JP2013073056A - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を兼ね備えた電子写真感光体などの提供。
【解決手段】導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層とを有する電子写真感光体であって、前記電子写真感光体が、最表面層を有し、前記最表面層が、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合して形成される3次元架橋ポリマーを有する電子写真感光体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体及び画像形成装置に関する。
近年、有機感光体(OPC:Organic Photo Conductor)は、良好な性能を有し、様々な利点から、無機感光体に代わって複写機、ファクシミリ、レーザープリンター及びこれらの複合機に多く用いられている。その理由としては、有機感光体が、光吸収波長域の広さ、吸収量の大きさ等の光学特性、高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、材料の選択範囲の広さ、製造の容易さ、低コスト、無毒性などに優れていることが挙げられる。
しかし、有機感光体は、電荷輸送層に、低分子電荷輸送物質、不活性高分子等を主成分として含むため、一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて長期間の繰返し使用により、現像システムやクリーニングシステムによる機械的負荷が生じ、耐摩耗性、耐損傷性等の機械的耐久性に劣るという問題がある。そして、このような有機感光体の摩耗、損傷等は、感度の劣化、帯電性の低下等の電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像を発生させるという問題がある。また、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらすという問題がある。
そこで、有機感光体の機械的耐久性の向上を目的として、有機感光体に3次元架橋ポリマーを有する電荷輸送層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1〜9参照)。
例えば、同一分子内に二つ以上の重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を、紫外線照射、電子線照射等によりラジカル重合させた3次元架橋ポリマーを有する電荷輸送層が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案の技術では、紫外線照射、電子線照射等を行う大掛かりな装置が必要となり、生産性の点で問題がある。また、紫外線照射、電子線照射等により電荷輸送性化合物が劣化し、感光体の電気的特性が悪くなるという問題がある。
また、水酸基等の極性基を有する電荷輸送性化合物を3次元架橋させたポリマーを有する電荷輸送層が提案されている(特許文献5〜8参照)。しかし、この提案の技術では、電荷輸送性化合物の有する水酸基等の極性基が3次元架橋ポリマーに残留するため、帯電低下が生じるという問題がある。また、高温高湿環境下での画像濃度が低下しやすく、環境安定性が十分ではないという問題がある。また、帯電器で生じるNOxガス等の暴露により画像濃度が低下しやすく、耐ガス安定性が十分ではないという問題がある。
また、電荷輸送性化合物の水酸基等の極性基をブロックした化合物と、メラミンのような反応活性種とを硬化させた3次元架橋ポリマーを有する電荷輸送層が提案されている(特許文献9参照)。しかし、この提案の技術では、極性基の残留を防ぐことはできるが、ブロックされた極性基と反応活性種との反応性が悪く、機械的耐久性に劣るという問題がある。
したがって、優れた機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を兼ね備えた電子写真感光体は、未だ提供されておらず、その開発が強く求められているのが現状である。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を兼ね備えた電子写真感光体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意検討を行った結果、硬化触媒としてビニルスルホン酸を用いる、高い反応性を有する電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物の重合反応により得られた3次元架橋ポリマーを感光層の最表面層に含むことで、優れた機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を兼ね備えた電子写真感光体が得られることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。即ち、
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層とを有する電子写真感光体であって、前記電子写真感光体が、最表面層を有し、前記最表面層が、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合して形成される3次元架橋ポリマーを有することを特徴とする。
本発明によれば、従来における諸問題を解決でき、優れた機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を兼ね備えた電子写真感光体を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略図である。 図2は、本発明の第2の実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略図である。 図3は、本発明の第3の実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略図である。 図4は、本発明の第4の実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略図である。 図5は、本発明の第5の実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略図である。 図6は、本発明の画像形成装置及び電子写真プロセスの一例を示す概略図である。 図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置の一例を示す概略図である。 図8は、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を説明する概略図である。 図9は、合成例1において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図10は、合成例2において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図11は、合成例3において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図12は、合成例4において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図13は、合成例5において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図14は、合成例6において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図15は、合成例7において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図16は、合成例8において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図17は、合成例9において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図18は、合成例10において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。 図19は、合成例11において得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm−1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層とを有し、更に必要に応じて、その他の層を有する。
<導電性支持体>
前記導電性支持体としては、体積抵抗値が1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスベルト(エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルト等)を用いてもよい。
前記導電性支持体の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属(アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等)又は金属酸化物(酸化スズ、酸化インジウム等)を蒸着又はスパッタリングして、支持体(フィルム状、円筒状等のプラスチック、紙等)に被覆することにより形成する方法;金属(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等)の板を押出し、引抜き等を行い、表面処理(素管化後、切削、超仕上げ、研摩等)を施して形成する方法などが挙げられる。
前記導電性支持体は、前記導電性支持体上に導電性層を設けてもよい。
前記導電性層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性粉体及び結着樹脂を、必要に応じて溶剤に分散乃至溶解して得られた塗工液を前記導電性支持体上に塗布することにより形成する方法;ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブを用いて形成する方法などが挙げられる。
前記導電性粉体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。
前記導電性層に用いる結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
前記導電性層に用いる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
<感光層>
前記感光層としては、最表面に最表面層を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも電荷発生層と、電荷輸送層と、最表面層(架橋型電荷輸送層)とをこの順に有し、更に必要に応じて、その他の層を有する感光層が好ましい。
<<最表面層(架橋型電荷輸送層)>>
前記最表面層は、前記感光層の最表面層であり、架橋型電荷輸送層ともいう。
前記最表面層(架橋型電荷輸送層)は、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合して形成される3次元架橋ポリマーを有する。
前記最表面層における、前記ビニルスルホン酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記最表面層に対して、0.01質量%〜1.0質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましく、0.1質量%〜0.2質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、架橋反応不足により機械的耐久性(耐摩耗性)が劣ることがあり、1.0質量%を超えると、高温高湿環境下における画像不良が発生することがある。前記含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、機械的耐久性(耐摩耗性)及び画像品質の両立の点で有利である。
ここで、最表面層が前記3次元架橋ポリマーと前記ビニルスルホン酸のみを有する場合には、前記最表面における前記ビニルスルホン酸の含有量は、前記3次元架橋ポリマーと前記ビニルスルホン酸との合計量に対する前記ビニルスルホン酸の含有量ともいうことができる。
なお、前記最表面層における前記ビニルスルホン酸の含有量は、TOF−SIMSによるイオウ元素分析により測定することができる。
−3次元架橋ポリマー−
前記3次元架橋ポリマーは、3次元網目構造を有するポリマーである。
前記3次元架橋ポリマーは、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合して形成される。
言い換えれば、前記3次元架橋ポリマーは、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物同士が[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応を起こしてそれぞれ結合し、3次元の網目状に巨大分子化すると共に、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基は未反応のまま残留したポリマーである。
本発明は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が適当な硬化触媒を用いることで有機溶媒等に不溶で架橋密度の高い3次元架橋膜を形成できることを見出したことを基礎としている。
更に、硬化触媒として、ビニルスルホン酸を用いることで、得られた3次元架橋ポリマーが特に優れた機械的耐久性(耐摩耗性、耐傷性等)、優れた電気的特性(帯電安定性、感度安定性、残留電位特性等)、優れた環境安定性(特に高温高湿下)、優れた耐ガス安定性性(耐NOx性等)を有することを知見し、本発明に至った。
