えることができる。
このようにして、金属箔を使用できない場合においては、不燃紙、含浸紙または複合紙の片面または両面に無機フィルム剤を塗布することによって、無機フィルム剤がガスバリアとしての役目を果たし、可燃性ガスが不燃紙、含浸紙または複合紙を透過して発火・着火することがなく、不燃性がより向上した複合紙となる。
請求項13の発明に係る複合紙においては、無機フィルム剤が含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)を60重量%〜100重量%の範囲内、ポリエーテル樹脂またはポリエステル樹脂を0重量%〜40重量%の範囲内で、より好ましくは1重量%〜40重量%の範囲内で含有してなる。
含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)はアスペクト比が高い鱗片状結晶であるため、塗布することによって隙間なく表面または裏面を覆う。さらに、ポリエーテル樹脂またはポリエステル樹脂を含有させることによって、樹脂のガス不透過膜が形成される。したがって、ガスをも透過させないため、金属箔を使用できない場合においては、火災時に可燃性ガスが不燃紙、含浸紙または複合紙を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。更に、無機フィルム剤は適度な柔軟性を有するため、不燃紙、含浸紙または複合紙の耐熱保形性と相俟って、高温時における変形及び表面の亀裂の発生を抑えることができる。
なお、ポリエーテル樹脂またはポリエステル樹脂は0重量%、即ち含有されていなくてもバーミキュライトのみでも十分なガス不透過膜が形成されるが、ポリエーテル樹脂またはポリエステル樹脂を1重量%〜40重量%の範囲内で含有することによって樹脂のガス不透過膜が形成され、ガスバリア特性がより向上するのでより好ましい。
このようにして、不燃紙、含浸紙または複合紙の片面または両面に、バーミキュライトを主成分とする無機フィルム剤を塗布することによって、無機フィルム剤がガスバリアとしての役目を果たし、可燃性ガスが不燃紙、含浸紙または複合紙を透過して発火・着火することがなく、不燃性がより向上した複合紙となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
実施の形態1
本発明の実施の形態1に係る不燃紙について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る不燃紙の製造方法を示すフローチャートである。図2は本発明の実施の形態1の実施例1に係る不燃紙の内部構造を示す模式図である。図3は本発明の実施の形態1の実施例2に係る不燃紙の内部構造を示す模式図である。図4は本発明の実施の形態1に係る不燃紙に用いられる含水ケイ酸マグネシウム化合物としてのセピオライトの粒度分布を示すグラフである。
まず、本実施の形態1に係る不燃紙の製造方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、ステップS10の解繊工程においては、主原料であるセピオライト等の含水ケイ酸マグネシウム化合物と、補強材としてのガラス繊維・パルプとを解繊機に入れて、攪拌によって微細繊維の塊からなるセピオライト等を十分に解繊して、その分散性を良くするとともに、ガラス繊維・パルプと均質に混合する。
次に、ステップS11の原料混合工程においては、解繊されガラス繊維・パルプと混合されたセピオライト等の含水ケイ酸マグネシウム化合物をバインダー・軟化剤・安定剤等とともに混合タンクに入れ、水と混合してスラリーを作製する。ここで、バインダーとしては、紙力増強用の分子量80万〜100万のポリアクリルアミドを使用した。作製されたスラリーは、紙料化処理工程(ステップS12)において、紙料集束化反応装置によって集束化処理される。この紙料化処理工程によって、粗大化されたフロックが形成され、抄造性が向上したスラリーが形成される。
紙料化処理工程(ステップS12)で紙料化調製されたスラリーは、ストックタンクに送出され、沈降分離や調製紙料の崩壊等が生じないように、混合状態が常に均一化されるように維持する蓄積工程に入る(ステップS13)。蓄積工程においてストックタンクに蓄積されたスラリーは、定量ホッパーにポンプアップされ、定量ホッパーで計量されたスラリーは次いで抄造工程に入る(ステップS14)。
この抄造工程(ステップS14)において、セピオライト等の含水ケイ酸マグネシウム化合物を主材として含み、粗大化した良好なフロックが形成されたスラリーは、連続抄紙機等によって抄造される。本実施の形態1においては、丸網式抄紙機を用いて抄造した。このとき、スラリー濃度は0.5%〜1.0%であり、抄紙機には60〜80メッシュの抄紙網を使用した。凝集フロックが形成されたスラリーを抄紙網に流し込むと、その凝集フロックを通して水が速やかに抄紙網から流れ落ちて、紙層が形成される。
