JP5573191B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
近年、電子写真感光体では、機械強度の高い樹脂が使用されており、更に長寿命化も図られている。
このような電子写真感光体としては、例えば、(1)硬化型のバインダーを用いたもの(例えば、特許文献1〜5)、(2)電荷輸送性高分子を用いたもの(例えば特許文献6)、(3)熱可塑性樹脂に電荷輸送材料と無機フィラーを分散させたもの(例えば特許文献7)が提案されている。
特開昭56−51749号公報 特開昭60−247647号公報 特開平8−278645号公報 特開2002−82469号公報 特開2003−186234号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報
本発明の課題は、下記関係式(1)を満たさない場合に比べ、残留電位の上昇が抑制される電子写真感光体を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、
導電性基体上に設けられ、電荷発生材料を含んで構成される電荷発生層と電荷輸送材料を含んで構成される電荷輸送層とを有する感光層と、
前記感光層上に設けられ、電荷輸送材料の硬化物を含んで構成される保護層と、
を備え、
前記電荷発生層に含まれる電荷発生材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(CGL)、前記電荷輸送層に含まれる電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(CTL)、前記保護層に含まれる電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(OCL)としたとき、前記電荷輸送材料のIp(CGL)が5.31eVであり、前記電荷輸送層の電荷輸送材料のIp(CTL)が5.35eVであり、且つ前記保護層の電荷輸送材料のIp(OCL)が5.50eVである場合を除いて、下記関係式(1)乃至(3)を満たし、
且つ電場2v/cmにおける前記電荷輸送層の正孔移動度が、5.0×10−6(cm/V・sec)以下である電子写真感光体。
・関係式(1):Ip(OCL)>Ip(CTL)>Ip(CGL)
・関係式(2):|Ip(OCL)−Ip(CTL)|≦0.4(eV)
・関係式(3):|Ip(CTL)−Ip(CGL)|≦0.3(eV)
請求項に係る発明は、
前記保護層が、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料の少なくとも1種と、の硬化物を含んで構成され、且つ当該グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種を0.1質量%以上5質量%以下で含有すると共に、当該電荷輸送材料を90質量%以上で含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
請求項に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤を収納し、当該現像剤によって、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナー像に現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
請求項1に係る発明によれば、上記関係式(1)を満たさない場合に比べ、残留電位の上昇が抑制される。
請求項に係る発明によれば、上記関係式(2)及び(3)を満たさない場合に比べ、残留電位の上昇が抑制される。
請求項に係る発明によれば、上記構成の硬化物を含んで構成される保護層を有さない場合に比べ、長寿命化が実現される。
請求項3、4に係る発明によれば、上記関係式(1)を満たさない電子写真感光体を適用した場合に比べ、電子写真感光体の残留電位上昇に起因する画像欠陥が抑制される。
本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 他の本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
(電子写真感光体)
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた感光層と、感光層上に設けられた保護層と、を備える。
感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とを有する。電荷発生層は、電荷発生材料を含んで構成される。電荷輸送層は、電荷輸送材料を含んで構成される。一方、保護層は、電荷輸送材料の硬化物を含んで構成される。
そして、電荷発生層に含まれる電荷発生材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(CGL)、電荷輸送層に含まれる電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(CTL)、保護層に含まれる電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(OCL)としたとき、下記関係式(1)を満たすと共に、電場2v/cmにおける電荷輸送層の正孔移動度が、5.0×10−6(cm/V・sec)以下である。
・関係式(1):Ip(OCL)>Ip(CTL)>Ip(CGL)
ここで、通常の電子写真感光体では電荷輸送層及び保護層がホール輸送性であるため、下記関係式(4)を満たすことがよいとされていた。
・関係式(4):Ip(OCL)≦Ip(CTL)≦Ip(CGL)
この関係式(4)を満たすことがよいことは、電荷発生層と電荷輸送層との界面、及び電荷輸送層と保護層との界面における電荷の注入を円滑にすることで、電気特性を良好にするという考え方に基づくものである。
しかし、電荷輸送材料の硬化物により構成された保護層(所謂硬化型保護層)を有する電子写真感光体においては、関係式(4)よりも関係式(1)を満たしたほうが、電気特性の長期維持性、特に残留電位の上昇を抑制する点で優れていることが明らかになった。この詳細は明らかではないが、現在考えられる理由は次の通りである、
硬化型保護層では、その内部に反応残の官能基、又は残留ラジカルが硬化物内に残存し、硬化型保護層の電荷輸送能力は電荷輸送層よりも低くなる傾向にある。このように電荷輸送能力に差がある場合、電荷は電荷輸送層と保護層との界面に蓄積され、当該界面の内部電場が高くなることが予想される。内部電場が高くなった状態が長く続く、又は電子写真プロセスにより内部電場が高い状態が何度も繰り返されると、電荷は電荷輸送層と保護層との界面に存在する電荷輸送材料が劣化し、その結果、電気特性が悪化、特に残留電位の上昇が生じるのではないかと考えられる。
このため、感光体内(電荷発生層、電荷輸送層及び保護層)の電荷移動を遅くすることで電気特性の長期維持性、特に残留電位の上昇が抑制されると考えられる。
したがって、電場2v/cmにおける電荷輸送層の正孔移動度を5.0×10−6(cm/V・sec)以下とすると共に、関係式(1)を満たすように各層の構成材料を選択することは、電荷発生層、感光体内(電荷発生層、電荷輸送層及び保護層)の電荷移動を遅くすることを意味し、これにより、本実施形態に係る電子写真感光体では、残留電位の上昇が抑制される。加えて、それが長期に維持され易いと考えられる。
そして、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置ででは、残留電位の上昇に起因する画像欠陥(例えば、カブリ(非画像部にトナーが付着して濃度が高くなる現象))が抑制される。
