JP2007113441A - クランクケース一体型シリンダブロック - Google Patents

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Abstract

【課題】 シリンダ部とクランクケース部を一体に鋳造した構造の、小型内燃機関において、特に振動・騒音を低減するために補強・補剛されたランクケース一体型シリンダブロック構造を提供する。
【解決手段】 シリンダ部とクランクケース部を一体に鋳造した筺状のシリンダブロックにクランクケースカバーを固定し、該クランクケースカバーと、該クランクケースカバーに対向する前記筺状のシリンダブロックの背壁のほぼ中央部に、それぞれクランク軸の一端を支承するクランク軸受孔を備えたクランク軸受ボスを内外両側に突出させて垂設した構造のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記筺状のシリンダブロックの薄肉の背壁と、該背壁の周囲から直角に起ち上がって筺状に繋がる薄肉の側壁と交わる交線に沿って同側壁の内側に隆起する内周リブを設けたクランクケース一体型シリンダブロック。
【選択図】図1

Description

本発明は、シリンダ部とクランクケース部を一体に鋳造した構造の、小型内燃機関において、特に振動・騒音を低減するために補強・補剛されたクランクケース一体型シリンダブロックの構造に関する。
内燃機関の本体部は、周知のように内側にピストンを摺動自在に保持するシリンダ部と、内側にクランク軸を回転自在に収納保持するクランクケース部とで成り、シリンダ部の頂端部にはシリンダヘッドが取付られ、また、クランクケース部の一側端面の開口部にはクランクケースカバーが取付られて閉じられており、小型の内燃機関では、シリンダ部とクランクケース部は一体に鋳造された構造となっていて、クランクケース一体型シリンダブロックと呼んでいる。クランクケース一体型シリンダブロック(以下シリンダブロックと呼ぶ)は、内燃機関の小型化、軽量化のために厚さの薄い板で囲まれる所謂薄板構造となっており、エンジンの取付用のベース部(取付足部)、クランク軸を支持する軸受部などの大きな力を受ける部分は厚肉となっていて、受けた力を厚肉部からリブなどで薄板部に分散して伝える構造となっている。(例えば特許文献1)
特許第3087106号公報(図2、図3) 特許第3243555号公報(図1)
内燃機関の小型・軽量化の観点から、シリンダブロックの肉厚は薄肉化が進められているが、薄肉化を行うと、しばしば強度・剛性の低下が現れ、振動が大きくなって、ひび割れや騒音が生ずるなどの問題がある。
シリンダブロックの強度や振動特性は設計時に計算によって検討されて基本構想が立てられるが、シリンダブロックの構造は3次元的に複雑な形状をしていて解析が難しく、有限要素法を用いてコンピュータによる計算が行われて労力は軽減されているが、これらの計算は決まった形状のものに対する評価が可能であるにとどまり、最適化を行うためには考えられる種々の構造のものについて比較する必要があり、いまだに膨大な労力と時間を必要とし、コスト面及び設計スケジュール面から問題となる。
本発明は、従来の類似機種の実験やFEM解析から得られた経験に着目して騒音、振動の原因を検討洞察し、従来の薄肉構造のクランクケース一体型シリンダブロックの基本構造を踏襲し、特に薄肉部の厚さを維持し、リブの追加や強化によって、強度・剛性を増大させ、特に振動や騒音を低減させる構造を提供することを目的としている。
上記の問題点に対し、本発明は以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段のクランクケース一体型シリンダブロックは、単気筒小型内燃機関のシリンダブロックであって、シリンダ部とクランクケース部を一体に鋳造した筺状のシリンダブロックにクランクケースカバーを固定し、該クランクケースカバーと、該クランクケースカバーに対向する前記筺状のシリンダブロックの背壁のほぼ中央部に、それぞれクランク軸の一端を支承するクランク軸受孔を備えたクランク軸受ボスを内外両側に突出させて垂設した構造のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記筺状のシリンダブロックの薄肉の背壁と、該背壁の周囲から直角に起ち上がって筺状に繋がる薄肉の側壁と交わる交線に沿って、同側壁の内側に隆起する内周リブを設けたクランクケース一体型シリンダブロック。