その後、この紙層を乾燥工程(ステップS15)においてプレスを掛けて脱水し、脱水された湿紙を例えばスチーム回転ドライヤーによって、約120℃の温度で所定時間乾燥する。この加熱乾燥によって、紙層の内部の水分が蒸発して、バインダーの凝縮と硬化が促進されて乾燥固化される。乾燥された不燃紙は、スチーム回転ドライヤーのドライヤー面から剥離されて、巻取紙に形成される。以上のステップS10〜ステップS15の工程によって、厚さが0.1mm〜1.0mmの不燃紙が完成する。
次に、本実施の形態1の実施例1に係る不燃紙の原料配合について説明する。本実施の形態1の実施例1に係る不燃紙は、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム、「マウンテンレザー(山皮)」、「マウンテンウッド」とも呼ばれる。)のみを用いたものである。実施例1に係る不燃紙の原料配合を、表1に示す。
表1に示されるように、実施例1に係る不燃紙は、主成分としてセピオライトを77.0重量%含有し、ガラス繊維(平均長さ6mm)を10.0重量%、パルプを8.0重量%、バインダー類を5.0重量%含有している。ここで、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)としては、水澤化学工業(株)のセピオライトを使用した。
また、バインダー類としては、紙力増強剤として、セピオライトとの相性が良い昭和高分子化学工業(株)製の湿潤紙力増強剤と乾燥紙力増強剤とを合わせて使用し、無機バインダーとして王子製紙(株)製の硫酸アルミニウムを使用している。更に、高分子凝集剤を使用している。
このように、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてのセピオライト75重量%〜85重量%、パルプ7重量%〜12重量%、ガラス繊維2重量%〜10重量%、及びバインダー3重量%〜8重量%を含有する不燃紙とすることによって、耐熱性・不燃性が一段と向上し、実施例1に係る不燃紙は、不燃性かつ防炎性で、ガスバーナーの炎にかざしても僅かな発煙を発生して黒色化するだけで、炎が貫通することなく形状を維持するものであり、防炎1級の認定を受けている。
更に、実施例1に係る不燃紙は、不燃材料の発熱性試験において20分の加熱により600℃近くになっても、発熱量は僅かに0.8MJであり、しかも僅か0.25mmの厚さで亀裂もなく形状を保持し、不燃材料として合格しており、極めて優れた不燃性を有している。
次に、本実施の形態1の実施例2に係る不燃紙の原料配合について説明する。本実施の形態1の実施例2に係る不燃紙においても、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)を用いている。但し、ガラス繊維の長さが最長3mmと短いものを用いている点が異なっている。実施例2に係る不燃紙の原料配合を、表2に示す。
表2に示されるように、実施例2に係る不燃紙は、主成分としての含水ケイ酸マグネシウム化合物としてセピオライトを80.0重量%含有している。ここで、セピオライトとしては水澤化学工業(株)のセピオライトを使用した。また、ガラス繊維(長さが1mm〜3mm)を5.0重量%、パルプを10.0重量%、バインダー類を5.0重量%含有している。
ここで、バインダー類としては、紙力増強剤として、セピオライトとの相性が良い昭和高分子化学工業(株)製の湿潤紙力増強剤と乾燥紙力増強剤とを合わせて使用し、無機バインダーとして王子製紙(株)製の硫酸アルミニウムを使用している。更に、高分子凝集剤を使用している。
このように、含水ケイ酸マグネシウム化合物としてのセピオライト75重量%〜85重量%、パルプ7重量%〜12重量%、長さが1mm〜3mmのガラス繊維2重量%〜5重量%、及びバインダー3重量%〜8重量%を含有する不燃紙とすることによって、耐熱性・不燃性が一段と向上し、実施例2に係る不燃紙も、不燃性かつ防炎性で、ガスバーナーの炎にかざしても僅かな発煙を発生して黒色化するだけで、炎が貫通することなく形状を維持するものであり、防炎1級の認定を受けている。
また、実施例2に係る不燃紙も、不燃材料の発熱性試験において20分の加熱により600℃近くになっても、発熱量は僅かに0.8MJであり、しかも僅か0.25mmの厚さで亀裂もなく形状を保持し、不燃材料として合格しており、極めて優れた不燃性を有している。
更に、実施例2に係る不燃紙においては、実施例1に係る不燃紙と異なり、長さが1mm〜3mmのガラス繊維を用いていることによって、内部組織が密になり、その結果表面が平滑になるという作用効果が得られる。
これによって、実施例2に係る配合においては、厚さ約0.25mmの少なくとも片面が平滑な不燃紙が得られるが、実施例1に係る配合においては、同じ条件で加圧乾燥を行っているにも関わらず、両面とも表面に細かい凹凸が形成されて平滑な面が得られない。 ここで、本実施の形態1の実施例1及び実施例2に係る不燃紙の内部構造について、図2及び図3を参照して説明する。
図2に示されるように、本実施の形態1の実施例1に係る不燃紙1においては、平均長さ6mmのガラス繊維2を用いているため、長いガラス繊維2が嵩張って、セピオライト3やパルプ4の充填密度も疎となり、この結果、不燃紙1の表面に細かい凹凸が一面に形成されて、平滑でないため、文字・模様等の印刷がし難いという問題点があった。
