JP4732940B2 - 不燃シート又は不燃成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、不燃シート又は不燃成形体に関し、更に詳しくは、高度な不燃性を有し、かつ、低密度で軽量性に優れた不燃シート又は不燃成形体に関する。
従来から、建築物の防火対策上、各種建材に不燃性を付与する不燃性建材として、水酸化アルミニウム粉体を多量に含有せしめた基材が使用されている。この水酸化アルミニウム粉体を多量に含有せしめた基材は水酸化アルミニウムの200〜300℃における脱水吸熱反応によって不燃化が図られている。
しかるに、この水酸化アルミニウムの如き含水無機化合物を多量に含有せしめた基材は、一般に、強度がきわめて弱いという難点を有していた。かかる難点を解決するために、現在までいくつかの提案がなされてきた。
たとえば、特許文献1では、含水無機化合物と炭酸塩を特定配合比率で併用することによる不燃性の向上効果により含有し得る合成高分子の量を増加せしめ、かかる不燃性基材の強度を向上せしめるという技術が開示されている。しかし、かかる分野での性能向上要求はさらに強いものがあり、より高度の不燃性を確保するために含水無機化合物と炭酸塩の配合量を高めると不燃性基材の密度が高くなり、その結果、同一厚さで比較したときに、不燃性基材の高重量化を招き、加工時あるいは施工時などの取扱い作業性の悪化が避けられない。
特開平5−112659号公報
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、高度の不燃性を有し、低密度で軽量性に優れた不燃シート又は不燃成形体を提供するものである。
本発明に係る不燃シート又は不燃成形体は、原料スラリーに凝集剤を添加し凝集状態にて湿式抄造して得た抄造シート又は該抄造シートの熱圧成形体であって、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を30〜90質量%(固形分)、セルロース繊維を0.4〜20質量%(固形分)、セルロース繊維と無機繊維を合計で3〜40質量%(固形分)、セピオライトを5〜40質量%(固形分)及び合成高分子を1〜20質量%(固形分)を含有し、前記セピオライトが、JIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理した後、内筒回転型粘度計を用いて、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した粘度が200mPa・s以下であるものであることを特徴とする不燃シート又は不燃成形体であることを特徴とするものである。
本発明の不燃シート又は不燃成形体は、セピオライト、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、及び合成高分子の所定量を含有し、さらに、セルロース繊維あるいはセルロース繊維と無機繊維の所定量を含有する原料スラリーに凝集剤を添加し凝集状態にて湿式抄造し、あるいは得られた抄造シートを熱圧成形して、シート又は成形体中に、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を30〜90質量%(固形分)、セルロース繊維を0.4〜20質量%(固形分)、セルロース繊維と無機繊維を合計で3〜40質量%(固形分)、セピオライトを5〜40質量%(固形分)及び合成高分子を1〜20質量%(固形分)を含有せしめたものであり、高度の不燃性を有し、かつ、低密度で軽量性に優れている。セピオライトが、JIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理した後、内筒回転型粘度計を用いて、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した粘度が200mPa・s以下であるものの場合に、抄造性が改善できることも判っている。すなわち、本発明の不燃シート又は不燃成形体は、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量を小さく押えることができ、建築基準法に規定する不燃材料の要件に合格できる高度な不燃性を有し、かつ、低密度であるため同一厚さで比較したときに軽量化を図ることができ、加工時あるいは施工時などにおいて、良好な取扱い作業性を確保できるという利点を有する。
上記した含水無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸カルシウム(xCaO・Al・yHO;x=1〜4、y=5〜19)等を挙げることができる。これらの化合物は何れも分子内に結晶水を持ち化学的に類似した構造を有する。また、含水無機化合物は、その種類によって分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により難燃化効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した含水無機化合物の何れを用いてもよいが、入手価格等の経済性をも考慮すると水酸化アルミニウムが最適である。
本発明で使用する炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ベリリウム、炭酸亜鉛等を挙げることができる。これらの炭酸塩はその種類により、分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により難燃化効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した炭酸塩の何れを用いてもよいが、入手価格等の経済性をも考慮すると、炭酸カルシウムが最適である。なお、炭酸塩配合によるもうひとつの重要な効果として本発明者が特開平5―112659号公報で指摘したところの発煙量低減効果を挙げることができる。