(2)第2の手段のクランクケース一体型シリンダブロックは、上記第1の手段のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、内燃機関が単気筒傾斜型小型内燃機関であって、前記側壁が底壁、左壁、天壁、右上壁、及び右下壁から構成されているクランクケース一体型シリンダブロック。
(3)第3の手段のクランクケース一体型シリンダブロックは、上記第1及び第2の手段のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記内周リブの巾が壁厚の3倍程度、厚さが2倍程度であるクランクケース一体型シリンダブロック。
(4)第4の手段のクランクケース一体型シリンダブロックは、上記第2及び第3の手段のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記背壁の外側面に、前記クランク軸受ボスからシリンダ部の軸線に平行に斜め下に走る1本のリブと、斜め上に走る2本のリブをそれぞれ設け、また、前記のクランクケースカバーの内側面に、前記クランク軸受ボスからシリンダ部の軸線に平行に斜め下に走る1本のリブと、斜め上に走る2本のリブをそれぞれ設けたクランクケース一体型シリンダブロック。
(5)第5の手段のクランクケース一体型シリンダブロックは、上記第1〜4の手段のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、クランクケース部の下部に設けた左右に伸びるベース部の上面と、左壁及び右下壁のそれぞれの外側面の間に、奥行き方向の中央にリブをそれぞれ設け、また、左壁の外側面に前記リブの上端から長手方向に平行して走る2本のリブを設け、背壁寄りの1本は天壁まで延ばして、天壁部でこれと直交する2本のリブと繋げたクランクケース一体型シリンダブロック。
請求項1〜3に係る発明は、上記第1〜3の各手段のクランクケース一体型シリンダブロックであり、内周リブは、外周壁を薄板で構成した薄板構造の壁面の交差線部を内側に肉付けして補強するので、交差線に沿った軸力を受持つことが出来、この内周リブと連接する他のリブととともにトラスを形成して強度を増すとともに、交差する2つの面の面角の変化を押さえる効果があり、特に剛度が増加して振動・騒音の発生を抑えることが出来る。
請求項4に係る発明は、上記第4の手段のクランクケース一体型シリンダブロックであり、クランクケースの外側、及びクランクケースカバーの内側に、軸受ボスから斜め下方向に1本、斜め上側方向に2本設けたリブは、爆発行程によるシリンダヘッドから加わる力と、クランク軸から加わるシリンダ軸方向の軸力に対する補強として有効である。
請求項5に係る発明は、上記第5の手段のクランクケース一体型シリンダブロックであり、クランクケースのベース部と側壁に設けた2本のリブは、主として側壁の補剛の役を担い、振動や騒音の発生を抑え、ベース部の両端上面とクランクケース側壁外面との間に設けた幅広のリブは、主としてベース部の曲げ強度を補強するものである。
これらの補強・補剛の手段による効果は耐久実験により確かめられ、剛性の強化により振動と騒音の発生が抑えられる。
本発明の実施の形態を図1〜図7によって説明する。
図1は本発明に係わる単気筒の傾斜型4サイクル小型エンジンのエンジン本体1の出力軸側の左上から視た分解斜視図である。エンジン本体1は、一体型シリンダブロック(以下シリンダブロックと呼ぶ)2と、このシリンダブロック2の頂端部にガスケット3を介して螺着されるシリンダヘッド4、及び一側部に液体シーラを介して螺着されるクランクケースカバー5とより成っている。図2はシリンダブロック2を出力軸側から視た正面図であり、図3、図4、図5、及び図6はそれぞれ図2の背面図、平面図、左側面図、及びA−A断面図である。また、図7はクランクケースカバー5の内側を示す背面図である。
本発明の構造はクランクケースカバー5を含むシリンダブロック2を対象としている。
シリンダブロック2は(主として図1、2参照)、周囲に多数の冷却用フィンを備え、内部に図示しないシリンダライナを備えるシリンダ部6と、クランク軸を収容してその一軸端(出力側)を回転自在に支持する筺状のクランクケース部7とで成っていて、両者は一体に鋳造されてクランクケース一体型のシリンダブロック2を形成している。