これに対して、図3に示されるように、本実施の形態1の実施例2に係る不燃紙5においては、最大長さ3mm(1mm〜3mmの範囲内)のガラス繊維6を用いているため、ガラス繊維6もセピオライト3やパルプ4も密に充填されて、その結果不燃紙5の表面が平滑となり、文字・模様等の印刷が容易に美しくできるという作用効果が得られる。
次に、本実施の形態1の実施例1及び実施例2に係る不燃紙1,5に用いられるセピオライト3の粒度分布について、図4を参照して説明する。図4は実施例1及び実施例2に係る不燃紙1,5に用いられるセピオライト3の粒度分布をベックマンコルター社製レーザー粒度測定器LS13−320型を用いてエタノール分散で測定した結果を示すものである。
図4に示されるように、実施例1及び実施例2に係る不燃紙1,5に用いられるセピオライト3は、いずれも美しい正規分布曲線を描く粒度分布を有しており、実施例1に係るセピオライト3の平均粒径は17.2μmであり、実施例2に係るセピオライト3の平均粒径は12.0μmである。これらのセピオライト3を含むスラリーの粘度は適切な値となり、図1のステップS14に示される抄造工程をよりスムーズに行うことができる。したがって、セピオライト3の平均粒径は、12μm〜18μmの範囲内であることが、より好ましい。
また、セピオライト3の平均粒径が10μm〜25μmの範囲内である場合に、不燃紙がより不燃性及び防炎性に優れたものとなることが分かった。したがって、セピオライト3の平均粒径は10μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
次に、本実施の形態1の実施例1及び実施例2に係る不燃紙の特性試験の結果について説明する。実施例1に係る不燃紙1の特性試験の結果を表3に、実施例2に係る不燃紙5の特性試験の結果を表4に、それぞれ示す。
表3及び表4に示されるように、実施例1に係る不燃紙1に比べて、実施例2に係る不燃紙5の方が、紙厚や坪量は殆ど変わらないが、密度が倍近く大きい。これによって、上述の如く、実施例2に係る不燃紙5においては、表面の平滑性が得られている。一方、強度の点については、引張り強さ・湿潤引張り強さ・引裂強さ・破裂強さのいずれの項目においても、実施例1に係る不燃紙1の方が実施例2に係る不燃紙5よりも優れている。したがって、強度を要求される用途においては、実施例1に係る不燃紙1の方が適していると言える。
このようにして、本実施の形態1に係る不燃紙においては、ガラス繊維及びパルプの最適な配合率を明確にすることによってより優れた防炎性が得られる。また、ガラス繊維の最適な長さ範囲を明確にすることによって、表面が平滑であり文字・模様等の印刷が容易であるとともに、柔軟性があって折れ難い不燃紙となる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係る含浸紙について、図5を参照して説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る含浸紙の製造方法を示すフローチャートである。
本実施の形態2に係る含浸紙の製造方法について、図5を参照して説明する。図5に示されるように、本実施の形態2に係る含浸紙は、上記実施の形態1で説明した不燃紙1または不燃紙5に、含浸剤を含浸させることによって製造される。ここでは、より平滑性に優れた、組織のより均一な不燃紙5に含浸を行う場合について説明する。まず、含浸剤としてウレタン樹脂としての水溶性ウレタン樹脂を溶剤としての水に溶解させて、含浸液を調製した(ステップS20)。
次に、ステップS21において含浸工程を実施した。即ち、ステップS20において調製した含浸液を不燃紙5が入る大きさのディップ式の含浸装置に入れて、不燃紙5を入れて含浸を行った。その後、ステップS22において乾燥工程を実施した。即ち、含浸液を不燃紙5に含浸したものを、ドラム式の乾燥装置を用いて120℃で3分間乾燥した。これによって、本実施の形態2に係る含浸紙が得られた。
得られた含浸紙は、不燃紙5の表面の平滑性を維持しており、不燃紙5の内部組織が均一であるためウレタン樹脂としての水溶性ウレタン樹脂が均一に含浸されていた。そして、含浸紙とすることによって、不燃紙5の場合には切断したときに切断面にササクレが生じていたものが、ウレタン樹脂としての水溶性ウレタン樹脂が内部に充填されることによってササクレが生じなくなり、見栄え良く切断することができるようになった。
また、水溶性ウレタン樹脂の含浸量を含浸紙全体に対して40重量%とすることによって、熱硬化性樹脂としての水溶性ウレタン樹脂を含浸した場合でも不燃性を保つことができた。具体的には、不燃材料の発熱性試験における発熱量は4MJであり、8MJ以下という不燃性の基準をクリアした。したがって、壁装材・耐熱化粧板シート等として、安心して用いることができる。
このようにして、本実施の形態2に係る含浸紙においては、表面が平滑であり文字・模様等の印刷が容易であるとともに、柔軟性があって折れ難く、見栄え良く切断することができ、不燃性の基準を満たすことができる。
