JP2005502326A - Staphylococcusaureusタンパク質および核酸 - Google Patents
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Abstract
本発明は、実施例中に開示されるS.aureusアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。これらのアミノ酸配列は、ちょうど配列番号2〜配列番号5642である。
本発明はまた、実施例中に開示されるS.aureusアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。特定の配列に依存して、配列同一性の程度は、好ましくは、50%よりも高い(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上)。これらのタンパク質は、ホモログ、オルトログ、対立遺伝子改変体および機能的変異体を含む。
Description
【0001】
本明細書中で引用される全ての文書は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、細菌Staphylococcus aureus由来の核酸およびタンパク質に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
Staphylococcus aureusは、グラム陽性の球形細菌で、顕微鏡検査では、対になって、短鎖、または群クラスターであると思われる。いくつかの菌株は、ヒトにおいて食中毒(ブドウ球菌腸性毒)を引き起こす非常に熱安定のタンパク質であるエンテロトキシンを生成し得る。特に、臨床的関心は、広範な抗生物質に耐性である菌株(「MRSA」)である。
【0004】
S.aureusに対する有効なワクチンは現在のところないが、多糖結合体化ワクチンが、現在、臨床試験されている(NabiからのStaphVAXTM)。
【0005】
ワクチンの開発において使用され得るタンパク質を提供することが、本発明の目的である。さらなる目的は、S.aureus感染の診断に使用され得るタンパク質および核酸を提供すること、S.aureusの検出のために使用され得るタンパク質および核酸を提供すること、S.aureusのタンパク質の発現に有用な核酸を提供すること、および抗生物質探索に有用な標的であるタンパク質を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
本発明は、実施例中に開示されるS.aureusアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。これらのアミノ酸配列は、ちょうど配列番号2〜配列番号5642である。
【0007】
本発明はまた、実施例中に開示されるS.aureusアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。特定の配列に依存して、配列同一性の程度は、好ましくは、50%よりも高い(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上)。これらのタンパク質は、ホモログ、オルトログ、対立遺伝子改変体および機能的変異体を含む。代表的に、2つのタンパク質間の50%以上の同一性は、機能的等価物を表すと見なされる。タンパク質間の同一性は、好ましくは、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるような、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定され、これは、gap open penalty=12およびgap extension penalty=1のパラメーターを用いるアフィンギャップを使用する。
【0008】
本発明はさらに、実施例中に開示されるS.aureusアミノ酸配列のフラグメントを含むタンパク質を提供する。このフラグメントは、配列由来の少なくともn個の連続したアミノ酸を含むべきであり、特定の配列に依存して、nは、7以上である(例えば、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上)。好ましくは、このフラグメントは、配列由来の1つ以上のエピトープを含む。他の好ましいフラグメントは、(a)実施例中に開示されるタンパク質のN末端シグナルペプチド、(b)N末端シグナルペプチドを有さない、実施例中に開示されるタンパク質、および(c)N末端アミノ酸残基を有さない、実施例中に開示されるタンパク質、である。
【0009】
もちろん、本発明のタンパク質は、様々な方法(例えば、組換え体発現、S.aureusからの精製、化学合成など)によって、および様々な形態(例えば、ネイティブ、融合など)で調製され得る。それらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、実質的に、他のstaphylococcusタンパク質または宿主細胞タンパク質がない)で調製される。本発明のタンパク質は、好ましくは、staphylococcusタンパク質である。
【0010】
好ましいタンパク質は、PCT/GB01/04789の表IV中に列挙される「GBSnnn」抗原に対して相同性を示す、すなわち、免疫化および/または診断に有用な抗原であると推察されるタンパク質である。これらには、配列番号:1078(GBS199)、1876(GBS177)、1946(GBS311)、2508(GBS312)、3724(GBS25)、4600(GBS90)、4826(GBS492)、および5360(GBS114)が含まれる。
【0011】
さらなる局面に従って、本発明は、これらのタンパク質に結合する抗体を提供する。これらは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得、そして、任意の適切な手段によって生成され得る。抗体は、検出可能なラベルを含み得る。
【0012】
さらなる局面に従って、本発明は、実施例中に開示されるS.aureusヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これらの配列は、配列番号1〜配列番号5641の間の奇数である。
【0013】
さらに、本発明は、実施例中に開示されるS.aureusヌクレオチド配列に対して配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。配列間の同一性は、好ましくは、上記のようなSmith−Waterman相同性アルゴリズムによって決定される。
【0014】
さらに、本発明は、好ましくは、「高ストリンジェンシー」条件(例えば、0.1×SSC、0.5%SDS溶液中で65℃)下で、実施例中に開示されるS.aureus核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。
【0015】
これらの配列のフラグメントを含む核酸もまた、提供される。これらは、S.aureus配列由来の、少なくともn個の連続するヌクレオチドを含むべきであり、特定の配列に依存して、nは、10以上である(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200以上)。
【0016】
本発明の核酸は、ハイブリダイゼーション反応(例えば、ノーザンブロットもしくはサザンブロット、または、核酸マイクロアレイもしくは「遺伝子チップ」において)、および増幅反応(PCR、SDA、SSSR、LCR、NASBA、TMA)などで使用され得る。
【0017】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明のタンパク質およびタンパク質フラグメントをコードする核酸を提供する。
【0018】
本発明が、上記の配列に対して相補的な配列を含む核酸を(例えば、アンチセンスまたはプロービングの目的のために)提供することもまた、理解されるべきである。
【0019】
もちろん、本発明に従う核酸は、多くの方法(例えば、化学合成によって、ゲノムもしくはcDNAライブラリーから、生物自身からなど)で調製され得、そして、様々な形態(例えば、1本鎖、2本鎖、ベクター、プライマーなど)を取り得る。核酸は、好ましくは、実質的には単離された形態である。
【0020】
本発明に従う核酸は、例えば、放射性標識または蛍光標識で、標識され得る。これは、この核酸が、例えば、PCR、LCR、TMA、NASBA中でプライマーまたはプローブとして使用される場合、特に有用である。
【0021】
さらに、用語「核酸」は、DNAおよびRNA、ならびにそのアナログ(例えば、改変された骨格を含むアナログ)を含み、そして、ペプチド核酸(PNA)などもまた含む。
【0022】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)およびこのようなベクターで形質転換された宿主細胞を含む。
【0023】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明に従うタンパク質、抗体および/または核酸を含む組成物を提供する。これらの組成物は、例えば、免疫原性組成物としてか、診断試薬としてか、またはワクチンとして適切であり得る。
【0024】
本発明はまた、医薬(例えば免疫原性組成物またはワクチン)として、または診断試薬としての使用のための、本発明に従う核酸、タンパク質または抗体を提供する。本発明はまた、以下:(i)staphylococcusに起因する感染を処置するかまたは防止するための医薬;(ii)staphylococcusの存在またはstaphylococcusに対して産生された抗体の検出のための診断試薬;ならびに/あるいはは(iii)staphylococcusに対して抗体を産生し得る試薬の製造における、本発明に従う核酸、タンパク質または抗体の使用を提供する。このstaphylococcusは、任意の種、群、または菌株であり得るが、好ましくはS.aureusである。
【0025】
本発明はまた、患者を処置する方法を提供し、この方法は、患者に、治療有効量の本発明の核酸、タンパク質および/または抗体を投与する工程を包含する。
【0026】
本発明はまた、Staphylococcus(例えば、S.aureus)核酸配列内に含まれる標的配列を増幅するためのプライマー(例えば、PCRプライマー)を含むキットを提供し、このキットは、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここで、第1のプライマーは実質的にこの標的配列に対して相補的であり、そして、第2のプライマーは、この標的配列の相補鎖に対して、実質的に相補的であり、ここで、実質的な相補性を有するこれらのプライマーの部分は、増幅される標的配列の終端を規定する。第1のプライマーおよび/または第2のプライマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含み得る。
【0027】
本発明はまた、1本鎖核酸または2本鎖核酸(またはそれらの混合物)中に含まれるStaphylococcus(例えば、S.aureus)鋳型核酸配列の増幅を可能にする、第1の1本鎖オリゴヌクレオチドおよび第2の1本鎖オリゴヌクレオチドを含むキットを提供し、ここで:(a)第1のオリゴヌクレオチドは、この鋳型核酸配列に対して実質的に相補的なプライマー配列を含み;(b)第2のオリゴヌクレオチドは、この鋳型核酸配列の相補鎖に対して実質的に相補的なプライマー配列を含み;(c)第1のオリゴヌクレオチドおよび/または第2のオリゴヌクレオチドは、この鋳型核酸に対して相補的でない配列を含み;そして(d)このプライマー配列は、増幅される鋳型配列の終端を規定する。特徴(c)の非相補的配列は、好ましくは、プライマー配列の上流(すなわち、5’側)である。これらの(c)配列の1つまたは両方は、制限部位(例えば、EP−B−0509612)またはプロモーター配列(EP−B−0505012)を含み得る。第1のオリゴヌクレオチドおよび/または第2のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含み得る。
【0028】
鋳型配列は、ゲノム配列の任意の部分であり得る。例えば、この配列は、rRNA遺伝子またはタンパク質コード遺伝子であり得る。この鋳型配列は、好ましくは、S.aureusに特異的である。
【0029】
本発明はまた、式NH2−A−[−X−L−]n−B−COOHにより表せられるハイブリッドタンパク質を提供し、ここで、Xは、上記のような本発明のアミノ酸配列であり、Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは、任意のN−末端アミノ酸配列であり、Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり、そして、nは、1よりも大きい整数である。nの値は、2とxとの間であり、そして、xの値は、代表的には、3、4、5、6、7、8、9または10である。好ましくは、nは、2、3または4であり;より好ましくは2または3であり;最も好ましくは、n=2である。各nの例について、−X−は、同一でも、異なってもよい。[−X−L−]の各nの例について、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在してもしなくてもよい。例えば、n=2の場合、このハイブリッドは、NH2−X1−L1−X2−L2−COOH、NH2−X1−X2−COOH、NH2−X1−L1−X2−COOH、NH2−X1−X2−L2−COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列である−L−は、代表的には、短い(例えば、20以下のアミノ酸、すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわち、Glyn(ここで、n=2、3、4、5、6,7,8,9、10以上))、およびヒスチジンタグ(Hisn(ここで、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上))が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明白である。−A−および−B−は、代表的に短い(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)任意の配列である。例としては、タンパク質輸送を指向するリーダー配列、またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、すなわちHisn(ここで、n=3、4、5、6、7、8、9、10以上))が挙げられる。他の適切なN−末端およびC−末端アミノ酸配列は、当業者に明白である。
【0030】
さらなる局面に従って、本発明は様々なプロセスを提供する。
【0031】
本発明のタンパク質を生成するためのプロセスが提供され、このプロセスは、タンパク質発現を誘導する条件下で、本発明の宿主細胞を培養する工程を包含する。
【0032】
本発明のタンパク質または核酸を生成するプロセスが提供され、ここで、このタンパク質または核酸は、化学的手段を使用して、部分的または全体的に合成される。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドを検出するためのプロセスが提供され、このプロセスは以下の工程:(a)本発明に従う核プローブと生物学的サンプルを、二重鎖を形成するようなハイブリダイズの条件下で接触させる工程;および(b)二重鎖を検出する工程を包含する。
【0034】
生物学的サンプル中のStaphylococcusを検出するためのプロセスもまた提供され、このプロセスは、本発明に従う核と生物学的サンプルを、ハイブリダイズの条件下で接触させる工程を包含する。このプロセスは、核酸増幅(例えば、PCR、SDA、SSSR、NASBA、LCR、TMAなど)またはハイブリダイゼーション(例えば、マイクロアレイ、ブロット、溶液中のプローブを使用するハイブリダイゼーションなど)を含み得る。臨床的サンプル(特に、MRSA)中のS.aureusのPCR検出は、以前に報告されている)[例えば、Murakamiら、(1991)J.Clin.Microbiol.29:2240〜2244;Bignardiら、(1996)J.Antimicrob.Chemother.37:53〜63;Kitagawaら、(1996)Ann.Surgery 224:665〜671;Vannuffelら(1998)J.Clin.Microbiol.36:2366〜2368;Jayaratne & Rutherford(1999)Diagn.Microbiol.Infect.Dis.35;13〜18を参照のこと]。
【0035】
本発明のタンパク質を検出するためのプロセスが提供され、このプロセスは、以下の工程:(a)本発明の抗体と生物学的サンプルを、抗体−抗原複合体の形成に適切な条件下で接触させる工程;および(b)この複合体を検出する工程、を包含する。
【0036】
本発明はまた、試験化合物が本発明のタンパク質に結合するか否かを決定するためのプロセスを提供する。試験化合物が本発明のタンパク質に結合し、この結合が、S.aureus細菌の生活環を阻害する場合、この試験化合物は、抗生物質としてか、または抗生物質の設計のためのリード化合物として使用され得る。このプロセスは、代表的には、試験化合物と本発明のタンパク質を接触させる工程、およびこの試験化合物が、このタンパク質に結合するかどうかを決定する工程を包含する。これらのプロセス中で使用される本発明の好ましいタンパク質は、酵素(例えば、tRNAシンテターゼ)、膜輸送体およびリボソームタンパク質である。適切な試験化合物としては、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、脂質、核酸(例えば、DNA、RNAおよびそれらの改変形態)、ならびに低分子有機化合物(例えば、200Daと2000Daとの間のMW)が挙げられる。試験化合物は、個々に提供されるが、代表的には、ライブラリーの一部(例えば、組合せライブラリー)である。結合相互作用の検出方法は、NMR、フィルタ結合アッセイ、ゲルリターデイションアッセイ、置換アッセイ、表面プラズモン共鳴、逆ツーハイブリッドなどが挙げられる。本発明のタンパク質に結合する化合物は、S.aureusと化合物を接触させ、次いで、増殖阻害をモニタすることによって、抗生物質活性について試験され得る。本発明はまた、これらの方法を使用して同定された化合物を提供する。
【0037】
本発明は、本発明のタンパク質および1つ以上の以下の抗原を含む:
−Helicobacter pylori由来のタンパク質抗原(例えば、VacA、CagA、NAP、HopX、HopY[例えば、WO98/04702]および/またはウレアーゼ)
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原(例えば、WO99/24578、WO99/36544、WO99/57280、WO00/22430、Tettelinら(2000)Science 287:1809〜1815、Pizzaら(2000)Science 287:1816〜1820およびWO96/29412中に開示されるもの)(タンパク質「287」および誘導体が特に好ましい)
−N.meningitidis血清型B由来の外膜小胞(OMV)調製物(例えば、WO01/52885;Bjuneら(1991)、Lancet 338(8775):1093〜1096;Fukasawaら(1999)Vaccine 17:2951〜2958;Rosenqvistら(1998)Dev.Biol.Stand.92:323〜333など中に開示されるようなもの)
−N.meningitidis血清型A、C、W135および/またはY由来の糖類抗原(例えば、血清型C由来のCostantinoら(1992)Vaccine 10:691〜698中に開示されるオリゴ糖)[Costantinoら(1999)Vaccine 17:1251〜1263をまた参照のこと]
−Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原[例えば、Watson(2000)Pediatr Infect Dis J 19:331〜332;Rubin(2000)Pediatr Clin North Am 47:269〜285,v;Jedrzejas(2001)Microbiol Mol Biol Rev 65:187〜207]
−A型肝炎ウイルス(例えば、不活性ウイルス)由来の抗原[例えば、Bell(2000)Pediatr Infect Dis J 19:1187〜1188;Iwarson(1995)APMIS 103:321〜326]
−B型肝炎ウイスル由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[例えば、Gerlichら(1990)Vaccine 8 Suppl:S63〜68 & 79〜80]
−C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、Hsuら(1999)Clin Liver Dis 3:901〜915]
−Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳ホロトキシン(PT)および糸状血球凝集素(FHA)で、必要に応じて、ペルタクチンならびに/または凝集原2および凝集原3とも組合せる)[例えば、Gustafssonら(1996)N.Engl.J.Med.334:349〜355;Rappuoliら(1991)TIBTECH9:232〜238]
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、Vaccines(1998)、Plotkin & Mortimer編.ISBN 0−7216−1946−0の3章]、例えば、CRM197変異体[例えば、Del Guidiceら(1998)Moleular Aspects of Medicine 19:1〜70]
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[例えば、Plotkin & Mortimerの4章]
−Haemophilus influenzae B由来の糖類抗原
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、WO99/24578、WO99/36544、WO99/57280]
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、WO02/02606;Kalmanら(1999)Nature Genetics 21:385〜389;Readら(2000)Nucleic Acids Res 28:1397〜406;Shiraiら(2000)J.Infect.Dis.181(Suppl3):S524〜S527;WO99/27105;WO00/27994;WO00/37494]
−S.agalactiae由来の抗原[例えば、PCT/GB01/04789]
−S.pyogenes由来の抗原[例えば、PCT/GB01/04789]
−Chlamydia trachomatis[例えば、WO99/28475]
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えばRossら(2001)Vaccine 19:4135〜4142]
−IPVまたはOPVのようなポリオ抗原[例えば、Sutterら(2000)Pediatr Clin North Am 47:287〜308;Zimmerman & Spann(1999)Am Fam Physician 59:113〜118、125〜126]
−凍結乾燥化不活性ウイルス[例えばMMWR Morb Mortal Wkly Rep 1998 Jan 16;47(1):12、19;RabAvertTM]のような狂犬病抗原[例えば、Dreesen(1997)Vaccine 15 Suppl:S2〜6]
−麻疹抗原、流行性耳下腺炎抗原、および/または風疹抗原[例えば、Plotkin & Mortimerの9章、10章および11章];
−血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のような、インフルエンザ抗原[例えば、Plotkin & Mortimerの19章]
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、McMichael(2000)Vaccine 19 Suppl 1:S101〜107]。
【0038】
糖類抗原または糖質抗原が含まれる場合、この抗原は、免疫原性を増強するために、好ましくは、キャリアタンパク質に結合体化される[例えば、Ramsayら(2001)Lancet 357(9251):195〜196;Lindberg(1999)Vaccine 17 Suppl 2:S28〜36;Conjugate Vaccines(Cruse編)ISBN 3805549326、特に、10巻:48〜114など]。好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素または細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。CRM197ジフテリアトキソイドが、特に好ましい。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidisの外膜タンパク質[例えば、EP−0372501]、合成ペプチド[例えば、EP−0378881、EP−0427347]、熱ショックタンパク質[例えば、WO93/17712]、百日咳タンパク質[例えば、WO98/58668;EP−0471177]、H.influenzae由来のプロテインD[例えば、WO00/56360]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[例えば、WO00/61761]などが挙げられる。任意の適切な結合体化反応は、必要な場合、任意の適切なリンカーとともに使用され得る。
【0039】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合、解毒され得る(例えば、化学手段および/または遺伝的手段による百日咳の解毒)。
【0040】
ジフテリア抗原が組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含むことがまた好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原が含まれることがまた、好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原が含まれることがまた、好ましい。
【0041】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩に吸着される。
【0042】
組成物中の抗原は、代表的には、各々少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所与の抗原の濃度は、この抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分である。
【0043】
本発明はまた、本発明の2以上(例えば、3、4、5)のタンパク質を含む組成物を提供する。
【0044】
本発明を実施するために(例えば、ワクチン接種または診断の目的で、開示される配列を利用するために)使用され得る標準的技術および標準的手順の要旨が以下に続く。この要旨は、本発明の限定ではなく、むしろ、使用され得るが、必要とされない実施例を与える。
【0045】
(総論)
本発明の実施は、他に示されなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技術を使用し、これらは当該分野の技術の範囲内である。このような技術は以下の文献で十分説明されている(例えば、Sambrook Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版(1989);DNA Cloning、Volumes I and II(D.N Glover編 1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編 1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編 1984);Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編 1984);Animal Cell Culture(R.I.Freshney編 1986);Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press、1986);B.Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);the Methods in Enzymology series(Academic Press、Inc.)、特に154巻および155巻;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編1987、Cold Spring Harbor Laboratory);MayerおよびWalker、編(1987)、Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press、London);Scopes、(1987)Protein Purification:Principles and Practice、第2版(Springer−Verlag、N.Y.)、およびHandbook of Experimental Immunology、Volumes I−IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編 1986)。
【0046】
ヌクレオチドおよびアミノ酸についての標準的な略号が、本明細書において使用される。
【0047】
(定義)
Xを含む組成物は、組成物中のX+Yの合計のうちの少なくとも85重量%がXであるとき、Yを「実質的に含まない」。好ましくは、Xは、組成物中のX+Yの合計のうちの少なくとも90重量%を、さらに好ましくは少なくとも約95重量%を、または99重量%さえも含む。
【0048】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を意味する。例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなり得るか、またはX+YのようなXに何かを付加したものも含み得る。
【0049】
用語「異種」とは、天然では一緒には見られない2つの生物学的成分をいう。この成分は、宿主細胞、遺伝子または調節領域(例えば、プロモーター)であり得る。異種成分は天然では一緒には見られないが、例えば、遺伝子に対して異種のプロモーターがその遺伝子に作動可能に連結されるときは、それらは一緒に機能し得る。別の例は、staphylococcus配列がマウス宿主細胞に対して異種である場合である。さらなる例は、天然においてみられない配置で単一タンパク質に組み立てられた、同じタンパク質または異なるタンパク質由来の2つのエピトープである。
【0050】
「複製起点」とは、発現ベクターのような、ポリヌクレオチドの複製を開始および調節するポリヌクレオチド配列である。複製起点は、細胞内でのポリヌクレオチド複製の自律性ユニットとして振る舞い、それ自体の制御下で複製し得る。複製起点は、ベクターが特定の宿主細胞において複製するために必要とされ得る。特定の複製起点を有せば、発現ベクターは、細胞内の適切なタンパク質の存在下で高いコピー数で再生され得る。起点の例は、酵母において有効な自律性複製配列;およびCOS−7細胞で有効であるウイルスT抗原である。
【0051】
「変異体」配列は、天然の配列または開示された配列とは異なるが配列同一性を有するDNA配列、RNA配列またはアミノ酸配列として定義される。特定の配列に依存して、天然の配列または開示された配列と変異体配列との間の配列同一性の程度は、好ましくは50%より大きい(例えば、上記のSmith−Watermanアルゴリズムを使用して算出して60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれより大きい)。本明細書中で使用される場合、本明細書で核酸配列が提供される核酸分子(または領域)の「対立遺伝子改変体」は、別のもしくは第2の単離体のゲノム中の本質的に同じ遺伝子座で生じ、かつ、例えば、変異または組換えにより生ずる天然のバリエーションに起因して、類似するが、しかし同一でない核酸配列を有する核酸分子(または領域)である。コード領域の対立遺伝子改変体は、代表的には、比較される遺伝子によってコードされるタンパク質の活性と類似した活性を有するタンパク質をコードする。対立遺伝子改変体はまた、遺伝子の5’または3’非翻訳領域(例えば、調節制御領域)での変化を含み得る(例えば、米国特許第5,753,235号を参照のこと)。
【0052】
(発現系)
staphylococcusヌクレオチド配列は、種々の異なる発現系;例えば、哺乳動物細胞、バキュロウイルス、植物、細菌、および酵母について使用される発現系において発現され得る。
【0053】
(i.哺乳動物系)
哺乳動物発現系は当該分野において公知である。哺乳動物プロモーターは、哺乳動物RNAポリメラーゼを結合し得、コード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの下流(3’)転写を開始し得る任意のDNA配列である。プロモーターは、転写開始領域(これはコード配列の5’末端の近位に通常位置する)およびTATAボックス(転写開始部位の25〜30塩基対(bp)上流に通常位置する)を有する。TATAボックスは、その正しい部位においてRNAポリメラーゼIIにRNA合成を開始させるよう指示すると考えられている。哺乳動物プロモーターはまた、TATAボックスの100〜200bp上流以内に通常位置する上流プロモーターエレメントを含む。上流プロモーターエレメントは、転写が開始される速度を決定し、そしていずれの方向にも作用し得る(Sambrookら(1989)「Expression of Cloned Genes in Mammalian Cells.」、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版)。
【0054】
哺乳動物ウイルス遺伝子は、しばしば高度に発現され、そして広い宿主域を有する;従って、哺乳動物ウイルス遺伝子をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例は、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、および単純疱疹ウイルスプロモーターを含む。さらに、マウスのメタロチオネイン遺伝子のような非ウイルス性遺伝子に由来する配列もまた、有用なプロモーター配列を提供する。発現は、構成性であるかまたは調節される(誘導可能)かのいずれかであり得、プロモーターに依存して、ホルモン応答性細胞においてグルココルチコイドで誘導され得る。
【0055】
上記のプロモーターエレメントと組み合わされたエンハンサーエレメント(エンハンサー)の存在は、通常発現レベルを増大させる。エンハンサーは、同種プロモーターまたは異種プロモーターに連結されたとき、転写を1000倍まで刺激し得る調節DNA配列であり、合成は、通常のRNA開始部位で始まる。エンハンサーはまた、それらが、通常方向もしくは反転(flipped)方向のいずれかで転写開始部位より上流もしくは下流に、またはプロモーターから1000ヌクレオチドを超える距離で位置するとき、活性である(Maniatisら(1987) Science 236:1237;Albertsら(1989)Molecular Biology of the Cell、第2版)。ウイルス由来のエンハンサーエレメントは、それらは通常、より広い宿主域を有するため、特に有用であり得る。例としては、SV40初期遺伝子エンハンサー(Dijkemaら(1985)EMBO J.4:761)およびラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)に由来するエンハンサー/プロモーター(Gormanら(1982b)Proc.Natl.Acad.Sci.79:6777)およびヒトサイトメガロウイルスに由来するエンハンサー/プロモーター(Boshartら(1985)Cell 41:521)が挙げられる。さらに、いくつかのエンハンサーは調節可能であり、そしてホルモンまたは金属イオンのような誘導因子の存在下のみで活性になる(Sassone−CorsiおよびBorelli(1986)Trends Genet.2:215;Maniatisら(1987)Science 236:1237)。
【0056】
DNA分子は、哺乳動物細胞において細胞内で発現され得る。プロモーター配列は、DNA分子と直接連結され得、この場合、組換えタンパク質のN末端における最初のアミノ酸は常に、ATG開始コドンによりコードされるメチオニンである。所望される場合、N末端は、臭化シアンとのインビトロでのインキュベーションによりタンパク質から切断され得る。
【0057】
あるいは、外来タンパク質もまた、哺乳動物細胞において外来タンパク質の分泌を提供するリーダー配列フラグメントを含む融合タンパク質をコードするキメラDNA分子を作製することにより、細胞から増殖培地中へ分泌され得る。好ましくは、リーダーフラグメントと外来遺伝子との間にコードされる、インビボまたはインビトロのいずれかにおいて切断され得るプロセシング部位が存在する。リーダー配列フラグメントは通常、細胞からのタンパク質の分泌を指示する、疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。アデノウイルス3部構成リーダーは、哺乳動物細胞における外来タンパク質の分泌を提供するリーダー配列の例である。
【0058】
通常、哺乳動物細胞によって認識される転写終結配列およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3’側に存在する調節領域であり、従って、プロモーターエレメントと共に、コード配列に隣接する。成熟mRNAの3’末端は、部位特異的転写後切断およびポリアデニル化により形成される(Birnstielら、(1985)Cell 41:349;ProudfootおよびWhitelaw(1988)「Termination and 3’end processing of eukaryotic RNA.」Transcription and splicing(B.D.HamesおよびD.M.Glover編);Proudfoot(1989)Trends Biochem.Sci.14:105)。これらの配列は、mRNAの転写を導き、そのmRNAは、そのDNAにコードされるポリペプチドに翻訳され得る。転写ターミネーター/ポリアデニル化シグナルの例としては、SV40由来のものが挙げられる(Sambrookら(1989)「Expression of cloned genes in cultured mammalian cells.」Molecular Cloning:A Laboratory Manual)。
【0059】
通常、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、および転写終結配列を含む上記の構成要素は、発現構築物内に共に導入される。エンハンサー、機能的なスプライス供与部位およびスプライス受容部位を有するイントロン、ならびにリーダー配列もまた、所望される場合、発現構築物内に含まれ得る。発現構築物はしばしば、哺乳動物細胞または細菌のような宿主内で安定的に維持され得る染色体外エレメント(例えば、プラスミド)のような、レプリコン内で維持される。哺乳動物の複製系としては、複製にトランス作用性の因子を必要とする、動物ウイルス由来の複製系が挙げられる。例えば、SV40(Gluzmam(1981)Cell 23:175)、あるいはポリオーマウイルスのようなパポバウイルスの複製系を含むプラスミドは、適切なウイルスのT抗原の存在下で極めて高いコピー数で複製する。哺乳動物レプリコンの別の例としては、ウシパピローマウイルスおよびエプスタイン−バーウイルス由来のレプリコンが挙げられる。さらに、このレプリコンは、二つの複製系を有し得、従って、例えば、発現用に哺乳動物細胞内で、ならびにクローニングおよび増幅用に原核生物の宿主内で、そのレプリコンが維持されることが可能である。このような哺乳動物−細菌シャトルベクターの例としては、pMT2(Kaufmanら(1989)Mol.Cell.Biol.9:946)およびpHEBO(Shimizuら(1986)Mol.Cell.Biol.6:1074)が挙げられる。
【0060】
使用される形質転換の手順は、形質転換される宿主に依存する。異種のポリヌクレオチドの哺乳動物細胞への導入方法は、当該分野で公知であり、その方法としては、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、およびDNAの核内への直接微量注入が挙げられる。
【0061】
発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該分野で公知であり、そのような細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、新生仔ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)および多くの他の細胞株を含むが、これらに限定されない、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が挙げられる。
【0062】
(ii バキュロウイルス系)
タンパク質をコードしているポリヌクレオチドはまた、適切な昆虫発現ベクター内に挿入され得、そしてそのベクター内で、制御エレメントに作動可能に連結される。ベクターの構築には、当該分野で公知の技術を使用する。一般に、その発現系の構成要素として、以下のものが挙げられる:バキュロウイルスゲノムのフラグメント、および発現させる異種遺伝子の挿入用の簡便な制限部位の両方を含む転移ベクター(通常は細菌プラスミド);転移ベクター内のバキュロウイルスに特異的なフラグメントに相同性のある配列を有する野生型バキュロウイルス(これは、バキュロウイルスゲノム内への異種遺伝子の相同組換えを可能にする);ならびに適切な昆虫宿主細胞および増殖培地。