特に、プロセスカートリッジや画像形成装置において、プロセススピード(被転写体の搬送速度)が遅い場合(例えば、75mm/s以下のプロセススピードの場合)、内部電場が高くなった状態が長く続き易いことから、電子写真感光体の残留電位の上昇、その結果、カブリの発生が生じ易いが、上記本実施形態に係る電子写真感光体を適用すると、当該ガブリの発生が抑制され易くなる。
一方、本実施形態に係る電子写真感光体では、上記関係式(1)と共に、下記関係式(2)及び(3)を満たすことが望ましく、より望ましくは下記関係式(2−1)及び(3−1)を満たすことである。
これら、下記関係式(2)及び(3)は、電荷発生層、電荷輸送層及び保護層の電荷移動速度を近づける、言い換えれば当該電荷移動速度を保護層の電荷移動速度に合せることを意味し、これにより、残留電位の上昇が抑制され易くなる。
・関係式(2):|Ip(OCL)−Ip(CTL)|≦0.4(eV)
・関係式(3):|Ip(CTL)−Ip(CGL)|≦0.3(eV)

・関係式(2−1):|Ip(OCL)−Ip(CTL)|≦0.3(eV)
・関係式(3−1):|Ip(CTL)−Ip(CGL)|≦0.2(eV)
また、残留電位の上昇を抑制する観点から、電場2v/cmにおける電荷発生層の正孔移動度は、3.0×10−6(cm/V・sec)以上が望ましい。
ここで、イオン化ポテンシャルは、理研計器社製大気中光電子分光装置AC−2を用いて行われた値である。
また、正孔移動度は、Time of Flight法(TOF法)に準じて、20℃/40%RHの常温常湿下で、住友重機械メカトロニクス社製「TOF−401(励起光源:窒素パルスレーザー(波長;337nm)、印加電圧;2V/cm)により測定した値である。
なお、本実施形態に係る電子写真感光体において、上記関係式を満たすためには、例えば、目的とするイオン化ポテンシャルを持つ材料を選択して実現する。また、各層に2種以上の材料を適用する場合、最も低いイオン化ポテンシャルを持つ材料の関係で、上記関係式を満たすことがよい。
また、電荷発生層の正孔移動度を上記範囲を満たすためには、目的とする正孔移動度を持つ材料を選択することで、実現される。
以下、本実施形態に係る電子写真感光体についてさらに詳細に説明する。
図1は、それぞれ本実施形態に係る電子写真感光体10の一部の断面を概略的に示している。
図1に示す電子写真感光体10は、導電性支持体4上に下引き層1が設けられ、下引き層の上に感光層として電荷発生層2及び電荷輸送層3が設けられ、さらに最表面層となる保護層5が設けられている。
以下、電子写真感光体10に基づいて、各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
−導電性基体−
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
導電性基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
−下引き層−
下引き層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
下引き層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引き層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
下引き層には、珪素化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
下引き層には、表面粗さ調整のために下引き層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引き層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
ここで、下引き層の構成として、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成が挙げられる。なお、導電性粒子は、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子が好適である。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
下引き層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引き層形成用塗布液が使用される。
また、下引き層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
下引き層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
下引き層の膜厚は、15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
ここで、図示は省略するが、下引き層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど点から好適である。
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この場合の中間層を下引き層として使用してもよい。
−電荷発生層−
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.6゜、18.3゜、23.2゜、24.2゜、27.3゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.6゜、18.3゜、23.2゜、24.2゜、27.3゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶がよい。
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば10:1から1:10までの範囲が望ましい。
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電化発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
電荷発生層形成用塗布液を下引き層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
−電荷輸送層−
電荷輸送層は、電荷輸送材料と、必要に応じて結着樹脂と、を含んで構成される。
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
こでらの中でも、電荷輸送材料としては、下記構造式(α−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(α−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
上記構造式(α−1)中、R109は、水素原子又はメチル基を示す。lは1又は2を示す。Ar106及びAr107は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(R110)=C(R111)(R112)、又は−C−CH=CH−CH=C(R113)(R114)を示し、R110乃至R114は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
ここで、上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
上記構造式(α−2)中、R115及びR115’は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。R116、R116’、R117、及びR117’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R118)=C(R119)(R120)、又は−CH=CH−CH=C(R121)(R122)を示し、R118乃至R122は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。