本実施の形態2においては、含浸剤としてウレタン樹脂としての水溶性ウレタン樹脂を用いた場合について説明したが、ウレタン樹脂に限られるものではなく、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、等の他の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレンを始めとするポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、等の熱可塑性樹脂や、コロイダルシリカ、アルカリケイ酸塩、等の無機バインダーを含浸することもできる。
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3に係る複合紙について、図6を参照して説明する。図6(a)は本発明の実施の形態3に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態3に係る複合紙の構造を示す断面図である。
図6(a)に示されるように、本実施の形態3に係る複合紙9は、上記実施の形態2に係る含浸紙7に、化粧シートとしての薄いツキ板8(坪量が100g/m2 )を接着剤で貼り付けたものである。これによって、薄いツキ板8の装飾性を損ねることなく不燃性を付与することができ、壁装材・耐熱化粧板シート等として、安心して用いることができる。
なお、図6(b)に示されるように、本実施の形態3に係る複合紙9は、含浸紙7と薄いツキ板8を積層した構造を有するが、含浸紙7は僅か0.25mmの厚さであるため、含浸紙7を表側として施工しても薄いツキ板8の装飾性を損ねることはない。そして、含浸紙7を表側とすることによって、優れた不燃性・防炎性を確保することができる。
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4に係る複合紙について、図7乃至図10を参照して説明する。
図7(a)は本発明の実施の形態4に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4に係る複合紙の構造を示す断面図である。図8(a)は本発明の実施の形態4の第1変形例に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4の第1変形例に係る複合紙の構造を示す断面図である。図9(a)は本発明の実施の形態4の第2変形例に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4の第2変形例に係る複合紙の構造を示す断面図である。図10(a)は本発明の実施の形態4の第3変形例に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4の第3変形例に係る複合紙の構造を示す断面図である。
まず、本実施の形態4に係る複合紙について、図7を参照して説明する。図7(a),(b)に示されるように、本実施の形態4に係る複合紙10は、上記実施の形態1の実施例2に係る不燃紙5に、厚さが100μmの金属箔としてのステンレス箔11を接着剤で貼り付けたものである。
ステンレス箔11は100μmと薄くてもガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが不燃紙5を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、ステンレス箔11は熱伝導率が高いため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱をステンレス箔11全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
このようにして、本実施の形態4に係る複合紙10においては、不燃紙5にステンレス箔11を貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなり、壁装材・耐熱化粧板シート等として用いることができる。
次に、本実施の形態4の第1変形例に係る複合紙について、図8を参照して説明する。図8(a),(b)に示されるように、本実施の形態4の第1変形例に係る複合紙12は、上記実施の形態1の実施例2に係る不燃紙5を、厚さが50μmの金属箔としてのアルミ(アルミニウム)箔11Aの両面に接着剤で貼り付けたものである。
アルミ箔11Aは50μmと薄くてもガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが不燃紙5を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、アルミ箔11Aは熱伝導率が高い(0.53Cal/cm・℃・sec)ため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱をアルミ箔11A全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