本発明に係る不燃シート又は不燃成形体中の含水無機化合物及び/又は炭酸塩の含有率範囲を固形分で30〜90質量%とする。好ましくは35〜85質量%、さらに好ましくは40〜80質量%である。その含有率が30質量%未満では十分な不燃性が得られない。反対に90質量%を超えた場合は、含水無機化合物及び/又は炭酸塩の過多により十分な抄造性あるいは機械的強度が得られず不適である。なお不燃シート又は不燃成形体中の含水無機化合物及び/又は炭酸塩を固形分で35〜85質量%の範囲とすることで十分な不燃性と抄造性あるいは機械的強度を確保しやすくなり、40〜80質量%の範囲とすることで、一際、十分な不燃性と抄造性あるいは機械的強度を確保しやすくなる。
また、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は固形分で50/50よりも含水無機化合物過多側とするのが好ましい。含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は固形分で50/50よりも含水無機化合物過多側とすることでより十分な不燃性を確保しやすくなる。
上記したセルロース繊維としては、針葉樹系あるいは広葉樹系の化学パルプ、機械パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプあるいは木綿パルプ、麻パルプ、各種古紙などの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上を併用して使用すればよい。木材パルプは供給量及び品質が安定しており価格も比較的安価であることから最も使いやすいセルロース繊維原料である。木綿パルプ及び麻パルプは供給量が不安定であり価格も高価であるが、本発明におけるような吸熱分解性を有する無機化合物を多量に含有する不燃シート又は不燃成形体においては、必要に応じて該木綿パルプあるいは麻パルプを使用することにより不燃シート又は不燃成形体の機械的強度の低下を最小限にとどめることができる。
本発明に係る不燃シート又は不燃成形体中のセルロース繊維の含有率範囲は固形分で0.4〜20質量%、好ましくは0.6〜18質量%、さらに好ましくは0.8〜15質量%である。その含有率が0.4質量%未満では、セルロース繊維の過少により十分な抄造性か得られないとともに、機械的強度も不十分となる。反対に、20質量%を超えた場合は、有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない。なお、不燃シート又は不燃成形体中のセルロース繊維の含有率を固形分で0.6〜18質量%の範囲とすることで、十分な抄造性、機械的強度及び不燃性を確保しやすくなり、0.8〜15質量%の範囲とすることで、一際、十分な抄造性、機械的強度及び不燃性を確保しやすくなる。
上記した無機繊維としては、ロックウール繊維、ガラス繊維、セラミック繊維あるいは炭素繊維などの中から少なくとも1種類を選択して使用する。
本発明の不燃シート又は不燃成形体中のセルロース繊維と無機繊維の合計含有率範囲は固形分で3〜40質量%、好ましくは3〜35質量%、さらに好ましくは3〜30質量%である。その合計含有率が3質量%未満では、繊維分の過少により十分な抄造性が得られないとともに、無機繊維も過少となり十分な不燃性も得られにくくなる。また、合計含有率が40質量%を超えた場合は無機繊維が過多となり十分な抄造性か得られない。なお、不燃シート又は不燃成形体中のセルロース繊維と無機繊維の合計含有率を固形分で3〜35質量%の範囲とすることで、十分な不燃性及び抄造性を確保しやすくなり、3〜30質量%の範囲とすることで、一際、十分な不燃性及び抄造性を確保しやすくなる。
本発明で使用するセピオライトは、粘土鉱物の一種である含水マグネシウム珪酸塩であり、MgSi1230(OH)(OH・6〜8HOの理想的化学構造式で示すことができる。この化学構造式中、(OH)は結晶水、(OHは結合水、6〜8HOは吸着水である。市販のセピオライトはこの化学式の他に、少量の酸化アルミニウムAl、酸化鉄Fe、酸化カルシウムCaO、酸化カリウムKO、酸化ナトリウムNaO等を含有し得る。セピオライトは、一般に、吸着性、増粘性、揺変性、固結性、及び焼結性を有する。
本発明の不燃シート又は不燃成形体中のセピオライトの含有率範囲は固形分で5〜40質量%、好ましくは7〜35質量%、さらに好ましくは8〜32質量%である。その含有率が5質量%未満では、十分な低密度が得られず、40質量%を超えた場合は抄網脱水後の含水率が高くなり過ぎ、十分な抄造性を得ることができない。なお、不燃シート又は不燃成形体中のセピオライトの含有率を固形分で7〜35質量%の範囲とすることで、十分な低密度及び抄造性を確保しやすくなり、8〜32質量%の範囲とすることで、一際、十分な低密度及び抄造性を確保しやすくなる。
JIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理した後、内筒回転型粘度計を用いて、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した粘度(以下、この粘度の測定方法を上記粘度測定方法と略記することがある。)が200mPa・s以下、好ましくは150mPa・s以下、さらに好ましくは120mPa・s以下であるセピオライトは抄造性のために有利であることが実証されている。上記粘度測定方法による粘度が200mPa・sを超えた場合は、抄網脱水後の含水率が高くなり過ぎ、十分な抄造性を得ることができない。なお、上記粘度測定方法による粘度を150mPa・s以下とすることで、抄網脱水後の含水率を低くでき、十分な抄造性を確保しやすくなる。また、上記粘度測定方法による粘度を120mPa・s以下とすることで、さらに抄網脱水後の含水率を低くでき、一際、十分な抄造性を確保しやすくなる。
本発明で使用する合成高分子は、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ダップ樹脂等の熱硬化性樹脂(繊維状のものを含む)もしくはポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂(繊維状のものを含む)またはSBR、NBR、MBR等の合成ゴム等の中から少なくとも1種類を選択して使用する。これらの合成高分子は、その種類により硬化温度、溶融軟化温度等に幾分差があるが、加熱処理に伴う流動硬化作用あるいは軟化溶融、再固化作用により、シート又は成形体に各種成形賦形効果もしくは諸強度の発現効果又は含水無機化合物及び/又は炭酸塩の脱落防止効果を与えるという点では全く共通している。従って、基本的には、前記合成高分子の何れを用いてもよいが入手価格等の経済性をも考慮すると、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、SBR等が最適である。