ビニルスルホン酸は、ビニル基とスルホン酸基のみから構成されるスルホン酸化合物であり、CH=CHSOHで表される分子量の小さい化合物である。その為、その他のスルホン酸化合物であるパラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などと比べて、硬化触媒として、少量の添加量でよい。また、シンプルな構造であるために、ビニルスルホン酸自体の副反応が起き難く、残留硬化触媒が与える感光体特性への副作用を低減することができる。
(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)基が水酸基の保護基として使用されることは従来から知られている。例えば、特開2006−084711号公報にも記載されている。保護基としての(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)基を有する化合物とメラミンなどの反応活性種との反応による硬化物は検討されているが、保護基としての(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)基を有する化合物単独での架橋膜形成の例は知られていない。
通常、保護基という考え方からは、保護基が外れて反応することを想起させる。そのため、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がメチロール基に変化して反応すると考えると、得られた3次元架橋ポリマーは、メチロール体の架橋ポリマーと同じになる。
しかし、本発明者らの検討の結果、本発明において電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物は、メチロール基を経由することなく反応することがわかった。したがって、未反応部には[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基がそのまま残る。このように、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が架橋ポリマー中に存在することは、得られる最表面層の膜物性にも影響している。即ち、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から得られる3次元架橋ポリマーは、メチロール体の架橋硬化物に比べて、耐ガス性に影響するガス透過性が小さいというメリットがある。
このように、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物の重合反応により形成された3次元架橋ポリマーであり、かつビニルスルホン酸を重合反応の硬化触媒として用いて得られた3次元架橋ポリマーを含む層を、電子写真感光体の最表面層に用いることで、優れた電気的特性(例えば、帯電安定性)及び耐ガス安定性(例えば、耐NOx性)を有しており、かつ、機械的耐久性、及び環境安定性にも優れた電子写真感光体が得られる。
また、前記3次元架橋ポリマーは、通常、電荷輸送性化合物のみの硬化物であるため、良好な電荷輸送性を示し、それでいて電荷輸送に直接寄与しない[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のような電気的不活性部も適当に内在していることで帯電安定性にも優れており、水酸基の様な極性基を含まないことから、環境安定性及び耐ガス安定性にも優れている。
前記3次元架橋ポリマーは、溶媒に不溶である時に特に優れた機械的特性を示す。そのため、前記3次元架橋ポリマーは、溶媒に不溶であること、特にテトラヒドロフランに不溶であることが好ましい。
電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、テトラヒドロフランに良く溶解する。しかし、この化合物が反応して3次元の網目状に結合を形成すると、得られた3次元架橋ポリマーは、もはやテトラヒドロフラン及びその他の溶媒に溶解しなくなる。
したがって、前記3次元架橋ポリマーがテトラヒドロフランに不溶であることは、電子写真感光体の表面が巨大分子化されて一体となった構造になっていることを示しており、そのために高い機械的特性を発揮する。ここで、不溶とは、テトラヒドロフランに浸漬しても3次元架橋ポリマーが消失しない状態をいう。更には、テトラヒドロフランで濡らした綿棒などで擦っても、その痕跡が残らない状態が好ましい。
このように、溶媒に不溶であることで、電子写真感光体への異物付着を防止できたり、異物付着を起源とした電子写真感光体表面の傷の発生などを防止することができる。
前記3次元架橋ポリマーは、例えば、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物にビニルスルホン酸を添加し加熱することで重合反応させて得られたものである。
硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用いて加熱することで縮合反応を実用的な速度で進行させることが可能になり、表面平滑性に優れた最表面層の形成が可能になる。表面平滑性が極端に悪くなるとトナーのクリーニング性が悪くなり、異常画像の原因となって高画質な印刷ができなくなる。したがって、適当な硬化触媒を用いて適当な温度で加熱することにより表面平滑性に優れる3次元架橋ポリマーの形成が可能になり、前記3次元架橋ポリマーを感光層の最表面層に含む電子写真感光体は、より高画質な画像を長期に渡って印刷できるようになる。
−−電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物−−
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用いた重合反応により、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が脱離して、前記3次元架橋ポリマーを形成する。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物において用いられる電荷輸送性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアリールアミン構造、アミノビフェニル構造、ベンジジン構造、アミノスチルベン構造、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド構造、ベンズヒドラジン構造等を有する化合物などが挙げられる。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
−−−一般式(1)で表される化合物−−−
下記一般式(1)で表される化合物は、分子量当たりの[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の割合が多く、したがって架橋密度の高い3次元架橋ポリマーの形成が可能になることから硬度の高い耐傷性の高い電子写真感光体の提供が可能となる。
ただし、前記一般式(1)中、Ar、Ar及びArは、アルキル基を置換基として有してもよい炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表す。
前記一般式(1)中、Ar、Ar及びArにおける前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐状脂肪族アルキル基などが挙げられる。
前記一般式(1)中、Ar、Ar及びArにおける前記炭素数6〜18の芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベンなどが挙げられる。
前記一般式(1)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、架橋反応に優れる点で、下記一般式(1−1)で表される化合物が好ましい。
ただし、前記一般式(1−1)中、R、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、l、n及びmは、1〜4の整数を表す。
前記一般式(1−1)で表される化合物は、前記一般式(1)で表される化合物の中で特に優れるもので、お互いの重合反応性が特によい。前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基同士の重合反応については不明な部分も残っているが、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基に結合する芳香環が3級アミノ基を有するベンゼン環の場合に最も進行が速く、より架橋密度が高い架橋保護層の形成が可能となる。
前記一般式(1)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体例として、例えば、下記構造式(1−1)〜(1−12)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記構造式(1−1)〜(1〜8)で表される化合物は、前記一般式(1−1)で表される化合物の具体例でもある。
ただし、構造式中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表す。
−−−一般式(2)で表される化合物−−−
下記一般式(2)で表される化合物は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有しており、かつ、非共役連結基のXを有することで適度な分子運動性をも有しており、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を残した3次元架橋ポリマーを形成しやすく、出来上がった3次元架橋ポリマーの硬度特性や弾性特性のバランスが良く、強靱で耐傷性、耐摩耗性の両方に優れた最表面層の形成が可能となる。更に、Xの構造性から分子の酸化電位が比較的大きく、酸化しにくい特性を有しており、オゾンガスやNOxガスのような酸化性ガスの暴露時にも比較的安定であり、耐ガス性にも強い電子写真感光体の提供が可能になる。
ただし、前記一般式(2)中、Xは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数2〜6のアルキリデン基が2個結合した2価基、又は酸素原子を表し、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、アルキル基を置換基として有してもよい炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表す。
前記一般式(2)中、Xにおける前記炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状及び分岐状アルキレン基などが挙げられる。
前記一般式(2)中、Xにおける前記炭素数2〜6のアルキリデン基としては、例えば、1,1−エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2−プロピリデン基、1,1−ブチリデン基、2,2−ブチリデン基、3,3−ペンタニリデン、3,3−ヘキサニリデンなどが挙げられる。
前記一般式(3)中、Xにおける前記フェニレン基を介して炭素数2〜6のアルキリデン基が2個結合した2価基としては、例えば、以下の構造のものが挙げられる。
ただし、構造式中、Meは、メチル基を表す。
前記一般式(2)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、架橋反応に優れる点で、下記一般式(2−1)で表される化合物が好ましい。
ただし、前記一般式(2−1)中、Xは、−CH−、−CHCH−、−C(CH−Ph−C(CH−、−C(CH−、又は−O−を表し、R、R、R、R、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Phは、フェニレン基を表し、o、p、q、r、s及びtは、1〜4の整数を表す。
前記一般式(2−1)で表される化合物は、前記一般式(2)で表される化合物の中で特に優れるもので、お互いの重合反応性が特によい。また、前記一般式(2)と同様の特徴を有しており、硬度特性と弾性特性のバランスが良く、耐ガス性にも強く、架橋密度の高い架橋型電荷輸送層の形成が可能となる。
前記一般式(2)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体例として、例えば、下記構造式(2−1)〜(2−31)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記構造式(2−1)〜(2〜24)で表される化合物は、前記一般式(2−1)で表される化合物の具体例でもある。
ただし、構造式中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表す。
−−−一般式(3)で表される化合物−−−
下記一般式(3)で表される化合物は、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を4個有しており、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を残した3次元架橋ポリマーを形成しやすい。かつ、Yで表される特定の芳香族炭化水素構造を介したジアミン構造となっており、分子内電荷移動が可能であり、ホール移動度の速い架橋保護層の形成が可能となる。したがって、高速印刷や小径ドラムによる印刷のように感光体への光書き込みから現像までの時間が短くなる様な場合でも、明部電位の低い電子写真感光体の提供が可能となる。
ただし、前記一般式(3)中、Yは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ジスチリルベンゼン、又は縮合多環の芳香族炭化水素の2価基を表し、Ar10、Ar11、Ar12及びAr13は、アルキル基を置換基として有してもよい炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表す。