ここで、前記構造式(α−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(α−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(R113)(R114)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R121)(R122)」を有するベンジジン誘導体が望ましい。
電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は、例えば10:1から1:5までが望ましい。
電荷輸送層は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
電荷輸送層の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
−保護層−
保護層は、電荷輸送材料の硬化物を含んで構成され、具体的には、例えば、硬化性樹脂と電荷輸送材料とを含む硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されることがよい。
硬化性樹脂は、加熱や光等により重合して高分子の網目構造を形成し、硬化してもとに戻らなくなる架橋性の樹脂である。硬化性樹脂としては、特に、熱硬化性樹脂が好適である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
電荷輸送材料としては、特に制限はないが、硬化性樹脂と相溶するものが望ましく、さらに、用いる硬化性樹脂と化学結合を形成するものがより望ましい。硬化性樹脂と化学結合を形成する反応性官能基を有する電荷輸送性有機化合物としては、例えば、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つものが好適に挙げられる。
ここで、保護層は、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料の少なくとも1種と、の硬化物を含んで構成され、且つ当該グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種を0.1質量%以上5質量%以下で含有すると共に、当該電荷輸送材料を90質量%以上で含有することがよい。
つまり、保護層は、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料の少なくとも1種と、の硬化物を含んで構成されることがよい。つまり、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ持つ電荷輸送材料(以下、「特定の電荷輸送材料」という場合がある。)の少なくとも1種と、を含み、且つ且つ当該グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種を0.1質量%以上5質量%以下で含有すると共に、当該電荷輸送材料を90質量%以上で含有する塗布液を用いた硬化物を含んで構成されることがよい。
この硬化物を含んで構成される保護層は、上記各関係式を満たすと共に、電荷輸送能を確保しつつ、厚膜化が実現される。このため、例えば、表面付着物(例えば放電生成物等)を除去する目的で、保護層を削りながら使用する方式の画像形成装置に電子写真感光体を適用しても、長寿命化が実現される。
まず、グアナミン化合物について説明する。
グアナミン化合物は、グアナミン骨格(構造)を有する化合物であり、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
グアナミン化合物としては、特に下記一般式(A)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(A)で示される化合物は、1種単独で用いもよいが、2種以上を併用してもよい。特に、一般式(A)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上する。

一般式(A)中、Rは、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。RからRは、それぞれ独立に水素、−CH−OH、又は−CH−O−Rを示す。Rは、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。
一般式(A)において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以下8以上であり、より望ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分岐状であってもよい。
一般式(A)中、Rを示すフェニル基は、炭素数が6以上10以下であるが、より望ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、Rを示す脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より望ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
一般式(A)中、RからRを示す「−CH−O−R」において、Rを示すアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、望ましくは炭素数が1以下8以上であり、より望ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分岐状であってもよい。望ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(A)で示される化合物としては、特に望ましくは、Rが炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、RからRがそれぞれ独立に−CH−O−Rを示す化合物である。また、Rは、メチル基又はn−ブチル基から選ばれることが望ましい。
一般式(A)で示される化合物は、例えば、グアナミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、日本化学会編、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成される。
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例として例示化合物:(A)−1から例示化合物:(A)−42を示すが、本実施形態はこれらに限られるわけではない。また、以下の具体例は単量体であるが、これら単量体を構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。尚、以下の例示化合物において、「Me」はメチル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基をそれぞれ示す。





また、一般式(A)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126(以上大日本インキ社製)、ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000(以上日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
また、一般式(A)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
次に、メラミン化合物について説明する。
