JP2004532830A - 新規なワクチン - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、皮内送達用のインフルエンザワクチン製剤、その調製方法、および予防または治療におけるその使用に関する。より具体的には、本発明は、単回用量で皮内投与することにより法的規制を満たすのに十分な免疫応答を達成することが可能なインフルエンザワクチンの使用に関する。
【0002】
インフルエンザウイルスは、世界中に存在する最も遍在的なウイルスの1つであり、ヒトと家畜の両方に影響を及ぼす。インフルエンザの経済的影響は顕著である。
【0003】
インフルエンザウイルスは、直径約125nmの粒子サイズを有するRNAエンベロープウイルスである。それは、基本的には、脂質二重層構造を有するウイルスエンベロープに取り囲まれた内部ヌクレオキャプシドまたは核タンパク質と会合したリボ核酸(RNA)のコアと、外部糖タンパク質からなる。ウイルスエンベロープの内層は、主としてマトリックスタンパク質で構成され、外層は大部分が宿主由来脂質物質で構成される。表面糖タンパク質のノイラミニダーゼ(NA)およびヘマグルチニン(HA)は、粒子の表面で長さ10〜12nmのスパイクのように見える。インフルエンザのサブタイプの抗原特異性を確定するのは、これらの表面タンパク質、とくにヘマグルチニンである。
【0004】
典型的なインフルエンザ流行病は、入院率または死亡率の増加により立証されるように、肺炎または下気道疾患の発生率の増加を引き起こす。高齢者または根源的慢性疾患を有する者は、そのような合併症にかなり罹患し易いと考えられるが、乳児もまた重篤な疾患にかかる可能性がある。したがって、これらの人々をとくに防御する必要がある。
【0005】
現在利用可能なインフルエンザワクチンは、不活化インフルエンザワクチンまたは生の弱毒化インフルエンザワクチンのいずれかである。不活化インフルエンザワクチンは、3つのタイプの抗原調製物、すなわち、不活化全ウイルス、脂質エンベロープを可溶化させるように精製ウイルス粒子が界面活性剤もしくは他の試薬で分割されたサブビリオン(いわゆる「ウイルス成分」ワクチン;split vaccine)、または精製HAおよびNA(サブユニットワクチン)のうちの1つを含む。これらの不活化ワクチンは、一般的には、筋肉内(i.m.)に投与される。
【0006】
インフルエンザワクチンは、いずれのタイプであっても、通常は三価ワクチンである。それらは、一般的には、2種のインフルエンザA型ウイルス株および1種のインフルエンザB型株に由来する抗原を含有する。ほとんどの場合、標準的な0.5ml注射用量には、単純放射状免疫拡散法(SRD)により測定したときに各株に由来する15μgのヘマグルチニン抗原成分が含まれる(J.M.Woodら:インフルエンザヘマグルチニン抗原をアッセイするための改良された単純放射状免疫拡散法:不活化全ウイルスおよびサブユニットワクチンの効力決定のための適応化(An improved single radial immunodiffusion technique for the assay of influenza haemagglutinin antigen:adaptation for potency determination of inactivated whole virus and subunit vaccines)J. Biol. Stand. 5(1977)237-247;J.M.Woodら:インフルエンザウイルスのヘマグルチニン抗原をアッセイするための免疫電気泳動法および単純放射状拡散法に関する国際的共同研究(International collaborative study of single radial diffusion and immunoelectrophoresis technique for the assay of haemagglutinin antigen of influenza virus)J. Biol. Stand. 9(1981)317-330)。
【0007】
汎流行性インフルエンザ株が発生した場合のような特定の状況では、その単一株だけを含有するワクチンを得ることが望ましいこともある。これは汎流行状況への対処を速めるうえで役立つであろう。
【0008】
各シーズンにインフルエンザワクチンに組入れられるインフルエンザウイルス株は、国立保健機関およびワクチン製造業者と共同して世界保健機構により決定される。
【0009】
インフルエンザの毎年の流行に関連した罹患率および死亡率を抑えようとする現在の取組みは、筋肉内投与される不活化インフルエンザワクチンの使用に基づいている。呼吸器疾患およびインフルエンザ合併症を防止するそのようなワクチンの効力は、健常成人の場合の75%から高齢者の場合の50%未満までの範囲にわたる。
【0010】
インフルエンザワクチンの代替投与法、とくに、痛みがないかまたは筋肉内注射よりも痛みが少なくかつ「針恐怖」に起因して患者のコンプライアンスにマイナスの影響を及ぼすことのない方法を提供することが望ましいであろう。また、たとえば、皮膚(とくに真皮)に存在する樹状細胞およびランゲルハンス細胞に抗原をターゲッティングすることにより、細胞媒介性免疫系を標的にすることも望ましいであろう。細胞媒介性免疫は、ウイルスのクリアランスおよび疾病からの回復を支援するように思われ、抗体間よりもインフルエンザ株間で良好な干渉効果をもたらす可能性がある。皮内投与により粘膜免疫が粘膜表面のレベルで誘発される可能性があることも、文献に記載されている。これは、ウイルスの侵入口が経鼻経路につながるインフルエンザのような病原体に対するワクチンの非経口経路と比較して利点がある。かくして、粘膜表面、初期では上気道の粘膜表面が、防御の最前線となる。
【0011】
さらに、インフルエンザワクチンの用量に必要な抗原の量を減らすことも望ましいであろう。インフルエンザワクチンは、供給不足になることが多いからである。
【0012】
ヒトに不活化インフルエンザワクチンが実験的に皮内投与されたのは、1940年代が最初である。皮内ワクチン接種の利点は長期にわたり認識されてきたが、現在までのところ、皮内経路を介する規則的なワクチン接種がインフルエンザに有効でありかつ実行可能であるという一致した見解は得られていない。
【0013】
Crowe (1965) Am J Medical Technology 31,387-396には、インフルエンザウイルス成分ワクチンを用いて皮内ワクチン接種と皮下ワクチン接種とを比較する研究が記載されている。14日間隔で0.1mlのワクチンを皮内に2回投与した。皮内送達で得られた結果は、1回投与後および2回投与後のいずれについても、試験した3種の株のうちの2種に対して設定された基準を満たさなかった。
【0014】
McElroy (1969) New Eng J of Medicine, 6 November, page 1076には、皮内への一価A型株ワクチンの2回投与についての記載があり、ワクチンが不足した場合、たとえば、新しい予想外の株が発生した場合には、皮内経路が検討対象になりうるとの提案がなされている。
【0015】
Taurasoら(1969) Bull Wld Hlth Org 41,507-516には、皮下(0.25mlもしくは0.5ml)または皮内(0.1ml)に投与される一価全不活化インフルエンザワクチンを用いる研究が記載されている。追加免疫接種が行われている。その結果から、皮内送達は皮下送達の適切な代替経路になることが示唆されるが、著者は、2回投与が必要であるとの提案を行っている。
【0016】
Foy (1970) letter to JAMA, 6/7/70, vol 213 page 130には、天然免疫感作下で皮内投与されるインフルエンザワクチンを試験する実験について論じられている。3〜4週間間隔でワクチンを2回接種した。見かけ上、皮内ワクチン接種により病気が予防されることがデータから示唆されたが、決定的なものではなかった。
【0017】
letter to the British Medical Journal, 29/10/77 page 1152には、ジェットガンを用いて0.15mlの一価インフルエンザワクチンを皮内送達する実験が記載されているが、結果は好ましくなかった。皮内投与を行うにはさらなる研究が必要であると記載されている。
【0018】
他の著者は、皮下注射のときと同様に皮内注射には漏れのリスクがあることを指摘した。しかしながら、皮内投与に使用されるワクチンの体積は小さいので、漏れを生じると、ほとんどまたはまったく防御されない可能性がある。
【0019】
Brooksら(1977) Annals of Allergy 39, 110-112には、2種のA型株(それぞれ40CCA単位)および別にB型株(100CCA単位)を含有する死滅インフルエンザワクチンを0.1ml容量で皮内投与する研究が記載されている。皮内経路は免疫感作に利用可能かつ有効であるが、ある種の株では皮内投与しうる用量よりも多くの量が必要になることもあると著者は結論付けている。
【0020】
Brownら(1977) J Infectious Disease 136, 466-471には、ホルマリン不活化全一価インフルエンザA型株ワクチンの皮内投与についての記載がある。40CCAが0.1mlの容量で使用された。これが0.5ml(200CCA)の筋肉内投与と比較された。皮内ワクチン接種に対する応答は、年齢依存性であり、すでに抗体が存在するときは筋肉内ワクチン接種よりも低いことが見いだされた。この研究で使用したワクチン接種量では、皮内ワクチン接種は特殊な状況下でのみ使用すべきであるというのが結論であった。
【0021】
Halperinら(1979) AJPH 89,1247-1252には、二価ウイルス成分ワクチンを用いるインフルエンザワクチン接種の皮内経路と皮下経路との比較についての記載がある。40CCAの各株を含有する0.1mlのワクチンが皮内ワクチン接種に使用された。
【0022】
HerbertおよびLarke (1979) J Infectious Diseases 140, 234-238には、二価全ウイルスワクチンを用いる皮内および皮下インフルエンザワクチン接種の比較についての記載がある。ワクチン株にほとんどまたはまったく暴露されていない場合に、皮内経路は皮下経路ほど有効ではないことが見いだされた。また、著者の観測によれば、反応原性に関して、皮内接種量中の抗原量を減少させても利点は見られない。なぜなら、より高用量の皮下免疫感作により生じるワクチンの副作用を減少させるとは考えられなかった。
【0023】
Bader (1980) letter to AJPH, vol. 70 no. 5には、インフルエンザワクチンの皮内送達による種々の試みの結果が論じられており、2週間間隔で2回投与した場合には、皮内送達の潜在的価値がみとめられる。
【0024】
Niculescuら(1981) Arch Roum Path Exp Microbiol, 40, 67-70には、「ガンジェット注射器」を用いるウイルス成分三価ワクチンの皮内投与についての記載がある。1ヵ月間隔で2回投与された。この投与方法を用いると、インフルエンザの流行時に疾患率を低下させることができると著者は結論している。
【0025】
