JP2003167363A - 電子写真用感光体及びその製造方法 - Google Patents

電子写真用感光体及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子写真感光体において、感光層の構成成分
中の電荷輸送材料の混入物及び混合量を特定化するとに
より、表面電位VLの劣化(上昇)を抑制して、画像濃
度低下のない、安定した画像を得ることができる電子写
真感光体、及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 電子写真感光体において、感光層の構成
成分中の電荷輸送材料CTM1のイオン化ポテンシャル
Ip(1)に対して、より小さなイオン化ポテンシャル
Ip(2)をもつ電荷輸送材料CTM2のCTM1に対
する含有率M(ppm)を特定範囲内とすることにより
VL上昇を15V以内にでき、若干の画像濃度低下に抑
える電子写真感光体。また、電子写真感光体の製造にお
いて、前回製造の電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル
が小さい場合、次に使用する塗布液を前回生産とのイオ
ン化ポテンシャルの差が0.25eV以内の電荷輸送材
料を構成材料とする塗布液にすることでΔVLを15V
以内に抑える電子写真感光体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真用感光
体、およびその製造方法に関し、詳しくは、有機材料を
含む感光層が導電性基体上に積層された感光体、および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真用感光体は、有機光導電
材料を用いた有機電子写真用感光体が、無公害、低コス
ト、材料選択の自由度などにより感光体特性を様々に設
計できる点から、数多く提案され、実用化されている。
有機電子写真用感光体の感光層は、主として有機光導電
材料を樹脂に分散させた層からなり、電荷発生材料を樹
脂に分散させた層(電荷発生層、以下「CGL」と称
す)と電荷輸送材料を樹脂に分散させた層(電荷輸送
層、以下「CTL」と称す)を積層させた構造や、電荷
発生材料(以下「CGM」と称す)および電荷輸送材料
(以下「CTM」と称す)を樹脂に分散させた単層構造
などが数多く提案されている。中でも、感光層として、
電荷発生層の上に電荷輸送層を積層させた機能分離型の
感光体は、電子写真特性や耐久性にすぐれ、広く実用化
されている。
【0003】また、近年複写機、プリンター共、マシン
本体の小型化、高速化が要求されている。すなわち、感
光体特性としては、耐摩耗性向上による長寿命化と高速
化に対応した高感度化及びコロナ放電時に発生する有害
なオゾンや窒素酸化物に対して強いこと等すべてが要求
されている。これらの要求に答えるべく、高感度でオゾ
ンや窒素酸化物への耐性に優れた、イオン化ポテンシャ
ルの大きな電荷輸送材料を用いた電子写真感光体の検討
が行われ、実用化されている。このため、高速機及び低
速機の感光体ドラムを供給する必要があり、耐久性や感
度など、特性の異なる多種の感光体ドラムの製造が行わ
れることになる。
【0004】図1は、電子写真用感光体の製造における
浸漬塗布装置を示す図である。この浸漬塗布装置は、結
着剤樹脂溶液中に電荷輸送物質を溶解して作成された塗
布液5を収納した塗布槽4、塗布槽4に対してポンプ6
を介して連通する補助タンク7、円筒状導電性基体1を
上下移動させる昇降機2およびモーター3によって構成
されている。塗布槽4において塗布液5が消費されるに
従って、補助タンク7に貯留されている塗布液5が、ポ
ンプ6を介して塗布液供給口14より、塗布槽4に供給
される。また、塗布槽4からオーバーフローした液は、
オーバーフロー槽13に受けられ、補助タンク7に送ら
れる。補助タンク7に収容された塗布液5は、粘度測定
装置10によって塗布液の粘度をモニターされ、粘度を
均一に保つ為に追加溶剤タンク9から希釈溶剤を追加し
て攪拌機8にて攪拌されている。円筒状導電性基体1
は、円筒状導電性基体把持部11にてチャッキングさ
れ、モーター3を備える昇降機2によってあらかじめ決
められた速度で鉛直方向に移動される。感光体層を形成
するため、導電性基体1は下降され、塗布槽開口部12
より、塗布槽4内に貯留される塗布液5に浸漬される。
充分浸漬された導電性基体1は、昇降機2に塗布槽4か
ら引き出され、感光層が形成される。
【0005】このような浸漬塗布装置において、異なる
電荷輸送材料を用いて2種穎以上の電子写真用感光体の
製造を行う場合、それぞれ専用の塗布槽5、補助タンク
7、配管、ポンプ等の循環系装置を用意できれば良い
が、コストが高くなるため、実際には、1つの装置で特
性の異なる多種の感光体ドラムの製造が行なわれること
になる。従って、塗布液の切換え時には、前生産で使用
した塗布液の抜き取り後、浸漬塗布装置に洗浄溶剤を満
たして循環させ、洗浄液を抜き取るという、洗浄作業が
必要となる。この時、装置を全て分解して、洗浄溶剤を
染み込ませた布等により、手拭き作業を行なうことによ
り、洗浄度を上げることができるが、時間および人件費
がかかる上、実際にはポンプ、モーターなど、分解不可
能な部分があり、前回生産での塗布液の残留は避けられ
ない。また、洗浄溶剤による循環→抜き取りを繰り返せ
ば、洗浄度は上がるが、多量の洗浄溶剤及び時間が必要
となる。
【0006】特開平9−230614号公報では、電子
写真用感光体において、下記の一般式で示される基を分
子中に有する電荷輸送材料に対して、感光層中の芳香族
第一アミンの含有量が30ppm以下であることを提案
しているが、不純物全体としての許容量については、規
定されていない。
【0007】
【化5】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】電子写真感光体を製造
するにあたり、異なる機種に対応した多種の感光層を使
用しているため、多種の塗液での塗工が行われることに