本発明の不燃シート又は不燃成形体中の合成高分子の含有率範囲は固形分で1〜20質量%、好ましくは2〜17質量%、さらに好ましくは4〜15質量%である。その含有率が1質量%未満では十分な機械的強度もしくは成形賦形効果又は含水無機化合物及び/又は炭酸塩の脱落防止効果が得られず、20質量%を超えた場合は有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない。なお、不燃シート又は不燃成形体中の合成高分子の含有率を固形分で2〜17質量%の範囲とすることで、十分な機械的強度もしくは成形賦形効果又は含水無機化合物及び/又は炭酸塩の脱落防止効果及び不燃性を確保しやすくなり、3〜15質量%の範囲とすることで、一際、十分な機械的強度もしくは成形賦形効果又は含水無機化合物及び/又は炭酸塩の脱落防止効果及び不燃性を確保しやすくなる。
本発明の不燃シートまたは不燃成形体の坪量は特に限定するものではないが、本発明の不燃シートまたは不燃成形体を壁材あるいは天井材の主構成材として適用する場合、坪量は500g/m以上が好ましく、800g/m以上がより好ましく、1000g/m以上であるとさらに好ましい。坪量を500g/m以上とすることで、十分な機械的強度を確保しやすくなり、800g/m以上とすることで、さらに十分な機械的強度を確保しやすくなり、1000g/m以上とすることで、一際、十分な機械的強度を確保しやすくなる。
本発明に係る不燃シート又は不燃成形体は、上記配合のもとに、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、セルロース繊維、セピオライト及び合成高分子を含有するか、もしくは含水無機化合物及び/又は炭酸塩、セルロース繊維、無機繊維、セピオライト及び合成高分子を含有する構成で各成分を特定量含有する原料スラリーを調成し、該スラリーに凝集剤を添加し凝集状態にて湿式抄造し、必要に応じて、熱圧成形することにより得られる。以下において、製造法にも言及しながらさらに詳述する。
本発明に係る原料スラリーに添加する凝集剤としては、架橋吸着作用等により該原料スラリー中のセピオライト、含水無機化合物及び/又は炭酸塩をセルロース繊維等に定着せしめる機能を発現するものであれば、その種類は特に限定されず、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ソーダ系、ポリアミン系、ポリメタクリル酸エステル系、ジシアンジアミド系、ポリエチレンイミン系、キトサン系、カチオン澱粉系等の任意のものを使用できる。また、係る凝集剤の添加量はその種類により適宜決定すべきことは言うまでもないが、本発明の場合、原料スラリー中のセピオライトと含水無機化合物及び/又は炭酸塩,特にセピオライトをセルロース繊維に強固に定着せしめるために、原料スラリー中の全固形分100質量部に対して前記凝集剤を固形分で0.005〜0.5質量部程度添加するのが好ましい。
さらに、原料スラリー中には、含水無機化合物及び/又は炭酸塩並びにセピオライトの歩留を向上せしめるための各種歩留向上剤あるいは必要に応じて着色のための合成染料、顔料等を含有せしめてもよい。また、用途によっては、機械的強度もしくは後加工性の改善等を図るべく乾燥または湿潤紙力増強剤、サイズ剤、耐水化剤、はっ水剤等を含有せしめるべきことは言うまでもない。
本発明の不燃シート又は不燃成形体に、合成高分子を含有せしめる方法としては、合成高分子の液状物、繊維状物あるいは粒状物等を原料中に内添したり、紙層形成後に塗布または含浸するなどすればよい。ただし、厚さ方向での品質の均一化を図るためには、原料スラリー中に合成高分子の液状物、繊維状物あるいは粒状物等を内添する方法が最も好ましい。
含水無機化合物及び/又は炭酸塩を含有せしめる方法としては、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を含有する塗料を基材に塗布あるいは含浸せしめるなどの方法も考えられるが、所定の含有量を確保し、あるいは厚さ方向での品質の均一化を図るためには、原料スラリー中に含水無機化合物及び/又は炭酸塩を粉体状あるいはスラリー状にて内添する方法が最も好ましい。
この場合、含水無機化合物、炭酸塩、セルロース繊維、無機繊維、セピオライト及び合成高分子の添加方法及び添加順序等は任意であり、必要に応じて叩解処理等を施してもよい。
こうして得た原料スラリーを用いて湿式抄造するには、通常の抄造法によればよい。すなわち、長網、円網あるいは傾斜網等の抄造網上に前記原料スラリーを供給し、濾過、脱水した後、圧搾、乾燥すればよい。また、必要により各種コンビネーション網や、多漕円網及び各種ラミネーター等によりシート層を2層以上重ね合わせてもよい。
熱圧成形については、従来慣用の熱圧プレス成形、予熱―コールドプレス成形、高周波加熱成形などを単独であるいは2種以上組み合せて適用すればよい。
本発明の不燃シート又は不燃成形体は、含水無機化合物及び/又は炭酸塩並びにセピオライトを含有するか、または含水無機化合物及び/又は炭酸塩、無機繊維並びにセピオライトを含有するだけで優れた不燃性を発揮するが、従来慣用の難燃剤の使用を妨げるものではない。併用可能な難燃剤としては、有機リン化合物、含リン含窒素化合物、スルファミン酸グアニジン等のスルファミン酸塩、無機リン酸塩、含ハロゲン化合物及びアンチモン系化合物等の公知の難燃剤を挙げることができる。また、難燃剤の使用方法としては、原料スラリー中に内添せしめるか抄造工程中もしくは抄造後または熱圧成形後に塗布または含浸せしめる等の方法が挙げられる。ただし、一般に、難燃剤は高温加熱時に有害ガスを発生しやすい等の難点もあるため、好ましくは難燃剤を使用すべきではない。難燃剤を使用する場合、含水無機化合物及び/又は炭酸塩並びにセピオライトの含有率または含水無機化合物及び/又は炭酸塩、無機繊維並びにセピオライトの含有率を考慮して難燃剤の含有量を必要最小限にすべきことは当然である。