したがって、文献によれば、60年代半ば(またはそれ以前)〜1980年代初めに皮内ワクチン接種に関心が払われた。しかしながら、ワクチンの2回投与が必要であるという考えが有力であるようにみえる。また、投与が難しく、小容量のワクチンを所望の領域に良好に局在化できる見込みがなかったので、たとえば、広範な流行に対処すべく、迅速かつ大量にワクチン接種が必要とされる場合のみ、皮内送達経路の使用が検討対象となるという考えが広く普及していた。興味深いことに、80年代初期においては皮内インフルエンザワクチン接種が文献に記載されることがほとんどなかった。80年代初め以来、文献には、タンパク質抗原法を用いる皮内インフルエンザワクチン接種についての言及がほとんどなされていない。タンパク質を用いる取組みは、興味の対象にならなくなったように見える。その代わりに、DNAワクチン接種が注目されるようになった。Webster R.G. (1999) Clin Infect Dis, 28, 225-229に記載のレビュー、およびDeganoら(1999) Vaccine 18,623-32;Haenslerら(1999) Vaccine 17, 628-638;Deganoら(1998) Vaccine 16, 394-398のような刊行物を参照されたい。
【0026】
したがって、市販のインフルエンザワクチンは、依然として、筋肉内投与されるウイルス成分またはサブユニット筋肉内投与用ワクチンである。これらのワクチンは、一般的には有機溶媒または界面活性剤を用いて、ウイルス粒子を分割し、さまざまな程度までウイルスタンパク質を分離または精製することにより調製される。ウイルス成分ワクチンは、可溶化濃度の有機溶媒または界面活性剤を用いて感染性または不活化全インフルエンザウイルスを断片化してから、可溶化剤といくつかのまたはほとんどのウイルス脂質物質を除去することにより、調製される。ウイルス成分ワクチンは、一般的には、夾雑マトリックスタンパク質および核タンパク質ならびに時として脂質や膜エンベロープタンパク質を含有する。ウイルス成分ワクチンは、通常、ウイルス構造タンパク質のほとんどまたはすべてを含有するであろうが、全ウイルスで見られる比率と必ずしも同じ比率で含有するわけではない。一方、サブユニットワクチンは、本質的には、高精製ウイルス表面タンパク質、ヘマグルチニン、およびノイラミニダーゼからなり、これらのタンパク質は、ワクチン接種時に所望のウイルス中和抗体を誘導する働きを担う表面タンパク質である。
【0027】
インフルエンザワクチンの効力を測定するための基準が国際的に適用される。インフルエンザに有効なワクチンに関する欧州連合公式判定基準を以下の表に示す。理論的には、欧州連合要件を満たすためには、インフルエンザワクチンは、ワクチン中に含まれるインフルエンザ株すべてについて、表中の判定基準のうちの1つだけは満たさねばならない。しかしながら、実際上、とくに、新しいワクチン、たとえば、新しい皮内ワクチンについては、少なくとも2つまたはより一般的には3つすべての判定基準が全株で満たされる必要があろう。いくつかの状況下では、2つの判定基準で十分なこともある。たとえば、3つの判定基準のうちの2つはすべての株で満たされることが、第3の判定基準は、すべてではなくいくつかの株(たとえば、3種の株のうちの2種)で満たされる場合が許容されることもある。要件は、成人集団(18〜60歳)と高齢者集団(>60歳)とでは異なる。
【0028】
【0029】
* セロコンバージョン率は、各ワクチン株について、ワクチン接種後の血清ヘマグルチニン阻害(HI)力価が少なくとも4倍増加したワクチン被接種者の割合(%)と定義される
** コンバージョン係数は、各ワクチン株について、ワクチン接種後の血清HI幾何平均力価(GMT)の増加倍率と定義される
*** 防御率は、(各ワクチン株について)ワクチン接種後に1:40に等しいかまたはそれよりも大きい血清HI力価を有するワクチン被接種者の割合(%)と定義され、防御を示すものとして一般に認められている。
【0030】
皮内インフルエンザワクチンを商業的に有用なものとするには、これらの基準を満たすことが必要なだけでなく、実際に、現在利用可能な皮内ワクチンと少なくとも同程度に有効である必要があろう。許容しうる方法で製造される必要もあり、もちろん所要の抗原量および投与回数に関して商業的に利用可能であることも必要であろう。さらに、医療スタッフが確実かつ簡単に実施しうる手順を用いて投与される必要もあろう。
【0031】
不活化ウイルスをベースとした皮内インフルエンザワクチンについてこれまでに研究はなされたが、現在のところ皮内インフルエンザワクチンが市場に出荷されていないという事実は、この経路を介して有効なワクチン接種を行うことが困難であることを示している。
【発明の開示】
【0032】
本発明においては、特定の三価インフルエンザワクチンがとりわけ良好な市販用皮内ワクチンとなることを見いだした。とくに、そのようなインフルエンザウイルスワクチン調製物の単回皮内投与を行うと、低用量の抗原でかつ防御レベルで全身的免疫が刺激される。さらに、有効なインフルエンザワクチンに対する国際的判定基準が満たされる。より特定的には、低抗原用量ワクチンの皮内投与により、同一ワクチンの皮下投与により得られるものと等価な全身的セロコンバージョン(抗HA力価の4倍増加)を得ることができる。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「皮内送達」という用語は、皮膚の真皮へのワクチンの送達を意味する。しかしながら、ワクチンは、必ずしも真皮だけに局在するわけではないであろう。真皮は、ヒト皮膚の表面から約1.0〜約2.0mmの位置にある皮膚の層であるが、個体間でいくらか差異が見られ、身体の部位によっても異なる。一般的には、皮膚の表面下1.5mmの位置であれば、真皮に達すると予想することができる。真皮は、表面の角質層および表皮と、その下の皮下層との間に位置する。送達形態に依存して、ワクチンは、最終的に真皮内だけにもしくは主に真皮内に位置するか、または表皮内および真皮内に最終的に分布する可能性がある。
【0034】
本発明は、第1の態様において、皮内送達用の単回用量インフルエンザワクチンの製造における三価の非生インフルエンザ抗原調製物の使用を提供する。インフルエンザ抗原調製物は、本明細書に記載の特定の方法を含む種々の既知の方法に従って作製可能である。好ましくは、該非生抗原調製物は、生ウイルスから調製したインフルエンザウイルス成分調製物またはサブユニット抗原調製物である。最も好ましくは、該抗原は、ウイルス成分調製物である。
【0035】
本発明に係る三価ワクチンは、先に本明細書に記載したように、インフルエンザワクチンのEU判定基準の一部分または全部を満たすので、ワクチンはヨーロッパの市場において認可されうる。好ましくは、ワクチン中に提供されるインフルエンザ株はすべて、3つのEU判定基準のうちの少なくとも2つを満たす。より好ましくは、すべての株が少なくとも2つの判定基準を満たし、かつすべての株またはすべてではないが少なくとも1種の株が第3の判定基準を満たす。最も好ましくは、存在するすべての株が3つの判定基準すべてを満たす。
【0036】
好ましくは、本明細書に記載する皮内ワクチンは、以下からなる群より選択されうる少なくとも1種の非イオン性サーファクタントを含有する:すなわち、オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(たとえば、市販品のTritonTMシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(TweenTMシリーズ)、および一般式(I):
(I) HO(CH2CH2O)n−A−R
〔式中、nは1〜50であり、Aは結合または−C(O)−であり、RはC1〜50アルキルまたはフェニルC1〜50アルキルである。〕
で示されるポリオキシエチレンエーテルまたはエステル、ならびにこれらのうちの2種以上の組み合わせ。
【0037】
オクチルフェノキシポリオキシエタノール類およびポリオキシエチレンソルビタンエステル類の各々から1種を組み合わせた2種の非イオン性サーファクタント、特にTween80とTritonX−100との組み合わせが好ましい。可能でかつ好ましい界面活性剤の組み合わせについてさらに以下に説明する。
【0038】
本発明に係るワクチンは、従来のワクチンよりも少量のヘマグルチニンを有し、かつより少ない容量で投与される。好ましくは、インフルエンザ1株あたりのヘマグルチニンの量は、約1〜7.5μgまたは1〜5μg、より好ましくは約3μgまたは約5μgであり、これは、それぞれ、筋肉内投与用の従来のワクチンで使用されるヘマグルチニンの用量の約1/5または1/3である。インフルエンザ1株あたり6μgのヘマグルチニンもまたきわめて好ましく、したがって、2〜6.5μgもまた好ましい範囲である。
【0039】
好ましくは、本発明に係るワクチンの1用量の容量は、0.025ml〜2.5ml、より好ましくは約0.1mlまたは約0.2mlである。50μlの投与量もまた検討対象になりうる。0.1ml用量は、従来の筋肉内インフルエンザワクチン用量の容量の約1/5である。皮内に投与することのできる液体の容量は、部分的には、注射の部位に依存する。たとえば、三角筋部への注射では、0.1mlが最大の好ましい容量であるが、腰部では、大量に、たとえば約0.2mlを投与することができる。
【0040】
本発明において使用するための好適な非生インフルエンザ抗原調製物としては、以下の方法により取得可能なインフルエンザ抗原調製物が挙げられる:
(i) 培養物からのウイルス含有物質の採取;
(ii) 採取した物質の清澄化による非ウイルス物質の除去;
(iii) 採取したウイルスの濃縮;
(iv) 非ウイルス物質から全ウイルスを分離するさらなるステップ;
(v) 密度勾配遠心ステップにおける好適な分割剤を用いた全ウイルスの分割;
(vi) 濾過による望ましくない物質の除去;
ここで、上記ステップは、記載順に行われるが、必ずしも連続的である必要はない。
【0041】
好ましくは、ウイルスは、卵を用いて、より具体的には発育鶏卵を用いて増殖させる。その場合、採取する物質は尿膜液である。
【0042】
好ましくは、中速度の遠心により清澄化ステップを行う。他の選択肢として、たとえば0.2μm膜を用いて、濾過ステップを実施してもよい。清澄化ステップでは、培養物に由来する物質、たとえば、卵に由来する物質の大部分を取り除く。
【0043】
好ましくは、濃縮ステップでは、吸着法を利用し、最も好ましくはCaHPO4を用いる。あるいは、例えば限外濾過などの濾過を使用してもよい。
【0044】
好ましくは、さらなる分離ステップ(iv)は、ゾーン遠心分離、とくに、スクロース勾配を用いるゾーン遠心分離である。場合により、勾配には、微生物の増殖を防止するための保存剤が含まれる。
【0045】
好ましくは、分割ステップは、分割剤を含有するさらなるスクロース勾配で行う。
【0046】
好ましくは、濾過ステップ(vi)は、ウイルス成分物質を濃縮する限外濾過ステップである。
【0047】
好ましくは、少なくとも1ステップの滅菌濾過ステップが、場合により上記方法の最後に、存在する。
【0048】
場合により、最終濾過ステップの前に、不活化ステップが存在する。
【0049】
好ましくは、本発明に係るワクチンは、皮膚の表面下約1.0〜2.0mmの位置に投与される。より好ましくは、ワクチンは、皮膚の表面下約1.5mmの位置に送達される。
【0050】