【0063】
転移ベクターにタンパク質をコードするDNA配列を挿入した後、そのベクターおよび野生型ウイルスゲノムを、昆虫宿主細胞にトランスフェクトし、そこでこのベクターとウイルスゲノムとを組換えさせる。パッケージングされた組換えウイルスは発現され、そして組換えプラークが同定されそして精製される。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料および方法は、特に、Invitrogen、San Diego CAからキット形態(「MaxBac」キット)で市販される。これらの技術は、一般に当業者に公知であり、そしてSummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)(以下、「SummersおよびSmith」)に十分に記載されている。
【0064】
タンパク質をコードするDNA配列をバキュロウイルスゲノムに挿入するのに先立って、プロモーター、リーダー(所望される場合は)、目的のコード配列、および転写終結配列を含む上記の構成要素を、通常、中間置換(intermediate transplacement)構築物(転移ベクター)に構築する。この構築物は、単一の遺伝子および作動可能に連結された調節エレメント;作動可能に連結された調節エレメントのセットを各々が所有する複数の遺伝子;あるいは調節エレメントの同じセットにより調節される複数の遺伝子を含み得る。中間置換構築物は、しばしば、細菌のような宿主内で安定的に維持し得る染色体外エレメント(例えば、プラスミド)のような、レプリコン内で維持される。レプリコンは、複製系を有しており、従って、それはクローニングおよび増幅用の適切な宿主内で維持され得る。
【0065】
現在、外来遺伝子のAcNPVへの導入のために最も一般に使用される転移ベクターは、pAc373である。当業者に公知の多くの他のベクターもまた設計されている。これらのものとして、例えば、pVL985(これは、ポリへドリンの開始コドンをATGからATTに変化させ、そしてそのATTから32塩基対下流に、BamHIクローニング部位を導入する;LuckowおよびSummers、Virology(1989)17:31を参照のこと)が挙げられる。
【0066】
そのプラスミドはまた通常、ポリへドリンポリアデニル化シグナル(Millerら(1988)Ann.Rev.Microbiol.、42:177)、および原核生物のアンピシリン耐性(amp)遺伝子、ならびに大腸菌においての選択および増殖のための複製起点を含む。
【0067】
バキュロウイルス転移ベクターは通常、バキュロウイルスプロモーターを含む。バキュロウイルスプロモーターは、バキュロウイルスRNAポリメラーゼに結合し得、そしてコード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの下流(5’から3’)方向の転写を開始し得る、任意のDNA配列である。プロモーターは、通常、コード配列の5’末端に近接して存在する転写開始領域を有している。この転写開始領域は通常、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。バキュロウイルス転移ベクターは、またエンハンサーと呼ばれる第二のドメインを有し得、これは存在する場合は、通常、構造遺伝子に対して遠位にある。発現は調節されるか、または構成的であるかのいずれかであり得る。
【0068】
ウイルスの感染周期の後期で大量に転写される構造遺伝子は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ウイルス多角体タンパク質をコードする遺伝子(Friesenら、(1986)「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」、The Molecular Biology of Baculoviruses(Walter Doerfler編);欧州特許公開番号127839および155476;ならびにp10タンパク質をコードする遺伝子(Vlakら、(1988)、J.Gen.Virol.69:765)由来の配列が挙げられる。
【0069】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、分泌昆虫タンパク質または分泌バキュロウイルスタンパク質の遺伝子(例えば、バキュロウイルスポリへドリン遺伝子(Carbonellら(1988)Gene、73:409))から誘導され得る。あるいは、哺乳動物細胞の翻訳後修飾(例えば、シグナルペプチド切断、タンパク質分解性切断、およびリン酸化)のシグナルは、昆虫細胞に認識されると思われ、そして分泌および核蓄積に必要なシグナルもまた、無脊椎動物細胞と脊椎動物細胞との間で保存されると思われるために、ヒトα−インターフェロン(Maedaら、(1985)、Nature 315:592);ヒトガストリン放出ペプチド(Lebacq−Verheydenら、(1988)、Molec.Cell.Biol.8:3129);ヒトIL−2(Smithら、(1985)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、82:8404);マウスIL−3(Miyajimaら(1987)Gene 58:273);およびヒトグルコセレブロシダーゼ(Martinら、(1988)DNA、7:99)をコードする遺伝子由来のリーダーのような、非昆虫起源のリーダーも、昆虫での分泌を与えるために使用され得る。
【0070】
組換えポリペプチドまたは組換えポリタンパク質は、細胞内に発現され得、または適切な調節配列と共に発現される場合、分泌され得る。非融合外来タンパク質の優れた細胞内発現には通常、ATG開始シグナルに先行する適切な翻訳開始シグナルを含む短いリーダー配列を理想的には有する異種遺伝子が必要である。所望であれば、N末端のメチオニンは、臭化シアンとのインビトロインキュベーションにより、成熟タンパク質から切断され得る。
【0071】
あるいは、天然では分泌されない組換えポリタンパク質あるいは組換えタンパク質は、昆虫において外来タンパク質の分泌を与えるリーダー配列フラグメントを含む、融合タンパク質をコードするキメラDNA分子を作製することにより、昆虫細胞から分泌され得る。このリーダー配列フラグメントは通常、タンパク質の小胞体内へのトランスロケーションを指示する疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードしている。
【0072】
タンパク質の発現産物前駆体をコードするDNA配列および/または遺伝子の挿入後、昆虫細胞宿主に、転移ベクターの異種DNAおよび野生型バキュロウイルスのゲノムDNAを同時形質転換(通常は、同時トランスフェクションによって)する。構築物のプロモーターおよび転写終結配列は、通常バキュロウイルスゲノムの2〜5kbの区域を含む。バキュロウイルスウイルスの望ましい部位に異種DNAを導入する方法は、当該分野で公知である(SummersおよびSmith、上記;Juら(1987);Smithら、Mol.Cell.Biol.(1983)3:2156;ならびにLuckowおよびSummers(1989)を参照のこと)。例えば、その挿入は、相同二重交差組換え(homologous double crossover recombination)により、ポリへドリン遺伝子のような遺伝子内へであり得る;挿入はまた、所望のバキュロウイルス遺伝子内に設計された制限酵素部位内へであり得る。Millerら、(1989)、Bioessays 4;91。発現ベクター内のポリへドリン遺伝子の代わりにクローン化した場合、このDNA配列は、ポリへドリン特異的配列が5’および3’の両側に隣接しており、そしてポリへドリンプロモーターの下流に位置される。
【0073】
新規に形成されたバキュロウイルス発現ベクターは続いて、感染性の組換えバキュロウイルス内にパッケージされる。相同組換えは、低い頻度で起こる(約1%と約5%との間);それゆえ、同時トランスフェクション後に産生されたウイルスの大半は、依然野生型ウイルスである。従って、組換えウイルスを同定する方法が必要となる。その発現系の利点は、組換えウイルスを区別し得る視覚的スクリーニングである。天然のウイルスにより産生されるポリへドリンタンパク質は、ウイルス感染後の後の時期に、その感染された細胞の核内で非常に高いレベルで産生される。蓄積されたポリへドリンタンパク質は、閉塞体を形成し、またそれは包理された粒子を含む。これらの閉塞体は、最大15μmの大きさで、高度に屈折し、明るく輝く外見を与え、容易に光学顕微鏡下で可視化される。組換えウイルスに感染した細胞は、閉塞体を欠く。組換えウイルスと野生型ウイルスとを区別するために、トランスフェクションの上清を、当業者に公知の技術により昆虫細胞の単層にプラーク形成させる。すなわち、プラークを、光学顕微鏡下で閉塞体の存在(野性型ウイルスを示す)または非存在(組換えウイルスを示す)によりスクリーニングする。「Current Protocols in Microbiology」2巻(Ausubelら編)16.8(増補10、1990);SummersおよびSmith、上記;Millerら(1989)。
【0074】
組換えバキュロウイルス発現ベクターは、いくつかの昆虫細胞への感染用に開発された。例えば、組換えバキュロウイルスは、特に以下に示すもののために開発された:Aedes aegypti、Autographa californica、Bombyx mori、Drosophila melanogaster、Spodoptera frugiperda、およびTrichoplusia ni(WO89/046699;Carbonellら、(1985)J.Virol.56:153;Wright(1986)Nature 321:718;Smithら、(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156;およびFraserら、(1989)In Vitro Cell.Dev.Biol.25:225を一般に参照のこと)。
【0075】
細胞および細胞培養培地は、バキュロウイルス/発現系における異種ポリペプチドの直接発現および融合発現の両方のために市販される;細胞培養技術は、一般に当業者に公知である。例えば、上記SummersおよびSmithを参照のこと。
【0076】
改変した昆虫細胞をさらに、適切な栄養培地で増殖させる。この培地は、その改変した昆虫宿主内で存在するプラスミドの安定的維持を可能にする。発現産物の遺伝子が、誘導性の制御下にある場合、宿主は高密度まで増殖され得、そして発現は誘導され得る。あるいは、発現が構成的である場合、その産物は培地中に連続的に発現され、そして目的産物を取り出し、そして枯渇した栄養を補給しながら、栄養培地を連続的に循環させる必要がある。その産物は、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど);電気泳動;密度勾配遠心;溶媒抽出などのような技術により精製され得る。適切な場合、その産物をさらに精製し、必要ならば、培地中にまた分泌された、または昆虫細胞の溶解から生じたあらゆる昆虫タンパク質を実質的に除去し、宿主細片(例えば、タンパク質、脂質および多糖類)を少なくとも実質的に含まない産物を供給する。
【0077】
タンパク質の発現を得るために、形質転換体に由来する組換え宿主細胞は、組換えタンパク質をコードする配列の発現を可能にする条件下でインキュベートされる。これらの条件は、選択された宿主細胞に依存して変動する。しかし、その条件は、当該分野で公知の条件に基づいて、当業者に容易に確かめられる。
【0078】
(iii 植物系)
当該分野で公知の多くの植物細胞培養および全植物遺伝子発現系が存在する。例示的な植物細胞遺伝子発現系としては、米国特許第5,693,506号;米国特許第5,659,122号;および米国特許第5,608,143号のような特許に記載されるものが挙げられる。植物細胞培養における遺伝子発現のさらなる例は、Zenk、Phytochemistry 30:3861−3863(1991)に記載された。植物タンパク質のシグナルペプチドの記載は、上記の参考文献に加え、以下に示すものの中においても見出され得る;Vaulcombeら、Mol.Gen.Genet.209:33−40(1987);Chandlerら、Plant Molecular Biology 3:407−418(1984);Rogers、J.Biol.Chem.260:3731−3738(1985);Rothsteinら、Gene 55:353−356(1987);Whittierら、Nucleic Acids Research 15:2515−2535(1987);Wirselら、Molecular Microbiology 3:3−14(1989);Yuら、Gene 122:247−253(1992)。植物ホルモンジベレリン酸およびジベレリン酸により誘導される分泌酵素による植物遺伝子発現の調節の記載は、R.L.JonesおよびJ.MacMillin、Gibberellins:Advanced Plant Physiology、Malcolm B.Wilkins編 1984 Pitman Publishing Limited、London、21−52頁の中に見出され得る。他の代謝調節性遺伝子が記載される参考文献:Sheen、Plant Cell、2:1027−1038(1990);Maasら、EMBO J.9:3447−3452(1990);BenkelおよびHickey、Proc.Natl.Acad.Sci.84:1337−1339(1987)。
【0079】
代表的に、当該分野で公知の技術を使用して、所望のポリヌクレオチド配列は、植物内で作動するように設計された遺伝子調節エレメントを含む発現カセットの中に挿入される。その発現カセットは、植物宿主内での発現に適切な発現カセットの上流および下流にコンパニオン配列を有する望ましい発現ベクターの中に挿入される。そのコンパニオン配列は、プラスミドまたはウイルス起源のものであり、そしてそのベクターが、細菌のような本来のクローニング宿主から、所望の植物宿主へDNAを移動させるために必要とされる特徴をベクターに提供する。基本的な細菌/植物ベクター構築物は、好ましくは、広い宿主域の原核生物の複製起点;原核生物の選択マーカー;および、アグロバクテリウムの形質転換については、アグロバクテリウム媒介移入のためのT DNA配列を植物染色体に提供する。異種遺伝子が容易に検出できない場合は、好ましくは、その構築物はまた、植物細胞が形質転換されたかどうかを決定するために適した選択マーカー遺伝子を有する。適切なマーカーの一般的な総説は、例えば、イネ科のメンバーについては、WilminkおよびDons、1993、Plant Mol.Biol.Reptr、11(2):165−185に見られる。
【0080】
植物ゲノムへの異種配列の組み込みを可能にするために適した配列もまた、推奨される。これらは、相同組換え用のためのトランスポゾン配列など、および植物ゲノム内へ異種発現カセットのランダム挿入を可能にするTi配列を含み得る。適切な原核生物選択マーカーとしては、アンピシリンまたはテトラサイクリンのような抗生物質に対する耐性が挙げられる。さらなる機能をコードしている他のDNA配列はまた、当該分野で公知であるように、そのベクターの中に存在し得る。
【0081】
本発明の核酸分子はまた、目的のタンパク質の発現用の発現カセットに含まれ得る。2つ以上も可能であるが、通常はただ一つの発現カセットが存在する。組換え発現カセットは、異種タンパク質のコード配列に加え、以下のエレメントを含む;プロモーター領域、植物の5’非翻訳配列、構造遺伝子がそれを備えているかどうかに依存して、開始コドン、ならびに転写および翻訳終結配列。そのカセットの5’末端および3’末端の独特な制限酵素部位は、既存のベクター内への容易な挿入を可能にする。
【0082】
異種のコード配列は、本発明に関係する任意のタンパク質についての配列であり得る。目的のタンパク質をコードする配列は、適切な場合、そのタンパク質のプロセシングおよびトランスロケーションを可能にするシグナルペプチドをコードし、そして通常、本発明の所望のタンパク質の膜への結合を生じ得るあらゆる配列を欠いている。たいてい、転写開始領域は、発芽中に発現およびトランスロケーションされる遺伝子についてのものであるから、トランスロケーションを与えるシグナルペプチドを使用することにより、また、目的のタンパク質のトランスロケーションを提供し得る。このようにして、目的のタンパク質は、それらが発現される細胞からトランスロケーションされ、そして効率的に回収され得る。代表的には、種子における分泌は、アリューロン層あるいは胚盤上皮層を通過して、種子の胚乳内へと至る。タンパク質がそれが産生された細胞から分泌されることは必要とされないが、このことは組換えタンパク質の単離および精製を容易にする。
【0083】
所望の遺伝子産物の最終的な発現が、真核生物におけるものであるので、クローン化した遺伝子の任意の部分が、イントロンのような、宿主のスプライセオソーム(splicosome)機構よりプロセシングされて除去される配列を含むかどうかを決定することが望ましい。そのような場合、「イントロン」領域の部位特異的変異誘発は、偽イントロンコードとして遺伝的メッセージの一部を欠失することを防ぐために実施され得る。ReedおよびManiatis、Cell 41:95−105(1985)。
【0084】
ベクターは、組換えDNAを機械的に転移するためにマイクロピペットを用いて植物細胞内に直接的に微量注入され得る(Crossway、Mol.Gen.Genet、202:179−185、1985)。遺伝物質はまた、ポリエチレングリコールを用いて植物細胞内に転移され得る(Krensら、Nature、296、72−74、1982)。核酸セグメントの導入の別の方法は、小さいビーズまたは微粒子のいずれかのマトリックスの内部に、あるいは表面に核酸を有する小さな微粒子による高速バリスティック(ballistic)穿通法である(Kleinら、Nature、327、70−73、1987ならびにKnudsenおよびMuller、1991、Planta、185:330−336は、大麦胚乳の粒子の照射(bombardment)によりトランスジェニック大麦を作製することを示している)。さらに別の導入方法は、他の物体(ミニ細胞、細胞、リソソームまたは他の易融な脂肪表面体のいずれか)とのプロトプラストの融合である(Fraleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79、1859−1863、1982)。
【0085】
ベクターはまた、エレクトロポレーションにより植物細胞内に導入され得る(Frommら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5824、1985)。この技術において、植物プロトプラストは、遺伝子構築物を含むプラスミドの存在下でエレクトロポレートされる。高電界強度での電気衝撃により、生体膜を可逆的に透過性にし、プラスミドの導入を可能にする。エレクトロポレートされた植物プロトプラストは細胞壁を再形成し、分裂し、植物カルスを形成する。
【0086】
プロトプラストが単離され得、そして培養されて完全な再生植物を与え得る全ての植物は、本発明により形質転換され得、その結果、移入した遺伝子を含む完全な植物が回収される。実際に、全ての植物が、サトウキビ、テンサイ、ワタ、果樹および他の樹木、マメ科植物および野菜という全ての主要な種を含むがそれらに限定されない培養細胞または組織から再生され得ることが公知である。いくつかの適切な植物としては、例えば、以下の属由来の種が挙げられる:Fragaria、Lotus、Medicago、Onobrychis、Trifolium、Trigonella、Vigna、Citrus、Linum、Geranium、Manihot、Daucus、Arabidopsis、Brassica、Raphanus、Sinapis、Atropa、Capsicum、Datura、Hyoscyamus、Lycopersion、Nicotiana、Solanum、Petunia、Digitalis、Majorana、Cichorium、Helianthus、Lactuca、Bromus、Asparagus、Antirrhinum、Hererocallis、Nemesia、Pelargonium、Panicum、Pennisetum、Ranunculus、Senecio、Salpiglossis、Cucumis、Browaalia、Glycine、Lolium、Zea、Triticum、Sorghum、およびDatura。
【0087】
再生のための手法は、植物の種によって変化するが、しかし一般に異種遺伝子のコピーを含む形質転換されたプロトプラストの懸濁液が最初に提供される。カルス組織は形成され、そしてシュートがカルスから誘導され得、続いて発根させ得る。あるいは、胚形成がプロトプラスト懸濁液から誘導され得る。これらの胚は、天然の胚として発芽し、植物を形成する。培養培地は、一般に種々のアミノ酸、ならびにオーキシンおよびサイトカイニンのようなホルモンを含有する。グルタミン酸およびプロリンを培地に添加することもまた、特にコーンおよびアルファルファのような種にとって有用である。シュートおよび根は通常、同時に発達する。効率的な再生は培地、遺伝子型、および培養歴に依存する。これらの3つの変動要因が制御される場合は、再生は十分に再現性がありそして繰り返し可能である。
