JP7302237B2 - 紙管 - Google Patents
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Description
そして、特許文献1では、複数個の紙管を並列しシートで連結して紙管パネルとし、その紙管パネルを、間仕切り、天井材、床材、扉材などの内装材や家具材の構成部品として使用することが提案されている。
しかし、従来の紙管は、紙を材料とするために燃えやすいという課題を有している。
ここで、居住、商業用施設、駅舎、空港等公共施設等の建築物において、火災時に燃え広がらないようにするために、一定の規模・用途に供する、居室や廊下・階段等の避難経路等は、その壁や天井の仕上げ材に、それぞれの要求性能に応じた防火材料(不燃材料、準不燃材料及び難燃材料)を用いなければならないことが、法律(施行令第129条)で義務付けられている。
ここで、本発明の紙管が有する不燃性は、ISO5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験に準拠し、上記紙管の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な外側から内側まで貫通する亀裂及び穴がないことを満たす不燃性を有することが好ましい。
図1に示すように、本実施形態における不燃シート1の表面(第1の面)には表面アンカー層3aが形成されており、不燃シート1の裏面(第2の面)には裏面アンカー層3bが形成されている。そして、本実施形態の紙管は、図2に示すように、アンカー層(表面アンカー層3a及び裏面アンカー層3b)を備えた不燃シート1同士が、例えば、無機系接着剤層2を介して複数積層して形成される。
不燃シート1の積層数は特に限定は無いが、不燃シート1の積層数が多いほど強度や剛性が確保されることから、紙管を用いる用途で要求される強度や剛性に応じて積層数を設定すればよい。
紙管の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法で製造すればよい。例えば特開昭63-249637号公報等に記載のように、芯材に不燃シート1を螺旋状に巻き付けることで積層してスパイラル紙管として作成したり、特開平7-285184号公報等に記載のように、芯材に順次紙を巻き付けてリニア紙管として作成したりすればよい。
紙管の断面形状は、円形形状でも、角形形状でも他の形状でも、筒形状であれば特に限定されない。
(不燃シート1)
不燃シート1は、火に接しても燃え難い素材を用いて形成されたシート状の部材である。
不燃シート1は、例えば、熱可塑性樹脂と、無機質材料とを含んだ部材である。
本実施形態の無機質材料の含有量は、不燃シート1の質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であればよく、20質量%以上80質量%以下の範囲内であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。無機質材料の含有量が不燃シート1の質量に対して、15質量%未満であると、相対的に熱可塑性樹脂の割合が多くなるため、不燃性または難燃性が得にくい傾向がある。また、不燃シート1の表面をホフマンスクラッチテスターを用いて引っ掻いた際に、視認できる程度の傷が付く、即ち十分な表面硬度が得られないことがある。一方、無機質材料の含有量が不燃シート1の質量に対して、90質量%を超えると、相対的に熱可塑性樹脂の割合が少なくなる。このため、不燃シート1表面にアンカー層塗工もしくは無機系接着剤層塗工等を行った際に不燃シート1表面に所謂「粉吹き」が発生することがある。ここで、「粉吹き」とは、不燃シート1に含まれた無機質材料が不燃シート1の表面に浮き出ることをいう。粉吹きが発生すると、裏面アンカー層3bや表面アンカー層3aあるいは無機系接着剤層2の形成時に、不燃シート1から浮き出た無機質材料によって裏面アンカー層3bや表面アンカー層3aあるいは無機系接着剤層2が積層しにくくなる、即ち裏面アンカー層3bや表面アンカー層3aあるいは無機系接着剤層2の塗工適性が低下することがある。また、表面アンカー層3a及び裏面アンカー層3bの少なくとも一つを形成したシートを折り曲げて再び開いた際に、折り曲げた部分から割れが発生したり、無機質材料が落ちたりすることがある。
また、不燃シート1は、1軸延伸または2軸延伸の不燃材であることが好ましい。不燃シート1が1軸延伸または2軸延伸の不燃材であれば、紙管としての汎用性を高めることができる。
また、表面アンカー層3a及び裏面アンカー層3bを形成する前に、例えば、不燃シート1の表面及び裏面の少なくとも一方をブラッシングして、粉吹きした無機質材料、例えば炭酸カルシウム及び炭酸カルシウム塩の少なくとも一方を含む粉体を事前に落とすようにしてもよい。