本発明に係るワクチンは、粒子を含むビリオン成分ワクチンである。動的光散乱法(Malvern Zeta Sizer)を用いて測定した場合、ワクチンは、好ましくは200nm未満、より好ましくは50〜180nm、最も好ましくは100〜150nmの平均粒子径を有する粒子を含有する。粒径は、株に依存して、季節ごとに種々の値をとる可能性がある。
【0051】
本発明において式(I)の範囲内の好ましいサーファクタントは、nが4〜24、より好ましくは6〜12、最も好ましくは9であり、R成分がC1〜50アルキル、好ましくはC4〜C20アルキル、最も好ましくはC12アルキルである分子である。
【0052】
オクチルフェノキシポリオキシエタノールおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルは、「Surfactant systems」AttwoodおよびFlorence編(1983, ChapmanおよびHall)に記載されている。また、オクチルフェノキシポリオキシエタノール(オクトキシノール類)、たとえばt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100TM)は、Merck Index Entry 6858(第1162頁、第12版、Merck & Co. Inc., Whitehouse Station, N.J., USA; ISBN 0911910-12-3)に記載されている。ポリオキシエチレンソルビタンエステル、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80TM)は、Merck Index Entry 7742(第1308頁、第12版、Merck & Co. Inc., Whitehouse Station, N.J., USA; ISBN 0911910-12-3)に記載されている。いずれも、上記文献に記載されている方法を用いて製造可能であるかまたはSigma Inc.などの供給業者から購入可能である。
【0053】
とくに好ましい非イオン性サーファクタントとしては、TritonX−45、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100)、TritonX−102、TritonX−114、TritonX−165、TritonX−205、TritonX−305、TritonN−57、TritonN−101、TritonN−128、Breij35、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、およびポリオキシエチレン−9−ステアリルエーテル(ステアレス9)が挙げられる。TritonX−100およびラウレス9がとくに好ましい。同様にとくに好ましいのは、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80TM)である。
【0054】
一般式(I)で示されるさらに適切なポリオキシエチレンエーテルは、次の群から選択される:ポリオキシエチレン−8−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0055】
ポリオキシエチレンラウリルエーテルに対して用いられる他の用語または名称は、CASレジストリーに開示されている。ポリオキシエチレン−9ラウリルエーテルのCASレジストリー番号は9002−92−0である。ポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリオキシエチレンエーテル類は、Merck Index(第12版:entry 7717, Merck & Co. Inc., Whitehouse Station, N.J., USA; ISBN 0911910-12-3)に記載されている。ラウレス9は、エチレンオキシドをドデシルアルコールと反応させることにより生成され、平均で9個のエチレンオキシド単位を有する。
【0056】
サーファクタントにおけるポリオキシエチレン部分の長さとアルキル鎖の長さとの比(すなわち、n:アルキル鎖長の比)は、水性媒質中へのこの種のサーファクタントの溶解度に影響を及ぼす。したがって、本発明に係るサーファクタントは、溶解状態で存在するかまたはミセルもしくは小胞のような粒状構造を形成してもよい。溶液であれば、本発明に係るサーファクタントは、安全で、滅菌が容易で、簡単に投与でき、しかも均一粒状構造の形成に伴うGMPおよびQC問題を生じることなく簡単に製造することが可能である。ラウレス9のようないくつかのポリオキシエチレンエーテル類は、非小胞型溶液を生成する可能性がある。しかしながら、ポリオキシエチレン−8パルミトイルエーテル(C18E8)は、小胞を形成しうる。したがって、少なくとも1種の他の非イオン性サーファクタントと組み合わせたポリオキシエチレン−8パルミトイルエーテルの小胞を、本発明の製剤に利用することができる。
【0057】
好ましくは、本発明の製剤に用いられるポリオキシエチレンエーテルは、溶血活性を有する。ポリオキシエチレンエーテルの溶血活性は、以下のアッセイを参照してin vitroで測定が可能であり、赤血球の溶解を引き起こさないサーファクタントの最高濃度として表される:
1. モルモットから得た新鮮な血液を卓上遠心機においてリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄する。もとの容量に再懸濁させた後、血液をPBSでさらに10倍希釈する
2. この血液懸濁液50μlを、2倍希釈の界面活性剤を含有する800μlのPBSに添加する
3. 8時間後、目視観測によりまたは上清の光学濃度を測定することにより、溶血を評価する。570nmで光を吸収する赤色の上清が存在すれば、溶血を生じたことになる
4. 結果は、もはや溶血を生じない最初の界面活性剤希釈液の濃度で表される。
【0058】
このような生物学的アッセイに固有の実験的変動の範囲内で、本発明のポリオキシエチレンエーテルまたは一般式(I)で示されるサーファクタントは、約0.5〜0.0001%、より好ましくは0.05〜0.0001%、さらに好ましくは0.005〜0.0001%、最も好ましくは0.003〜0.0004%の溶血活性を有する。理想的には、該ポリオキシエチレンエーテルまたはエステルは、ポリオキシエチレン−9ラウリルエーテルまたはポリオキシエチレン−8ステアリルエーテルの場合と類似した溶血活性(すなわち、10倍以内の差)を有するものでなければならない。
【0059】
上記サーファクタントの異なるグループに属する2種以上の非イオン性サーファクタントが、本明細書に記載のワクチン製剤中に存在していてもよい。とくに、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80TM)のようなポリオキシエチレンソルビタンエステルと、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton)X−100TMのようなオクトキシノールとの組合せが好ましい。非イオン性サーファクタントのこのほかのとくに好ましい組合せは、ラウレス9+ポリオキシエチレンソルビタンエステルもしくはオクトキシノールまたはその両方を含む。
【0060】
好ましくは、このまたはそれぞれの非イオン性サーファクタントは、0.001%〜20%、より好ましくは0.01〜10%、最も好ましくは約2%(w/v)までの濃度で最終ワクチン製剤中に存在する。1種または2種のサーファクタントが存在する場合には、これらは一般的にはそれぞれ約2%まで、典型的にはそれぞれ約0.6%までの濃度で最終製剤中に存在する。1種以上の追加のサーファクタントは、一般的にはそれぞれ約1%の濃度まで、典型的にはそれぞれ約0.2%または0.1%までの極微量で存在しうる。サーファクタントの任意の混合物が、本発明のワクチン製剤中に存在し得る。
【0061】
以上に記載したような非イオン性サーファクタントは、最終ワクチン組成物中で次のような好ましい濃度を有する:ポリオキシエチレンソルビタンエステル、たとえばTween80TM:0.01〜1%、最も好ましくは約0.1%(w/v);オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール、たとえばTritonX−100TM、またはTritonシリーズの他の界面活性剤:0.001〜0.1%、最も好ましくは0.005〜0.02%(w/v);一般式(I)で示されるポリオキシエチレンエーテル、たとえばラウレス9:0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、最も好ましくは0.1〜1%または約0.5%(w/v)。
【0062】
他の試薬が製剤中に存在していてもよい。そのようなものとして、本発明の製剤は、胆汁酸またはその誘導体を、とくに塩の形態で含有しうる。これらの例としては、コール酸の誘導体およびその塩、とくに、コール酸またはコール酸誘導体のナトリウム塩が挙げられる。胆汁酸およびその誘導体の例としては、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、および誘導体、たとえば、該胆汁酸のグリコ誘導体、タウロ誘導体、アミドプロピル−1−プロパンスルホン酸誘導体、アミドプロピル−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸誘導体、またはN,N−ビス(3Dグルコノアミドプロピル)デオキシコラミドが挙げられる。とくに好ましい例は、最終ワクチン用量中に存在しうるデオキシコール酸ナトリウム(NaDOC)である。
【0063】
本発明に係るワクチン製剤は、好ましくは、1種以上の非イオン性サーファクタントと組み合わせてインフルエンザウイルス成分調製物を含む。1種以上の非イオン性サーファクタントは、インフルエンザウイルス成分抗原調製物を作製する方法からの残留物であってもよく、かつ/または抗原調製物に後で添加したものであってもよい。このまたはそれぞれの非イオン性サーファクタントの濃度は、分割/精製のプロセスの最後に所望のレベルになるように調整することが可能である。インフルエンザウイルス成分抗原物質は非イオン性サーファクタントの存在下で安定化されうると考えられるが、当然のことながら、本発明は、この考え方が常に成立するか否かに依存しない。
【0064】
本発明に係るワクチンは、アジュバントまたは免疫刺激剤、たとえば、任意の起源の解毒リピドAおよびリピドAの無毒誘導体、サポニンおよびTH1型応答を刺激することのできる他の試薬を含有しうるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
腸内細菌リポ多糖(LPS)が免疫系に対する強力な刺激剤であることはかなり前から知られていたが、毒性作用があるため、アジュバントに使用されることはなかった。還元末端グルコサミンからコア炭水化物基およびホスフェートを除去することにより生成された無毒のLPS誘導体モノホスホリルリピドA(MPL)については、Ribiら(1986, Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)により報告されており、次の構造を有する:
【化1】
【0066】
MPLのさらなる解毒体は、二糖主鎖の3位からアシル鎖を除去することにより得られ、3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)と呼ばれる。GB2122204号Bに教示されている方法により、それを精製および調製することができる。この文献には、ジホスホリルリピドAおよびその3−O−脱アシル化体の調製についても開示されている。
