JP4129268B2 - 湿式現像用電子写真感光体および湿式現像用画像形成装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献2に記載されたポリカーボネート樹脂は、湿式現像用電子写真感光体に用いられており、所定の耐溶剤性を有しているものの、長時間使用した場合には耐溶剤性が不十分なため、電荷輸送剤等の溶出量が多く、感度特性を十分に発揮できないという問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、長時間使用した場合であっても耐溶剤性、耐磨耗性および感度特性に優れた湿式現像用電子写真感光体、およびそのような湿式現像用電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することにある。
すなわち、特定の結着樹脂と特定の正孔輸送剤とは、相溶性が優れているので、感光体相中に均一に分散されている。このことから、かかる湿式現像用電子写真感光体は、長時間使用した場合であっても、クラックが生じにくく耐溶剤性に優れるとともに、感度特性に優れることができる。また、特定のポリカーボネート樹脂を使用することにより、硬度が高くなるため優れた耐摩耗性を得ることができ、さらに、正孔輸送剤の分子量が900以上であることにより、電荷注入性に優れ、優れた感度特性を得ることができる。
すなわち、分子量が所定の範囲に制限された化合物を、湿式現像用電子写真感光体における電子輸送剤として使用することにより、電荷発生剤および正孔輸送剤との間で電子の授受が効率よく行われることから、さらに優れた感度特性を得ることができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体に、かかる電子輸送剤を含むことにより、感光体の製造が容易になるばかりか、電荷の輸送効率があがるため感度特性に優れることができる。さらに、このようにI/O値を所定範囲に制限することにより、炭化水素溶媒に対する耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体に、かかる電荷発生剤を含むことにより、長時間使用時においても、所定の感度特性を維持する湿式現像用電子写真感光体を提供することができる。
したがって、湿式現像用電子写真感光体が単層型であることにより、長時間使用した場合に所定感度を有する湿式現像用電子写真感光体を効率よく製造することができる。
したがって、湿式現像用画像形成装置に、このような湿式現像用電子写真感光体を備えることにより、長時間使用した場合であっても鮮明な画像を提供することができる。
第1の実施形態は、結着樹脂と、正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、結着樹脂として、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を含み、正孔輸送剤として、分子量を900以上の化合物を含む湿式現像用電子写真感光体である。なお、一般式(1)中のR1〜R6は、既に説明した内容である。
ただし、特に正負いずれの帯電性にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、感光体層を形成する際の被膜欠陥を抑制できることから、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の理由から、単層型に適用することがより好ましい。
(1)基本的構成
図1(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光体層14を設けたものである。
この感光体層は、例えば、一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含んだ結着樹脂と、分子量が900以上の正孔輸送剤と、電荷発生剤と、さらに必要に応じて電子輸送剤、レベリング剤等を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、生産性に優れているという特徴がある。
また、得られた単層型感光体は、特定の構造のポリカーボネート樹脂と、特定の分子量の正孔輸送剤とを含んでいることから、優れた耐溶剤性、耐磨耗性、および感度特性を有しているという特徴がある。
さらに、単層型感光体の感光体層に、電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向が見られる。
(2)−1 種類
電荷発生剤等を分散させるための結着樹脂としては、上述したように、一般式(1)で表されるポリカーボネートを使用することを特徴とする。
この理由は、かかるポリカーボネート樹脂であれば、炭化水素系溶媒に対して難溶であるとともに、撥油性も高いためである。その結果、感光体層表面と前述の炭化水素系溶媒との相互作用が小さくなって、長期間にわって、感光体層表面の外観変化が少なくなるためである。
ここで、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂の具体例として、例えば、下記式(3)〜(5)で示される化合物(Resin−A〜D)が挙げられる。
なお、式(5)で表される化合物は、記号*で表される箇所で結合しており、共重合体であることを示している。
(3)−1 種類
本発明の湿式現像用電子写真感光体に使用する正孔輸送剤としては、分子量が900以上の化合物を使用することを特徴とする。
この理由は、分子量の値がこのような数値以上であれば、特定の結着樹脂との相溶性が良好になり、また、現像液への正孔輸送剤等の溶出量が少なくなり、耐溶剤性や耐磨耗性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。また、電荷の注入性が優れるため、感度特性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
なお、かかる正孔輸送剤の分子量は、例えば、構造式をもとに算出することもできるし、あるいは、質量分析計で得られたマススペクトルを用いて測定することができる。