なる。このため、生産ラインにおいて使用している塗布
槽、塗液攪拌台車など塗液の循環系を清掃、管理し、塗
液を入れ換えて各塗液の塗工を行っている。しかしなが
ら、塗液の切り換えにともない、生産された電子写真感
光体において、要求される電気特性を満足できない場合
があった。同一条件で製造してもロット間での電気特性
に振れがあり、このような感光体を搭載した場合、レー
ザー露光後の感光体表面電位VLが上昇し、画像濃度が
低下するという問題が起こった。
【0009】例を示すと、の感光体の製造を行う場
合、の感光体の製造後にを製造した場合と、の感
光体の製造後にを製造した場合とで、電気特性に大き
な差があった。結果を図2に示す。本来のの感光体の
電気特性は、の後に製造した感光体と同一であるのに
対し、の後に製造した場合には、表面電位が著しく劣
化した。このの後に製造した感光体の表面電位VL
の劣化(上昇)は、電荷輸送層用塗布液切換え管理時
の、フィルターや配管部の分解不可能な部分があるた
め、その部分の感光体の残留塗布液の混入が原因であ
ると考えられた。検討の結果、感光体の電荷輸送層中
に感光体のCTMを微量添加した場合にも、表面電位
の劣化が再現した。また、感光体のCTMの同割合で
の添加では劣化はほとんど見られなかった。更に検討を
進めた結果、イオン化ポテンシャルのより小さなCTM
の添加によって著しい表面電位の劣化が見られることが
判明した。
【0010】この感度劣化の現象は、オゾンや窒素酸化
物への耐性に優れた高感度でしかもイオン化ポテンシャ
ルの高い電荷輸送材料を使用するようになったため、こ
のイオン化ポテンシャルの高い材料を構成物質とする電
荷輸送層の塗布液に、前回製造での塗工に使用された従
来のイオン化ポテンシャルのより小さな電荷輸送材料が
混入し、電荷トラップとして作用しやすくなる。このた
め、感光体の感度が低下し、画像濃度の低下を引き起こ
すと考えられる。従って、塗布液の切換え時には、前回
製造での電荷輸送材料が残留しないよう、十分に製造装
置の洗浄を行う必要があるが、洗浄度を上げるために
は、多量の洗浄溶剤が必要となりコストがかかる上、前
述のように分解不可能な部分があり、大変困難である。
【0011】
【課題を解決するための手投】かかる課題を解決すべく
本発明者らは、電荷輸送材料CTM1のイオン化ポテン
シャルIp(1)に対して、より小さなイオン化ポテン
シャルIp(2)をもつ不純物としての電荷輸送材料C
TM2のCTM1に対する含有率をM(ppm)とした
とき、イオン化ポテンシャルの差ΔIp(ΔIp=Ip
(1)−Ip(2))及びMが大きくなるにつれ、図3
に示すように、感度劣化即ちΔVLが大きくなっている
ことを見出した。(ここで、ΔVL=VL(CTM1+
CTM2)−VL(CTM1のみ)) このように、イオン化ポテンシャルの差ΔIpが大きい
ものは微量の混入であっても感度劣化ΔVLが大きい。
この感度劣化ΔVLが15V以上になると、コピーの濃
度低下が問題となるため、ΔVLを15V以内に抑える
必要がある。より好ましくは5V以内に抑えると濃度低
下のない、安定した画像を得ることができる。
【0012】さらに検討を重ねた結果、下記(式1)及
び図4−aで示す範囲内にすることによって、ΔVLを
15V以内に、更に、下記(式2)及び図4―bで示す
範囲内にすることによって、ΔVLを5V以内に抑える
ことができ、安定した電気特性を示すことを見出した。 M1≦0.29×ΔIp−5.4 ・・・(式1) M2≦0.10×ΔIp−5.4 ・・・(式2) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、M1(p
pm)=CTM2/CTM1)、M2(ppm)=CT
M2/CTM1))
【0013】また、前回製造に使用した電荷輸送材料の
イオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャ
ルをもつ電荷輸送材料を次回製造に使用する場合、清掃
を十分に行う必要がある。しかし、フィルターや配管、
ポンプなどの中は清掃が十分にできない。ここで、塗布
液の切換え時の洗浄回数と、前回製造での電荷輸送材料
の残存率との関係を図5に示した。洗浄を重ねると残存
率は低下するが、多量の洗浄溶剤と、時間が必要とな
り、コストアップとなる。
【0014】しかしここで、式1と図4−a、図5、式
2と図4−b、図5の関係より、前回製造の電荷輸送材
料のイオン化ポテンシャルが小さい場合、次に使用する
塗布液を、前回製造とのイオン化ポテンシャルの差が
0.25eV以内の電荷輸送材料を構成材料とする塗布
液にすることでΔVLを15V以内に、更に、0.20
eV以内にすることでΔVLを5V以内に抑えることが
でき、洗浄が完全ではなく、残留塗布液があっても、性
能を保持した電子写真感光体の生産が可能になることを
見出し、本発明に到達した。本発明は、このような実情
に鑑み、感光体製造時、前回の塗布液中の小さなイオン
化ポテンシャルをもつ電荷輸送材料の混入が予想される
場合においても、塗布液切換え時の洗浄コストを軽減
し、なおかつ、良好な特性を保持した、オゾンや窒素酸
化物への耐性に優れた電子写真用感光体を提供すること
を目的とするものである。
【0015】すなわち本発明は、感光層を備えた電子写
真用感光体において、前記感光層の構成成分中の電荷輸
送材料CTM1のイオン化ポテンシャルIp(1)に対
して、より小さなイオン化ポテンシャルIp(2)をも
つ電荷輸送材料CTM2のCTM1に対する含有率M1
(ppm)が、下記の(式1)で示す範囲内であること
を特徴とする電子写真用感光体であり、 M1≦0.29×ΔIp−5.4 ・・・(式1) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
(1)>Ip(2)) また、含有率M2(ppm)が、下記の(式2)で示す
範囲内であることを特徴とする電子写真用感光体であ
る。 M2≦0.10×ΔIp−5.4 ・・・(式2) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