表面アンカー層3aは、不燃シート1の表面全体を覆うように形成された層であって、不燃シート1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。無機系接着剤層2の塗工時に不燃シート1に含まれる無機質材料がその塗工系内、具体的には塗工装置内で粉落ちすると、その塗工系内を汚染することがある。また、不燃シート1に含まれる無機質材料が粉落ちすると、例えば、不燃シート1同士を接着させるための無機系接着剤層2の抜け等の不具合が発生する可能性がある。ここで、「無機系接着剤層の抜け」とは、無機系接着剤層2が部分的に塗工されないことをいう。
表面アンカー層3aは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。ここで、「塩酢ビ」とは、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体を意味する。また、「塩酢ビを含むウレタン系樹脂」とは、塩酢ビとウレタン系樹脂とを含んだ組成物であり、塩酢ビの含有量とウレタン系樹脂の含有量との比(塩酢ビの含有量(質量)/ウレタン系樹脂の含有量(質量))は80/20~1/99の範囲内であればよく、50/50~5/95の範囲内であれば好ましく、20/80~10/90の範囲内であればさらに好ましい。
なお、本実施形態では表面アンカー層3aを構成する樹脂として、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではない。表面アンカー層3aは、例えば、塩酢ビのみを含む樹脂で形成されていてもよい。
裏面アンカー層3bは、不燃シート1の裏面全体を覆うように形成された層であって、不燃シート1に含まれる無機質材料の粉落ちを防止するための層である。
裏面アンカー層3bは、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。
また、裏面アンカー層3bの厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲内であり、好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲内である。
なお、本実施形態では裏面アンカー層3bを構成する樹脂として、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではない。裏面アンカー層3bは、例えば、塩酢ビのみを含む樹脂で形成されていてもよい。
なお、本実施形態では、裏面アンカー層3bを備えた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、裏面アンカー層3bは形成されていなくてもよい。
無機系接着剤層2は、無機系接着剤を用いて形成されたシート状の層であって、不燃シート1同士を接着する役割を果たす。
無機系接着剤層2を形成する無機系接着剤としては、例えば、シリカを主成分とするシリカ系接着剤、セラミックを主成分とするセラミック系接着剤、セメントを主成分とするセメント系接着剤を用いることが好ましい。なお、無機系接着剤層2を形成する無機系接着剤としては、例えば、ケイ酸ソーダ、変成シリコン系接着剤、アルミナ系接着剤、マグネシア系接着剤を用いてもよい。
無機系接着剤を用いて無機系接着剤層2を形成することで、有機系接着剤を用いて形成した接着剤層と比較して、耐火性を向上させることが可能となる。また、不燃性も向上させることが可能となる。
これに対し、上述のように本実施形態の紙管は不燃性を発揮することで、不燃を要求されるような箇所に適用でき且つ美観を損なわない。
ここで、積層する不燃シート1間に、アルミニウム薄板などの金属板又はガラスペーパーを介挿させても良い。金属板やガラスペーパーは、筒状に巻き付ける変形できるだけの厚さの薄板とする。
また、2枚の不燃シート1間に金属板又はガラスペーパーを介挿した複合基材を、積層数が3層となるように芯材に巻き付けることで紙管を構成するようにしても良い。複合基材の積層数は2層でも構わないが、3層以上が好ましい。
本実施形態の紙管の使用例を図3及び図4に示す。図3は、紙管を長椅子の座面部分に適用した例であり、図4は、天井から吊って天井をデザインしたものである。勿論この例に限定されず、間仕切り壁を構成したり、テーブルの脚を構成したりしても良い。
紙管の不燃性について、次の評価を実施した。
(実施例1、2)
なお、評価は、表面アンカー層3a及び裏面アンカー層3bを備える不燃シート1を重ねた平板状のサンプルで行った。
不燃シート1としては、無機質材料である炭酸カルシウムを80質量%、ポリプロピレン樹脂を20質量%、それぞれ含んだ不燃シート1を用意した。不燃シート1の厚さは50μmである。
そのような不燃シート1を4枚重ねた実施例1のサンプルと、不燃シート1を5枚重ねた実施例2のサンプルを用意した。なお、不燃シート1同士を接着する接着剤として、シリカを主成分とするシリカ系接着剤を用いた。
評価は、表面アンカー層3a及び裏面アンカー層3bを備える不燃シート1を重ねた平板状のサンプルで行った。