【0067】
3D−MPLの好ましい形態は、直径0.2μm未満の小さい粒径を有するエマルジョンの形態であり、その製造方法については、WO94/21292号に開示されている。モノホスホリルリピドAとサーファクタントとを含む水性製剤については、W09843670号A2に記載されている。
【0068】
本発明の組成物中に製剤化される細菌リポ多糖由来のアジュバントは、細菌源から精製および処理されたものであってもよいし、あるいは合成されたものであってもよい。たとえば、精製モノホスホリルリピドAについては、Ribiら、1986(前掲)に記載されており、Salmonella sp.に由来する3−O−脱アシル化モノホスホリルまたはジホスホリルリピドAについては、GB2220211号および米国特許第4912094号に記載されている。他の精製および合成リポ多糖についても報告されている(Hilgersら, 1986, Int. Arch. Allergy. Immunol., 79(4): 392-6;Hilgersら, 1987, Immunology, 60(1): 141-6;およびEP0549074号B1)。とくに好ましい細菌リポ多糖アジュバントは3D−MPLである。
【0069】
したがって、本発明に使用しうるLPS誘導体は、LPSまたはMPLまたは3D−MPLに構造が類似している免疫刺激剤である。本発明の他の態様において、LPS誘導体は、MPLの上記構造の一部分であるアシル化単糖であってもよい。
【0070】
サポニンについては、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。サポニンは、植物界および海洋動物界に広く分布するステロイドまたはトリテルペンのグリコシドである。サポニンは、水に添加するとコロイド溶液を形成し、それを振盪させると泡立つこと、およびコレステロールを沈澱させることで知られている。サポニンが細胞膜近傍に存在すると、細胞膜中に細孔状構造が形成され、細胞膜が破壊される。赤血球の溶血は、この現象の一例である。この現象は、すべてではなくある特定のサポニンの性質である。
【0071】
サポニンは、全身投与に供されるワクチンのアジュバントとして知られる。アジュバントおよび個々のサポニンの溶血活性については、当技術分野で広く研究されてきた(Lacaille-DuboisおよびWagner、前掲)。たとえば、Quil A(南アメリカの木キラハ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する)およびその画分については、米国特許5,057,540号および「Saponins as vaccine adjuvants」, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996,12 (1-2): 1-55およびEP0362279号B1に記載されている。Quil Aの一部分を含む、免疫刺激複合体(ISCOMS)と呼ばれる粒状構造体は、溶血性であり、ワクチンの製造に使用されてきた(Morein, B., EP0109942号B1;WO96/11711号;WO96/33739号)。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は、強力な全身性アジュバントとして記載されており、それらの製造方法は、米国特許第5,057,540号およびEP0362279号B1中に開示されている。全身性ワクチン接種の研究で使用された他のサポニンとしては、ジプソフィリア(Gypsophila)およびサポナリア(Saponaria)のような他の植物種に由来するサポニンが挙げられる(Bomfordら, Vaccine, 10(9): 572-577, 1992)。
【0072】
強化された系には、無毒のリピドA誘導体とサポニン誘導体との組合せ、とくに、WO94/00153号に開示されているようにQS21と3D−MPLとの組合せ、またはWO96/33739号に開示されているようにQS21がコレステロールでクエンチされているそれほど反応原性のない組成物が含まれる。
【0073】
水中油型エマルジョン中にQS21および3D−MPLを含むとくに強力なアジュバント製剤については、WO95/17210号に記載されている。これは好ましい製剤である。
【0074】
したがって、本発明の一実施形態では、解毒されたリピドAまたはリピドAの無毒の誘導体をアジュバント添加した、より好ましくはモノホスホリルリピドAまたはその誘導体をアジュバント添加した本発明のインフルエンザ抗原調製物を含むワクチンが提供される。
【0075】
好ましくは、ワクチンはさらに、サポニン、より好ましくはQS21を含む。
【0076】
好ましくは、製剤はさらに、水中油型エマルジョンを含む。本発明はまた、3D−MPLのような製薬上許容される賦形剤と共に本発明の抗原調製物を混合することを含むワクチン製剤の製造方法を提供する。
【0077】
本発明に係るアジュバント添加ワクチン製剤中に存在する追加の成分としては、好ましくは非イオン性界面活性剤、たとえば、本明細書に記載されているようなオクトキシノール類およびポリオキシエチレンエステル類、とくに、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80);ならびに本明細書に記載されているような胆汁酸塩またはコール酸誘導体、とくに、デオキシコール酸ナトリウムまたはタウロデオキシコール酸ナトリウムが挙げられる。したがって、とくに好ましい製剤は、皮内投与に好適なワクチンを提供すべくインフルエンザウイルス抗原調製物と併用しうる3D−MPL、TritonX−100、Tween80、およびデオキシコール酸ナトリウムを含む。
【0078】
本発明の好ましい一実施形態では、皮内インフルエンザワクチンには、小胞アジュバント製剤が含まれる。これに関連して、好ましいアジュバント製剤には、好ましくはジオレオイルホスファチジルコリンを含む脂質二重層を有するコレステロール含有単ラメラ小胞が含まれる。この場合、サポニンおよびLPS誘導体は、脂質二重層と会合しているかまたはその内部に包埋されている。より好ましくは、これらのアジュバント製剤には、サポニンとしてQS21およびLPS誘導体として3D−MPLが含まれ、QS21:コレステロールの比は、1:1〜1:100重量/重量、最も好ましくは1:5重量/重量である。そのようなアジュバント製剤は、EP0822831号Bに記載されている。該特許の開示内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0079】
本発明はまた、被験者においてインフルエンザの感染または疾患を予防するための方法を提供する。該方法には、本発明に係るインフルエンザウイルス成分ワクチンを被験者に皮内投与することが含まれる。
【0080】
本発明は、さらなる態様において、本明細書に記載されているように皮内投与デバイスとワクチン製剤とを含む医薬用キットを提供する。デバイスは、好ましくは、ワクチンがすでに充填された形で供給される。好ましくは、ワクチンは、本明細書に記載されているように、従来の筋肉内ワクチンの場合よりも小さい液体容量、とくに約0.05ml〜0.2mlの容量である。好ましくは、デバイスは、真皮にワクチンを投与するための短針送達デバイスである。
【0081】
本明細書に記載の皮内ワクチンを使用するのに好適なデバイスとしては、米国特許第4,886,499号、米国特許第5,190,521号、米国特許第5,328,483号、米国特許第5,527,288号、米国特許第4,270,537号、米国特許第5,015,235号、米国特許第5,141,496号、米国特許第5,417,662号に記載されているような短針デバイスが挙げられる。参照により本明細書に組み入れられるものとするWO99/34850号に記載されているように皮膚中への針の有効侵入長を限定するデバイスおよびその機能的等価物により皮内ワクチンを投与することも可能である。同様に好適なのは、液体ジェット式注射器を用いて、または角質層を貫通し真皮に達するジェットを生成する針を用いて、真皮に液体ワクチンを送達するジェット式注射デバイスである。ジェット式注射デバイスについては、たとえば、米国特許第5,480,381号、米国特許第5,599,302号、米国特許第5,334,144号、米国特許第5,993,412号、米国特許第5,649,912号、米国特許第5,569,189号、米国特許第5,704,911号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,893,397号、米国特許第5,466,220号、米国特許第5,339,163号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,503,627号、米国特許第5,064,413号、米国特許第5,520,639号、米国特許第4,596,556号、米国特許第4,790,824号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,940,460号、WO97/37705号、およびWO97/13537号に記載されている。同様に好適なのは、皮膚の外層を通って真皮まで粉末形態のワクチンに加速度を与えるために圧縮ガスを使用するバリスティック粉末/粒子送達デバイスである。このほか、古典的なマントー式皮内投与法で従来型シリンジを使用することも可能である。しかしながら、従来型シリンジを使用するには、かなり熟練したオペレーターが必要である。したがって、かなり熟練したユーザーでなくても正確な送達を行うことのできるデバイスが好ましい。
【0082】
本発明に係るインフルエンザワクチンは、一般的には、3種のインフルエンザ株を含む三価インフルエンザワクチンであるが、3種未満の株を含むものであってもよい。従来のインフルエンザワクチンは、3種のインフルエンザ株、すなわち2種のA株および1種のB株を含む。
【0083】
インフルエンザウイルス調製物は、従来の発育卵法から得るかまたは組織培養を用いてウイルスを増殖させる任意の新しい生成法から得ることが可能である。ウイルスを増殖するための適切な細胞培養基としては、たとえば、イヌ腎臓細胞、具体例としてはMDCKまたはMDCKのクローンから得られる細胞、MDCK様細胞、サル腎臓細胞、具体例としてはベロ細胞などのAGMK細胞、またはワクチンを目的としたインフルエンザウイルスの産生に適した任意の他のタイプの哺乳動物細胞が挙げられる。適切な細胞培養基としては、このほかに、MRC−5細胞などのヒト細胞が挙げられる。適切な細胞培養基は細胞系に限定されるものではなく、たとえば、ニワトリ胚繊維芽細胞のような始原細胞も含まれる。
【0084】
