以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当する部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
まず、本発明の電子写真感光体について詳述する。図1は本発明の電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した電子写真感光体1は、感光層3において電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられたいわゆる機能分離型感光体である。具体的には、図1に示した感光体1は、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層7がこの順序で積層された構成を有している。そして、本実施形態においては、保護層7が第1の機能層に相当し、電荷輸送層6が第2の機能層に相当する。すなわち、保護層7及び電荷輸送層6は、保護層7の形成時の塗膜の乾燥温度から20℃まで冷却したときの収縮量が上記式(A)で表される条件を満たすものである。
次に、図1に示した電子写真感光体1を構成する各要素について説明する。
導電性基体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。
また、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体2の表面を粗面化することが好ましく、その場合の中心線平均粗さRaは0.04μm〜0.5μmが好ましい。粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、あるいは、回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化などが好ましく、また、支持体表面そのものを粗面化することなく導電性、あるいは半導電性粉体を樹脂層中に分散させた層を支持体表面上に形成し、該層中に分散させる微粒子により粗面化する方法も好ましく用いられる。Raが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られなくなり、Raが0.5μmより大きいと、被膜を形成しても画質が粗くなって不適である。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基材の表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
陽極酸化処理はアルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
陽極酸化膜の膜厚は0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下の様に実施される。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が、10〜11質量%の範囲、クロム酸が3〜5質量%の範囲、フッ酸が0.5〜2質量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は、13.5〜18質量%の範囲が好ましい。処理温度は、42〜48℃であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
ベーマイト処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬するか、90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚については0.1〜5μmが好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
また、下引き層4に用いられる材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物が挙げられる。これらの中でも有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。
また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。
さらに、従来下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
また、下引き層4中には電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が上げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引き層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため95質量%以下、好ましくは90質量%以下で使用される。
また、下引き層4中には、電気特性の向上や光散乱性の向上などの目的により、各種の有機化合物の微粉末もしくは無機化合物の微粉末を添加することができる。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やポリエチレンテレフタレート樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子などが有効である。添加微粉末の粒径は0.01〜2μmのものが用いられる。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は下引き層6の固形分の総質量に対して、質量比で10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
下引き層4は、上記の構成材料を所定の溶剤に混合/分散して得られる塗布液を導電性基体2上に塗布し、乾燥させることにより形成可能である。混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いる常法が適用される。また、溶剤としては、有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、下引き層4形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。乾燥は、溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。下引き層4の厚みは0.01〜30μm、好ましくは0.05〜25μmが好ましい。
なお、下引き層4は必ずしも設けなくてもよいが、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った基体は、基体の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引き層4を形成することが好ましい。
電荷発生層5は電荷発生材料を含んで構成される。電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、ジブロモアントアントロンなどの縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料などの有機顔料や三方晶セレン、酸化亜鉛などの無機顔料など公知のものを使用することができるが、特に380〜500nmの露光波長を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料、三方晶セレン、ジブロモアントアントロンなどが好ましい。その中でも、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
また、電荷発生層5は結着樹脂を含んでもよい。結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は(重量比)は10:1〜1:10の範囲が好ましい。
電荷発生層5は、上記の構成材料を所定の溶媒に混合/分散させた塗布液を下引き層4上に塗布し、乾燥させることによって形成可能である。混合/分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって該の結晶型が変化しない条件が必要とされる。さらにこの混合/分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。また、用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。電荷発生層5の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。