メラミン化合物としては、メラミン骨格(構造)であり、特に下記一般式(B)で示される化合物及びその多量体の少なくとも1種であることが望ましい。ここで、多量体は、一般式(A)と同様に、一般式(B)で示される化合物を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。なお、一般式(B)で示される化合物又はその多量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、前記一般式(A)で示される化合物又はその多量体と併用してもよい。特に、一般式(B)で示される化合物は、2種以上混合して用いたり、それを構造単位とする多量体(オリゴマー)として用いたりすると、溶剤に対する溶解性が向上する。

一般式(B)中、RからR11はそれぞれ独立に、水素原子、−CH−OH、−CH−O−R12、−O−R12を示し、R12は炭素数1以上5以下の分岐してもよいアルキル基を示す。当該アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
一般式(B)で示される化合物は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法で合成される(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページのメラミン樹脂と同様に合成される)。
以下、一般式(B)で示される化合物の具体例として例示化合物:(B)−1から例示化合物:(B)−8を示すが、本実施形態はこれらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。

一般式(B)で示される化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日本油脂社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(大日本インキ社製)、ユーバン2020(三井化学社製)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業社製)、ニカラックMW−30(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
また、一般式(B)で示される化合物(多量体を含む)は、合成後又は市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
次に、特定の電荷輸送材料について説明する。特定の電荷輸送材料としては、例えば、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つものが好適に挙げられる。特に、特定の電荷輸送材料としては、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基を少なくとも2つ(さらには3つ)持つ電荷輸送材料が好適に挙げられる。この如く、特定の電荷輸送材料に反応性官能基(当該置換基)が増えることで、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、特にブレード部材等の異物除去部材を用いた際の電子写真感光体の回転トルクが低減され、異物除去部材の摩耗の抑制や、電子写真感光体の磨耗が抑制される。この理由の詳細は不明であるが、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られることから、電子写真感光体の極表面の分子運動が抑制されてブレード部材やキャリアの表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
特定の電荷輸送材料としては、異物除去部材の摩耗の抑制や、電子写真感光体の磨耗を抑制する観点から、下記一般式(I)で示される化合物であることが望ましい。
F−((−R13−X)n1(R14n2−Y)n3 (I)
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は0又は1を示し、n3は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。
一般式(I)中、Fを示す正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
そして、一般式(I)で示される化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。一般式(II)で示される化合物は、特に、電荷移動度、酸化などに対する安定性等に優れる。

一般式(II)中、ArからArは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R13−X)n1(R14n2−Yを示し、cはそれぞれ独立に0又は1を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は0又は1を示し、Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH、−NH、−SH、又は−COOHを示す。
一般式(II)中、Dを示す「−(−R13−X)n1(R14n2−Y」は、一般式(I)と同様であり、R13及びR14はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基である。また、n1として望ましくは、1である。また、n2として望ましくは、1である。また、Xとして望ましくは、酸素である。また、Yとして望ましくは水酸基である。
なお、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn3に相当し、望ましくは、2以上4以下であり、さらに望ましくは3以上4以下である。
また、一般式(I)や一般式(II)において、Dの総数を一分子中に2以上4以下、望ましくは3以上4以下とすると、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られ、特に異物除去用のブレード部材を用いた際の電子写真感光体の回転トルクが低減され、ブレード部材の摩耗の抑制や、電子写真感光体の磨耗が抑制されるこの詳細は不明であるが、前述したように、反応性官能基の数が増すことで、架橋密度の高い硬化膜が得られ、電子写真感光体の極表面の分子運動が抑制されてブレード部材やキャリアの表面分子との相互作用が弱まるためと推測される。
一般式(II)中、ArからArとしては、下記式(1)から(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)から(7)は、各ArからArに連結され得る「−(D)」と共に示す。

式(1)から(7)中、R15は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R16からR18はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、D及びcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。

式(8)から(9)中、R19及びR20はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)から(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。

式(10)から(17)中、R21及びR22はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
上記式(16)から(17)中のWとしては、下記(18)から(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。

また、一般式(II)中、Arは、kが0のときはArからArの説明で例示された上記(1)から(7)のアリール基であり、kが1のときはかかる上記(1)から(7)のアリール基から水素原子を除いたアリーレン基である。
