(電子写真感光体)
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体表面に設けた感光層と、を有し、感光層の最表面層が、後述する一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種を用いた層であることを特徴としている。
本実施形態に係る電子写真感光体では、上記構成とすることで、感光層の最表層の機械的強度が高いと共に剥がれが抑制され、長期にわたる繰り返し使用による電気特性及び画質特性の劣化が抑制され、環境依存性が低く安定して画像が得られる。この理由は定かではないが、以下のように推測される。
即ち、フェノール樹脂中に存在するフェノール性水酸基は、ガスバリア性、機械的強度向上には有効であるが、一方でNOx等の放電生成ガスを吸着しやすいため、電荷輸送材料との間で形成された所謂CT錯体が長時間に渡って安定化されるために画像流れを発生しやすい。また、フェノール性水酸基の極性により、キャリアのトラップを生じ、電気特性のサイクル安定性が低下する。また、フェノール樹脂を用いると、硬化時の体積収縮が大きく、下層の電荷輸送層との接着性が著しく低くなり、加えて、環境依存性も悪くなる。
これに対し、本実施形態では、上記最表面層が、特定の化合物を用いることから、放電生成ガスの吸着や、キャリアトラップを生じるフェノール性水酸基を有さず、かつ、高度に架橋された構造となる。また、上記再表面層が、特定の化合物を用いることから、硬度が高い膜となり、画像形成装置内外から混入する導電性異物の該感光体への突き刺りを減少させることによりリーク発生が予防される。さらに、上記最表面層の膜磨耗を抑えられ、長期繰り返し使用に対してもリーク発生が防止される。
従って、本実施形態に係る電子写真感光体では、上記効果を奏されるものと推測される。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体)
以下に本発明で使用される電子写真感光体について説明する。
図1は、実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
図1に示す電子写真感光体7は、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。
図2に示す電子写真感光体7は、図1に示す電子写真感光体7と同様に電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された感光層を備えるものである。また、図3に示す電子写真感光体7は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
図2に示す電子写真感光体7においては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷輸送層3、電荷発生層2、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。また、図3に示す電子写真感光体7においては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された感光層が設けられている。
そして、上記図1乃至図3に示す電子写真感光体7が、上記最表面層に相当する。なお、図1乃至図3に示す電子写真感光体において、下引層は設けても設けなくてもよい。
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7に基づいて、各要素について説明する。
<導電性基体>
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、又は、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
電子写真感光体7がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性基体4表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、当該処理温度の範囲よりも低い場合に比べ一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の他種に比べ被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
<下引層>
下引層1は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。これは下引層1はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要でるためである。なお、上記範囲の下限よりも無機粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
中でも上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子を用いるのが望ましく、特に酸化亜鉛は望ましく用いられる。
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m2/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m2/g未満のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
さらに無機粒子とアクセプター性化合物を含有させることで電気特性の長期安定性、キャリアブロック性に優れたものが得られる。アクセプター性化合物としては所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
これらのアクセプター性化合物の含有量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定してもよいが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。さらに電荷蓄積防止と無機粒子の凝集を防止する観点から0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成にバラツキが生じやすくなり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
アクセプター化合物は、下引層の塗布時に添加するだけでも良いし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法にて表面処理を施す場合には無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによってバラツキが生じることなく処理される。添加又は噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、バラツキが生じることなく攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまいバラツキのない処理ができにくい欠点があり、望ましくない。添加又は噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌又は分散したのち、溶剤除去することでバラツキが生じることなく処理される。溶剤除去方法はろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
また、無機粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層1に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いてもよいが、具体的例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法又は湿式法を用いることがよい。また、アクセプター付与とカップリング剤等による表面処理を同時に行ってもよい。
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定されるが分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層形成用塗布液中のアクセプター性を付与した金属酸化物とバインダー樹脂、又は無機粒子とバインダー樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
下引層1中には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いられる。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いてもよい。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物の例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いてもよい。