電荷輸送層6は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、モビリティーの観点から、下記一般式(XII−1)、(XII−2)又は(XII−3)で示される化合物が好ましい。
ここで、上記式(XII−1)中、R
17は、水素原子又はメチル基を、kは1又は2を、Ar
6及びAr
7はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基、−C
6H
4−C(R
18)=C(R
19)(R
20)、又は−C
6H
4−CH=CH−CH=C(Ar)
2を表し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。R
18、R
19及びR
20はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
ここで、上記式(XII−2)中、R
21及びR
22はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R
23、R
24、R
25及びR
26はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C
6H
4−C(R
18)=C(R
19)(R
20)、又は、−C
6H
4−CH=CH−CH=C(Ar)
2を、p、q、r及びsはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。R
18、R
19及びR
20はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
ここで、上記式(XII−3)中、R27は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R28、R29、R30及びR31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
電荷輸送層6に用いられる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。本発明では、電子特性や強度等の観点から、ポリカーボネート樹脂がより好ましく、電荷輸送層6と保護層7との接着性を向上させる点から、ポリカーボネートの平均分子量を高くすることが望ましい。具体的には、ポリカーボネートの粘度平均分子量は、30000以上であることが好ましく、40000以上がより好ましい。また、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:5が好ましいが、接着性を向上させる点から、結着樹脂の割合を多くすることが好ましく、配合比(重量比)は1:1〜1:5がより好ましい。
また、低分子電荷輸送材料と結着樹脂とを併用する代わりに、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層6は、上記構成材料を含有する塗布液を電荷発生層5上に塗布し、乾燥させることによって形成可能である。電荷輸送層6の塗布液に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。なお、電荷輸送層6と保護層7との接着性を保つためには乾燥後に溶剤がなるべく残らないようにすることが望ましく、具体的には、残留溶剤が1%以下となるように十分に高温で溶剤を蒸発させることが好ましい。電荷輸送層6の膜厚は、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
保護層7は、機械強度を持たせるため、電荷輸送性を有する架橋膜であることが好ましい。かかる架橋膜としては、例えば、電荷輸送性を有するフェノール樹脂架橋膜、エポキシ樹脂架橋膜、シロキサン樹脂架橋膜、ウレタン樹脂膜などが挙げられる。これらの中でも、電荷輸送性を有するフェノール樹脂架橋膜が好ましく、少なくともメチロール基を有するフェノール誘導体の1種以上と、かつ、電荷輸送成分として水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基、アミノ基のから選択される置換基1種を少なくとも1つ以上含有する電荷輸送性化合物の少なくとも1種以上からなる架橋膜がより好ましい。
メチロール基を有するフェノール誘導体としては、レゾルシン、ビスフェノールなど、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノールなどの水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZなどのビスフェノール類、ビフェノール類など、フェノール構造を有する化合物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等を酸、あるいは、アルカリ触媒下で反応させ、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類、トリメチロールフェノール類のモノマー、及びそれらの混合物、又はそれらをオリゴマー化されたもの、およびモノマーとオリゴマーの混合物を作製する。このうち、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子がオリゴマー、それ以下のものがモノマーである。この時用いられる酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸などが用いられ、アルカリ触媒として、NaOH、KOH、Ca(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。アミン系触媒として、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等あるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる場合が多いため、酸で中和するか、シリカゲルなどの吸着剤や、イオン交換樹脂などと接触させることにより不活性化、あるいは、除去することが好ましい。
また、保護層7に含まれる電荷輸送性化合物としては、機械的強度及び安定性の点から、下記一般式(I)〜(V)のうちのいずれかで表される構造を有する化合物が好ましい。
F[−(X
1)
n−R
1−Z
1H]
m (I)
[式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X
1は酸素原子又は硫黄原子を、R
1はアルキレン基を、Z
1は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、nは0又は1を、mは1〜4の整数を示す。]
F−[(X
2)
n2−(R
2)
n3−(Z
2)
n4G]
n5 (II)
[式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、X
2は酸素原子又は硫黄原子を示し、R
2はアルキレン基を示し、Z
2はアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを示し、Gはエポキシ基を示し、n2、n3及びn4はそれぞれ独立に0又は1を示し、n5は1〜4の整数を示す。]
[式(III)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を示し、R
6は1価の有機基を示し、m1は0又は1を示し、n6は1〜4の整数を示し、R
5とR
6は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。]
[式(IV)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Tは2価の基を示し、R
7は1価の有機基を示し、m2は0又は1を示し、n7は1〜4の整数を示す。]
[式(V)中、Fは正孔輸送性を有する化合物から誘導される有機基を示し、Lはアルキレン基を示し、R
8は1価の有機基を示し、n8は1〜4の整数を示す。]
一般式(I)〜(V)中の有機基Fとしては、下記一般式(VI)で表される構造を有する有機基が好ましい。
一般式(VI)中、Ar