一般式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。







ここで、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の含有量(塗布液における固形分濃度)は、0.1質量%以上5質量%以下であることがよいが、望ましくは1質量%以上3質量%以下である。この固形分濃度が、0.1質量%未満であると、緻密な膜となりにくいため十分な強度が得られ難く、5質量%を超えると電気特性や耐ゴースト(画像履歴による濃度ムラ)性が悪化することがある。
一方、特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種の含有量(塗布液における固形分濃度)は、90質量%以上であることがよいが、望ましくは94質量%以上である。この固形分濃度が90質量%未満であると電気特性が悪化するおそれがある。なお、この固形分濃度の上限は、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種や、他の添加剤が有効に機能する限り限定されるものではなく、多いほうが望ましい。
以下、保護層についてさらに詳細に説明する。
保護層には、グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種と特定の電荷輸送性材料(一般式(I)で示される化合物)との架橋物と共に、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂などを混合して用いてもよい。また、強度を向上させるために、スピロアセタール系グアナミン樹脂(例えば「CTU−グアナミン」、味の素ファインテクノ(株)製)など、一分子中の官能基のより多い化合物を当該架橋物中の材料に共重合させることも効果的である。
また、保護層には、放電生成ガスを吸着しすぎないように添加することで放電生成ガスによる酸化を効果的に抑制する目的から、フェノール樹脂などの他の熱硬化性樹脂を混合して用いてもよい。
また、保護層には界面活性剤を添加することが望ましく、用いる界面活性剤としては、フッ素原子、アルキレンオキサイド構造、シリコーン構造のうち少なくとも1種類以上の構造を含む界面活性剤であれば特に制限はないが、上記構造を複数有するものが電荷輸送性有機化合物との親和性・相溶性が高く保護層用塗布液の成膜性が向上し、保護層のシワ・ムラが抑制されるため、好適に挙げられる。
また、保護層には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、カップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。この化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
また、保護層の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度制御、トルク低減、磨耗量制御、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
ここで、アルコールに可溶な樹脂とは、炭素数5以下のアルコールに1質量%以上溶解する樹脂を意味する。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が挙げられる。
保護層には、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
更に、保護層には、残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。
また、保護層には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。
保護層は、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、特定の電荷輸送性材料の少なくとも1種とを、酸触媒を用いて硬化させた硬化膜が望ましい。酸触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、及び芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが望ましい。
ここで、触媒の配合量は、上記グアナミン化合物(一般式(A)で示される化合物)及びメラミン化合物(一般式(B)で示される化合物)から選択される少なくとも1種の量(塗布液における固形分濃度)に対し、0.1質量%以上50質量%以下の範囲であることが望ましく、特に10質量%以上30質量%以下が望ましい。この配合量が上記範囲未満であると、触媒活性が低すぎることがあり、上記範囲を超えると耐光性が悪くなることがある。なお、耐光性とは、感光層が室内光などの外界からの光にさらされたときに、照射された部分が濃度低下を起こす現象のことを言う。原因は、明らかではないが、特開平5−099737号公報にあるように、光メモリー効果と同様の現象が起こっているためであると推定される。
以上の構成の保護層は、上記成分を混合した保護層形成用塗布液を用いて形成される。保護層形成用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じて溶剤を用いて行ってもよい。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用されるが、望ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤としては、特に、少なくとも1種以上の水酸基を持つ溶剤(例えば、アルコール類等)を用いることがよい。
また、上記成分を反応させて塗布液を得るときには、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温(例えば25℃)以上100℃以下、望ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、望ましくは1時間以上50時間以下加温しても良い。また、この際に超音波を照射することも望ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗膜欠陥が少なく、厚さのバラツキが少ない膜が得られやすくなる。
そして、保護層形成用塗布液を、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法により塗布し、必要に応じて例えば温度100℃以上170℃以下で加熱して硬化させることで、保護層が得られる。
なお、本実施形態に係る電子写真感光体において、電荷発生層と電荷輸送層とで構成される感光層の膜厚は18μm以上23μm以下で、保護層の膜厚は5μm以上10μmであることがよい。
(画像形成装置/プロセスカートリッジ)
図2は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、図2に示すように、例えば、矢印Aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電させる帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、露光装置30により形成された静電潜像に現像剤に含まれるトナーを付着させて電子写真感光体10の表面にトナー像を形成する現像装置40(現像手段の一例)と、記録紙P(被転写媒体)をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて記録紙Pに電子写真感光体10上のトナー像を転写させる転写装置50と、電子写真感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70(トナー除去手段の一例)とを備える。そして、トナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、トナー像を定着させる定着装置60が設けられている。