さらに、用途によっては、得られた不燃シート又は不燃成形体に各種塗料の吹付けもしくは塗布あるいは印刷などの表面処理を施したり、化粧紙、レザー、合成樹脂膜、突板、金属板もしくは金属箔等の面材を貼り合わせるなどして固着せしめ、該不燃シート又は該不燃成形体の付加価値を一段と高めることができることは言うまでもない。
本発明の不燃シート又は不燃成形体の構成において重要な点は、セピオライト、特に上記粘度測定方法による粘度が特定範囲にあるセピオライトを所定量含有すること、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を多量に所定量含有すること、その他にセルロース繊維及び合成高分子の所定量あるいはセルロース繊維、無機繊維及び合成高分子の所定量を含有することである。これによって本発明のシート又は成形体は、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量を小さく押えることができ、建築基準法に規定する不燃材料の要件に合格できる高度な不燃性を示し、かつ、低密度で軽量性に優れているという効果を示す。
含水無機化合物及び/又は炭酸塩を多量に含有せしめて高度な不燃性を確保した不燃性基材は、密度が高くなり、同一厚さで比較したときに、不燃性基材の高重量化を招き、加工時あるいは施工時などの取扱い作業性の悪化が避けられない。従って、高度な不燃性と低密度を両立することは、きわめて困難であった。
そこで、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を多量に含有し、その他にセルロース繊維及び合成高分子あるいはセルロース繊維、無機繊維及び合成高分子を含有するシート又は成形体において、低密度を得るべく、多数次の実験を行ったところ、所定量のセピオライト、特に水に分散せしめたときの粘度が特定範囲にある所定量のセピオライトを用い、かつ、各成分の含有率を特定することにより、かかる目的を達成することができることを見出した。セピオライトとして、JIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理した後、内筒回転型粘度計を用いて、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した粘度が200mPa・s以下であるものを用いた場合に、セピオライト、含水無機化合物及び/又は炭酸塩、及び合成高分子の所定量を含有し、さらに、セルロース繊維あるいはセルロース繊維と無機繊維の所定量を含有する原料スラリーに凝集剤を添加し凝集状態にて容易にかつ良好に湿式抄造でき、あるいは得られた抄造シートを熱圧成形して、シート又は成形体中に、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を30〜90質量%(固形分)、セルロース繊維を0.4〜20質量%(固形分)、セルロース繊維と無機繊維を合計で3〜40質量%(固形分)、セピオライトを5〜40質量%(固形分)及び合成高分子を1〜20質量%(固形分)を含有せしめることにより、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量を小さく押えることができ、建築基準法に規定する不燃材料の要件に合格できる高度な不燃性を有するとともに、密度を低くし、軽量化を図り、加工時あるいは施工時などにおいて、良好な取扱い作業性を確保させるという目的に適うことを見出した。
実施例:
次に、本発明を以下の実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本実施例中の各項目の測定は次の方法によった。
(1)原料スラリーの凝集状態:抄造時に、角型テスト抄紙機の筒内あるいは巻取板紙抄紙機のストックインレット内の原料スラリーを目視観察し、凝集状態を呈している場合を○、凝集状態を呈していない場合を×とした。
(2)抄網脱水後含水率:抄網脱水後の抄網上の湿潤シートを採取し、絶乾法にて、該湿潤シートの含水率を、採取直後に測定した湿潤シートの質量と該湿潤シートを110℃熱風乾燥機にて十分に恒量となるまで乾燥して測定した絶乾質量から、
((湿潤シートの質量−絶乾質量)/絶乾質量)×100 %
で求めた。
(3)抄造性:角型テスト抄紙機による抄造の場合、抄網での脱水及び圧搾の過程で、抄網での脱水不足、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率過多による網上からの湿潤シートの分離困難(含水率過多のため湿潤シートが弱過ぎて崩れる)、湿潤シートの含水率過多による圧搾時の湿潤シートの崩れ等の不具合が何れも発生しないときを○とし、抄網での脱水不足、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率過多による網上からの湿潤シートの分離困難(含水率過多のため湿潤シートが弱過ぎて崩れる)、湿潤シートの含水率過多による圧搾時の湿潤シートの崩れ等の不具合の少なくとも1つの不具合が発生したときを×とした。また、巻取板紙抄紙機による抄造の場合、抄網での脱水、ワインドアップロールへの巻付・積層・剥がし及び圧搾の過程で、抄網での脱水不足、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率過多による網上からの湿潤シートの分離困難、ワインドアップロールへの巻付・積層・剥がし時の不良(含水率過多のための巻付困難あるいは湿潤シートが弱過ぎて崩れる)、圧搾時の湿潤シートの崩れ等の不具合が何れも発生しないときを○とし、抄網での脱水不足、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率過多による網上からの湿潤シートの分離困難、ワインドアップロールへの巻付・積層・剥がし時の不良(含水率過多のための巻付困難あるいは湿潤シートが弱過ぎて崩れる)、圧搾時の湿潤シートの崩れ等の不具合の少なくとも1つの不具合が発生したときを×とした。