伝統的には、インフルエンザウイルス成分は、溶媒/界面活性剤処理を用いて、たとえば、トリ−n−ブチルホスフェートまたはTweenTMと組合せたジエチルエーテル(「Tween−エーテル」分割として知られる)を用いて生産された。この方法は、依然として、いくつかの生産設備で使用されている。現在利用されている他の分割剤としては、界面活性剤またはタンパク質分解酵素または胆汁酸塩、たとえば、参照により本明細書に組み入れられるものとする特許D155875号に記載されているようなデオキシコール酸ナトリウムが挙げられる。分割剤として使用することのできる界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、たとえば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、他のイオン性界面活性剤、たとえば、ラウリルスルフェート、タウロデオキシコレート、もしくは非イオン性界面活性剤、たとえば、TritonX−100(たとえば、Linaら, 2000, Biologicals 28, 95-103に記載の方法を用いる)およびTritonN−101などの先に記載のもの、または任意の2種以上の界面活性剤の組合せが挙げられる。
【0085】
インフルエンザウイルス成分調製物を生成するために使用することのできるさらなる好適な分割剤としては、以下のものが挙げられる。
【0086】
1. 胆汁酸およびその誘導体、たとえば:コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、および誘導体(たとえば、以上に記載の胆汁酸のグリコ誘導体、タウロ誘導体、アミドプロピル−1−プロパンスルホン酸誘導体、アミドプロピル−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸誘導体)、またはN,N−ビス(3Dグルコノアミドプロピル)デオキシコラミド。具体例としては、最終ワクチン用量中に極微量で存在しうるデオキシコール酸ナトリウム(NaDOC)である。
【0087】
2. アルキルグリコシドまたはアルキルチオグルコシド。この場合、アルキル鎖は、C6〜C18、典型的にはC8〜C14であり、糖部分は、1→6、1→5、1→4、1→3、1→2のようなさまざまな結合を有する任意のペントースもしくはヘキソースまたはそれらの組合せである。アルキル鎖は、飽和、不飽和、および/または分枝であってもよい。
【0088】
3. 上記の2の誘導体。この場合、1個以上のヒドロキシル基、好ましくは6個のヒドロキシル基は、たとえば、エステル、エトキシレート、スルフェート、エーテル、カーボネート、スルホスクシネート、イセチオネート、エーテルカルボキシレート、第四級アンモニウム化合物のように修飾される。
【0089】
4. アシル糖。この場合、アシル鎖は、C6〜C18、典型的にはC8〜C12であり、糖部分は、1→6、1→5、1→4、1→3、1→2のようなさまざまな結合を有する任意のペントースもしくはヘキソースまたはそれらの組合せである。アシル鎖は、飽和もしくは不飽和、および/または分枝、環状もしくは非環状であってもよく、N、S、P、またはOなどの1個以上のヘテロ原子を有していてもよいし有していなくてもよい。
【0090】
5. 構造R−N,N−(R1,R2)−3−アミノ−1−プロパンスルホネートを有するスルホベタイン。この場合、Rは、C6〜C18、典型的にはC8〜C16の任意のアルキル鎖またはアリールアルキル鎖である。アルキル鎖Rは、飽和、不飽和、および/または分枝であってもよい。R1およびR2は、好ましくはC1〜C4、典型的にはC1のアルキル鎖であり、またはR1、R2は、窒素と一緒になって複素環式環を形成することができる。
【0091】
6. 構造R−N,N−(R1,R2)−グリシンを有するベタイン。この場合、Rは、C6〜C18、典型的にはC8〜C16の任意のアルキル鎖である。アルキル鎖は、飽和、不飽和、および/または分枝であってもよい。R1およびR2は、好ましくはC1〜C4、典型的にはC1のアルキル鎖であり、またはR1、R2は、窒素と一緒になって複素環式環を形成することができる。
【0092】
7. 構造R−(N−R1)−グルカミドを有するN,N−ジアルキル−グルカミド。この場合、Rは、C6〜C18、典型的にはC8〜C12の任意のアルキル鎖である。アルキル鎖は、飽和、不飽和、および/または分枝、または環状であってもよい。R1およびR2は、C1〜C6、典型的にはC1のアルキル鎖である。糖部分は、ペントースまたはヘキソースで修飾されていてもよい。
【0093】
8. 構造R,−N+(−R1,−R2,−R3)を有する第四級アンモニウム化合物。この場合、Rは、C6〜C20、典型的にはC20の任意のアルキル鎖である。アルキル鎖は、飽和、不飽和、および/または分枝であってもよい。R1、R2、およびR3は、好ましくはC1〜C4、典型的にはC1のアルキル鎖であり、またはR1、R2は、窒素と一緒になって複素環式環を形成することができる。具体例は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)である。
【0094】
ウイルス成分ワクチンの製造方法には、いくつかの異なる濾過ステップおよび/または他の分離ステップ、たとえば、種々の組合せで、超遠心ステップ、限外濾過ステップ、ゾーン遠心ステップ、およびクロマトグラフィー(たとえば、イオン交換クロマトグラフィー)ステップ、ならびに場合により、ホルムアルデヒドもしくはβ−プロピオラクトンまたはUVを用いる不活化ステップが含まれてもよいが、これらは分割の前または後に実行可能である。分割法は、バッチ法、連続法、または半連続法として実行可能である。
【0095】
好ましくは、デオキシコール酸ナトリウムのような胆汁酸塩は、本発明に係るウイルス成分ワクチン製剤中に、極微量で、好ましくは0.05%以下、または約0.01%以下、より好ましくは約0.0045%(w/v)の濃度で存在する。
【0096】
本発明に係る好ましいインフルエンザウイルス成分ワクチン抗原調製物は、製造方法で残存した残留量のTween80および/またはTritonX−100を含むが、ウイルス成分抗原の調製後に、これらを添加してもよいし、それらの濃度を調整してもよい。好ましくは、Tween80とTritonX−100の両方が存在する。ワクチン用量中のこれらの非イオン性サーファクタントの最終濃度の好ましい範囲は以下のとおりである:
Tween80:0.01〜1%、好ましくは約0.1%(v/v)
TritonX−100:0.001〜0.1(%w/v)、より好ましくは0.005〜0.02%(w/v)。
【0097】
これらの2種のサーファクタントを組み合わせて低濃度で存在させると、溶解状態の抗原の安定性が向上することが判明した。この強化された安定性により、従来の製剤よりも皮内投与でより免疫原性が増大した抗原となる可能性がある。このような強化は、小さな抗原凝集体が大部分を占めるかまたは抗原の天然のコンホメーションが強化されることが原因で生じる可能性がある。本発明は、この理論的解釈が正しいか否かに依存しない。
【0098】
特定の実施態様では、好ましいウイルス成分調製物は、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.1〜10%、最も好ましくは0.1〜1%(w/v)の範囲でラウレス9をも含有する。
【0099】
本発明に係るワクチンは、一般的には25%(w/v)以下、好ましくは15%未満、最も好ましくは約2%以下の界面活性剤またはサーファクタントを含有する。
【0100】
本発明は、別の態様において、皮内投与用のインフルエンザワクチンの製造方法を提供し、該方法は、以下のステップを含むものである:
(i)従来の注射用(例えば筋肉内)インフルエンザワクチンと本質的に同じように製造されたインフルエンザウイルス成分調製物を準備し、少なくとも1種の非イオン性サーファクタントを含有させるステップ;
(ii)場合により、上記調製物中のヘマグルチニン濃度および/または非イオン性サーファクタント濃度を調整するステップ;
(iii)上記インフルエンザウイルス成分調製物からのワクチン用量を皮内送達デバイスに充填するステップであって、該用量が、皮内投与に適した量、好ましくは液状ワクチン約0.05ml〜0.2mlである、上記ステップ。
【0101】
本発明の上記態様の方法におけるさらなる任意ステップとしては、吸収促進サーファクタント(例えばラウレス9など)の添加、および/またはアジュバント(例えば無毒リピドA誘導体、特に3D−MPL)の添加が挙げられる。
【0102】
従来の注射用不活化インフルエンザワクチンの製造方法は周知であり、文献に記載されている。かかる方法は、本発明において使用するための単回用量皮内ワクチンを製造するために改変を加えても良く、例えば、他の成分(非イオン性サーファクタント)の濃度を本発明の皮内ワクチンに適した割合(%(w/v))に調整するステップを導入してもよい。しかしながら、ワクチンの有効成分、すなわちインフルエンザ抗原は、従来の筋肉内ワクチン及び本発明の単回用量皮内ワクチンで本質的に同じものとすることができる。
【0103】
好ましくは、本発明のワクチン製剤は、単回用量ワクチンとして投与する場合には、全ての株についてEU基準の少なくとも2つをみたさない製剤を含むものではない。
【0104】
次に、以下の実施例で本発明についてさらに説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0105】
インフルエンザウイルス成分ワクチンの調製
以下の手順にしたがって、ウイルス成分ワクチン用の各株を調製した。
【0106】
ウイルス接種物の調製
発育卵への接種当日に、使用するシードロットを、0.5mg/mlのゲンタマイシンスルフェートと25μg/mlのヒドロコルチゾン(ウイルス株に応じて異なる)とを含有するリン酸緩衝食塩水と混合することにより、新鮮な接種物を調製する。ウイルス接種物を2〜8℃に保持する。
【0107】
発育卵への接種
9〜11日齢の発育卵をウイルス複製に使用する。卵殻を除く。0.2mlのウイルス接種物を卵に接種する。適切な温度(ウイルス株に応じて異なる)で接種卵を48〜96時間インキュベートする。インキュベーション時間の終了時に、冷却により胚を死滅させ、卵を2〜8℃で12〜60時間保存する。
【0108】
採取
冷却した発育卵から尿膜液を採取する。通常、卵1個あたり8〜10mlの粗製尿膜液を採取する。場合により、粗製一価ウイルスバルクに0.100mg/mlのチオメルサールを添加する。
【0109】
尿膜液からの全ウイルスの濃縮および精製
1.清澄化
採取した尿膜液を中速度の遠心(範囲:4000〜14000g)により清澄化する。
【0110】
2.吸着ステップ
CaHPO4ゲルを含有する清澄化ウイルスプールを得るために、CaHPO4の最終濃度がウイルス株に応じて1.5g〜3.5gCaHPO4/リットルになるように0.5mol/LのNa2HPO4溶液および0.5mol/LのCaCl2溶液を添加する。
【0111】
少なくとも8時間かけて沈降させた後、上清を除去し、CaHPO4の使用量に応じて0.26mol/LのEDTA−Na2溶液を添加することにより、インフルエンザウイルスを含有する沈降物を再び可溶化させる。
【0112】
3.濾過
再懸濁させた沈降物を6μm濾過膜で濾過する。
【0113】
4.スクロース勾配遠心
100μg/mlのチオメルサールを含有する線形スクロース勾配(0〜55%(w/v))で等密度遠心を行うことにより、インフルエンザウイルスを濃縮する。流速は8〜15リットル/時である。
【0114】
遠心終了時に、ローターの内容物を4つの異なる画分で回収する(屈折計でスクロースを測定する):
・画分1 55〜52%スクロース
・画分2 約52〜38%スクロース
・画分3 38〜20%スクロース*
・画分4 20〜0%スクロース
*ウイルス株に応じて異なる:画分3は15%スクロースまで低下させることができる。