かかる図2から理解できるように、正孔輸送剤の分子量が大きくなるほど正孔輸送剤の溶出量が小さくなることがわかる。さらに正孔輸送剤の900以上の値になると、正孔輸送剤の溶出量が1×10-6(g/cm3)以下になり、すなわち優れた耐溶剤性を示すことがわかる。
また、図3を参照して、正孔輸送剤の溶出量と、感度変化との関係を説明する。図3の横軸には、後述する正孔輸送剤の溶出量(g/cm3)が採って示してあり、縦軸には、後述する感度評価で測定した湿式現像用積層型電子写真感光体の感度変化(V)を採って示してある。
かかる図3から理解できるように、正孔輸送剤の溶出量が1×10-6(g/cm3)以下の値になると、感度変化が4(V)以下の値になり、優れた感度特性を示すことがわかる。
よって、正孔輸送剤の分子量の値を所定以上の値に制御することにより、正孔輸送剤の溶出量を効果的に減らすことができるとともに、湿式現像用電子写真感光体の感度変化を著しく小さくすることができる。
ただし、正孔輸送剤の分子量が過度に大きくなると、感光層中での分散性が低下し、正孔輸送能が低下する場合がある。
したがって、正孔輸送剤の分子量を900〜4000の範囲内の値とすることがより好ましく、900〜2500の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
より具体的には、下記一般式(6)で表されるエナミン構造を含む化合物や、下記一般式(7)で表されるトリフェニルアミン構造を含む化合物を使用することが好ましい。
この理由は、分子内の所定箇所に特定のエナミン構造やトリフェニルアミン構造を導入した化合物を使用することにより、アイソパー(商品名)等に代表されるパラフィン系溶剤に対する耐溶剤性を著しく向上させることができるためである。したがって、湿式現像用電子写真感光体により、長期間にわたって安定した画像形成を実施することができる。
また、このような特定構造を分子末端に導入したスチルベン化合物を使用することにより、感度特性をさらに向上できるばかりでなく、機械的特性や成膜性についても向上することができるためである。
ここで、一般式(2)で表されるアミン構造を有する正孔輸送剤の具体例として、下記式(8)〜(11)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A〜D)が挙げられる。
正孔輸送剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の添加量が80重量部を超えた値になると、正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、30〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
(4)−1 種類
本発明の湿式現像用電子写真感光体に好適な電子輸送剤は、分子量が600以上であることが好ましい。
この理由は、電子輸送剤の分子量を600以上に設定することによって、図4及び図5に示すように、炭化水素溶媒に対する耐溶剤性を向上させ、感光層からの溶出を効果的に抑制できるとともに、感光層における繰り返し特性変化を著しく小さくすることができるためである。
但し、電子輸送剤の分子量が過度に大きくなると、感光層中での分散性が低下したり、正孔輸送能が低下したりする場合がある。
したがって、電子輸送剤の分子量を600〜2000の範囲内の値とすることがより好ましく、600〜1000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、電子輸送剤の分子量は、構造式を元に算出することもできるし、あるいはマススペクトルを用いて算出することができる。
なお、得られた湿式現像用電子写真感光体における帯電電位の繰り返し特性変化は以下のように測定した。まず、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させた状態で電位を測定し、初期帯電電位とした。次いで、湿式現像用電子写真感光体全体をアイソパーL(脂肪族炭化水素系溶剤)に、温度25℃、200〜2,000時間の条件で浸漬した。その後、アイソパーLから湿式現像用電子写真感光体を取り出し、700Vになるように帯電させて、次いでハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.5μJ/cm2)を感光体表面に照射し、さらに780nmの単色光を感光体表面全体に照射し除電を行った。この帯電、露光および除電の工程を2400サイクル行い、その後、帯電電位を測定しランニング後帯電電位とした。そして、初期帯電電位と、ランニング後帯電電位との差を算出し、繰返し特性変化とした。
この理由は、後述する特定のI/O値を有する結着樹脂との相互作用により、正孔輸送剤の分散性や安定性が向上し、図6に示すように、有機性が大きい炭化水素系溶媒中へ正孔輸送剤が溶出しにくくなるためである。
従って、炭化水素系溶媒中にトナー粒子が分散した現像溶液を用いた湿式画像形成装置に使用された場合でも、優れた耐溶剤性及び耐久性、さらには、図3に示すように、優れた感度変化を得ることが出来る。
ただし、かかるI/O値の値が過度に大きくなると、溶剤や結着樹脂に対する溶解性が低下して、結晶化したり、感光体の電気特性が低下したりする場合がある。従って、電子輸送剤のI/O値を0.6〜1.7の範囲内の値とすることがより好ましく、0.65〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この場合において、無機性値(I値)とは、有機化合物が有している種々の置換基や結合等の沸点への影響力の大小を、水酸基を基準に数値化したものである。具体的には、直鎖アルコールの沸点曲線と直鎖パラフィンの沸点曲線との距離を炭素数5の付近で取ると約100℃となるので、水酸基1個の影響力を数値で100と定め、この数値に基づいて、各種置換基あるいは各種結合などの沸点への影響力を数値化した値が、有機化合物が有している置換基の無機性値である。例えば、−COOH基の無機性値は150であり、2重結合の無機性値は2である。従って、ある種の有機化合物の無機性値とは、該化合物が有している各種置換基や結合等の無機性値の総和を意味する。