前記一般式(3)中、Yにおける前記縮合多環の芳香族炭化水素としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレンなどが挙げられる。
前記Ar10、Ar11、Ar12及びAr13の炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基の置換基であるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記一般式(3)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、架橋反応に優れる点で、下記一般式(3−1)で表される化合物が好ましい。
ただし、前記一般式(3−1)中、Yは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、又はナフタレンの2価基を表す。R10、R11、R12及びR13は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、u、v、w及びzは、1〜4の整数を表す。
前記一般式(3−1)で表される化合物は、前記一般式(3)で表される化合物の中で特に優れるもので、お互いの重合反応性が特によい。また、前記一般式(3)と同様の特徴を有しており、電位特性の良好な架橋密度の高い架橋保護層の形成が可能となる。
前記一般式(3)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体例として、例えば、下記構造式(3−1)〜(3−27)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記構造式(3−1)〜(3〜3)、(3−10)〜(3〜12)及び(3−15)〜(3〜22)で表される化合物は、前記一般式(3−1)で表される化合物の具体例でもある。
ただし、構造式中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表す。
−−電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の合成方法−−
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物は、新規化合物であり、例えば、下記第1〜第2の合成方法により合成することができる。
−−−第1の合成方法−−−
前記第1の合成方法としては、具体的には、(1)電荷輸送性化合物のアルデヒド体を合成し、(2)得られた電荷輸送性化合物のアルデヒド体を還元剤と反応させてメチロール化合物(電荷輸送性化合物のメチロール体)を合成し、(3)得られたメチロール化合物と3,4−ジヒドロ−2H−ピランとを反応させて、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物を合成する方法などが挙げられる。
前記(1)電荷輸送性化合物のアルデヒド体の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記反応式に示すように、電荷輸送性化合物を原料とし、これを従来知られている方法(例えば、ビルスマイヤー反応)を用いてホルミル化することにより合成する方法などが挙げられる。詳細は、特許第3943522号公報に記載のホルミル化等に記載されており、それらの方法を利用することができる。
電荷輸送性化合物の芳香環を3箇所以上ホルミル化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化亜鉛、オキシ塩化リン、ジメチルホルムアルデヒド等を用いた方法などが挙げられる。
ただし、反応式中、nは、0〜2の整数を表し、mは、3−nの整数を表す。Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
前記(2)メチロール化合物(電荷輸送性化合物のメチロール体)の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記反応式に示すようなアルデヒド化合物(電荷輸送性化合物のアルデヒド体)を中間体とし、これを従来知られている還元方法を用いてメチロール化合物を合成する方法などが挙げられる。
前記電荷輸送性化合物のメチロール体を合成する際の還元方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素化ホウ素ナトリムを用いた還元方法が好ましい。
ただし、反応式中、nは、0〜2の整数を表し、mは、3−nの整数を表す。Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
前記(3)[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の合成方法としては、特に制はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記反応式に示すようなメチロール化合物を中間体とし、これに3,4−ジヒドロ−2H−ピランを酸触媒下で付加反応させることで[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物を合成する方法などが挙げられる。
ただし、反応式中、nは、0〜2の整数を表し、mは、3−nの整数を表す。Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
−−−第2の合成方法−−−
前記第2の合成方法としては、具体的には、(1)[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物を合成し、(2)これを用いてアミン化合物とカップリング反応させて電荷輸送性化合物を合成する方法などが挙げられる。
前記(1)[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物の合成方法としては、例えば、芳香環にハロゲンとメチロール基を有する化合物を原料とし、そのメチロール基を3,4−ジヒドロ−2H−ピランと酸触媒下で反応させてハロゲンと[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物を合成する方法などが挙げられる。
ただし、式中、Xはハロゲンを表す。
前記(2)電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物の合成方法としては、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を有する中間体化合物をアミン化合物とカップリング反応させて電荷輸送性化合物を合成する方法などが挙げられる。前記アミン化合物におけるアミンの級数や個数によって、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を一度に多数導入することが可能である。また、前記ハロゲンがヨード体の場合は、ウルマン反応によりカップリングすることができ、クロロ体、ブロモ体の場合は、パラジウム触媒を用いた鈴木−宮浦反応等によりカップリングすることができる。
ただし、Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
−−−重合方法−−−
次に重合反応について説明する。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物は、硬化触媒としてビニルスルホン酸を添加し加熱することで、お互い同士が[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応によりそれぞれが結合して重合し、3次元の網目状巨大分子(前記3次元架橋ポリマー)を形成する。この時、一部の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基は未反応のまま、残留している。この[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応については解明できていないが、単一の反応ではなく、以下に示すような複数の反応が競争的に生じて前記化合物同士が連結する反応である。
−−−反応様式−−−
以下に反応様式を示す。
前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物は、以下に記載の反応様式1〜3が組み合わされて、複雑な結合様式を取りながら、3次元の網目状に重合し巨大分子化するものと推定される。
これらの反応はいずれも(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基の一部が切れて脱離する反応であり、重量減少を伴う。したがって、これらの組成物を酸触媒と共にTG−DTA熱分析装置により加熱すると重量減少が観察される。
また、加熱反応時に発生するガス成分を質量分析ガスクロマトグラフ(GC−MS)により分析すると、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、5−ヒドロキシペンタナール等の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基の一部が切れたことを示す脱離生成物が検出される。
[反応様式1]
反応様式1は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基のテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基部分が切れて脱離し、もう片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、ジメチレンエーテル結合を形成する反応である。
ただし、Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
[反応様式2]
反応様式2は、両方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、エチレン結合を形成する反応である。
ただし、Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
[反応様式3]
反応様式3は、片方の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基部分が切れて脱離しながら、もう片方の芳香環に結合してメチレン結合を形成する反応である。
ただし、Arは、本発明で使用される電荷輸送性化合物の任意の芳香環を表す。
一般的に(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は水酸基の保護基として知られているが、本発明の前記3次元架橋ポリマーにおいては、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残存しており、脱保護反応は起こっていないと考えている。即ち、[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が加水分解してメチロール基に変化していないと考えている。
更に、(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は低極性であり、未反応として残留した(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ基は、電気的特性及び画像品質に悪影響を及ぼさない。
また、重合反応は、歪みの大きな膜を形成しやすいが、比較的大きな[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基が残留することで、歪みを和らげる効果があり、また、歪みによって生じる分子空間を埋める効果が期待でき、ガス透過性の小さい、脆さを抑えた強靱な最表面層の形成が可能になる。
分子中の[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の反応割合や残留割合は、電荷輸送性化合物の構造や狙いの膜物性調整のために任意に変化させることが可能であるが、あまりに残留が少なくなると歪みの大きな脆い膜となってしまい長寿命電子写真感光体には適さなくなる。また、反応割合を上げるためには高温とする必要があり、その熱の影響による感光劣化の問題もあり、感度低下及び残留電位上昇を伴うなどの弊害が生じることがある。また、残留が多くなりすぎると架橋密度が低下し、場合によっては有機溶剤に溶けてしまうような架橋不良状態になり、3次元架橋ポリマーに由来する強靱な機械的特性を示さなくなってしまう。したがって、機械的特性と静電的特性の両方を満足する硬化条件を選択することが好ましい。
−3次元架橋ポリマーの形成方法−
前記3次元架橋ポリマーの形成は、最表面層の形成と同時に行ってもよい。
前記3次元架橋ポリマーの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物と、硬化触媒としてのビニルスルホン酸とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する塗工液を、必要に応じて溶媒等で希釈調整し、電子写真感光体表面に塗工した後、加熱乾燥を行い、重合させることで形成する方法などが挙げられる。この際に、膜状に3次元架橋ポリマーを形成することにより、最表面層を得ることができる。