下引層形成用塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いられる。
また、これらの分散に用いる溶剤は単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法を用いられる。さらにこの下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
また、下引層1は、ビッカース強度が35以上とされていることが望ましい。
さらに、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定されるが、厚さが15μm以上が望ましく、さらに望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
下引層1の厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能を得ることができず、また50μm以上であるときには長期使用した場合に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい欠点がある。
また、下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等を用いられる。
また、表面粗さ調整のために下引層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等を用いられる。
塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。
<電荷発生層>
電荷発生層2は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより望ましい。
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
電荷発生層2は、上記電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が防止される。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
<電荷輸送層>
電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
(構造式(a−1)中、R8は、水素原子又はメチル基を示す。nは1又は2を示す。Ar6及びAr7は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R9)=C(R10)(R11)、又は−C6H4−CH=CH−CH=C(R12)(R13)を示し、R9乃至R13はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。)
(構造式(a−2)中、R14及びR14’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。R15、R15’、R16、及びR16’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R17)=C(R18)(R19)、又は−CH=CH−CH=C(R20)(R21)を示し、R17乃至R21は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
ここで、上記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び上記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C6H4−CH=CH−CH=C(R12)(R13)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C
(R20)(R21)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、ゴーストなどの観点で優れ望ましい。
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、上述のように、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材を用いてもよい。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5までが望ましい。
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、他種に比べ高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜可能であるが、後述する結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層3は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独又は2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の分散方法としては、公知の方法が使用される。
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
<保護層>
保護層5は、電子写真感光体7における最表面層であり、最表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせ、且つ、トナーの転写効率を上げるために設けられる層である。
保護層5は、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種を用いた層である。望ましくは、保護層5は、下記一般式(A)で示される少なくとも1種を硬化(架橋)させた硬化物で構成された層であり、特に望ましくは、当該一般式(A)で示される化合物と電荷輸送性材料とを硬化(架橋)させた硬化物で構成された層である。
Ar−(CH2OR)m (A)
[一般式(A)中、Arは芳香族基を含む2価以上の有機基を示し、Rは水素原子、又は炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、mは2以上の整数を示す。ただし、Arはフェノール性水酸基を有さない。]
一般式(A)において、Arは芳香族基を含む2価以上の有機基の構造としては、例えば、ベンゼン環、縮合芳香族基、多核芳香族基等が挙げられる。特に、Arとして示す有機基が含む芳香族基に、「−(CH2OR)」に置換されていることがよい。また、Arはフェノール性水酸基を有さないが、窒素原子も有さないことが望ましい。
ここで、縮合芳香族基は、芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物であり、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、フルオレン等が挙げられる。
多核芳香族基は、芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が炭素−炭素結合によって結合している芳香族基であり、例えば、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン等が挙げられる。また、ジフェニルエーテル基などのエーテル構造を持つものも溶解性に優れ、好ましい。
一般式(A)において、Arは芳香族基を含む2価以上の有機基は、その芳香環数が1以上5以下であること望ましく、より望ましくは、1以上3以下である。芳香環数が上記範囲であると、より効果的に、感光層の最表層の機械的強度が高いと共に剥がれが抑制され、長期にわたる繰り返し使用による電気特性及び画質特性の劣化が抑制され、環境依存性が低く安定して画像が得られる。
一般式(A)において、特に、Arは芳香族基を含む2価以上の有機基としては、下記(Ar−1)乃至(Ar−9)に示される構造より選択される2価以上の有機基であることが望ましく、より望ましくは、下記(Ar−1)乃至(Ar−3)に示される構造より選択される2価以上の有機基である。特に、Arが下記構造から選択されると、より効果的に、感光層の最表層の機械的強度が高いと共に剥がれが抑制され、長期にわたる繰り返し使用による電気特性及び画質特性の劣化が抑制され、環境依存性が低く安定して画像が得られる。
なお本発明では、一般式(A)で示される化合物として、Arが下記(Ar−1)乃至(Ar−3)に示される構造より選択される2価以上の有機基であり、かつ、Arが(Ar−1)又は(Ar−2)に示される構造の2価以上の有機基を示す場合Rが炭素数1以上5以下のアルキル基であり、Arが(Ar−3)に示される構造の2価以上の有機基を示す場合Rが水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基である化合物を用いる。