(1)>Ip(2))
【0016】更に、感光層が少なくとも電荷発生層と電
荷輸送層からなる積層型感光体であることを特徴とする
上記電子写真用感光体等であり、電荷輸送材料CTM1
として、下記一般式[1]で示されるアミン誘導体を含
有することを特徴とする上記の電子写真用感光体であ
る。
【0017】
【化6】
【0018】更にまた本発明は、同一製造装置を用いて
異なる電荷輸送材料を用いた2種類以上の電子写真用感
光体の製造方法であって、電荷輸送材料CTM1のイオ
ン化ポテンシャルIp(1)と、その前回製造に使用し
た電荷輸送材料CTM2のより小さなイオン化ポテンシ
ャルIp(2)の差ΔIpを下記(式3)とすることを
特徴とする電子写真用感光体製造方法であり、 ΔIp≦0.25eV ・・・(式3) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
(1)>Ip(2))
【0019】また、同一製造装置を用いて異なる電荷輸
送材料を用いた2種類以上の電子写真用感光体の製造方
法であって、電荷輸送材料CTM1のイオン化ポテンシ
ャルIp(1)と、その前回製造に使用した電荷輸送材
料CTM2のより小さなイオン化ポテンシャルIp
(2)の差ΔIpを下記(式4)とすることを特徴とす
る電子写真用感光体製造方法である。 ΔIp≦ 0.20eV ・・・(式4) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
(1)>Ip(2))
【0020】更に本発明は、感光層が少なくとも電荷発
生層と電荷輸送層からなる積層型感光体であることを特
徴とする上記の電子写真用感光体製造方法であり、電荷
輸送材料のCTM1として、下記一般式[1]で示され
るアミン誘導体を含有することを特徴とする上記の電子
写真用感光体製造方法である。
【0021】
【化7】 〔式中、Arは置換基を有しても良いアリール基を表
し、Arは置換基を有しても良いフェニレン基、ナフ
チレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基を表
し、Rは水素原子、低級アルキル基または低級アルコ
キシ基を表し、Xは水素原子、置換基を有しても良いア
ルキル基または置換基を有しても良いアリール基を表
し、Yは置換基を有しても良いアリール基または下記一
般式[2]
【化8】 (式中、Rは前記と同じ基を表す。)で表される1価
の基を表す。〕
【0022】
【発明の実施の形態】本発明における有機電子写真感光
体の材料について説明する。基体としては導電性を有す
るもの、例えば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッ
ケル、ステンレス、クロム、モリブデン、バナジウム、
インジウム、チタン、金、白金等の金属及び合金材料を
用いることができ、その他にアルミニウム、アルミニウ
ム合金、酸化錫、金や酸化インジウム等を蒸着または塗
布したポリエステルフィルム、紙及び金属フィルム、導
電性粒子を含有したプラスチックや紙、ならびに導電性
ポリマーを含有するプラスチック等を用いることができ
る。これらの材料は、円筒状、円柱状、または薄膜シー
ト状に加工して用いられる。特に本発明に用いられる導
電性基体は、円筒状であることが好ましい。
【0023】感光層の形成にあたり、導電性基体の傷及
び凸凹の被覆、繰り返し使用時の帯電性の劣化防止、低
温/低湿環境下での帯電特性の改善等の理由により、導
電性基体と電荷発生層/電荷輸送層との間に下引き層を
設ける場合がある。
【0024】下引き層としては、一般にアルミニウム陽
極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等
の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニ
ルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチ
ン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド
等の有機層、または有機層に無機顔料としてアルミニウ
ム、銅、錫、亜鉛、チタンなどの金属あるいは酸化亜
鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物など
の導電性または半導電性微粒子を含有させたものが一般
に用いられている。酸化チタンの結晶形としては、アナ
ターゼ型とルチル型、アモルファスなどがあるが、いず
れを用いてもよく、また2種以上混合してもよい。酸化
チタン粒子の表面は、Al,ZrO等もしくは
その混合物などの金属酸化物で被覆させたものを用いる
ことが好ましい。下引き層に含有されるバインダー樹脂
としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニ
ルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチ
ン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド
等の樹脂を用いることができるが、好ましくはポリアミ
ド樹脂が用いられる。この理由は、バインダー樹脂の特
性として、下引き層の上に感光体層を形成する際に用い
られる溶媒に対して溶解や膨潤などが起こらないこと
や、導電性支持体との接着性に優れ、可とう性を有する
こと等の特性が必要とされるからである。ポリアミド樹
脂のうちより好ましくは、アルコール可溶性ナイロン樹
脂を用いることができる。例えば、6−ナイロン、66
−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12
−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロン
や、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキ
シエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変
性させたタイプなどがある。
【0025】本発明において下引き層用塗布液に使用さ
れる有機溶剤としては一般的な有機溶剤を使用すること
ができるが、バインダー樹脂としてより好ましいアルコ
ール可溶性ナイロン樹脂を用いる場合には、炭素数1〜
4の低級アルコール群と、例えばジクロロメタン、クロ
ロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロ
プロパン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジ
オキソラン等の他の有機溶媒よりなる群から選ばれた単
独系及び混合系の有機溶媒からなることが好ましい。こ
こで、上記の有機溶媒を混合することによりアルコール
系溶媒単独よりも酸化チタンの分散性が改善され、塗布
液の保存安定性の長期化や塗布液の再生が可能となる。
又、下引き層用塗布液中に導電性支持体を浸漬塗布して
下引き層を形成する際、下引き層の塗布欠陥やムラを防
止し、その上に形成される感光層が均一に塗布できるこ
とにより、膜欠陥の無い非常に優れた画像特性を有する
電子写真感光体を形成することができる。
【0026】下引き層の製造方法としては、上記無機顔
料に溶剤とバインダー樹脂を加えボールミル、ダイノー
ミル、超音波発振機等の分散機を用いて分散して作製し
た下引き層用塗液を用い、シートの場合にはベーカーア
プリケーター、バーコーター、キャスティング、スピン
コート等、ドラムの場合にはスプレー法、垂直リング
法、浸漬塗布法等により作製できる。
【0027】本発明の有機電子写真用感光体の感光層
は、主として有機光導電材料を樹脂に分散させた層から
なり、電荷発生材料を樹脂に分散させた層と電荷輸送材
料を樹脂に分散させた層を積層させた構造や、電荷発生
材料および電荷輸送材料を樹脂に分散させた単層構造な
どであるが、中でも、感光層としては電荷発生層の上に
電荷輸送層を積層させた機能分離型の感光体が、電子写
真特性や耐久性にすぐれ好ましい。
【0028】電荷発生層は、光照射により電荷を発生す
る電荷発生材料を主成分とし、必要に応じて公知の結合
剤、可塑剤、増感剤を含有する。電荷発生材料として
は、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物とのペリレン系
顔料、キナクリドン、アントラキノン等の多環キノン系
顔料、金属及び無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金
属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、スクエア
リウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、
及びカルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリ
フェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサ
ジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨
格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリル
カルバゾール骨格を有するアゾ顔料等が挙げられる。特
に高い電荷発生能を有する顔料としては、無金属フタロ
シアニン顔料、オキソテタニルフタロシアニン顔料、フ
ローレン環及びフルオレノン環を含有するビスアゾ顔
料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔
料が挙げられ、高い感度を有する感光体を提供すること
ができる。
【0029】また、結着剤樹脂溶液用の結着剤樹脂とし
ては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポ
リウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹
脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、
ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、これ
らの樹脂を溶解させる溶剤としては、アセトン、メチル
エチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エ
チル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、
キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホル
ムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性
溶媒等を用いることができる。
【0030】電荷発生層の作成方法としては、真空蒸着
で直接化合物を成膜する方法及び結着剤樹脂溶液中に分
散し塗布して成膜する方法が挙げられるが、構造的に後
者の方法が好ましく、結着剤樹脂溶液中への電荷発生物
質の混合分散の方法及び塗布方法は、下引き層と同様の
方法が用いられる。電荷発生層中の電荷発生材料の割合
は、30〜90重量%の範囲が好ましい。電荷発生層の
膜厚は、0.05〜5μmで好ましくは0.1〜2.5
μmである。
【0031】電荷発生層の上に設けられる電荷輸送層
は、電荷発生材料が発生した電荷を受け入れ、これを輸
送する能力を有する電荷輸送材料、結着剤を必須成分と
し、必要に応じて公知の可塑剤、増感剤、潤滑剤等を含
有する。電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカル
バゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチ
ルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデ
ヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビ
ニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチ
ルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−
ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアント
ラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェ
ニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルア
ミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリ
フェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メ
チル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物等
の電子供与性物質、或いはフルオレノン誘導体、ジベン
ゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェ
ナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チ
オキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、
フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、
テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、
ベンゾキノン等の電子受容性物質等が挙げられる。一般
式[1]で表されるアミン誘導体は、ホール輸送特性が
高いため、高移動度で高感度を維持できる。また、化合
物としてオゾンや窒素酸化物などにより損傷を受け難
い。
【0032】電荷輸送層を構成する結着剤樹脂として
は、電荷輸送材料と相溶性を有するものであれば良く、
例えば、ポリカーボネート及び共重合ポリカーボネー
ト、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミ
ド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウ
レタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリ
ルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスル
ホン樹脂等及びそれらの共重合樹脂が挙げられる。これ
らを単独または2種以上混合して用いても良い。中で
も、ビスフェノールZ型ポリカーボネート、ビスフェノ
ールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートの混
合が成膜性及び耐摩耗性、電気特性等の点で好ましい。
特に本発明では、ビスフェノールA型ポリカーボネート
とビフェニルの共重合樹脂とビスフェノールZ型ポリカ
ーボネート、ビスフェノールA型ポリカーボネートとビ
フェニルとポリシロキサンとの共重合樹脂とビスフェノ
ールZ型ポリカーボネートとの混合が好ましい。
【0033】またこれらの材料を溶解させる溶剤は、メ
タノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メ
チルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エ
チルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ク
ロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン等の脂肪
族、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロロベンゼン、
トルエン等の芳香族類等が挙げられる。本発明の電荷輸
送層用塗布液には、酸化防止剤としてビタミンE、ハイ
ドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノー
ル、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよび
それらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などを
配合して用いてもよい。
【0034】電荷輸送層用塗布液の作成は、結着剤樹脂
溶液中へ電荷輸送物質を溶解して作成され、塗布方法と
しては、下引き層及び電荷発生層と同様の方法が用いら
れる。膜厚は、10〜50μmで好ましくは15〜40
μmである。これらの感光層は前述の方法にて順次塗布
形成された後に、または各感光層に熱風または遠赤外線
等の乾燥機を用いて乾燥され、感光体形成が完了され
る。乾燥は40℃〜130℃で10分〜2時間が好まし
い。図6に、本発明について1つの実施形態である機能
分離型感光体の概略断面図を示す。図中、21は導電性
支持体(基体)を、22は電荷発生層を、23は電荷輸
送層を、24は感光層を、25は下引き層を表す。
【0035】多種の感光体を製造する場合に、使用する
CTMのイオン化ポテンシャルが、Ip(CTM1)>
Ip(CTM2)>Ip(CTM3)のときには、C
TM3→CTM2→CTM1の順で製造を計画する
など、イオン化ポテンシャルの差が小さくなるような生
産計画にすることが望ましい。そうすることで、前回製
造に使用したCTMの多少の混入があっても感度劣化が
起こらない。また、CTM3→CTM1の順で生産