不燃シート1としては、無機質材料である炭酸カルシウムを12質量%、ポリプロピレン樹脂を88質量%、それぞれ含んだ不燃シート1を用意した。不燃シート1の厚さは50μmである。
そのような不燃シート1を4枚重ねた比較例1のサンプルと、不燃シート1を5枚重ねた比較例2のサンプルを用意した。なお、不燃シート1同士を接着する接着剤として、シリカを主成分とするシリカ系接着剤を用いた。
そして、実施例1及び実施例2、並びに比較例1及び比較例2としてそれぞれ3つのサンプルを用意して、不燃性の試験を行った。
不燃性試験は、ISO5660-1に準拠し、建築基準法第二条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験を実施した。
そして、加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)が、8MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度として、10秒以上継続して200kW/m2を超えなければ、合格とした。但し、基材に亀裂や穴のないことも条件とした。
試験結果を表1に示す。
そして、このような不燃性試験をクリアした不燃材料で、紙管状に成型して使用すればよい。
ここで、実施例1及び実施例2において、不燃シート1の積層を6~9層まで変更して行ったところ、8層以上では、加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)が、8MJ/m2を超えた。従って、不燃性の観点から、不燃シート1の積層数は7層以下が好ましい。
2・・・無機系接着剤層
3a・・・表面アンカー層
3b・・・裏面アンカー層
Claims (9)
- 複数の不燃シートを積層し、
前記不燃シートは、熱可塑性樹脂と、無機質材料とを含有し、
前記無機質材料の含有量は、前記不燃シートの質量に対して、15質量%以上90質量%以下の範囲内であり、
前記不燃シートの第1の面に形成された第1のアンカー層と、前記不燃シートの前記第1の面とは反対側の面である第2の面に形成された第2のアンカー層とを備え、
前記第1のアンカー層及び前記第2のアンカー層は、塩酢ビを含むウレタン系樹脂、または塩酢ビを含むアクリル系樹脂をそれぞれ含有することを特徴とする紙管。 - 前記無機質材料は、粉末形状であり、平均粒子径が1μm以上3μm以下の範囲内であり、且つ最大粒子径が50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙管。
- 前記無機質材料は、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、珪酸ジルコン、酸化ジルコン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、三酸化モリブデンあるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムのケイ酸、及びジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体、並びにそれらの塩の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙管。
- 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステルの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙管。
- 前記熱可塑性樹脂と、前記無機質材料との合計含有量は、前記不燃シートの質量に対して、90質量%以上100質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の紙管。
- 前記不燃シートの厚みは、50μm以上250μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の紙管。
- 積層する前記不燃シート間に、金属板又はガラスペーパーを介挿させたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の紙管。
- 2枚の前記不燃シート間に金属板又はガラスペーパーを介挿した複合基材を、複数積層したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の紙管。
- 前記紙管が有する不燃性が、ISO5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験に準拠し、前記紙管の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な外側から内側まで貫通する亀裂及び穴がないことを満たす不燃性を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の紙管。
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