一般式(A)において、Rが示すアルキル基は、その炭素数が1以上5以下であるが、望ましくは1以上3以下である。また、mは、2以上であるであるが、2以上5以下が望ましい。
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例を示すが、これに限定されるわけではない。また、これらから誘導されるオリゴマーであってもよい。なお、下記一覧中、「Me」はメチル基を示す。
なお本発明において用いられる一般式(A)で示される化合物の具体例としては、下記一覧中、A−10、A−11、A−18からA−25、A−27、及びA−28が挙げられる。
ここで、一般式(A)で示される化合物は、Rが水素原子を示す場合、対応するエステル化合物を水素化リチウムアルミニウムなどの還元剤をテトラヒドロフランなどの溶剤中で還元するか、ハロゲン化物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどで求核置換反応を行う一般的な方法で合成される。A−1を例に反応式を示す。また、一般式(A)で示される化合物は、Rがアルキル基を示す場合、対応するヒドロキシメチル化合物をt−BuOKなどの塩基の存在化、ヨウ化メチルなどのアルキルハライドと反応させて合成される。A−18を例に反応式を示す。
保護層5に用られる電荷輸送材料としては、例えば、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
電荷輸送材料としては、特に、下記構造式(I)から(V)までで示される化合物が好適に挙げられる。
F−[(X1)nR1−CO2H]m 構造式(I)
[構造式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R1はアルキレン基、mは1以上4以下の整数を示す。X1は酸素、又は硫黄、nは0又は1を示す。]
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z2)n3G]n4 構造式(II)
[構造式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基を、Z2はアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は1以上4以下の整数を示す。]
[構造式(III)中、Fは正孔輸送性を有するn5価の有機基を、Tは2価の基を、Yは酸素原子又は硫黄原子を、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を、R6は1価の有機基を、m1は0又は1を、n5は1以上4以下の整数を、それぞれ示す。但し、R5とR6は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。]
[構造式(IV)中、Fは正孔輸送性を有するn6価の有機基を、T2は2価の基を、R7は1価の有機基を、m2は0又は1を、n6は1以上4以下の整数を、それぞれ示す。]
[構造式(V)中、Fは正孔輸送性を有するn7価の有機基を、T3は2価のアルキレン基を、R0は1価の有機基を、n7は1以上4以下の整数を、それぞれ示す。]
かかる化合物を用いて得られる樹脂を電子写真感光体の表面層に含有せしめることで、電子写真感光体の電子写真特性、機械的強度、帯電特性等をより高められる。さらに、当該化合物は下記一般式(VI)で示される化合物であることが望ましい。
[構造式(VI)中、Ar1乃至Ar4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のアリール基を表し、Ar5は置換又は未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、cはそれぞれ独立に0又は1を表し、kは0又は1を表し、Dで表される基は下記式(VII)乃至(XI)から選択され、Dの総数は1以上4以下である]
−(X1)nR1−CO2H (VII)
−(X2)n1−(R2)n2−(Z2)n3G (VIII)
[式(VII)乃至(XI)中の記号は、それぞれ構造式(I)乃至(V)中の記号と同一である。]
また、一般式(VI)中のAr1乃至Ar4としては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。
[式(1)乃至(7)中、R8は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R9乃至R11はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Dは前記式(VII)乃至(XI)から選択され、c及びsはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
[式(8)、(9)中、R12及びR13はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
−(CH2)q− (10)
−(CH2CH2O)r− (11)
[式(10)乃至(17)中、R14及びR15はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
上記式(16)、(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。
−CH2− (18)
−C(CH3)2− (19)
−O− (20)
−S− (21)
−C(CF3)2− (22)
−Si(CH3)2− (23)
[式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す]
また、構造式(VI)中、Ar5は、kが0のときはAr1乃至Ar4の説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である
上記構造式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(I)−1乃至(I)−8が挙げられる。なお、上記構造式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記化合物中、結合手は記載されているが末端に置換基が記載されていないものは末端にメチル基を有するものを示す。具体的な化合物を以下に示すが、これらに限るものではない。
上記構造式(II)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(II−1)乃至(II−47)が挙げられる。なお、上記構造式(II)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記一覧中、結合手は記載されているが末端に置換基が記載されていないもの、又はMeは末端にメチル基を有するものを示す。また、Etはエチル基を示す。
上記構造式(III)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(III−1)乃至(III−40)が挙げられる。なお、上記構造式(III)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記一覧中、結合手は記載されているが末端に置換基が記載されていないもの、又はMeは末端にメチル基を有するものを示す。また、Etはエチル基を示す。
上記構造式(IV)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(IV−1)乃至(IV−13)が挙げられる。なお、上記構造式(IV)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記一覧中、結合手は記載されているが末端に置換基が記載されていないもの、又はMeは末端にメチル基を有するものを示す。
上記構造式(V)で示される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(V−1)乃至(V−20)が挙げられる。なお、上記構造式(V)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記一覧中、結合手は記載されているが末端に置換基が記載されていないもの、又はMeは末端にメチル基を有するものを示す。また、Etはエチル基を示す。
上記構造式(IV)で示される構造を有する化合物の合成方法としては、以下の式で示されるように、下記構造式(I−a)で示される水酸基を有する化合物と、下記構造式(I−b)で示されるハロゲン化物とを、有機溶媒中で、塩基触媒の存在下で反応させることによって、合成する方法が挙げられる。