前記3次元架橋ポリマーを形成する際の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃〜160℃が好ましく、100℃〜150℃がより好ましく、135℃〜150℃が特に好ましい。前記加熱温度が、80℃未満であると、反応速度が遅くなると共に長時間かけても十分な架橋密度まで到達できなくなることがある。前記加熱温度が、160℃を超えると、反応が速くなるが、架橋密度が上がり過ぎ、電荷輸送性の低下を引き起こして電子写真感光体の明部電位が上昇し、感度低下し、電子写真感光体の他の層構成材料への加熱の影響が大きくなり、電子写真感光体が劣化することがある。
前記3次元架橋ポリマーを形成する際の、前記ビニルスルホン酸の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物100質量部に対して、0.01質量部〜1.0質量部が好ましく、0.05質量部〜0.5質量部がより好ましく、0.1質量部〜0.2質量部が特に好ましい。前記量が、0.01質量部未満であると、架橋反応不足により機械的耐久性(耐摩耗性)が劣ることがあり、1.0質量部を超えると、高温高湿環境下における画像不良が発生することがある。前記量が、前記特に好ましい範囲内であると、機械的耐久性(耐摩耗性)及び画像品質の両立の点で有利である。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶剤、レベリング剤、酸化防止剤、フィラーなどが挙げられる。
−−溶剤−−
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル−2−アセテート等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤の希釈率としては、特に制限はなく、組成物の溶解性、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等の塗工法、目的とする厚みなどに応じて適宜選択することができる。
−−レベリング剤−−
前記レベリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー乃至オリゴマーなどが挙げられる。
前記レベリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記塗工液の全固形量に対して、1質量%以下が好ましい。
−−酸化防止剤−−
前記酸化防止剤は、繰り返し使用に対する電子写真感光体の感度低下、残留電位の上昇等を防止する目的で、添加することができる。
なお、前記酸化防止剤は、前記架橋型電荷輸送層、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、及び前記その他の層などの各層に添加してもよい。
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系化合物類、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系化合物類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として公知の市販品を使用してもよい。
前記酸化防止剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記塗工液により形成される層(最表面層)の総質量に対して、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。
−−フィラー−−
前記フィラーは、前記塗工液の更なる耐摩耗性を向上させることを目的として、添加することができる。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機性フィラー材料、無機性フィラー材料などが挙げられる。
前記有機性フィラー材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられる。
前記無機性フィラー材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。
これらの中でも、耐摩耗性に優れる点で、無機材料が好ましく、絶縁性、熱安定性、及び耐摩耗性に優れる点で、六方細密構造を有するα型アルミナがより好ましい。
前記フィラーの平均一次粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光透過率、耐摩耗性等に優れる点で、0.01μm〜0.5μmが好ましい。前記平均一次粒径が、0.01μm未満であると、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こすことがあり、0.5μmを超えると、前記フィラーの沈降性が促進し、トナーのフィルミングが発生することがある。
前記フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記塗工液により形成される層(最表面層)の総質量に対して、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、耐摩耗性が不十分となることがあり、50質量%を超えると、透明性が損なわれることがある。
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理することが可能であり、そうすることがフィラーの分散性が向上するので好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
−−−表面処理剤−−−
前記表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましく、フィラーの分散性及び画像ボケの点で、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸又はこれらとシランカップリング剤との混合物;Al、TiO、ZrO、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム又はこれらの混合物がより好ましい。なお、前記シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。
前記表面処理剤の量としては、特に制限はなく、用いるフィラーの平均一次粒径により異なり、目的に応じて適宜選択することができるが、前記フィラーに対して、3質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、3質量%未満であると、前記フィラーの分散効果が得られないことがあり、30質量%を超えると、残留電位の著しい上昇を引き起こすことがある。
−塗工−
前記塗工としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などが挙げられる。
前記3次元架橋ポリマーの電荷輸送性は、従来の架橋膜に比べて最高レベルの特性を有しているが、通常の分子分散型電荷輸送層に比べるとまだ低い。したがって、電荷輸送層は従来型の分子分散型電荷輸送層を用い、その表面の保護層(最表面層)に3次元架橋ポリマーを用いることが好ましい。
即ち、比較的厚膜の通常の分子分散型電荷輸送層上に薄膜の架橋型電荷輸送層を形成することで、感度特性を低下させることなく上記の特徴を有する電子写真感光体の提供が可能になる。
前記最表面層(前記架橋型電荷輸送層)の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、十分な高寿命化が図れないことがあり、10μmを超えると、感度低下、明部電位の上昇等が生じ、安定した画像出力がしにくくなることがある。
<<電荷発生層>>
前記電荷発生層は、電荷発生物質を含有し、結着樹脂を含有することが好ましく、更に必要に応じて上述の酸化防止剤等のその他の成分をする。
−電荷発生物質−
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系材料、有機系材料などが挙げられる。
−−無機系材料−−
無機系材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン(例えば、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子等でターミネートしたもの;ホウ素原子、リン原子等をドープしたものなどが好適)などが挙げられる。
−−有機系材料−−
前記有機系材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結着樹脂としては、上述の結着樹脂の他に、電荷輸送機能を有する電荷輸送性高分子材料を含んでもよく、例えば、(1)アリールアミン骨格、ベンジジン骨格、ヒドラゾン骨格、カルバゾール骨格、スチルベン骨格、ピラゾリン骨格等を有する、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料などを用いることができる。
前記(1)の具体例としては、例えば、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料などが挙げられる。
前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体等の電荷輸送性高分子材料などが挙げられる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低分子電荷輸送物質、溶剤、レベリング剤などが挙げられ、上述の酸化防止剤を含んでもよい。
−−低分子電荷輸送物質−−
前記低分子電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送物質、正孔輸送物質などが挙げられる。
前記電子輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−−溶剤−−
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−−レベリング剤−−
前記レベリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−電荷発生層の形成方法−
前記電荷発生層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷発生物質及び前記結着樹脂を前記溶剤等の前記その他の成分に溶解乃至分散して得られた塗工液を、前記導電性支持体上に塗布して乾燥することにより形成する方法などが挙げられる。なお、前記塗工液は、例えば、キャスティング法などにより塗布することができる。
前記電荷発生層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。
<<電荷輸送層>>
前記電荷輸送層は、帯電電荷を保持させ、かつ、露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的を達成するためには、電気抵抗が高いことが要求される。また、保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さく、かつ、電荷移動性がよいことが要求される。
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有し、結着樹脂を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
−電荷輸送性物質−
前記電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送物質、正孔輸送物質、高分子電荷輸送物質などが挙げられる。
−−電子輸送物質−−
前記電子輸送物質(電子受容性物質)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
−−正孔輸送物質−−
前記正孔輸送物質(電子供与性物質)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
−−高分子電荷輸送物質−−
前記高分子電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルバゾール環を有する重合体、ヒドラゾン構造を有する重合体、ポリシリレン重合体、トリアリールアミン構造を有する重合体、電子供与性基を有する重合体、その他の重合体などが挙げられる。
前記カルバゾール環を有する重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物などが挙げられる。
前記ヒドラゾン構造を有する重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物などが挙げられる。
前記ポリシリレン重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461号公報、特開平4−264130号公報、特開平4−264131号公報、特開平4−264132号公報、特開平4−264133号公報、特開平4−289867号公報に記載の化合物などが挙げられる。
前記トリアリールアミン構造を有する重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物などが挙げられる。
前記電子供与性基を有する重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の単量体との共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーなどが挙げられる。更には、例えば、特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることもできる。
前記その他の重合体としては、例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物などが挙げられる。