【0115】
さらなるワクチン調製では、画分2および3のみを使用する。
【0116】
スクロース含有率を約6%未満まで低下させるために、リン酸緩衝液を用いて透析濾過することにより画分3を洗浄する。この希釈画分中に存在するインフルエンザウイルスをペレット化して可溶性夾雑物を除去する。
【0117】
ペレットを再懸濁し、十分に混合して均質懸濁液を得る。画分2と画分3の再懸濁ペレットとをプールし、リン酸緩衝液を添加して約40リットルの体積にする。この生成物は、一価全ウイルス濃縮物である。
【0118】
5.デオキシコール酸ナトリウムを用いるスクロース勾配遠心
一価全インフルエンザウイルス濃縮物をENI−MarkII超遠心機にかける。K3ローターは、線形スクロース勾配(0〜55%(w/v))を有し、該勾配上にはさらにデオキシコール酸ナトリウム勾配が設けられている。分割中に、Tween80を0.1%(w/v)まで存在させる。最大デオキシコール酸ナトリウム濃度は、0.7〜1.5%(w/v)であり、株に応じて異なる。流速は8〜15リットル/時である。
【0119】
遠心終了時、ローターの内容物を3つの異なる画分で回収する(屈折計でスクロースを測定する)。さらなる処理では、画分2を使用する。画分を限定するスクロース含有率(47〜18%)は株によって異なり、評価後に確定される。
【0120】
6.滅菌濾過
0.2μm膜で終了する複数の濾過膜でウイルス成分画分を濾過する。0.025%(w/v)Tween80を含有するリン酸緩衝液を希釈に使用する。濾過画分2の最終体積は、もとの画分体積の5倍である。
【0121】
7.不活化
濾過された一価物質を22±2℃で長くとも84時間インキュベートする(ウイルス株に応じて、このインキュベーションの時間を短縮することが可能である)。次に、全タンパク質含有量を最大250μg/mlまで減少させるために、0.025%Tween80を含有するリン酸緩衝液を添加する。最終濃度が50μg/mlになるようにホルムアルデヒドを添加し、20℃±2℃で少なくとも72時間かけて不活化を行う。
【0122】
8.限外濾過
20kDa MWCOの酢酸セルロース膜を備えた限外濾過装置で、不活化スプリットウイルス物質を少なくとも2倍濃縮する。その後、0.025%(w/v)Tween80を含有するリン酸緩衝液で洗浄し、続いて、0.01%(w/v)Tweenを含有するリン酸緩衝食塩水で洗浄する。
【0123】
9.最終滅菌濾過
限外濾過後、0.2μm膜で終了する複数の濾過膜で物質を濾過する。SRD(WHOが推奨する方法)により測定されるヘマグルチニンの最終濃度は、450μg/mlを超えるようにしなければならない。
【0124】
10.保存
一価最終バルクを2〜8℃で最大18ヶ月間保存する。
【0125】
純度
クーマシー染色したポリアクリルアミドゲルをO.D.走査することにより、半定量的に純度を決定した。手作業でピークを決定した。サンプルの結果を表1に示す。
【0126】
【0127】
株の特定の組合せとしては、A/New Caledonia/20/99(H1N1)、A/Panama/20/99(H3N2)、およびB/Yamanashi/166/98が挙げられる。
【実施例2】
【0128】
バルクワクチンからのワクチン用量の調製
所要により界面活性剤濃度を調整して、一価バルクから三価ワクチンを製剤化することにより、最終ワクチンを調製する。
【0129】
PBS(pH7.2±0.2)、Tween80、およびTritonX−100を混合して、所要の最終濃度(PBS1倍濃縮、Tween80 0.15%、およびTritonX−100 0.02%)を得る。以下の3種の不活化ビリオン成分を、10分間撹拌しながら添加する:
15μg A/New Caledonia/20/99(H1N1)
15μg A/Panama/20/99(H3N2)
15μg B/Yamanashi/166/98
【0130】
15分間撹拌後、pHを7.2±0.2に調整する。投与量は500μlである。滅菌アンプル中にその用量を充填する。ワクチンを投与する直前に、皮内投与デバイスを用いて0.1ml用量をアンプルから取出す。
【実施例3】
【0131】
抗体応答の測定に使用される方法
1.ELISAによるヒト鼻分泌物中の特異的抗インフルエンザおよび全IgAの検出
ヒト鼻分泌物の採取方法
適切な方法、たとえば、古典的な鼻洗浄法または鼻吸引法を用いて鼻分泌物を採取する。
【0132】
ヒト鼻分泌物の採取および処理を行った後、たとえばELISAを用いて、全抗インフルエンザIgAおよび特異的抗インフルエンザIgAの検出を行う。
【0133】
全IgAを検出するための捕捉ELISA
マイクロタイタープレート上に固定された抗ヒトIgAポリクローナルアフィニティー精製Igを用いて全IgAを捕捉し、続いて、ペルオキシダーゼに結合されたさまざまなポリクローナル抗ヒトIgAアフィニティー精製Igを用いて検出する。
【0134】
精製ヒトsIgAを標準として使用し、採取した鼻分泌物中のsIgAの定量を行う。
【0135】
精製ヒトsIgAの3種の対象標準を、この検定における低、中および高対象標準として用いる。
【0136】
特異的抗インフルエンザIgAを検出するための直接ELISA
ワクチン製剤中に存在する各インフルエンザ株に対して3つの異なるELISAを実施する。
【0137】
マイクロタイタープレート上にコーティングされたスプリット不活化インフルエンザ抗原を用いて特異的抗インフルエンザIgAを捕捉し、続いて、全IgA ELISAに用いたIgと同じようにペルオキシダーゼに結合されたさまざまなポリクローナル抗ヒトIgAアフィニティー精製Igを用いて検出する。
【0138】
結果−表現および計算
全IgAの発現
Softmaxproプログラムを用いて、鼻汁1ml中の全IgAのμgとして結果を表す。
【0139】
特異的抗インフルエンザIgAの発現
終点単位の力価として結果を表す。これは、カットオフ値を上回るOD450nmを示す最終希釈度の逆数として計算される。
【0140】
サンプルの最終結果を次のように表す:
特異的応答と全IgA濃度との比を計算することにより特異的応答を正規化する:終点単位/μg全IgA(文献中で最も一般的に用いられる計算方法)。
【0141】
2.インフルエンザ特異的血清抗体の血球凝集阻害(HAI)活性
200μlのRDE(受容体破壊酵素)を用いて血清(50μl)を37℃で16時間処理する。150μlの2.5%クエン酸ナトリウムを用いて反応を停止させ、56℃で30分間かけて血清を不活化させる。100μlのPBSを添加することにより、1:10希釈液を調製する。次に、25μlの血清(1:10)を25μlのPBSで希釈することにより、96ウェルプレート(V底)中に2倍希釈系列を調製する。25μlの参照抗原を25μlあたり4血球凝集単位の濃度で各ウエルに添加する。マイクロタイタープレート振盪器を用いて抗原と抗血清希釈液とを混合し、室温で60分間インキュベートする。次に、50μlのニワトリ赤血球(RBC)(0.5%)を添加し、室温で1時間かけてRBCを沈降させる。HAI力価は、ウイルス誘発血球凝集を完全に阻害する最終血清希釈度の逆数に相当する。
【実施例4】
【0142】
皮内インフルエンザワクチン(FluID)の免疫原性および反応原性
皮内送達される本発明のインフルエンザワクチンの効力を評価するために、ヒト被験者に対して臨床試験を行った。この試験に使用したワクチン(FluarixTM)は、実施例1および2に従って作製したものである。
【0143】
100名の健常な男性および女性ボランティア(年齢18〜60歳)を登録し、無作為に2つのグループ(1グループあたり50名の被験者)に分けた。2つの投与経路によりワクチンを投与した。
【0144】
・三価インフルエンザウイルス成分ワクチン(FluarixTM)の筋肉内投与:
1用量→0日目
利き腕でない腕の三角筋部に筋肉内注射すべく、充填済みシリンジとしてワクチンを供給した。試験ワクチンの適切な筋肉内注射が行えるように、少なくとも23G(2.2cm/1インチ)の長さの針を使用した。
【0145】
・三価インフルエンザウイルス成分ワクチン(FluarixTM)の皮内投与:
1/5用量→0日目
0.5mlのアンプル用量としてワクチンを供給した。EP1092444号に開示されているようなデバイスを用いて、全用量(100μl)の1/5を皮内に注射した。該特許の全内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。このデバイスは、真皮への針の侵入具合を効果的に限定する皮膚接触エレメントを有する。有効な針の長さは約1.5mmであった。本明細書中では、このデバイスをID送達デバイスまたは「IDD」と記す。
【0146】
試験の継続時間は、約21日間であり、被験者1名あたりワクチン1用量だけをグループに応じて筋肉内または皮内に投与した。0日目および21日目に血液をサンプリングした。
【0147】
試験集団は次のとおりであった:
【0148】
ワクチン接種を受けた2グループの被験者の集団統計学的プロフィールは、平均年齢、性別、および人種の分布に関して同等であった。
【0149】
免疫原性
それぞれの処置グループに対して、免疫原性の次のパラメーターを計算した:
・log力価の平均値の真数を求める変換を行うことにより、0日目および21日目におけるHI抗体力価の幾何平均力価(GMT)(95%信頼区間を有する)を計算した(計算の都合上、カットオフ値未満の力価については、任意値としてカットオフの半分の値を与えた)
・アッセイカットオフよりも大きいかまたはそれに等しい力価を有する被験者の割合(%)として定義される0日目および21日目におけるHI抗体力価の血清反応陽性(S+)率
・0日目と比較して21日目の血清HI GMTの増加倍率として定義される21日目におけるコンバージョン係数
・0日目と比較して21日目に血清HI力価が少なくとも4倍増加したワクチン被接種者の割合(%)として定義される21日目におけるセロコンバージョン率(SC)
・ワクチン接種後、血清HI力価≧1:40を有するワクチン被接種者の割合(%)として定義される21日目における防御率。
【0150】
実験室アッセイおよび時間点
すべての血清サンプルを−20℃に保持し、適切な手段を講じて、サンプルがいかなる時点でも解凍しなかったことを確認した。通院するたびに、HI抗体応答の測定に供すべく血液を採取した。
【0151】
WHO Collaborating Centre for Influenza, Centres for Diseases Control, Atlanta, USA (1991)により記載された血球凝集阻害試験を用いて測定された血球凝集阻害抗体(HAI)の力価により免疫応答を測定した。
【0152】
Saechsisches Serumwerk GmbH(SSW), Dresden, Germanyで凍結血清サンプルを入手し、そして解凍後、4血球凝集単位(4HIU)の適切な抗原および0.5%家禽赤血球懸濁液を用いて、標準化されかつ総合的に有効性が実証された測微法により、サンプルの抗体測定を行った。発育鶏卵の尿膜液から抗原A(H3N2およびH1N1)を全ウイルス抗原として得た。感度を増大させるために、B抗原を、エーテルとTween 80との混合物による分解処理に付した。熱処理および受容体破壊酵素により非特異的血清阻害剤を除去した。
【0153】