ここで、上記構造式(I−a)におけるFは正孔輸送性を有するn6価の有機基、T2は2価の基を示し、m2は0又は1を示し、n6は1以上4以下の整数を示す。構造式(I−b)におけるXはハロゲン原子を、R7は1価の有機基例えば、炭素数1以上18以下の有機基を示す。上記構造式(IV)におけるFは正孔輸送性を有するn6価の有機基、T2は2価の基を示し、m2は0又は1を示し、R7は1価の有機基例えば、炭素数1以上18以下の有機基を示し、n6は1以上4以下の整数を示す。
上記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドなどを用いられる。
上記塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ピペリジンなどが用いられるが、これらのうち、トリエチルアミンやピリジンを用いることがより望ましい。塩基触媒の使用量は、上記構造式(I−a)で示される化合物の水酸基に対して、1倍モル量以上2倍モル量以下が望ましく、1.1倍モル量以上1.5倍モル量以下がより望ましい。
上記の反応は、用いる溶媒の沸点以下の任意の温度で行うことが可能であるが、副反応を抑えるために、室温(例えば25℃)から50℃の範囲で反応させることがより望ましい。
また、上記構造式(V)で示される化合物は、例えば、ヒドロキシアルキル基を有するトリフェニルアミン化合物を硫酸ジアルキル又はヨウ化アルキル等と反応させてヒドロキシアルキル基をエーテル化する方法により容易に合成可能である。その場合、使用する試薬としては、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等から任意に選ばれたものを用いることができ、ヒドロキシアルキル基に対して1当量以上3当量以下、望ましくは1当量以上2当量以下用いればよい。また、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、水素化ナトリウム及びナトリウム金属等から任意に選ばれたものを用いることができ、ヒドロキシアルキル基に対して1当量以上3当量以下、望ましくは1当量以上2当量以下用いればよい。また、反応は、0℃以上、使用溶剤の沸点以下の範囲内の温度で行われる。
また、反応の際に使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、それらから選択された単独の溶媒又は2種以上3種以下の混合溶媒を使用してもよい。また、反応によっては、層間移動触媒として、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等の4級アンモニウム塩を使用してもよい。
また、保護層5に含まれる電荷輸送材料と、一般式(A)で示される化合物とは質量比(電荷輸送材料:一般式(A)で示される化合物)で0.3:1乃至4:1が電気特性及び強度の点で好ましく、0.4:1乃至3:1がより望ましい。
また、保護層5には、放電生成ガスを吸着しすぎない程度に添加することで放電生成ガスによる酸化を効果的に抑制する目的から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの他の熱硬化性樹脂を混合して用いてもよい。
また、保護層5には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。この化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が用いられる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
また、保護層5の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
ここで、アルコールに可溶な樹脂とは、炭素数5以下のアルコールに1質量%以上溶解可能な樹脂を意味する。アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性の点でポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が望ましい。当該樹脂の重量平均分子量は2,000以上100,000以下が望ましく、5,000以上50,000以下がより望ましい。樹脂の分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、さらには塗布時に製膜不良を招く傾向にある。また、当該樹脂の添加量は1質量%以上40質量%以下が望ましく、1質量%以上30質量%以下がより望ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに望ましい。当該樹脂の添加量が1質量%未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、40質量%を超えると高温高湿下(例えば28℃、85%RH)での画像ボケが発生しやすくなる。
保護層5には、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
更に、保護層5には、残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、アルコール、ケトン、又はエステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。保護層5中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層5の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中にバラツキが生じることなくに取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。保護層5中のシリコーン粒子の含有量は、保護層5の全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される如く、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
また、保護層5には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
保護層5には、一般式(A)で示される化合物や電荷輸送材料の硬化を促進するために硬化触媒を使用してもよい。硬化触媒として酸系の触媒を望ましく用いられる。酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、及び芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが望ましい。
硬化触媒として含硫黄系材料を用いることにより、この含硫黄系材料が一般式(A)で示される化合物や電荷輸送材料の硬化触媒として優れた機能を発揮し、硬化反応を促進して得られる保護層5の機械的強度がより向上される。更に、電荷輸送性材料として上記一般式(I)乃至(V)で表される化合物を用いる場合、含硫黄系材料は、これら電荷輸送性材料に対するドーパントとしても優れた機能を発揮し、得られる機能層の電気特性がより向上される。その結果、電子写真感光体を形成した場合に、機械強度、成膜性及び電気特性の全てが高水準で達成される。
硬化触媒としての含硫黄系材料は、常温(例えば25℃)、又は、加熱後に酸性を示すものが望ましく、接着性、ゴースト、電気特性の観点で有機スルホン酸及びその誘導体の少なくとも1種が最も望ましい。保護層5中にこれら触媒の存在は、XPS等により容易に確認される。
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が望ましい。また、硬化性樹脂組成物中で、ある程度解離可能であれば、有機スルホン酸塩を用いてもよい。
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性が両立される。
熱潜在性触媒として、たとえば有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトの如く空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などがあげられる。
中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面でプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが望ましい。
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸として、硫酸、塩酸、酢酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体として、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基として、アミン類が挙げられる。