以下、本実施形態に係る画像形成装置101における主な構成部材の詳細について説明する。
−帯電装置−
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触型帯電器がよい。
−露光装置−
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
−現像装置−
現像装置40は、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置された現像ロール41が備えられた構成が挙げられる。現像装置40としては、2成分現像剤により現像する装置であれば、特に制限はなく、周知の構成が採用される。
ここで、現像装置40に使用される現像剤について説明する。
現像剤は、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤が採用される。
まず、トナーについて説明する。
トナーは、例えば、結着樹脂、着色剤、及び必要に応じて離型剤等の他の添加剤を含むトナー粒子と、必要に応じて外添剤と、を含んで構成される。
トナー粒子は、平均形状係数(形状係数=(ML/A)×(π/4)×100で表される形状係数の個数平均、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより望ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
トナー粒子は、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナー粒子が使用される。
また上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
そして、トナーは、上記トナー粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
また、トナーは、2成分現像剤として用いられる場合、キャリアとの混合割合は、周知の割合で設定する。なお、キャリアとしては、特に制限はないが、例えば、キャリアとしては、磁性粒子の表面に樹脂コーティングを施したものが好適に挙げられる。
−転写装置−
転写装置50としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
−クリーング装置−
クリーニング装置70は、例えば、筐体71と、クリーニングブレード72と、クリーニングブレード72の電子写真感光体10回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシ73と、を含んで構成されている。また、クリーニングブラシ73には、例えば、固形状の潤滑剤74が接触して配置されている。
以下、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印Aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置20により負に帯電する。
帯電装置20によって表面が負に帯電した電子写真感光体10は、露光装置30により露光され、表面に静電潜像が形成される。
電子写真感光体10における静電潜像の形成された部分が現像装置40に近づくと、現像装置40(現像ロール41)により、静電潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
トナー像が形成された電子写真感光体10が矢印Aに方向にさらに回転すると、転写装置50によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
画像が形成された記録紙Pは、定着装置60でトナー像が定着される。
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、図3に示すように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、及びクリーニング装置70を一体に収容させたプロセスカートリッジ101Aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ101Aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置101に脱着させるものである。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10を備えてえればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、転写装置50、及びクリーニング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体10の周囲であって、転写装置50よりも電子写真感光体10の回転方向下流側でクリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置20よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、電子写真感光体10の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、記録紙Pに転写する中間転写方式の画像形成装置を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。但し、実施例2、6、8、10は、参考例に該当する。
[電荷発生層の形成]
(電荷発生層1)
電荷発生材料として、イオン化ポテンシャルが5.31eVで、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを用い、その15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、下引き層上に浸漬塗布し、100℃、10分乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
(電荷発生層2)
電荷発生材料として、イオン化ポテンシャルが5.40eVで、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.6゜、18.3゜、23.2゜、24.2゜、27.3゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニンを用い、その15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、下引き層上に浸漬塗布し、100℃、10分乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
[電荷輸送層の形成]
(電荷輸送層1)
電荷輸送材料としてN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン38質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)62質量部とをテトロヒドロフラン220質量部及びモノクロロベンゼン70質量部に十分に溶解混合した塗布液を、電荷発生層まで塗布したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、125℃、60分で乾燥することにより、膜厚22μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送材料のIpは5.35eV、電荷輸送層の正孔移動度は3.5×10−6(cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層2)