シリンダ部6はエンジンの全高を低くするために、正置されたクランクケース部7の垂直方向から水平方向に傾斜させてある。シリンダ部6の外端の開口部、及び筺状のクランクケース部7の正面の開口部は前述したようにシリンダヘッド4、及びがクランクケースカバー5がそれぞれ複数のボルトによって螺着されて閉じられる。
クランクケース部7は正面側が開口する薄肉の筺体で、開口部の反対側の背壁8と、この背壁8の周縁部と直角に交わって筒状に繋がる底壁9、左壁10、天壁11、右上壁12、及び右下壁13等の側壁から成っている。天壁11及び右下壁13はクランク軸方向(以下前後方向と呼ぶ)で2段の段違いとなっていて、何れも開口部側が広くなっている。傾斜した右上壁12にシリンダ部6が連結している。また、これらの側壁には背壁8の近くで背壁8に平行して外に広がる円板状のファンケース取付板14が設けられている。
クランクケース部7の下側には左右に伸びるエンジン取付用のベース部(取付足部)15が設けられている。このベース部15は底壁9の下側に一体に形成され、周囲を帯板で矩形に囲まれた下向きに開く筺体で、4隅に内燃機関取付用のボルト穴ボス16を備え、これらを連結するリブで補強された構造となっており、左右には前後方向の中央にそれぞれ排油口17(図5参照)を備えている。
背壁8のほぼ中央にはクランク軸を受けるクランク軸受孔18用のクランク軸受ボス19が、また正面側から見てその左下にカム軸を受けるカム軸受孔20用のカム軸受ボス21がそれぞれ内外両側に突出して(図6参照)垂設されており、クランク軸受孔18はベアリングを介してクランク軸の一方の軸端を回転自在に支承しており、カム軸受孔20はカム軸の一方の軸端を支承している。クランク軸受ボス19及びカム軸受ボス21は、それぞれのボスに加わる集中荷重を、薄肉の背壁8に分散させるために、ボスの中心部から放射線状に広がる複数のリブ22(代表)と、天壁11の背壁寄りに前後方向に走るリブ23を備えている。また、クランクケース部7の正面の開口部の周縁部は、外側に曲がって厚肉のフランジ24となり、複数の雌ねじを備え、液体シーラを介してクランクケースカバー5を取付けるための平らな取付座を形成すると共に、クランクケース部7の周縁部の強度メンバーとなっている。
クランクケースカバー5(図1、図6参照)は、クランクケース部7の開口部を覆う蓋で、薄肉の浅い筺状をしており、クランクケース部7の背壁8に対向する主壁30のほぼ中央にクランク軸(出力軸)を回転自在に支承するクランク軸受孔31用のクランク軸受ボス32が、また、内側から視て右下にカム軸ボス33がそれぞれ内外両側に突出して垂設されており、主壁30から立がった狭い巾の側壁の周縁部は外側方に曲がって、複数のボルト穴を有し、クランクケース部7のフランジ24と対称なフランジ34となっており、クランク軸受ボス32から複数のリブ35(代表)が放射状に設けられており、また、主壁30の外側(図1参照)には、作業機取付用の複数のボルト孔用ボス36が突設され、これらを繋ぐ平面形が円形のリブが設けられている。37は側壁の下部の左右にそれぞれ設けられた注油口である。
クランクケース部7の背壁8と、背壁8と直角に交わって筒状に繋がる底壁9、左壁10、天壁11、右上壁12、及び右下壁13と交差する交差線(多面体の稜線に相当)部に沿って、内側に肉付を行なって(図2、6参照)、側壁側の厚さaが基本壁厚の2倍程度、幅bが基本壁厚の3倍程度の断面が矩形のリブ40(以下内周リブと呼ぶ)を形成して補強・補剛する。クランク軸受ボス19から放射状に広がるリブ22の先端はこの内周リブ40と連結させる。
また、クランクケース部7の背壁8の外面に(図3参照)、クランク軸受ボス19の中心からシリンダ軸に平行に斜下方に走る1本のリブ41と、斜上方に走る2本のリブ42を設ける。また、ベース部15と左壁10の間、及び右下壁13との間に前後方向のほぼ中央部に、主として強度補強のリブ43及び44をそれぞれ設ける(図1、2参照)。左壁10に取付けるリブ43は、平面形が縦長の曲がった四辺形で、その縦長の一辺は左壁10に繋がり、上端は左壁10に補機取付用に設けた前後に走る補機取付部材のリブ25の下面と連結させる。また、リブ44は平面形が略三角形で、2辺をそれぞれベース部15の上面と右下壁13の側面に連結させる。また、左壁10には、補機取付部材25の上側から平行して走る2本の補剛用の巾の広いリブ45及び46を設け、背壁8寄りのリブ45の上端は天壁11まで延ばして、これに直交して前後に走る2本の補強リブ47及びリブ48を天壁11に設ける。(図4、5、6参照)また、クランクケースカバー5の主壁30の内側(図7参照)には、背壁8の外側に設けたリブ41、及び42に対応して、クランク軸受ボス32の中心からシリンダ軸に平行に斜め下方に走る1本のリブ49と、斜め上方に走る2本のリブ50を設ける。