【0088】
いくつかの植物細胞培養系において、本発明の所望のタンパク質は排出され得、あるいはこのタンパク質は植物全体から抽出され得る。本発明の所望のタンパク質が培地内に分泌される場合、これは回収され得る。あるいは、胚および胚のない半分の種子または他の植物組織は、機械的に破壊されて細胞間および組織間のあらゆる分泌タンパク質を放出し得る。その混合物は緩衝液に懸濁されて、可溶タンパク質が回収され得る。次いで、従来のタンパク質単離および精製方法は組換えタンパク質を精製するために使用される。時間、温度、pH、酸素、および容量というパラメーターは、異種タンパク質の発現および回収を最適化するために慣用的な方法により調整される。
【0089】
(iv.細菌系)
細菌の発現技術は、当該分野で公知である。細菌のプロモーターは、細菌のRNAポリメラーゼに結合し得、そしてコード配列(例えば、構造遺伝子)の下流方向(3’方向)へのmRNAへの転写を開始し得る、任意のDNA配列である。プロモーターは、通常、コード配列の5’末端に近接して配置される、転写開始領域を有する。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。細菌のプロモーターはまた、オペレーターと呼ばれる第二のドメインを有し、これは、RNA合成が開始する、隣接するRNAポリメラーゼ結合部位と重複し得る。オペレーターは、遺伝子リプレッサータンパク質がこのオペレーターに結合し、それによって、特定の遺伝子の転写を阻害し得るような、負の調節された(誘導性の)転写を可能にする。構成的発現は、オペレーターのような負の調節エレメントの非存在下で起こり得る。さらに、正の調節は、遺伝子アクチベータータンパク質結合配列により達成され得、この配列は、通常、存在する場合には、RNAポリメラーゼ結合配列の(5’)側に近接している。遺伝子アクチベータータンパク質の例としては、カタボライト活性化タンパク質(CAP)があり、これは、Escherichia coli(E.coli)におけるlacオペロンの転写の開始を補助する(Raibaudら(1984)Annu.Rev.Genet.18:173)。従って、調節される発現は、正または負のいずれかであり、それによって、転写を増強するかまたは低下し得る。
【0090】
代謝経路の酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ガラクトース、ラクトース(lac)(Changら.(1997)Nature 198:1056)およびマルトースのような糖代謝の酵素由来のプロモーター配列が挙げられる。さらなる例としては、トリプトファン(trp)(Goeddelら(1980)Nuc.Acids Res.8:4057;Yelvertonら(1981)Nucl.Acids Res.9:731;米国特許第4,738,921号;欧州特許公開番号0036 776および0121 775)のような生合成酵素由来のプロモーター配列が挙げられる。β−ラクタマーゼ(bla)プロモーター系(Weissmann(1981)「The cloning of interferon and other mistakes.」Interferon 3(I.Gresser編))、バクテリオファージλPL(Shimatakeら(1981)Nature 292:128)およびT5(米国特許第4,689,406号)プロモーター系もまた、有用なプロモーター配列を提供する。
【0091】
さらに、天然に存在しない合成プロモーターもまた、細菌プロモーターとして機能する。例えば、ある細菌プロモーターまたはバクテリオファージプロモーターの転写活性化配列を、別の細菌プロモーターまたはバクテリオファージプロモーターのオペロン配列と結合し得、合成ハイブリッドプロモーターを作製する(米国特許第4,551,433号)。例えば、tacプロモーターは、trpプロモーター配列、およびlacリプレッサーにより調節されるlacオペロン配列の両方から構成される、ハイブリッドtrp−lacプロモーターである(Amannら(1983)Gene 25:167;de Boerら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:21)。さらに、細菌プロモーターには、細菌のRNAポリメラーゼに結合しそして転写を開始させる能力を有する、非細菌起源の天然に存在するプロモーターが含まれ得る。非細菌起源の天然に存在するプロモーターはまた、適合性のあるRNAポリメラーゼと連結され、原核生物においていくつかの遺伝子の高レベルの発現をもたらし得る。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、連結したプロモーター系の例である(Studierら(1986)J.Mol.Biol.189:113;Taborら(1985)Proc Natl.Acad.Sci.82:1074)。さらに、ハイブリッドプロモーターはまた、バクテリオファージプロモーターおよびE.coliオペレーター領域から構成され得る(欧州特許公開番号0267 851)。
【0092】
機能性プロモーター配列に加え、有効なリボソーム結合部位もまた、原核生物における外来遺伝子の発現に有用である。E.coliにおいて、リボソーム結合部位は、シャイン−ダルガルノ(SD)配列と呼ばれ、そしてこれは、開始コドン(ATG)および開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する長さ3〜9ヌクレオチドの配列を含む(Shineら(1975)Nature 254:34)。SD配列は、SD配列とE.coliの16S rRNAの3’末端との間の塩基対形成により、リボソームへのmRNAの結合を促進すると考えられている(Steitzら(1979)「Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA.」Biological Regulation and Development:Gene Expression(R.F.Goldberger編))。弱いリボソーム結合部位を有する真核生物遺伝子および原核生物遺伝子の発現のため(Sambrookら(1989)「Expression of cloned genes in Escherichia coli.」Molecular Cloning:A Laboratory Manual)。
【0093】
DNA分子は、細胞内で発現され得る。プロモーター配列は、そのDNA分子と直接的に連結され得、この場合、N末端の最初のアミノ酸は、常に、メチオニンであり、これは、ATG開始コドンによりコードされる。所望される場合、N末端のメチオニンは、臭化シアンとのインビトロインキュベーションによって、あるいは細菌性メチオニンN末端ペプチダーゼとのインビボインキュベーションまたはインビトロインキュベーションのいずれかによって、タンパク質から切断され得る(欧州特許公開番号219 237)。
【0094】
融合タンパク質は、直接的発現に対する代替物を提供する。通常、内在性の細菌タンパク質あるいは他の安定なタンパク質のN末端部分をコードするDNA配列を、異種コード配列の5’末端に融合する。発現の際に、この構築物は、その2つのアミノ酸配列の融合物を提供する。例えば、バクテリオファージλ細胞遺伝子は、外来遺伝子の5’末端に連結され得、そして細菌において発現され得る。この生じた融合タンパク質は、好ましくは、このバクテリオファージタンパク質をこの外来遺伝子から切断するためのプロセシング酵素(第Xa因子)用の部位を保持する(Nagaiら(1984)Nature 309:810)。融合タンパク質はまた、lacZ(Jiaら(1987)Gene 60:197)、trpE(Allenら(1987)J.Biotechnol.5:93;Makoffら(1989)J.Gen.Microbiol.135:11)、およびChey(欧州特許公開番号324 647)遺伝子由来の配列を用いて作製され得る。この2つのアミノ酸配列の接合部でのDNA配列は、切断可能部位をコードしてもよいし、コードしなくてもよい。別の例は、ユビキチン融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、外来タンパク質からユビキチンを切断するためのプロセシング酵素(例えば、ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ)部位を好ましくは保持する、ユビキチン領域と共に作製され得る。この方法を通して、ネイティブの外来タンパク質は単離され得る(Millerら(1989)Bio/Technology 7:698)。
【0095】
あるいは、外来タンパク質はまた、細菌において外来タンパク質の分泌を提供するシグナルペプチド配列フラグメントから構成された融合タンパク質をコードする、キメラDNA分子を作製することによって、細胞から分泌され得る(米国特許第4,336,336号)。このシグナル配列フラグメントは、通常、細胞からのタンパク質の分泌を指向する、疎水性アミノ酸から構成されるシグナルペプチドをコードする。このタンパク質は、増殖培地(グラム陽性細菌)またはペリプラズム空間(細胞の内膜と外膜との間に位置する)(グラム陰性細菌)のいずれかに分泌される。好ましくは、インビボまたはインビトロのいずれかで切断され得る、このシグナルペプチドフラグメントと外来遺伝子との間にコードされる、プロセシング部位が存在する。
【0096】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、E.coli外膜タンパク質遺伝子(ompA)(Masuiら(1983)、Experimetal Manipulation of Gene Expression;Ghrayebら、(1984)EMBO J.3:2437)およびE.coliアルカリホスファターゼシグナル配列(phoA)(Okaら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:7212)のような、分泌性細菌タンパク質の遺伝子に由来し得る。さらなる例として、種々のBacillus株由来のα−アミラーゼ遺伝子のシグナル配列が、B.subtilis由来の異種タンパク質を分泌するために使用され得る(Palvaら(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;欧州特許公開番号244 042)。
【0097】
通常、細菌によって認識される転写終結配列は、翻訳終止コドンの3’側に位置する調節領域であり、そして従って、プロモーターとともに、コード配列に隣接する。これらの配列は、mRNAの転写を指向し、このmRNAが、そのDNAによってコードされるポリペプチドへと翻訳され得る。転写終結配列は、頻繁には、ステムループ構造を形成し得る、約50ヌクレオチドのDNA配列を含み、この構造が、転写の終結を補助する。例としては、強力なプロモーターを有する遺伝子(例えば、E.coliのtrp遺伝子および他の生合成遺伝子)由来の転写終結配列が挙げられる。
【0098】
通常、上記の構成要素(プロモーター、シグナル配列(もし所望ならば)、目的のコード配列、および転写終結配列を含む)が、発現構築物へと組み立てられる。発現構築物は、しばしば、宿主(例えば、細菌)において安定に維持し得る染色体外エレメント(例えばプラスミド)のような、レプリコンに維持される。このレプリコンは、複製系を有し、従って、これが、このレプリコンを、発現またはクローニングおよび増幅のいずれかのために、原核生物宿主において保持されることを可能にする。さらに、レプリコンは、高コピー数プラスミドまたは低コピー数プラスミドのいずれかであり得る。高コピー数プラスミドは、一般に、約5〜約200、そして通常、約10〜約150の範囲のコピー数を有する。高コピー数プラスミドを含む宿主は、好ましくは、少なくとも約10個、そしてより好ましくは、少なくとも約20個のプラスミドを含む。宿主に対するベクターおよび外来タンパク質の効果に依存して、高コピー数ベクターまたは低コピー数ベクターのいずれかが選択され得る。
【0099】
あるいは、発現構築物は、組み込みベクターを用いて、細菌ゲノム内に組み込まれ得る。組み込みベクターは、通常、ベクターが組み込むのを可能にする、細菌染色体と相同な少なくとも1つの配列を含む。組み込みは、このベクターにおける相同なDNAと細菌染色体との間の組換えから生じるようである。例えば、種々のBacillus株由来のDNAで構築した組み込みベクターは、Bacillus染色体に組み込まれる(欧州特許公開番号00127 328)。組み込みベクターはまた、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列から構成され得る。
【0100】
通常、染色体外発現構築物および組み込み発現構築物は、選択マーカーを含み、形質転換された細菌株の選択を可能にし得る。選択マーカーは、この細菌宿主において発現され得、そしてこれらには、薬物(例えば、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)およびテトラサイクリン)に対する耐性を細菌に付与する遺伝子が含まれ得る(Daviesら(1978)Annu.Rev.Microbiol.32:469)。選択マーカーはまた、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシンの生合成経路における生合成遺伝子のような、生合成遺伝子を含み得る。
【0101】
あるいは、上記の成分のいくつかは、形質転換ベクターに組み立てられ得る。形質転換ベクターは、通常、上記のように、レプリコンにおいて維持されるかまたは組み込みベクターへと展開されるかのいずれかの、選択マーカー(market)から構成される。
【0102】
発現ベクターおよび形質転換ベクター(染色体外レプリコンまたは組み込みベクターのいずれも)は、多くの細菌への形質転換のために開発されてきた。例えば、発現ベクターは、とりわけ、以下の細菌のために開発されてきた:Bacillus subtilis(Palvaら(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;欧州特許公開番号0036 259および欧州特許公開番号0063 953;(PCT公開番号)WO 84/04541)、Escherichia coli(Shimatakeら(1981)Nature 292:128;Amannら(1985)Gene 40:183;Studierら(1986)J.Mol.Biol.189:113;欧州特許公開番号0036 776、欧州特許公開番号0136 829および欧州特許公開番号0136 907)、Streptococcus cremoris(Powellら(1988)Appl.Environ.Microbiol.54:655);Streptococcus lividans(Powellら(1988)Appl.Environ.Microbiol.54:655)、Streptomyces lividans(米国特許4,745,056号)。
【0103】
外因性DNAを細菌宿主へ導入する方法は、当該分野において周知であり、そして通常、CaCl2または他の薬剤(例えば、2価の陽イオンおよびDMSO)のいずれかで処理された細菌の形質転換を含む。DNAはまた、エレクトロポレーションによって、細菌細胞へ導入され得る。形質転換の手順は、通常、形質転換される細菌の種によって変化する。例えば、以下を参照のこと:[Massonら(1989)FEMS Microbiol.Lett.60:273;Palvaら(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5582;欧州特許公開番号0036 259および欧州特許公開番号0063 953;WO84/04541、Bacillus]、[Millerら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:856;Wangら(1990)J.Bacteriol.172:949、Campylobacter]、[Cohenら(1973)Proc.Natl.Acad.Sci.69:2110;Dowerら(1988)Nucleic Acids Res.16:6127;Kushner(1978)「An improved method for transformation of Escherichia coli with Co1E1−derived plasmids」Genetic Engineering:Proceedings of the International Symposium on Genetic Engineering(H.W.BoyerおよびS.Nicosia編);Mandelら(1970)J.Mol.Biol.53:159;Taketo(1988)Biochim.Biophys.Acta 949:318、Escherichia coli]、[Chassyら(1987)FEMS Microbiol.Lett.44:173、Lactobacillus]、[Fiedlerら(1988)Anal.Biochem 170:38、Pseudomonas]、[Augustinら(1990)FEMS Microbiol.Lett.66:203、Staphylococcus]、[Baranyら(1980)J.Bacteriol.144:698;Harlander(1987)「Transformation of Streptococcus lactis by electroporation」Streptococcal Genetics(J.FerrettiおよびR.Curtiss III編);Perryら(1981)Infect.Immun.32:1295;Powellら(1988)Appl.Environ.Microbiol.54:655;Somkutiら(1987)Proc.4th Evr.Cong.Biotechnology 1:412、Streptococcus]。
【0104】
(v.酵母発現)
酵母発現系もまた、当業者に公知である。酵母プロモーターは、酵母RNAポリメラーゼに結合し得、そしてコード配列(例えば、構造遺伝子)からmRNAへの下流の(3’側の)転写を開始し得る、任意のDNA配列である。プロモーターは、通常、コード配列の5’末端の近位に位置する、転写開始領域を有する。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位(「TATAボックス」)および転写開始部位を含む。酵母プロモーターはまた、上流アクチベーター配列(UAS)と呼ばれる第2のドメインを有し得、これは、存在する場合、通常、構造遺伝子に対して遠位にある。このUASは、調節された(誘導性)発現を可能にする。構成的発現は、UASの非存在下で生じる。調節された発現は、正または負のいずれかであり得、それによって、転写を増強または減少させ得る。
【0105】
酵母は、活性な代謝経路を有する発酵性生物であり、従って、代謝経路における酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、以下が挙げられる:アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(欧州特許公開番号0284 044)、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、およびピルビン酸キナーゼ(PyK)(欧州特許公開番号0329 203)。酸性ホスファターゼをコードする酵母PHO5遺伝子もまた、有用なプロモーター配列を提供する(Myanoharaら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:1)。
【0106】
さらに、天然には存在しない合成プロモーターもまた、酵母のプロモーターとして機能する。例えば、ある1つの酵母プロモーターのUAS配列を、別の酵母プロモーターの転写活性化領域と連結し得、合成ハイブリッドプロモーターを生成し得る。このようなハイブリッドプロモーターの例としては、GAP転写活性化領域に連結されたADH調節配列(米国特許第4,876,197号および同第4,880,734号)が挙げられる。ハイブリッドプロモーターの他の例としては、GAPまたはPyKのような解糖系酵素遺伝子の転写活性化領域に結合された、ADH2遺伝子、GAL4遺伝子、GAL10遺伝子またはPHO5遺伝子のいずれかの調節配列からなるプロモーターが挙げられる(欧州特許公開番号0164 556)。さらに、酵母プロモーターには、酵母RNAポリメラーゼと結合しそして転写を開始する能力を有する、非酵母起源の天然に存在するプロモーターが含まれ得る。このようなプロモーターの例としては、とりわけ、以下が挙げられる:(Cohenら、(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:1078;Henikoffら(1981)Nature 283:835;Hollenbergら(1981)Curr.Topics Microbiol.Immunol.96:119;Hollenbergら(1979)「The Expression of Bacterial Antibiotic Resistance Genes in the Yeast Saccharomyces cerevisiae」、Plasmids of Medical、Environmental and Commercial Importance(K.N.TimmisおよびA.Puhler編);Mercerau−Puigalonら(1980)Gene 11:163;Panthierら(1980)Curr.Genet.2:109;)。