前記高分子電荷輸送物質としては、上記以外にも、例えば、トリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリウレタン樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエステル樹脂、トリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂などが挙げられる。前記高分子電荷輸送物質としては、例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報等に記載の化合物などが挙げられる。
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、前記電荷輸送層は、架橋性のバインダー樹脂と架橋性の電荷輸送物質との共重合体を含むこともできる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶剤、可塑剤、レベリング剤などが挙げられ、上述の酸化防止剤を含んでもよい。
−−溶剤−−
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、前記電荷輸送物質及び前記結着樹脂を良好に溶解する溶剤が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
−−可塑剤−−
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般樹脂の可塑剤などが挙げられる。
前記可塑剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0質量部〜30質量部が好ましい。
−−レベリング剤−−
前記レベリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー乃至オリゴマーなどが挙げられる。
前記レベリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0質量部〜1質量部が好ましい。
−電荷輸送層の形成方法−
前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷輸送物質及び前記結着樹脂を前記溶剤等の前記その他の成分に溶解乃至分散して得られた塗工液を、前記電荷発生層上に塗布して乾燥することにより形成する方法などが挙げられる。なお、前記塗工液は、例えば、キャスティング法などにより塗布することができる。
前記電荷輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
<<その他の層>>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下引き層、中間層などが挙げられる。
−下引き層−
前記下引き層は、前記導電性支持体と前記感光層との間に設けることができる。
前記下引き層は、樹脂を含有し、更に必要に応じて上述の酸化防止剤、微粉末顔料、カップリング剤等のその他の成分を含有する。
前記下引き層に含まれる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、前記樹脂の上に感光層を溶剤で塗布する点で、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂が好ましい。
前記下引き層に含まれる微粉末顔料としては、モアレ防止、残留電位の低減等を図ることができる顔料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物などが挙げられる。
前記下引き層に含まれるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などが挙げられる。
前記下引き層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層であってもよく、上記種類の組合せで2層以上の積層であってもよい。
前記下引き層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いた形成方法;Alを陽極酸化して形成する方法;ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて形成する方法などが挙げられる。
前記下引き層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜5μmが好ましい。
−中間層−
前記中間層は、前記電荷輸送層と前記架橋型電荷輸送層との間に、前記架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分の混入を抑える又は両層間の接着性を改善することを目的として設けることができる。
前記中間層は、架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、結着樹脂を含有し、更に必要に応じて上述の酸化防止剤等のその他の成分を含有する。
前記中間層に含まれる結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成する方法などが挙げられる。
前記中間層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜2μmが好ましい。
以下では、本発明の電子写真感光体の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る電子写真感光体の層構成について、図1を用いて説明する。
図1は、最も基本的な積層感光体の構成例であり、導電性支持体1上に電荷発生層2、電荷輸送層3を順次積層したものである。負帯電で使用する場合は電荷輸送層にホール輸送性電荷輸送物質が使用され、正帯電で使用される場合は電荷輸送層に電子輸送性電荷輸送物質が使用される。この場合、最表面層は、電荷輸送層3である。
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る電子写真感光体の層構成について、図2を用いて説明する。
図2は、基本構成(第1の実施形態)の積層感光体に下引き層4を設けた構成であり、最も実用化されている構成である。この場合、最表面層は、電荷輸送層3である。
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る電子写真感光体の層構成について、図3を用いて説明する。
図3は、第2の実施形態に、更に保護層として架橋型電荷輸送層5を最表面に設けた構成である。この場合、最表面層は、架橋型電荷輸送層5である。
ここで、下引き層4は必須ではないが、電荷リークの防止等に重要な機能を果たしており、通常は使用される。
この感光体構成の場合、電荷発生層から感光体表面までの電荷移動を電荷輸送層3と架橋型電荷輸送層5の二層で分担しており、主機能を分離することができる。例えば、電荷輸送性に優れる電荷輸送層と機械的耐久性に優れる架橋型電荷輸送層を組み合わせることで電荷輸送性にも優れ機械的耐久性にも優れた電子写真感光体の提供が可能になる。
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る電子写真感光体の層構成について、図4を用いて説明する。
図4は、導電性支持体1上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層6を設けた構成である。この場合、最表面層は、感光層6である。
最表面層に電荷発生物質を含有させることが必要であり、最表面層を形成するための塗工液であって電荷発生物質を混合分散した塗工液を作製して、塗工後、加熱乾燥により重合反応させて最表面層を作製する。
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る電子写真感光体の層構成について、図5を用いて説明する。
図5は、単層の感光層6上に保護層7を設けた構成である。この場合、最表面層は保護層7である。
<電子写真感光体の製造方法>
本発明の前記電子写真感光体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、最表面に3次元架橋ポリマーを有する最表面層を有する本発明の前記電子写真感光体の製造方法であって、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合して前記3次元架橋ポリマーを形成する3次元架橋ポリマー形成工程を含む電子写真感光体の製造方法が好ましい。
前記導電性支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電子写真感光体の説明において例示した前記導電性支持体などが挙げられる。
前記導電性支持体の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記感光層としては、最表面に前記最表面層を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、少なくとも電荷発生層と、電荷輸送層と、最表面層(架橋型電荷輸送層)とをこの順に有し、更に必要に応じて、その他の層を有する感光層などが挙げられる。
前記電荷発生層及び前記電荷輸送層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電子写真感光体の説明において例示した前記電荷発生層及び前記電荷輸送層などが挙げられる。
前記電荷発生層及び前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記3次元架橋ポリマー形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記電子写真感光体の説明において例示した前記3次元架橋ポリマーの形成方法などが挙げられる。
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。前記画像形成装置において使用する電子写真感光体が、上述の本発明の電子写真感光体である。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
本発明に関する画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。前記画像形成方法において使用する電子写真感光体が、上述の本発明の電子写真感光体である。なお、帯電工程と、露光工程とを合わせて静電潜像形成工程と称することもある。
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に実施できる。前記帯電工程は、前記帯電手段により好適に実施でき、前記露光工程は、前記露光手段により好適に実施でき、前記現像工程は、前記現像手段により好適に実施でき、前記転写工程は、前記転写手段により好適に実施でき、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に実施できる。
<帯電工程及び帯電手段>
前記帯電工程としては、前記電子写真感光体表面を帯電させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記帯電手段により実施できる。
前記帯電手段としては、前記電子写真感光体表面を帯電させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器(電子写真感光体表面と帯電器との間に100μm以下の空隙を有する近接方式の非接触帯電器を含む)などが挙げられる。
<露光工程及び露光手段>
前記露光工程としては、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記露光手段により実施できる。
前記露光手段としては、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系等の各種露光器などが挙げられる。前記露光器における光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の高輝度が確保できる光源などが挙げられる。なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
前記露光工程における電子写真感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式により行われることが好ましい。これによりPC(パーソナルコンピュータ)での文書及び画像作製出力に効率よく対応できる画像形成方法が提供できる。
前記露光手段による電子写真感光体上への静電潜像書き込みは、デジタル方式であることが好ましい。これによりPCでの文書及び画像作製出力に効率よく対応できる画像形成装置が提供できる。
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程としては、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記現像手段により実施できる。
前記現像手段としては、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーを含有する現像剤を収容し、前記静電潜像に該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好ましい。前記現像器としては、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。これらの中でも、前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有するものが好ましい。前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
<転写工程及び転写手段>
前記転写工程としては、前記可視像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記転写手段により実施できる。