をする場合には(式1)、好ましくは(式2)の範囲内
になるよう十分に清掃することにより、感度劣化を防ぐ
ことができる。
【0036】また、同一製造装置を用いて異なる電荷輸
送材料を用い多種の感光体を製造する場合、そのイオン
化ポテンシャルの差を考慮して、その差が0.25以内
になるように、好ましくは0.20以内になるように、
製造の順番を決定すれば、塗布液切換え時の洗浄コスト
を軽減し、なおかつ、良好な特性を保持した、オゾンや
窒素酸化物への耐性に優れた電子写真用感光体を提供す
ることができる。例えば、使用するCTMのイオン化ポ
テンシャルが、Ip(CTM1)>Ip(CTM2)>
Ip(CTM3)の時、CTM1とCTM3のイオン化
ポテンシャルの差が0.25より大きく、CTM1とC
TM2、CTM2とCTM3、それぞれのイオン化ポテ
ンシャルの差が0.25以内と小さい場合、CTM3
→CTM1の順に製造するのではなく、CTM3→
CTM2→CTM1の順に製造すると良い。
【0037】〔実施例〕以下に本発明を実施例などによ
り更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り、以下の実施例などに限定されるものではない。 (参考例1)導電性支持体として、φ40mm×L34
0mmのアルミニウム製円筒管を用いた。これに、酸化
チタン粒子4重量部、バインダー樹脂として共重合ナイ
ロン樹脂(東レ社製:商品名CM8000)6重量部を
メチルアルコール35重量部と1,2−ジクロロエタン
65重量部の混合溶媒に加えた後、その混合溶媒をペイ
ントシェーカーにて8時間分散して得た下引き層用塗布
液を、タンクに満たし、上記アルミ製円筒状支持体を浸
漬、引き上げて塗工し、0.9μmの下引き層をアルミ
ドラム上に形成した。また、溶媒は乾燥時に蒸発するの
で、酸化チタン粒子および共重合ナイロン樹脂が下引き
層として残り、酸化チタン粒子の含有量は40重量%、
バインダー樹脂の含有量は60重量%となる。
【0038】次いで、CuKα・特性X線回折における
ブラッグ角(2θ±0.20)が少なくとも27.30
に明確なピークを有するオキソチタニルフタロシアニン
顔料2部とポリビニルアセタール樹脂(積水化学社製:
商品名エスレックB)1部と1,3−ジオキソラン97
部とをボールミル分散機で12時間分散して、分散液を
調製し、これをタンクに満たし、前述の下引き層を設け
たアルミドラムを浸漬し、引き上げて塗布し、厚さ約
0.2μmの電荷発生層を下引き層上に形成した。さら
に、テトラヒドロフラン1200重量部に下記一般式で
表される化合物(1)100重量部とポリカーボネート
樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製:商品
名、ユーピロン(Z−200))160重量部を混合し
たものを電荷輸送層塗工用塗布液に調整した。上記のよ
うにして形成された電荷発生層上に電荷輸送層塗工用塗
布液を、浸漬塗布し、110℃で1時間乾燥を行い、厚
さ約23μmの電荷輸送層を形成し積層機能分離型感光
体を作製した。ここで、溶剤の量は、粘度・塗工性を考
慮して適時変えた。一般式で表される化合物(1)のI
pは5.58eVであった。
【0039】
【化9】
【0040】(参考例2)電荷輸送材料を下記一般式で
表される化合物(2)とした以外は参考例1と同様に感
光体を形成した。一般式で表される化合物(2)のIp
は5.42eVであった。
【0041】
【化10】
【0042】(参考例3)電荷輸送材料を下記一般式で
表される化合物(3)とした以外は参考例1と同様に感
光体を形成した。一般式で表される化合物(3)のIp
は5.23eVであった。
【0043】
【化11】
【0044】(参考例4)電荷輸送材料を下記一般式で
表される化合物(4)とした以外は参考例1と同様に感
光体を形成した。一般式で表される化合物(4)のIp
は5.06eVであった。
【0045】
【化12】
【0046】(実施例1)電荷輸送材料を化合物(1)
100重量部と化合物(2)0.75重量部とした以外
は参考例1と同様に感光体を形成した。 (実施例2)電荷輸送材料を化合物(1)100重量部
と化合物(3)0.0045重量部とした以外は参考例
1と同様に感光体を形成した。 (実施例3)電荷輸送材料を化合物(1)100重量部
と化合物(4)0.0025重量部とした以外は参考例
1と同様に感光体を形成した。 (実施例4)電荷輸送材料を化合物(1)100重量部
と化合物(2)0.25重量部とした以外は参考例1と
同様に感光体を形成した。
【0047】(実施例5)電荷輸送荷料を化合物(1)
100重量部と化合物(3)0.0015重量部とした
以外は参考例1と同様に感光体を形成した。 (実施例6)電荷輸送材料を化合物(1)100重量部
と化合物(4)0.0005重量部とした以外は参考例
1と同様に感光体を形成した。 (実施例7)電荷輸送材料を化合物(2)100重量部
と化合物(3)0.075重量部とした以外は参考例1
と同様に感光体を形成した。 (実施例8)電荷輸送材料を化合物(3)100重量部
と化合物(4)0.4重量部とした以外は参考例1と同
様に感光体を形成した。
【0048】(比較例1)電荷輸送材料を化合物(1)
100重量部と化合物(2)4重量部とした以外は参考
例1と同様に感光体を形成した。 (比較例2)電荷輸送材料を化合物(1)100重量部
と化合物(3)0.055重量部とした以外は参考例1
と同様に感光体を形成した。 (比較例3)電荷輸送材料を化合物(1)100重量部
と化合物(4)0.01重量部とした以外は参考例1と
同様に感光体を形成した。
【0049】本実施例及び比較例において使用した各化
合物のイオン化ポテンシャルの値は、表面分析装置(商
品名AC−1:理研計器(株))を用いて測定した。各
化合物のイオン化ポテンシャルの値を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】このようにして作製した電子写真感光体