一方、有機性値(O値)とは、分子内のメチレン基を単位とし、そのメチレン基を代表する炭素原子の沸点への影響力を基準にして定めたものである。すなわち、直鎖飽和炭化水素の炭素数5〜10付近での炭素1個加わることに沸点上昇の平均値は20℃であるから、これを基準に、炭素原子1個の有機性値を20と定め、これを基準として、各種置換基や結合等の沸点への影響力を数値化した値が有機性値である。例えば、ニトロ基(−NO2)の有機性値は70である。従って、ある種の有機化合物の有機性値とは、該化合物が有している各種置換基や結合等の総和を意味する。
すなわち、かかる化合物は、炭素原子(有機性20)を23個有しており、有機性値は20×23=460となる。また、ナフタレン環(無機性60)を1個有し、ベンゼン環(無機性15)を2個有し、ケトン基(無機性65)を3個有していることから、無機性値は60×1+15×2+65×3=285となる。したがって、かかる化合物のI/O値は、285/460=0.6196となる。
この理由は、使用する電子輸送剤が特定の置換基を備えることにより、耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
この理由は、電子輸送剤として、特定の化合物を使用することにより、電子受容性に優れており、感度特性や耐溶剤性に優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
ここで、電子輸送剤の具体例として、下記式(12)〜(18)で表されるナフトキノン誘導体、及びアゾキノン誘導体(ETM−A〜G)等が挙げられる。
電子輸送剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる複数の電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光体として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
(5)−1 種類
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、無金属フタロシアニン(τ型またはx型)、チタニルフタロシアニン(α型またはY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、およびクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の種類を特定することにより、正孔輸送剤および電子輸送剤を併用した場合に、感度特性、電気特性および安定性等がより優れた湿式現像用電子写真感光体を提供することができるためである。
ここで、電荷発生剤の具体例として、下記式(19)〜(22)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)が挙げられる。
また、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる複数の電荷発生剤の添加量が0.2重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、かかる複数の電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、赤色および赤外ないし近赤外領域に吸収波長を有する光に対する吸光係数が低下して、感光体の感度、電気特性、安定性等がそれに伴い低下する場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を0.5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、感光体層には、上記各成分のほかに、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光体層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
また、単層型感光体における感光体層の厚さは、通常、5〜100μmの範囲内の値が好ましい。この理由は、感光層の厚さが5μm未満であると、耐久性に悪く長時間使用することができないという問題が生じるためである。また、感光層の厚さが100μmを超えると耐久性に優れるものの、感度特性が低下するという問題が生じるためである。したがって、より好ましくは10〜50μmの範囲内の値である。
そして、このような感光体層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、これらの金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、カーボンブラック等の導電性微粒子が分散されてなるプラスッチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。感光体層を塗布の方法により形成する場合には、例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル,ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独1種または2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
(1)基本的構造
図7(a)に示すように、積層型感光体20は、導電性基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、正孔輸送剤等の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製される。