しかしながら、アルミ箔11Aは錆び易いため、例えば壁装材として使用した場合に結露等の水分によってアルミ箔11Aが錆びると、モルタルが腐食してしまうという問題が生ずる。そこで、本実施の形態4の第1変形例に係る複合紙12においては、図8(a),(b)に示されるように、アルミ箔11Aの両面を不燃紙5で挟むことによって、アルミ箔11Aが表面に露出するのを防いで、建材として用いた場合に水分に強い複合紙12となる。
また、近年は、シックハウス症候群対策及びホルムアルデヒドフリーの要請から、内装材においては水性塗料・水性接着剤が主流となっている。そのため、アルミ箔11Aの表面に対しては水性塗料・水性接着剤は馴染みが悪く、また膨れが発生するという問題があるが、本実施の形態4の第1変形例に係る複合紙12においては、アルミ箔11Aの表面が露出していないため、そのような問題は生じない。
このようにして、本実施の形態4の第1変形例に係る複合紙12においては、不燃紙5をアルミ箔11Aの両面に貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなるとともに、水分にも強く、建材としてより使い勝手の良い複合紙となる。
次に、本実施の形態4の第2変形例に係る複合紙について、図9を参照して説明する。図9(a),(b)に示されるように、本実施の形態4の第2変形例に係る複合紙13は、上記実施の形態3に係る含浸紙7に、厚さが100μmの金属箔としてのステンレス箔11を接着剤で貼り付けてなるものである。
ステンレス箔11は100μmと薄くてもガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが含浸紙7を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、ステンレス箔11は熱伝導率が高いため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱をステンレス箔11全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
このようにして、本実施の形態4の第2変形例に係る複合紙13においては、含浸紙7にステンレス箔11を貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなり、壁装材・耐熱化粧板シート等として用いることができる。
次に、本実施の形態4の第3変形例に係る複合紙について、図10を参照して説明する。図10(a),(b)に示されるように、本実施の形態4の第3変形例に係る複合紙15は、上記実施の形態3に係る含浸紙7を、厚さが80μmの金属箔としての銅箔11Bの両面に接着剤で貼り付けたものである。
銅箔11Bは80μmと薄くてもガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが含浸紙7を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、銅箔11Bは熱伝導率が高い(0.94Cal/cm・℃・sec)ため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱を銅箔11B全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
しかしながら、銅箔11Bは錆び易いため、例えば壁装材として使用した場合に結露等の水分によって銅箔11Bが錆びると、モルタルが腐食してしまうという問題が生ずる。そこで、本実施の形態4の第3変形例に係る複合紙15においては、図10(a),(b)に示されるように、銅箔11Bの両面を含浸紙7で挟むことによって、銅箔11Bが表面に露出するのを防いで、建材として用いた場合に水分に強い複合紙15となる。
また、近年は、シックハウス症候群対策及びホルムアルデヒドフリーの要請から、内装材においては水性塗料・水性接着剤が主流となっている。そのため、銅箔11Bの表面に対しては水性塗料・水性接着剤は馴染みが悪く、また膨れが発生するという問題があるが、本実施の形態4の第3変形例に係る複合紙15においては、銅箔11Bの表面が露出していないため、そのような問題は生じない。
このようにして、本実施の形態4の第3変形例に係る複合紙15においては、含浸紙7を銅箔11Bの両面に貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなるとともに、水分にも強く、建材としてより使い勝手の良い複合紙となる。
なお、本実施の形態4においては、金属箔としてステンレス箔11、アルミ箔11A、銅箔11Bを用いた場合について説明したが、金属箔としてはこれら以外にも、チタン箔、金箔、銀箔、白金箔、錫箔、真鍮箔、ニッケル箔等、種々の金属の箔を用いることができる。
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5に係る複合紙について、図11を参照して説明する。図11(a)は本発明の実施の形態5に係る複合紙の構造を示す断面図、(b)は本発明の実施の形態5の変形例に係る複合紙の構造を示す断面図である。