得られた血清のHI抗体値を評価する。初期希釈度1:10から始めて、最終希釈度1:20480までの希釈系列(2倍希釈系列)を調製する。血球凝集の完全阻害(100%)を示す最大希釈ステップを力価測定の終点とする。すべてのアッセイを2重反復試験方式で行う。
【0154】
結果
ATP免疫原性コホートの被験者の数と全コホートの被験者の数とが同一になるように、包括解析(ITT)方式(すなわち、全コホート)で免疫原性分析を行った。
【0155】
HI力価およびコンバージョン係数
3グループに対する0日目および21日目におけるHI抗体力価の幾何平均力価(GMT)(95%信頼区間を有する)を以下の表に示す:
【0156】
0日目に、3種の株(New Caledonia、A/Panama、およびB/Yamanashi)に関してグループ間の差は有意でなかった(p>0.05)。21日目には、皮内(ID)グループと筋肉内(IM)グループとの間に有意差(p<0.0001)が観測された。
【0157】
しかしながら、0日目から21日目までの力価の増加を比較したとき(コンバージョン係数、下記の表を参照されたい)、グループ間で有意差は測定されなかった(p>0.05)。このことは、増加が全体的に同等であったことを意味する。
【0158】
HIの結果では、皮内(ID)ワクチングループとFluarixTM筋肉内(IM)ワクチングループとを識別できない。
【0159】
【0160】
コンバージョン係数(0日目と比較した21日目の血清HI GMTの増加倍率)は、ウイルス株および投与経路に応じて8.5〜10.9の範囲で種々の値をとる(上記の表を参照されたい)。このコンバージョン係数は、欧州関係機関により要求されるGMTの2.5倍増加よりも優れている。
【0161】
分類の判定基準として因子分析を含む分散分析を用いて、コンバージョン係数を比較した。処置グループ間の有意差(p>0.05)は測定されなかった。
【0162】
血清防御率
以下の表に示される血清防御率は、ワクチン接種後、血清HI力価≧40を有するワクチン被接種者の割合(%)として定義される。
【0163】
【0164】
21日目に、グループの血清防御率は、異なるウイルス株に対して96%〜100%の範囲であった。防御に関して、このことは、ワクチン接種後に95%を超える被験者(投与経路に依らない)が血清HI力価≧40を有し、3種の株から防御されたとみなされることを意味する。この率は、欧州関係機関により18〜60歳集団に要求される70%の血清防御率よりも優れている。
【0165】
セロコンバージョン率
以下の表に示されるセロコンバージョン因子は、ワクチン接種後に血清HI力価が少なくとも4倍増加したワクチン被接種者の割合(%)として定義される。
【0166】
【0167】
効果がありかつ欧州関係機関の要求基準に適合するとみなされるためには、ワクチンは、18〜60歳集団で40%を超えるセロコンバージョン率を誘導するものでなければならない。本試験では、グループのセロコンバージョン率は65%を上回った。
【0168】
反応原性
ワクチンの皮内投与は安全であり(深刻な有害事象は報告されなかった)、ワクチン接種に関連した全身症状についての報告はほとんどなく、臨床的に十分許容されるものであった。
【0169】
結論
・FluarixTMは、投与経路(IDまたはIM)に依らず単回用量投与後に高いセロコンバージョン率で各株に対して良好な免疫応答を誘発した
・FluarixTMの1/5用量を皮内投与して誘導された免疫応答と、全用量をIM経路で投与して誘導された免疫応答との間には、有意差がなかった
・いずれのワクチン接種でも、以下のように、18〜60歳集団におけるインフルエンザ不活化ワクチンに対する欧州関係機関の要求基準が満たされた:すなわち、
・40%を超えるセロコンバージョン率が得られる
・幾何平均力価が2.5倍よりも増大する
・70%の血清防御率が得られる。
【実施例5】
【0170】
皮内インフルエンザワクチン(FluID)の免疫原性および反応原性:試験2
インフルエンザウイルス抗原調製物の調製
以下の手順にしたがって、一価ウイルス成分ワクチンを調製した。
【0171】
ウイルス接種物の調製
発育卵への接種当日に、使用するシードロットを、0.5mg/mlのゲンタマイシンスルフェートと25μg/mlのヒドロコルチゾン(ウイルス株に応じて異なる)とを含有するリン酸緩衝食塩水と混合することにより、新鮮な接種物を調製する。ウイルス接種物を2〜8℃に保持する。
【0172】
発育卵への接種
9〜11日齢の発育卵をウイルス複製に使用する。卵殻を除く。0.2mlのウイルス接種物を卵に接種する。適切な温度(ウイルス株に応じて異なる)で接種卵を48〜96時間インキュベートする。インキュベーション時間の終了時に、冷却により胚を死滅させ、卵を2〜8℃で12〜60時間保存する。
【0173】
採取
冷却した発育卵から尿膜液を採取する。通常、卵1個あたり8〜10mlの粗製尿膜液を採取する。
【0174】
尿膜液からの全ウイルスの濃縮および精製
1.清澄化
採取した尿膜液を中速度の遠心(範囲:4000〜14000g)により清澄化する。
【0175】
2.吸着ステップ
CaHPO4ゲルを含有する清澄化ウイルスプールを得るために、CaHPO4の最終濃度がウイルス株に応じて1.5g〜3.5gCaHPO4/リットルになるように0.5mol/LのNa2HPO4溶液および0.5mol/LのCaCl2溶液を添加する。
【0176】
少なくとも8時間かけて沈降させた後、上清を除去し、CaHPO4の使用量に応じて0.26mol/LのEDTA−Na2溶液を添加することにより、インフルエンザウイルスを含有する沈降物を再び可溶化させる。
【0177】
3.濾過
再懸濁させた沈降物を6μm濾過膜で濾過する。
【0178】
4.スクロース勾配遠心
100μg/mlのチオメルサールを含有する線形スクロース勾配(0.55%(w/v))で等密度遠心を行うことにより、インフルエンザウイルスを濃縮する。流速は8〜15リットル/時である。
【0179】
遠心終了時に、ローターの内容物を4つの異なる画分で回収する(屈折計でスクロースを測定する):
・画分1 55〜52%スクロース
・画分2 約52〜38%スクロース
・画分3 38〜20%スクロース*
・画分4 20〜0%スクロース
*ウイルス株に応じて異なる:画分3は15%スクロースまで低下させることができる。
【0180】
さらなるワクチン調製では、画分2および3のみを使用する。
【0181】
スクロース含有率を約6%未満まで低下させるために、リン酸緩衝液を用いて透析濾過することにより画分3を洗浄する。この希釈画分中に存在するインフルエンザウイルスをペレット化して可溶性夾雑物を除去する。
【0182】
ペレットを再懸濁し、十分に混合して均質懸濁液を得る。画分2と画分3の再懸濁ペレットとをプールし、リン酸緩衝液を添加して約40リットル(卵12,000個/バッチに適した体積)の体積にする。この生成物は、一価全ウイルス濃縮物である。
【0183】
5.デオキシコール酸ナトリウムを用いるスクロース勾配遠心
一価全インフルエンザウイルス濃縮物をENI−MarkII超遠心機にかける。K3ローターは、線形スクロース勾配(0.55%(w/v))を有し、該勾配上にはさらにデオキシコール酸ナトリウム勾配が設けられている。分割中に、Tween80を0.1%(w/v)まで存在させ、B株ウイルスに対して0.5mMまでのトコフェロールスクシネートを添加する。最大デオキシコール酸ナトリウム濃度は、0.7〜1.5%(w/v)であり、株に応じて異なる。流速は8〜15リットル/時である。
【0184】
遠心終了時、ローターの内容物を3つの異なる画分で回収する(屈折計でスクロースを測定する)。さらなる処理では、画分2を使用する。画分を限定するスクロース含有率(47〜18%)は株によって異なり、評価後に確定される。
【0185】
6.滅菌濾過
0.2μm膜で終了する複数の濾過膜でウイルス成分画分を濾過する。0.025%(w/v)Tween80および(B株ウイルスに対しては0.5mMトコフェロールスクシネート)を含有するリン酸緩衝液を希釈に使用する。濾過画分2の最終体積は、もとの画分体積の5倍である。
【0186】
7.不活化
濾過された一価物質を22±2℃で長くとも84時間インキュベートする(ウイルス株に応じて、このインキュベーションの時間を短縮することが可能である)。次に、全タンパク質含有量を最大250μg/mlまで減少させるために、0.025%Tween80を含有するリン酸緩衝液を添加する。B株ウイルスについては、0.025%(w/v)Tween80および0.25mMトコフェロールスクシネートを含有するリン酸緩衝食塩水を希釈に利用して、全タンパク質含有量を250μg/mlまで減少させる。最終濃度が50μg/mlになるようにホルムアルデヒドを添加し、20℃±2℃で少なくとも72時間かけて不活化を行う。
【0187】
8.限外濾過
20kDa MWCOの酢酸セルロース膜を備えた限外濾過装置で、不活化スプリットウイルス物質を少なくとも2倍濃縮する。その後、0.025%(w/v)Tween80を含有するリン酸緩衝液で洗浄し、続いて、0.01%(w/v)Tweenを含有するリン酸緩衝食塩水で洗浄する。B株ウイルスについては、0.01%(w/v)Tween80および0.1mMトコフェロールスクシネートを含有するリン酸緩衝食塩水を用いて洗浄する。
【0188】
9.最終滅菌濾過
限外濾過後、0.2μm膜で終了する複数の濾過膜で物質を濾過する。濾過膜をすすぎ、所要により、タンパク質濃度が1,000μg/mlを超えないようにかつヘマグルチニン濃度が180μg/mlを超えるように、0.01%(w/v)Tween80および(B株ウイルスに対しては)0.1mMトコフェロールスクシネートを含有するリン酸塩緩衝食塩水で物質を希釈する。
【0189】
10.保存
一価最終バルクを2〜8℃で最大18ヶ月間保存する。
【実施例6】
【0190】
インフルエンザワクチンの調製
3種の株A/New Caldonia/20/99 (H1N1) IVR−116、A/Panama/2007/99 (H3N2) Resvir−17、およびB/Johannesburg/5/99の一価最終バルクを、実施例5に記載の方法に従って作製した。
【0191】
プーリング
A/New Caldonia/20/99(H1N1)IVR−116、A/Panama/2007/99(H3N2)Resvir−17についてはそれぞれ60μg/ml、B/Johannesburg/5/99については68μg/mlの最終HA濃度になるように、適切な量の一価最終バルクをプールした。Tween80、TritonX−100、およびトコフェロールスクシネートを、それぞれ1,000μg/ml、110μg/ml、および160μg/mlに調整した。リン酸塩緩衝食塩水を用いて最終体積を3Lに調整した。三価プールを、0.8μm酢酸セルロース膜で完了する濾過を行い、三価最終バルクを得た。少なくとも0.165mLの三価最終バルクをそれぞれのシリンジに充填した。
【0192】
ワクチン投与
充填済みシリンジでワクチンを供給し、三角筋部に皮内投与した。皮内(ID)針は、EP1092444号に記載のものであり、適切な皮内注射が行えるように皮膚侵入リミッターを備えていた。注射部位に膨疹(丘疹)が形成されればID投与の質が良くなるので、試験者は、ワクチン接種の30分後に被験者の膨疹の正確なサイズを測定した。
【0193】
単回用量(100μl)は以下の成分を含んだ:
【0194】