【0107】
DNA分子は、酵母において、細胞内で発現され得る。プロモーター配列は、DNA分子と直接連結され得、その場合、この組換えタンパク質のN末端にある最初のアミノ酸は、常に、メチオニンであり、これが、ATG開始コドンによってコードされている。所望の場合、N末端のメチオニンは、臭化シアンとのインビトロインキュベーションによって、このタンパク質から切断され得る。
【0108】
融合タンパク質は、酵母発現系について、ならびに哺乳動物、植物、バキュロウイルスおよび細菌の発現系においての、代替物を提供する。通常、内因性酵母タンパク質または他の安定なタンパク質のN末端部分をコードするDNA配列を、異種コード配列の5’末端に融合する。発現に際して、この構築物は、この2つのアミノ酸配列の融合物を提供する。例えば、酵母またはヒトのスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)遺伝子を、外来遺伝子の5’末端に連結し、そして酵母において発現させ得る。この2つのアミノ酸配列の連結部にあるDNA配列は、切断可能部位をコードしてもよいし、コードしなくてもよい。例えば、欧州特許公開番号0196 056を参照のこと。別の例はユビキチン融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、外来タンパク質からユビキチンを切断するプロセシング酵素(例えば、ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ)部位を好ましくは保持する、ユビキチン領域と共に作製される。従って、この方法を通じて、ネイティブな外来タンパク質は、単離され得る(例えば、WO88/024066)。
【0109】
あるいは、外来タンパク質はまた、酵母における外来タンパク質の分泌を提供するリーダー配列フラグメントから構成された融合タンパク質をコードする、キメラDNA分子を作製することによって、細胞から増殖培地へ分泌され得る。好ましくは、インビボまたはインビトロのいずれかで切断され得る、リーダーフラグメントと外来遺伝子との間にコードされるプロセシング部位が存在する。リーダー配列フラグメントは、通常、細胞からのタンパク質の分泌を指向する、疎水性アミノ酸から構成されるシグナルペプチドをコードする。
【0110】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、分泌性酵母タンパク質の遺伝子(例えば、酵母インベルターゼ遺伝子(欧州特許公開番号0012 873;日本国公開公報62、096、086)およびA因子遺伝子(米国特許4,588,684))由来であり得る。あるいは、インターフェロンリーダーのような、酵母における分泌もまた提供する、非酵母起源のリーダーが存在する(欧州特許公開番号0060 057)。
【0111】
好ましいクラスの分泌リーダーは、酵母α因子遺伝子のフラグメントを使用するリーダーであり、これは「プレ」シグナル配列、および「プロ」領域の両方を含む。使用され得るこの型のα因子フラグメントは、完全長のプレ−プロα因子リーダー(約83アミノ酸残基)および短縮されたα因子リーダー(通常約25〜約50アミノ酸残基)を含む(米国特許4,546,083号および同第4,870,008号;欧州特許公開番号0324 274)。分泌を提供するα因子リーダーフラグメントを使用するさらなるリーダーとしては、第1の酵母のプレ配列および第2の酵母α因子由来のプロ領域を用いて作製される、ハイブリッドα因子リーダーが挙げられる(例えば、(PCT公開番号)WO89/02463を参照のこと)。
【0112】
通常、酵母に認識される転写終結配列は、翻訳終止コドンの3’側に位置する調節領域であり、そして従って、プロモーターと共にコード配列に隣接する。これらの配列は、mRNAの転写を指向し、このmRNAが、そのDNAにコードされるポリペプチドへと翻訳され得る。転写終結配列および他の酵母に認識される終結配列の例は、例えば、解糖酵素をコードする配列である。
【0113】
通常、上記の成分(プロモーター、リーダー(所望の場合)、目的のコード配列および転写終結配列を含む)を、発現構築物に組み立てる。発現構築物は、しばしば、宿主(例えば、酵母または細菌)において安定に維持され得る染色体外エレメント(例えば、プラスミド)のような、レプリコンにおいて維持される。このレプリコンは、2つの複製系を有し得、従って、これが、例えば、発現のために酵母中で維持され、そしてクローニングおよび増幅のために原核生物宿主中で維持されることを可能にする。このような酵母−細菌シャトルベクターの例としては、以下が挙げられる:YEp24(Botsteinら(1979)Gene 8:17〜24)、pCl/1(Brakeら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:4642〜4646)、およびYRp17(Stinchcombら(1982)J.Mol.Biol.158:157)。さらに、レプリコンは、高コピー数プラスミドまたは低コピー数プラスミドのいずれかであり得る。高コピー数プラスミドは、一般に、約5〜約200、そして通常、約10〜約150の範囲のコピー数を有する。高コピー数プラスミドを含む宿主は、好ましくは、少なくとも約10個、そしてより好ましくは、少なくとも約20個を有する。宿主に対するベクターおよび外来タンパク質の効果に依存して、高コピー数ベクターまたは低コピー数ベクターのいずれかが選択され得る。例えば、Brakeら、前出を参照のこと。
【0114】
あるいは、発現構築物は、組み込みベクターを用いて、酵母のゲノムへ組み込まれ得る。組み込みベクターは、通常、ベクターが組み込むのを可能にする、酵母の染色体と相同な少なくとも1つの配列を含み、そして好ましくは、この発現構築物に隣接する2つの相同配列を含む。組み込みは、ベクターにおける相同なDNAと酵母の染色体との間の組換えから生じるようである(Orr−Weaverら(1983)Methods in Enzymol.101:228〜245)。組み込みベクターは、そのベクター中に含有するための適切な相同配列を選択することによって、酵母における特定の遺伝子座に指向され得る。Orr−Weaverら、前出を参照のこと。1つ以上の発現構築物が組み込まれ得、これが、おそらく、産生される組換えタンパク質のレベルに影響を与える(Rineら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:6750)。ベクターに含まれる染色体配列は、ベクターにおける単一セグメントとして存在し得るか(これは、ベクター全体の組み込みを生じる)、または染色体における隣接セグメントに相同でかつベクターにおける発現構築物に隣接する2つのセグメントとして存在し得る(これは、発現構築物のみの安定した組み込みを生じ得る)。
【0115】
通常、染色体外発現構築物および組み込み発現構築物は、その形質転換された酵母株の選択を可能にする、選択マーカーを含み得る。選択マーカーとしては、酵母宿主において発現され得る生合成遺伝子(例えば、ADE2、HIS4、LEU2、TRP1およびALG7)ならびにG418耐性遺伝子が挙げられ得、それぞれ、酵母細胞にツニカマイシンおよびG418に対する耐性を付与する。さらに、適切な選択マーカーはまた、金属のような毒性化合物の存在下において増殖する能力を、酵母に提供し得る。例えば、CUP1の存在は、酵母が、銅イオンの存在下において増殖することを可能にする(Buttら(1987)Microbiol.Rev.51:351)。
【0116】
あるいは、上記成分のうちのいくつかは、形質転換ベクターへと組み立てられ得る。形質転換ベクターは、通常、上記のように、レプリコンにおいて維持されるかまたは組み込みベクターに展開される、選択マーカーから構成される。
【0117】
発現ベクターおよび形質転換ベクターは、染色体外レプリコンまたは組み込みベクターのいずれかであり、多くの酵母への形質転換のために開発されてきた。例えば、発現ベクターは、とりわけ、以下の酵母のために開発されてきた:Candida albicans(Kurtzら(1986)Mol.Cell.Biol.6:142)、Candida maltosa(Kunzeら(1985)J.Basic Microbiol.25:141)、Hansenula polymorpha(Gleesonら(1986)J.Gen.Microbiol.132:3459;Roggenkampら(1986)Mol.Gen.Genet.202:302)、Kluyveromyces fragilis(Dasら(1984)J.Bacteriol.158:1165)、Kluyveromyces lactis(De Louvencourtら(1983)J.Bacteriol.154:737;Van den Bergら(1990)Bio/Technology 8:135)、Pichia guillerimondii(Kunzeら(1985)J.Basic Microbiol.25:141)、Pichia pastoris(Creggら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3376;米国特許第4,837,148号および同第4,929,555号)、Saccharomyces cerevisiae(Hinnenら(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929;Itoら(1983)J.Bacteriol.153:163)、Schizosaccharomyces pombe(BeachおよびNurse(1981)Nature 300:706)、およびYarrowia lipolytica(Davidowら(1985)Curr.Genet.10:380471;Gaillardinら(1985)Curr.Genet.10:49)。
【0118】
外因性DNAを酵母宿主へ導入する方法は、当該分野において周知であり、そして通常、スフェロプラストの形質転換またはアルカリ陽イオンで処理したインタクトな酵母細胞の形質転換が含まれる。形質転換の手順は、通常、形質転換される酵母の種によって変化する。例えば、以下を参照のこと:(Kurtzら(1986)Mol.Cell.Biol.6:142;Kunzeら(1985)J.Basic Microbiol.25:141;Candida);(Gleesonら(1986)J.Gen.Microbiol.132:3459;Roggenkampら(1986)Mol.Gen.Genet.202:302;Hansenula);(Dasら(1984)J.Bacteriol.158:1165;De Louvencourtら(1983)J.Bacteriol.154:1165;Van den Bergら(1990)Bio/Technology 8:135;Kluyveromyces);(Creggら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3376;Kunzeら(1985)J.Basic Microbiol.25:141;米国特許第4,837,148号および同第4、929、555号;Pichia);(Hinnenら(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929;Itoら(1983)J.Bacteriol.153:163 Saccharomyces);(BeachおよびNurse(1981)Nature 300:706;Schizosaccharomyces);(Davidowら(1985)Curr.Genet.10:39;Gaillardinら(1985)Curr.Genet.10:49;Yarrowia)。
【0119】
(抗体)
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、少なくとも1つの抗体結合部位から構成されるポリペプチドまたはポリペプチド群をいう。「抗体結合部位」は、内部表面形状および抗原のエピトープの特徴に相補的な電荷分布を有する、3次元結合空間であり、これが、抗体と抗原の結合を可能にする。「抗体」は、例えば、脊椎動物抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、改変された抗体、単価抗体、Fabタンパク質、および単一ドメイン抗体を含む。
【0120】
本発明のタンパク質に対する抗体は、親和性クロマトグラフィー、免疫アッセイ、およびstaphylococcusのタンパク質の識別/同定に有用である。
【0121】
本発明のタンパク質に対する抗体(ポリクローナルおよびモノクローナルの両方)は、従来の方法によって調製され得る。一般に、このタンパク質は、最初に、適切な動物、好ましくはマウス、ラット、ウサギ、またはヤギを免疫するために使用される。ウサギおよびヤギは、得られ得る血清の容量、および標識された抗ウサギ抗体および抗ヤギ抗体の入手可能性に起因して、ポリクローナル血清の調製のために好ましい。免疫は、一般的に、タンパク質を生理的食塩水(好ましくはフロイント完全アジュバントのようなアジュバント)に混合または乳化し、そしてこの混合物または乳化物を非経口的に(一般的に皮下、または筋肉内に)注射することによって、行われる。50〜200μg/注射の用量が、代表的に十分である。免疫は、一般的に、2〜6週後に生理的食塩水(好ましくはフロイント不完全アジュバントを用いて)中のタンパク質の1回以上の注射でブーストされる。あるいは、当該分野において公知の方法を使用するインビトロ免疫によって抗体を産生し得、これは、本発明の目的にとっては、インビボ免疫に等しいと考えられる。ポリクローナル抗血清は、免疫された動物からガラスまたはプラスチック製の容器へ採血し、その血液を25℃で1時間インキュベートし、その後4℃で2〜18時間インキュベートすることによって得られる。この血清は、遠心分離(例えば1、000g、10分間)によって回収される。ウサギから、採血1回につき約20〜50mlが得られ得る。
【0122】
モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(Nature(1975)256:495〜96)の標準的方法、またはその改変版を使用して調製される。代表的には、マウスまたはラットが、上記のように免疫される。しかし、血清を抽出するために動物から採血するよりも、脾臓(および必要に応じていくつかの大きなリンパ節)が取り出され、そして単一の細胞へ解離される。所望の場合、脾臓細胞は、(非特異的付着細胞の除去後)タンパク質抗原でコーティングされたプレートまたはウェルへ細胞懸濁液を適用することによって、スクリーニングされ得る。この抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞は、このプレートに結合し、そして残りの懸濁液によって、洗い落とされない。得られるB細胞、または全ての解離された脾臓細胞は、次に骨髄腫細胞と融合するように誘導されてハイブリドーマを形成し、そして選択培地(例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)において培養される。得られるハイブリドーマは、限界希釈によってプレーティングされ、そして免疫する抗原に対して特異的に結合する(かつ関連しない抗原に結合しない)抗体の産生についてアッセイされる。選択されたMAb分泌ハイブリドーマは、次にインビトロ(例えば、組織培養瓶または中空線維リアクター中で)、またはインビボ(マウスにおける腹水として)のいずれかで培養される。
【0123】
所望の場合、抗体は(ポリクローナルまたはモノクローナルいずれであっても)、従来技術を使用して標識され得る。適切な標識としては、以下が挙げられる:発蛍光団、発色団、放射性原子(特に32Pおよび125I)、電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンド。酵素は、代表的に、その活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、通常、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を青い色素へ変換するその能力(分光光度計を用いて定量可能)によって、検出される。「特異的結合パートナー」とは、高い特異性でリガンド分子に結合し得るタンパク質をいい、例えば、抗原およびそれに特異的なモノクローナル抗体の場合である。他の特異的結合パートナーは、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、IgGおよびプロテインA、ならびに当該分野において公知の多くのレセプター−リガンド結合体を含む。同じ標識がいくつかの異なる様式で働き得るので、上記が、種々の標識を別個のクラスへ分類することを意味しないことは、理解されるべきである。例えば、125Iは、放射性標識として、または電子密度試薬として働き得る。HRPは、酵素として、またはMAbについての抗原として働き得る。さらに、所望の効果のために、種々の標識を組合せ得る。例えば、MAbおよびアビジンはまた、本発明の実施において、標識を必要とする:従って、MAbをビオチンで標識して、そして125Iで標識したアビジン、またはHRPで標識した抗ビオチンMAbで、その存在を検出し得る。他の並べ替えおよび可能性は、当業者に容易に明らかであり、そして本発明の範囲内で等価であると考えられる。
【0124】
(薬学的組成物)
薬学的組成物は、本発明のポリペプチド、抗体または核酸のいずれかを含み得る。この薬学的組成物は、治療上有効な量の、本願発明のポリペプチド、抗体、またはポリヌクレオチドのいずれかを含む。
【0125】
本明細書において使用される場合、用語「治療上有効な量」とは、所望の疾患または状態を処置、改善、または予防するための治療薬剤の量、または、検出可能な治療効果または予防効果を示すための治療薬剤の量をいう。この効果は、例えば、キメラマーカーまたは抗原レベルによって検出され得る。治療効果はまた、体温低下のような、身体の症状における減少を含む。被験体に対する正確な有効量は、被験体の大きさおよび健康、状態の性質および程度、ならびに投与のために選択される治療剤または治療剤の組合せに依存する。従って、あらかじめ正確な有効量を特定することは有用ではない。しかし、所定状況のための有効量は、慣用的な実験によって決定され得、そして臨床医の判断内である。
【0126】
本発明の目的のために、有効な用量は、DNA構築物が投与される個体において、約0.01mg/kg〜50mg/kgまたは0.05mg/kg〜約10mg/kgのDNA構築物である。
【0127】
薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、抗体またはポリペプチド、遺伝子、および他の治療薬剤のような、治療薬剤の投与のためのキャリアをいう。この用語は、この組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生をそれ自体は誘導しない、任意の薬学的キャリアをいい、そして、過度の毒性を伴わずに投与され得る。適切なキャリアは、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子のような、大きく、ゆっくり代謝される高分子であり得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。
【0128】
薬学的に受容可能な塩が、その中で使用され得る。例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、硫酸塩などのような鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような有機酸の塩である。薬学的に受容可能な賦形剤の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、N.J.1991)にて入手可能である。
【0129】
治療組成物における薬学的に受容可能なキャリアは、水、生理的食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含み得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質が、このようなビヒクルに存在し得る。代表的には、治療組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能物質として調製される;注射前に液体ビヒクルに溶解または懸濁するのに適切な固体形態もまた、調製され得る。リポソームは、薬学的に受容可能なキャリアの定義中に含まれる。
【0130】
(送達方法)
一旦処方されると、本発明の組成物は、その被験体へ直接投与され得る。処置される被験体は、動物であり得;特に、ヒト被験体が処置され得る。
【0131】
その組成物の直接送達は、一般的に、皮下、腹腔、静脈内、または筋肉内のいずれかでの注入によって達成されるか、あるいは、組織の間隙空間へ送達される。この組成物はまた、病巣へ投与され得る。他の投与様式には、経口投与、および肺投与、坐剤、および経皮(transdermal)適用または経皮(transcutaneous)適用(例えば、WO98/20734を参照のこと)、針、および遺伝子銃またはハイポスプレー(hypospray)が含まれる。投薬処置は、単回用量スケジュール、または多数回用量スケジュールであり得る。