前記転写手段としては、前記可視像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記転写工程としては、例えば、前記電子写真感光体表面から記録媒体に可視像を直接転写する方法と、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する方法がある。いずれの態様も良好に使用することができるが、高画質化に際して転写による悪影響が大きいような場合には、転写回数が少ない前者(直接転写)の方法が好ましい。前記転写は、例えば、前記可視像を、転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。
<定着工程及び定着手段>
前記定着工程としては、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記定着手段により実施できる。
前記定着手段としては、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好ましい。前記加熱加圧手段としては、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。前記加熱加圧手段における加熱としては、通常80℃〜200℃が好ましい。前記定着としては、例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程及びその他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電工程及び除電手段、クリーニング工程及びクリーニング手段、リサイクル工程及びリサイクル手段、制御工程及び制御手段などが挙げられる。
−除電工程及び除電手段−
前記除電工程としては、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記除電手段により実施できる。
前記除電手段としては、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
−クリーニング工程及びクリーニング手段−
前記クリーニング工程としては、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記クリーニング手段により実施できる。
前記クリーニング手段としては、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
−リサイクル工程及びリサイクル手段−
前記リサイクル工程としては、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リサイクル手段により実施できる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
−制御工程及び制御手段−
前記制御工程としては、前記各工程を制御する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記制御手段により実施できる。
前記制御手段としては、前記各工程を制御する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
前記画像形成装置及び前記画像形成方法は、繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性及び耐ガス安定性にも優れる。
以下では、本発明の画像形成装置の実施形態について説明する。
図6は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置の一例を示す概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図6に示すように、電子写真感光体10は、矢印の方向に回転し、電子写真感光体10の周りには、帯電手段としての帯電部材11、露光手段としての画像露光部材12、現像手段としての現像部材13、転写手段としての転写部材16、クリーニング手段としてのクリーニング部材17、除電手段としての除電部材18などが配置される。クリーニング部材17、及び除電部材18が省略されることもある。
図6に示すように、画像形成装置の動作は基本的に以下のようになる。帯電部材11により、電子写真感光体10表面に対してほぼ均一に帯電が施される。続いて、画像露光部材12により、入力信号に対応した画像光書き込みが行われ、静電潜像が形成される。次に、現像部材13により、この静電潜像に現像が行われ、電子写真感光体表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、転写部材16により、搬送ローラ14により転写部位に送られた記録媒体としての転写紙15に転写される。このトナー像は、図示しない定着装置により転写紙15上に定着される。転写紙に転写されなかった一部のトナーは、クリーニング部材17によりクリーニングされる。ついで、電子写真感光体上に残存する電荷は、除電部材18により除電が行われ、次のサイクルに移行する。
図6に示すように、電子写真感光体10はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電部材11、転写部材16には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
一方、画像露光部材12、除電部材18などの光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、電子写真感光体10に光が照射される。ただし、除電工程における電子写真感光体10への露光は、電子写真感光体10に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印加することによっても除電することが可能な場合もあり、電子写真感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
電子写真感光体10に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、電子写真感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
電子写真感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質としては、紙粉もその一つであり、それらが電子写真感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により電子写真感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
現像部材13により、電子写真感光体10上に現像されたトナーは、転写紙15に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、電子写真感光体10上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング部材17により、電子写真感光体10から除去される。このクリーニング部材17は、クリーニングブレードあるいはクリーニングブラシ等公知のものが用いられる。また、両者が併用されることもある。
本発明による電子写真感光体は、高光感度及び高安定化を実現したことから小径電子写真感光体に適用できる。したがって、上記の電子写真感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の電子写真感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の電子写真感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置の一例を示す概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、電子写真感光体(10C(シアン),10M(マゼンタ),10Y(イエロー),10K(ブラック))は、ドラム状の電子写真感光体10であり、これらの感光体(10C,10M,10Y,10K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(11C,11M,11Y,11K)、現像部材(13C,13M,13Y,13K)、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)が配置されている。前記帯電部材(11C,11M,11Y,11K)と、前記現像部材(13C,13M,13Y,13K)との間の電子写真感光体10の外側より、図示しない画像露光部材からのレーザー光(12C,12M,12Y,12K)が照射され、電子写真感光体(10C,10M,10Y,10K)に静電潜像が形成される。
図7において、電子写真感光体(10C,10M,10Y,10K)を中心とした4つの画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト19)に沿って並置されている。転写搬送ベルト19は、各画像形成ユニット(20C、20M、20Y、20K)の現像部材(13C,13M,13Y,13K)と、クリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)との間で電子写真感光体(10C,10M,10Y,10K)に当接しており、転写搬送ベルト19の電子写真感光体10側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写部材(16C,16M,16Y,16K)が配置されている。各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図7に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(20C、20M、20Y、20K)において、電子写真感光体(10C,10M,10Y,10K)が、電子写真感光体10と連れ周り方向に回転する帯電部材(11C,11M,11Y,11K)により帯電され、次に、電子写真感光体10の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(12C,12M,12Y,12K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
次に現像部材(13C,13M,13Y,13K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(13C,13M,13Y,13K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの電子写真感光体(10C,10M,10Y,10K)上で作られた各色のトナー像は転写ベルト19)上で重ねられる。
転写紙15は給紙コロ21によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ22で一旦停止し、上記電子写真感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写部材23に送られる。転写ベルト19上に保持されたトナー像は転写部材23に印加された転写バイアスと転写ベルト19との電位差から形成される電界により、転写紙15上に転写される。転写紙上に転写されたトナー像は、搬送されて、定着部材24により転写紙上にトナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各電子写真感光体(10C,10M,10Y,10K)上に残った残留トナーは、それぞれのユニットに設けられたクリーニング部材(17C,17M,17Y,17K)で回収される。
図7に示すような中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、電子写真感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
なお、図7の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(20C,20M,20Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
以上に示すような画像形成手段において、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
(プロセスカートリッジ)
本発明に関するプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び徐電手段から選択される少なくとも1つの手段を有し、画像形成装置に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体が、上記の本発明の電子写真感光体である。これにより繰返し使用時の画像安定性が高く、かつ画像欠陥の少ない高画質を長期にわたって維持することができ、環境安定性や耐ガス性にも優れるプロセスカートリッジの提供が可能になる。
前記プロセスカートリッジとは、一例を図8に示すように、電子写真感光体10を内蔵し、他に帯電部材11、画像露光部材12、現像部材13、転写部材16、クリーニング部材17、及び除電部材を含んだ1つの装置(部品)である。なお、符号15は、転写紙である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
なお、実施例中において使用する「部」は、全て質量部を表す。
また、略号、p−TolSOHは、パラトルエンスルホン酸を表し、EtOHは、エタノールを表し、t−BuPは、トリターシャルブチルホスフィンを表し、t−BuONaは、ターシャルブトキシナトリウムを表し、Pd(OAc)は、酢酸パラジウムを表し、Pd[(t−Bu)P]は、ビス(トリ−t−ブトキシホスフィン)パラジウムを表す。
(合成例1)