を、タンデム方式を用いたフルカラー複写機(シャープ
社製:AR−C150を改造したもの)に搭載して、現
像部での感光体表面電位、具体的には帯電性をみるため
に露光プロセスを除いた暗中でのレーザー露光後の感光
体表面電位VLを測定した。これらの結果は表2に示
す。ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、ΔVL
=VL(CTM1+CTM2)−VL(CTM1のみ)
【0052】
【表2】
【0053】このように(式1)を満たす図4−aに示
す領域a内にある実施例1〜8のサンプルは、参考例1
〜4のCTM1のみの混入なしのサンプルとのVL差が
15V以内であり、画像濃度低下は問題ない程度であっ
た。しかし、(式1)を満たさない図4−aに示す領域
bにある比較例1〜3のサンプルは、VL上昇が著し
く、画像濃度もこれにともない低下した。また、(式
2)を満たす図4−bに示す領域c内にある実施例4〜
8のサンプルは、参考例1〜4のCTM1のみの混入な
しのサンプルとのVL差が5V以内であり、画像濃度低
下のない、良好な画像が得られた。
【0054】次に、生産工程における塗布終了後、塗布
液を抜き取り、浸漬塗布装置に洗浄溶剤を満たして循環
させ、洗浄液を抜き取るという、洗浄作業を繰り返し行
い、洗浄回数と、残存する電荷輸送材料の混入量の検討
を行った。図5は、塗布液切換え時の洗浄回数と、前回
生産での電荷輸送材料の残存率の関係を示したものであ
る。洗浄回数0回は、前塗布液を抜き取るのみで、洗浄
を行わずに新しい塗布液を投入した場合、洗浄回数1〜
4回は、前述の洗浄作業をそれぞれの回数行った後に新
しい塗布液を投入した場合の、今回使用する電荷輸送材
料に対する、前回生産で使用した電荷輸送材料の残存率
である。洗浄回数の増加に伴い、残存率は低下する。
【0055】ΔVL=15Vであった実施例1〜3のΔ
Ipに対し、添加率Mをプロットし、近似曲線を求める
と(式1)が求められる。−方、図5より、2回洗浄を
行った場合の、前回生産で使用した電荷輸送材料の残存
率は270ppmである。これらのことから、図4−c
より、同一製造装置を用いて異なる電荷輸送材料を用い
た2種類以上の電子写真用感光体の製造方法であって、
電荷輸送材料CTM1のイオン化ポテンシャルIp
(1)と、前回製造した電荷輸送材料CTM2のより小
さなイオン化ポテンシャルIp(2)の差ΔIpを0.
25eV以内とすることにより、前回の塗布液中の小さ
なイオン化ポテンシャルをもつ電荷輸送材料の混入が予
想される場合においても、塗布液切換え時の洗浄回数を
減らし、洗浄コストを軽減することができ、なおかつ、
良好な特性を保持した、オゾンや窒素酸化物への耐性に
優れた電子写真用感光体を提供することができる。
【0056】また、ΔVL=5Vであった実施例4〜8
のΔIpに対し、添加率Mをプロットし、近似曲線を求
めると(式2)が求められる。前述の通り、2回洗浄を
行った場合の前回生産で使用した電荷輸送材料の残存率
は270ppmであることから、図4−dより、同一製
造装置を用いて異なる電荷輸送材料を用いた2種類以上
の電子写真用感光体の製造方法であって、電荷輸送材料
CTM1のイオン化ポテンシャルIp(1)と、前回製
造した電荷輸送材料CTM2のより小さなイオン化ポテ
ンシャルIp(2)の差ΔIpを0.20eV以内とす
ることにより、前回の塗布液中の小さなイオン化ポテン
シャルをもつ電荷輸送材料の混入が予想される場合にお
いても、塗布液切換え時の洗浄回数を減らし、洗浄コス
トを軽減することができ、なおかつ、良好な特性を保持
した、オゾンや窒素酸化物への耐性に優れた電子写真用
感光体を提供することができる。
【0057】
【発明の効果】本発明の電子写真感光体においては、感
光層の構成成分中の電荷輸送材料CTM1のイオン化ポ
テンシャルIp(1)に対して、より小さなイオン化ポ
テンシャルIp(2)をもつ電荷輸送材料CTM2のC
TM1に対する含有率M(ppm)を(式1)で示す範
囲内とすることによりVL上昇を15V以内にでき、若
干の画像濃度低下に抑えることができ、また、(式2)
で示す範囲内にすることでVL上昇を5V以内にでき、
画像濃度低下のない、安定した画像を得ることができ
る。
【0058】また、本発明の電子写真感光体の製造にお
いては、前回生産の電荷輸送材料のイオン化ポテンシャ
ルが小さい場合、次に使用する塗布液を前回生産とのイ
オン化ポテンシャルの差が0.25eV以内の電荷輸送
材料を構成材料とする塗布液にすることでΔVLを15
V以内に、更に、0.20eV以内にすることでΔVL
を5V以内に抑えることができる。従って、洗浄が完全
ではなく、前回塗布液中のイオン化ポテンシャルの小さ
い電荷輸送材料の混入があった場合にも、性能を保持し
た電子写真感光体の生産が可能になり、洗浄コストを軽
減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子写真用感光体の浸漬塗布装置の概略図。
【図2】の感光体の製造について、の感光体の製造
後にを製造した場合と、の感光体の製造後にを製
造した場合との電気特性の結果を示す図。
【図3】電荷輸送材料CTM1に対する電荷輸送材料C
TM2含有率M(ppm)とイオン化ポテンシャルの差
ΔIpの関係を示す図。
【図4】図[4−a]は(式1)を満たす表面電位差ΔV
Lが15V以内となる領域aと、15V以上となる領域
bを示す図であり、図[4−b]は(式2)を満たす表面
電位差ΔVLが5V以内となる領域cと、5V以上とな
る領域dを示し、図[4−c][4−d]はそれぞれ図[4
−a][4−b]のM(ppm)の尺度を変えた図。
【図5】塗布液切換え時の洗浄回数と前回生産での電荷
輸送材料の残存率の関係を示した図。
【図6】本発明の1つの実施形態である機能分離型感光
体の概略断面図。
【符号の説明】