上記のワクチンを標準的な三価インフルエンザウイルス成分ワクチンFluarixTMと比較した。Fluarixワクチンを充填済みシリンジで供給し、三角筋に筋肉内投与した。適切な皮内注射が行えるように、少なくとも2.5cm/1インチの長さの針(23ゲージ)を使用した。
【0195】
単回用量(0.5ml)は以下の成分を含んだ:
【0196】
結果
ワクチン投与時における全コホートの平均年齢は、70.4±6.2(標準偏差(S.D.))歳であり、女性/男性の比は1.7:1であった。
【0197】
【0198】
注射部位疼痛が65名中10名(15.4%)のワクチン被接種者により報告されたが、これはFluarixTMのIM投与後のごく一般的な症状であった。IDグループでは、65名中3名(4.6%)のワクチン被接種者により疼痛が報告された。この差は統計的に有意であった(p=0.038;フィッシャーの精密検定)。したがって、ID投与を用いた場合、疼痛の頻度は減少する。
【0199】
結論
インフルエンザワクチンのID投与により、高齢者集団において、等価な(100%)血清防御が達成される。
【0200】
幾何平均力価、血清防御率、セロコンバージョン率、およびコンバージョン係数に関して、IMおよびIDワクチン接種された個体で、ワクチン接種に対する同等の応答が見いだされた。ただし、IDグループには1/2.5の抗原を接種した。
【0201】
2つの処置グループには、ワクチンに関連した応答型/非応答型全身症状の全体的な発生率に関して識別可能な差は見られなかった。
【実施例7】
【0202】
標準的針を用いる皮内送達
ブタにおいて標準的針を用いてID送達を行うことにより、インフルエンザウイルス成分ワクチンの免疫原性を評価した。
【0203】
ブタは、ヒトとの重要な生理学的類似性を示し、とくに、ブタ皮膚は、外観、解剖学的構造、および生理機能の点でヒト皮膚ときわめてよく類似している。したがって、皮膚の性質が重要となる試験は、ブタを用いれば最も適切に評価することが可能である。ブタはまた、インフルエンザ感染(A株だけ)の自然宿主であるという利点をもつので、ブタを用いたワクチン候補の試験は適切なものである。
【0204】
4週齢のブタを用いて行った最初の免疫原性試験では、Pfeiffer鼻腔内デバイス(たとえば、WO91/13281号、EP311863号B、およびEP516636号Bに記載され、Pfeiffer GmbHから市販されている)を用いて全不活化三価インフルエンザ(50μgの各HAを含み、0.5%ラウレス−9でアジュバント添加されている)をそれぞれの鼻孔に200μl〜100μlの全投与量で鼻腔内投与することにより、それぞれ6匹のブタからなる3つのグループに初回抗原刺激を行った。11日目に2回目の抗原刺激用量を投与した。
【0205】
39日目にID経路(FluarixTMもしくはPBS対照)またはIM経路(FluarixTMのみ)のいずれかで動物にワクチン接種を行った。IMワクチン接種を受けた動物は、0.5mlの三価FluarixTM(A/New Caledonia H1N1株、A/Panama H3N2株、およびB/Johannesburg株に由来するHAがそれぞれ15μgずつ含まれる)を前脚に投与することにより免疫感作した。IDワクチン接種を受けた動物は、標準的針を用いて0.1mlの三価FluarixTM(各HAが3μgずつ含まれる)またはPBSを投与することにより免疫感作した。
【0206】
53日目に血液サンプルを取得し、ELISAアッセイを用いて抗インフルエンザ活性に関する試験を行った。
【0207】
この最初の免疫原性試験の結果を図1に示す。この図には、株特異的ELISAの読取値を用いたこの試験から得られた結果が示されている。
【0208】
図1の説明:
グループ1:2回のIN抗原刺激(三価50μg);三価ワクチンIM 15μg HA
グループ2:2回のIN抗原刺激(三価50μg);三価ワクチンID 3μg HA
グループ3:2回のIN抗原刺激(三価50μg);PBS ID
【0209】
この結果から、IMまたはID経路のいずれを用いても、抗原刺激されたブタに投与された三価インフルエンザワクチンの免疫原性が確証される。
【実施例8】
【0210】
アジュバント添加インフルエンザワクチンの皮内送達
プロトコール
0日目に200μ1中の5μgの三価全不活化インフルエンザウイルスを用いてモルモットに鼻腔内抗原刺激を行った。
【0211】
ワクチン接種(28日目)
プーリング(実施例6)により得られた各抗原の最終濃度が、実施例6では60μg/mlであるのに対して100μl中0.1μgの用量になるよう1.0μg/mlにしたこと以外は、実施例5および6に記載されているように、三価インフルエンザウイルス成分ワクチン1株あたりそれぞれ0.1μgのHAを含有するワクチンを調製した。ツベルクリンシリンジを用いて、100μlのアジュバント添加またはアジュバント非添加の最終三価製剤を皮内投与した。
【0212】
採血(42日目)
HIアッセイにより抗体応答を測定することにより、アジュバント添加の効果を評価した(0、28、42日目)。
【0213】
ID実験はすべて、標準的針を用いて行った。
【0214】
結果
G1〜G5は、1グループあたり5匹のモルモットからなる5つのグループを表す:
G1 ウイルス成分ワクチン 三価 チオメルサール 減量 0.1μg
G2 ウイルス成分ワクチン 三価 チオメルサール 減量 0.1μg+3D−MPL 50μg
G3 ウイルス成分ワクチン 三価 チオメルサール 減量 0.1μg+3D−MPL 10μg
G4 ウイルス成分ワクチン 三価 チオメルサール 減量 0.1μg+3D−MPLin 50μg+QS21 50μg
G5 ウイルス成分ワクチン 三価 チオメルサール 減量 0.1μg+3D−MPLin 10μg+QS21 10μg
【0215】
注記)3D−MPLin+QS21は、コレステロールを含む単ラメラ小胞を備えたアジュバント製剤であって、該単ラメラ小胞は、ジオレオイルホスファチジルコリンを含む脂質二重層を有し、QS21および3D−MPLは、脂質二重層と会合しているかまたはその中に包埋されているものである。そのようなアジュバント製剤については、EP0822831号Bに記載されている。その開示内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0216】
【0217】
この実施例に提示されたデータから、ブタを用いて先の実施例で得られた結果が確証および拡張される。三価インフルエンザワクチンのID投与を行うと、抗原刺激された動物(ブタのほかにモルモットにおいても)で強力な免疫応答が誘発される。このほか、アジュバントがこの免疫応答をさらに増大させる可能性があることが例証される。2つの異なる用量の3D−MPLin+QS21では、アジュバント非添加三価インフルエンザウイルス成分抗原でワクチン接種することにより誘発される抗体力価が著しく増大することがわかった。したがって、インフルエンザIDワクチンを良好に増強(アジュバント)することができ、得られた生成物により、ワクチン接種を受けた個体において増強された免疫応答を誘発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】株特異的ELISAの読取値を用いた免疫原性試験から得られた結果を示す。
【0219】
グループ1:2回のIN抗原刺激(三価50μg);三価ワクチンIM 15μg HA
グループ2:2回のIN抗原刺激(三価50μg);三価ワクチンID 3μg HA
グループ3:2回のIN抗原刺激(三価50μg);PBS ID
Claims (16)
- 皮内送達用の単回用量インフルエンザワクチンの製造における、三価非生インフルエンザ抗原調製物の使用。
- 抗原調製物がインフルエンザウイルス成分調製物である、請求項1記載の使用。
- インフルエンザ抗原が卵に由来するものである、請求項1または2記載の使用。
- ワクチンが少なくとも2つの株についてEU基準を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
- ワクチンが、オクチル−もしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば市販のTritonTMシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(TweenTMシリーズ)、および下記式(I)で示されるポリオキシエチレンエーテルまたはエステル:
(I) HO(CH2CH2O)n−A−R
〔式中、nは1〜50であり、Aは結合または−C(O)−であり、RはC1〜50アルキルまたはフェニルC1〜50アルキルである。〕
、ならびにこれらの2種以上の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の非イオン性サーファクタントを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。 - ワクチンが、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)とt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100)との組み合わせを含む、請求項5記載の使用。
- ワクチンが、胆汁酸もしくはコール酸、またはそれらの誘導体(デオキシコール酸ナトリウムなど)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
- ワクチンが約0.1〜約0.2mlの投与量で提供される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
- ワクチンが、存在するインフルエンザ1株あたり1〜7.5μgのヘマグルチニンの抗原用量と共に提供される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
- ワクチンが、コレステロール、サポニンおよびLPS誘導体の組み合わせを含むアジュバントなどのアジュバントをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
- ワクチンが皮内送達デバイスで提供される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
- デバイスが短針送達デバイスである、請求項11記載の使用。
- 皮内インフルエンザワクチンの製造における、以下の方法により取得可能なインフルエンザ抗原調製物の使用:
(i) 培養物からのウイルス含有物質の採取;
(ii) 採取した物質の清澄化による非ウイルス物質の除去;
(iii) 採取したウイルスの濃縮;
(iv) 非ウイルス物質から全ウイルスを分離するさらなるステップ;
(v) 密度勾配遠心ステップにおける好適な分割剤を用いた全ウイルスの分割;
(vi) 濾過による望ましくない物質の除去;
ここで、上記ステップは、記載順に行われるが、必ずしも連続的である必要はない。 - 皮内送達デバイスおよび三価非生インフルエンザワクチンを含む医薬キット。
- 皮内送達デバイスが短針デバイスである、請求項14記載の医薬キット。
- ワクチンの容量が約0.05〜0.2mlである、請求項14または15記載の医薬キット。
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