アミン類として、1級、2級又は3級アミンに分類される。特に制限はなく、いずれも使用してもよい。
1級アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
2級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,2ージアミノエタン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,3ージアミノプロパン、N,N,N’,N’ーテトラアリルー1,4ージアミノブタン、Nーメチルピペリジン、ピリジン、4ーエチルピリジン、Nープロピルジアリルアミン、3−ジメチルアミノプロパノ−ル、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチル−4−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、N,N,N’,N’ −テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−エチル−3−ヒドロキシピペリジン、3−メチル−4−エチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、イミダゾ−ル、N−メチルピペラジン等が挙げられる。
市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.2以下、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7以上pH6.5以下、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0以上pH9.0以下、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレングリコール溶媒、pH3.5以上pH4.5以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0以上pH4.0以下、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1以上pH6.4以下、解離温度80℃)、「NACUREXC―2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2以上pH8.5以下、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0以上pH7.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0以上pH7.5以下、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0以上pH8.5以下、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8以上pH7.3以下、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5以上pH7.5以下、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0以上pH8.0以下、解離温度110℃)等が挙げられる。
これらの熱潜在性触媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用される。
熱潜在性触媒の配合量は樹脂溶液中の固形分100部に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが望ましく、特に0.1質量%以上10質量%以下が適している。20質量%を超える添加量であると、焼成処理後に異物となって析出することがあり、0.01質量%未満では触媒活性が低くなる。
以上の構成の保護層5は、上記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種を少なくとも含む皮膜形成用塗布液を用いて形成される。この皮膜形成用塗布液は、必要に応じて、上記保護層5の構成成分が添加される。
当該皮膜形成用塗布液の調整は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行ってもよい。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、望ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤としては、特に、アルコール類を含む溶媒を用いることがよい。
溶剤量は任意に設定されるが、少なすぎると一般式(A)で示される化合物が析出しやすくなるため、一般式(A)で示される化合物1質量部に対し0.5質量部以上30質量部以下、望ましくは、1質量部以上20質量部以下で使用される。
また、上記成分を反応させて塗布液を得るときには、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温(例えば25℃)以上100℃以下、望ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、望ましくは1時間以上50時間以下加温しても良い。また、この際に超音波を照射することも望ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗膜欠陥のなく膜厚のバラツキが少ない膜が得られやすくなる。
そして、皮膜形成用塗布液を電荷輸送層3の上に、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布し、必要に応じて加熱することで、硬化させることで、保護層5が得られる。
なお、皮膜形成用塗布液は、感光体用途以外にも、例えば、蛍光発色性塗料、ガラス表面、プラスチック表面などの帯電防止膜等に利用される。この皮膜形成用塗布液を用いると、下層に対する密着性に優れた皮膜が形成され、長期にわたる繰り返し使用による性能劣化が抑制される。
ここで、上記電子写真感光体は、機能分離型の例を説明したが、単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)中の電荷発生材料の含有量は、10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層2や電荷輸送層3の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのがさらに望ましい。
(画像形成装置/プロセスカートリッジ)
図4は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図4に示すように。電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11及びクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用してもよい。
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、平均形状係数(ML2/A×π/4×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより望ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。この平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、現像性及び転写性が高まり、いわゆる写真画質と呼ばれる高画質の画像が得られる。
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で
混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
現像装置11に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために望ましい。
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、設定される。
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いられる。
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略断面図である。画像形成装置120は、図5に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
タンデム型の画像形成装置に本発明の電子写真感光体を用いた場合、4本の感光体の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質が得られる。