電荷輸送材料としてN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン35質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)65質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。この電荷輸送材料のIpは5.35eV、電荷輸送層の正孔移動度は1.2×10−6(cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層3)
電荷輸送材料としてN,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン35質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)65質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。この電荷輸送材料のIpは5.46eV、電荷輸送層の正孔移動度は3.7×10−6(cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層4)
電荷輸送材料としてN,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン30部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)70質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。この電荷輸送材料のIpは5.46eV、電荷輸送層の正孔移動度は1.0×10−6 (cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層5)
電荷輸送材料としてN,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン30質量部とN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン15質量部との混合物、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)55質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。このように2種類の電荷輸送材料料を混合した場合は、電荷の注入という観点から、イオン化ポテンシャルの小さい材料の値を採用し、電荷輸送材料のIpは5.35eV、電荷輸送層の正孔移動度は4.8×10−6(cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層6)
電荷輸送材料として4,4‘−ビス(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)−トリフェニルアミンと4,4’,4‘’−トリス(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)−トリフェニルアミンとの9:1混合物40質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)60質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。このように2種類の電荷輸送材料料を混合した場合は、電荷の注入という観点から、イオン化ポテンシャルの小さい材料の値を採用し、電荷輸送材料のIpは5.39eV、電荷輸送層の正孔移動度は1.9×10−5 (cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層7)
電荷輸送材料として4,4‘−ビス(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)−トリフェニルアミンと4,4’,4‘’−トリス(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)−トリフェニルアミンの9:1混合物35質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)65質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。このように2種類電荷輸送材料料を混合した場合は、電荷の注入という観点から、イオン化ポテンシャルの小さい材料の値を採用し、電荷輸送材料のIpは5.39eV、電荷輸送層の正孔移動度は8.7×10−6(cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層8)
電荷輸送材料として下記構造式で示される化合物A35質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)70質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。この電荷輸送材料のIpは5.65eV、電荷輸送層の正孔移動度は4.5×10−6(cm/V・sec)であった。
(電荷輸送層9)
電荷輸送材料として下記構造式で示される化合物B37質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(TS2030:粘度平均分子量30,000:帝人化成社製)70質量部とした以外は電荷輸送層1と同様に電荷輸送層を形成した。この電荷輸送材料のIpは5.20eV、電荷輸送層の正孔移動度は7.5×10−6(cm/V・sec)であった。
[保護層の形成]
(保護層1)
電荷輸送材料として上記(I−19)で示される化合物90質量部、上記(B)−2で示されるメラミン化合物(日本カーバイト社製ニカラックMW−390)10質量部を、t−BuOH 200質量部に溶解させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.5質量部加えた。得られた塗布液を電荷輸送層まで塗布したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、160℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成した。上記(I−19)で示される化合物のイオン化ポテンシャルは5.53eVであった。
(保護層2)
電荷輸送材料として上記(I−26)で示される化合物93質量部、上記(B)−2で示されるメラミン化合物(日本カーバイト社製ニカラックMW−390)7質量部を、t−BuOH 200質量部に溶解させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.5質量部加えた。得られた塗布液を電荷輸送層まで塗布した支持体上に浸漬塗布し、160℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成した。上記(I−26)で示される化合物のイオン化ポテンシャルは5.44eVであった。
(保護層3)
電荷輸送材料として上記(I−8)で示される化合物95質量部、上記(B)−2で示されるメラミン化合物(日本カーバイト社製ニカラックMW−390)5質量部を、t−BuOH 200質量部に溶解させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.5質量部加えた。得られた塗布液を電荷輸送層まで塗布した支持体上に浸漬塗布し、160℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成した。上記(I−8)で示される化合物のイオン化ポテンシャルは5.77eVであった。
(保護層4)