図11(a)に示されるように、本実施の形態5に係る複合紙17は、上記実施の形態1に係る不燃紙5の片面に無機フィルム剤16を塗布して、無機フィルム剤16の層を形成したものである。ここで、無機フィルム剤16としては、含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)を80重量%、ポリエーテル樹脂を20重量%含有してなる固形分12%のものを用いている。
含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)はアスペクト比が高い鱗片状結晶であるため、不燃紙5の片面に塗布することによって隙間なく不燃紙5の片面を覆う。さらに、ポリエーテル樹脂を含有させることによって、ポリエーテル樹脂のガス不透過膜が形成される。したがって、図11(a)に矢印で示されるように、ガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが本実施の形態5に係る複合紙17を難燃性ウレタンフォームに貼り付けてなる不燃性化粧板を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。更に、無機フィルム剤16は適度な柔軟性を有するため、不燃紙5の耐熱保形性と相俟って、高温時における変形及び表面の亀裂の発生を抑えることができる。
本実施の形態5にかかる複合紙17の不燃性を、比較のために無機フィルム剤16を全く塗布しない不燃紙5のみを難燃性ウレタンフォームに貼り付けてなる化粧板と、無機フィルム剤16を100g/m2 塗布した複合紙17を難燃性ウレタンフォームに貼り付けてなる不燃性化粧板と、150g/m2 塗布したものと、200g/m2 塗布したものとについて、それぞれ燃焼試験を行った。その結果、無機フィルム剤16を全く塗布しない化粧板は総発熱量が13.4MJ/m2であり、不燃性の目安とされる総発熱量8MJ/m2を大きく越えており、不燃性とは認定されないことが判明した。
これに対して、無機フィルム剤16を塗布した複合紙17を難燃性ウレタンフォームに貼り付けてなる不燃性化粧板は、100g/m2 塗布したものが総発熱量7.1MJ/m2、150g/m2 塗布したものが総発熱量6.6MJ/m2、200g/m2 塗布したものが総発熱量6.9MJ/m2であり、いずれも不燃性の目安とされる総発熱量8MJ/m2以下であって、不燃性の基準を満たしていた。
燃焼試験においては、難燃性ウレタンフォームと、難燃性ウレタンフォームに不燃紙5または複合紙17を貼り付ける際に用いられる2液型エポキシ接着剤からかなりの有機ガスが発生するが、不燃紙5のみを貼り付けた場合には、これらの有機ガスが不燃紙5を透過して発火するのに対して、無機フィルム剤16を塗布した複合紙17を難燃性ウレタンフォームに貼り付けてなる不燃性化粧板の場合には、これらの有機ガスが無機フィルム剤16のガスバリア効果で遮断されて、燃焼が抑えられることが分かる。
また、図11(b)に示されるように、本実施の形態5の変形例に係る複合紙18は、上記実施の形態2に係る含浸紙7の片面に無機フィルム剤16を塗布して、無機フィルム剤16の層を形成したものである。ここで、無機フィルム剤16としては、含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)を80重量%、ポリエーテル樹脂を20重量%含有してなる固形分12%のものを用いている。
含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)はアスペクト比が高い鱗片状結晶であるため、含浸紙7の片面に塗布することによって隙間なく含浸紙7の片面を覆う。さらに、ポリエーテル樹脂を含有させることによって、ポリエーテル樹脂のガス不透過膜が形成される。したがって、図11(b)に矢印で示されるように、ガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが本実施の形態5の変形例に係る複合紙18を難燃性ウレタンフォームに貼り付けてなる不燃性化粧板を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。更に、無機フィルム剤16は適度な柔軟性を有するため、含浸紙7の耐熱保形性と相俟って、高温時における変形及び表面の亀裂の発生を抑えることができる。
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6に係る複合紙について、図12及び図13を参照して説明する。図12(a)は本発明の実施の形態6に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態6に係る複合紙の構造を示す断面図である。図13(a)は本発明の実施の形態6の変形例に係る複合紙の製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態6の変形例に係る複合紙の構造を示す断面図である。