(4)厚さ及び密度:JIS P 8118:1998に準拠した。
(5)坪量:JIS P 8124:1998に準拠した。
(6)曲げ強度:JIS A 5905:1994による。繊維配向性がある場合、繊維配向方向とこれに直角をなす方向について測定し両者の平均を求めた。
(7)セピオライトの粘度:内筒回転型粘度計を使用して、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した。被測定液はJIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理して調製した。なお、使用した内筒回転型粘度計は東機産業(株)製のB型粘度計(型式:BM型)であり、内径56mm、深さ110mmのガラスビーカーに被測定液230mLを入れ、内筒に相当するNo.1ローター(径19mm、高さ65mm)を用い、ローター用ガードを使用せずに測定した。本測定による粘度の測定値は、被測定液が無限に拡がっている場合の真値と比べ誤差が10%未満である。
(8)不燃性1:ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験(加熱強度;50kW/m、過熱時間;20分)の総発熱量で評価した。
(9)不燃性2:建築基準法第2条第九号及び同法施行令第108条の2の不燃材料の要件に対する合否で評価した。すなわち、
総発熱量:不燃性1の発熱性試験において、総発熱量が8MJ/mを超えない場合が適合。
亀裂及び穴:不燃性1の発熱性試験において、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がない場合が適合。
最高発熱速度:不燃性1の発熱性試験において、最高発熱速度が10秒を超えて継続して200kW/mを超えない場合が適合。
不燃材料合否:総発熱量、亀裂及び穴、及び最高発熱速度が何れも適合の場合が合格。一つでも不適合の場合は不合格。
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプと繊維長3mmのロックウール繊維(以下、無機繊維aと略称する。)を離解機にて離解して得たセルロース繊維と無機繊維の混合分散液の所定量を取り、これに水酸化アルミニウム粉体(平均粒径5.7μmである。以下同じ)、炭酸カルシウム粉体(平均粒径1.5μmである。以下同じ)、粉体状フェノール樹脂(平均粒子径30μmである。以下同じ)、及び上記粘度測定方法による粘度が51mPa・sであるセピオライト(分散処理前に平均粒径92μmの粉体;以下、セピオライトaと略称する。)を添加し、攪拌機にて十分に分散混合して原料スラリーとした。次いで、該原料スラリーの全固形分100質量部に対して、ポリアクリルアミド系凝集剤を固形分で0.01質量部添加し、凝集状態にて、角型テスト抄紙機にて抄造し、圧搾、乾燥(ほぼ絶乾状態、水分1質量%以下)し、その後、23℃、相対湿度50%にて十分に調湿してシートAを得た。
シートAについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例1において、セピオライトaに代えて、セピオライトaと本発明に係る粘度測定方法による粘度が326mPa・sであるセピオライト(分散処理前に平均粒径56μmの粉体;以下、セピオライトbと略称する。)をセピオライトa/セピオライトb=2/1の固形分質量比で用い(セピオライトa/セピオライトb=2/1の混合物の本発明に係る粘度測定方法による粘度は107mPa・sであった。)、炭酸カルシウム粉体を配合しない以外は実施例1と同様にして、シートBを得た。
シートBについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例1において、各成分の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、シートCを得た。
シートCについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例1において、無機繊維aに代えて、繊維長3mmのガラス繊維(以下、無機繊維bと略称する。)を用い、水酸化アルミニウム粉体に代えて、水酸化マグネシウム粉体状(平均粒径10μmである。以下同じ)を用い、粉体状フェノール樹脂に代えて、繊維状ポリオレフィン樹脂(市販のポリエチレン系合成パルプである。以下同じ)を用いた以外は実施例1と同様にして、シートDを得た。
シートDについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例1において、粉体状フェノール樹脂に代えて、市販のSBR系ラテックスを用い、無機繊維aを配合しない以外は実施例1と同様にして、シートEを得た。
シート状成形体Eについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例1において、セピオライトaに代えて、本発明に係る粘度測定方法による粘度が22mPa・sであるセピオライト(分散処理前に粉体;以下、セピオライトcと略称する。)を用い、炭酸カルシウム粉体を配合しない以外は実施例1と同様にして、シートFを得た。
シートFについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプと無機繊維aをパルパーにて離解し、これに水酸化アルミニウム粉体、炭酸カルシウム粉体、粉体状フェノール樹脂、及びセピオライトaを添加し、十分に分散混合して原料スラリーとした。次いで、該原料スラリーの全固形分100質量部に対して、ポリアクリルアミド系凝集剤を固形分で0.1質量部添加し、凝集状態にて、長網/ワインドアップロール構成の巻取板紙抄紙機にてシート層を20層積層させて抄造し、圧搾、乾燥(ほぼ絶乾状態、水分1質量%以下)し、その後、23℃、相対湿度50%にて十分に調湿してシートGを得た。
シートGについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例7において、シート層の積層数を、20に代えて、14とし、炭酸カルシウム粉体を配合しない以外は実施例7と同様にして、シートHを得た。
シートHについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例1と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートAに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Aを得た。
成形体Aについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例2と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートBに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Bを得た。
成形体Bについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例3と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートCに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Cを得た。
成形体Cについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例4と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートDに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Dを得た。
成形体Dについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例6と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートFに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Fを得た。
成形体Fについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例7と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートGに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Gを得た。
成形体Gについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
実施例8と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートHに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Hを得た。
成形体Hについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1において、セピオライトaを配合しない以外は実施例1と同様にして、シートIを得た。
シートIについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例7において、セピオライトaを配合しない以外は実施例7と同様にして、シートJを得た。
シートJについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
[比較例3]
比較例1と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートIに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Iを得た。
成形体Iについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
[比較例4]
比較例2と同様にして得た23℃、相対湿度50%にて十分に調湿したシート(シートJに相当)を熱プレスにて加熱処理(温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分)し、成形体Jを得た。
成形体Jについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、抄造性、厚さ、密度、坪量、曲げ強度、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
上記した実施例及び比較例1〜3について、よく対応するものを比較しながら、さらに詳しく説明する。
実施例1と比較例1を比較する。比較例1は、実施例1においてセピオライトを含有せしめず、その分、含水無機化合物と炭酸塩の含有率を増したものであり、含水無機化合物、炭酸塩、及びセピオライトの合計で考えたときにはほぼ同一組成を有している。また、実施例1と比較例1は共に熱プレス無でシート厚さもほぼ同等(実施例1が3.45mm、比較例1が3.73mm)である。実施例1と比較例1は共に原料スラリーの凝集性、抄造性は良好で、曲げ強度もほぼ同等(実施例1が3.5MaP、比較例1が3.4MPa)であるが、密度は実施例1が0.94g/cmであるのに対し、比較例1では1.10g/cmであり、約17%高くなっている。また、不燃性について見てみると、ISO 5660 part1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量が、実施例1の6.7MJ/mに対し、比較例1では8.6MJ/mとなり、約28%上昇し不燃性が悪化している。その結果、建築基準法に規定する不燃材料の要件に対して、実施例1は合格であるが、比較例1は不合格である。