1〜Ar
4はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar
5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr
1〜Ar
5のうち2〜4個は一般式(I)〜(V)における下記一般式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)又は(XI)で示される1価の有機基と結合する。
−(X
1)
n−R
1−Z
1H (VII)
[式(VII)中、X
1は酸素原子又は硫黄原子を、R
1はアルキレン基を、Z
1は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、nは0又は1を示す。]
−(X
2)
n1−(R
2)
n2−(Z
2)
n3G (VIII)
[式(VIII)中、X
2は酸素原子又は硫黄原子を、R
2はアルキレン基を、Z
2は酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を示す。]
[式(IX)中、Tは2価の基を、Yは酸素原子又は硫黄原子を、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を、R
6は1価の有機基を、m1は0又は1を、それぞれ示す。但し、R
5とR
6は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。]
[式(X)中、Tは2価の基を、R
7は1価の有機基を、m2は0又は1を、それぞれ示す。]
[式(XI)中、Lはアルキレン基を、R
8は1価の有機基を、それぞれ示す。]
一般式(VI)中、Ar1〜Ar4で示される置換又は未置換のアリール基としては、具体的には、下記表1に示す一般式(VI−1)〜(VI−7)で表されるアリール基が好ましい。なお、一般式(VI−1)〜(VI−7)において、R9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数7〜10のアラルキル基を、R10〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を、Xは一般式(I)〜(V)中の一般式(VII)〜(XI)で示される部位を示す。また、m及びsはそれぞれ独立に0又は1を、tは1〜3の整数を示す。
上記一般式(VI−7)で示されるアリール基におけるArとしては、下記式(VI−8)又は(VI−9)で示されるアリール基が好ましい。なお、一般式(VI−8)及び(VI−9)において、R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を、Xは一般式(I)〜(V)中の一般式(VII)〜(XI)で示される部位を示す。また、tは1〜3の整数を示す。
また、上記式(VI−7)で示されるアリール基におけるZとしては、下記式(VI−10)〜(VI−17)で示される2価の基が好ましい。なお、一般式(VI−10)〜(VI−17)において、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基又はハロゲン原子を示す。また、q及びrはそれぞれ独立に1〜10の整数を、tは1〜3の整数を示す。
また、一般式(VI−16)〜(VI−17)中、Wは下記表4中の一般式(VI−18)〜(VI−26)で示される2価の基を示す。なお、一般式(VI−25)中、uは0〜3の整数を示す。
また、上記一般式(VI)におけるAr5の具体的構造としては、k=0のときは上記Ar1〜Ar4の具体的構造におけるm=1の構造が、k=1のときは上記Ar1〜Ar4の具体的構造におけるm=0の構造が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、下記表5〜表10に示す化合物を挙げることができる。なお、下記表中、Me又は結合手(−)は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、一般式(II)で表される化合物の具体例としては、下記表11〜24に示す化合物が挙げられる。なお、下記表中、Me又は結合手(−)は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、上記一般式(III)で表される化合物の具体例としては、下記表25〜33に示す化合物を挙げることができる。なお、下記表中、Me又は結合手(−)は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を、Etはエチル基を示す。
また、上記一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、下記表35〜43に示す化合物を挙げることができる。なお、下記表中、Me又は結合手(−)は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示す。
また、上記一般式(V)で表される化合物の具体例としては、下記表44〜47に示す化合物を挙げることができる。なお、下記表中、Me又は結合手(−)は記載されているが置換基が記載されていないものはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等を用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。シランカップリング剤は任意の量で使用できるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
また、放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を保護層7に加えることもできる。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性の点でポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましい。当該樹脂の平均分子量は2,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。樹脂の分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、さらには塗布時に製膜不良を招く傾向にある。また、当該樹脂の添加量は1〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。当該樹脂の添加量が1質量%未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、40質量%を超えると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる。
また、残留電位を下げるために保護層7に導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられるが、金属または金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
また、保護層7は、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を更に含有することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
更に、電子写真感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、保護層7に各種微粒子を添加することもできる。微粒子の一例として、ケイ素含有微粒子を挙げることができる。ケイ素含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1〜100nm、好ましくは10〜30nmのシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層7中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層7の全固形分全量を基準として、0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。これらのシリコーン微粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmである。シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層7中のシリコーン微粒子の含有量は、保護層7の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