【0132】
(ワクチン)
本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防するため)または治療的(すなわち、感染後の疾患を処置するため)のいずれかであり得る。
【0133】
このようなワクチンは、免疫抗原、免疫原、ポリペプチド、タンパク質または核酸を、通常「薬学的に受容可能なキャリア」と組合せて含み、このキャリアは、その組成物を受ける個体に有害である抗体の産生をそれ自体は誘発しない任意のキャリアを含む。適切なキャリアは、代表的に、大きく、ゆっくり代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集物(例えば、油小滴またはリポソーム)、および不活性ウイルス粒子である。このようなキャリアは、当業者に周知である。さらに、これらのキャリアは免疫刺激薬剤(「アジュバント」)として機能し得る。さらに、この抗原または免疫原は、細菌毒素(例えば、ジフテリア、破傷風、コレラ、H.pyloriなどの病原体由来の毒素)と結合体化され得る。
【0134】
この組成物の効力を増強するために好ましいアジュバントは、(1)アルミニウム塩(「ミョウバン」)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど)、(2)水中油エマルジョン処方物(他の特定の免疫刺激薬剤(例えば、ムラミルペプチド(以下を参照のこと)または細菌細胞壁成分)を含むか含まない)、例えば、以下:(a)5%スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85(必要に応じて、種々の量のMTP−PE(以下を参照のこと)を含有するが、必要ではない)を含み、モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)のようなマイクロフルイダイザーを用いてμ未満の粒子へと処方された、MF59TM(WO90/14837;Vaccine design:the subunit and adjuvant approach、PowellおよびNewman編、Plenum Press 1995の第10章);(b)μ未満のエマルジョンへと微小流体化されたか、またはボルテックスして、より大きな粒子径エマルジョンを生成したかのいずれかである、10%スクアレン、0.4% Tween80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDP(以下を参照のこと)を含有する、SAF、ならびに(c)2%スクアレン、0.2% Tween80、およびモノホスホリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPLおよびCWS(DetoxTM)からなる群由来の1つ以上の細菌細胞壁成分を含む、RibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem、Hamilton、MT);(3)サポニンアジュバント(例えば、StimulonTM)(Cambridge Bioscience、Worcester、MA)を使用し得るか、またはそれから粒子(例えば、ISCOM(免疫刺激性複合体)を生成し得る;(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)など;ならびに(6)その組成物の効力を強化するための免疫刺激剤として作用する他の物質を含むが、それらに限定されない。ミョウバンおよびMF59TMが好ましい。
【0135】
上記で言及したように、ムラミルペプチドは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などを含むが、それらに限定されない。
【0136】
免疫原性組成物(例えば、免疫抗原/免疫原/ポリペプチド/タンパク質/核酸、薬学的に受容可能なキャリア、およびアジュバント)は、代表的に、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなど)を含有する。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)が、このようなビヒクルにおいて存在し得る。
【0137】
代表的に、免疫原性組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとして、注射剤として調製され;注射前に液体ビヒクルにおける溶液または懸濁物として適切な固体形態もまた調製され得る。この調製物はまた、薬学的に受容可能なキャリアの下で、上記に記載のように、アジュバント効果の強化のために乳化され得るかまたはリポソーム中にカプセル化され得る。
【0138】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫原性有効量の抗原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチド、および任意の他の上記の成分を必要に応じて含む。「免疫原性有効量」とは、個体へのその量の投与が、単回用量であれ、一連の(用量の)一部としてであれ、処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康および身体状態、処置される個体の分類学上の群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、そのワクチンの処方、医療的状況の処置する医師の評価、および他の関連する因子に依存して変動する。その量は、比較的広い範囲にあり、この量が慣用的な試行を通して決定され得ることが予想される。
【0139】
免疫原性組成物は、従来のように、非経口的(例えば、皮下、筋肉内または経皮(transudermally)/経皮(transucutaneously)のいずれかでの注射による)に投与される(例えば、WO98/20734)。他の投与様式に適切なさらなる処方物は、経口処方物および肺処方物、坐剤、ならびに経皮適用を含む。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多数回用量スケジュールであり得る。ワクチンは、他の免疫調節剤と組み合わせて投与され得る。
【0140】
タンパク質ベースのワクチンの代替として、DNAワクチンが使用され得る(例えば、RobinsonおよびTorres(1997)Seminars in Immunol 9:271−283;Donnellyら(1997)Annu Rev Immunol 15:617−648;本明細書以下)。
【0141】
(遺伝子送達ビヒクル)
本発明の治療剤のコード配列を含む、哺乳動物における発現のためにその哺乳動物へ送達される構築物の送達のための遺伝子治療ビヒクルは、局所または全身的のいずれかで投与され得る。これらの構築物は、ウイルスベクターアプローチまたは非ウイルスベクターアプローチを、インビボまたはエキソビボの様式で利用し得る。このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物プロモーターまたは異種性プロモーターを用いて誘導され得る。このコード配列のインビボでの発現は、構成性または調節性のいずれかであり得る。
【0142】
本発明は、意図された核酸配列を発現し得る遺伝子送達ビヒクルを含む。この遺伝子送達ビヒクルは、好ましくは、ウイルスベクター、そしてより好ましくはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクターまたはαウイルスベクターである。このウイルスベクターはまた、アストロウイルスベクター、コロナウイルスベクター、オルトミクソウイルスベクター、パポバウイルスベクター、パラミクソウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、またはトガウイルスベクターであり得る。一般的には、Jolly(1994)Cancer Gene Therapy 1:51−64;Kimura(1994)Human Gene Therapy 5:845−852;Connelly(1995)Human Gene Therapy 6:185−193;およびKaplitt(1994)Nature Genetics 6:148−153を参照のこと。
【0143】
レトロウイルスベクターは、当該分野で周知であり、そして、本発明者らは、任意のレトロウイルス遺伝子治療ベクターが本発明において使用可能であることを意図しており、このレトロウイルスベクターには、B型、C型およびD型のレトロウイルス、異種栄養性レトロウイルス(例えば、NZB−X1、NZB−X2およびNZB9−1(O’Neill(1985)J.Virol.53:160を参照のこと)多栄養性レトロウイルス(例えば、MCFおよびMCF−MLV(Kelly(1983)J.Virol.45:291を参照のこと)、スプマウイルスおよびレンチウイルスが含まれる。RNA Tumor Viruses、第2版、Cold Spring Harobor Laboratory、1985を参照のこと。
【0144】
レトロウイルス遺伝子治療ベクターの部分は、異なるレトロウイルスに由来し得る。例えば、レトロウイルスLTRは、マウス肉腫ウイルスに由来し得、tRNA結合部位はラウス肉腫ウイルスに由来し得、パッケージングシグナルはマウス白血病ウイルスに由来し得、そして第二の鎖合成の起源はトリ白血症ウイルスに由来し得る。
【0145】
これらの組換えレトロウイルスベクターを使用して、適切なパッケージング細胞株へそれらを導入することによって形質導入コンピテントレトロウイルスベクター粒子を生成し得る(米国特許第5,591,624号を参照のこと)。レトロウイルスベクターは、レトロウイルス粒子へのキメラインテグラーゼ酵素の組込みによる、宿主細胞DNAへの部位特異的組込みのために構築され得る(WO96/37626号を参照のこと)。この組換えウイルスベクターは複製欠損組換えウイルスであることが好ましい。
【0146】
上記に記載のレトロウイルスベクターを伴う使用について適切なパッケージング細胞株は、当該分野で周知であり、容易に調製され(WO95/30763号およびWO92/05266号を参照のこと)、そしてこれを使用して、組換えベクター粒子の生産のためのプロデューサー細胞株(これは、ベクター細胞株または「VCL」とも称される)を作製し得る。好ましくは、このパッケージング細胞株は、ヒトの親細胞(例えば、HT1080細胞)またはミンク親細胞株から作製され、これは、ヒト血清における不活化を排除する。
【0147】
レトロウイルス遺伝子治療ベクターの構築のために好ましいレトロウイルスは、トリ白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、マウス白血病ウイルス、ミンク細胞フォーカス形成ウイルス、マウス肉腫ウイルス、細網内皮症ウイルスおよびラウス肉腫ウイルスを含む。特に好ましいマウス白血病ウイルスは、4070Aおよび1504A(HartleyおよびRowe(1976)J Virol 19:19−25)、エーベルソン(ATCC番号VR−999)、フレンド(ATCC番号VR−245)、グラフィー、グロス(ATCC番号VR−590)、カーステン(Kirsten)、ハーベイ(Harvey)肉腫ウイルス、ならびにラッシャー(ATCC番号VR−998)およびモロニーマウス白血病ウイルス(ATCC番号VR−190)を含む。このようなレトロウイルスは、寄託機関または収集機関(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC」)、Rockville、Maryland)から入手し得るか、または一般に利用可能な技術を用いて公知の供給源から単離され得る。
【0148】
本発明において使用可能な例示的な公知のレトロウイルス遺伝子治療ベクターとしては、特許出願GB2200651、EP0415731、EP0345242、EP0334301、WO89/02468;WO89/05349、WO89/09271、WO90/02806、WO90/07936、WO94/03622、WO93/25698、WO93/25234、WO93/11230、WO93/10218、WO91/02805、WO91/02825、WO95/07994、米国特許第5,219,740号、同第4,405,712号、同第4,861,719号、同第4,980,289号、同第4,777,127号、同第5,591,624号に記載されるものが挙げられる。Vile(1993)Cancer Res 53:3860−3864;Vile(1993)Cancer Res 53:962−967;Ram(1993)Cancer Res 53(1993)83−88;Takamiya(1992)J Neurosci Res 33:493−503;Baba(1993)J Neurosurg 79:729−735;Mann(1983)Cell 33:153;Cane(1984)Proc Natl Acad Sci 81;6349;およびMiller(1990)Human Gene Therapy 1もまた参照のこと。
【0149】
ヒトアデノウイルス遺伝子治療ベクターもまた当該分野で公知であり、そして本発明において使用可能である。例えば、Berkner(1988)Biotechniques 6:616およびRosenfeld(1991)Science 252:431;ならびにWO93/07283、WO93/06223、およびWO93/07282を参照のこと。本発明において使用可能な例示的な公知のアデノウイルス遺伝子治療ベクターとしては、上記に参照される文書およびWO94/12649、WO93/03769、WO93/19191、WO94/28938、WO95/11984、WO95/00655、WO95/27071、WO95/29993、WO95/34671、WO96/05320、WO94/08026、WO94/11506、WO93/06223、WO94/24299、WO95/14102、WO95/24297、WO95/02697、WO94/28152、WO94/24299、WO95/09241,WO95/25807、WO95/05835、WO94/18922およびWO95/09654において記載されるものが挙げられる。あるいは、Curiel(1992)Hum.Gene Ther.3:147−154に記載されるような殺傷したアデノウイルスに連結したDNAの投与が使用され得る。本発明の遺伝子送達ビヒクルはまた、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。本発明における使用のためのこのようなベクターの主要なそして好ましい例は、Srivastava WO93/09239に開示されるAAV−2ベースのベクターである。最も好ましいAAVベクターは、2つのAAV逆方向末端反復を含む。ここで、ネイティブD配列は、ヌクレオチドの置換によって改変され、その結果、少なくとも5つのネイティブなヌクレオチドおよび18までのネイティブヌクレオチド、好ましくは少なくとも10のネイティブヌクレオチドから18までのネイティブヌクレオチド、最も好ましくは10のネイティブヌクレオチドが保持され、そしてD配列の残りのヌクレオチドが欠失またはネイティブでないヌクレオチドで置換されている。AAV逆方向末端反復のネイティブなD配列は、各AAV逆方向末端反復において(すなわち、各末端に1つの配列が存在する)20の連続するヌクレオチドの配列であって、これは、HP形成に関与しない。ネイティブでない置換ヌクレオチドは、同じ位置でのネイティブなD配列に見出されるヌクレオチド以外の任意のヌクレオチドであり得る。他の使用可能な例示的なAAVベクターは、pWP−19、pWN−1であり、これらは両方ともはNahreini(1993)Gene 124:257−262に開示される。このようなAAVベクターの別の例は、psub201(Samulski(1987)J.Virol.61:3096を参照のこと)である。別の例示的なAAVベクターは、Double−D ITRベクターである。Double−D ITRベクターの構築は、米国特許第5,478,745号に開示される。なお他のベクターは、Carterの米国特許第4,797,368号およびMuzyczkaの米国特許第5,139,941号、Chartejeeの米国特許第5,474,935号ならびにKotinのWO94/288157に開示されるものである。本発明において使用可能なAAVベクターのなおさらなる例は、SSV9AFABTKneoであり、これは、AFPエンハンサーおよびアルブミンプロモーターを含み、そして肝臓において優勢に発現を指向する。その構造および構築は、Su(1996)Human Gene Therapy 7:463−470に開示されている。さらなるAAV遺伝子治療ベクターは、米国特許第5,354,678号、同第5,173,414号、同第5,139,941号、および同第5,252,479号に記載されている。
【0150】
本発明の遺伝子治療ベクターはまた、ヘルペスウイルスベクターを含む。主要なそして好ましい例は、チミジンキナーゼポリペプチドをコードする配列を含む単純ヘルペスウイルスベクター(例えば、米国特許第5,288,641号、およびEP0176170(Roizman)に開示されるもの)である。さらなる例示的な単純ヘルペスウイルスベクターとしては、WO95/04139(Wistar Institute)に開示されているHFEM/ICP6−LacZ、Geller(1988)Science 241:1667−1669ならびにWO90/09441およびWO92/07945に記載されているpHSVlac、Fink(1992)Human Gene Therapy 3:11−19に記載されるHSV Us3::pgC−lacZ、ならびにEP0453242(Breakefield)に記載されているHSV 7134、2RH 105およびGAL4、ならびにATCCに受託番号VR−977およびVR−260として寄託されたものが挙げられる。
【0151】
本発明において使用され得るαウイルス遺伝子治療ベクターもまた意図される。好ましいαウイルスベクターは、シンドビスウイルスベクターである。トガウイルス、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、Middlebergウイルス(ATCC VR−370)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR923;ATCC VR−1250;ATCC VR−1249;ATCC VR−532)および米国特許第5,091,309号、同第5,217,879号、およびWO92/10578に記載されているもの。より詳細には、米国特許出願第08/405,627号(1995年3月15日出願)、WO94/21792号、WO92/10578号、WO95/07994号、米国特許第5,091,309号、ならびに米国特許第5,217,879号に記載されているαウイルスベクターが使用可能である。このようなαウイルスは、ATCC(Rockville、Maryland)のような寄託機関または収集機関から入手し得るか、あるいは一般的に利用可能な技術を用いて公知の供給源から単離され得る。好ましくは、細胞傷害性を減少させたαウイルスベクターを使用する(米国特許出願番号08/679640号を参照のこと)。
【0152】
DNAベクター系(例えば、真核生物層状発現系)もまた、本発明の核酸の発現に有用である。真核生物層状発現系の詳細な説明についてはWO95/07994を参照のこと。好ましくは、本発明の真核生物層状発現系はαウイルスベクターに由来し、そして最も好ましくはシンドビスウイルスベクターに由来する。
【0153】