<3次元架橋ポリマーの材料の中間体の合成>
3次元架橋ポリマーの材料の中間体である4−[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチルブロモベンゼンの合成は、下記の手順により行った。
まず、4−ブロモベンジルアルコール(50.43g)、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(45.35g)、及びテトラヒドロフラン(150mL)を四つ口フラスコに入れ、5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸(0.512g)を投下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、室温にて2時間撹拌し、酢酸エチルにて抽出して、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、目的物を得た(収量72.50g、無色オイル状物)。反応式を下記に示す。図9に、合成例1で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例2)
<メチロール化合物(比較例化合物A)の合成>
メチロール中間体である4,4’−ビス[ジ(4−ヒドロキシメチルフェニル)アミノ]ジフェニルメタンの合成は、下記の手順により行った。
まず、中間体アルデヒド化合物(12.30g)、及びエタノール(150mL)を四つ口フラスコに入れ、室温にて撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム(3.63g)を投下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、室温にて4時間撹拌し、酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行った。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、アモルファス状物質を得た。これを、n−ヘキサンにて分散させた後、濾過、洗浄、及び乾燥することにより、目的物を得た(収量12.0g、薄黄白色アモルファス状物)。反応式を下記に示す。図10に、合成例2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例3)
<中間体メチロール化合物(比較例化合物B)の合成>
まず、中間体アルデヒド化合物(3.29g)、エタノール(50mL)を四つ口フラスコに入れ、室温にて撹拌し、水素化ホウ素ナトリウム(1.82g)を投下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、室温にて12時間撹拌し、酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行った。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、結晶物を得た。これを、n−ヘキサンにて分散させた後、濾過、洗浄、及び乾燥することにより、目的物を得た(収量2.78g、白色結晶)。反応式を下記に示す。図11に、合成例3で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例4)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(1−4)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、中間体メチロール化合物(3.4g)、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(4.65g)、及びテトラヒドロフラン(100mL)を四つ口フラスコに入れ、5℃にて撹拌し、パラトルエンスルホン酸(58mg)を投下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、室温にて5時間撹拌し、酢酸エチルにて抽出し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量2.7g、無色オイル状物)。反応式を下記に示す。図12に、合成例4で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例5)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(2−1)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(2.99g)、合成例1で得られた化合物(17.896g)、酢酸パラジウム(0.336g)、ターシャルブトキシナトリウム(13.83g)、及びo−キシレン(100mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌し、トリターシャルブチルホスフィン(1.214g)を滴下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、80℃にて1時間攪拌し、還流にて1時間撹拌して、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色アモルファス状物)。反応式を下記に示す。図13に、合成例5で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例6)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(2−8)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3.0g)、合成例1で得られた化合物(17.896g)、酢酸パラジウム(0.336g)、ターシャルブトキシナトリウム(13.83g)、及びo−キシレン(100mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌し、トリターシャルブチルホスフィン(1.214g)を滴下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、80℃にて1時間攪拌し、還流にて1時間撹拌して、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行った。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。反応式を下記に示す。図14に、合成例6で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例7)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(2−13)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、4,4’−エチレンジアニリン(3.18g)、合成例1で得られた化合物(17.896g)、酢酸パラジウム(0.336g)、ターシャルブトキシナトリウム(13.83g)、及びo−キシレン(100mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌し、トリターシャルブチルホスフィン(1.214g)を滴下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、80℃にて1時間攪拌し、還流にて1時間撹拌して、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=20/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量5.7g、薄黄色オイル状物)。反応式を下記に示す。図15に、合成例7で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例8)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(2−21)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(10.335g)、合成例1で得られた化合物(39.05g)、酢酸パラジウム(0.673g)、ターシャルブトキシナトリウム(27.677g)、及びo−キシレン(200mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌し、トリターシャルブチルホスフィン(2.43g)を滴下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、80℃にて1時間攪拌し、還流にて2時間撹拌して、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量23.5g、薄黄色アモルファス状物)。反応式を下記に示す。図16に、合成例8で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例9)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(2−18)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキセン(9.323g)、合成例1で得られた化合物(45.55g)、酢酸パラジウム(0.785g)、ターシャルブトキシナトリウム(32.289g)、及びo−キシレン(300mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌し、トリターシャルブチルホスフィン(2.43g)を滴下して溶液を調製した。次いで、この溶液を、80℃にて1時間攪拌し、還流にて2時間撹拌して、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量11.42g、黄色アモルファス状物)。反応式を下記に示す。図17に、合成例9で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例10)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(3−3)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、1,3−フェニレンジアミン(0.541g)、合成例1で得られた化合物(6.508g)、ターシャルブトキシナトリウム(3.844g)、ビス(トリ−t−ブトキシホスフィン)パラジウム(52mg)、及びo−キシレン(20mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌して溶液を調製した。次いで、この溶液を、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=10/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量3.02g、薄黄色アモルファス状物)。反応式を下記に示す。図18に、合成例10で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(合成例11)
<3次元架橋ポリマーの材料の合成>
3次元架橋ポリマーの材料である電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3個以上有する化合物(下記構造式(3−22)で表される化合物)の合成は、以下の手順により行った。
まず、1,5−ジアミノナフタレン(0.791g)、合成例1で得られた化合物(6.508g)、ターシャルブトキシナトリウム(3.844g)、ビス(トリ−t−ブトキシホスフィン)パラジウム(52mg)、及びo−キシレン(20mL)を四つ口フラスコに入れ、アルゴンガス雰囲気下で、室温にて撹拌して溶液を調製した。次いで、この溶液を、還流にて1時間撹拌して、トルエンにて希釈し、硫酸マグネシウムにて脱水し、活性白土及びシリカゲルにて吸着処理を行なった。そして、これを濾過、洗浄、及び濃縮することにより、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質をシリカゲルカラムにて精製(トルエン/酢酸エチル=9/1)(体積比)して単離し、目的物を得た(収量2.56g、薄黄色アモルファス状物)。反応式を下記に示す。図19に、合成例11で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)を示す。
(実施例1)
<電子写真感光体の製造>
直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、下記組成の電荷発生層塗工液、及び下記組成の電荷輸送層塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み25μmの電荷輸送層を形成した。
得られた電荷輸送層上に、下記組成の架橋型電荷輸送層塗工液をスプレー塗工し、150℃で30分間加熱乾燥を行い、厚み5.0μmの架橋型電荷輸送層(最表面層)を設けた。以上により、実施例1の電子写真感光体を製造した。
[下引き層塗工液の組成]
・アルキッド樹脂 ・・・ 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
・メラミン樹脂 ・・・ 4部
(スーパーベッカミンG−821−60、DIC社製)
・酸化チタン(CREL、石原産業株式会社製) ・・・40部
・メチルエチルケトン ・・・50部
[電荷発生層塗工液の組成]
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) ・・・0.5部
・シクロヘキサノン ・・・200部
・メチルエチルケトン ・・・ 80部