次に、実施例7と比較例2を比較する。比較例2は、実施例7においてセピオライトを含有せしめず、その分、含水無機化合物と炭酸塩の含有率を増したものであり、含水無機化合物、炭酸塩、及びセピオライトの合計で考えたときにはほぼ同一組成を有している。また、実施例7と比較例2は共に熱プレス無でシート厚さもほぼ同等(実施例7が3.45mm、比較例2が3.71mm)である。実施例7と比較例2は共に原料スラリーの凝集性、抄造性は良好で、曲げ強度もほぼ同等(実施例7が3.7MaP、比較例2が3.5MPa)であるが、密度は実施例7が0.96g/cmであるのに対し、比較例2では1.12g/cmであり、約17%高くなっている。また、不燃性について見てみると、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量が、実施例7の7.3MJ/mに対し、比較例2では8.6MJ/mとなり、約18%上昇し不燃性が悪化している。その結果、建築基準法に規定する不燃材料の要件に対して、実施例7は合格であるが、比較例2は不合格である。
次に、実施例9と比較例3を比較する。比較例3は、実施例9においてセピオライトを含有せしめず、その分、含水無機化合物と炭酸塩の含有率を増したものであり、含水無機化合物、炭酸塩、及びセピオライトの合計で考えたときにはほぼ同一組成を有している。また、実施例9と比較例3は共に熱プレス有でシート厚さもほぼ同等(実施例9が3.02mm、比較例3が3.01mm)である。実施例9と比較例3は共に原料スラリーの凝集性、抄造性は良好で、曲げ強度もほぼ同等(実施例9が7.8MaP、比較例3が8.1MPa)であるが、密度は実施例9が1.08g/cmであるのに対し、比較例3では1.36g/cmであり、約26%高くなっている。また、不燃性について見てみると、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量が、実施例9の6.8MJ/mに対し、比較例3では8.4MJ/mとなり、約24%上昇し不燃性が悪化している。その結果、建築基準法に規定する不燃材料の要件に対して、実施例9は合格であるが、比較例3は不合格である。
次に、実施例14と比較例4を比較する。比較例4は、実施例14においてセピオライトを含有せしめず、その分、含水無機化合物と炭酸塩の含有率を増したものであり、含水無機化合物、炭酸塩、及びセピオライトの合計で考えたときにはほぼ同一組成を有している。また、実施例14と比較例4は共に熱プレス有でシート厚さもほぼ同等(実施例14が3.00mm、比較例4が3.02mm)である。実施例14と比較例4は共に原料スラリーの凝集性、抄造性は良好で、曲げ強度もほぼ同等(実施例14が8.8MaP、比較例4が8.5MPa)であるが、密度は実施例14が1.11g/cmであるのに対し、比較例4では1.38g/cmであり、約24%高くなっている。また、不燃性について見てみると、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量が、実施例14の7.3MJ/mに対し、比較例4では8.7MJ/mとなり、約19%上昇し不燃性が悪化している。その結果、建築基準法に規定する不燃材料の要件に対して、実施例14は合格であるが、比較例4は不合格である。
以下の比較例は請求項2の発明の理解に利用できる:
[比較例5]
実施例1において、セピオライトaに代えて、セピオライトbを用い、ポリアクリルアミド系凝集剤の添加量を0.01質量部に代えて、0.03質量部とした以外は実施例1と同様にして、角型テスト抄紙機にて抄造したところ、抄網での脱水が不足で、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率が過多となり、網上から湿潤シートを剥がし取る際に湿潤シートが弱過ぎて崩れてしまい、所望のシートを得ることができなかった。
抄網脱水後の抄網上の湿潤シートを採取し、該湿潤シートについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、及び抄造性をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
[比較例6]
実施例1において、セピオライトaに代えて、上述の粘度測定方法による粘度が686mPa・sであるセピオライト(分散処理前に平均粒径75μmの粉体;以下、セピオライトdと略称する。)を用い、ポリアクリルアミド系凝集剤の添加量を0.01質量部に代えて、0.05質量部とした以外は実施例1と同様にして、角型テスト抄紙機にて抄造したところ、抄網での脱水が不足で、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率が過多となり、網上から湿潤シートを剥がし取る際に湿潤シートが弱過ぎて崩れてしまい、所望のシートを得ることができなかった。
抄網脱水後の抄網上の湿潤シートを採取し、該湿潤シートについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、及び抄造性をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
[比較例7]
実施例7において、セピオライトaに代えて、セピオライトbを用い、ポリアクリルアミド系凝集剤の添加量を0.1質量部に代えて、0.2質量部とした以外は実施例7と同様にして、長網/ワインドアップロール構成の巻取板紙抄紙機にて抄造したところ、抄網での脱水が不足で、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率が過多となり、湿潤シートをワインドアップロールへ巻付・積層せしめる際に湿潤シートが弱過ぎて崩れてしまい、所望のシートを得ることができなかった。
抄網脱水後の抄網上の湿潤シートを採取し、該湿潤シートについて、各成分の含有率を表1に示すとともに、原料スラリーの凝集状態、抄網脱水後含水率、及び抄造性をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
上記した実施例1〜15及び比較例5〜7について、よく対応するものを比較しながら、さらに詳しく説明する。