上記の補強・補剛を施した一体型シリンダブロックを用いた内燃機関は、前述のように種々の運転試験で、振動及び騒音が従来の機種と対比して十分抑制され、特に無負荷運転においてその効果が顕著であり、耐久強度も十分改善されていることが確かめられている。
本発明は傾斜型内燃機関に適用した場合を示したが、シリンダがクランクケースに対して垂直な直立型内燃機関にも容易に適用することが出来る。
本発明の実施の形態に係る傾斜型4サイクル小型内燃機関の一体型シリンダブロック本体の出力軸側の左上から視た分解斜視図である。 本発明のシリンダブロックの出力軸側から視た正面図である。 図2の裏側から視た背面図である。 図2の上から見た平面図である。 図2の左側から視た左側面図である。 図2のA−A断面図である。 本発明のクランクケースカバーの内側から視た背面図である。
符号の説明
2:クランクケース一体型シリンダブロック(シリンダブロック)
5:クランクケースカバー
6:シリンダ部
7:クランクケース部
8:背壁
9:底壁
10:左壁
11:天壁
12:右上壁
13:右下壁
15:ベース部
18:クランク軸受孔
19:クランク軸受ボス
40:内周リブ
41、42:リブ
43、44:リブ
45、46:リブ
47、48:リブ
49、50:リブ

Claims (5)

  1. 単気筒小型内燃機関のシリンダブロックであって、シリンダ部とクランクケース部を一体に鋳造した筺状のシリンダブロックにクランクケースカバーを固定し、該クランクケースカバーと、該クランクケースカバーに対向する前記筺状のシリンダブロックの背壁のほぼ中央部に、それぞれクランク軸の一端を支承するクランク軸受孔を備えたクランク軸受ボスを内外両側に突出させて垂設した構造のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記筺状のシリンダブロックの薄肉の背壁と、該背壁の周囲から直角に起ち上がって筺状に繋がる薄肉の側壁と交わる交線に沿って、同側壁の内側に隆起する内周リブを設けたことを特徴とするクランクケース一体型シリンダブロック。
  2. 請求項1のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、内燃機関が単気筒傾斜型小型内燃機関であって、前記側壁が底壁、左壁、天壁、右上壁、及び右下壁から構成されていることを特徴とするクランクケース一体型シリンダブロック。
  3. 請求項1及び2のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記内周リブの巾が壁厚の3倍程度、厚さが2倍程度であることを特徴とするクランクケース一体型シリンダブロック。
  4. 上記請求項2及び3に記載のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、前記背壁の外側面に、前記クランク軸受ボスからシリンダ部の軸線に平行に斜め下に走る1本のリブと、斜め上に走る2本のリブをそれぞれ設け、また、前記のクランクケースカバーの内側面に、前記クランク軸受ボスからシリンダ部の軸線に平行に斜め下に走る1本のリブと、斜め上に走る2本のリブをそれぞれ設けたことを特徴とするクランクケース一体型シリンダブロック。
  5. 上記請求項1〜4に記載のクランクケース一体型シリンダブロックにおいて、クランクケース部の下部に設けた左右に伸びるベース部の上面と、左壁及び右下壁のそれぞれの外側面の間に、奥行き方向の中央にリブをそれぞれ設け、また、左壁の外側面に前記リブの上端から長手方向に平行して走る2本のリブを設け、背壁寄りの1本は天壁まで延ばして、天壁部でこれと直交する2本のリブと繋げたことを特徴とするクランクケース一体型シリンダブロック。
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