また、その他の微粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系微粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
保護層7は、上記の構成材料を含む塗布液を電荷輸送層6上に塗布し、乾燥させることによって形成可能である。保護層7用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行うことができる。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、好ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤量は任意に設定できるが、少なすぎると一般式(I)〜(V)で表される化合物が析出しやすくなるため、結着樹脂に対し10〜50質量%で使用されることが好ましい。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、フローコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
また、保護層7形成用塗布液の塗布により形成される塗膜の乾燥温度は、得られる保護層7が上記式(A)で表される条件を満たせば特に制限されないが、保護層7形成用塗布液が反応性官能基を有する電荷輸送性化合物及び溶剤を含有する場合は、硬化性樹脂と電荷輸送性化合物とを十分に反応させると共に、溶剤を十分に蒸発させるために、100℃以上、より好ましくは120℃以上の高温で反応が十分進行するまで時間をかけて硬化させることが好ましい。但し、乾燥温度が高すぎると保護層7と下層の接着性が低下する場合があり、本発明の接着性を維持するためには、保護層7となるべき塗膜の乾燥温度と、電荷輸送層6のガラス転移点と、保護層7のガラス転移点とが上記式(B)及び(C)で表される条件を満たすことが好ましい。
保護層7の厚みは一般的には、1〜10μm、好ましくは2〜8μmが適当である。
なお、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられた機能分離型感光体について説明したが、本発明の電子写真感光体は、図2に示すように電荷発生材料及び電荷輸送材料の双方を含む層(電荷発生/電荷輸送層)を備える単層型感光体であってもよい。図2に示した電子写真感光体は、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生/電荷輸送層8、保護層7がこの順序で積層された構成を有しており、電荷発生/電荷輸送層8が第1の機能層、保護層7が第2の機能層に相当し、これらの機能層は上記式(A)で表される条件を満たすように構成されている。なお、電荷発生層、電荷輸送層、保護層といった積層構造にすると、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせば良いという機能分離ができ、より高い機能を実現できるという観点から、本発明の電子写真感光体は機能分離型感光体であることが好ましい。
<画像形成装置>
図6は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図6に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、上述した本発明の電子写真感光体1を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置30と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に当接可能に配置されている。
プロセスカートリッジ20は、ケース内に電子写真感光体1とともに帯電装置21、現像装置25、クリーニング装置27及び繊維状部材(歯ブラシ形状)29を、取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。また、繊維状部材29は必ずしも設けられなくてもよい。
ここで、帯電装置21は、電子写感光体1を接触方式により帯電させるものである。また、現像装置25は、電子写真感光体1上の静電潜像を現像してトナー像を形成するものである。
以下、現像装置25に使用されるトナーについて説明する。かかるトナーとしては、平均形状係数(ML2/A)が100〜150であることが好ましく、100〜140であることがより好ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が2〜12μmであることが好ましく、3〜12μmであることがより好ましく、3〜9μmであることがさらに好ましい。このような平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、高い現像、転写性、及び高画質の画像を得ることができる。
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
現像装置25に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
現像装置25に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、体積平均粒径としては0.1〜10μmの範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲である。
現像装置25に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子等を加えることができる。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
また、上記無機微粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
粒子径としては、体積平均粒子径で好ましくは5nm〜1000nm、より好ましくは5nm〜800nm、さらに好ましくは5nm〜700nmでのものが使用される。体積平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物微粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、小径無機微粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
クリーニング装置27は、繊維状部材(ロール形状)27aと、クリーニングブレード(ブレード部材)27bとを備える。
クリーニング装置27は、繊維状部材27a及びクリーニングブレード27bが設けられているが、クリーニング装置としてはどちらか一方を備えるものでもよい。繊維状部材27aとしては、ロール形状の他に歯ブラシ状としてもよい。また、繊維状部材27aは、クリーニング装置本体に固定してもよく、回転可能に支持されていてもよく、さらに感光体軸方向にオシレーション可能に支持されていてもよい。繊維状部材27aとしては、ポリエステル、ナイロン、アクリル等や、トレシー(東レ社製)等の極細繊維からなる布状のもの、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維を基材状又は絨毯状に植毛したブラシ状のもの等を挙げることができる。また、繊維状部材27aとしては、上述したものに、導電性粉末やイオン導電剤を配合して導電性を付与したり、繊維一本一本の内部又は外部に導電層が形成されたもの等を用いることもできる。導電性を付与した場合、その抵抗値としては繊維単体で102〜109Ωのものが好ましい。また、繊維状部材27aの繊維の太さは、好ましくは30d(デニール)以下、より好ましくは20d以下であり、繊維の密度は好ましくは2万本/inch2以上、より好ましくは3万本/inch2以上である。
クリーニング装置27には、クリーニングブレード、クリーニングブラシで感光体表面の付着物(例えば、放電生成物)を除去することが求められる。この目的を長期に渡って達成すると共にクリーニング部材の機能を安定化させるために、クリーニング部材には、金属石鹸、高級アルコール、ワックス、シリコーンオイルなどの潤滑性物質(潤滑成分)を供給することが好ましい。