・下記構造式で表されるビスアゾ顔料 ・・・2.4部
[電荷輸送層塗工液の組成]
・ビスフェノールZポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成社製) ・・・ 10部
・テトラヒドロフラン ・・・100部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業社製) ・・・0.2部
・下記構造式(A−1)で表される低分子電荷輸送物質 ・・・ 5部
[架橋型電荷輸送層(最表面層)塗工液の組成]
・合成例4で合成した構造式(1−4)で表される化合物
(3次元架橋ポリマーの材料) ・・・ 10部
・ビニルスルホン酸(旭化成ファインケム社製) ・・・0.015部
・テトラヒドロフラン(特級) ・・・ 90部
(実施例2〜10)
<電子写真感光体の製造>
実施例1において、[架橋型電荷輸送層塗工液]における[3次元架橋ポリマーの材料]を表1に記載の[3次元架橋ポリマーの材料]に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例1)
<電子写真感光体の製造>
実施例1において、[架橋型電荷輸送層塗工液]におけるビニルスルホン酸をドデシルベンゼンスルホン酸に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例2)
<電子写真感光体の製造>
実施例1において、[架橋型電荷輸送層塗工液]における0.015部のビニルスルホン酸を0.045部のドデシルベンゼンスルホン酸に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例3)
実施例1において、[架橋型電荷輸送層塗工液]における[3次元架橋ポリマーの材料]を下記構造式で表される比較例化合物Aに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例4)
実施例1において、[架橋型電荷輸送層塗工液]における[3次元架橋ポリマーの材料]を下記構造式で表される比較例化合物Bに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例5)
<電子写真感光体の製造>
実施例9において、[架橋型電荷輸送層塗工液]におけるビニルスルホン酸をパラトルエンスルホン酸に代えた以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体を作製した。
(比較例6)
<電子写真感光体の製造>
実施例1において、[架橋型電荷輸送層塗工液]における0.015部のビニルスルホン酸を0.0255部のパラトルエンスルホン酸に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
<架橋型電荷輸送層(最表面層)の溶解性試験及び表面平滑性評価>
架橋型電荷輸送層の架橋反応性を溶解性試験にて評価した。溶解性試験は、以下の方法で行った。アルミニウム支持体上に架橋型電荷輸送層塗工液を実施例1〜10及び比較例1〜6と同様に直接塗工し、熱乾燥して得た膜に対して、テトラヒドロフランに浸した綿棒でその膜(硬化物)表面を擦り、その表面を観察した。評価結果を表1に示す。溶解性は、表面が溶解したもの、又は膜剥がれしたものを「溶解」、表面が無傷及び無跡のものを「不溶」として評価した。
表面平滑性は、表面粗さ形状測定機(東京精密社製、サーフコム1400D)にて、架橋型電荷輸送層表面のJIS−1982規格による十点平均粗さ(Rz)値を求めることで評価した。1μm以下を「良好」、1μmを超える場合を「不良」と判定した。
実施例1〜10及び比較例1〜6の硬化膜は、良好な架橋反応性を有しており、いずれも溶解性において不溶となった。また、表面平滑性も良好であった。
<画像出力評価>
実施例1〜10、及び比較例1〜6で作製した各電子写真感光体の機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を評価した。株式会社リコー製デジタルフルカラー複合機imagioNeo455のプロセスカートリッジに、得られた電子写真感光体を着装し、暗部電位700(−V)に設定した後に、連続してトータル10万枚の印刷を行った。結果を表2に示す。
画像品質は、600dpi 2×2の画像チャートを出力し、画像濃度計(X−Rite939:SDG社製)により測定することで評価した。
機械的耐久性は、初期及び10万枚印刷後での架橋型電荷輸送層の厚みの差から摩耗量を測定することで評価した。
電気的特性は、初期及び10万枚印刷後の画像露光光源光量が約0.4μJ/cmにおける明部電位と10万枚印刷後の暗部電位とを測定することで評価した。
環境安定性は、10万枚印刷後に上記画像出力装置を30℃90%RHの高温高湿室に入れた際の、出力画像の画像品質により評価した。
耐ガス安定性は、NOx暴露試験装置(ダイレック社製)を用いて、作製した電子写真感光体を、一酸化窒素濃度:50ppmかつ二酸化窒素濃度:50ppmの濃度にて、30℃40%RH下で4日間暴露し、NOx暴露後の出力画像の画像品質を確認することで評価した。
なお、画像品質は、下記指標に従って判定した。
(画像品質評価基準)
◎:濃度が0.3を超える
○:濃度が0.2を超え、0.3以下
△:濃度が0.1を超え、0.2以下
×:濃度が0以上0.1以下
表2の結果から、実施例1〜10の電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物を、ビニルスルホン酸を用いて重合して得られる3次元架橋ポリマーを有する架橋型電荷輸送層(最表面層)を有する電子写真感光体は、耐摩耗性が高く機械的耐久性に優れ、暗部電位の低下が少ない優れた電気的特性を有し、環境安定性及び耐ガス安定性に優れ、高寿命な電子写真感光体であることがわかる。
特に、実施例1〜5の電子写真感光体は、環境安定性及び耐ガス安定性に非常に優れており、実施例6〜8の電子写真感光体は、明部電位が低く、電荷輸送性に優れていた。
硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸を用いた比較例1は、実施例1と比べて耐摩耗性が悪く機械的耐久性が不十分であり、更に明部電位の上昇、及び暗部電位の低下が見られ、画像品質も劣っていた。また、実施例1のビニルスルホン酸と同程度のモル濃度のドデシルベンゼンスルホン酸を用いた比較例2は、耐摩耗性の向上は認められるものの、暗部電位の低下が見られ、かつ画像品質は大きく劣るものであった。
また、メチロール基を有する電荷輸送性化合物の架橋膜を用いた比較例3、及び4は、暗部電位の低下が見られ、かつ画像品質が劣るものであった。
硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸を用いた比較例5は、実施例9と比べて耐摩耗性が低く機械的耐久性に劣り、耐ガス安定性が少し低下した。また、実施例1のビニルスルホン酸と同程度のモル濃度のパラトルエンスルホン酸を用いた比較例6は、耐摩耗性や電気的特性は同等であるものの、耐ガス安定性が少し低下し、画像品質が劣るものであった。
以上より、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物を、ビニルスルホン酸を硬化触媒として用いて重合して得られる3次元架橋表面ポリマーを最表面層に有する電子写真感光体は、優れた機械的耐久性、電気的特性、環境安定性、耐ガス安定性を兼ね備え、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジは、高画質な画像出力を長期に渡って出力し続けることが可能であり、特に、環境変動が発生する環境下においても安定して高画質な画像を出力し続けることができる。
1 導電性支持体
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
5 架橋型電荷輸送層
6 感光層(最表面層)
7 保護層
10 電子写真感光体
10Y 電子写真感光体
10M 電子写真感光体
10C 電子写真感光体
10K 電子写真感光体
11 帯電部材
11Y 帯電部材
11M 帯電部材
11C 帯電部材
11K 帯電部材
12 画像露光部材
13 現像部材
13Y 現像部材
13M 現像部材
13C 現像部材
13K 現像部材
15 転写紙
16 転写部材
16Y 転写部材
16M 転写部材
16C 転写部材
16K 転写部材
17 クリーニング部材
17Y クリーニング部材
17M クリーニング部材
17C クリーニング部材
17K クリーニング部材
23 転写部材
24 定着部材
特開2000−066425号公報 特開2000−171990号公報 特開2003−186223号公報 特開2007−293197号公報 特開2008−299327号公報 特許第4262061号公報 特開2006−251771号公報 特開2009−229549号公報 特開2006−084711号公報

Claims (10)

  1. 導電性支持体と、該導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体であって、
    前記電子写真感光体が、最表面層を有し、
    前記最表面層が、硬化触媒としてのビニルスルホン酸を用い、電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物から、前記[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基の一部が切れて脱離する反応により重合して形成される3次元架橋ポリマーを有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 3次元架橋ポリマーが、テトラヒドロフランに不溶である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(1)中、Ar、Ar及びArは、アルキル基を置換基として有してもよい炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表す。
  4. 電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(2)中、Xは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、フェニレン基を介して炭素数2〜6のアルキリデン基が2個結合した2価基、又は酸素原子を表し、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar及びArは、アルキル基を置換基として有してもよい炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表す。
  5. 電荷輸送性化合物の芳香環に[(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ]メチル基を3つ以上有する化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(3)中、Yは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、ジスチリルベンゼン、又は縮合多環の芳香族炭化水素の2価基を表し、Ar10、Ar11、Ar12及びAr13は、アルキル基を置換基として有してもよい炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表す。
  6. 一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−1)で表される化合物である請求項3に記載の電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(1−1)中、R、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、l、n及びmは、1〜4の整数を表す。
  7. 一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(2−1)で表される化合物である請求項4に記載の電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(2−1)中、Xは、−CH−、−CHCH−、−C(CH−Ph−C(CH−、−C(CH−、又は−O−を表し、R、R、R、R、R及びRは、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Phは、フェニレン基を表し、o、p、q、r、s及びtは、1〜4の整数を表す。
  8. 一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3−1)で表される化合物である請求項5に記載の電子写真感光体。
    ただし、前記一般式(3−1)中、Yは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、又はナフタレンの2価基を表す。R10、R11、R12及びR13は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、u、v、w及びzは、1〜4の整数を表す。
  9. 感光層が、少なくとも電荷発生層と、電荷輸送層と、架橋型電荷輸送層とをこの順に有し、前記架橋型電荷輸送層が、前記感光層の最表面層である請求項1から8のいずれかに記載の電子写真感光体。
  10. 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、請求項1から9のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
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