図12(a),(b)に示されるように、本実施の形態6に係る複合紙20は、上記実施の形態1の実施例2に係る不燃紙5を、厚さが50μmの金属箔としてのアルミ(アルミニウム)箔11Aの片面に接着剤で貼り付け、反対側の面に坪量が50g/m2 のパルプ100%の普通紙21を接着剤で貼り付けたものである。
アルミ箔11Aは50μmと薄くてもガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが不燃紙5を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、アルミ箔11Aは熱伝導率が高い(0.53Cal/cm・℃・sec)ため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱をアルミ箔11A全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
しかしながら、アルミ箔11Aは錆び易いため、例えば壁装材として使用した場合に結露等の水分によってアルミ箔11Aが錆びると、モルタルが腐食してしまうという問題が生ずる。そこで、本実施の形態6に係る複合紙20においては、図12(a),(b)に示されるように、アルミ箔11Aの両面を不燃紙5及び普通紙21で挟むことによって、アルミ箔11Aが表面に露出するのを防いで、建材として用いた場合に水分に強い複合紙20となる。
また、近年は、シックハウス症候群対策及びホルムアルデヒドフリーの要請から、内装材においては水性塗料・水性接着剤が主流となっている。そのため、アルミ箔11Aの表面に対しては水性塗料・水性接着剤は馴染みが悪く、また膨れが発生するという問題があるが、本実施の形態6に係る複合紙20においては、アルミ箔11Aの表面が露出していないため、そのような問題は生じない。
このようにして、本実施の形態6に係る複合紙20においては、不燃紙5をアルミ箔11Aの片面に、普通紙21をアルミ箔11Aの反対側の面に貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなるとともに、水分にも強く、建材としてより使い勝手の良い複合紙となる。
次に、本発明の実施の形態6の変形例に係る複合紙について、図13を参照して説明する。図13(a),(b)に示されるように、本実施の形態6の変形例に係る複合紙23は、上記実施の形態3に係る含浸紙7を、厚さが80μmの金属箔としての銅箔11Bの片面に接着剤で貼り付け、反対側の面にパルプ100%の普通紙21を接着剤で貼り付けたものである。
銅箔11Bは80μmと薄くてもガスをも透過させないため、火災時に可燃性ガスが含浸紙7を透過して発火・着火することがなく、火災が拡がるのを防ぐことができ、ガスバリアとしての役目を果たす。また、銅箔11Bは熱伝導率が高い(0.94Cal/cm・℃・sec)ため、一箇所が強く加熱された場合でも、熱を銅箔11B全体で吸収することができ、局所的な加熱にも高い不燃性を示す。
しかしながら、銅箔11Bは錆び易いため、例えば壁装材として使用した場合に結露等の水分によって銅箔11Bが錆びると、モルタルが腐食してしまうという問題が生ずる。そこで、本実施の形態6の変形例に係る複合紙23においては、図13(a),(b)に示されるように、銅箔11Bの両面を含浸紙7及び普通紙21で挟むことによって、銅箔11Bが表面に露出するのを防いで、建材として用いた場合に水分に強い複合紙23となる。
また、近年は、シックハウス症候群対策及びホルムアルデヒドフリーの要請から、内装材においては水性塗料・水性接着剤が主流となっている。そのため、銅箔11Bの表面に対しては水性塗料・水性接着剤は馴染みが悪く、また膨れが発生するという問題があるが、本実施の形態6の変形例に係る複合紙23においては、銅箔11Bの表面が露出していないため、そのような問題は生じない。
このようにして、本実施の形態6の変形例に係る複合紙23においては、含浸紙7を銅箔11Bの片面に、普通紙21を銅箔11Bの反対側の面に貼り合わせることによって、更に不燃性に優れたものとなるとともに、水分にも強く、建材としてより使い勝手の良い複合紙となる。
上記各実施の形態においては、不燃紙1,5の主成分である含水ケイ酸マグネシウム化合物としてセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)を用いた場合について説明したが、セピオライト以外にも、またセピオライトと混合して、アタパルジャイト(含水ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、タルク(滑石、含水ケイ酸マグネシウム)等を用いることもできる。
本発明を実施するに際しては、不燃紙、含浸紙及び複合紙のその他の部分の構成、構造、材質、成分、配合、数量、形状、大きさ、製造方法等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。