また、上記構造とは逆に、図7(b)に示すように、導電性基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成する積層型20´でもよい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等については、単層型感光体と基本的に同様の内容とすることができる。ただし、積層型感光体の場合、電荷発生剤の添加量については、電荷発生層を構成する結着樹脂100重量部に対して、5〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
なお、積層型感光体における感光体層の厚さに関しては、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
第2の実施形態は、第1の実施形態の湿式現像用電子写真感光体(以下、単に、感光体と称する場合がある。)を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行うことを特徴とした湿式現像用画像形成装置である。なお、この湿式現像用画像形成装置の例では、電子写真感光体として、単層型感光体を用いた場合を想定して説明する。
すなわち、図8に示すように、かかる湿式現像用画像形成装置には、湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程を実施するための帯電器32、露光工程を実施するための露光光源33、現像工程を実施するための湿式現像器34、および転写工程を実施するための転写器35を少なくとも備えていることが好ましい。
また、感光体31は、矢印の方向に一定速度で回転しており、感光体31の表面で、次の順に電子写真プロセスが行われることになる。より詳細には、帯電器32により、感光体31が全面的に帯電され、次いで、露光光源33によって、印字パターンが露光される。次いで、湿式現像器34によって、印字パターンに対応して、トナー現像され、さらに、転写器35によって、転写材(紙)36へのトナーの転写が行われる。そして、最後に、感光体31に残った余分なトナーに対して、クリーニングブレード37による掻き落としが行われるとともに、除電光源38によって、感光体31の除電が行われることになる。
そして、感光体31において、特定のアミン構造体を有する正孔輸送剤料を使用することにより、耐溶剤性や感度特性に優れた単層型の湿式現像用電子写真感光体が得られ、長時間使用した場合であっても、優れた画像特性を維持することができる。
(1)湿式現像用電子写真感光体の作成
電荷発生剤として、式(19)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を4重量部と、正孔輸送剤として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−A)を40重量部と、電子輸送性剤料として、式(12)で表されるナフタレンカルボン酸化合物(ETM−A)を50重量部と、結着樹脂として、式(3)で表されるポリカーボネート樹脂であって、粘度平均分子量が50,000であるポリカーボネート樹脂(Resin−A)を100重量部、レベリング剤としてのジメチルシリコーンオイルであるKF−96−50CS(信越化学工業製)を0.1重量部と、溶媒としてのテトラヒドロフラン750重量部と、を収容した後、超音波分散機にて1時間混合分散させ、塗布液を作成した。
得られた塗布液を、直径30mm、長さ254mmの導電性基材(アルマイト処理済みアルミニウム素管)の全面に、ディップコート法にて塗布した。その後、140℃、20分間の条件で熱風乾燥して、膜厚22μmの単層型感光体層を有する湿式現像用電子写真感光体を得た。
また、共重合ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、オストワルド粘度計によって、極限粘度[η]を求め、Schnellの式によって、[η]=1.23×10-4M0.83より算出した。なお、[η]は、20℃で、塩化メチレン溶液を溶媒として、濃度(C)が6.0g/dm3となるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られたポリカーボネート樹脂溶液から測定することができる。
(2)−1 感度測定
得られた湿式現像用積層型電子写真感光体における感度を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させ、次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.0μJ/cm2)を露光した。露光後330msec経過後の電位を測定し、初期感度(V)とした。
得られた単層型湿式現像用電子写真感光体を、その感光体層の全面が浸るように、湿式現像の現像液として使用されるアイソパーL(イソパラフィン系溶剤、エクソン化学社製)500mlに、温度25℃、暗所下、2000時間の条件で浸漬させた。一方、正孔輸送剤の濃度を変えて、アイソパーL中に溶解させた。その状態で紫外線吸収ピーク波長における吸光度を測定し、正孔輸送剤に関する濃度−吸光度検量線を予め作成した。次いで、アイソパーLに浸漬した湿式現像用電子写真感光体について、紫外線吸収測定を行い、検量線に照らして、正孔輸送剤の紫外線吸収ピーク波長における吸光度から、正孔輸送剤の溶出量を算出した。その結果、実施例1〜13はそれぞれ溶出量が8.0×10-7g・cm-3以下であり、実用上問題がないことがわかった。
また、耐溶剤性評価後(2000時間浸漬後)の湿式現像用電子写真感光体の外観を目視にてクラックの発生の有無を観察し、下記基準に準じて外観評価を実施した。
◎:外観変化が全く見られない。
○:顕著な外観変化は見られない。
△:外観変化が少々見られる。
×:顕著な外観変化が見られる。
得られた湿式現像用電子写真感光体を、画像形成装置KM−4530(京セラミタ(株)製)を湿式現像用に改造したものに搭載し、950Vになるように帯電させて、A4サイズの紙を用いて15,000枚のコピーを行った。次いで、感光体の膜厚を測定した。そして、使用前の感光体の膜厚から、使用後の感光体の膜厚を差し引いた値を、磨耗量(μm)とした。その結果、実施例1〜3は磨耗量が1.6μm以下であり、実用上問題がないことがわかった。