本発明における使用に適切な他のウイルスベクターとしては、以下に由来するものが挙げられる:ポリオウイルス(例えば、ATCC VR−58およびEvans、Nature 339(1989)385およびSabin(1973)J.Biol.Standardization 1:115に記載されているもの);リノウイルス(例えば、ATCC VR−1110およびArnold(1990)J Cell Biochem L401に記載されているもの);ポックスウイルス(例えば、カナリアポックスルウイルスまたはワクシニアウイルス(例えば、ATCC VR−111およびATCC VR−2010ならびにFisher−Hoch(1989)Proc Natl Acad Sci 86:317;Flexner(1989)Ann NY Acad Sci 569:86、Flexner(1990)Vaccine 8:17;米国特許第4,603,112号および同第4,769,330号ならびにWO89/01973号に記載されているもの);SV40ウイルス(例えば、ATCC VR−305およびMulligan(1979)Nature 277:108およびMadzak(1992)J Gen Virol 73:1533に記載されているもの);インフルエンザウイルス(例えば、ATCC VR−797および米国特許第5,166,057号およびEnami(1990)Proc Natl Acad Sci 87:3802−3805;EnamiおよびPalese(1991)J Virol 65:2711−2713およびLuytjes(1989)Cell 59:110(McMichael(1983)NEJ Med 309:13ならびにYap(1978)Nature 273:238およびNature(1979)277:108もまた参照のこと)に記載されているような逆遺伝子技術を使用して作製した組換えインフルエンザウイルス);EP−0386882およびBuchschacher(1992)J.Virol.66:2731に記載されているようなヒト免疫不全ウイルス;麻疹ウイルス(例えば、ATCC VR−67およびVR−1247ならびにEP−0440219に記載されているもの);アウラ(Aura)ウイルス(例えば、ATCC VR−368);ベバル(Bebaru)ウイルス(例えば、ATCC VR−600およびATCC VR−1240);カバス(Cabassou)ウイルス(例えば、ATCC VR−922);チクングニヤウイルス(例えば、ATCC VR−64およびATCC VR−1241);フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス(例えば、ATCC VR−924);ゲタウイルス(例えば、ATCC VR−369およびATCC VR−1243);キジラガハ(Kyzylagach)ウイルス(例えば、ATCC VR−927);マヤロウイルス(例えば、ATCC VR−66);ムカン(Mucambo)ウイルス(例えば、ATCC VR−580およびATCC VR−1244);ヌヅム(Ndumu)ウイルス(例えば、ATCC VR−371);ピクスナ(Pixuna)ウイルス(例えば、ATCC VR−372およびATCC VR−1245);トナテ(Tonate)ウイルス(例えば、ATCC VR−925);トリニティ(Trinity)ウイルス(例えば、ATCC VR−469);ユナ(Una)ウイルス(例えば、ATCC VR−374);ワタロア(Whataroa)ウイルス(例えば、ATCC VR−926);Y−62−33ウイルス(例えば、ATCC VR−375);オニョンウイルス、東部脳炎ウイルス(例えば、ATCC VR−65およびATCC VR−1242);西部脳炎ウイルス(例えば、ATCC VR−70、ATCC VR−1251、ATCC VR−622およびATCC VR−1252);ならびにコロナウイルス(例えば、ATCC VR−740)およびHamre(1966)Proc Soc Exp Biol Med 121:190に記載されているもの。
【0154】
本発明の組成物の細胞への送達は、上に言及したウイルスベクターに限定されない。他の送達方法および媒体が使用され得る(例えば、核酸発現ベクター、殺傷したアデノウイルスに連結したポリカチオン性縮合DNAかまたは連結してないポリカチオン性縮合DNA単独(例えば、米国特許出願番号08/366,787(1994年12月30日出願)およびCuriel(1992)Hum Gene Ther 3:147−154を参照のこと)、リガンド連結DNA(例えば、Wu(1989)J Biol Chem 264:16985−16987を参照のこと)、真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許出願番号08/240,030(1994年5月9日出願)および米国特許出願番号08/404,796を参照のこと)、光重合化ヒドロゲル物質の沈着、手動の遺伝子移入粒子銃(米国特許第5,149,655号に記載されているような)、米国特許第5,206,152号およびWO92/11033に記載されているような電離放射線、核電荷中和または細胞膜との融合)。さらなるアプローチは、Philip(1994)Mol Cell Biol 14:2411−2418およびWoffendin(1994)Proc Natl Acad Sci 91:1581−1585に記載される。
【0155】
粒子媒介遺伝子移入が使用され得る(例えば、米国特許出願番号60/023,867号を参照のこと)。手短には、配列を、高レベル発現のための従来の制御配列を含む従来のベクターに挿入し得、次いで細胞標的化リガンド(例えば、アシアロオロソムコイド(WuおよびWu(1987)J.Biol.Chem.262:4429−4432に記載されているような)、Hucked(1990)Biochem Pharmacol 40:253−263に記載されているようなインスリン、Plank(1992)Bioconjugate Chem 3:533−539に記載されているようなガラクトース、ラクトースまたはトランスフェリン)に連結された合成遺伝子移入分子(例えば、ポリリジン、プロタミンおよびアルブミンのような重合DNA結合カチオン)とともにインキュベートされ得る。
【0156】
裸のDNAもまた使用され得る。例示的な裸のDNA導入方法は、WO90/11092および米国特許第5,580,859号に記載されている。取り込み効率は、生分解性のラテックスビーズを用いて改良され得る。DNAコートラテックスビーズは、ビーズによるエンドサイトーシス開始の後に効率よく細胞へと輸送される。この方法は、ビーズを処理して疎水性を高め、それによってエンドソームの破壊および細胞質へのDNAの放出を容易にすることによってさらに改良され得る。
【0157】
遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号、WO95/13796、WO94/23697、WO91/14445、およびEP−524,968に記載される。米国特許出願60/023,867に記載されるように、非ウイルス性送達において、ポリペプチドをコードする核酸配列は、高レベル発現のための従来の制御配列を含む従来のベクターへと挿入され得、次いで細胞標的化リガンド(例えば、アシアロオロソムコイド、インスリン、ガラクトース、ラクトースまたはトランスフェリン)に連結された、重合性DNA結合カチオン(例えば、ポリリジン、プロタミン、およびアルブミン)のような合成遺伝子移入分子とともにインキュベートされ得る。他の送達系は、種々の組織特異的または普遍的作用性のプロモーターの制御下に遺伝子を含むDNAをカプセル化するためのリポソームの使用を含む。さらに、使用に適切な非ウイルス送達は、機械的送達系(例えば、Woffendinら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(24):11581−11585に記載されるアプローチを含む。さらに、コード配列およびそのようなものの発現産物は、光重合化ヒドロゲル物質の沈着を介して送達され得る。コード配列の送達について使用され得る、遺伝子送達のための他の従来の方法としては、例えば、手動の遺伝子移入粒子銃(米国特許第5,149,655号に記載されているような);移入された遺伝子を活性化するための電離放射線の使用(米国特許第5,206,152号およびWO92/11033に記載されるような)が挙げられる。
【0158】
例示的なリポソームおよびポリカチオン性遺伝子送達ビヒクルは、米国特許第5,422,120号および同第4,762,915号;WO95/13796;WO94/23697;およびWO91/14445;EP−0524968;およびStryer、Biochemistry、236−240頁(1975)、W.H.Freeman、San Francisco;Szoka(1980)Biochem Biophys Acta 600:1;Bayer(1979) Biochem Biophys Acta 550:464;Rivnay(1987)Meth Enzymol 149:119;Wang(1987)Proc Natl Acad Sci 84:7851;Plant(1989)Anal Biochem 176:420に記載されているものである。
【0159】
ポリヌクレオチド組成物は、治療有効量の遺伝子治療ビヒクル(この用語は上記に定義されるとおりである)を含み得る。本発明の目的のために、有効用量は、投与される個体において、約0.01mg/kg〜50mg/kgまたは0.05mg/kg〜約10mg/kgのDNA構築物である。
【0160】
(送達方法)
一旦処方されると、本発明のポリヌクレオチド組成物は、(1)被験体に直接);(2)エキソビボで被験体由来の細胞に送達されて;または(3)組換えタンパク質の発現のためにインビトロで、投与され得る。処置される被験体は、哺乳動物または鳥類であり得る。ヒト被験体もまた処置され得る。
【0161】
この組成物の直接送達は、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内の注射によって、あるいは組織の間隙空間への送達によって一般的に達成される。この組成物はまた、病巣へ投与され得る。他の投与様式としては、経口投与および肺投与、坐剤、および経皮(transdermal)もしくは経皮(transcutaneous)適用(例えばWO98/20734を参照のこと)、針、ならびに遺伝子銃またはハイポスプレーが挙げられる。投薬治療は、単回用量スケジュールまたは多数回用量スケジュールであり得る。
【0162】
エキソビボ送達および被験体への形質転換細胞の再移植のための方法は、当該分野で公知であり、そして例えばWO93/14778に記載されている。エキソビボ適用に有用である細胞の例としては、例えば、幹細胞、特に、造血細胞、リンパ細胞、マクロファージ、樹状細胞または腫瘍細胞が挙げられる。
【0163】
一般的に、エキソビボ適用およびインビトロ適用の両方のための核酸の送達は、以下の手順:例えば、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介トランスフェクション、原形質体融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソーム内へのカプセル化、およびDNAの核への直接の微量注入(これらはすべて当該分野で周知である)で達成され得る。
【0164】
(ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの薬学的組成物)
上記に記載の薬学的に受容可能なキャリアおよび塩に加えて、以下のさらなる薬剤がポリヌクレオチド組成物および/またはポリペプチド組成物とともに使用され得る。
【0165】
(A.ポリペプチド)
1つの例は、限定することなく以下を包含するポリペプチドである:アシアロオロソムコイド(ASOR);トランスフェリン;アシアロ糖タンパク質;抗体;抗体フラグメント;フェリチン;インターロイキン;インターフェロン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、幹細胞因子およびエリスロポエチン。ウイルス抗原(例えば、エンベロープタンパク質)もまた、使用され得る。また、他の侵襲性生物由来のタンパク質(例えば、RIIとして知られる熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)のサーカムスポロゾイト(circumsporozoite)タンパク質由来の17アミノ酸ペプチド)。
【0166】
(B.ホルモン、ビタミンなど)
包含され得る他の群は、例えば、ホルモン、ステロイド、アンドロゲン、エストロゲン、甲状腺ホルモン、またはビタミン、葉酸である。
【0167】
(C.ポリアルキレン、ポリサッカリドなど)
また、ポリアルキレングリコールが、所望のポリヌクレオチド/ポリペプチドとともに含まれ得る。好ましい実施態様において、ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。さらに、モノサッカリド、ジサッカリド、またはポリサッカリドが含有され得る。この局面の好ましい実施態様において、このポリサッカリドは、デキストランまたはDEAE−デキストランである。また、キトサンおよびポリ(乳酸−コ−グリコリド)
(D.脂質およびリポソーム)
所望のポリヌクレオチド/ポリペプチドはまた、被験体またはそれに由来する細胞への送達の前に、脂質中にカプセル化され得るか、またはリポソーム中にパッケージングされ得る。
【0168】
脂質カプセル化は、一般的に核酸に安定に結合し得るかまたは核酸を捕捉および維持し得る、リポソームを用いて達成される。脂質調製物に対する縮合ポリヌクレオチドの比は、変動し得るが、一般的に約1:1(mgDNA:マイクロモル脂質)であるか、またはより多くの脂質である。核酸の送達のためのキャリアとしてリポソーム使用の概説については、HugおよびSleight(1991)Biochim.Biophys.Acta.1097:1−17;Straubinger(1983)Meth.Enzymol.101:512−527を参照のこと。
【0169】
本発明における使用のためのリポソーム調製物は、カチオン性(正に荷電した)調製物、アニオン性(負に荷電した)調製物および中性調製物を包含する。カチオン性リポソームは、機能的な形態で、プラスミドDNA(Felgner(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7416);mRNA(Malone(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6077−6081;および精製した転写因子(Debs(1990)J.Biol.Chem.265:10189−10192)の細胞内送達を媒介することが示されている。
【0170】
カチオン性リポソームは容易に入手可能である。例えば、N[1−2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリエチルアンモニウム(DOTMA)リポソームは、GIBCO BRL、Grand Island、NYからの商標リポフェクチン(Lipofectin)の下で入手可能である(Felgner、前出もまた参照のこと)。他の市販されているリポソームとしては、トランスフェクテース(transfectace)(DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE(Boerhinger)が挙げられる。他のカチオン性リポソームは、当該分野で周知の技法を使用して、容易に利用可能な物質から調製され得る。例えば、DOTAP(1、2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン)リポソームの合成の記載について、Szoka(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:4194−4198;WO90/11092を参照のこと。
【0171】
同様に、アニオン性リポソームおよび中性リポソームは、例えば、Avanti Polar Lipids(Birmingham、AL)から容易に入手可能であるか、または容易に入手可能な物質を使用してたやすく調製され得る。このような物質としては、とりわけ、ホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。これらの物質はまた、適切な比率のDOTMA出発物質およびDOTAP出発物質と混合され得る。これらの物質を使用してリポソームを作製する方法は、当該分野で周知である。
【0172】
このリポソームとしては、多重膜リポソーム(MLV)、小さな単膜リポソーム(SUV)、または大きな単膜リポソーム(LUV)が挙げられ得る。種々のリポソーム−核酸複合体は当該分野で公知の方法を使用して調製され得る。例えば、Straubinger(1983)Meth.Immunol.101:512−527;Szoka(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:4194−4198;Papahadjopoulos(1975)Biochim.Biophys.Acta 394:483;Wilson(1979)Cell 17:77);DeamerおよびBangham(1976)Biochim.Biophys.Acta 443:629;Ostro(1977)Biochem.Biophys.Res.Commun.76:836;Fraley(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:3348);EnochおよびStrittmatter(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:145;Fraley(1980)J.Biol.Chem.(1980)255:10431;SzokaおよびPapahadjopoulos(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:145;ならびにSchaefer−Ridder(1982)Science 215:166を参照のこと。
【0173】
(E.リポタンパク質)
さらに、リポタンパク質が、送達されるポリヌクレオチド/ポリペプチドと共に含まれ得る。利用されるリポタンパク質の例としては、カイロミクロン、HDL、IDL、LDL、およびVLDLが挙げられる。これらのタンパク質の変異体、フラグメント、または融合物もまた、使用され得る。また、天然に存在するリポタンパク質の改変体(例えば、アセチル化されたLDL)が使用され得る。これらのリポタンパク質は、リポタンパク質レセプターを発現する細胞へのポリヌクレオチドの送達を標的化し得る。好ましくは、リポタンパク質が、送達されるポリヌクレオチドと共に含まれる場合、他の標的化リガンドはその組成物中には含まれない。
【0174】
天然に存在するリポタンパク質は、脂質部分およびタンパク質部分を含む。このタンパク質部分は、アポタンパク質として知られる。現在では、アポタンパク質A、B、C、D、およびEが単離および同定されている。少なくともこれらの2つはいくつかのタンパク質を含み、ローマ数字、AI、AII、AIV;CI、CII、CIIIによって命名されている。
【0175】
1つのリポタンパク質は、1つより多くのアポタンパク質を含み得る。例えば、天然に存在するカイロミクロンはA、B、C、およびEから構成され、時間が経てばこれらのリポタンパク質はAを欠失し、そしてCおよびEアポタンパク質を獲得する。VLDLは、A、B、C、およびEアポタンパク質を含み、LDLはアポタンパク質Bを含み;そしてHDLはアポタンパク質A、C、およびEを含む。
【0176】
これらのアポタンパク質のアミノ酸は公知であり、そして例えば、Breslow(1985)Annu Rev.Biochem 54:699;Law(1986)Adv.Exp.Med.Biol.151:162;Chen(1986)J Biol Chem 261:12918;Kane(1980)Proc Natl Acad Sci USA 77:2465;およびUtermann(1984)Hum Genet 65:232に記載されている。
【0177】
リポタンパク質は、トリグリセリド、コレステロール(遊離およびエステル)、およびリン脂質を含む、種々の脂質を含む。この脂質の組成は、天然に存在するリポタンパク質において変化する。例えば、カイロミクロンは主としてトリグリセリドを含む。天然に存在するリポタンパク質の脂質含有物のより詳細な記載は、例えば、Meth.Enzymol.128(1986)に見いだされ得る。この脂質の組成は、レセプター結合活性についてアポタンパク質の立体構造を補助するように選択される。脂質組成はまた、ポリヌクレオチド結合分子との疎水性相互作用および会合を容易にするように選択され得る。
【0178】
天然に存在するリポタンパク質は、例えば、超遠心分離によって血清から単離され得る。そのような方法は、Meth.Enzymol.(前出);Pitas(1980)J.Biochem.255:5454−5460およびMahey(1979)J Clin.Invest 64:743−750に記載される。リポタンパク質はまた、インビトロ方法によってかまたは所望の宿主細胞中のアポタンパク質遺伝子の発現による組換え方法によって産生され得る。例えば、Atkinson(1986)Annu Rev Biophys Chem 15:403およびRadding(1958)Biochim Biophys Acta 30:443を参照のこと。リポタンパク質はまた、Biomedical Techniologies、Inc.、Stoughton、MA、USAのような商業的な供給者から購入され得る。リポタンパク質のさらなる記載は、WO98/06437にて見い出され得る。
【0179】
(F.ポリカチオン性薬剤)
ポリカチオン性薬剤は、送達される所望のポリヌクレオチド/ポリペプチドを含む組成物中に、リポタンパク質を伴ってかまたはリポタンパク質を伴わずに含まれ得る。
【0180】
ポリカチオン性薬剤は、代表的には、生理的に適切なpHにおいて正味の正電荷を示し、そして所望の位置への送達を容易にするために核酸の電荷を中和し得る。これらの薬剤は、インビトロ適用、エキソビボ適用、およびインビボ適用のいずれも有する。ポリカチオン性薬剤は、生きている被験体に、筋肉内、皮下などのいずれかで核酸を送達するために使用され得る。
【0181】
以下は、ポリカチオン性薬剤として有用なポリペプチドの例である:ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、およびプロタミン。他の例としては、ヒストン、プロタミン、ヒト血清アルブミン、DNA結合タンパク質、非ヒストン染色体タンパク質、DNAウイルス由来のコートタンパク質(例えば、X174)が挙げられる。転写因子もまた、DNAに結合するドメインを含み、従って核酸縮合薬剤として有用であり得る。手短に言えば、転写因子(例えば、C/CEBP、c−jun、c−fos、AP−1、AP−2、AP−3、CPF、Prot−1、Sp−1、Oct−1、Oct−2、CREP、およびTFIID)は、DNA配列に結合する塩基性ドメインを含む。