1 円筒状導電性基体 2 昇降機 3 モーター 4 塗布槽 5 塗布液 6 ポンプ 7 補助タンク(回収槽) 8 攪拌機 9 追加溶剤タンク 10 粘度測定装置 11 円筒状導電性基体把持部 12 塗布槽開口部 13 オーバーフロー槽 14 塗布液供給口 15 フィルタ 21 導電性支持体(基体) 22 電荷発生層 23 電荷輸送層 24 感光層 25 下引き層
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03G 5/06 315 G03G 5/06 315B 322 322 (72)発明者 森田 和茂 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 下田 嘉英 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 2H068 AA20 AA28 AA37 BA13 BA14 BA16 BA22 EA12

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 感光層を備えた電子写真用感光体におい
    て、前記感光層の構成成分中の電荷輸送材料CTM1の
    イオン化ポテンシャルIp(1)に対して、より小さな
    イオン化ポテンシャルIp(2)をもつ電荷輸送材料C
    TM2のCTM1に対する含有率M1(ppm)が、下
    記の(式1)で示す範囲内であることを特徴とする電子
    写真用感光体。 M1≦0.29×ΔIp−5.4 ・・・(式1) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
    (1)>Ip(2))
  2. 【請求項2】 感光層を備えた電子写真用感光体におい
    て、前記感光層の構成成分中の電荷輸送材料CTM1の
    イオン化ポテンシャルIp(1)に対して、より小さな
    イオン化ポテンシャルIp(2)をもつ電荷輸送材料C
    TM2のCTM1に対する含有率M2(ppm)が、下
    記の(式2)で示す範囲内であることを特徴とする電子
    写真用感光体。 M2≦0.10×ΔIp−5.4 ・・・(式2) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
    (1)>Ip(2))
  3. 【請求項3】 感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸
    送層からなる積層型感光体であることを特徴とする請求
    項1または2記載の電子写真用感光体。
  4. 【請求項4】 電荷輸送材料CTM1として、下記一般
    式[1]で示されるアミン誘導体を含有することを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用感光
    体。 【化1】 〔式中、Arは置換基を有しても良いアリール基を表
    し、Arは置換基を有しても良いフェニレン基、ナフ
    チレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基を表
    し、Rは水素原子、低級アルキル基または低級アルコ
    キシ基を表し、Xは水素原子、置換基を有しても良いア
    ルキル基または置換基を有しても良いアリール基を表
    し、Yは置換基を有しても良いアリール基または下記一
    般式[2] 【化2】 (式中、Rは前記と同じ基を表す。)で表される1価
    の基を表す。〕
  5. 【請求項5】 同一製造装置を用いて異なる電荷輸送材
    料を用いた2種類以上の電子写真用感光体の製造方法で
    あって、電荷輸送材料CTM1のイオン化ポテンシャル
    Ip(1)と、その前回製造に使用した電荷輸送材料C
    TM2のより小さなイオン化ポテンシャルIp(2)の
    差ΔIpを下記(式3)とすることを特徴とする電子写
    真用感光体製造方法。 ΔIp≦0.25eV ・・・(式3) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
    (1)>Ip(2))
  6. 【請求項6】 同一製造装置を用いて異なる電荷輸送材
    料を用いた2種類以上の電子写真用感光体の製造方法で
    あって、電荷輸送材料CTM1のイオン化ポテンシャル
    Ip(1)と、その前回製造に使用した電荷輸送材料C
    TM2のより小さなイオン化ポテンシャルIp(2)の
    差ΔIpを下記(式4)とすることを特徴とする電子写
    真用感光体製造方法。 ΔIp≦ 0.20eV ・・・(式4) (ただし、ΔIp=Ip(1)−Ip(2)、Ip
    (1)>Ip(2))
  7. 【請求項7】 感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸
    送層からなる積層型感光体であることを特徴とする請求
    項5または6記載の電子写真用感光体製造方法。
  8. 【請求項8】 電荷輸送材料のCTM1として、下記一
    般式[1]で示されるアミン誘導体を含有することを特
    徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の電子写真用感
    光体製造方法。 【化3】 〔式中、Arは置換基を有しても良いアリール基を表
    し、Arは置換基を有しても良いフェニレン基、ナフ
    チレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基を表
    し、Rは水素原子、低級アルキル基または低級アルコ
    キシ基を表し、Xは水素原子、置換基を有しても良いア
    ルキル基または置換基を有しても良いアリール基を表
    し、Yは置換基を有しても良いアリール基または下記一
    般式[2] 【化4】 (式中、Rは前記と同じ基を表す。)で表される1価
    の基を表す。〕
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