例えば、繊維状部材27aとしてロール状のものを用いる場合、金属石鹸、ワックス等の潤滑性物質と接触させ、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することが好ましい。クリーニングブレード27bとしては、通常のゴムブレードが用いられる。このようにクリーニングブレード27bとしてゴムブレードを使用する場合には、電子写真感光体表面に潤滑成分を供給することは、ブレードの欠けや磨耗を抑制することに特に効果的である。
以上説明したプロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
露光装置30としては、帯電した電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成させるものであればよい。また、露光装置30の光源としては、マルチビーム方式の面発光レーザーを用いることが好ましい。
転写装置40としては、電子写真感光体1上のトナー像を被転写媒体(中間転写体50)に転写するものであればよく、例えば、ロール形状の通常使用されるものが使用される。
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。なお、この中間転写体を備えていない直接転写方式の画像形成装置もあるが、本発明の電子写真感光体はこのような画像形成装置に好適である。その理由は、直接転写方式の画像形成装置では、プリント用紙からの紙粉やタルク等が発生しそれが電子写真感光体へ付着しやすく、付着物に起因する画質欠陥が発生する傾向にある。しかし、本発明の電子写真感光体によれば、クリーニング性に優れているため紙粉やタルク等の除去が容易であり、直接転写方式の画像形成装置であっても安定した画像を得ることができる。
なお、本発明でいう被転写媒体とは、電子写真感光体1上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体1から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体50を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
図4は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。図4に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が画像形成装置本体に固定され、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、帯電装置22は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えている。
画像形成装置110においては、電子写真感光体1とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
本発明の電子写真感光体は耐磨耗性に優れるため、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置22、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストをさらに低減することができる。
なお、画像形成装置110は、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
図5は、本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す模式図である。画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
タンデム方式の画像形成装置120では、各色の使用割合により各電子写真感光体の磨耗量が異なってくるために、各電子写真感光体の電気特性が異なってくる傾向がある。これに伴い、トナー現像特性が初期の状態から除々に変化してプリント画像の色合いが変化し、安定な画像を得ることができなくなる傾向にある。特に、画像形成装置を小型化するために、小径の電子写真感光体が使用される傾向にあり、30mmφ以下のものを用いたときにはこの傾向が顕著になる。ここで、電子写真感光体に、本発明の電子写真感光体の構成を採用すると、その直径を30mmφ以下とした場合にもその表面の磨耗が十分に抑制される。したがって、本発明の電子写真感光体は、タンデム方式の画像形成装置に対して特に有効である。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、導電性基体として、ホーニング処理を施した30mmφの円筒状のアルミニウム製基体を準備した。
次に、ジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)100質量部、シラン化合物(商品名:A1100、日本ユニカー社製)10質量部、イソプロパノール400質量部、及びブタノール200質量部を混合して下引き層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法により上記アルミニウム製基体の外周面上に塗布し、150℃にて、10分間加熱乾燥し、0.1μmの下引き層を形成した。
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角 (2θ±0.2°)が、7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニンの10質量部、ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学)10質量部、及び酢酸n−ブチル1000質量部を混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散して電荷発生層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を前記下引き層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式(CT−1)で示されるベンジジン化合物150質量部及び下記式(B−1)で示される構造単位を有するビスフェノールZ型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、粘度平均分子量39,000)350質量部をTHF500質量部に溶解させ、電荷輸送層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布法により塗布し、150℃、60分の加熱を行って膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部及びシクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、150℃で40分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体1」という。)を得た。
また、上記と同様にして感光体1を作製し、電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を以下の手順で測定した。先ず、保護層にカッターで切れ目を入れ、保護層の単独膜を剥がして採取した。次いで、保護層を剥がした後の感光体1の電荷輸送層が露出した部分にカッターで切れ目を入れ、保護層の単独膜を剥がして採取した。このとき、予め各単独膜について20℃での膜厚を測定した。次に、単独膜それぞれについて、セイコー電子工業(株)製TMA/SS6100を用いて、TMA/SS6100の針入モードで、保護層となるべき塗膜の乾燥温度から20℃まで冷却したときの収縮量を測定した。そして、収縮量の測定値及び20℃での膜厚の測定値に基づいて1μmあたりの収縮量を算出した。また、収縮量の測定データの変曲点から、各層のガラス転移点を算出した。得られた結果を表48に示す。