実施例2〜3においては、実施例1の塗布液中の結着樹脂として、式(3)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−A)のかわりに、式(4)、(5)で表される粘度平均分子量が50,000であるポリカーボネート樹脂(Resin−B、C)をそれぞれ100重量部添加したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例1〜4においては、実施例1の塗布液中の結着樹脂として、式(3)で表されるポリカーボネート樹脂(Reisn−A)のかわりに、下記式(23)〜(26)で表される粘度平均分子量が50,000のポリカーボネート樹脂(Resin−E〜H)をそれぞれ100重量部添加したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例5〜6においては、実施例1の塗布液中の正孔輸送剤として、式(8)で表される正孔輸送剤(HTM−A)のかわりに、下記式(27)〜(28)で表される分子量が900未満の正孔輸送剤(HTM−E〜F)をそれぞれ40重量部添加したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表2に示す。
実施例4〜6においては、実施例1の塗布液中の電荷発生剤として、式(19)で表される化合物(CGM−A)のかわりに、式(20)〜(22)で表される電荷発生剤(CGM−B〜D)をそれぞれ4重量部添加したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表3に示す。
実施例7〜9においては、実施例1の塗布液中の正孔輸送剤として、式(8)で表される化合物(HTM−A)のかわりに、式(9)〜(11)で表される正孔輸送剤(HTM−B〜D)をそれぞれ40重量部添加したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表3に示す。
実施例10〜14においては、実施例1の塗布液中の電子輸送剤として、式(12)で表される化合物(ETM−A)のかわりに、式(13)〜(17)で表される電子輸送剤(ETM−B〜F)をそれぞれ50重量部添加したほかは、実施例1と同様に湿式現像用電子写真感光体を作成して、評価した。得られた結果を表3に示す。
したがって、本発明の湿式現像用電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
12:導電性基体
14:感光体層
16:バリア層
18:保護層
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
31:感光体
32:帯電器
33:露光光源
34:湿式現像器
34a:液体現像剤
34b:現像ローラ
35:転写器
36:転写材
37:クリーニングブレード
38:除電光源
39:プローブ
Claims (11)
- 結着樹脂と、正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含む感光体層を備えた湿式現像用電子写真感光体であって、
前記結着樹脂として、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂を含み、
前記正孔輸送剤として、分子量が900以上の化合物を含むことを特徴とする湿式現像用電子写真感光体。
(一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、およびR6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換または非置換の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、置換または非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換または非置換の炭素数2〜30のアルケニル基、または炭素数3〜30の縮合多環式炭化水素基である。) - 前記正孔輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 電子輸送剤をさらに含むとともに、当該電子輸送剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電子輸送剤の分子量を600以上の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電子輸送剤のI/O値(無機性値/有機性値)を0.6以上の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電荷発生剤の添加量を、前記結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記電荷発生剤として、無金属フタロシアニン(τ型またはx型)、チタニルフタロシアニン(α型またはY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、およびクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 湿式現像の現像液として使用される炭化水素系溶媒に、室温で、2000時間の条件で浸漬した場合に、正孔輸送剤の溶出量が1×10−6g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 前記感光体層が、単層型であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の湿式現像用電子写真感光体を備えるとともに、当該湿式現像用電子写真感光体の周囲に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を実施するための部位をそれぞれ配置し、かつ、現像工程において、炭化水素系溶媒にトナーを分散した液体現像剤を用いて画像形成を行うことを特徴とする湿式現像用画像形成装置。
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