【0182】
有機ポリカチオン性薬剤としては、スペルミン、スペルミジン、およびプトレシン(purtrescine)が挙げられる。
【0183】
ポリカチオン性薬剤の大きさおよびその物理的特性は、上記の表から推定されて、他のポリペプチドポリカチオン性薬剤が構築され得るか、または合成ポリカチオン性薬剤が作製され得る。
【0184】
有用な合成ポリカチオン性薬剤としては、例えば、DEAE−デキストラン、ポリブレンが挙げられる。LipofectinTM、およびlipofectAMINETMは、ポリヌクレオチド/ポリペプチドと組み合わせた場合にポリカチオン性複合体を形成するモノマーである。
【0185】
(免疫診断アッセイ)
本発明のStaphylococcus抗原は、抗体レベルを検出するためのイムノアッセイにおいて使用され得る(または、逆に抗Staphylococcus抗体は抗原レベルを検出するために使用され得る)。十分に規定された組換え抗原に基づくイムノアッセイは、侵襲性の診断方法と置き換えるために開発され得る。生物学的サンプル(例えば、血液サンプルまたは血清サンプルを含む)内のStaphylococcusタンパク質に対する抗体が検出され得る。このイムノアッセイの設計は、多くのバリエーションの対象であり、そして種々のこれらは当該分野で公知である。イムノアッセイのプロトコルは、例えば、競合アッセイ、または直接反応アッセイ、またはサンドイッチ型アッセイに基づき得る。プロトコルはまた、例えば、固体支持体を使用し得、または免疫沈降によってなされ得る。ほとんどのアッセイは、標識された抗体またはポリペプチドの使用を含み、その標識は、例えば、蛍光分子、化学発光分子、放射性分子、または色素分子であり得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイは公知である;これらの例は、ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ、ならびに酵素標識および酵素媒介イムノアッセイ(例えば、ELISAアッセイ)である。
【0186】
免疫診断に適切であり、かつ適切な標識試薬を備えるキットは、適切な容器中に、アッセイの実行に必要とされる残りの試薬および物質(例えば、適切な緩衝液、塩溶液など)ならびにアッセイの説明書の適切なセットと共に本発明の組成物を含む適切な物質を詰めることによって構築される。
【0187】
(核酸ハイブリダイゼーション)
「ハイブリダイゼーション」とは、水素結合による2つの核酸配列の互いに対する会合をいう。代表的には、1つの配列は、固体支持体に固定され、そして他方は溶液中で遊離している。次いで、2つの配列は水素結合に好ましい条件下で互いに接触して配置される。この結合に影響を与える因子としては以下が挙げられる:溶媒のタイプおよび容量;反応温度;ハイブリダイゼーションの時間;撹拌;液体相の配列の固体支持体への非特異的な付着をブロックする薬剤(Denhardt’s試薬またはBLOTTO);配列の濃度;配列の会合の速度を増大させる化合物(硫酸デキストランまたはポリエチレングリコール)の使用;およびハイブリダイゼーション後の洗浄条件のストリンジェンシー。Sambrookら(前出)第2巻、第9章、9.47〜9.57頁を参照のこと。
【0188】
「ストリンジェンシー」とは、異なる配列よりも非常に類似する配列の会合に好ましいハイブリダイゼーション反応における条件をいう。例えば、研究中のハイブリッドの計算されたTmより約120〜200℃低い温度および塩濃度の組み合わせが選択されるべきである。温度および塩条件はしばしば、フィルタに固定したゲノムDNAのサンプルが目的の配列にハイブリダイズし、次いで異なるストリンジェンシーの条件下で洗浄される、予備的な実験において経験的に決定され得る。Sambrookら、9.50頁を参照のこと。
【0189】
例えば、サザンブロットを行う場合、考慮する変数は、(1)ブロットされるDNAの複雑さ、および(2)プローブと検出される配列との間の相同性である。研究されるフラグメントの全量は、プラスミドまたはファージ消化物については0.1〜1μg、高度に複雑な真核生物ゲノム中の単一コピー遺伝子については10−9〜10−8gまで、10倍変化し得る。より低い複雑さのポリヌクレオチドについては、実質的により短いブロッティング、ハイブリダイゼーション、および曝露時間、より少量の出発ポリヌクレオチド、およびより低い特異的活性のプローブが使用され得る。例えば、単一コピーの酵母遺伝子は、1μgの酵母DNAで開始し、2時間ブロットし、そして4〜8時間、108cpm/μgのプローブとハイブリダイズして、わずか1時間の曝露時間を用いて検出され得る。単一コピーの哺乳動物遺伝子について、保存性のアプローチは、10μgのDNAで開始し、一晩ブロットし、そして108cpm/μgより多いプローブを用いて10%硫酸デキストランの存在下で一晩ハイブリダイズし、約24時間露光時間を生じる。
【0190】
いくつかの因子が、プローブと目的のフラグメントとの間のDNA−DNAハイブリッドの融解温度(Tm)、ならびに、結果として、ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての適切な条件に影響を与え得る。多くの場合において、そのプローブはフラグメントに対して100%相同なわけではない。他の共通して直面する変化には、ハイブリダイズする配列の長さおよび全G+C含量、ならびにハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度およびホルムアミド含量が含まれる。これらのすべての因子の効果は、一つの式によって近似され得る:
Tm=81+16.6(log10Ci)+0.4[%(G+C)]−0.6(%ホルムアミド)−600/n−1.5(%ミスマッチ)。
ここでCiは塩濃度(一価イオン)であり、そしてnは、塩基対内のハイブリッドの長さである(MeinkothおよびWahl(1984)Anal.Biochem.138:267〜284からわずかに改変した)。
【0191】
ハイブリダイゼーション実験の設計において、核酸ハイブリダイゼーションに影響を与えるいくつかの因子が簡便に変更され得る。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の温度ならびに洗浄時の塩濃度を調整するのが最も簡単である。ハイブリダイゼーション温度(すなわち、ストリンジェンシー)が上昇するにつれて、非相同的な鎖の間で起こるハイブリダイゼーションは起こりにくくなるようであり、結果として、バックグラウンドが減少する。放射標識したプローブが固定化されたフラグメントと完全に相同ではない場合(遺伝子ファミリーおよび種間のハイブリダイゼーション実験における場合で頻繁であるように)、ハイブリダイゼーション温度は低下されなければならず、そしてバックグラウンドが増大する。洗浄の温度は、類似の様式で、ハイブリダイゼーションバンドの強度、およびバックグラウンドの程度に影響を与える。洗浄のストリンジェンシーはまた、塩濃度の減少とともに増大する。
【0192】
一般的に、50%ホルムアミドの存在下で都合よいハイブリダイゼーション温度は、標的フラグメントに95%〜100%相同であるプローブについて42℃、90%〜95%相同性については37℃、85%〜90%相同性については32℃である。より低い相同性については、上記の式を用いて、適切にホルムアミド含量が低くされ、そして温度が調整されるべきである。プローブと標的フラグメントとの間の相同性が未知である場合、最も単純なアプローチは、ともにストリンジェントではないハイブリダイゼーション条件および洗浄条件で開始することである。オートラジオグラフィー後に非特異的バンドまたは高いバックグラウンドが観察される場合、フィルタは高ストリンジェンシーで洗浄され得、そして再び露光され得る。露光のために必要な時間がこのアプローチを非実用的にする場合、いくつかのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄ストリンジェンシーが並行して試験されるべきである。
【0193】
(核酸プローブアッセイ)
本発明に従う核酸プローブを利用する、PCR、分枝DNAプローブアッセイ、またはブロッティング技術のような方法は、cDNAまたはmRNAの存在を決定し得る。プローブは、検出されるに十分に安定な、二重鎖または二本鎖複合体を形成し得る場合に、本発明の配列に「ハイブリダイズする」といわれる。
【0194】
核酸プローブは、本発明のStaphylococcusヌクレオチド配列(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む)にハイブリダイズする。多くの異なるヌクレオチド配列がアミノ酸配列をコードするが、ネイティブなStaphylococcus配列は、細胞に存在する実際の配列であるので、好ましい。mRNAは、コード配列を表し、従ってプローブはコード配列に相補的であるはずであり、一本鎖cDNAはmRNAに相補的であり、従ってcDNAプローブは非コード配列に相補的であるべきである。
【0195】
プローブ配列はStaphylococcus配列(またはその相補物)に同一である必要はない。核酸プローブが標的ヌクレオチドと、検出され得る二重鎖を形成し得る場合、配列および長さにおけるいくつかの変動は、アッセイ感度の増加をもたらし得る。また、核酸プローブは、形成された二重鎖を安定化するためにさらなるヌクレオチドを含み得る。さらなるStaphylococcus配列もまた、形成された二重鎖を検出するための標識として役立ち得る。例えば、非相補的ヌクレオチド配列が、そのプローブの5’末端に付着され得、ここでそのプローブ配列の残りはStaphylococcus配列に相補的である。あるいは、非相補的塩基またはより長い配列は、プローブ中に分散され得、ただし、プローブ配列は、それとハイブリダイズし、そしてそれによって検出され得る二重鎖を形成するために十分にStaphylococcus配列との相補性を有する。
【0196】
プローブの正確な長さおよび配列は、ハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、塩条件など)に依存する。例えば、診断的適用については、分析物の配列の複雑さに依存して、核酸プローブは、代表的には、少なくとも10〜20ヌクレオチド、好ましくは15〜25、そしてより好ましくは少なくとも30ヌクレオチドを含むが、これよりも短くもあり得る。短いプライマーは、一般的には、鋳型との十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためにより低い温度を必要とする。
【0197】
プローブは、合成的手順(例えば、Matteucciらのトリエステル法(J.Am.Chem.Soc.(1981)103:3185))によってか、またはUrdeaら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983)80:7461)によってか、または市販の自動オリゴヌクレオチド合成機を使用して、生成され得る。
【0198】
プローブの化学的性質は、優先度に従って選択され得る。特定の適用については、DNAまたはRNAが適切である。他の適用については、改変(例えば、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのようなバックボーンの改変)が組み込まれ得、インビボの半減期を増大させ、RNA親和性を変化させ、ヌクレアーゼ耐性などを増大させるために使用され得(例えば、AgrawalおよびIyer(1995)Curr Opin Biotechnol 6:12−19;Agrawal(1996)TIBTECH 14:376−387を参照のこと);ペプチド核酸のようなアナログもまた使用され得る(例えば、Corey(1997)TIBTECH 15:224−229;Buchardtら(1993)TIBTECH 11:384−386を参照のこと)。
【0199】
あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、少量の標的核酸を検出する別の周知の手段である。そのアッセイは、Mullisら、(Meth.Enzymol.(1987)155:335−350);米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号に記載されている。2つの「プライマー」ヌクレオチドは、標的核酸とハイブリダイズし、そして反応を開始するために使用される。このプライマーは、増殖標的(またはその相補物)の配列にハイブリダイズしない、二重鎖の安定性を補助するための、または、例えば、都合よい制限部位を組み込むための配列を含み得る。代表的には、このような配列は、所望のStaphylococcus配列に隣接する。
【0200】
熱安定性ポリメラーゼは、もともとの標的核酸を鋳型として使用して、プライマーから標的核酸のコピーを作製する。標的核酸の閾値量がポリメラーゼによって産生された後、それらはより従来的な方法(例えば、サザンブロット)によって検出され得る。サザンブロット法を使用する場合、標識されたプローブは、Staphylococcus配列(またはその相補物)にハイブリダイズする。
【0201】
また、mRNAまたはcDNAは、Sambrookら(前出)に記載される、従来的なブロッティング技術によって検出され得る。mRNA、またはmRNAからポリメラーゼ酵素を使用して生成されたcDNAは、ゲル電気泳動を使用して精製および分離され得る。次いで、ゲル上の核酸は、ニトロセルロースのような固体支持体にブロットされる。この固体支持体は、標識されたプローブに曝露され、次いで洗浄して、すべてのハイブリダイズしていないプローブを除去する。次に、標識プローブを含む二重鎖を検出する。代表的には、そのプローブは、放射活性部分で標識される。
【0202】
(本発明を実施するための様式)
2821の核酸コード配列を、S.aureus(NCTC 8325株)で、それらの推定翻訳産物とともに同定した。核酸配列を、奇数番号(配列番号1、3、5、7、・・・、5639、5641)とともに、配列表で与える。各核酸配列、その推定翻訳産物(配列番号2、4、6、8、・・・5640、5642)に続く。推定機能を、配列表の<223>領域に与える。
【0203】
種々の試験を使用して、実施例中で同定したタンパク質のインビボ免疫原性を評価し得る。例えば、そのタンパク質を、組換え的に発現させ、そして、このタンパク質を使用して、イムノブロットによって患者の血清をスクリーニングする。タンパク質と患者血清との間の陽性反応は、この患者が、以前にこのタンパク質に対して免疫応答を起こした(すなわち、このタンパク質が免疫原である)ということを示す。この方法をまた使用して、免疫優性のタンパク質を同定し得る。
【0204】
組換えタンパク質をまた簡便に使用して、(例えば、マウスにおいて)抗体を調製し得る。これらを、タンパク質が細胞表面に位置するということを直接確認するために使用し得る。標識化抗体(例えば、FACSのための蛍光標識化)を、インタクトな細菌とともにインキュベートし得、そして、細菌表面上の標識の存在で、タンパク質の位置を確認する。
【0205】
本発明は、実施例のみを介して記載され、そして、改変がなされ得るが、本発明の範囲および意図内であるということが、理解される。
Claims (22)
- 請求項1に記載のタンパク質と、50%以上の配列同一性を有する、タンパク質。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタンパク質に結合する抗体。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸分子。
- 請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の核酸分子に相補的なヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
- 請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の核酸分子に対して、50%以上の配列相同一性を有するヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
- 高ストリンジェンシー条件下で、請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載の核酸分子とハイブリダイズし得る、核酸分子。
- 請求項1〜請求項10のいずれかに記載のタンパク質、核酸分子、または抗体を含む、組成物。
- ワクチン組成物または診断組成物である、請求項11に記載の組成物。
- 医薬品としての使用のための、請求項11または請求項12に記載の組成物。
- staphylococcus細菌、特にS.aureusに起因する感染の処置または予防のための医薬の製造における、請求項13に記載の組成物の使用。
- 疾患が敗血症である、請求項14に記載の使用。
- 患者に治療有効量の請求項13に記載の組成物を投与する工程を包含する、該患者を処置する方法。
- Staphylococcus核酸配列内に含まれる標的核酸を増幅するためのプライマーを含有するキットであって、該キットは、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここで、該第1のプライマーは、該標的配列に対して実質的に相補的であり、そして、該第2のプライマーは、該標的配列の相補鎖に対して実質的に相補的であり、ここで、実質的な相補性を有する該プライマーの一部が、増幅される標的配列の末端を規定し、そしてここで、該第1のプライマーおよび/または該第2のプライマーが、請求項5〜請求項10のいずれか1項に記載の核酸である、キット。
- 1本鎖または2本鎖の核酸(またはそれらの混合物)中に含まれるStaphylococcus鋳型核酸配列の増幅を可能にする第1の1本鎖オリゴヌクレオチドおよび第2の1本鎖オリゴヌクレオチドを含有するキットであって、ここで:(a)該第1のオリゴヌクレオチドは、該鋳型核酸配列に対して実質的に相補的であるプライマー配列を含み;(b)該第2のオリゴヌクレオチドは、該鋳型核酸配列の相補鎖に対して実質的に相補的であるプライマー配列を含み;(c)該第1のオリゴヌクレオチドおよび/または該第2のオリゴヌクレオチドは、該鋳型核酸に対して相補的でない配列を含み;(d)該プライマー配列が、増幅される該鋳型配列の末端を規定し;そして(e)該第1のオリゴヌクレオチドおよび/または該第2のオリゴヌクレオチドは、請求項5〜請求項10のいずれか1項に記載の核鎖である、キット。
- 式NH2−A−[−X−L−]n−B−COOHにより表せられるハイブリッドタンパク質であって、ここで、Xは、請求項1、請求項2または請求項3に記載のタンパク質のアミノ酸配列であり、Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり、Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり、そして、nは、1よりも大きい整数である、ハイブリッドタンパク質。
- 試験化合物と、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタンパク質とを接触させる工程、および該試験化合物が、該タンパク質に結合するか否かを決定する工程を包含する、アッセイ。
- 請求項13に記載の組成物であって、1つ以上の以下の抗原:
−Helicobacter pylori由来のタンパク質抗原;
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原;
−N.meningitidis由来の該膜小胞(OMV)調製物;
−N.meningitidis血清型A、C、W135および/またはY由来の糖類抗原;
−Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原;
−A型肝炎ウイルス由来の抗原;
−B型肝炎ウイスル由来の抗原;
−C型肝炎ウイルス由来の抗原;
−Bordetella pertussis由来の抗原;
−ジフテリア抗原;
−破傷風抗原;
−Haemophilus Influennzae B由来の糖類抗原;
−N.gonorrhoeae由来の抗原;
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原;
−Streptococcus agalactiae由来の抗原;
−Streptococcus pyogenes由来の抗原;
−Chlamydia trachomatis由来の抗原;
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原;
−ポリオ抗原;
−狂犬病抗原;
−麻疹抗原、流行性耳下腺炎抗原、および/または風疹抗原;
−インフルエンザ抗原;ならびに/あるいは
−Moraxella catarrhalis由来の抗原
をさらに含む、組成物。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタンパク質を2つ以上含む、組成物。
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