(実施例2)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部、シクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、135℃で30分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体2」という。)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体2の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。
(実施例3)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。
次に、表27中の化合物(III−11)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4部、シクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、150℃で40分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体3」という)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体3の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。
(実施例4)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層及び電荷発生層を形成した。
次に、上記式(CT−1)で示されるベンジジン化合物150質量部及び上記式(B−1)で示される構造単位を有するビスフェノールZ型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、粘度平均分子量:39000)350質量部をモノクロロベンゼン500質量部に溶解させ、電荷輸送層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、150℃、60分の加熱を行って膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部及びシクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、150℃で40分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体4」という。)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体4の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。
(比較例1)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部及びシクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、150℃で120分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体5」という。)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体5の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。
(比較例2)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層及び電荷発生層を形成した。
次に、上記式(CT−1)で示されるベンジジン化合物350質量部及び上記式(B−1)で示される構造単位を有するビスフェノールZ型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、粘度平均分子量:39000)150質量部をモノクロロベンゼン500質量部に溶解させ、電荷輸送層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃、60分の加熱を行って膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部及びシクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、150℃で40分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体6」という。)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体6の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。
(比較例3)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部及びシクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、170℃で40分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体7」という。)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体7の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。
(比較例4)
先ず、実施例1と同様にして導電性基体上に下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。
次に、表36中の化合物(IV−12)2.5質量部、レゾール型フェノール樹脂(BLS204、昭和高分子(株)製)2.5質量部、n−ブタノール4質量部及びシクロヘキサノン1質量部を混合して保護層形成用塗布液を得た。得られた塗布液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法で塗布し、170℃で40分乾燥させて膜厚4μmの保護層を形成し、目的の電子写真感光体(以下、「感光体8」という。)を得た。
また、実施例1と同様にして、感光体8の電荷輸送層及び保護層それぞれの厚さ1μm当たりの収縮量及びガラス転移点を測定した。得られた結果を表48に示す。なお、表48のガラス転移点の欄中、「>250」はガラス転移点が測定限界(250℃)を超えることを意味する。
(実施例5〜8、比較例5〜8)
実施例5〜8及び比較例5〜8においては、それぞれ感光体1〜8を用いて画像形成装置を作製した。なお、感光体以外の要素は富士ゼロックス製プリンターDocuCentre Color 500と同様のものを用い、露光装置として発振波長780nmのマルチビーム面発光レーザーを用いた。
次に、実施例5〜8及び比較例5〜8の各画像形成装置を用いて、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下と高温高湿(28℃、80%RH)の環境下でそれぞれ1万枚ずつプリントしたときの画質を評価した。また、感光体をプリンター内で24時間放置した後、同様のプリント試験を行い、画質を評価した。得られた結果を表49に示す。
また、1万枚プリント後の感光体について保護層のはがれの有無及び摩耗率を評価した。はがれは1万枚プリント後の感光体表面を目視で観察し、以下の評価基準:
A:剥がれが認められない
B:微小な剥がれが認められるが、画像には影響していない
C:剥がれが認められる
に基づいて評価した。また、感光体の摩耗率は、剥がれが発生していない部分を測定対象とし、使用前後の膜厚を測定して1000サイクルあたりの磨耗率として求めた。
さらに、接着力と装置内のはがれとの対応を図るため、感光体表面に1mm角の碁盤目を100個入れ、住友3M(株)製の粘着テープを貼り剥離による碁盤目のはがれ枚数を数えて接着性を比較した。得られた結果を表49に示す。
また、低温低湿(10℃、15%RH)環境下、グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電、次に、780nmの半導体レーザーを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面電位[V]を測定し、この値を残留電位の値とした。得られた結果を表49に示す。
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、20…プロセスカートリッジ、100,110,120,130…画像形成装置。