まず、実施例1と比較例5、6を比較する。これらはほぼ同一の組成を有しているが、用いたセピオライトが異なる。上述の粘度測定方法による粘度が、請求項2で特定する200mPa・s以下という範囲に対し、実施例1で用いたセピオライトは51mPa・sで、この範囲に入っているが、比較例5で用いたセピオライトは326mPa・sで、この範囲の上限値よりも大きく、比較例6で用いたセピオライトは686mPa・sで、さらに大きい。実施例1、比較例5、6の何れも原料スラリーの凝集状態は良好であるが、抄網脱水後の含水率は、実施例1に比べ、比較例5では2.6倍、比較例6では3.6倍であり、きわめて高くなった。この結果、実施例1では抄造性が良好であり、所望のシートを得ることができたのに対し、比較例5、6では、抄網での脱水が不足で、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率が過多となり、網上から湿潤シートを剥がし取る際に湿潤シートが弱過ぎて崩れてしまい、所望のシートを得ることができないまでに抄造性が悪化した。
次に、実施例7と比較例7を比較する。これらはほぼ同一の組成を有しているが、用いたセピオライトが異なる。上述の粘度測定方法による粘度が、本発明で特定する200mPa・s以下という範囲に対し、実施例7で用いたセピオライトは51mPa・sで、この範囲に入っているが、比較例7で用いたセピオライトは326mPa・sで、この範囲の上限値よりも大きい。実施例7及び比較例3共に原料スラリーの凝集状態は良好であるが、抄網脱水後の含水率は、実施例7に比べ、比較例7では2.5倍であり、きわめて高くなった。この結果、実施例7では抄造性が良好であり、所望のシートを得ることができたのに対し、比較例7では、抄網での脱水が不足で、抄網脱水後の抄網上の湿潤シートの含水率が過多となり、湿潤シートをワインドアップロールへ巻付・積層せしめる際に湿潤シートが弱過ぎて崩れてしまい、所望のシートを得ることができないまでに抄造性が悪化した。
また、以上の比較説明で触れた以外の実施例、すなわち実施例2〜6、8、10〜15についても、何れも原料スラリーの凝集状態及び抄造性は良好で、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量は6.6〜7.3MJ/mと小さく押えられており、建築基準法に規定される不燃材料の要件に合格する高度な不燃性を有しており、かつ、密度についても、熱プレス無のものについては0.89〜1.01g/cm、熱プレス有のものについては1.00〜1.09g/cmと低密度で軽量性に優れている。
上述の全ての実施例および比較例から以下のことが判る。すなわち、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を多量に含有し、その他にセルロース繊維及び合成高分子あるいはセルロース繊維、無機繊維及び合成高分子並びにセピオライトを請求項1に記載の量で含有する本発明の不燃シート又は不燃成形体は、ISO 5660 part 1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験の総発熱量を小さく押えることができ、建築基準法に規定する不燃材料の要件に合格できる高度な不燃性を有し、かつ、低密度であるため同一厚さで比較したときに軽量化を図ることができ、加工時あるいは施工時などにおいて、良好な取扱い作業性を確保できるという利点を有する。
セピオライトとして、JIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理した後、内筒回転型粘度計を用いて、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した粘度が200mPa・s以下であるものに特定し、さらに各成分の含有率を本発明で特定した範囲とすることにより、湿式抄造の際に抄網での脱水が良好となり、抄網脱水後の含水率を適度に押えることができ、良好な抄造性を確保できるという優れた効果が達成される。
Figure 0004732940

Claims (8)

  1. 原料スラリーに凝集剤を添加し凝集状態にて湿式抄造して得た抄造シート又は該抄造シートの熱圧成形体であって、含水無機化合物及び/又は炭酸塩を30〜90質量%(固形分)、セルロース繊維を0.4〜20質量%(固形分)、セルロース繊維と無機繊維を合計で3〜40質量%(固形分)、セピオライトを5〜40質量%(固形分)及び合成高分子を1〜20質量%(固形分)を含有し、そして前記セピオライトが、JIS P 8220:1998に規定される標準離解機にて、20℃の水道水を用いて、液量1500ml、濃度3質量%、軸回転数30000回にて処理した後、内筒回転型粘度計を用いて、液温25℃、内筒回転速度6回転/分、内筒回転時間1分にて測定した粘度が200mPa・s以下であるものであることを特徴とする不燃シート又は不燃成形体。
  2. 上記含水無機化合物と炭酸塩との固形分質量比が100/0〜50/50である請求項1に記載の不燃シート又は不燃成形体。
  3. 上記含水無機化合物が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1または2に記載の不燃シート又は不燃成形体。
  4. 上記炭酸塩は炭酸カルシウムである請求項1〜のいずれか一つに記載の不燃シート又は不燃成形体。
  5. 上記無機繊維がロックウール繊維及びガラス繊維の中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1〜のいずれか一つに記載の不燃シート又は不燃成形体。
  6. 上記合成高分子が熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び合成ゴムの中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1〜のいずれか一つに記載の不燃シート又は不燃成形体。
  7. 2層以上のシート層の積層体からなる請求項1〜のいずれか一つに記載の不燃シート又は不燃成形体。
  8. 坪量が500g/m以上である、請求項1〜のいずれか一つに記載の不燃シート又は不燃成形体。
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