電荷輸送材料として上記(I−8)で示される化合物45質量部、電荷輸送材料として上記(I−16)で示される化合物45質量部、上記(B)−2で示されるメラミン化合物(日本カーバイト社製ニカラックMW−390)10質量部を、t−BuOH 200質量部に溶解させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.5質量部加えた。得られた塗布液を電荷輸送層まで塗布した支持体上に浸漬塗布し、160℃、40分で乾燥することにより、膜厚5μmの保護層を形成した。このように2種類電荷輸送材料料を混合した場合は、電荷の注入という観点から、イオン化ポテンシャルの小さい材料の値を採用し、上記(I−16)で示される化合物のIpは5.50eVであった。
[実施例1]
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.5質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
表面処理を施した酸化亜鉛60質量部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175:住友バイエルンウレタン社製)15質量部とブチラール樹脂「エレックBM−1」(積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部を添加し、下引き層塗布液を得た。
この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、175℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの評価1用の下引き層を得た。
また、直径30mm、長さ404mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、175℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの評価2用の下引き層を得た。
次に、それぞれの下引き層が形成されたアルミニウム基体上に、上記各層の形成で示した電荷発生層1、電荷輸送層1、保護層1を順次形成した。
このようにして電子写真感光体を得た。
[実施例2〜11、比較例1〜5]
実施例1において、下引き層が形成されたアルミニウム基体上に、表1に従って、上記各層の形成で示した電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次形成して、電子写真感光体を得た。
[評価1]
得られた電子写真感光体(評価1用の下引き層を形成した電子写真感光体)を富士ゼロックス社製DocuCentre 1010に搭載し、28℃/80%の高温高湿下で1日3万枚、連続5日間で15万枚の画像をプリントし、プリントしながら、電子写真感光体の残留電位をDocuCentre 1010に内蔵の電位計で測定した。また、プリントした画質の評価も行った。
結果を表2に示す。
[評価2]
得られた電子写真感光体(評価2用の下引き層を形成した電子写真感光体)を富士ゼロックス社製DocuCentre Color 400に搭載し、28℃/80%の高温高湿下で、最も低速の52mm/sで白紙をプリントし、プリントした画質(かぶり)の評価も行った。
結果を表2に示す。
−電子写真感光体の残留電位−
電子写真感光体の残留電位については、下記評価基準で評価を行った。
◎: 80V以下
○: 80Vを超え120V以下
△: 120Vを超え160V以下
×: 160Vを超える
−画質の評価−
評価1の画質評価は、DocuCentre 1010にて濃度20%、40%、60%ハーフトーンをプリントし、残留電位上昇に起因する濃度ムラを、15万枚プリント後の画質として、下記評価基準で評価を行った。
○:濃度ムラ発生なし
△:濃度ムラ若干発生(実使用上問題なし)
×:濃度ムラ発生(実使用に堪えられない)
また、評価2の画質評価は、DocuCentre Color 400にて最も低速の52mm/sのプロセス速度にて白紙をプリントしカブリの有無を、下記評価基準で評価を行った。
○:カブリ発生なし
△:カブリ若干発生 (実使用上問題なし)
×:カブリ発生(実使用に堪えられない)
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、電子写真感光体の残留電位、画質につき、良好な結果が得られることがわかる。
また、本実施例では、評価1と評価2との比較から、プロセススピードが遅い画像形成装置に適用しても、電子写真感光体の残留電位、画質につき、良好な結果が得られることがわかる。
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性支持体、5 保護層、6 単層型感光層、10 電子写真感光体、11 筐体、20 帯電装置、30 露光装置、40 現像装置、41 現像ロール、50 転写装置、60 定着装置、70 クリーニング装置、71 筐体、72 クリーニングブレード、72A 支持部材、73 クリーニングブラシ、74 潤滑剤、101A プロセスカートリッジ、101 画像形成装置

Claims (4)

  1. 導電性基体と、
    導電性基体上に設けられ、電荷発生材料を含んで構成される電荷発生層と電荷輸送材料を含んで構成される電荷輸送層とを有する感光層と、
    前記感光層上に設けられ、電荷輸送材料の硬化物を含んで構成される保護層と、
    を備え、
    前記電荷発生層に含まれる電荷発生材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(CGL)、前記電荷輸送層に含まれる電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(CTL)、前記保護層に含まれる電荷輸送材料のイオン化ポテンシャル(eV)をIp(OCL)としたとき、前記電荷輸送材料のIp(CGL)が5.31eVであり、前記電荷輸送層の電荷輸送材料のIp(CTL)が5.35eVであり、且つ前記保護層の電荷輸送材料のIp(OCL)が5.50eVである場合を除いて、下記関係式(1)乃至(3)を満たし、
    且つ電場2v/cmにおける前記電荷輸送層の正孔移動度が、5.0×10−6(cm/V・sec)以下である電子写真感光体。
    ・関係式(1):Ip(OCL)>Ip(CTL)>Ip(CGL)
    ・関係式(2):|Ip(OCL)−Ip(CTL)|≦0.4(eV)
    ・関係式(3):|Ip(CTL)−Ip(CGL)|≦0.3(eV)
  2. 前記保護層が、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH、−NH、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送材料の少なくとも1種と、の硬化物を含んで構成され、且つ当該グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種を0.1質量%以上5質量%以下で含有すると共に、当該電荷輸送材料を90質量%以上で含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体を備え、
    画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    トナーを含む現像剤を収納し、当該現像剤によって、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナー像に現像する現像手段と、
    前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
    を備える画像形成装置。
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